(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(a)として2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン若しくは6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタンの誘導体を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
請求項1に記載の組成物が、溶液の粘度が3000mPa・s〜5000mPa・sになるまで50℃〜230℃に加熱され、かつ、重合反応がイソシアネートブロッキング剤の添加によりクエンチされることを特徴とする、芳香族ポリアミドイミドの溶液の製造方法。
請求項8に従って製造される芳香族ポリアミドイミドの溶液を支持体上に塗布してコーティングを形成すること、及び該コーティングを硬化条件にさらすことを含んでなる、支持体上の硬化されたコーティングの形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[発明の詳細な記述]
ジオキサビシクロアルカンに由来する液体化合物はPAIに関して目立った溶媒特性を保有する。これら溶媒は木材若しくは他のセルロース含有生成物のような再生可能資源から製造し得、そして通常生物分解性である。
【0008】
適するジオキサビシクロアルカン誘導体は、ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン、ジオキサビシクロ[2.2.2]オクタン、ジオキサビシクロ[3.3.2]デカン、ジオキサビシクロ[4.2.2]デカン、ジオキサビシクロ[4.3.1]デカン、ジオキサビシクロ[5.2.1]デカン、ジオキサビシクロ[3.3.3]ウンデカン、ジオキサビシクロ[4.3.2]ウンデカン、ジオキサビシクロ[4.4.1]ウンデカン及びジオキサビシクロ[5.3.1]ウンデカンならびにそれらの液体誘導体、具体的にはそれらのケト誘導体である。
【0009】
好ましくは、成分(a)の溶媒は、2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン若しくは6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタンの誘導体である。
【0010】
こうした化合物は、ザラゴジン酸A若しくはソルジジンのような天然産物であるか、又
は既知の方法に従って製造し得る。適する2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン誘導体は例えばJ.Am.Chem.Soc.
117、8106−8125(1995)に記述されている。
【0011】
適する溶媒の例は、2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン、2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−オン、2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−チオン、4−メチリデン−2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン、1−メチル−2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン、1,4,4−トリメチル−2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン、1,3,5−トリメチル−2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン、1−メチル−4−フェニル−2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン、1−メチル−4−フェニル−2,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクト−7−イルアセテート、6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン、6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−チオン及び6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−オンである。
【0012】
6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−オンが成分(a)としてとりわけ好ましい。
【0013】
ジヒドロレボグルコセノン(6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−オン)は、再生可能セルロースから製造される二極性非プロトン性溶媒であり、そして潜在的変異原性について試験されており、変異原性は観察されない。
【0014】
一方、6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−オンは、呼称Cyrene
TMの下で商業的に入手可能である(Circa Groupにより供給される)。
【0015】
カルボン酸無水物及びジイソシアネートの重縮合のための溶媒としての、NMPのような従来技術の極性非プロトン性溶媒の代わりの、ジオキサビシクロアルカン誘導体の適用が、迅速な硬化を促進するのみならず高められた溶媒抵抗性をも有するコーティングを提供することが、驚くべきことに見出された。
【0016】
特許請求される組成物中で使用される溶媒混合物は、50重量%までの、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、テトラメチル尿素、ニトロメタン、亜硫酸エチレン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルエチレン尿素、3−メチルオキサゾリジン−2−オン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、N−メチル−ε−カプロラクタム、ジメチルスルホン、S,S−ジメチルスルホキシイミン、テトラエチルスルファミド、スルホラン、炭酸エチレン、ジオキサン、ジオキソラン、メチルリン酸ビス(ジメチルアミド)、炭酸プロピレン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、リモネン、5−(ジメチルアミノ)−2−メチル−5−オキソペンタン酸メチルエステル、ペンタン二酸、2−メチル−1,5−ジメチルエステル、3−メトキシプロピオニル−N,N−ジメチルアミド及び3−ブトキシプロピオニル−N,N−ジメチルアミドのような他の極性非プロトン性溶媒を含有しうる。
【0017】
好ましい一態様において、本発明の組成物は、成分(a)として90〜100重量%のジオキサビシクロアルカン誘導体を含有する一溶媒若しくは溶媒混合物を含んでなる。
【0018】
使用される溶媒の水分含量が可能な限り低いことが重要である。
【0019】
スムーズな反応は、溶媒の水分含量が0.1重量%未満である場合に起こる。
【0020】
成分(a)として純粋なジオキサビシクロアルカン誘導体、具体的には純粋な6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−オンを含んでなる組成物がとりわけ好ましい。
【0021】
ポリアミドイミドの製造のための適する出発生成物すなわち成分(b)及び(c)は公知であり、そして商業的に入手可能であるか若しくは既知の方法に従って合成し得るかのいずれかである。
【0022】
成分(b)としての芳香族トリカルボン酸無水物の例は、トリメリット酸無水物(TMA)、ヘミメリット酸無水物、メチルトリメリット酸無水物、4’−カルボキシジフェニル−3,4−ジカルボン酸無水物、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、3,4,6−及び1,3,8−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,7−アントラセントリカルボン酸無水物及びそれらの組合せである。
【0023】
トリメリット酸無水物がとりわけ好ましい。
【0024】
成分(c)としての適するジイソシアネートは、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,5−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、3,5−トルエンジイソシアネート、1−メトキシ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3,5−トリエチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチル−6−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジイソシアナト−4,4’−ジメチルジフェニルメタン、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4−ジイソシアナト−3,3’−ジクロロジフェニルメタン、4,4−ジイソシアナトジフェニルエーテル、2,4−ジイソシアナトジフェニルエーテル、1,3−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4−クロロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル(iisopropyl)−1,3−フェニレンジイソシアネート、ジュリレン(durylene)ジイソシアネート、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、2,2−ビス(4−イソシアナトフェニル)プロパン及び4,6−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、並びにそれらの組合せである。
【0025】
好ましい成分(c)は4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンである。
【0026】
成分(b)及び(c)はおよそ等モルの量で便宜的に(conveniently)適用される。この文脈におけるおよそ等モルの量は、0.7〜1.3mol、好ましくは0.8〜1.2mol、とりわけ0.9〜1.1molのトリカルボン酸が1molのジイソシアネートあたりに適用されることを意味している。
【0027】
成分(a)、(b)および(c)の相対量は広範な範囲内で変動しうる。
【0028】
好ましい一態様において、成分(a)の量は、総組成物に基づき60〜95重量%、よ
り好ましくは70〜90重量%、及び、とりわけ75〜85重量%であり、並びに成分(b)+(c)の総量は、総組成物に基づき5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、及び、とりわけ15〜25重量%である。
【0029】
成分(b)および(c)は、必要とされる場合は上昇された温度で、例えば50〜150℃で、好ましくは60〜100℃で成分(a)の溶媒若しくは溶媒混合物中に連続的に溶解される。その後、該反応を撹拌下高温で、好ましくは110〜180℃で、より好ましくは120〜160℃で実施する。重縮合反応中、該溶液の粘度を時々測定する。コーティングの応用のため、2000mPa・s〜6000mPa・s、好ましくは3000mPa・s〜5000mPa・s(コーン6を伴うCAP 2000粘度計(Brookfield)を使用して25℃でISO 3219に従って測定される)の粘度が望ましい。所望の粘度が達成される場合、該反応をイソシアネートブロッキング剤の添加によりクエンチし得る。
【0030】
適するイソシアネートブロッキング剤は、例えば第WO 2011/051412号明細書に記述されている。典型的なイソシアネートブロッキング剤は、フェノール及びポリオールのようなアルコール;アミン;ラクタムのようなアミド;マロン酸エステルのような不安定なメチレンプロトンをもつ活性メチレン化合物;ピラゾールのような窒素含有ヘテロアリール化合物;オキシム;ジアルキルケトキシムのようなケトキシム;並びにヒドロキサム酸エステルを包含する。
【0031】
適するイソシアネートブロッキング剤の例は、マロン酸ジエチル、3,5−ジメチルピラゾール、メチルエチルケトキシム、及び好ましくはε−カプロラクタムである。
【0032】
所望の場合、本発明の液体組成物は、安定化剤、増量剤、充填剤、補強剤、色素(pigment)、色素(dyestuff)、可塑剤、粘着付与剤、ゴム、促進剤(accelerators)、希釈剤のような通例の添加物若しくはそれらのいずれかの混合物を含有しうる。
【0033】
本発明は、従って、請求項1に記載の組成物が、該溶液の粘度が3000mPa・s〜5000mPa・sになるまで50℃〜230℃に加熱され、かつ、重合反応がイソシアネートブロッキング剤の添加によりクエンチされることを特徴とする、芳香族ポリアミドイミドの溶液の製造方法にさらに関する。
【0034】
本発明のさらなる一態様は上述された方法により製造されるポリアミノイミドである。
【0035】
溶液の形態で、そのように得られるPAIは、繊維、絶縁ワニス、接着剤、及び、とりわけ塗膜の製造に良好に適する。
【0036】
PAI溶液硬化剤は、吹付、浸漬、はけ塗、塗装、ローラー塗などのような当業者に公知の方法により所望の厚さで支持体の1若しくはそれ以上の表面に塗布しうる。塗布後、コーティングを周囲温度でかつ/若しくは熱の適用により硬化する。支持体は、限定されるものでないがセメント、金属、コンクリート、煉瓦、セメント板若しくは石膏ボードを挙げることができる。
【0037】
好ましくは、上述された方法により得られる芳香族ポリアミドイミドの溶液は、金属表面のためのコーティング組成物として使用される。とりわけ、アルミニウムおよびスチール表面のためである。
【0038】
本発明は、従って、上述された方法に従って製造される芳香族ポリアミドイミドの溶液
を支持体上に塗布してコーティングを形成すること、及び該コーティングを硬化条件にさらすことを含んでなる、支持体上の硬化されたコーティングの形成方法にさらに関する。
【0039】
塗布されたコーティングは、例えば1分から約10日までのような、コーティングが硬化することを可能にするのに十分ないずれかの時間の期間硬化することを可能にされうる。上昇された温度が通常硬化反応を加速し、例えば一般に2h/80℃+1h/120℃+2h/220℃が十分である。
【0040】
本発明の組成物から得られるコーティングは、200℃超の温度に加熱することにより非常に短時間で硬化され得る。通常、完全な硬化は230℃で3分以内に達成される。
【0041】
該硬化されたコーティングは、優れた熱安定性及び溶媒抵抗性、とりわけNMPに関する溶媒抵抗性により識別される。
【0042】
従って、なお別の態様において、上述された方法に従って被覆される物品若しくは支持体が提供される。
【0043】
本発明は以下の制限しない実施例により具体的に説明される。
【実施例】
【0044】
特性の測定及び使用される原材料の一覧:
別の方法で示されない限り、溶液の粘度は、コーン6を伴うCAP 2000粘度計(Brookfield)を使用して25℃で測定する(ISO 3219)。
【0045】
本実施例で使用される溶媒は商業的に入手可能な製品である。
【0046】
CYRENE
TMは6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−オン(ジヒドロレボグルコセノン、Cerca Groupにより供給される)である。
【0047】
4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)およびトリメリット酸無水物(TMA)は同様に純度95%超の商業的に入手可能な製品である。
【0048】
実施例A1
79.8gのCyreneを、KPG攪拌機(プロペラ型)、熱電対、ガス気密攪拌機チューブ、温度制御装置、還流冷却器及び窒素入口で装備されたガラス反応器に入れる。8.41g(0.0438mol)のトリメリット酸無水物(TMA)を155rpmで撹拌下に添加する。該混合物を加熱し、それに際してTMAが65℃で溶解される。89℃の内部温度で、10.97g(0.0438mol)の4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)を添加する。85℃でMDIは溶解することを開始する。フラスコの内部温度を145℃に増大させかつ1時間保つ。136℃で明確な気体発生が観察される。145℃で反応の粘度を測定する。145℃で5時間の反応時間後に粘度は3540mPa・sである(コーン6、500rpm。CAP 2000、Brookfield)。フラスコの内容物を100℃の内部温度に冷却し、そして0.83gのε−カプロラクタムを添加する。該黒色の液体をさらなる3時間100℃で保つ。その時間の後に該溶液を室温に冷却する。
収量:83.65g、η
25℃=3345mPa・s、コーン6、500rpm(CAP 2000、Brookfield)。
【0049】
実施例A2及びA3並びに比較実施例C1
実施例A1で上述されたとおり、ポリアミドイミドの溶液を、Cyrene及びスルホ
ランの混合物(実施例A2)、Cyrene及びN−メチルピロリドン(NMP)の混合物(実施例A3)並びに純粋なNMP(比較実施例C2)を使用して、TMA及びMDIから製造する。
【0050】
溶媒抵抗性試験
A.負荷下のNMPに対する抵抗性
実施例A1〜A3及びC1で製造された溶液をアルミニウムシートに塗布し、そして該コーティングをオーブン中で硬化する(3分/230℃)。その後、被覆されたシートを室温(RT)で負荷下に(それぞれ2kg/3h若しくは2kg/6h)NMP中に浸漬する。
【0051】
コーティングの外見を視覚的に評価する。
【0052】
B.NMPに対する抵抗性−24h試験
実施例A1〜A3及びC1で製造された溶液をスチールシートに塗布し、そして該コーティングをオーブン中で硬化する(2h/80℃、1h/120℃、2h/220℃)。その後、被覆されたシートをNMP中にRTで24h浸漬する。コーティングの外見を、以下の等級に従って視覚的に評価する:
+=合格
/=境界
−=落第
該試験の結果を表1に要約する。
【0053】
【表1】
【0054】
試験結果の論考
発明の組成物A1、A2及びA3は、アルミニウムおよびスチール表面のための耐熱性コーティングの要件を満たす硬化された生成物を提供する。
【0055】
驚くことに、本発明の組成物から金属板上で製造される薄膜は230℃で3分以内に硬
化され得、そして該硬化されたコーティングはRTでNMP中および負荷下でNMP中で安定のままである。
【0056】
他方、比較組成物C1から得られるコーティングは、溶媒抵抗性に関して該要件に一致しない。