特許第6837457号(P6837457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837457
(24)【登録日】2021年2月12日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】生分解性薬物送達組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20210222BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20210222BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210222BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20210222BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20210222BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20210222BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20210222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210222BHJP
   A61K 38/27 20060101ALI20210222BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20210222BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210222BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210222BHJP
   A61P 5/06 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   A61K47/34
   A61K47/14
   A61K47/10
   A61K47/02
   A61K47/42
   A61K9/10
   A61K9/16
   A61K45/00
   A61K38/27
   A61K31/7115
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P5/06
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】84
(21)【出願番号】特願2018-132025(P2018-132025)
(22)【出願日】2018年7月12日
(62)【分割の表示】特願2013-541064(P2013-541064)の分割
【原出願日】2011年11月23日
(65)【公開番号】特開2018-188457(P2018-188457A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】61/417,126
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/563,469
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500119639
【氏名又は名称】デュレクト コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン オスドル,ウィリアム ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤム,スイル
(72)【発明者】
【氏名】ジーウェズ,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】スカール,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブランハム,キース
(72)【発明者】
【氏名】スー,ヒューイ−チン
【審査官】 吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−525457(JP,A)
【文献】 特開平08−003064(JP,A)
【文献】 特表2003−501375(JP,A)
【文献】 特表2008−520628(JP,A)
【文献】 特表平03−500286(JP,A)
【文献】 特表2004−536036(JP,A)
【文献】 特表2004−500423(JP,A)
【文献】 特表2007−524628(JP,A)
【文献】 特表2007−507516(JP,A)
【文献】 特表2010−531807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00−47/69
A61K 9/00−9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビヒクルと、当該ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体とを含む組成物であって、
前記ビヒクルが、ビヒクルの5重量%〜25重量%の量で存在する生分解性重合体と、ビヒクルの95重量%〜75重量%の量で存在する疎水性溶媒とを含み、
前記生分解性重合体は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ならびにそれらの共重合体および三元重合体から選択される少なくとも1つのメンバーを含み、
前記生分解性重合体は、1000ダルトン〜10,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し、
前記疎水性溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミル、および安息香酸ベンジルから選択される少なくとも1つのメンバーを含み、
前記不溶性の有益薬剤複合体は、(i)タンパク質、ペプチド、核酸、または小分子薬である有益薬剤および(ii)プロタミンを含み、
前記不溶性の有益薬剤複合体は、25℃において前記ビヒクル中に1mg/mL未満の溶解度を有し、
前記不溶性の有益薬剤複合体は、組成物の1重量%〜30重量%の範囲で存在し、
前記組成物は、25℃で1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ
前記組成物はエマルションでない、組成物。
【請求項2】
ビヒクルと、当該ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体とを含む組成物であって、
前記ビヒクルが、ビヒクルの5重量%〜25重量%の量で存在する生分解性重合体と、ビヒクルの95重量%〜75重量%の量で存在する疎水性溶媒とを含み、
前記生分解性重合体は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ならびにそれらの共重合体および三元重合体から選択される少なくとも1つのメンバーを含み、
前記生分解性重合体は、1000ダルトン〜10,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し、
前記疎水性溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミル、および安息香酸ベンジルから選択される少なくとも1つのメンバーを含み、
前記不溶性の有益薬剤複合体は、(i)タンパク質、ペプチド、核酸、または小分子薬である有益薬剤および(ii)プロタミンを含み、
前記不溶性の有益薬剤複合体は、25℃において前記ビヒクル中に1mg/mL未満の溶解度を有し、
前記不溶性の有益薬剤複合体は、組成物の1重量%〜30重量%の範囲で存在し、
前記組成物の0.8mLを、21のゲージを有する0.5インチ針を装着した1mLシリンジ中に25℃で配置し、10lbの力を適用したとき、少なくとも0.5mLの組成物が10秒未満のうちにシリンジから噴出され、かつ
前記組成物はエマルションでない、組成物。
【請求項3】
前記不溶性の有益薬剤複合体が、10mgの前記不溶性の有益薬剤複合体を、1mLのpH7.4のリン酸緩衝食塩水の試験溶液中に分散し、37℃で24時間放置したとき、前記試験溶液中に溶解する有益薬剤の量が、前記10mgの不溶性の有益薬剤複合体中の有益薬剤の60%未満となるものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、ゲルでない、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、10以上のG”/G’比を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記生分解性重合体は、ポリ乳酸およびポリ(乳酸‐co‐グリコール酸)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記疎水性溶媒は、安息香酸ベンジルを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
エタノールを更に含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤および二価金属を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記二価金属は、Zn2+、Mg2+、およびCa2+から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
有益薬剤とプロタミンとのモル比が、1:0.1〜0.5である、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
体内での有益薬剤の平均滞留時間(MRT)が、MRT溶媒+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体の合計よりも大きく、MRT溶媒は、前記疎水性溶媒単独中の前記有益薬剤についてのMRTであり、ΔMRT複合体は、重合体の不在下での前記不溶性の有益薬剤複合体に起因するMRTにおける変化であり、ΔMRT重合体は、前記有益薬剤の錯化の不在下での前記重合体に起因するMRTにおける変化である、請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記有益薬剤の前記MRTが、MRT溶媒+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体の合計よりも最大で10倍大きい、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年11月24日に出願された米国仮出願第61/417,126号、および「Radiation−Sterilized Biodegradable Drug Delivery Composition」と題され、代理人整理番号DURE−079PRVの、2011年11月23日に出願された米国仮出願第61/563,469号の利益を主張し、参照によりそれらの開示全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
デポー組成物(depot compositions)等の、有益薬剤(benefical agent)の送達のために設計される多様な組成物が入手可能であり、それらは、重合体、溶媒、および他の成分の種々の組み合わせを利用する。しかしながら、これらの組成物のうちの多くは、多数の成分および/または調製ステップを要するため、製剤プロセスを複雑化させている。更に、所望の投与様式に適した組成物を提供するため、または所望の放出速度(release kinetics)を提供するために、種々の添加剤が必要とされる場合がある。例えば、有益薬剤の徐放を提供するように設計された現在入手可能な製剤は、不十分なシリンジ通過性(syringeability)よび注射可能性(injectability)を持つ高粘度ビヒクルに依存することが多く、したがって、細いゲージ針または針無し(needless)注射器と共に使用するのに不適である。代替的に、注射に好適であり得る既存の低粘度製剤は、所望の放出速度を欠いていることが多く、有意な初期バースト、続いて指数関数的に低下する放出プロフィールを示す。本開示は、これらの問題に対処し、関連した利点を提供する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、生分解性薬物送達組成物であって、ビヒクル、例えば、単相ビヒクル、およびビヒクル中に有益薬剤を含む不溶性の成分を含む、生分解性薬物送達組成物を提供する。幾つかの実施形態では、組成物はエマルションではないが、良好な注射可能性およびシリンジ通過性を提供可能な低粘度を有し、経時的な有益薬剤の持続放出、および最小化された初期バーストを更に提供する。また、生分解性薬物送達組成物またはその成分を含むキット、ならびに生分解性薬物送達組成物を作製および使用する方法も提供される。
【0004】
本明細書に開示される生分解性薬物送達組成物の驚くべき特徴は、それらが、体内での望ましい薬物動態(PK)特性を提供しながら、注射前の室温で、および皮下注射または筋肉内注射後の両方で、典型的に低粘度を維持することである。これらの有益なPK特性には、最小のバーストおよび長期にわたる有益薬剤の持続放出が含まれる。
【0005】
本開示の或る非限定的な態様が以下に提供される:
1.ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体と、
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含むビヒクル;および、
前記ビヒクル中に分散した、25℃においてビヒクル中に1mg/mL未満の溶解度を有する不溶性の有益薬剤複合体、
を含む組成物であって、
前記組成物が、25℃で1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ、
前記組成物はエマルションでない、組成物。
2.ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体と、
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含むビヒクル、および、
前記ビヒクル中に分散した、25℃においてビヒクル中に1mg/mL未満の溶解度を有する不溶性の有益薬剤複合体、
を含む組成物であって、
0.8mLの組成物が、21のゲージを有する0.5インチ針を装着された1mLシリンジ中に25℃で配置され、10lbの力が適用されるとき、少なくとも0.5mLの組成物が10秒未満のうちにシリンジから噴出され、かつ、
前記組成物はエマルションでない、組成物。
3.ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体と、
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒からなる単一溶媒を含むビヒクル、および、
前記ビヒクル中に分散した、25℃においてビヒクル中に1mg/mL未満の溶解度を有する不溶性の成分、
を含む組成物であって、
前記組成物は、25℃で1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ、
前記組成物はエマルションでない、組成物。
4.不溶性の成分は、不溶性の有益薬剤複合体を含む、3に記載の組成物。
5.ビヒクルの約5重量%〜約30重量%の量で存在する生分解性重合体と、
ビヒクルの約95重量%〜約70重量%の量で存在する疎水性溶媒を含む単相のビヒクル、および、
前記ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体であって、そのうちの少なくとも99%は、25℃いおいてビヒクル中で不溶性である、有益薬剤複合体、
を含む注射用デポー組成物であって、
前記注射用デポー組成物は、25℃で1200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ
前記注射用デポー組成物はエマルションでない、組成物。
6.10mgの不溶性の有益薬剤複合体が、1mLのpH7.4のリン酸緩衝食塩水の試験溶液中に分散され、37℃で24時間放置されるとき、試験溶液中に溶解した有益薬剤の量は、10mgの不溶性の有益薬剤複合体中の有益薬剤の60%未満である、1、2、4、または5のいずれか1つに記載の組成物。
7.組成物は、ゲルでない、1〜6のいずれか1つに記載の組成物。
8.組成物は、10以上のG”/G’比を有する、1〜6のいずれか1つに記載の組成物。
9.生分解性重合体は、1000ダルトン〜20,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し、カルボキシル、スルホン酸塩、リン酸塩、アミノ、二級アミノ、三級アミノ、および四級アンモニウムから選択される少なくとも1つのメンバーを含むイオン性末端基を含む、1〜8のいずれか1つに記載の組成物。
10.生分解性重合体は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン、ならびにそれらの共重合体および三元重合体から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、1〜9のいずれか1つに記載の組成物。
11.生分解性重合体は、ポリ乳酸およびポリ(乳酸‐co‐グリコール酸)のうちの少なくとも1つを含む、1〜10のいずれかに記載の組成物。
12.疎水性溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミル、および安息香酸ベンジルから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、1〜11のいずれか1つに記載の組成物。
13.疎水性溶媒は、安息香酸ベンジルを含む、1〜11のいずれか1つに記載の組成物。
14.ベンジルアルコールを更に含む、1〜13のいずれか1つに記載の組成物。
15.エタノールを更に含む、1〜14のいずれか1つに記載の組成物。
16.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤、二価金属と、重合カチオン性錯化剤および重合アニオン性錯化剤のうちの1つと、を含む、1、2、および4〜15のいずれか1つに記載の組成物。
17.不溶性の有益薬剤複合体は、プロタミン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリミキシン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアデノシン、およびポリチミンから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、1、2、および4〜16のいずれか1つに記載の組成物。
18.不溶性の有益薬剤複合体は、電荷中性化粒子の形態である、1、2、および4〜17のいずれか1つに記載の組成物。
19.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびプロタミンを含む、1、2、および4〜18のいずれか1つに記載の組成物。
20.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤および二価金属またはその塩を含む、1、2、および4〜19のいずれか1つに記載の組成物。
21.二価金属は、Zn2+、Mg2+、およびCa2+から選択される、20に記載の組成物。
22.不溶性の有益薬剤複合体は、プロタミンを更に含む、1、2、および4〜21のいずれか1つに記載の組成物。
23.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびプロタミンを含み、有益薬剤とプロタミンとのモル比は、およそ1:0.1〜0.5である、1、2、および4〜22のいずれか1つに記載の組成物。
24.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤、亜鉛、およびプロタミンを含み、有益薬剤と、亜鉛と、プロタミンとのモル比は、およそ1:0.4〜2:0.1〜0.5である、1、2、および4〜23のいずれか1つに記載の組成物。
25.体内での有益薬剤の平均滞留時間(MRT)は、MRT溶媒+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体の合計よりも大きく、MRT溶媒は、疎水性溶媒単独中の有益薬剤についてのMRTであり、ΔMRT複合体は、重合体の不在下での、不溶性の有益薬剤複合体に起因するMRTにおける変化であり、ΔMRT重合体は、有益薬剤の錯化の不在下での、重合体に起因するMRTにおける変化である、1、2、および4〜24のいずれか1つに記載の組成物。
26.有益薬剤のMRTは、MRT溶媒+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体の合計よりも最大約10倍大きい、25に記載の組成物。
27.組成物は、37℃でpH7.4のリン酸緩衝食塩水中への注射後に液体コアを囲む表層を形成し、表層は、10μm未満の厚さを有する、1〜26のいずれか1つに記載の組成物。
28.ビヒクルは、安息香酸ベンジルからなる疎水性溶媒からなる単一溶媒からなり、不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびプロタミンを含む、1〜27のいずれか1つに記載の組成物。
29.不溶性の有益薬剤複合体は、亜鉛を更に含む、28に記載の組成物。
30.被検体に、注射を介して、1〜29のいずれか1つに記載の組成物を投与することを含む、有益薬剤を被検体に投与する方法。
31.ビヒクルであって、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体、および
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含む、ビヒクルと、
ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体であって、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する、不溶性の有益薬剤複合体と、を含む、組成物であって、
組成物は、25℃で、1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ
組成物は、エマルションでない、組成物。
32.重合体は、ビヒクルの約10重量%〜約25重量%の量で存在する、31に記載の組成物。
33.重合体は、ビヒクルの約15重量%〜約20重量%の量で存在する、31に記載の組成物。
34.疎水性溶媒は、ビヒクルの約90重量%〜約75重量%の量で存在する、31〜33のいずれか1つに記載の組成物。
35.疎水性溶媒は、ビヒクルの約85重量%〜約80重量%の量で存在する、31〜34のいずれか1つに記載の組成物。
36.疎水性溶媒は、2つ以上の疎水性溶媒の組み合わせである、31〜35のいずれか1つに記載の組成物。
37.組成物は、25℃で、1,000センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有する、31〜36のいずれか1つに記載の組成物。
38.組成物は、25℃で、500センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有する、31〜37のいずれか1つに記載の組成物。
39.組成物は、25℃で、100センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有する、31〜38のいずれか1つに記載の組成物。
40.ビヒクルは、少なくとも1週間の期間にわたって(該期間にわたって37℃で維持されたとき)1桁より大きくは逸脱しないゼロせん断粘度を維持し、ゼロせん断粘度は、1mLのビヒクルの、100mLのpH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中への注射後に37℃の温度で維持される、31〜39のいずれか1つに記載の組成物。
41.0.8mLの組成物が、21のゲージを有する0.5インチ針を装着された1mLシリンジ中に25℃で配置され、10lbの力が適用されるとき、少なくとも0.5mLの組成物が25秒未満のうちにシリンジから噴出される、31〜40のいずれか1つに記載の組成物。
42.時間枠は、10秒未満である、41に記載の組成物。
43.時間枠は、5秒未満である、41に記載の組成物。
44.組成物は、針無し注射器を使用して注射されることが可能である、31〜43のいずれか1つに記載の組成物。
45.組成物は、ゲルでない、31〜44のいずれか1つに記載の組成物。
46.組成物は、37℃で7日間維持されたとき、ゲルを形成しない、31〜45のいずれか1つに記載の組成物。
47.組成物は、37℃で7日間水と接触させられたとき、膨張しない、31〜46のいずれか1つに記載の組成物。
48.生分解性重合体は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ならびにそれらの共重合体および三元重合体から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、31〜47のいずれか1つに記載の組成物。
49.生分解性重合体は、三元重合体である、31〜48のいずれか1つに記載の組成物。
50.生分解性重合体は、ポリ乳酸(PLA)を含む、31〜48のいずれか1つに記載の組成物。
51.PLAは、イオン性末端基を含む、50に記載の組成物。
52.イオン性末端基は、酸末端基である、51に記載の組成物。
53.PLAは、非イオン性(unionizable)末端基を含む、50に記載の組成物。
54.非イオン性末端基は、ヒドロキシルおよびエステルから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、53に記載の組成物。
55.生分解性重合体は、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)を含む、31〜48のいずれか1つに記載の組成物。
56.PLGAは、イオン性末端基を含む、55に記載の組成物。
57.イオン性末端基は、酸末端基である、56に記載の組成物。
58.PLGAは、非イオン性末端基を含む、55に記載の組成物。
59.非イオン性末端基は、ヒドロキシルおよびエステルから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、58に記載の組成物。
60.生分解性重合体は、ヒドロキシカプロン酸−グリコール酸−乳酸三元重合体を含む、48に記載の組成物。
61.疎水性溶媒は、25℃で5重量%以下の水中溶解度を有する、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
62.疎水性溶媒は、25℃で1重量%以下の水中溶解度を有する、61に記載の組成物。
63.疎水性溶媒中の水溶解度は、25℃で10重量%以下である、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
64.疎水性溶媒中の水溶解度は、25℃で5重量%以下である、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
65.疎水性溶媒中の水溶解度は、25℃で1重量%以下である、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
66.疎水性溶媒は、2つ以上の疎水性溶媒の組み合わせを含む、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
67.疎水性溶媒は、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ベンジル、およびベンジルアルコールから選択される1つ以上の溶媒を含む、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
68.疎水性溶媒は、ベンジルアルコールである、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
69.組成物は、ベンジルアルコールがない、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
70.疎水性溶媒は、安息香酸ベンジルである、31〜60のいずれか1つに記載の組成物。
71.組成物は、少なくとも1つの追加的溶媒を含む、31〜70のいずれか1つに記載の組成物。
72.少なくとも1つの追加的溶媒は、ベンジルアルコールである、71に記載の組成物。
73.少なくとも1つの追加的溶媒は、トリアセチンである、71に記載の組成物。
74.少なくとも1つの追加的溶媒は、乳酸エチルである、71に記載の組成物。
75.少なくとも1つの追加的溶媒は、エタノールである、71に記載の組成物。
76.組成物は、1つを超える溶媒を含まない、31〜65のいずれか1つに記載の組成物。
77.不溶性の有益薬剤複合体は、電荷中性化される、31〜76のいずれか1つに記載の組成物。
78.不溶性の有益薬剤複合体は、プロタミンを含む、31〜77のいずれか1つに記載の組成物。
79.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤の二価金属塩を含む、31〜78のいずれか1つに記載の組成物。
80.二価金属は、Zn2+、Mg2+、およびCa2+から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、79に記載の組成物。
81.不溶性の有益薬剤複合体は、プロタミンおよび有益薬剤のZn2+塩を含む、31〜80のいずれか1つに記載の組成物。
82.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびカチオン性薬剤を含む、31〜78のいずれか1つに記載の組成物。
83.カチオン性薬剤は、ポリリジン、ポリアルギニン、およびポリミキシンからなる群から選択される、82に記載の組成物。
84.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびアニオン性薬剤を含む、31〜78のいずれか1つに記載の組成物。
85.アニオン性薬剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアデノシン、およびポリチミンから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、84に記載の組成物。
86.アニオン性薬剤は、少なくとも10merポリアデノシンまたはポリチミンである、84に記載の組成物。
87.アニオン性薬剤は、少なくとも20merポリアデノシンまたはポリチミンである、86に記載の組成物。
88.アニオン性薬剤は、少なくとも150merポリアデノシンまたはポリチミンである、87に記載の組成物。
89.アニオン性薬剤は、少なくとも1500merポリチミンである、88に記載の組成物。
90.組成物は、メチオニンを更に含む、31〜89のいずれか1つに記載の組成物。
91.不溶性の有益薬剤複合体は、約1μm〜約400μmの範囲の平均粒径を有する粒子の形態でビヒクル中に分散される、31〜90に記載の組成物。
92.不溶性の有益薬剤複合体は、約1μm〜約10μmの範囲の平均粒径を有する粒子の形態でビヒクル中に分散される、91に記載の組成物。
93.不溶性の有益薬剤複合体は、約10μm〜約100μmの範囲の平均粒径を有する粒子の形態でビヒクル中に分散される、91に記載の組成物。
94.ビヒクルの見かけ密度は、粒子の見かけ密度の10%以内である、91に記載の組成物。
95.10mgの不溶性の有益薬剤複合体が、1mLのpH7.4のリン酸緩衝食塩水の試験溶液中に分散され、37℃で24時間放置されるとき、試験溶液中に溶解した有益薬剤の量は、10mgの不溶性の有益薬剤複合体中の有益薬剤の50%以下である、31〜94のいずれか1つに記載の組成物。
96.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびプロタミンを含み、有益薬剤とプロタミンとのモル比は、およそ1:0.1〜0.5である、31〜95のいずれか1つに記載の組成物。
97.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤、亜鉛、およびプロタミンを含み、有益薬剤と、亜鉛と、プロタミンとのモル比は、およそ1:0.4〜2:0.1〜0.5である、31〜81のいずれか1つに記載の組成物。
98. 不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤としてペプチドまたはタンパク質を含み、組成物は、25kGyの線量でのガンマ線照射への曝露後、少なくとも24時間の期間にわたって、約90%以上の純度を維持する、90に記載の組成物。
99.期間は、少なくとも1ヶ月である、98に記載の組成物。
100.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤としてペプチドまたはタンパク質を含み、組成物は、25kGyの線量でのガンマ線照射への曝露後、少なくとも24時間の期間にわたって、約95%以上の純度を維持する、98に記載の組成物。
101.期間は、少なくとも1ヶ月である、100に記載の組成物。
102.ビヒクルは、ビヒクルの約5重量%〜約20重量%の量のイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)を更に含む、31〜101のいずれか1つに記載の組成物。
103.ビヒクルは、ビヒクルの約5重量%〜約10重量%の量のSAIBを含む、102に記載の組成物。
104.ビヒクルは、約5%〜10%SAIB、約70%〜約75%の疎水性溶媒、および約15%〜25%の生分解性重合体を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である、103に記載の組成物。
105.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤のZn2+塩を含む、104に記載の組成物。
106.ビヒクルは、約5〜約10%SAIB、約65%〜約70%安息香酸ベンジル、約3%〜約7%エタノール、および約15%〜約25%ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である、103に記載の組成物。
107.ビヒクルは、約15%〜約25%SAIB、約55%〜約65%安息香酸ベンジル、約5%〜約15%ベンジルアルコール、および約5%〜約15%ポリ乳酸(PLA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である、102に記載の組成物。
108.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤のZn2+塩を含む、107に記載の組成物。
109.ビヒクルは、約65%〜約75%安息香酸ベンジル、約5%〜約15%ベンジルアルコール、および約15%〜約25%ポリ乳酸(PLA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である、102に記載の組成物。
110.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤のZn2+塩を含む、102に記載の組成物。
111.不溶性の有益薬剤複合体の量は、組成物の約1重量%〜約50重量%の範囲である、110に記載の組成物。
112.不溶性の有益薬剤複合体は、タンパク質、ペプチド、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ならびにそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグ、および類似体から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、有益薬剤を含む、31〜111のいずれか1つに記載の組成物。
113.不溶性の有益薬剤複合体は、タンパク質を含む有益薬剤を含む、112に記載の組成物。
114.タンパク質は、IFNα2aまたは組換えヒトrhIFNα2aである、113に記載の組成物。
115.タンパク質は、成長ホルモンである、113に記載の組成物。
116.成長ホルモンは、ヒト成長ホルモン(hGH)または組換えヒト成長ホルモン(rhGH)である、115に記載の組成物。
117.不溶性の有益薬剤複合体は、ペプチドを含む有益薬剤を含む、112に記載の組成物。
118.ペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)またはその類似体である、117に記載の組成物。
119.ペプチドは、エクセナチドである、117に記載の組成物。
120.不溶性の有益薬剤複合体は、抗体またはその断片を含む有益薬剤を含む、31〜111に記載の組成物。
121.不溶性の有益薬剤複合体は、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはそれらの類似体を含む有益薬剤を含む、31〜111に記載の組成物。
122.不溶性の有益薬剤複合体は、ヌクレオシド類似体を含む有益薬剤を含む、121に記載の組成物。
123.ヌクレオシド類似体は、アザシチジンである、122に記載の組成物。
124.不溶性の有益薬剤複合体は、低分子量化合物を含む有益薬剤を含む、31〜111に記載の組成物。
125.低分子量化合物は、抗腫瘍薬を含む、124に記載の組成物。
126.抗腫瘍薬は、ボルテゾミブである、125に記載の組成物。
127.組成物は、37℃でpH7.4のリン酸緩衝食塩水中への注射後に液体コアを囲む表層を形成し、表層は、10μm未満の厚さを有する、31〜126のいずれか1つに記載の組成物。
128.ビヒクルの約5重量%〜約30重量%の量で存在する生分解性重合体と、
ビヒクルの約95重量%〜約70重量%の量で存在する疎水性溶媒を含む単相のビヒクル、および、
前記ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体であって、そのうちの少なくとも99%は、25℃においてビヒクル中で不溶性である有益薬剤複合体、
を含む注射用デポー組成物であって、
前記注射用デポー組成物は、25℃で1200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ、
前記注射用デポー組成物はエマルションでない、注射用デポー組成物。
129.生分解性重合体は、ポリ乳酸を含む、128に記載の組成物。
130.ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体と、
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含むビヒクル、および、
前記ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体であって、25℃においてビヒクル中に1mg/mL未満の溶解度を有する不溶性の有益薬剤複合体、
を含む組成物であって、
前記有益薬剤の体内での平均滞留時間(MRT)は、MRT溶媒+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体の合計よりも大きく、MRT溶媒は、疎水性溶媒単独中の有益薬剤についてのMRTであり、ΔMRT複合体は、重合体の不在下での、不溶性の有益薬剤複合体に起因するMRTにおける変化であり、ΔMRT重合体は、有益薬剤の錯化の不在下での、重合体に起因するMRTにおける変化である、組成物。
131.有益薬剤のMRTは、MRT溶媒+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体の合計よりも最大10倍大きい、130に記載の組成物。
132.ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体と、
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含むビヒクル、および、
ビヒクル中に分散した有益薬剤を含む不溶性の成分であって、25℃において、ビヒクル中に1mg/mL未満の溶解度を有する不溶性の成分、
を含む組成物であって、
前記生分解性重合体はイオン性末端基を含む、組成物。
133. 組成物は、37℃でpH7.4のリン酸緩衝食塩水中への注射後に液体コアを囲む表層を形成し、表層は、10μm未満の厚さを有する、128〜132のいずれか1つに記載の組成物。
134.ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体と、
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含むビヒクル、および、
ビヒクル中に分散した有益薬剤を含む不溶性の成分であって、25℃においてビヒクル中に1mg/mL未満の溶解度を有する不溶性の成分、
を含む組成物であって、
前記生分解性重合体は、1000ダルトン〜11,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、組成物。
135.ビヒクルであって、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体、および
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含む、ビヒクルと、
ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体であって、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する、不溶性の有益薬剤複合体と、を含む、組成物であって、
0.8mLの組成物が、21のゲージを有する0.5インチ針を装着された1mLシリンジ中に25℃で配置され、10lbの力が適用されるとき、少なくとも0.5mLの組成物が10秒未満のうちにシリンジから噴出され、かつ
組成物は、エマルションでない、組成物。
136.ビヒクルであって、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体であって、生分解性重合体は、イオン性末端基を含む、生分解性重合体、および
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含む、ビヒクルと、
ビヒクル中に分散した有益薬剤を含む不溶性の成分であって、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する、不溶性の成分と、を含む、組成物であって、
組成物は、25℃で、500センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ
組成物は、ゲルでない、組成物。
137.組成物は、10以上のG”/G’比を有する、136に記載の組成物。
138.ビヒクルであって、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体、および
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒からなる単一溶媒を含む、ビヒクルと、
ビヒクル中に分散した有益薬剤を含む不溶性の成分であって、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する、不溶性の成分と、を含む、組成物であって、
組成物は、25℃で、1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ
組成物は、エマルションでない、組成物。
139.組成物は、10以上のG”/G’比を有する、138に記載の組成物。
140.ビヒクルであって、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体、および
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒からなる単一溶媒を含む、ビヒクルと、
ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体であって、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する、不溶性の有益薬剤複合体と、を含む、組成物であって、不溶性の有益薬剤は、有益薬剤、金属と、カチオン性薬剤およびアニオン性薬剤のうちの1つとを含み、
組成物は、25℃で、500センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつ
組成物は、ゲルでない、組成物。
141.組成物は、10以上のG”/G’比を有する、140に記載の組成物。
142.ビヒクルであって、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体であって、生分解性重合体は、ポリ乳酸またはポリ(乳酸‐co‐グリコール酸)である、生分解性重合体、および
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性安息香酸塩溶媒を含む、ビヒクルと、
ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体であって、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有し、有益薬剤、亜鉛、およびプロタミンを含む、不溶性の有益薬剤複合体と、を含む、組成物であって、
組成物は、ゲルでない、組成物。
143.組成物は、10以上のG”/G’比を有する、142に記載の組成物。
144.乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、およびヒドロキシカプロン酸から選択される少なくとも1つの単量体を含む重合体であって、重合体は、1000ダルトン〜11,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し、かつ重合体は、イオン性末端基を含む、重合体。
145.重量平均分子量は、1500ダルトン〜10,500ダルトンの範囲である、144に記載の重合体。
146.重量平均分子量は、2000ダルトン〜10,000ダルトンの範囲である、144に記載の重合体。
147.重量平均分子量は、2500ダルトン〜9500ダルトンの範囲である、144に記載の重合体。
148.イオン性末端基は、カルボキシル、スルホン酸塩、リン酸塩、アミノ、二級アミノ、三級アミノ、および四級アンモニウムから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、144に記載の重合体。
149.イオン性末端基は、カルボキシルを含む、144に記載の重合体。
150.ビヒクルであって、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体、および
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含む、ビヒクルと、
ビヒクル中に分散した有益薬剤を含む不溶性の成分であって、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する、不溶性の成分と、を含む、組成物であって、
組成物は、25℃で、1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、
組成物は、37℃でpH7.4のリン酸緩衝食塩水中への注射後に液体コアを囲む表層を形成し、表層は、10μm未満の厚さを有し、かつ
組成物は、エマルションでない、組成物。
151.ビヒクルであって、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体であって、生分解性重合体は、ポリ乳酸またはポリ(乳酸‐co‐グリコール酸)である、生分解性重合体、および
ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性安息香酸塩溶媒を含む、ビヒクルと、
ビヒクル中に分散した有益薬剤を含む不溶性の成分であって、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する、不溶性の成分と、を含む、組成物であって、不溶性の有益薬剤は、有益薬剤、亜鉛、およびプロタミンを含み、
組成物は、37℃でpH7.4のリン酸緩衝食塩水中への注射後に液体コアを囲む表層を形成し、表層は、10μm未満の厚さを有する、組成物。
152.生分解性重合体および疎水性溶媒を組み合わせて、ビヒクルを形成することであって、生分解性重合体は、ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で含まれ、疎水性溶媒は、ビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で含まれる、組み合わせることと、
不溶性の有益薬剤複合体をビヒクル中に分散させることと、を含み、不溶性の有益薬剤複合体は、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有し、それによって、25℃で、1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有する組成物を提供し、組成物は、エマルションでない、組成物を作製する方法。
153.重合体は、ビヒクルの約10重量%〜約25重量%の量で含まれる、152に記載の方法。
154.重合体は、ビヒクルの約15重量%〜約20重量%の量で含まれる、153に記載の方法。
155.疎水性溶媒は、ビヒクルの約90重量%〜約75重量%の量で含まれる、152〜154のいずれか1つに記載の方法。
156.疎水性溶媒は、ビヒクルの約85重量%〜約80重量%の量で含まれる、155に記載の方法。
157.疎水性溶媒は、2つ以上の疎水性溶媒の組み合わせである、152〜156のいずれか1つに記載の方法。
158.組成物は、25℃で、1,000センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有する、152〜157のいずれか1つに記載の方法。
159.組成物は、25℃で、500センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有する、158に記載の方法。
160.組成物は、25℃で、100センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有する、159に記載の方法。
161.ビヒクルは、1週間の期間にわたって(該期間にわたって37℃で維持され、かつ1週間の期間中の任意の時点で測定されたとき)1桁より大きくは逸脱しないゼロせん断粘度を維持し、ゼロせん断粘度は、約1mLのビヒクルの、100mLのpH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中への注射後に37℃の温度で維持される、152〜160のいずれか1つに記載の方法。
162.0.8mLの組成物が、21のゲージを有する0.5インチ針を装着された1mLシリンジ中に25℃で配置され、10lbの力が適用されるとき、少なくとも0.5mLの組成物が25秒未満のうちにシリンジから噴出される、152〜160のいずれか1つに記載の方法。
163.時間枠は、10秒未満である、162に記載の方法。
164.時間枠は、5秒未満である、163に記載の方法。
165.組成物は、針無し注射器を使用して注射されることが可能である、152〜164のいずれか1つに記載の方法。
166.生分解性重合体は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ならびにそれらの共重合体および三元重合体から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、152〜165のいずれか1つに記載の方法。
167.生分解性重合体は、三元重合体である、152〜166のいずれか1つに記載の方法。
168.生分解性重合体は、ポリ乳酸(PLA)を含む、152〜166のいずれか1つに記載の方法。
169.PLAは、イオン性末端基を含む、168に記載の方法。
170.イオン性末端基は、酸末端基である、169に記載の方法。
171.PLAは、非イオン性末端基を含む、168に記載の方法。
172.非イオン性末端基は、ヒドロキシルおよびエステルから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、171に記載の方法。
173.生分解性重合体は、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)を含む、152〜166のいずれか1つに記載の方法。
174.PLGAは、イオン性末端基を含む、173に記載の方法。
175. イオン性末端基は、酸末端基である、174に記載の方法。
176. PLGAは、非イオン性末端基を含む、173に記載の方法。
177. 非イオン性末端基は、ヒドロキシルおよびエステルから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、176に記載の方法。
178.生分解性重合体は、ヒドロキシカプロン酸−グリコール酸−乳酸三元重合体を含む、152に記載の方法。
179.疎水性溶媒は、25℃で5重量%以下の水中溶解度を有する、152〜156のいずれか1つに記載の方法。
180.疎水性溶媒は、25℃で1重量%以下の水中溶解度を有する、179に記載の方法。
181.疎水性溶媒中の水溶解度は、25℃で10重量%以下である、152〜156のいずれか1つに記載の方法。
182.疎水性溶媒中の水溶解度は、25℃で5重量%以下である、181に記載の方法。
183.疎水性溶媒中の水溶解度は、25℃で1重量%以下である、182に記載の方法。
184.組成物は、親水性溶媒がない、152〜183のいずれか1つに記載の方法。
185.疎水性溶媒は、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ベンジル、およびベンジルアルコールから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、152〜184のいずれか1つに記載の方法。
186.疎水性溶媒は、ベンジルアルコールである、152〜185のいずれか1つに記載の方法。
187.疎水性溶媒は、クエン酸トリエチルである、152〜185のいずれか1つに記載の方法。
188.疎水性溶媒は、安息香酸ベンジルである、152〜185のいずれか1つに記載の方法。
189.組成物は、少なくとも1つの追加的溶媒を含む、152〜188のいずれか1つに記載の方法。
190.少なくとも1つの追加的溶媒は、ベンジルアルコールである、189に記載の方法。
191.少なくとも1つの追加的溶媒は、トリアセチンである、189に記載の方法。
192.少なくとも1つの追加的溶媒は、乳酸エチルである、189に記載の方法。
193.少なくとも1つの追加的溶媒は、エタノールである、189に記載の方法。
194.不溶性の有益薬剤複合体は、電荷中性化される、152〜193のいずれか1つに記載の方法。
195.不溶性の有益薬剤複合体は、プロタミンを含む、152〜194のいずれか1つに記載の方法。
196.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤の二価金属塩を含む、152〜195のいずれか1つに記載の方法。
197.二価金属は、Zn2+、Mg2+、およびCa2+から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、196に記載の方法。
198.不溶性の有益薬剤複合体は、プロタミンおよび有益薬剤のZn2+塩を含む、152〜197のいずれか1つに記載の方法。
199.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびカチオン性薬剤を含む、152〜195のいずれか1つに記載の方法。
200.カチオン性薬剤は、ポリリジン、ポリアルギニン、およびポリミキシンから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、199に記載の方法。
201.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびアニオン性薬剤を含む、152〜195のいずれか1つに記載の方法。
202.アニオン性薬剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアデノシン、およびポリチミンから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、201に記載の方法。
203.アニオン性薬剤は、少なくとも10merポリアデノシンまたはポリチミンである、201に記載の方法。
204.アニオン性薬剤は、少なくとも20merポリアデノシンまたはポリチミンである、203に記載の方法。
205.アニオン性薬剤は、少なくとも150merポリアデノシンまたはポリチミンである、204に記載の方法
206.アニオン性薬剤は、少なくとも1500merポリチミンである、205に記載の方法。
207.組成物は、メチオニンを含む、152〜206のいずれか1つに記載の方法。
208.不溶性の有益薬剤複合体を、約1μm〜約400μmの範囲の粒径を有する粒子の形態でビヒクル中に分散させることを含む、152〜207のいずれか1つに記載の方法。
209.不溶性の有益薬剤複合体は、約1μm〜約10μmの範囲の粒径を有する粒子の形態でビヒクル中に分散される、208に記載の方法。
210.不溶性の有益薬剤複合体は、約10μm〜約100μmの範囲の粒径を有する粒子の形態でビヒクル中に分散される、208に記載の方法。
211.噴霧乾燥によって粒子を形成することを含む、209に記載の方法。
212.凍結乾燥によって粒子を形成することを含む、208、209、または210に記載の方法。
213.ビヒクルの見かけ密度は、粒子の見かけ密度の10%以内である、208に記載の方法。
214.ビヒクルは、ビヒクルの約5重量%〜約20重量%の量のイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)を更に含む、152〜213のいずれか1つに記載の方法。
215.ビヒクルは、ビヒクルの約6重量%〜約10重量%の量のSAIBを含む、214に記載の方法。
216.ビヒクルは、約5%〜約10%SAIB、約70%〜約75%の疎水性溶媒、および約15%〜約25%の生分解性重合体を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である、215に記載の方法。
217.有益薬剤複合体は、有益薬剤のZn2+塩を含む、216に記載の方法。
218.ビヒクルは、約5%〜約10%SAIB、約65%〜約70%安息香酸ベンジル、約3%〜約7%エタノール、および約15%〜約25%ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である、215に記載の方法。
219.有益薬剤複合体は、有益薬剤のZn2+塩を含む、218に記載の方法。
220.ビヒクルは、約15%〜約25%SAIB、約55%〜約65%安息香酸ベンジル、約5%〜約15%ベンジルアルコール、および約5%〜約15%ポリ乳酸(PLA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である、214に記載の方法。
221.有益薬剤複合体は、有益薬剤のZn2+塩を含む、220に記載の方法。
222.ビヒクルは、約65%〜約75%安息香酸ベンジル、約5%〜約15%ベンジルアルコール、および約15%〜約25%ポリ乳酸(PLA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である、152に記載の方法。
223.有益薬剤複合体は、プロタミンを含む、222に記載の方法。
224.有益薬剤複合体は、有益薬剤のZn2+塩を含む、223に記載の方法。
225.不溶性の有益薬剤複合体の量は、組成物の約1重量%〜約50重量%の範囲である、152に記載の方法。
226.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤およびプロタミンを含み、有益薬剤とプロタミンとのモル比は、およそ1:0.1〜0.5である、152〜225のいずれか1つに記載の方法。
227.不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤、亜鉛、およびプロタミンを含み、有益薬剤と、亜鉛と、プロタミンとのモル比は、およそ1:0.4〜2:0.1〜0.5である、152〜198のいずれか1つに記載の方法。
228.不溶性の有益薬剤複合体は、タンパク質、ペプチド、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ならびにそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグ、および類似体から選択される少なくとも1つの有益薬剤を含む、152〜227のいずれか1つに記載の方法。
229.不溶性の有益薬剤複合体は、タンパク質を含む有益薬剤を含む、152〜228のいずれか1つに記載の方法。
230.タンパク質は、IFNα2aまたは組換えヒトrhIFNα2aである、229に記載の方法。
231.タンパク質は、成長ホルモンである、229に記載の方法。
232.成長ホルモンは、ヒト成長ホルモン(hGH)または組換えヒト成長ホルモン(rhGH)である、231に記載の方法。
233.不溶性の有益薬剤複合体は、抗体またはその断片を含む有益薬剤を含む、152〜227のいずれか1つに記載の方法。
234.抗体は、モノクローナル抗体またはその断片である、233に記載の方法。
235.モノクローナル抗体は、アダリムマブである、234に記載の方法。
236.モノクローナル抗体は、ベバシズマブである、234に記載の方法。
237.モノクローナル抗体は、インフリキシマブである、234に記載の方法。
238.不溶性の有益薬剤複合体は、ペプチドを含む有益薬剤を含む、152〜228に記載の方法。
239.ペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)またはその類似体である、238に記載の方法。
240.ペプチドは、エクセナチドである、238に記載の方法。
241.不溶性の有益薬剤複合体は、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはそれらの類似体を含む有益薬剤を含む、152〜228に記載の方法。
242.不溶性の有益薬剤複合体は、ヌクレオシド類似体を含む有益薬剤を含む、241に記載の方法。
243.ヌクレオシド類似体は、アザシチジンである、242に記載の方法。
244.不溶性の有益薬剤複合体は、低分子量化合物を含む有益薬剤を含む、152〜227のいずれか1つに記載の方法。
245.低分子量化合物は、抗腫瘍薬を含む、244に記載の方法。
246.抗腫瘍薬は、ボルテゾミブである、245に記載の方法。
247.有益薬剤を被検体に投与する方法であって、
被検体に、注射を介して、
ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体、およびビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒を含む、単相のビヒクルと、
ビヒクル中に分散した不溶性の有益薬剤複合体と、を含む組成物を投与することを含み、組成物は、25℃で、1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつエマルションでない、方法。
248.組成物の投与後に、有益薬剤は、被検体の血漿中に、薬物単独の投与または疎水性溶媒単独中の薬物の投与と比較して長期間、検出可能なレベルで存在する、247に記載の方法。
249.組成物は、被検体に、21ゲージ以下の針を使用して投与される、247または248に記載の方法。
250.組成物は、被検体に、21〜27ゲージ針を使用して投与される、247〜249のいずれか1つに記載の方法。
251.組成物は、被検体に、針無し注射器を使用して投与される、247に記載の方法。
252.組成物の投与後に、体内での有益薬剤の平均滞留時間(MRT)は、MRT溶媒+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体の合計の合計よりも大きく、MRT溶媒は、疎水性溶媒単独中の有益薬剤についてのMRTであり、ΔMRT複合体は、重合体の不在下での、不溶性の有益薬剤複合体に起因するMRTにおける変化であり、ΔMRT重合体は、有益薬剤の錯化の不在下での、重合体に起因するMRTにおける変化である、247〜251のいずれか1つに記載の方法。
253.有益薬剤のMRTは、MRT溶媒+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体の合計よりも最大10倍大きい、252に記載の方法。
54.−ビヒクルの5重量%〜30重量%の量で存在する生分解性重合体と、
−ビヒクルの95重量%〜60重量%の量で存在する液体疎水性溶媒を含むビヒクル、および、
−有益薬剤を含む固体複合体であって、ビヒクル中で不溶性でありビヒクル中に分散される複合体、
を含む、注射用組成物。
255.有益薬剤複合体は、重合カチオン性錯化剤または重合アニオン性錯化剤を含む、254に記載の注射用組成物。
256.−重合カチオン性錯化剤は、プロタミン、ポリリジン、ポリアルギニン、およびポリミキシンから選択されるか、または
−重合アニオン性錯化剤は、カルボキシメチルセルロース、ポリアデノシン、およびポリチミンから選択される、255に記載の注射用組成物。
257.生分解性重合体は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ならびにそれらの共重合体および三元重合体から選択される、254〜256のいずれか1つに記載の注射用組成物。
258.疎水性溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ベンジル、およびそれらの混合物から選択される、254〜257のいずれか1つに記載の注射用組成物。
259.組成物は、次の(A)および(B)のうちの少なくとも1つを満たす、254〜258のいずれか1つに記載の注射用組成物:
(A)組成物は、25℃で、1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有する、および
(B)0.8mLの組成物が、21のゲージを有する0.5インチ針を装着された1mLシリンジ中に25℃で配置され、10lbの力が適用されるとき、少なくとも0.5mLの組成物が25秒未満のうちにシリンジから噴出される。
260.組成物は、次の(C)および(D)のうちの少なくとも1つを満たす、254〜259のいずれか1つに記載の注射用組成物:
(C)該不溶性の有益薬剤複合体は、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する、および
(D)10mgの不溶性の有益薬剤複合体が、1mLのpH7.4のリン酸緩衝食塩水の試験溶液中に分散され、37℃で24時間放置されるとき、試験溶液中に溶解した有益薬剤の量は、10mgの不溶性の有益薬剤複合体中、有益薬剤の50%以下である。
261.−ビヒクルの5重量%〜40重量%の量で存在し、ポリラクチドおよびポリ(乳酸‐co‐グリコール酸)から選択される生分解性重合体と、
−ビヒクルの95重量%〜60重量%の量で存在し、安息香酸ベンジルを含む液体疎水性溶媒を含むビヒクル、および、
−有益薬剤を含む固体複合体であって、ビヒクル中で不溶性でありビヒクル中に分散され、かつプロタミンを含む複合体、
を含む、254〜260のいずれか1つに記載の注射用組成物。
262.有益薬剤複合体は、二価金属またはその塩を含む、254〜261のいずれか1つに記載の注射用組成物。
263.二価金属は、Zn2+、Mg2+、およびCa2+から選択される、262に記載の注射用組成物。
264.有益薬剤複合体は、電荷中性粒子の形態である、254〜263のいずれか1つに記載の注射用組成物。
265.生分解性重合体は、イオン性末端基を含む、254〜264のいずれか1つに記載の注射用組成物。
266.組成物は、エマルションまたはゲルでない、254〜265のいずれか1つに記載の注射用組成物。
267.有益薬剤は、ペプチドである、254〜266のいずれか1つに記載の注射用組成物。
268.有益薬剤は、成長ホルモンである、254〜266のいずれか1つに記載の注射用組成物。
269.療法によるヒトまたは動物の身体の治療の方法に使用するための、254〜268のいずれか1つに記載の注射用組成物。
270.注射用組成物を作製する方法であって、
−生分解性重合体および液体疎水性溶媒を混合してビヒクルを形成することであって、当該ビヒクルは、ビヒクルの5重量%〜40重量%の量での生分解性重合体と、ビヒクルの95重量%〜60重量%の量での液体疎水性溶媒を含むこと、および、
−ビヒクル中に固体複合体を分散させることであって、当該複合体は有益薬剤を含み、かつ複合体はビヒクル中に不溶性であること、
を含む、方法。
271.270に記載の方法によって得られる、注射用組成物。
272.複合体を作製する方法であって、
タンパク質およびペプチドのうちの少なくとも1つを、カチオン性錯化剤と、8よりも大きいpHで接触させて、複合体を形成することを含む、方法。
273.カチオン性錯化剤は、プロタミン、ポリリジン、ポリアルギニン、およびポリミキシンから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、272に記載の方法。
274. 複合体を作製する方法であって、
タンパク質およびペプチドのうちの少なくとも1つを、アニオン性錯化剤と、3未満のpHで接触させて、複合体を形成することを含む、方法。
275.アニオン性錯化剤は、カルボキシメチルセルロース、ポリアデノシン、およびポリチミンから選択される少なくとも1つのメンバーを含む、274に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は、後に続く発明の説明において、注記される複数の非限定的な図面を参照して更に説明される。
図1】本明細書に開示される注射用の生分解性薬物送達デポーを含む、注射用デポー組成物を利用して行われた、体内実験(Sprague−Dawleyラット)についての用量正規化群平均rhGH血清プロフィールを示すグラフ。
図2-1】次の薬物送達デポー試験群に対する6匹の動物の各々について、経時的にプロットした血清rhGH濃度のグラフを示す:水溶液中の非錯化rhGH。
図2-2】次の薬物送達デポー試験群に対する6匹の動物の各々について、経時的にプロットした血清rhGH濃度のグラフを示す:水性培地中に懸濁させたrhGH−プロタミン複合体。
図2-3】次の薬物送達デポー試験群に対する6匹の動物の各々について、経時的にプロットした血清rhGH濃度のグラフを示す:安息香酸ベンジル(BB)中のrhGH−プロタミン複合体。
図2-4】次の薬物送達デポー試験群に対する6匹の動物の各々について、経時的にプロットした血清rhGH濃度のグラフを示す:イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB):BBビヒクル中のrhGH−プロタミン複合体。
図2-5】次の薬物送達デポー試験群に対する6匹の動物の各々について、経時的にプロットした血清rhGH濃度のグラフを示す:BB:ポリ乳酸(PLA)中のrhGH−プロタミン複合体ビヒクル。
図2-6】次の薬物送達デポー試験群に対する6匹の動物の各々について、経時的にプロットした血清rhGH濃度のグラフを示す:SAIB:BB:PLビヒクル中のrhGH−プロタミン複合体。
図3】SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中、1%スクロース(w/w)およびプロタミン−亜鉛(噴霧乾燥)を含む2.5mg/mL IFNα2a製剤の皮下注射後の、96時間の期間にわたる個々のラットにおけるIFN−α2a血清濃度を示すグラフ。IFN−α2a有益薬剤は、亜鉛およびプロタミンとの有益薬剤複合体として提供される。
図4】SAIB/BB/PLGA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中、1%スクロース(w/w)およびプロタミン−亜鉛(噴霧乾燥)を含む2.5mg/mL IFNα2a製剤の皮下注射後の、96時間の期間にわたる個々のラットにおけるIFN−α2a血清濃度を示すグラフ。IFN−α2a有益薬剤は、亜鉛およびプロタミンとの有益薬剤複合体として提供される。
図5図3および4に参照される製剤についての経時的な平均血清濃度を示すグラフ。
図6】SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中、1%スクロースを含む20mg/mL IFNα2a−プロタミン(1:0.3m/m)製剤の50μLSCボーラス後の、経時的な個々のラットにおけるIFNα2a血清濃度を示すグラフ。血清濃度は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を介して決定された。
図7】SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中、20mg/mL IFNα2a、1%CMC、1%スクロースの50μLSCボーラス後の、経時的な個々のラットにおけるIFNα2a血清濃度を示すグラフ。血清濃度は、ELISAを介して決定された。IFN−α2a有益薬剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)との有益薬剤複合体として提供される。
図8】SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中、スクロースを含む40mg/mL IFNα2a−プロタミン製剤を使用した2mg/kgでの投薬後の、経時的な個々の霊長類におけるIFNα2a血清濃度を示すグラフ。
図9】SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中、スクロースを含む40mg/mL IFNα2a−CMC製剤を使用した2mg/kgでの投薬後の、経時的な個々の霊長類におけるIFNα2a血清濃度を示すグラフ。
図10図8および9に参照される製剤に対する、ELISAおよび抗ウイルス活性測定法(抗Viral Assay)(AVA)によって決定した、経時的な平均IFNα2a血清濃度を示すグラフ。
図11】霊長類において送達されたヌクレオシド類似体プロドラッグについての経時的な平均血清濃度を示すグラフ。
図12図11のヌクレオシド類似体プロドラッグの活性な代謝産物についての経時的な平均血清濃度を示すグラフ。
図13】ミニブタにおいて送達されたグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)類似体についての同等の用量血漿プロフィールを示すグラフ。
図14】種々のBB:重合体(80:20)ビヒクル中に分散した遊離タンパク質を含有するデポーから送達された(A)、および種々のBB:重合体(80:20)ビヒクル中に分散したrhGH:プロタミン複合体を含有するデポーから送達された(B)rhGHについての、ラットにおける平均血清プロフィールを示すグラフを提供する。
図15】(パネルA〜E)図14に示される製剤についての遊離rhGH対錯化rhGHとの、製剤内の血清プロフィールの比較を示すグラフを提供する。
図16】乳酸塩開始PLA、15.1kDa、またはドデカノール開始PLA、13.9kDaのいずれかを含有するビヒクル中で試験し、非錯化(遊離)rhGH製剤と比較した、3つのrhGH複合体についての結果を示すグラフを提供する。(A)BB中のrhGHの全ての型、(B)BB:乳酸塩開始PLA 80:20中のrhGHの全ての型、(C)BB:ドデカノール開始PLA 80:20中のrhGHの全ての型。
図17図16に記載される各製剤についての平均平均滞留時間(MRT)を示すグラフを提供する。
図18】実施例11および12についての、MRTへの重合体−複合体相互作用の部分的寄与を示す。
図19】SAIB/BB/PLAビヒクル中の、クラウド形成の開始の写真を提供する。23G普通針を使用して、およそ0.5mLのSAIB/BB/PLA(LA開始)(8:72:20)ビヒクルを、PH7.4および37℃のPBS緩衝液中に注射した。最初の写真を、注射の開始後、約10秒時点で撮った。
図20】0.5mL注射の完了後、約60秒で撮った、図19に図示されるビヒクルの第2の写真を提供する。
図21】37℃での経時的な、クラウド形成ビヒクル製剤の粘度安定性を示すグラフを提供する。粘度は、次のビヒクル製剤について特徴付けられる:SAIB/BB/PLA(8/72/20)、SAIB/BB/BA/PLA(20/60/10/10)、SAIB/BB/EtOH/PLGA 65:35(8/67/5/20)、BB/BA/PLA(70/10/20)。
図22図21に記載されるビヒクル製剤についての、温度の関数としての粘度安定性を示すグラフを提供する。
図23】実施例19および20に特定される処置条件の各々についての、経時的な平均血清濃度を示すグラフを提供する。
図24】BA:dd−PLGAおよびBA:ga−PLGAビヒクルについての、平均用量正規化rhGH血清プロフィールを示すグラフを提供する。
図25】EB:dd−PLGAおよびEB:ga−PLGビヒクルについての、平均用量正規化rhGH血清プロフィールを示すグラフを提供する。
図26】最大5日間のhGHの制御送達のための、異なる錯化剤からのhGHの溶解速度を示すグラフを提供する。
図27】最大5日間のhGHの制御送達のための、異なる錯化剤からのhGHの溶解速度を示すグラフを提供する。
図28】種々のhGH粉末製剤についての、経時的な累積溶解%を示すグラフを提供する。
図29】次の製剤中のペプチド有益薬剤(エクセナチド)についての、経時的な血清濃度を示すグラフを提供する:SAIB/BB/la−PLA(8/72/20)中のエクセナチド:プロタミン1:2(m/m)、凍結乾燥、9.5mg用量、ならびにエクセナチド:プロタミン1:2(m/m)、噴霧乾燥、9.5mg用量、SAIB/BB/la−PLA(8/72/20)メチオニンおよびポリソルベート80。
図30】Zn2+およびプロタミンを含む電荷中性化ペプチド有益薬剤複合体またはタンパク質有益薬剤複合体を含む、本開示による組成物の一実施形態の図示を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
本明細書で使用されるとき、「不溶性の成分」という用語は、本明細書で定義される不溶性の有益薬剤および/または不溶性の有益薬剤複合体を含む、本明細書に記載される組成物の成分を指す。
【0008】
本明細書で使用されるとき、「不溶性の有益薬剤」という用語は、完全にまたは実質的に不溶性である有益薬剤を指す。この文脈で使用される「実質的に不溶性」という用語は、有益薬剤の少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%が、25℃で、ビヒクル中で不溶性であることを意味する。換言すれば、不溶性の有益薬剤は、ビヒクル中に分散され得、かつビヒクル中に有意に溶解しない、有益薬剤である。不溶性の有益薬剤には、例えば、本明細書に記載されるビヒクル組成物中で実質的に不溶性である分子が含まれてもよい。不溶性の有益薬剤には、例えば、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する有益薬剤が含まれてもよい。
【0009】
本明細書で使用されるとき、「不溶性の有益薬剤複合体」という用語は、ビヒクル中で完全にまたは実質的に不溶性である有益薬剤複合体を指す。この文脈で使用される「実質的に不溶性」という用語は、有益薬剤複合体の少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%が、25℃で、ビヒクル中で不溶性であることを意味する。例えば、不溶性の有益薬剤複合体は、ビヒクル中に分散され得、かつビヒクル中に有意に溶解しない複合体である。不溶性の有益薬剤複合体には、例えば、電荷中性化複合体が含まれてもよい。不溶性の有益薬剤複合体には、例えば、25℃で、ビヒクル中1mg/mL未満の溶解度を有する有益薬剤が含まれてもよい。
【0010】
「電荷中性化複合体」という用語は、本明細書で、有益薬剤と、関連する分子、金属、対イオン等との間の非共有結合的な電荷ベースの相互作用の結果として形成され、正味の電荷を有さないかまたは正味の電荷を実質的に有さない、複合体を指すように使用される。有益薬剤の塩を含む、電荷中性化された有益薬剤が、この定義内に含まれる。
【0011】
本明細書で使用されるとき、「ビヒクル」という用語は、本明細書に記載される有益薬剤の不在下で生分解性重合体および疎水性溶媒を含む、組成物を意味する。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「ゼロせん断粘度」という用語は、ゼロせん断速度での粘度を意味する。当業者であれば、円錐平板粘度計(例えば、BrookfieldモデルDV−III+(LV))を使用して、低せん断速度(例えば、1秒−1〜7秒−1前後)での粘度を測定し、次いで、粘度対せん断速度のプロットを、目的の温度でのゼロのせん断速度まで外挿することによって、ゼロせん断粘度を決定可能であろう。
【0013】
本明細書で使用されるとき、「エマルション」という用語は、連続相および分散相を含む、2つ以上の非混和性液の安定な混合物を意味する。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「乳化剤」という用語は、本明細書に記載される生分解性組成物中に含まれるとき、エマルションを形成する傾向がある薬剤を意味する。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「有益薬剤」という用語は、単独でまたは他の活性もしくは不活性成分と組み合わせてのいずれかで、被検体、例えば、ヒトまたは非ヒト動物への投与時に所望の薬理効果を提供する、薬剤、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸(ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの類似体を含む)、または小分子薬を意味する。有益薬剤の前駆体、誘導体、類似体、およびプロドラッグが、上の定義に含まれる。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「非水性」という用語は、水が実質的にない材料を指す。非水性組成物は、約2重量%未満、約1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満等、約5%未満の含水率を有する。本組成物は、典型的には非水性である。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「バースト効果」および「バースト」という用語は、組成物の投与後に、有益薬剤の組成物からの迅速な初期放出を意味するように交換可能に使用され、それは後続の比較的安定な制御放出期間から区別され得る。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「シリンジ通過性」という用語は、注射前に容器から移されるとき、組成物が皮下針を容易に通過する能力を説明する。シリンジ通過性は、例えば、単位時間当たりに、既知の量の組成物を、シリンジおよび針を通じて移動させるために要求される力を測定することによって定量化されてもよい。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「注射可能性」という用語は、注射中の組成物の性能を指し、注射に要求される圧力または力、流動の均一性、吸引の質、および目詰まりのなさ等の要因を含む。注射可能性は、例えば、単位時間当たりに、既知の量の組成物を、シリンジおよび針を通じて移動させるために要求される力を測定することによって定量化されてもよい。
【0020】
本明細書で交換可能に使用される「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸の重合型を指し、それは、コードアミノ酸および非コードアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されたまたは誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含む可能性がある。この用語は、N末端メチオニン残基を含むまたは含まない、異種性リーダー配列および天然リーダー配列との融合である、異種性アミノ酸配列との融合タンパク質;免疫学的にタグされた(immunologically tagged)タンパク質;検出可能な融合パートナーとの融合タンパク質、例えば、融合パートナーとして蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等を含む融合タンパク質等を含むが、これらに限定されない融合タンパク質を含む。
【0021】
「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」、および「ポリヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの重合型、または2つの天然産の核酸の場合と同様の配列特異的様態で、天然産の核酸とハイブリッド形成することができる、例えば、ワトソン・クリック塩基対形成相互作用に関与することができる、合成的に生成される化合物を指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有してもよく、既知であれ未知であれ、任意の機能を果たしてもよい。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、制御領域、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。
【0022】
「速度制御クラウド」、「速度制御薄膜」、および「速度制御表層」という用語は、本明細書で、製剤表面および水性環境で形成され、実質的な液体コアを囲み、製剤の実質的な液体コアから水性環境への、有益薬剤に対する放出速度制御効果を有する、製剤の速度制御要素を指すように交換可能に使用される。相反転、相分離、または水性環境中のゲル化プロセスによって形成される重合マトリックスとは異なり、速度制御クラウドまたは薄膜は、特記すべき物理的強度または機械的構造を有さない。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「生物学的利用能」は、投与後に体循環に入る有益薬剤の用量の分率を指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「平均滞留時間(MRT)」は、所与の用量の分子が体内に存在する平均総時間を指し、それは、一次モーメント曲線下面積(AUMC)/曲線下面積(AUC)
および
として算出され得、式中、C(t)は、時間の関数としての血漿(または血清もしくは血液)濃度である。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「ゲル」という用語は、比較的小さい、例えば、1以下の、G”/G’比を有する組成物を指し、式中、G”=損失弾性率であり、G’=貯蔵弾性率である。逆に、「非ゲル」、「ゲルでない」等の用語は、比較的大きいG”/G’比、例えば、10以上のG”/G’比を有する組成物を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「ゲル化」、「ゲル形成」等の用語は、(例えば、37℃で14日間の期間にわたるエイジング後に)比較的小さい、例えば、1以下のG”/G’比を有する組成物を指し、式中、G”=損失弾性率であり、G’=貯蔵弾性率である。逆に、「非ゲル化」、「非ゲル形成」等の用語は、本明細書で、(例えば、37℃で14日間の期間にわたるエイジング後に)比較的大きいG”/G’比、例えば、10以上のG”/G’比を有する組成物を指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「物理的安定性」は、物質、例えば、化合物または複合体の、物理的変化に抵抗する能力を指す。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「化学的安定性」は、物質、例えば、化合物または複合体の、化学的変化に抵抗する能力を指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「グルカゴン様−ペプチド−1」および「GLP−1」という用語は、GLP−1活性を有する分子を指す。当業者は、米国公開出願第2010/0210505号に開示されるように、任意の所与の部分がGLP−1活性を有するかどうかを決定することができ、それは参照により本明細書に組み込まれる。「GLP−1」という用語は、天然GLP−1(GLP−1(7−37)OHまたはGLP−1(7−36)NH)、GLP−1類似体、GLP−1誘導体、GLP−1生物学的活性断片、伸長GLP−1(例えば、特に、記載される伸長グルカゴン様ペプチド−1類似体に関して、参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO03/058203号を参照されたい)、1つまたは2つのシステイン残基を、参照により本明細書に組み込まれるWO2004/093823号に記載される特定の位置で含む、エキセンジン−4、エキセンジン−4類似体、およびエキセンジン−4誘導体を含む。
【0030】
本明細書に記載されるビヒクル成分または成分を特徴付けるために使用されるとき、「w/w%」という用語は、ビヒクルの重量%を指し、例えば、SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)は、ビヒクルの8重量%のSAIB、ビヒクルの72重量%のBB、およびビヒクルの20重量%のPLAを含むビヒクルを特定する。
【0031】
本発明が更に記載される前に、本発明が、記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、当然のことながら異なり得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が、特定の実施形態の説明を目的とするにすぎず、限定するようには意図されないこともまた理解されたい。
【0032】
値の範囲が提供される場合、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り下限の単位の小数第1位までの、その範囲の上限と下限の間の、かつその指定範囲における任意の他の指定されたまたは介在する値である各介在値(intervening value)は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、指定範囲における任意の具体的な除外限度を条件として、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、それもまた本発明内に包含される。指定範囲が限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限度の一方または両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
【0033】
別途規定されない限り、本明細書で使用される全ての学術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の専門家によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および物質と同様または同等のいずれの方法および物質もまた、本発明の実践または試験で使用することができるが、好ましい方法および物質が今は記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用される関連となる方法および/または物質を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、対応する複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。故に、例えば、「不溶性の有益薬剤複合体(an insoluble beneficial agent complex)」への言及は、複数のかかる複合体を含み、「注射用デポー組成物(the injectable depot composition)」への言及は、1つ以上の注射用デポー組成物およびそれらの均等物への言及を含み、その他も同様である。特許請求の範囲は、いずれの任意要素を除外するように起草され得ることに更に留意する。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連する「のみ(solely)」、「のみ(only)」等の排他的専門用語の使用、または「否定的」限定の使用のために、先立つ記載を提供することが意図される。
【0035】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前にそれらを開示するためのみに提供される。本明細書のいかなる部分も、本発明が、先願発明に基づいて、かかる刊行物に先行する権利を有さないという承認として解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の刊行物の日付と異なる場合があり、それらは独立して確認される必要があり得る。
【0036】
詳細な説明
上述のように、本開示は、ビヒクル、例えば、単相ビヒクルを含む、生分解性薬物送達組成物、例えば、注射用生分解性薬物送達デポー組成物、およびビヒクル中に分散した、有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を提供する。幾つかの実施形態では、ビヒクルは、ビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で存在する生分解性重合体、およびビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で存在する疎水性溶媒(または疎水性溶媒の混合物)を含む。ビヒクルに加えて、組成物は、ビヒクル中に分散した、有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を含む。幾つかの実施形態では、生分解性組成物は、25℃で、1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有し、かつエマルションまたはゲルでない。
【0037】
生体適合性−生分解性重合体
多様な重合体は、本開示における使用に好適であり得るが、それらが生体適合性かつ生分解性であることを条件とする。例えば、好適な重合体には、単一重合体、ブロック−共重合体、およびランダム共重合体が含まれてもよいが、これらに限定されない。好適な重合体には、選択された溶媒または溶媒組み合わせ中、少なくとも約20重量%、30重量%、または40重量%の溶解度を有する、重合体または重合体の組み合わせが含まれる。幾つかの実施形態では、好適な重合体には、親水性領域および疎水性領域の両方を有する重合体、例えば、疎水性成分および親水性成分から構成されるAB型ブロック共重合体が含まれる。かかる重合体は、重合体の両親媒性特徴の結果として、水性環境に曝露されるときミセルを形成する傾向を有し得る。好適な重合体には、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、上記に関与する2つ以上の単量体の任意の組み合わせを含む共重合体、例えば、ラクチド、グリコリド、およびε−カプロラクトンの三元重合体、ならびに上記の2つ以上の任意の組み合わせを含む混合物が含まれてもよいが、これらに限定されない。換言すれば、好適な重合体にはまた、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、上記に関与する2つ以上の単量体の任意の組み合わせを含む共重合体、例えば、乳酸、グリコール酸、およびε−カプロラクトンの三元重合体、ならびに上記の2つ以上の任意の組み合わせを含む混合物が含まれてもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、生分解性重合体は、ポリ乳酸(PLA)、例えば、イオン性末端基を含むPLA(例えば、酸末端化PLAにおける、例えば、酸末端基)である。酸末端基PLAには、例えば、本明細書に記載される乳酸塩開始PLAが含まれる。幾つかの実施形態では、PLAは、非イオン性末端基(例えば、エステル末端化PLAにおける、例えば、エステル末端基)を含む。エステル末端基PLAには、本明細書に記載されるドデカノール開始(dd)PLAが含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、PLAは、dl−PLAである。他の実施形態では、生分解性重合体は、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、例えば、dl−PLGAである。幾つかの実施形態では、PLGAは、イオン性末端基、例えば、酸末端基を含む。酸末端基PLGAには、本明細書に記載されるグリコール酸塩開始(ga)PLGが含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、PLGAは、非イオン性末端基、例えば、エステル末端基を含む。エステル末端基PLGAには、本明細書に記載されるドデカノール開始PLGAが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、重合体がポリカプロラクトンである場合、ポリカプロラクトンは、ポリ(ε)カプロラクトンである。
【0039】
生体適合性の生分解性重合体は、ビヒクル中に、ビヒクルの約5重量%〜約40重量%、例えば、ビヒクルの約6重量%〜約35重量%、約7重量%〜約30重量%、約8重量%〜約27重量%、約9重量%〜約26重量%、約10重量%〜約25重量%、約11重量%〜約24重量%、約12重量%〜約23重量%、約13重量%〜約22重量%、約14重量%〜約21重量%、約15重量%〜約20重量%、約16重量%〜約19重量%の範囲の量、または約17重量%で存在する。幾つかの実施形態では、重合体は、ビヒクルの約20重量%の量で存在する。
【0040】
幾つかの実施形態では、生体適合性の生分解性重合体は、約2kD〜約20kD、例えば、約2kD〜約5kD、約2kD〜約10kD、または約2kD〜約15kDの重量平均分子量を有する。更なる実施形態は、約5kD〜約15kD、例えば、約10kDの重量平均分子量を有する生体適合性の生分解性重合体を含む。
【0041】
溶媒
本開示における使用に好適な疎水性溶媒は、本明細書に記載されるビヒクルの重合体成分を可溶化することが可能である、疎水性溶媒である。疎水性溶媒は、水中で不溶性または実質的に不溶性であるとして特徴付けることができる。例えば、好適な疎水性溶媒は、例えば、25℃で測定されるとき、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満の水中溶解度を有する。好適な疎水性溶媒はまた、25℃で、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下の水中溶解度を有するものとして特徴付けられてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、好適な疎水性溶媒は、25℃で、約1%〜約7%、約1%〜約6%、約1%〜約5%、約1%〜約4%、約1%〜約3%、および約1%〜約2%の水中溶解度を有する。好適な疎水性溶媒はまた、25℃で、水が限定的な溶解度を有する溶媒、例えば、水が10重量%未満、5重量%未満、または1重量%未満の溶解度を有する溶媒として特徴付けられてもよい。幾つかの実施形態では、好適な疎水性溶媒は、ビヒクルの重合体成分を可溶化し、本明細書に記載される好適な量で重合体成分と組み合わされるとき、低粘度、すなわち、25℃で1,200センチポアズ未満のゼロせん断粘度を有するビヒクルをもたらす溶媒である。
【0042】
幾つかの実施形態では、好適な溶媒には、ベンジルアルコール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミル、および安息香酸ベンジルを含むが、これらに限定されない安息香酸の誘導体が含まれる。
【0043】
幾つかの実施形態では、安息香酸ベンジルが、本開示の生分解性送達組成物において使用するための疎水性溶媒として選択される。
【0044】
好適な溶媒は、次の中からまたは次のうちの2つ以上の組み合わせの中から選択される、単一溶媒であってもよい:ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、およびエタノール。
【0045】
溶媒が疎水性溶媒である場合、それは、1つ以上の追加的溶媒、例えば、1つ以上の疎水性溶媒および/または1つ以上の極性/親水性溶媒と組み合わせて使用されてもよい。
【0046】
幾つかの実施形態では、組成物は、任意の追加的溶媒を含むことなく、本明細書に記載される単一の疎水性溶媒を含む。幾つかの実施形態では、単一の疎水性溶媒は、安息香酸ベンジルであり、他の実施形態では、単一の疎水性溶媒は、ベンジルアルコール以外である。
【0047】
溶媒が極性/親水性溶媒である場合、それは、開示される組成物中で、疎水性溶媒と組み合わせてのみ使用され、疎水性溶媒に対して比較的少量、例えば、ビヒクルの5重量%未満(例えば、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満)で存在する。例えば、極性/親水性溶媒は、ビヒクル中に、ビヒクルの約5重量%〜約1重量%(例えば、約4重量%〜約1重量%、約3重量%〜約1重量%、または約2重量%〜約1重量%)の量で存在してもよい。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、比較的少量の極性/親水性溶媒、例えば、エタノールの、ビヒクル組成物へ追加は、重合体の種類、分子量、および相対的な疎水性/親水性の点で、開示される組成物中で利用され得る重合体の範囲を広げ得ると考えられる。
【0048】
疎水性溶媒(または疎水性溶媒の組み合わせ)は、ビヒクル中に、ビヒクルの約95重量%〜約60重量%、例えば、ビヒクルの約94重量%〜約61重量%、約93重量%〜約62重量%、約92重量%〜約63重量%、約91重量%〜約64重量%、約90重量%〜約65重量%、約89重量%〜約66重量%、約88重量%〜約67重量%、約87重量%〜約68重量%、約86重量%〜約69重量%、約85重量%〜約70重量%、約84重量%〜約71重量%、約83重量%〜約72重量%、約82重量%〜約73重量%、約81重量%〜約74重量%、約80重量%〜約75重量%、約79重量%〜約76重量%、または約78重量%〜約77重量%で存在する。幾つかの実施形態では、疎水性溶媒(またはの組み合わせ疎水性溶媒)は、ビヒクル中に、ビヒクルの約95重量%〜約90重量%、約95重量%〜約85重量%、約95重量%〜約80重量%、約95重量%〜約75重量%、約95重量%〜約70重量%、約95重量%〜約65重量%、または約95重量%〜約60重量%で存在する。幾つかの実施形態では、疎水性溶媒は、ビヒクルの約80重量%の量で存在する。他の実施形態では、疎水性溶媒は、ビヒクルの約72重量%の量で存在する。
【0049】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される生分解性薬物送達組成物は、親水性溶媒がない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される生分解性送達組成物は、チキソトロピー薬剤、例えば、2〜6個の炭素分子を含有する低級アルカノールを含まない。
【0050】
有益薬剤
多様な有益薬剤は、本明細書に開示される生分解性送達組成物を使用して送達されてもよい。送達され得る有益薬剤の一般のクラスには、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの類似体、抗原、抗体、およびワクチン;ならびに低分子量化合物が含まれる。
【0051】
幾つかの実施形態では、有益薬剤は、ビヒクル中で少なくとも実質的に不溶性、例えば、ビヒクル中、10mg/mL未満、5mg/mL未満、1mg/mL未満、0.5mg/mL未満、0.3mg/mL未満、0.2mg/mL未満、または0.1mg/mL未満の溶解度である。
【0052】
本明細書に開示される生分解性送達組成物を使用して送達され得る有益薬剤には、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経効果器接合部位、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化系および排泄系、ヒスタミン系、ならびに中枢神経系に作用する薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
好適な有益薬剤は、例えば、化学療法剤、エピジェネティック剤、プロテアソーム阻害剤、アジュバント薬、制吐薬、食欲刺激薬、抗消耗(anti−wasting)剤、および強力オピオイドから選択されてもよい。
【0054】
好適な有益薬剤はまた、とりわけ、例えば、抗悪性腫瘍剤、心臓血作用薬、腎臓作用薬、胃腸薬、リウマチ薬、および神経作用薬(neurological agents)から選択されてもよい。
【0055】
有益薬剤としてのタンパク質、ポリペプチド、およびペプチド
開示される製剤中で有用なタンパク質には、例えば、サイトカインおよびそれらの受容体等の分子、ならびにサイトカインまたはそれらの受容体を含むキメラタンパク質が含まれてもよく、例えば、腫瘍壊死因子アルファおよびベータ、それらの受容体およびそれらの誘導体;レニン;ヒト成長ホルモン、ウシ長ホルモン、メチオン(methione)−ヒト成長ホルモン、des−フエニルアラニンヒト成長ホルモン、およびブタ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子(GRF);副甲状腺および脳下垂体ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;ヒト膵臓ホルモン放出因子;リポタンパク質;コルヒチン;プロラクチン;コルチコトロピン;甲状腺刺激ホルモン;オキシトシン;バソプレッシン;ソマトスタチン;リプレシン;パンクレオザイミン;ロイプロリド;アルファ−1−アンチトリプシン;インスリンA−鎖;インスリンB−鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH);LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織、およびフォンヴィレブランド因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺胞界面活性物質;組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)以外のプラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ;ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;エンケファリナーゼ;RANTES(活性時に調節され、通常T細胞により発現され、分泌される(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−アルファ);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;リラキシンA−鎖;リラキシンB−鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;絨毛性ゴナドトロピン;ゴナドトロピン放出ホルモン;ウシソマトトロピン;ブタソマトトロピン;ベータ−ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンもしくは成長因子のための受容体;インテグリン;タンパク質AもしくはD;リウマトイド因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5、もしくはNT−6)等の神経栄養因子、またはNGF−β等の神経成長因子;血小板由来成成長因子(PDGF);酸性FGFおよび塩基性FGF等の線維芽細胞成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、もしくはTGF−β5を含む、TGF−アルファおよびTGF−ベータ等のトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CD−3、CD−4、CD−8、およびCD−19等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨形成誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン−アルファ(例えば、インターフェロンα2Aもしくはインターフェロンα2B)、−ベータ、−ガンマ、−ラムダ、およびコンセンサスインターフェロン等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF、およびG−CSF;インターロイキン(ILs)、例えば、IL−1〜IL−10;スーパーオキシドディスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;例えば、HIV−1エンベロープ糖タンパク質の一部、gp120、gp160、もしくはそれらの断片等のウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;プロスタグランジン等の稔性抑制因子;稔性促進因子;調節性タンパク質;イムノアドヘシン等の抗体およびキメラタンパク質;これらの化合物の前駆体、誘導体、プロドラッグ、および類似体、ならびにこれらの化合物の薬学的に許容される塩、もしくはそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグ、および類似体が含まれる。
【0056】
好適なタンパク質またはペプチドは、天然または組換えであってもよく、例えば、融合タンパク質を含んでもよい。
【0057】
幾つかの実施形態では、タンパク質は、ヒト成長ホルモン(hGH)、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモン、メチオン−ヒト成長ホルモン、des−フエニルアラニンヒト成長ホルモン、およびブタ成長ホルモン等の成長ホルモン;インスリン、インスリンA−鎖、インスリンB−鎖、およびプロインスリン;または血管内皮成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、ならびにインスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II)等の成長因子である。
【0058】
本明細書に開示される生分解性送達組成物中で有益薬剤として使用するための好適なペプチドには、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)ならびにそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグ、および類似体が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
更に、好適なタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグ、もしくは類似体は、有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を、例えば、金属または本明細書に記載される他の沈殿剤および/もしくは安定剤との錯化によって形成することが可能なものである。
【0060】
幾つかの実施形態では、有益薬剤は、成長ホルモンを含み、疎水性溶媒は、ベンジルアルコールを含まない。幾つかの実施形態では、有益薬剤は、成長ホルモンを含み、疎水性溶媒は、安息香酸エチルを含まない。
【0061】
有益薬剤としての核酸
核酸有益薬剤は、核酸、ならびにそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグ、および類似体、例えば、治療用ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの類似体;治療用オリゴヌクレオチド;ならびに治療用ポリヌクレオチドを含む。この群から選択される有益薬剤は、抗癌剤および抗ウイルス剤として特に使用されてもよい。好適な核酸有益薬剤には、例えば、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、アプタマー、およびsiRNAが含まれてもよい。好適なヌクレオシド類似体の例としては、シタラビン(araCTP)、ゲムシタビン(dFdCTP)、およびフロクスウリジン(FdUTP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
他の有益薬剤化合物
多様な他の有益薬剤化合物が、本明細書に開示される組成物中に使用されてもよい。好適な化合物には、次の薬物標的のうちの1つ以上を対象とする化合物が含まれてもよいが、これらに限定されない:クリングルドメイン、カルボキシペプチダーゼ、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、グリコシラーゼ、ロドプシン様ドーパミン受容体、ロドプシン様アドレノセプター、ロドプシン様ヒスタミン受容体、ロドプシン様セロトニン受容体、ロドプシン様短鎖ペプチド受容体、ロドプシン様アセチルコリン受容体、ロドプシン様ヌクレオチド様受容体、ロドプシン様脂質様リガンド受容体、ロドプシン様メラトニン受容体、メタロプロテアーゼ、輸送体ATPase、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、A/Gシクラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、スルホニルウレア受容体、他の輸送体(例えば、ドーパミン輸送体、GABA輸送体1、ノルエピネフリン輸送体、カリウム−輸送ATPase α−鎖1、ナトリウム−(カリウム)−クロライド共輸送体2、セロトニン輸送体、シナプス小胞アミン輸送体、およびチアジド感受性ナトリウム−クロライド共輸送体)、電気化学ヌクレオシド輸送体、電位開口型イオンチャネル、GABA受容体(Cys−Loop)、アセチルコリン受容体(Cys−Loop)、NMDA受容体、5−HT3受容体(Cys−Loop)、リガンド開口型イオンチャネルGlu:カイナイト、AMPA Glu受容体、酸感受性イオンチャネルアルドステロン、リアノジン受容体、ビタミンKエポキシドレダクターゼ、MetGluR様GABA受容体、内向き整流性K+チャネル、NPC1L1、MetGluR様カルシウム感受性受容体、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、チロシン3−ヒドロキシラーゼ、アルドースレダクターゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼ、リボヌクレオシドレダクターゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、IMPデヒドロゲナーゼ、チオレドキシンレダクターゼ、ジオキシゲナーゼ、イノシトールモノホスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、ペプチジルプロリルイソメラーゼ、チミジル酸シンターゼ、アミノトランスフェラーゼ、ファルネシル二リン酸シンターゼ、タンパク質キナーゼ、炭酸脱水酵素、チューブリン、トロポニン、IκBキナーゼ−βの阻害因子、アミンオキシダーゼ、シクロオキシゲナーゼ、シトクロムP450s、チロキシン5−デヨードナーゼ、ステロイドデヒドロゲナーゼ、HMG−CoAレダクターゼ、ステロイドレダクターゼ、ジヒドロオロット酸オキシダーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、輸送体ATPase、トランスロケータ、グリコシルトランスフェラーゼ、核受容体NR3受容体、核受容体:NR1受容体、およびトポイソメラーゼ。
【0063】
幾つかの実施形態では、有益薬剤は、ロドプシン様GPCR、核受容体、リガンド開口型イオンチャネル、電位開口型イオンチャネル、ペニシリン結合タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ様、ナトリウム:神経伝達物質共輸送体ファミリー、II型DNAトポイソメラーゼ、フィブロネクチンIII型、およびシトクロムP450のうちの1つを標的とする化合物である。
【0064】
幾つかの実施形態では、有益薬剤は、抗癌剤である。好適な抗癌剤には、アクチノマイシンD、アレムツズマブ、アロプリノールナトリウム、アミホスチン、アムサクリン、アナストロゾール、Ara−CMP、アスパラギナーゼ、アザシタジン(Azacytadine)、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ビカルチミド(Bicalutimide)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンAおよびB)、ボルテゾミブ、ブスルファン、カンプトテシンナトリウム塩、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、リポソーム化ダウノルビシン、ダカルバジン、デシタビン、ドセタキセル、ドキソルビシン、リポソーム化ドキソルビシン、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、リン酸エトポシド、エキセメスタン、フロクスウリジン、フルダラビン、リン酸フルダラビン、5−フルオロウラシル、フォテムスチン、フルベストラント、ゲムシタビン、ゴセレリン、ヘキサメチレンアミン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、イリノテカン、イキサベピロン、ラパチニブ、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニムスチン、オファツムマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリニツムマブ、ペグアスパルガーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、ペルツズマブ、ピコプラチン、ピポブロマン、プレリキサフォル、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テモゾロミド、テニポシド、6−チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トラスツズマブ、トレオスルファン、トリエチレンメラミン、トリメトレキサート、ウラシル窒素マスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ならびにそれらの類似体、前駆体、誘導体、およびプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。上記の化合物のうちの2つ以上が、本開示の組成物中で組み合わせて使用され得ることに留意すべきである。
【0065】
開示される組成物中で使用するための目的の有益薬剤にはまた、オピオイドおよびその誘導体、ならびにオピオイド受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、例えば、メタドン、ナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、フェンタニル、スフェンタニル、オキシコドン、オキシモルホン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および誘導体が含まれてもよい。
【0066】
幾つかの実施形態では有益薬剤は、低分子量化合物、例えば、約800ダルトン以下の分子量を有する化合物である。幾つかの実施形態では、有益薬剤が低分子量化合物である場合、有益薬剤は、10〜100mg/mL以下、例えば、100mg/mL未満、90mg/mL未満、80mg/mL未満、70mg/mL未満、60mg/mL未満、50mg/mL未満、40mg/mL未満、30mg/mL未満、20mg/mL未満、10mg/mL未満、5mg/mL未満、または1mg/mL未満の水中溶解度を有するものである。
【0067】
幾つかの実施形態では、有益薬剤としての使用に好適な低分子量化合物は、ビヒクル中で少なくとも実質的に不溶性である化合物であり、例えば、ビヒクル中の溶解度は、10mg/mL未満、5mg/mL未満、1mg/mL未満、0.5mg/mL未満、0.3mg/mL未満、0.2mg/mL未満、または0.1mg/mL未満である。
【0068】
幾つかの実施形態では、有益薬剤としての使用に好適な低分子量化合物は、塩型で存在するとき、ビヒクル中で少なくとも実質的に不溶性である化合物であり、例えば、ビヒクル中の溶解度は、10mg/mL未満、5mg/mL未満、1mg/mL未満、0.5mg/mL未満、0.3mg/mL未満、0.2mg/mL未満、または0.1mg/mL未満である。
【0069】
有益薬剤または有益薬剤複合体は、本明細書に開示される生分解性組成物中に、任意の好適な濃度で存在してもよい。好適な濃度は、有益薬剤の効力、有益薬剤の薬物動態半減期等に依存して変動し得る。例えば、有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体は、組成物の約1重量%〜約50重量%の範囲、例えば、組成物の約5重量%〜約45重量%、約10重量%〜約40重量%、約15重量%〜約35重量%、または約20重量%〜約30重量%で存在してもよい。有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体は、約50mg/mL〜約450mg/mL、約100mg/mL〜約400mg/mL、約150mg/mL〜約350mg/mL、または約200mg/mL〜約300mg/mL等の、約10mg/mL〜約500mg/mLの範囲の濃度で存在してもよい。
【0070】
幾つかの実施形態では、有益薬剤は、本明細書で定義される不溶性の有益薬剤、すなわち、本明細書に記載される生分解性薬物送達組成物と組み合わせて使用するために選択されるビヒクル中で完全にまたは実質的に不溶性である、有益薬剤である。換言すれば、有益薬剤の少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%は、25℃で、ビヒクル中で不溶性である。不溶性の有益薬剤は、有益薬剤ビヒクル中に分散され得、かつビヒクル中に有意に溶解しない。不溶性の有益薬剤には、例えば、本明細書に記載されるビヒクル組成物中で実質的に不溶性である分子が含まれてもよい。
【0071】
不溶性の複合体
有益薬剤は、ビヒクル中に分散される、不溶性の有益薬剤複合体、例えば、静電複合体として提供されてもよい。錯化を使用して、有益薬剤の溶解度を低減してもよい。本明細書で先に定義されたように、「不溶性の有益薬剤複合体」という用語は、本明細書に記載される生分解性薬物送達組成物と組み合わせて使用するために選択されるビヒクル中で完全にまたは実質的に不溶性である、有益薬剤複合体を含む。この文脈で使用される「実質的に不溶性の」という用語は、有益薬剤複合体の少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%が、25℃で、ビヒクル中で不溶性であることを意味する。換言すれば、不溶性の有益薬剤複合体は、ビヒクル中に分散され得、かつビヒクル中に有意に溶解しない、複合体である。不溶性の有益薬剤複合体には、例えば、電荷中性化複合体が含まれてもよい。「電荷中性化複合体」という用語は、本明細書で、有益薬剤と、関連する分子、金属、対イオン等との間の非共有結合的な電荷ベースの相互作用の結果として形成され、正味の電荷を有さないかまたは正味の電荷を実質的に有さない、複合体を指すように使用される。有益薬剤の塩を含む、電荷中性化された有益薬剤が、この定義内に含まれる。
【0072】
この錯化は、例えば、組成物中の有益薬剤の化学的安定性および物理的安定性に寄与することによって、例えば、有益薬剤の分解を低減すること、または重力に起因する沈殿の低減を示す複合体を提供することによって、本明細書で考察される、開示される組成物の有益な放出特性に寄与する。幾つかの実施形態では、不溶性の有益薬剤複合体は、有益薬剤と組み合わされるとき、不溶性の複合体の形成を誘導する、沈殿剤および/または安定剤を含めることによって形成される。不溶性の有益薬剤複合体は、例えば、有益薬剤と、1つ以上の沈殿剤および/または安定剤との間で起こる、静電相互作用からもたらされてもよい。幾つかの実施形態では、不溶性の有益薬剤複合体は、電荷中性化される。錯化はまた、錯化の不在下で有益薬剤と、製剤の他の成分、例えば、重合体との間で生じ得る、化学共役(chemical conjugation)のレベルを低減し得る。
【0073】
本開示による不溶性の有益薬剤複合体は、次のように特徴付けられてもよい:10mgの不溶性の有益薬剤複合体が、1mLのpH7.4のリン酸緩衝食塩水の試験溶液中に分散され、37℃で24時間放置されるとき、試験溶液中に溶解した有益薬剤の量は、10mgの不溶性の有益薬剤複合体中、有益薬剤の60%未満、例えば、5mgの不溶性の有益薬剤複合体中、有益薬剤の50%未満、5mgの不溶性の有益薬剤複合体中、有益薬剤の40%未満、5mgの不溶性の有益薬剤複合体中、有益薬剤の30%未満、または5mgの不溶性の有益薬剤複合体中、有益薬剤の20%未満である。
【0074】
幾つかの実施形態では、沈殿剤または安定剤は、荷電種、例えば、荷電分子、金属イオン、または金属イオンの塩型である。当業者であれば、金属イオンの塩型はそれ自体、荷電種でなく、むしろ、解離時に荷電種の源を提供することを理解するであろう。例えば、幾つかの実施形態では、沈殿剤および/または安定剤は、プロタミン、またはNi2+、Cu2+、Zn2+、Mg2+、および/もしくはCa2+等の二価金属イオンである。二価金属は、組成物中に、例えば、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等として存在してもよい。つまり、二価金属塩は、有益薬剤の二価金属塩が形成されるように、組成物の調製中に含まれてもよい。これらの沈殿剤および/または安定剤は、選択される有益薬剤が負電荷性タンパク質またはペプチドであるとき、特に使用される。
【0075】
有益薬剤の正味の電荷はまた、例えば、pHを調整することによって、調整されてもよいことに留意すべきである。したがって、好適な電荷を持つ沈殿剤および/または安定剤は、調整され得るタンパク質またはペプチドの正味の電荷に基づいて選択されてもよい。例えば、有益薬剤が、例えば、pH調整の結果として、正味の正電荷を有する場合、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の負電荷性分子が、沈殿剤および/または安定剤として利用されてもよい。
【0076】
故に、幾つかの実施形態は、タンパク質およびペプチドのうちの少なくとも1つを、カチオン性錯化剤と、8〜10または8〜9等の、8よりも大きい、例えば、8.5よりも大きい、または9よりも大きいpHで接触させて、複合体を形成することを伴う、複合体を作製する方法を伴う。カチオン性錯化剤の例としては、プロタミン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリミキシン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
他の実施形態は、タンパク質およびペプチドのうちの少なくとも1つを、アニオン性錯化剤と、1〜3または2〜3等の、3未満、例えば、2.5未満または2未満のpHで接触させて、複合体を形成することを伴う、複合体を作製する方法を伴う。アニオン性錯化剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアデノシン、ポリチミン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物中での有益薬剤複合体の使用前に、非錯化有益薬剤、例えば、非電荷中性化有益薬剤を除去するために、上述の指定のpHでの、例えば、8よりも大きいまたは3未満のpHでの錯化後に、有益薬剤を錯化剤と接触させることによって形成される混合物から上清を除去することが有益であり得る。
【0079】
幾つかの実施形態では、カチオン性薬剤は、有益薬剤と錯化されて、不溶性の有益薬剤複合体を形成する。好適なカチオン性薬剤には、プロタミン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリミキシン、Ca2+、およびMg2+が含まれてもよいが、これらに限定されない。また、アニオン性薬剤を適宜利用して、不溶性の有益薬剤複合体を形成してもよい。好適なアニオン性薬剤には、上述のCMC、ならびにポリアデノシンおよびポリチミンが含まれてもよいが、これらに限定されない。アニオン性薬剤がポリアデノシンである場合、ポリアデノシンは、例えば、10mer〜150merであり得る。アニオン性薬剤がポリチミンである場合、ポリチミンは、例えば、10mer〜1500merであり得る。
【0080】
例えば、複合体中の有益薬剤の改善された化学的安定性もしくは物理的安定性、ならびに/または改善された薬物放出速度、例えば、低減されたバースト効果および/もしくは持続的送達プロフィールのために、2つ以上の沈殿剤および/または安定剤を組み合わせて利用して、本明細書に記載される不溶性の有益薬剤複合体の形成を促進してもよい。例えば、プロタミンおよび二価金属またはその塩の、タンパク質有益薬剤との組み合わせは、開示される組成物のビヒクル中に分散されるとき体内での所望の有益薬剤放出プロフィールを有する組成物を提供する、不溶性の複合体を形成し得る。更に、沈殿剤および/または安定剤のかかる組み合わせは、有益薬剤複合体の化学的安定性および物理的安定性を改善し、複合体を、減菌条件、例えば、電子ビーム減菌およびガンマ放射線減菌を含む、放射線減菌に対してより抵抗性にし得る。
【0081】
したがって、幾つかの実施形態では、不溶性の有益薬剤複合体は、プロタミンおよび二価金属またはその塩(例えば、Zn2+または酢酸亜鉛)の両方と組み合わせた有益薬剤を含む。有益薬剤:二価金属または塩:プロタミン(例えば、有益薬剤:亜鉛:プロタミン)のモル比は、1:0.5〜2.0:0.3〜0.5の範囲にあり得る。
【0082】
プロタミンを単独で、または上述の沈殿剤および/もしくは安定剤のうちの1つと組み合わせて使用して、本開示による不溶性の有益薬剤複合体を形成してもよい。幾つかの実施形態では、例えば、組成物がヒトまたは非ヒト動物に投与されるべき場合、放射線安定組成物を提供するために、メチオニン等の添加剤を含めることが望ましい場合がある。これは、例えば、有益薬剤がタンパク質またはペプチドである場合に有用であり得る。メチオニンを、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥前に組成物に添加して、不溶性の有益薬剤複合体粉末を形成してもよく、それは、粉末を本明細書に記載されるビヒクルと組み合わせる前または後のいずれかに、例えば、ガンマ線照射を介して、滅菌することができる。
【0083】
幾つかの実施形態では、組成物は、25kGyの線量でのガンマ線照射への曝露後の少なくとも24時間の期間にわたって、少なくとも90%以上(例えば、95%)の純度を維持する。幾つかの実施形態では、少なくとも90%以上(例えば、95%)の純度は、少なくとも1ヶ月の期間にわたって維持される。
【0084】
不溶性の有益薬剤複合体は、不溶性の粒子の形態で組成物中に存在する。これらの粒子の粒径は、有益薬剤複合体を調製するために使用される方法に依存して変動させられてもよい。典型的には、粒子は、25ゲージ針等の小さい針を通過するのに十分に小さい。幾つかの実施形態では、不溶性の有益薬剤複合体は、直径または最大寸法約1μm〜約400μm、例えば、直径または最大寸法約1μm〜約300μm、約1μm〜約200μm、約1μm〜約100μm、約1μm〜約90μm、約1μm〜約80μm、約1μm〜約70μm、約1μm〜約60μm、約1μm〜約50μm、約1μm〜約40μm、約1μm〜約30μm、約1μm〜約20μm、または約1μm〜約10μmの範囲の平均粒径を有する粒子の形態でビヒクル中に分散される。幾つかの実施形態では、不溶性の有益薬剤複合体は、直径または最大寸法約10μm〜約100μmの範囲の平均粒径を有する粒子の形態でビヒクル中に分散される。例えば、粒子の密度がビヒクルの密度と同じまたは同様であるような密度の合致と組み合わせた、この範囲の粒径は、本明細書に開示される組成物の改善されたシリンジ通過性および注射可能性に寄与する。
【0085】
幾つかの実施形態では、不溶性の粒子の密度は、粒子が分散されるビヒクルの密度とおよそ同じである。これは、特に、例えば、2〜8℃等の低温での組成物の保管中に、ビヒクル中の粒子の増加された物理的安定性およびビヒクル中の粒子の改善された分散性を提供する。例えば、幾つかの実施形態では、粒子およびビヒクルの両方は、約0.9〜1.2g/cmの間の密度を有する。幾つかの実施形態では、粒子の平均密度は、ビヒクルの平均密度から0.25g/cmを超えて、例えば、0.20g/cmを超えて、0.15g/cmを超えて、または0.05g/cmを超えては異ならない。場合によっては、ビヒクルの見かけ密度は、粒子の見かけ密度の10%以内、例えば、8%以内、5%以内、または3%以内である。
【0086】
追加的な成分
多様な追加的成分が開示される組成物に添加されてもよいが、それらが、本明細書で考察される組成物の有益な特性、例えば、粘度等を、実質的に破壊しないことを条件とする。好適な成分には、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、例えば、安定剤、染料、充填剤、保存料、緩衝剤、酸化防止剤、湿潤剤、抗発泡剤等が含まれてもよいが、これらに限定されない。追加的な成分には、例えば、スクロース、ポリソルベート、メチオニン等が含まれてもよい。
【0087】
例えば、メチオニンが酸化防止剤として本開示の組成物中に含まれてもよく、幾つかの実施形態では、スクロースが安定剤として含まれる。上述のように、メチオニンを、本明細書に記載される不溶性の有益薬剤複合体と組み合わせて、本明細書に記載される放射線安定粉末または放射線安定組成物を形成してもよい。
【0088】
幾つかの実施形態では、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)等の高粘度担体が、本開示の組成物中に含まれてもよい。例えば、SAIBが、ビヒクルの、約5重量%〜約10重量%等の、約5重量%〜約20重量%の範囲の量で含まれてもよい。
【0089】
幾つかの実施形態では、ビヒクルは、約5%〜10%SAIB、約70%〜約75%の疎水性溶媒、および約15%〜25%の生分解性重合体を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である。1つ以上の実施形態では、ビヒクルは、約5〜約10%SAIB、約65%〜約70%安息香酸ベンジル、約3%〜約7%エタノール、および約15%〜約25%ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である。幾つかの実施形態では、ビヒクルは、約15%〜約25%SAIB、約55%〜約65%安息香酸ベンジル、約5%〜約15%ベンジルアルコール、および約5%〜約15%ポリ乳酸(PLA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である。1つ以上の実施形態では、ビヒクルは、約65%〜約75%安息香酸ベンジル、約5%〜約15%ベンジルアルコール、および約15%〜約25%ポリ乳酸(PLA)を含み、各々の%は、ビヒクルの重量%である。
【0090】
1つ以上の実施形態では、ビヒクルの8重量%でのSAIBの組み込みは、ビヒクルの72重量%での疎水性溶媒の組み込みおよびビヒクルの20重量%での生体適合性の生分解性重合体の組み込みを可能にする。幾つかの実施形態では、組成物中のSAIBの量は調整されてもよいが、疎水性溶媒の重量%が、ビヒクルの約60〜約95重量%の間で維持され、生体適合性の生分解性重合体の重量%が、ビヒクルの約5〜約40重量%の間で維持されることを条件とする。
【0091】
例えば、SAIBの量は、例えば、1%間隔で、ビヒクルの0〜35重量%で調整されてもよいが、疎水性溶媒および生体適合性の生分解性重合体の百分率が適宜調整されることを条件とし、好ましくは、結果として生じる組成物のゼロせん断粘度が25℃で1,200cPを超えないことを条件とする。指定範囲内に入る上記の3つの成分の各組み合わせを列挙することなく、全てのかかる組み合わせが本開示の範囲内にあること、更に、これは、上記の範囲および粘度の列挙を満たす上記の3つの成分の任意の組み合わせの具体的な列挙のために、先立つ記載を提供することが意図されることを理解されたい。
【0092】
調製方法
一般に、本組成物は、当業者に既知であり利用可能な種々の方法および技法のいずれによって作製されてもよい。
【0093】
本開示の組成物は、一般に、本明細書に記載される生分解性重合体および本明細書に記載される疎水性溶媒を組み合わせて、組成物のビヒクルを形成することによって調製されてもよい。生分解性重合体は、典型的にビヒクルの約5重量%〜約40重量%の量で提供され、疎水性溶媒は、典型的にビヒクルの約95重量%〜約60重量%の量で提供される。有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体は、ビヒクル中に分散される。かかる分散は、所望の粒径の粒子を得るために、1つ以上の摩砕またはふるい分けステップ後に生じてもよい。ビヒクル中の不溶性の有益薬剤または不溶性の有益薬剤複合体の分散後に、1つ以上の均質化ステップが利用されてもよい。所望の粘度範囲、例えば、25℃で1,200センチポアズ(cP)未満、例えば、1000cP未満、500cP未満、または100cP未満のゼロせん断粘度を維持しながら、上記の範囲内で、生分解性重合体および疎水性溶媒の重量%が調整されてもよいことに留意すべきである。更に、本明細書に前述されるように、1つ以上の追加的成分が、ビヒクル中に含まれてもよい。
【0094】
不溶性の有益薬剤複合体粒子は、例えば、有益薬剤を好適な緩衝液中に溶解させ、その後、好適な量の安定剤/沈殿剤を、緩衝液の凝固点よりも高いが沸点よりも低い温度で沈殿物が形成されるまで添加することによって、調製されてもよい。分散した沈殿物を有する好適な緩衝液は、不溶性の有益薬剤複合体を含む粉末を提供するために、次いで、好適な乾燥プロセス、例えば、噴霧乾燥または凍結乾燥に供される。代替的に、沈殿物は、遠心分離および結果として生じる上清の除去によって、回収することができる。それは次いで、直接、噴霧乾燥または凍結乾燥のために、水性培地中に再懸濁させることができる。1つ以上のサイズ縮小およびふるい分けステップを利用して、有益薬剤複合体の粒径を調整してもよい。錯化粉末は、有益薬剤複合体粒子をビヒクル中に分散させるのに好適な量の、調製されたビヒクルと混合される。幾つかの実施形態では、有益薬剤が低分子量化合物である場合、有益薬剤複合体は、有益薬剤の塩型を含むのみでもよいが、有益薬剤の塩型がビヒクル中で少なくとも実質的に不溶性であることを条件とする。製剤は、当業者に既知の任意の好適な方法、例えば、10kGy以上の線量でのガンマ減菌を使用して、使用前に滅菌されてもよい。代替的に、有益薬剤複合体およびビヒクルは別個に滅菌され、次いで使用前に組み合わされてもよい。
【0095】
生分解性製剤
本明細書に上述されたように、幾つかの実施形態では、本開示の生分解性組成物は、A)i)ビヒクルの約5重量%〜約40重量%(例えば、約6重量%〜約29重量%、約7重量%〜約28重量%、約8重量%〜約27重量%、約9重量%〜約26重量%、約10重量%〜約25重量%、約11重量%〜約24重量%、約12重量%〜約23重量%、約13重量%〜約22重量%、約14重量%〜約21重量%、約15重量%〜約20重量%、約16重量%〜約19重量%、または約17重量%〜約18重量%)の量で存在する生分解性重合体、およびii)ビヒクルの約95重量%〜約60重量%(例えば、約94重量%〜約61重量%、約93重量%〜約62重量%、約92重量%〜約63重量%、約91重量%〜約64重量%、約90重量%〜約65重量%、約89重量%〜約66重量%、約88重量%〜約67重量%、約87重量%〜約68重量%、約86重量%〜約69重量%、約85重量%〜約70重量%、約84重量%〜約71重量%、約83重量%〜約72重量%、約82重量%〜約73重量%、約81重量%〜約74重量%、約80重量%〜約75重量%、約79重量%〜約76重量%、または約78重量%〜約77重量%)の量で存在する疎水性溶媒を含む、単相ビヒクル、ならびにB)生分解性組成物が、25℃で1,200センチポアズ(cP)未満(例えば、1100cP未満、1000cP未満、900cP未満、800cP未満、700cP未満、600cP未満、500cP未満、400cP未満、300cP未満、200cP未満、または100cP未満)のゼロせん断粘度を有し、小さいゲージ針を通じて注射可能であり、かつエマルションまたはゲルでない、ビヒクル中に分散した有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を含む。
【0096】
幾つかの実施形態では、本開示の生分解性組成物は、25℃で1,200cP未満(例えば、1100cP未満、1000cP未満、900cP未満、800cP未満、700cP未満、600cP未満、500cP未満、400cP未満、300cP未満、200cP未満、または100cP未満)のゼロせん断粘度を有する。
【0097】
生分解性重合体の量および疎水性溶媒の量は、例えば、所望の粘度を達成するために、例えば、1重量%増分で変動させられてもよいが、それらが、典型的に、それぞれ、ビヒクルの約5重量%〜約40重量%およびビヒクルの約95重量%〜約60重量%以内に維持されることを条件とすることに留意すべきである。したがって、上記の範囲内に入るあらゆる可能な組み合わせを列挙することなく、これは、かかる組み合わせのために、先立つ記載を提供することが意図される。
【0098】
幾つかの実施形態では、生分解性組成物のゼロせん断粘度は、25℃で、約1000cP〜約100cP、例えば、約900cP〜約100cP、約800cP〜約100cP、約700cP〜約100cP、約600cP〜約100cP、約500cP〜約100cP、約400cP〜約100cP、約300cP〜約100cP、または約200cP〜約100cPである。
【0099】
幾つかの実施形態では、25℃で比較的低粘度であることに加えて、開示される生分解性組成物はまた、37℃でも比較的低い粘度、例えば、500cP未満、400cP未満、300cP未満、200cP未満、または100cP未満のゼロせん断粘度を示す。幾つかの実施形態では、生分解性組成物のゼロせん断粘度は、37℃で、約500cP〜約100cP、約400cP〜約200cP、または約300cPである。これらの製剤の粘度は、上昇する温度と共に、頻繁には指数関数的様式で低下する。
【0100】
開示される生分解性組成物はまた、典型的に、体外でリン酸塩緩衝食塩水に曝露された後、37℃で比較的低い粘度(例えば、500cP未満、400cP未満、300cP未満、200cP未満、または100cP未満のゼロせん断粘度)を示し、この低粘度を経時的に、例えば、リン酸塩緩衝食塩水への曝露の、少なくとも5時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、または少なくとも168時間にわたって維持する。
【0101】
驚くべきことに、開示される生分解性デポー組成物は、典型的に、最小のバーストと共に体内での有益薬剤の持続放出を提供しながら、良好なシリンジ通過性および注射可能性を示す。シリンジ通過性および注射可能性は、既知の容量の生分解性デポー組成物を、比較的小さいゲージ針を装着された既知のサイズのシリンジ、例えば、約21〜約27のゲージを有する針を装着された1〜5mLシリンジを通じて注射するのにかかる時間によって、特徴付けられてもよい。幾つかの実施形態では、本開示の生分解性デポー組成物は、約21〜約27のゲージを有するおよそ0.5インチ針を装着された1mLシリンジを通じて注射される、それらの能力に基づいて、良好なシリンジ通過性および注射可能性を有するものとして特徴付けられてもく、ここで0.5mL容量の生分解性デポーは、25℃で5〜10lbの力の適用により、25秒未満(例えば、20秒未満、15秒未満、10秒未満、または5秒未満)のうちに注射されることが可能である。幾つかの実施形態では、上記の条件下で、生分解性デポーは、約25秒〜約1.5秒の範囲、例えば、約20秒〜約1.5秒、約15秒〜約1.5秒、約10秒〜約1.5秒、または約5秒〜約1.5秒のうちに注射されることが可能である。
【0102】
本明細書に記載される良好な注射可能性およびシリンジ通過性に加えて、幾つかの実施形態では、生分解性本開示の組成物は、最小のバーストおよび経時的な有益薬剤の持続的送達を示す。「最小のバースト」は、Cmax/Cminの観点で特徴付けられてもよく、式中、許容されるCmax/Cmin上限は、送達対象の有益薬剤に依存して変動し得る。幾つかの実施形態では、最初の24時間にわたってバーストとして放出される有益薬剤の重量%は、1週間にわたって放出される総量の30%未満、例えば、1週間にわたって放出される総量の20%未満または10%未満である。幾つかの実施形態では、最初の24時間にわたってバーストとして放出される有益薬剤の重量%は、1ヶ月にわたって放出される総量の10%未満、例えば、1ヶ月にわたって放出される総量の8%未満または5%未満である。本明細書で使用されるとき、「持続的送達」は、同じ有益薬剤の即時放出(IR)製剤の単回用量から得られる持続期間よりも、少なくとも数倍、例えば、少なくとも5倍〜少なくとも10倍長い持続期間を指す(有益薬剤自体の吸収、分布、代謝、および排泄(ADME)特性によって決定)。
【0103】
上述のように、開示される生分解性組成物は、上述の良好な注射可能性、シリンジ通過性、および化学的安定性有することに加えて、最小のバースト効果を伴う、体内での有益薬剤の持続放出を提供する。現在入手可能な製剤は一般に、制御放出または注射可能性/シリンジ通過性のいずれかを提供するが、双方を提供しないため、これは予想外かつ驚くべき結果である。例えば、市販のデポー製剤は、有益薬剤の制御放出を提供するために、極度に粘性の重合体マトリックスの形成に依存し得る。しかしながら、かかる製剤は、デポーの粘性性質に起因して、不十分な注射可能性/シリンジ通過性を有する。代替的に、他の市販の製剤は、高溶媒含量に起因して良好な注射可能性/シリンジ通過性を有し得るが、有益薬剤の放出に対する制御が不十分である、ビヒクルを利用する。更に、本明細書に開示される組成物等の低粘度液体組成物は、実質的なバースト効果および指数関数的に低下する送達プロフィールの形態で、不十分な放出速度を有することが予想される。この予想とは対照的に、本組成物は、低いバースト効果および1日〜1ヶ月以上の期間にわたる有益薬剤の放出に対する良好な制御を示す。
【0104】
いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、本開示の組成物の有益な放出特性は、少なくとも一部には、体内での、組成物の表面における、流動的で非構成的な(いかなる特記すべき機械的完全性も有さない)「速度制御クラウド」または「速度制御薄膜」の形成に起因すると考えられる。速度制御クラウドまたは薄膜は、水性環境における組成物の表面で生じるものとして特徴付けることができる。開示される組成物の望ましい制御送達特性は、組成物の液体コア中に分散した、有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体、および組成物の表面上の重合体のクラウドまたは薄膜の両方の速度制御寄与からもたらされてもよい。更に、幾つかの実施形態では、例えば、MRTによって示される、放出速度制御に関する相乗効果は、有益薬剤複合体と速度制御クラウドまたは薄膜との間の相互作用の明らかな結果と見なされる。速度制御クラウドまたは薄膜が特記すべき機械的完全性を欠く一方で、それは10μm未満の測定可能な厚さを有する。
【0105】
幾つかの実施形態では、本開示の組成物は、ゲル形成またはゲル化特性を欠く。例えば、多くの先行技術のビヒクル組成物は、37℃でエイジングさせたときゲル形成を示し、それは損失弾性率に対する貯蔵弾性率の増加によって特徴付けることができる。対照的に、本開示の組成物は、37℃で14日間の期間にわたるエイジング後の、比較的大きいG”/G’比、例えば、15以上または20以上等の、10以上のG”/G’比によって特徴付けることができ、式中、G”は、損失弾性率であり、G’は、貯蔵弾性率である。
【0106】
ある種の実施形態では、組成物は、ニュートン性である。例えば、場合によっては、25℃での組成物の粘度は、7秒−1〜500秒−1の範囲のせん断速度で測定されるとき、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、または3%未満変動する。
【0107】
いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、図30は、ペプチドまたはタンパク質等の酸基を含有する有益薬剤の電荷中性化複合体を含む組成物を表すものとして提供される。電荷中性化の事象中、ペプチドもしくはタンパク質または任意の酸末端分子のいずれかは、緩衝液の存在下で塩基性pH(pH>8)の負電荷性となることができる。水溶液中の荷電有益分子は、最適なモル比で、プロタミンまたはZn2+イオン等の正電荷性の対イオンの溶液で中性化されるであろう。プロタミンまたは亜鉛イオンのいずれかのこのモル濃度は、負電荷性ペプチドまたはタンパク質の固定濃度に対する、プロタミンまたは亜鉛イオンの滴定によって得られる。プロタミンまたは亜鉛イオンのいずれかのモル濃度はまた、タンパク質またはペプチド上の正味の電荷およびそのモル濃度にも依存するであろう。電荷中性化複合体(ペプチドまたはタンパク質と対イオン)の水溶解度は、劇的に低減され、それは溶液から沈殿分離するであろう。タンパク質またはペプチドのいずれの荷電種および対イオンも溶液中に留まる。不溶性の有益薬剤−対イオン複合体の乾燥粉末は、手混合または機械混合(例えば、均質化)のいずれかによって、重合体溶液(ビヒクル)中に一様に分散させることができる。結果として生じる製剤は、溶解度、溶解速度、および拡散率を介して有益薬剤の放出を制御する。静電、水素結合、および疎水性相互作用もまた、電荷中性化有益薬剤および重合体の分散した粒子の間で生じる場合があり、これらもまた、体内での有益薬剤のMRTへの重合体−複合体相互作用による驚くべき寄与によって明示されるように、放出速度を調節する場合がある。
【0108】
幾つかの実施形態では、開示される組成物は、約3ヶ月間にわたって、更により好ましくは約6ヶ月間にわたって、なおも更により好ましくは約1年間にわたって、実質的に均質に留まる懸濁液である。1つ以上の実施形態では、不溶性の有益薬剤複合体は、約3ヶ月間にわたって、更により好ましくは約6ヶ月間にわたって、なおも更により好ましくは約1年間にわたって、懸濁ビヒクル中で物理的かつ化学的に安定に留まる。
【0109】
生分解性製剤の投与
本明細書に上述されたように、開示される生分解性製剤は、良好な注射可能性およびシリンジ通過性と共に、低粘度を有するため、細いゲージ針、例えば、21〜27ゲージを有するシリンジ(例えば、1〜5mLシリンジ)を介した送達によく適したものとなっている。更に、注射用デポー製剤もまた、当業者に既知の1つ以上の針無し注射器を介して送達されてもよい。
【0110】
投与の好適な経路には、皮下注射および筋肉内注射が含まれるが、これらに限定されない。投与の好適な経路にはまた、局所送達のために、例えば、関節内および眼内、例えば、硝子体内投与が含まれる。
【0111】
本明細書に開示される製剤はまた、経口製剤、例えば、ゲルキャップ(軟性または硬性)中でまたはマウスウォッシュとして送達される製剤において、使用されてもよい。
【0112】
本明細書に開示される製剤はまた、医療デバイス、例えば、埋め込み式の医療デバイスのためのコーティングとして使用されてもよい。かかるコーティングは、例えば、埋め込み前に医療デバイスを浸漬コーティングすることによって、適用されてもよい。
【0113】
本開示の製剤は、所望の薬理効果が周期的ベースでの投与を介して達成されるように、製剤化されてもよい。例えば、製剤は、日次、週次、または月次ベースでの投与のために製剤化されてもよい。
【0114】
投与対象の有益薬剤または不溶性の有益薬剤複合体の実際の用量は、有益薬剤、治療されている病態、ならびに被検体の年齢、体重、および全身状態、ならびに治療されている病態の重症度、および健康管理専門家の判断に依存して変動するであろう。治療上有効量は、当業者に既知であり、かつ/または関連する参考文書および文献に記載されている。
【0115】
例えば、タンパク質およびペプチド有益薬剤の場合、有益薬剤は、典型的には、有益薬剤の血漿レベルが約5ピコモル/リットル〜約200ピコモル/リットルの範囲内であるように送達されるであろう。体重ベースでは、タンパク質またはペプチドの治療上有効投薬量は、典型的には、成人について1日当たり約0.01mg〜1日当たり約1000mgの範囲であろう。例えば、ペプチドまたはタンパク質投薬量は、1日当たり約0.1mg〜1日当たり約100mg、または1日当たり約1.0mg〜約10mg/日の範囲であってもよい。
【0116】
幾つかの実施形態では、好適な低分子量化合物は、週1回投与されるデポーから送達されるとき、約30mg/日以下の用量、または1ヶ月に1回投与されるデポーから送達されるとき、約10mg/日以下の用量で、所望の治療効果を提供可能なものとして特徴付けられてもよい。例えば、好適な低分子量化合物は、週1回投与されるデポーから送達されるとき、約30mg/日、例えば、約25mg/日未満、約20mg/日未満、約15mg/日未満、約10mg/日未満、約5mg/日未満、または約1mg/日未満の用量で、所望の治療効果を提供可能なものであり得る。幾つかの実施形態では、好適な低分子量化合物は、週1回投与されるデポーから送達されるとき、約30mg/日〜約1mg/日、例えば、約25mg/日〜約5mg/日、または約20mg/日〜約10mg/日の用量で、所望の治療効果を提供可能なものである。
【0117】
同様に、好適な低分子量化合物は、1ヶ月に1回投与されるデポーから送達されるとき、約10mg/日未満、約9mg/日未満、約8mg/日未満、約7mg/日未満、約6mg/日未満、約5mg/日未満、約4mg/日未満、約3mg/日未満、約2mg/日未満、または約1mg/日未満の用量で、所望の治療効果を提供可能なものであり得る。幾つかの実施形態では、好適な低分子量化合物は、1ヶ月に1回投与されるデポーから送達されるとき、約10mg/日〜約1mg/日、例えば、約9mg/日〜約2mg/日、約8mg/日〜約3mg/日、約7mg/日〜約4mg/日、または約6mg/日〜約5mg/日の用量で、所望の治療効果を提供可能なものであり得る。
【0118】
幾つかの実施形態では、例えば、製剤が注射前に一定期間保管状態にあった場合、有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体がビヒクル担体中に十分に分散していることを確実にするために、製剤は、投与前に、例えば、振盪を介して、混合されてもよい。
【0119】
キット
本明細書に開示される生分解性製剤の1つ以上の成分と共に、それを調製するおよび/または使用するための指示書を含む、多様なキットが提供されてもよい。例えば、一実施形態では、好適なキットは、本明細書に記載されるビヒクルを第1の容器中に、および本明細書に記載される有益薬剤を含む不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を第2の容器中に、例えば、粉末形態で含んでもよい。これらの成分を次いで、注射前に一緒に混合して、本開示による生分解性製剤を形成してもよい。幾つかの実施形態では、第1の容器は、第2の容器に、例えば、ルアーロックを備えるバイアルを介して連結されて、ビヒクルと、不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を含む有益薬剤とを混合するための機構を提供し得る、シリンジである。他の実施形態では、第1および第2の容器の両方は、例えば、ルアーロックを介して連結されて、ビヒクルと、不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を含む有益薬剤とを混合するための機構を提供し得る、シリンジである。
【0120】
別の実施形態では、生分解性製剤は、単一の容器、例えば、単一のシリンジ中に予混合されて提供されてもよい。
【0121】
別の実施形態では、生分解性製剤は、ビヒクルを含有する第1のチャンバ、および不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を含む有益薬剤を含有する第2のチャンバを含むプレフィルド二重チャンバシリンジ中に、混合されずに提供されてもよい。シリンジは、ユーザが、ビヒクルと、不溶性の成分、例えば、不溶性の有益薬剤複合体を含む有益薬剤との、接触および後続の混合を開始することができるように提供されてもよい。
【0122】
キットおよび/またはキット成分の使用のための指示書は、キットと共に完全な書面の指示書として、例えば、挿入カードとしてまたはキットパッケージ上に印刷されて、あるいはキットと共に提供されるコンピュータ可読メモリデバイス上に記憶されて、提供されてもよい。代替的に、キットは、ユーザに簡潔な指示を提供し、ユーザを、より完全な使用法指示のための代替的源に導く指示書を含んでもよい。例えば、キットは、使用のための完全な指示にアクセスし得、かつ/またはそれをダウンロードし得る、インターネットサイトへの参照を含んでもよい。
【実施例】
【0123】
次の実施例は、当業者に本発明の作製および使用方法の開示および説明を提供するために提示されるものであり、本発明者らが何を本発明として見なすかについての範囲を限定するようには意図されず、かつそれらが、下記の実験が全てのまたは唯一の行われた実験であることを表すことも意図されない。使用された数(例えば、量、温度等)に関する正確性を確実にするための努力がなされてきたが、幾つかの実験的誤差および偏差が考慮されるべきである。別途指示しない限り、部分は重量部であり、分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで測定された重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。標準的な略号が使用され得、例えば、bp、塩基対(複数可);kb、キロベース(複数可);kd、キロダルトン(複数可);pL、ピコリットル(複数可);秒(s)または秒(sec)、秒(second)(複数可);分(min)、分(minute)(複数可);時間(h)または時間(hr)、時間(hour)(複数可);aa、アミノ酸(複数可);nt、ヌクレオチド(複数可);i.m、筋肉内(に);i.p、腹腔内(に);s.c、皮下(に)等である。
【0124】
実施例1:rhGH−プロタミン複合体の調製
噴霧乾燥
硫酸プロタミンと錯化されたhGH(BresaGen)の噴霧乾燥粉末製剤を次のように調製した。1.00gのBresaGen rhGH粉末を、150mL広口ガラスジャー中に配置した。55mLの25mM NHHCO(pH約7.5)溶液を添加し、化合物を、それが透明になるまで30分間室温で、400rpmで撹拌した。1.9mLの290mMスクロース溶液を次いで、400rpmで撹拌しながら添加した。溶液が透明となったとき、152μLの10%ポリソルベート20溶液を添加した。12.9mLの硫酸プロタミン溶液(濃縮10mg/mL)を次いで緩徐に添加して、白色沈殿物を得た。混合物を30分間撹拌した後、噴霧乾燥させて、錯化反応を完了させた。
【0125】
プロタミンに加えて、二価金属またはその塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む製剤について、かかる成分は、プロタミンの添加前に所望の比率まで添加されてもよい。例えば、酢酸亜鉛の100mM保存液を利用して、酢酸亜鉛を所望の比率まで添加してもよい。
【0126】
噴霧乾燥条件は、次の通りであった:
入口温度設定:140℃、
吸引器100%、
ポンプ:13%、
ノズルクリーナー:1分間当たり2パルス。
【0127】
噴霧乾燥後、錯化粉末の収率は、1.1066gであった。錯化粉末中のrhGH含量を、HPLCを介して次のように決定した。粉末を2%リン酸中に溶解させ、透明溶液をHPLC系上で送液した。粉末のrhGH含量は、75重量%であることが見出された。錯化粉末をその後、3mLガラスシリンジに移し、密封し、ホイルパウチ中、冷蔵下で保管した。
【0128】
凍結乾燥
上述の噴霧乾燥プロセスの代替手段として、本開示の不溶性の有益薬剤複合体は、凍結乾燥プロセスを使用して提供されてもよい。例示的な凍結乾燥プロセスは、下に記載される。
【0129】
1.00gのBresaGen hGH粉末を、150mL広口ガラスジャー中に配置した。55mLの25mM NHHCO(pH約7.5)溶液を添加し、化合物を、それが透明になるまで30分間室温で、400rpmで撹拌した。1.9mLの290mMスクロース溶液を次いで、400rpmで撹拌しながら添加した。溶液が透明となったとき、152μLの10%ポリソルベート20溶液を添加した。次いで、12.9mLの硫酸プロタミン溶液(濃縮10mg/mL)を緩徐に添加して、白色沈殿物を得た。結果として生じた懸濁液を30分間撹拌して、錯化反応を完了させた。
【0130】
上記のステップからの各々3mLのバルク懸濁液のアリコートを、5mLタイプのHypak BDガラスシリンジ中に移し、表1に提供される凍結乾燥サイクルおよびプログラムP90(hGHに対して最適化)を使用して凍結乾燥させて、FTS凍結乾燥器、Dura Stop,MP Stoppering Tray Dryer,Stone Ridge,NYに提供されるステップを当てはめた。各シリンジ中の有益薬剤の最終量は、50mgであった。シリンジを密封し、パウチに入れ、更なる研究のために−20℃冷凍庫中で保管した。
【表1】
【0131】
実施例2:rhGH生分解性薬物送達デポー製剤の調製および体内評価
調製
rhGH−プロタミン複合体およびビヒクルの5つの異なる製剤を調製し、試験した。製剤を、下に示されるように、次の物質を使用して調製した。安息香酸ベンジル、Spectrum;SAIB、医薬品グレード、DURECT;およびPLA、ポリ(DL−ラクチド)、MW 15100Da、DURECT Corporation。次の5つの製剤を含めた:
1)リン酸緩衝食塩水(PBS)中に懸濁させたrhGH−プロタミン(1:0.5モル比)、
2)安息香酸ベンジル(BB)中に懸濁させたrhGH−プロタミン、
3)SAIB/BB 8/92w/w%(100mLガラスジャー中、4.002gのSAIBを46.017gの安息香酸ベンジルと混合し、室温で30分間超音波処理することによって調製した原液ビヒクル)中に懸濁させたrhGH−プロタミン。
4)BB/PLA(DURECT)80/20w/w%(100mLガラスジャー中、20.015gの安息香酸ベンジルを5.007gのPLAと混合し、室温で30分間超音波処理することによって調製した原液ビヒクル)中に懸濁させたrhGH−プロタミン、および
5)SAIB/BB/PLA(DURECT)8/72/20w/w%(100mLガラスジャー中、20.014gのPLAを秤量し、72.309gの安息香酸ベンジルおよび8.147gのSAIBと混合し、続いて30分間室温の超音波処理を行うことによって調製した原液ビヒクル)中に懸濁させたrhGH−プロタミン。
【0132】
上記の1〜5に示される成分を有する注射用製剤を、次のように調製した:
A)錯化粉末を含有するシリンジを有するホイルパウチを冷蔵から除去し、あらかじめ清潔な乾燥領域中に室温で最低60分間配置し、開封した。
B)ビヒクルを含有するバイアルをまた、あらかじめ清潔な乾燥領域中に室温で少なくとも60分間配置し、開封した。
C)ホイルパウチを平衡化させた後、各パウチを清潔な鋏で開封し、パウチ内容物のいずれも切断しないように注意しながらシリンジを除去した。
D)各試験物品について、1mLのビヒクルを、16Ga、1インチ針(BD PN305197または均等物)を装着した1mLシリンジ(Excelまたは均等物)を用いて保存液から回収した。
E)プラスチックチップを、試験物品粉末を含有する3mLガラスシリンジから除去した。
F)滅菌メス−メスルアーアダプターの一方の側面を、ステップEのシリンジに固定した。
G)ビヒクルを含有する1mLシリンジ(ステップD)を、滅菌メス−メスルアーの他方の側面に接続した。
H)1mLシリンジの液体内容物全体を、メス−メスルアーに押し通して、3mLガラスシリンジの粉末内容物中に入れた。
I)シリンジを少なくとも10〜15分間接続したまま放置して、ビヒクルにより粉末を湿潤させた。
J)一様な懸濁液が生成されるまで、混合物に、2つのシリンジの間を通過させることによって(シリンジ間を少なくとも20回通過)、ビヒクルを粉末と混合した。
K)要求される容量の内容物を(動物投薬+死腔のために50μL)、1mL Excelシリンジに押し入れ、3mLガラスシリンジを切り離した。
L)メス−メスルアーを次いで、1mLExcelシリンジから除去した。
M)21Ga、1インチ針(テルモ、UTW、または均等物)を次いで、容量標示を有する1mLシリンジのルアーロック中に配置し、針を試験物品懸濁液でプライミングした。シリンジを次いで投薬動物1のために準備した。
N)追加的動物投薬量を調製するために、メス−メスルアーを3mLガラスシリンジに取り付け、新たな1mL Excelシリンジを取り付けた。要求される容量(第2の動物投薬+死腔のために50μL)を次いで1mL Excelシリンジ中に押し入れ、3mLガラスシリンジを切り離した。メス−メスルアーを次いで1mL Excelシリンジから除去した。
O)21Ga、1インチ針(テルモ、UTW、または均等物)を次いで、容量標示を有する1mLシリンジのルアーロック中に配置し、針を試験物品懸濁液でプライミングした。シリンジを次いで動物2に投薬するために準備した。全ての動物が投薬されるまで、このプロセスを必要に応じて継続した。
【0133】
体内投与および監視
体内実験を次のように行った。Sprague−Dawleyラットに、皮下ボーラス注射を介して投薬し、1週間の期間にわたって監視した。6つの実験的処置群を、1群当たり6匹の動物を用いて利用した。これらの群は、上述の5つの製剤、およびプロタミンを含まないPBS中のrhGH(水溶液)である参照製剤を利用した。PBS中のrhGHおよびrhGH−プロタミン製剤(水性複合体)の両方について、送達は、10mg/mL製剤の300μL注射を介して、3mg用量を達成した。安息香酸ベンジル(BB)100w/w%中のrhGH−プロタミン、SAIB/BB(8/92)w/w%中のrhGH−プロタミン、BB/PLA(80/20)w/w%中のrhGH−プロタミン、およびSAIB/BB/PLA(8/72/20)w/w%中のrhGH−プロタミンの各々について、送達は、50mg/mL製剤の100μL注射を介して、5mg用量を達成した。
【0134】
血液試料を、rhGH(PBS)製剤について、投薬後0.5、1、2、4、8、12、24、および48時間時点で採取し、一方でrhGH−プロタミン製剤の各々についての試料を、1、4、8、12、24、48、72、120、および168時間時点で採取した。血清rhGHプロフィールを、ELISAを介して決定した。
【0135】
結果
図1は、皮下投薬後の参照および5つの試験製剤についての、用量正規化、群平均血清rhGHプロフィールを示す。図2は、各試験群中の各動物についての経時的な血清rhGH濃度をプロットする。これらのプロットは、錯化およびビヒクルの効果を容易に識別することを可能にし、また動物間の変動性を示す。(注:全てのゼロ以外の濃度をプロットした)。
【0136】
水溶液(プロタミンを含まないPBS中のrhGH)と比べて、PBS中に懸濁させた複合体からの血清レベルは、更に24時間維持された。rhGH複合体をBB中に懸濁させることにより、PBS中に懸濁させた複合体と比べて、0〜24時間の血漿レベルは6〜8倍低下したが、タンパク質送達は延長されなかった。SAIBのBBへの添加により、送達は約48時間延長された。20%(w/w)酸開始PLA(M約14.5kDa)のBBへの添加により、rhGH送達は168時間を超えるまで延長されたが、BB:PLA 80:20w/w%中、BBの代わりの8w/w%SAIBでの置換は、rhGH送達に対する有意な効果を有さなかった。
【0137】
これらの結果は、体内で、プロタミン複合体が、溶液中のrhGHの皮下水性ボーラスと比べて、初期血清レベルを低下させ、送達を延長したことを示す。複合体をBB中に分散させることにより、ビヒクルを含まないプロタミン複合体と比べて、初期放出は低下したが、全体的な送達の持続期間は延長されなかった。8%SAIBのBBへの添加は、BB単独と比べて、中程度の放出の延長を提供したが、20%PLAのBBへの添加は、タンパク質の送達を大幅に延長した。最後に、8%SAIBのBB:PLAへの添加は、送達の更なる延長を提供しなかった。
【0138】
実施例3:IFNα2生分解性薬物送達デポー製剤についてのラットにおける体内評価
次の製剤をラットに皮下投与し、IFNα2a血清濃度を経時的に監視した:
A)SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中に分散した、1%スクロースおよびプロタミン−亜鉛(噴霧乾燥)を有する2.5mg/mL IFNα2製剤、ならびに
B)SAIB/BB/PLGA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中に分散した、1%スクロースおよびプロタミン−亜鉛(噴霧乾燥)を有する2.5mg/mL IFNα2製剤。
【0139】
各製剤について、複合体中のIFNα2a対Zn2+対プロタミンの比率は、(1:1:0.3m/m)であった。タンパク質用量は、各製剤について0.5mgであった。タンパク質の酸化を防止するために、メチオニンを各製剤に添加した。ラットをシクロスポリンおよびメチル−プレドニゾロンで免疫抑制した。注射は、Excel 1mLシリンジを介し、23ゲージ5/8インチテルモ針を使用した。
【0140】
製剤群A)およびB)の両方における各ラットについての血清濃度を、それぞれ図3および4に示されるように、対時間で最大96時間までプロットした。プロフィールは、製剤全てにわたって同様である。2つの製剤についての平均血清プロフィールは、図5に図示されるように、11日間までほぼ同様であった。平均して、tmaxは、両製剤について8時間(1〜24時間範囲)であり、Cmaxは、40〜60×10pg/mLの範囲であった。血清レベルは、11日間にわたって約50分の1に下落し、Cmax/Clastは、約500であった。研究した製剤は、それらの生物学的利用能(BA)プロフィールにおいて同様であり、最大28日間のBAは、20〜50%の範囲であった。
【0141】
実施例4:IFNα2生分解性薬物送達デポー製剤についてのラットにおける更なる体内評価
次の製剤を、皮下ボーラスを介してラットに投与し、IFNα2a血清濃度を経時的に監視した:
C)SAIB/BB/PLA(8:72:20)ビヒクル中に分散した、1%スクロースおよびプロタミン(IFNα2a:プロタミン1:0.3m/m)を有する20mg/mL IFNα2製剤、ならびに
D)SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中に分散した、1%CMCおよび1%スクロースを有する20mg/mL IFNα2a製剤。
【0142】
タンパク質用量は、各製剤(50μLの20mg/mL製剤)について1mgであった。注射は、Excel 1mLシリンジを介し、23ゲージ5/8インチテルモ針を使用した。
【0143】
各製剤群中の各ラットについての血清濃度(ELISAによって決定したとき)を対時間でプロットした。製剤C)およびD)についての結果は、それぞれ図6および7に提供される。両製剤は、注射用デポー製剤に望ましい放出速度を示した。
【0144】
実施例5:IFNα2a生分解性薬物送達デポー製剤についての霊長類における体内分析
実施例4についての上記のものと同様のデポー組成物を使用して、薬物動態研究を霊長類において行った(カニクイザル(cynomolgus monkey)−カニクイザル(Macaca fascicularis))。具体的には、SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中に分散した、1%スクロースおよびプロタミン(IFNα2a:プロタミン1:0.3m/m)を有する2mg/kgの40mg/mL IFNα2製剤を、第1の群に投与した。別の実験群は、SAIB/BB/PLA(8:72:20、w/w%)ビヒクル中に分散した、1%CMCおよび1%スクロースを有する、2mg/kgの第2の製剤、40mg/mL IFNα2製剤を受容した。注射は、皮下で、Excel 1mLシリンジを介し、23ゲージ5/8インチテルモ針を使用した。
【0145】
各群中の個々の動物についての血清プロフィールは、それぞれ図8および9に示される。示されるように、初期の10〜12日間にわたって、プロタミン−IFNα2複合体を用いることにより、CMC−IFNα2a複合体を用いるよりも、より高い血清レベルが達成された。
【0146】
各処置群中の個々の動物からの血清試料をELISAによって分析し、各処置群からプールした血清試料を抗ウイルス活性測定法(AVA)によって分析した。ELISAおよびAVAによって決定された実験群についての群平均血清プロフィールの比較は、図10に提供され、それはCMC−複合体がプロタミン複合体よりも長い送達持続期間を提供したことを明らかにしている。
【0147】
実施例6:SAIB/BB/EtOH/PLGA(8/67/5/20)ビヒクルから送達される抗癌ヌクレオシド類似体の薬物動態評価
注射用デポー組成物を、抗癌ヌクレオシド類似体プロドラッグのプロタミン複合体およびビヒクルとしてSAIB/BB/EtOH/PLGA(8/67/5/20、w/w%)を使用して調製し、それは次のように調製した:3.3180gのヌクレオシド類似体プロドラッグを500mLガラス容器中で計量した。166mLの水をガラス容器に添加し、400rpmで1時間、全ての粉末が溶解するまで撹拌した。水中のヌクレオシド類似体の溶解度は、約20mg/mLであった。結果として生じた透明水溶液を、430mLの10mg/mL硫酸プロタミン溶液に添加した。混合物を、反応が完了するように1時間室温で再び撹拌し、その時間後、白色の綿状の懸濁液が形成された。白色懸濁液を50mLプラスチック管中に分配した。ガラス容器を65mLの水ですすぎ、残りの混合物を50mL管に移した。懸濁液を含有する管を、2500rpmで12分間遠心分離した。遠心分離後、管は、547mLの上清および117mLの白色沈殿物の総量を算出した。
【0148】
上清を、HPLCを介して、遊離有益薬剤含量について分析した。標的投薬量は、150mgの有益薬剤であった。したがって、懸濁液を、各々が5.8mLの白色沈殿物を含有する20個の10mLガラスバイアル中にアリコートした。沈殿物を含有するバイアルを次いで、FTS凍結乾燥器を使用して凍結乾燥させた。
【0149】
10mLバイアルからの安定化有益薬剤複合体粉末を2mLバイアル中に移し、計量した。ビヒクル(SAIB/BB/EtOH/PLGA)(8/67/5/20)を計量した粉末に添加して、120mg/mLの有益薬剤の標的濃度を得た。混合物をビヒクルで1.5時間湿潤させ、湿潤した混合物を次いで、10分間、PowerGen 1000(Fisher Scientific)上で、プローブ5×95mmを用いて均質化して、均質な乳白色懸濁液を得た。この懸濁液を霊長類へ投薬し、血液試料を、有益薬剤およびその代謝産物の両方について最大168時間監視した。注射は、皮下で、Excel 1mLシリンジを介し、23ゲージ5/8インチテルモ針を使用した。次の投薬量を監視した:3mg/kgの即時放出製剤(SAIB/BB/EtOH/PLGAビヒクルを含まない)、ならびに9mg/kg、13.5mg/kg、および18mg/kgのプロドラッグ−ビヒクル組成物。
【0150】
ヌクレオシド類似体プロドラッグおよびその活性な代謝産物(有益薬剤)の送達についての薬物動態曲線は、それぞれ図11および12に提供される。これらの曲線は、低いバースト効果および168時間までの持続放出を伴う、望ましい送達プロフィールを示す。
【0151】
実施例7:SAIB/BB/BA/PLA(20/50/10/20)ビヒクルから送達されるGLP−1類似体の薬物動態評価
薬物動態分析を、亜鉛およびプロタミンと錯化され、ミニブタにおけるSAIB(イソ酪酸酢酸スクロース):BB(安息香酸ベンジル):BA(ベンジルアルコール):乳酸開始PLA(ポリ乳酸)(20/50/10/20、w/w%)ビヒクルから送達された、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)類似体有益薬剤について行った。
【0152】
GLP−1類似体複合体粉末を、下記の表2および3に述べられるように噴霧乾燥を介して調製した。
【表2】
【表3】
【0153】
噴霧乾燥後、GLP−1類似体複合体粉末を5mLガラスシリンジ中に充填し、栓をし、アルミニウムパウチ中に密封した。シリンジをその後、体内でのミニブタ研究において使用するため、1シリンジ当たり1mLのビヒクル、SAIB/BB/BA/PLA(20/50/10/20)と混合した。投与は、ビヒクル中、60μLの40mg/mL GLP−1類似体皮下注射を介し、25ゲージ1/2インチ針を有するテルモSursaverシリンジを使用した。GLP−1類似体についての血清濃度を、投与後12日間の期間にわたって監視した。この実験の結果は、経時的な平均GLP−1類似体血清濃度のグラフである、図13に示される。12日間の期間にわたってSAIB/BB/BA/PLAビヒクルから送達されたGLP−1類似体の持続放出が実証された。水溶液中のGLP−1類似体の即時放出製剤の皮下注射からもたらされる血漿プロフィールが、比較のために図13に提供される。
【0154】
実施例8:ビヒクル粘度
体外ビヒクル粘度を、次のビヒクル物質の組み合わせについて決定した:BB(単独)、BB:PLA、SAIB:BB:PLA、SAIB:BB。物質の各組み合わせについて、物質のw/w%を下記の表4に示されるように変動させた。表4は、水性培地への曝露を伴わない25および37℃での種々の組み合わせの各々についての、センチポアズ(cP)単位での粘度値を提供する。(C)製剤についての結果を比較目的で提供するが、それは、成分%および/または結果として生じる粘度に基づいて、本開示の注射用デポー組成物(D)としては見なされない。
【表4】
【0155】
表4は、本開示のビヒクル組成物、例えば、生分解性重合体(本明細書ではポリ乳酸−PLA)を含むビヒクル組成物が、ビヒクルの約5重量%〜約30重量%の量で存在し、疎水性溶媒(本明細書では安息香酸ベンジル−BB)が、ビヒクルの約95重量%〜約70重量%の量で存在し、25および37℃の両方で1,200センチポアズ未満の粘度値を有することを示す。
【0156】
水性培地への曝露中の、選択したビヒクル組成物中の経時的な粘度変化を示す、インサイツ粘度測定もまた行った。これらの結果は、下記の表5に提供され、このうち値は、低せん断速度および高せん断速度の両方について提供される。粘度を、1.5mLのビヒクルの、100mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)中へのpH7.4および37℃での注射後に測定した。
【表5】
【0157】
LA開始PLAを含有するビヒクル中の幾らかのエタノールの組み込みは、ビヒクルの幾つかについて観察された、37℃のPBS緩衝液への曝露後の粘度における増加に関与すると考えられる。しかしながら、水への曝露後の個々のビヒクルの粘度は、ビヒクルの組成に関わらず、最大168時間の試験期間にわたって比較的一定に留まり、製剤およびPBS緩衝液の表面で、製剤のPBS緩衝液への曝露時に形成されるいずれの速度制御性表面「クラウド」層も、表5に示されるせん断速度の範囲で適用されるせん断応力に抵抗する物理的強度または特記すべき機械的構造を有さないことが確認された。これは、水性環境に曝露されたとき、経時的な粘度における実質的増加を示す、ゲル形成ビヒクルと対比され得る。
【0158】
追加的なインサイツ粘度測定は、下記の表6に提供される。観察された製剤の粘度に依存して、要求される(または最適な)トルクの範囲を合致させるために、適切なBrookfield粘度計モデルを選択した。例えば、Brookfield粘度計モデルDV−III+ULTRA(HA)モデルを使用して、25℃で140〜320秒−1の低せん断速度および25℃で500秒−1の高せん断速度を提供し、Brookfield DV−III+ULTRA(LV)モデルを使用して、25℃で7−28秒−1の低せん断速度および25℃で40〜200秒−1の高せん断速度を提供し、Brookfield DV−III+(HB)モデルを使用して、37℃で370〜500秒−1の低せん断速度および37℃で500秒−1の高せん断速度を提供し、Brookfield DV−III+(LV)モデルを使用して、37℃で20〜46秒−1の低せん断速度および37℃で90〜350秒−1の高せん断速度を提供した。粘度を、1.5mLのビヒクルの、100mLのpH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中への注射後に測定した。
【表6】
【0159】
表6に記載されるビヒクルは、双方が外部水性培地中に容易に溶出する溶媒EtOHおよびNMPから構成されるもの、ならびに極度にゆっくりと溶出する疎水性溶媒BBおよび中間速度で溶出するBAを含有するものである、2つのカテゴリーに分類される。表6に示されるように、親水性溶媒を含むビヒクルについて、インサイツ粘度は、7日間にわたって複数の対数で増加し、大部分が水性培地への曝露の最初の5時間のうちに増加する。BB/BAビヒクルについてのインサイツ粘度は、このレベルの粘度を示さず、代わりに、経時的に比較的安定な粘度を示す。
【0160】
追加的なインサイツ粘度測定は、溶媒としてBBのみを有する担体を、BBおよび二次的疎水性溶媒、例えば、BA(ベンジルアルコール)またはTA(トリアセチン)を含む担体と比較する、下記の表7に提供される。インサイツ粘度を、表6について上述されるように測定した。
【表7】
【0161】
一般に、溶媒としてBBのみを含有するビヒクルは、37℃で最大120時間の期間にわたって、比較的安定な粘度を示した。BBおよびBAを含有するビヒクルは、37℃で120時間の時間枠にわたって、約2倍の粘度における増加を示した。最後に、BBおよびTAを含有するビヒクルは、37℃で120時間の時間枠にわたって、粘度における若干の増加(約50%)を示した。しかしながら、粘度における増加を示すビヒクルについてでさえ、粘度は、比較的低く、例えば、120時間の時間枠にわたって500cP未満に留まった。
【0162】
下記の表8は、様々な温度にわたる、2つのSAIB:BB:PLA(8:72:20)ビヒクルおよびSAIB:BB:PεCGL(8:72:20)ビヒクルについての体外粘度(cP)測定を提供する。25℃(298°K)および37℃(310°K)についての粘度値は、太字で示される。
【表8】
【0163】
表8は、上記のビヒクルの各々が、25℃および37℃の両方で、比較的低い体外粘度、例えば、500cP未満を有することを示す。
【0164】
下に提供される表9は、25℃および37℃での更なるビヒクルについての、体外粘度測定値を提供する。ビヒクルは、次の通りである:BA:dd−PLGA、333−44−1、6.7kDa、ドデカノール開始、65:35 L:G;BA:ga−PLGA、11.5kDa、グリコール酸塩開始、64:36 L:G;EB:dd−PLGA(安息香酸エチル);EB:ga−PLGA;TA:dd−PeCL(トリアセチン)、14.2kDa、ドデカノール開始20:80 C:L;TA:la−PeCL、および14.8kDa、乳酸塩開始、20:80 C:L。
【0165】
全てのビヒクルは、80:20(w/w%)溶媒:重合体であった。BA=ベンジルアルコール、EB=安息香酸エチル、およびTA=トリアセチン、該当なし(N/A)=該当なし(not available)。
【表9】
【0166】
表9は、上記のビヒクルの各々が、25℃および37℃の両方で、比較的低い体外粘度、例えば、500cP未満を有することを示す。
【0167】
実施例9:注射可能性研究:SAIB/BB/EtOH/PLGA
注射可能性データおよび試験条件は、表10に提示される。製剤は、SAIB/BB/EtOH/PLGA(8/67/5/20、w/w%)ビヒクル中に分散したプロタミン複合体と共に凍結乾燥させた、120mg/mL負荷のヌクレオシド類似体プロドラッグから成り立っていた。注射用デポー組成物を、実施例6に前述されるように調製した。
【0168】
100μL懸濁液を、永久的に取り付けた針21Gまたは23G×1/2インチ(テルモREF SS01D2313)を有する1mLシリンジ中に裏込めすることによって、懸濁液を注射可能性について試験した。10lbの力をシリンジに適用し、混合後、遅滞しておよび遅滞なく、注射時間を監視した。温度は、25℃であった。
【0169】
注射時間(0.21〜0.25mLにつき2秒未満)を、21Gインチ針および23G×1インチ針の両方を使用したヌクレオシド類似体複合体製剤に対して許容できると見なした。
【表10】
【0170】
実施例10:注射可能性研究:SAIB/BB/PLA(8/72/20)
更なる注射可能性研究を、亜鉛およびプロタミンと錯化され、SAIB/BB/PLビヒクル中に分散した、有益薬剤としてGLP−1類似体を使用して行った。試験条件および結果は、下記の表11に提供される。10lbの力を、25または27ゲージ針のいずれかを使用した1mL EXELシリンジに適用し、注射時間を監視した。
【表11】
【0171】
上記の注射時間を、およそ25℃で25ゲージ針および27ゲージ針の両方を使用して注射したとき、GLP−1類似体製剤に対して許容できると見なした。
【0172】
実施例11:有益薬剤としてrhGHを使用した更なる体内デポーの特徴付け:重合体特性に対する制御放出の感受性
本開示の注射用デポー組成物を更に特徴付けるために、追加的実験を、有益薬剤としてrhGHを使用して行った。実験設計には、Sprague Dawleyラットにおける10個の異なる製剤の試験を含めた。10個の製剤は、表12において一般的に記載され、下により詳細に記載される。
【表12】
【0173】
製剤
製剤番号1、同定:rhGH製剤1、説明/物理的外見:懸濁液、1mLの安息香酸ベンジル(BB)中50mgのhGH、保管条件:2〜8℃。
【0174】
製剤番号2、同定:rhGH製剤2、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLA(80:20)中50mgのhGH、保管条件:2〜8℃。
【0175】
製剤番号3、同定:rhGH製剤3、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLA(80:20)中50mgのhGH、保管条件:2〜8℃。
【0176】
製剤番号4、同定:rhGH製剤4、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLGA(80:20)中50mgのhGH、保管条件:2〜8℃。
【0177】
製剤番号5、同定:rhGH製剤5、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLGA(80:20)中50mgのhGH、保管条件:2〜8℃。
【0178】
製剤番号6、同定:rhGH:プロタミン製剤6、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB+メチオニン中50mgのhGH+プロタミン、保管条件:2〜8℃。
【0179】
製剤番号7、同定:rhGH:プロタミン製剤7、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLA+メチオニン中50mgのhGH+プロタミン、保管条件:2〜8℃。
【0180】
製剤番号8、同定:rhGH:プロタミン製剤8、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLA(80:20)+メチオニン中50mgのhGH+プロタミン、保管条件:2〜8℃。
【0181】
製剤番号9、同定:rhGH:プロタミン製剤9、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLGA(80:20)+メチオニン中50mgのhGH+プロタミン、保管条件:2〜8℃。
【0182】
製剤番号10、同定:rhGH:プロタミン製剤10、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLGA(80:20)中50mgのhGH+プロタミン、保管条件:2〜8℃。
【0183】
略号:BB=安息香酸ベンジル、PLA=ポリ乳酸(乳酸開始、M=15.1Kd)、PLA=ポリ乳酸(ドデカノール開始、M=13.9Kd)、PLGA=ポリラクチド−co−グリコリド(グリコール酸塩開始(64:36)、M=11.5Kd、PLGA=ポリラクチド−co−グリコリド(ドデカノール開始(65:35)、M=6.5Kd。Mは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した重量平均分子量である。
【0184】
用量調製およびプロトコル(試験物品1〜10)
乾燥形態でrhGHまたはrhGH複合体を含有する5mLガラスシリンジを含有するホイルパウチを、あらかじめ清潔な乾燥領域中に室温で最低60分間配置し、開封した。ビヒクルを含有する希釈バイアルを、あらかじめ清潔な乾燥領域中に室温で配置し、開封した。ホイルパウチを室温で60分間平衡化させた後、各パウチを一対の清潔な鋏で開封した。各製剤のために正しい容量の希釈剤(1.0mL)を、16Ga 1インチ針(BD PN305197または均等物)を装着された3mLシリンジ(BD PN309585または均等物)を用いて回収した。プラスチックチップを、試験物品粉末を含有する各5mLガラスシリンジから除去した。滅菌メス−メスルアーアダプターの一方の側面を、各ガラスシリンジに固定した。希釈剤を含有する3mLシリンジを次いで、滅菌メス−メスルアーの他方の側面に接続した。3mLシリンジの総液体内容物を、メス−メスルアーを通して、5mLガラスシリンジの粉末内容物中に押し入れた。接続されたシリンジを次いで、少なくとも15分間放置して、粉末を液体で湿潤させた。一様な懸濁液が生成されるまで、混合物に、2つのシリンジの間を通過させることによって(シリンジ間をおよそ50回通過)、液体を次いで粉末と混合した。双方のシリンジの総含量を次いで、1mLプラスチックシリンジ中に押し入れ、ロット番号および溶液を特定するために1mLプラスチックシリンジを標識した。メス−メスルアーを次いで1mLプラスチックシリンジから除去した。最後に、21Ga 1インチ針を、1mLシリンジのルアーロック中に配置し、針を試験物品懸濁液でプライミングした。
【0185】
上記の製剤を、5mg/ラットの単回用量として、100μLの投与容量で皮下注射した。研究には、6匹のラット/群を用いる10群を含めた。群1〜5について、血液を頸静脈から、次の時点で収集した:投薬前(−24時間)、0.5、1、2、4、8、および12時間;ならびに投薬後1、2、3、および5日目。群6〜10について、血液を頸静脈から、次の時点で収集した:投薬前(−24時間)、1、4、8、および12時間;ならびに投薬後1、2、3、5、および7日目。
【0186】
結果
上記の研究についての血清プロフィールは、図14、パネルAおよびBに提供される。パネルAは、試験された5つのビヒクル中の遊離rhGHについての、5日間の期間にわたる血清濃度を示す。パネルBは、試験された5つのビヒクル中のrhGH:プロタミン0.5:1(m/m)複合体についての、7日間の期間にわたる血清濃度を示す。パネルAに示されるように、遊離rhGHについて、ドデカノール開始重合体は、BB単独と比べてPK特性における差異をほとんど示さなかった。乳酸開始およびグリコール酸開始重合体は、BB単独と比べてより低い初期バーストおよび延長した送達を示し、このうちグリコール酸開始PLGAが、乳酸開始PLAよりも放出に対するより高い制御を提供した。
【0187】
rhGH:プロタミン製剤についてパネルBに示されるように、表示される試験ビヒクルの各々は、遊離rhGHが分散された製剤と比べて、初期放出を低下させ、送達の持続期間を延長した。特に、送達は、酸開始重合体を利用した2つの製剤において、更に一層延長された。rhGH:プロタミン複合体の使用は、パネルAにおけるドデカノール開始重合体によって示された、より不十分な本来の放出制御を大部分補ったことに留意されたい。
【0188】
図15、パネルA〜Eは、製剤内での、遊離rhGH対錯化rhGHでの血清プロフィールの比較を示す。示されるように、プロタミンとの錯化は、全ての場合において、1時間の血清レベルを約2.5〜8分の1に低下させ、送達を延長した。
【0189】
平均滞留時間(MRT)は、送達の持続期間を示す。溶解、輸送、吸収、およびPKを含む、複数のプロセスが、MRTに寄与する。上記の実験に由来するデータを使用して、プロタミン複合体および重合体の、BB単独(それぞれ、ΔMRT複合体およびΔMRT重合体)中の遊離rhGHのMRTに対する個々の効果が、それらの組み合わされた効果を予測するかどうかを決定するために、重合体および複合体のMRTへの別個の寄与を抽出した。MRTのための加法モデルは、次の通りであろう:
MRT複合体+重合体=MRTBB+ΔMRT複合体+ΔMRT重合体
【表13】
【0190】
表13に示されるように、加法モデルは、一般に、観察されたMRTを予測しない。したがって、重合体とタンパク質複合体との間に、MRTに寄与する幾らかの相互作用(相乗作用)が存在したと思われる。この相互作用の部分的寄与は、表の最後の欄に列挙される。
【0191】
要約すると、BB:重合体ビヒクル中に懸濁した遊離rhGHの送達において、酸末端基重合体(例えば、酸開始重合体)と、エステル末端基重合体(例えば、ドデカノール開始)重合体との間に明確な差異が観察された。ドデカノール開始重合体の添加は、BB単独がrhGH送達の制御を提供しなかったのと同程度であった。これは、M約6.5〜14kDaを有する重合体について、ならびにPLAおよび65:35 PLGA(65:35は、重合体中のラクチドおよびグリコリド残基のそれぞれの分率またはパーセントを指す)の両方について当てはまる。BB単独中のrhGH:プロタミン複合体の懸濁液からのrhGH放出は、遊離タンパク質の懸濁液と比べて延長された。プロタミン複合体および重合体は、タンパク質放出を制御するのに(延長されたMRT)明らかに相乗的に働き、この相乗作用は、観察されたMRTの40〜70%を占めた。
【0192】
実施例12:更なる体内デポーの特徴付け
2つの追加的rhGH複合体を、乳酸塩開始PLA、M=15.1kDa、またはドデカノール開始PLA、M=13.9kDaのいずれかを含有するビヒクル中で試験し、非錯化(遊離)rhGH製剤と比較した。製剤および試料採取時間は、表14に一般的に記載される通りである。
【表14】
【0193】
製剤
製剤番号1、同定:デポーrhGH 1、説明/物理的外見:懸濁液、1mLの安息香酸ベンジル(BB)中50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0194】
製剤番号2、同定:デポーrhGH 2、説明/物理的外見:懸濁液、LA−PLA、1mLのBB:PLA(80:20w/w%)中50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0195】
製剤番号3、同定:デポーrhGH 3、説明/物理的外見:懸濁液、DD−PLA、1mLのBB:PLA(80:20w/w%)中50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0196】
製剤番号4、同定:デポーrhGH 4、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB中、スクロース、ポリソルベート80、およびメチオニンとのZn2+複合体としての50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0197】
製剤番号5、同定:デポーrhGH 5、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB:PLA(80:20w/w%)中、スクロース、ポリソルベート80、およびメチオニンとのZn2+複合体としての50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0198】
製剤番号6、同定:デポーrhGH 6、説明/物理的外見:懸濁液、DD−PLA、1mLのBB:PLA(80:20w/w%)中、スクロース、ポリソルベート80、およびメチオニンとのZn2+複合体としての50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0199】
製剤番号7、同定:デポーrhGH 7、説明/物理的外見:懸濁液、1mLのBB中、スクロース、ポリソルベート80、およびメチオニンとのZn2+/プロタミン複合体としての50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0200】
製剤番号8、同定:デポーrhGH 8、説明/物理的外見:懸濁液、LA−PLA、1mLのBB:PLA(80:20w/w%)中、スクロース、ポリソルベート80、およびメチオニンとのZn2+/プロタミン複合体としての50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0201】
製剤番号9、同定:デポーrhGH 9、説明/物理的外見:懸濁液、DD−PLA、1mLのBB:PLA(80:20w/w%)中、スクロース、ポリソルベート80、およびメチオニンとのZn2+/プロタミン複合体としての50mgのrhGH、保管条件:2〜8℃。
【0202】
略号:BB=安息香酸ベンジル、PLA=ポリ乳酸(乳酸塩開始、M=15.1kDa)、およびPLA=ポリ乳酸(ドデカノール開始、M=13.9kDa)。
【0203】
用量調製およびプロトコル(試験物品1〜9)
試験物品番号1〜番号9を含有するバイアルを、手により約2分間、一様な製剤懸濁液が得られるまで振盪した。フリップオフクリンプおよび栓を次いで除去した。16G、11/2インチ針を1mL Excelシリンジ上に配置した。試験物品番号1〜9について、およそ1mLの試験物品を回収し、0.1mLの試験物品を、プランジャを後端から除去することによって、試験物品のために事前に取り付けされた1mLテルモSursaverシリンジ:23G 1/2インチの中に裏込めした。シリンジを次いで、各動物に対して送達するためにプライミングした。針目詰まりを回避するために、シリンジは、投与直前まで、0.1mLまでプライミングされなかった。注射前後のシリンジの重量を測定し、記録した。
【0204】
結果
上記の実験の結果は、図16、パネルA〜Cに提供され、そこでそれらは、実施例11からの結果と組み合わされている。各ビヒクル中のrhGHの各型について、用量正規化血清プロフィール(投薬される1mg/kgのタンパク質当たりng/mL血清濃度)をプロットすることにより、これらの製剤において、錯化が血清レベルを約10分の1に低下させ、重合体含量および種類から独立して放出を延長したことが示される。錯化単独(重合体なし、パネルA)は、送達を延長し、このうちプロタミンが明らかにZn2+よりも有効であったが、2つの組み合わせは、プロタミン単独と同程度に有効でなかった。la−PLA単独(複合体なし)の添加もまた、送達を延長したが、dd−PLA単独の効果は、曖昧であった(パネルA〜Cにおける遊離rhGHを比較されたく、それらのグラフは異なる時間の尺度を使用することに留意されたい)。
【0205】
MRTを、各動物につき各製剤について算出し、平均化した。これらの結果は、図17に要約される。重合体および複合体単独の効果は、水平軸に沿って見ることによって判別することができる。重合体および複合体の組み合わされた効果における変動もまた明らかである。
【0206】
実施例11にあるように、複合体および重合体の、MRTを延長することに対する別個の寄与を算出し、加法モデルを使用して、組み合わされた製剤についてのMRTを予測した。これらの結果は、下記の表15に提供される。
【表15】
【0207】
再び、加法モデルは、観察されたMRTを十分に予測せず(la−PLA中のZn2+複合体を除く)、幾つかの製剤について、重合体および複合体の相乗効果が存在することを示した。
【0208】
BB単独、重合体、および複合体の、MRTへの部分的寄与は、実施例11および12の全てにわたって同様であったが、相乗寄与は、実施例12において幾分高めであった。実施例11および12についての重合体−複合体相互作用の、MRTへの部分的寄与は、図18に提供される。次の組み合わせは試験されず、したがって相互作用寄与は決定されなかった:la−PLGA:Zn2+:プロタミン、dd−PLGA:Zn2+:プロタミン、la−PLGA:Zn2+、およびdd−PLGA:Zn2+
【0209】
要約すると、実施例12の結果は、実施例11の結果を確証および拡張する。個々のおよび相乗の、rhGH:プロタミン複合体の効果もまた、rhGH:Zn2+、ならびにZn2+およびプロタミンの両方により形成される複合体で観察した。いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、rhGHの複合体を用いて製剤化することにより、重合体の選択における許容度が提供され得、それは酸末端化重合体およびエステル末端化重合体の、タンパク質放出を制御する能力における本来の差異を補う。
【0210】
実施例13:更なる体内デポーの特徴付け
追加的な実験を行って、追加的溶媒−重合体の組み合わせの適合性を決定した。試験された製剤は次の通りであった:BA:dd−PLGA(6.7kDa、ドデカノール開始、65:35 L:G)、BA:ga−PLGA(11.5kDa、グリコール酸塩開始、64:36 L:G)、EB:dd−PLGA(安息香酸エチル)、EB:ga−PLGA。全てのビヒクルは、80:20(w/w%)溶媒:重合体比を含有した。注記される場合を除いて、天然rhGH(凍結乾燥)を有益薬剤(遊離およびプロタミンとの錯化の両方)として使用した。試料を0.5、1、2、4、8、12、24、48、72、120、および168時間時点で採取しながら、PKを7日間の期間にわたって監視した。上記の製剤についての群平均用量正規化血清プロフィールは、図24(BA:dd−PLGAおよびBA:ga−PLGA)および25(EB:dd−PLGAおよびEB:ga−PLGA)に提供される。全てのゼロ以外の値が示される。
【0211】
予想外に、BA:PLGビヒクルからの送達は極度に低く、このうち生物学的利用能はそれぞれ、0.2未満および2%であった。EB:PLGAからの送達は、BB:PLGAについて本明細書において先に示されたものに匹敵した。dd−重合体についてのピーク血清濃度は、恐らくはアッセイ飽和に起因して、より低いと思われた。エステル末端化重合体と酸末端化重合体との間のMRTにおける差異は、BB−PLGAビヒクルにおける場合よりも顕著でなかった。MRTを上記の製剤の各々について算出したが、結果は、下記の表16に提供される。
【表16】
【0212】
EB:dd−PLGA中の遊離rhGHの懸濁液からのrhGH送達の持続期間は、本明細書で先に試験された同等のBBベースのビヒクルからのものよりも長かった。EB:ga−PLGA中の遊離rhGHの懸濁液からのrhGH送達の持続期間は、本明細書で先に試験された同等のBBベースのビヒクルからのもの以下であった。BA製剤からの非常に低いrhGH送達は、EBおよびBBとのその構造的類似性に鑑みて予想外であった。
【0213】
BA製剤からの体外のrhGHの放出は、ほぼ11日間にわたって1%未満で、かなり低かった。更に、放出実験の終了時の、これらのデポーからPBS抽出培地中への無傷のタンパク質の回収は、1%未満であったが、6Nグアニジンの添加によって大幅に改善され、これは製剤中の広範なタンパク質凝集を示唆している。EBベースの製剤からのrhGHの回収は、ほぼ完全であり、6Nグアニジンの抽出培地への添加による影響を受けなかった。
【0214】
体外および体内での観察は、BAとrhGHとの間の何らかの具体的な相互作用を示唆するが、10%BAを有するrhGHの製剤は、体内で、BB単独を含有する製剤と同様によく機能している。BA:PLGA製剤からのrhGHの送達が、ここで観察されたものよりもはるかに長い時間にわたって生じる可能性もまた存在する。
【0215】
これらの結果は、より短い送達持続期間、すなわち数日間〜1週間のために設計される注射用デポー製剤のためのBAおよびEBの実用性を示唆し得る。
【0216】
実施例14:「クラウド」の特徴付け
本明細書に上述されたように、本開示の注射用生分解性デポー組成物の有益な放出特性は、少なくとも一部には、体内での、デポーの表面上での、非常に流動的な、非構成的(いかなる特記すべき機械的完全性も有さない)、「速度制御クラウド」または「速度制御薄膜」の形成に起因すると考えられる。開示されるデポー組成物の望ましい制御送達特性は、デポーの液体コア中に分散した不溶性の有益薬剤複合体、およびデポーの表面上の重合体のクラウドまたは薄膜の両方の速度制御寄与からもたらされてもよい。
【0217】
この速度制御クラウドの物理的発達は、図19および20に示されるようにインサイツで可視的に見ることができる。23ゲージ普通針を使用して、およそ0.5mLのSAIB/BB/PLA(LA開始)(8:72:20)ビヒクルを、PH7.4および37℃のPBS緩衝液中に注射した。第1の写真(図19)を注射の開始後約10秒時点で撮り、第2の写真(図20)を0.5mL注射の完了後約60秒で撮った。図19は、ビヒクルの中心における不透明度の若干の発達を示すが、それはビヒクルのPBSとの初期接触に起因する可能性が高く、手順のアーチファクトと見なされる。ほぼ不透明な白色クラウドは、図20に示されるように、60秒時点までにビヒクルの表面全体にわたって形成される。
【0218】
クラウド形成動力学は、下記の表17における多様な疎水性溶媒:PLAの組み合わせについて記載され、表中、インデックス番号0〜4のうちの1つが、ビヒクルの透過率の可視的特徴付けに基づいて選択され、ここで0は、およそ100%の透過率を示し、1は、およそ80%よりも大きい透過率を示し、2は、およそ50%よりも大きい透過率を示し、3は、およそ50%未満の透過率を示し、4は、およそ0%の透過率を示す。
【0219】
試料調製
試験試料を、各溶媒につきPLAの3つの濃度レベル(10w/w%、20w/w%、および30w/w%)で、重合体が完全に溶解するまで回転子上で混合することによって、調製した。
【0220】
クラウド形成試験条件
試験試料容量は1mLであり、試験培地は、フッ素重合体樹脂ライニングGreen Thermoset Capを備えるFrench Square Bottles,Wide Mouth,Qorpak(登録商標)120mL(4OZ)中、pH7.4の100mLの10mM PBSであった。試験温度は37℃であった。試験のために、100mLの培地をFrench Square Bottles中に移した。培地を、37℃のボトル中、インキュベーターにおいて平衡化した。1mLの重合体溶液を、ボトルの下隅にピペット注入し、緩徐に放出した。ボトルを次いで、37℃のインキュベーター中に再び配置した。指定された時点で、ボトルをインキュベーターから除去し、組成物を可視的に検査した。不透明度(クラウド量)の程度を、上で定義されたインデックス番号1〜4を使用して記録し、ボトルをインキュベーター中に再び配置した。
【表17】
【0221】
上記の表に示されるように、1時間時点までに、低下した透過率によって明らかとなる有意なクラウド形成が、上記のビヒクルの各々(ベンジルアルコール−10%PLビヒクルを除く)で生じた。
【0222】
実施例15:更なる「クラウド」の特徴付け
本開示の速度制御クラウド形成ビヒクルはまた、37℃でエイジングされたときのそれらのゲル形成特性の欠如によっても特徴付けることができる。これは、選択した温度での経時的な粘度安定性を監視することによって示すことができる。ビヒクル組成物を下記の表18に示されるように調製した。
【表18】
【0223】
4つのビヒクルをガラスバイアル中に配置し、37℃で14日間インキュベートした。動的粘度を、Anton Paar MCR301流動計を使用して、25℃で、10%の定歪および0.1〜100s−1の範囲の角振動数で測定した。他の試験条件は、試験物質の量:100μL、静止円錐平板と回転円錐平板との間のギャップ距離:0.05mMであった。
【0224】
37℃でエイジングされたビヒクルについての結果は、図21に示される。温度の関数としての安定性は、図22に示される。3、7、および14日目の粘度測定は、下記の表19に提供される。
【表19】
【0225】
G’(貯蔵弾性率)およびG’’(損失弾性率)についての値を決定し、減衰係数Tan δ(G’’/G’)を算出した。これらの結果は、下記の表20〜27に示される。
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【0226】
SAIBの存在下で、PLA(15.2KD)ビヒクルは、37℃で中程度の粘度減少を示す(2〜3cP/週の減少)。いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、これは、緩徐な重合体分解の結果であり得る。重合体分解は、SAIBを含まないビヒクルについて、有意に増加(3〜5倍の増加)されることが示された(遮蔽効果)。
【0227】
PLGA 65/35(6.2KD)を用いて調製された唯一のビヒクルは、他方で、経時的な粘度増加を示した(11cP/週の増加)。再び、いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、これは、恐らく、強化されたファンデルワールス相互作用をもたらす、段階的な重合体鎖再編成に起因する。しかしながら、弾性(保管)モジュラスがごく少量であり、優勢とはならないため、ゲル形成の指標は何ら存在しない。したがって、試験されたビヒクルは、ゲル形成特性を欠いている。
【0228】
実施例16:追加的な錯化薬剤の特徴付け
追加的な錯化薬剤を、rhGHを沈殿させるそれらの能力について、体外で試験した。この実験の結果は、下記の表28に提供される。
【0229】
ヒト成長ホルモン(Hospira,Adelaideから購入)を、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリアデニル酸(ポリ−A)、またはポリチミン(ポリ−T)と、適切な比率で錯化して(表28に指定されるように)、懸濁液を形成した。上清を、錯化物質懸濁液の遠心分離によって沈殿物(ppt)から分離した。上清溶液を、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)によって、非錯化hGHについて分析した。
【表28】
【0230】
表28に示されるように、列挙された錯化薬剤の各々(ヒアルロン酸を除いて)は、rhGH有益薬剤を少なくとも部分的に沈殿させることが可能であった。カチオン性薬剤については、ポリリジンが、ポリアルギニンよりも、rhGHを沈殿させることにおいて有効であった。試験されたアニオン性薬剤については、ポリチミンは、1500mer長において、20または10mer長におけるよりも有効であった一方で、ポリアデノシンは、10mer長において、150mer長におけるよりも若干有効であるように思われた。
【0231】
追加的な実験を行って、種々の錯化剤と錯化されたhGH有益薬剤の溶解速度を特徴付けた。hGHおよび異なる錯化剤の溶液を、次の比率で提供して、不溶性の有益薬剤複合体を得た:hGH+ポリ−リジン(1:1)、hGH+ポリアデニル酸+プロタミン(1:0.2:0.3)、hGH+Zn+プロタミン(1:2:0.3)、hGH+Zn(1:10)。遊離hGHを対照として提供した。溶解速度を次いで、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)によって監視した。これらの溶解実験の結果は、図26および27に提供される。上記の複合体のうち、Zn/プロタミン複合体が、より制御された溶解速度を提供したが、それは所望の放出プロフィールをもたらすであろう。
【0232】
実施例17:種々のhGH複合体についての溶解速度
次の粉末製剤を調製および分析して、体外でのhGHの溶解に対する、種々の錯化剤の効果を決定した。
【0233】
hGH粉末の調製:
BresaGenからの緩衝液中、各々3mLのバルクhGH溶液のアリコートを、5mLタイプのHypak BDガラスシリンジ中に移し、表1に提供される凍結乾燥サイクルおよびプログラムP90(hGHに対して最適化)を使用して凍結乾燥させて、FTS凍結乾燥器、Dura Stop,MP Stoppering Tray Dryer,Stone Ridge,NYに提供されるステップを当てはめた。この粉末からの放出は、初期hGH含量の40%のみであった。タンパク質の残りは、放出培地中で変性または凝集した。
【0234】
hGH:Zn粉末の調製:
100mgのBresaGen hGH粉末を、15mL広口ガラスジャー中に配置した。5.5mLの25mM NHHCO(pH約7.5)溶液を添加し、化合物を30分間室温で、それが透明になるまで400rpmで撹拌した。次いで、0.45mLの100mM酢酸亜鉛溶液を緩徐に添加して、白色沈殿物を形成させた。結果として生じた懸濁液を30分間撹拌して、錯化反応を完了させた。0.19mLの290mMスクロース溶液を次いで、400rpmで撹拌しながら添加した。溶液が透明となったとき、15.2μLの10%ポリソルベート20溶液を添加した。上記のステップからの各々3mLのバルク懸濁液のアリコートを、5mLタイプのHypak BDガラスシリンジ中に移し、表1に提供される凍結乾燥サイクルおよびプログラムP90(hGHに対して最適化)を使用して凍結乾燥させて、FTS凍結乾燥器、Dura Stop,MP Stoppering Tray Dryer,Stone Ridge,NYに提供されるステップを当てはめた。この粉末からは、放出されたタンパク質はより多い(>70%)が、全ての放出は、48時間未満のうちに起こる。
【0235】
hGH:Zn:プロタミン粉末の調製:
100mgのBresaGen hGH粉末を、15mL広口ガラスジャー中に配置した。5.5mLの25mM NHHCO(pH約7.5)溶液を添加し、化合物を30分間室温で、それが透明になるまで400rpmで撹拌した。次いで、90μLの100mM酢酸亜鉛溶液を撹拌しながら添加し、続いて1.02mLの硫酸プロタミン溶液(濃縮10mg/mL)を緩徐に添加して、白色沈殿物を形成させた。結果として生じた懸濁液を30分間撹拌して、錯化反応を完了させた。0.19mLの290mMスクロース溶液を次いで、400rpmで撹拌しながら添加した。溶液が透明となったとき、15.2μLの10%ポリソルベート20溶液を添加した。上記のステップからの各々3mLのバルク懸濁液のアリコートを、5mLタイプのHypak BDガラスシリンジ中に移し、表1に提供される凍結乾燥サイクルおよびプログラムP90(hGHに対して最適化)を使用して凍結乾燥させて、FTS凍結乾燥器、Dura Stop,MP Stoppering Tray Dryer,Stone Ridge,NYに提供されるステップを当てはめた。プロタミンおよび亜鉛のこの錯化粉末からは、溶解は、遊離hGHまたは亜鉛のみの複合体粉末よりも緩徐である。
【0236】
図28は、種々の調製物についての経時的な累積溶解%を示す。
【0237】
実施例18:更なる有益薬剤
エクセナチド(Bachem,Inc.から購入)を、重炭酸アンモニウム(50mM)中に緩衝させることによって、酢酸亜鉛(1:0.4モル比)としての亜鉛および硫酸プロタミン(1:0.3)としてのプロタミンと錯化した。沈殿物を含有する結果として生じた懸濁液を、Buchi 329噴霧乾燥器を使用して噴霧乾燥させた。
【0238】
ペプチド有益薬剤(エクセナチド)を、体内での有益薬剤の放出に対するデポー製剤の効果(ラット)を決定するために、本開示による注射用デポー組成物中で試験した。次の製剤を試験した:エクセナチド:プロタミン1:2(m/m)、凍結乾燥、9.5mg用量、SAIB/BB/la−PLA(8/72/20)中、およびエクセナチド:プロタミン1:2(m/m)、噴霧乾燥、9.5mg用量、SAIB/BB/la−PLA(8/72/20)メチオニン&ポリソルベート80。これらの製剤を、2.1μg、21μg、および210μgのSC水性用量と比較した。血清濃度を経時的に監視した。この実験についての結果は、図29に提供され、水性ボーラスに比べて改善された制御放出を示す。
【0239】
実施例19:更なる注射可能性研究
更なる注射可能性研究を、有益薬剤として、プロタミン、または亜鉛およびプロタミンの組み合わせで錯化され、下記の多様なビヒクル中に分散された、GLP−1類似体を使用して行った。試験された製剤の説明は、下記の表29に提供される(このGLP−類似体は、上の実施例7で利用されたものと異なる)。
【0240】
Instron 3343器具を、1mL EXELシリンジ(EXEL 1mLルアーロックチップシリンジ、REF番号26050)および27G×1/2インチのサイズのB−D針、または永久的に取り付けられた針25G×5/8インチを備える1mLテルモSurSaverシリンジ(REF番号SSO1D2516)と共に、研究において使用した。送達された容量は、およそ0.2mLであり、適用された力は、10lbfであった。試験を約21.8℃〜22.2℃の室温で行った。製剤中の標的ペプチド含量は、70mg/mLであった。製剤についての注射可能性の結果は、下に提供される。
【表29】
【0241】
上記の製剤の8つ全ては、25G×5/8インチおよび27G×1/2インチのサイズの針を円滑に通過し、許容される注射可能性を有すると見なされた。
【0242】
実施例20:GLP−1類似体製剤についての追加的な薬物動態の特徴付け
追加的な体内実験を、実施例19について上述されるGLP−1類似体製剤を使用して行った。製剤の各々の持続放出、初期バースト、および生物学的利用能特性を決定した。
【0243】
局所注射部位における体毛の除去後に、上記の製剤をSprague Dawleyラット中に皮下注射した。製剤を、およそ100μLの容量で、7.3〜9.5mg/ラットの範囲の投薬量により、1処置群当たり3匹のラットを用いて投与した。これらの製剤を、2mg/ラットの線量でのAPI単独の投与と比較した。上記の処置条件の各々についての平均PKプロフィールは、図23に示される。
【0244】
上記のデータに基づいて、上記の製剤の各々についての薬物放出速度AUC(1日目)/AUC(14日目)(初期バーストの測定)が10%未満であると決定した。製剤のうちの幾つか(001、004、および007)は、APIのTmaxと同時に、小さい初期バーストを示した。AUC(1日目)/AUC(14日目)についての平均値は、下記の表30に提供される。
【表30】
【0245】
生物学的利用能を上記の実験に基づいて算出し、結果は、下記の表31に提供される。
【表31】
【0246】
上記の製剤は、APIと比べて14日間までで18〜34%の許容される生物学的利用能を示した。
【0247】
要約すると、上記のデータは、試験された製剤の全てが、ラットにおけるGLP−1類似体の十分な濃度を維持したことを示した。更に、0〜24時間にわたる累積薬物投与量(AUC1日目/AUC14日目)は、製剤の各々について10%未満であった。予測された定常状態濃度は、製剤FおよびGを除いて、完全に治療域内であった。最後に、上記の製剤の各々は、許容される生物学的利用能を示した。
【0248】
本発明は、その具体的な実施形態を参照して記載されたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われてもよく、均等物が置換されてもよいことが当業者によって理解されるべきである。更に、特定の状況、物質、物質の組成、プロセス、プロセスステップ(単数または複数)を本発明の目的、趣旨、および範囲に適合させるために、多くの修正が行われてもよい。全てのかかる修正は、本明細書に添付される特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30