(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1において、Dは、自動車の車体側面に固定される図示略の前後方向のガイドレールにより前後方向へ開閉可能に支持されるスライドドアである。
【0013】
スライドドアDの外側面(アウタパネル)には、スライドドアDを車外から開閉する際に操作されるアウトサイドハンドルOHが設けられる。同じく室内側の内側面には、スライドドアDを室内から開閉する際に操作されるインサイドハンドルIHと、後述のリヤドアラッチ装置1を手動操作で後述の施解錠機構をアンロック状態及びロック状態に切換える際に操作されるロック操作ノブLKが設けられる。同じく前部には、スライドドアDを閉鎖位置に保持するためのフロントドアラッチ装置FDが設けられる。同じく下部には、スライドドアDを全開位置に保持するための全開ラッチユニットODが設けられる。同じく後部には、フロントドアラッチ装置FDと共にドアDを閉鎖位置に保持するためのリヤドアラッチ装置1(以下、「自動車用ドアラッチ装置1」という)と、自動車用ドアラッチ装置1の後述のラッチ6を作動させることでスライドドアDをハーフラッチ位置(全閉位置の直前の位置)からフルラッチ位置(全閉位置)に強制的に閉め込むためのクローザ装置CLが設けられる。また、車体には、必要に応じて、スライドドアDを電動で開閉移動させるための図示略の電動開閉装置が設けられる。
【0014】
全開ラッチユニットODは、スライドドアDが全開位置にあるとき、車体側に設けられる図示略の全開用ストライカに係合することにより、スライドドアDを全開位置に保持し、全開用ストライカとの係合が解除されることにより、スライドドアDの閉動作を可能にする。なお、全開ラッチユニットODの具体的構成は、本発明に直接関係しないから、構成の詳細説明については省略する。
また、以下の説明で使用する全開ラッチユニットODの「アンラッチ作動」とは、全開用ストライカに係合している全開ラッチユニットODが全開用ストライカから外れる際の作動を指す。
【0015】
図2〜4に示すように、自動車用ドアラッチ装置1は、後面が金属製のカバープレート2により閉塞されると共に、スライドドアDの後端内部に固定される合成樹脂製のボディ3を備える。カバープレート2には、スライドドアDのインナーパネルの側面に平行に配置されるベースプレート4が固定される。ベースプレート4は、必要に応じてボディ3に対しても固定される。
【0016】
カバープレート2とボディ3との間には、前後方向を向くラッチ軸5により枢支され、スライドドアDの閉鎖時、車体側のストライカS(
図5参照)と噛合可能なラッチ6と、前後方向を向くラチェット軸7により枢支され、ラッチ6の外周縁に設けられたフルラッチ係合部6a又はハーフラッチ係合部6bに選択的に係合可能なラチェット8とを含むラッチ機構が収容される。
【0017】
噛合機構を収容するボディ3に固定されるカバープレート2に一体的に形成された操作機構配置部2a、及びボディ3に直接又は間接的に固定されるベースプレート4は、本発明に係るベース部に相当する。
【0018】
ベースプレート4又は操作機構配置部2aには、操作機構を構成する構成要素である施解錠用モータ11、ロックレバー12、ノブレバー13、オープン用モータ14、オープン用回転体15、アウトサイドレバー16、第1インサイドレバー17、第2インサイドレバー18、第1オープンレバー19、第2オープンレバー20、チャイルドプルーフレバー21、全開解除レバー22、第1クローザレバー23、第2クローザレバー24、第1クローザキャンセルレバー25A、第2クローザキャンセルレバー25Bが配置される。
【0019】
図5に示すように、ラッチ6は、ストライカSが噛合していないスライドドアDの開放位置に対応するオープン位置(
図5に実線で示すフルラッチ位置から反時計方向へ略90度回転した位置)から、ラッチ軸5に巻装されるスプリング9の付勢力に抗してクローズ方向(
図5において時計方向)へ所定角度回動してストライカSに辛うじて噛合するハーフラッチ位置を経由して、ストライカSに完全に噛合するフルラッチ位置(
図5に示す位置)に回動可能である。
【0020】
ラチェット8は、ボディ3に支持されるスプリング10の付勢力により常時係合方向(
図5において時計方向)へ付勢されると共に、ラッチ6がオープン位置にあるときにはラッチ6の外周縁に当接し、ラッチ6がハーフラッチ位置にあるときにはハーフラッチ係合部6bに係合し、ラッチ6がフルラッチ位置にあるときにはフルラッチ係合部6aに係合すると共に、フルラッチ係合部6a又はハーフラッチ係合部6bに係合した係合位置からスプリング10の付勢力に抗してオープン作動(
図5において反時計方向への回動)させられることによって、フルラッチ係合部6a又はハーフラッチ係合部6bから外れることでラッチ6のオープン方向(
図5において反時計方向)への回動を許可してスライドドアDの開操作を可能にする。
【0021】
以下の説明で使用するラッチ機構の「ラッチ状態」とは、ストライカSがラッチ6に係合し、ラチェット8がラッチ6のフルラッチ係合部6a又はハーフラッチ係合
部6bに係合した状態を指し、「アンラッチ状態」とは、ラッチ6がオープン位置にある状態を指し、「アンラッチ作動」とは、ラチェット8がオープン作動し、ラッチ6のフルラッチ係合部6a又はハーフラッチ係合
部6bから外れるときの作動を指す。
【0022】
図6は、操作機構の分解斜視図である。
図7は、操作機構が初期状態にあるときの要部の側面図である。
図8〜14は、各操作に応じた形態で、いずれかの操作系要素が作動した状態示す作動説明図である。なお、
図8〜14においては、各操作系要素の作動状態を見易くするため、初期位置に止まった操作系要素については、2点鎖線で示し、初期位置以外の位置に作動した操作系要素については、実線で示すと共に、作動方向を矢印で示している。
【0023】
施解錠用モータ11は、車両の適所に設けた操作スイッチ又は携帯用のワイヤレス操作スイッチのロック/アンロック操作を契機に正転又は逆転駆動すると共に、回転軸に固着されたウォーム11aがベースプレート4に枢軸26により枢支されたセクタギヤにより構成される施解錠用回転体27に噛合することで施解錠用回転体27を正転又は逆転させる。
【0024】
施解錠用回転体27は、自動車用ドアラッチ装置1の施解錠機構をアンロック状態とする
図7に示すアンロック位置(初期位置)及び当該アンロック位置から反時計方向へ所定角度回動して施解錠機構をロック状態とする
図9に示すロック位置に回動可能であって、ベースプレート4に支持されたターンオーバースプリング29の付勢力により各位置に弾性保持される。
【0025】
施解錠機構とは、ロックレバー12及び後述の第1ロックピン28を含んで構成される。アンロック状態とは、ロックレバー12及び第1ロックピン28が
図7に示すアンロック位置にあって、第1オープンレバー19のオープン作動(
図7において時計方向への回動)を第2オープンレバー20に伝達可能として、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHのいずれかの操作により、スライドドアDを開けることが可能な状態を指す。ロック状態とは、ロックレバー12及び第1ロックピン28が
図9に示すロック位置にあって、第1オープンレバー19のオープン作動を第2オープンレバー20に伝達不能として、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHのいずれの操作によってもスライドドアDを開けることができない状態を指す。
【0026】
ロックレバー12は、施解錠用回転体27と一体に回転し得るように枢軸26に枢支されて、施解錠用回転体27と共に
図7に示すアンロック位置及び当該アンロック位置から反時計方向へ所定角度回動した
図9に示すロック位置に回動可能である。ロックレバー12には、後述の第1ロックピン28が前後方向へスライド可能に係合する前後方向の長孔12aが設けられる。
【0027】
ノブレバー13は、ロックレバー12及び施解錠用回転体27と一体に回転し得るように枢軸26に枢支されて、
図7に示すアンロック位置及び当該アンロック位置から反時計方向へ所定角度回動した
図9に示すロック位置に回動可能である。これにより、ロックレバー12及びノブレバー13は、施解錠用モータ11の動力による電動操作により、アンロック位置からロック位置及びその逆へ回動可能である。
【0028】
ノブレバー13の下端部には、一端部がロック操作ノブLKに連結されたボーデンケーブル又はロッドにより構成される操作力伝達部材30の他端部が連結される。これにより、ロックレバー12、ノブレバー13及び施解錠用回転体27は、ロック操作ノブLKの手動による施解錠操作によっても、ターンオーバースプリング29の付勢力に抗してアンロック位置及びロック位置に回動可能である。
【0029】
オープン用モータ14は、自動車の適所に設けた操作スイッチ又はワイヤレス操作スイッチの操作、若しくは図示略の検出スイッチがアウトサイドハンドルOH又はインサイドハンドルIHの操作を検出したことを契機に正転駆動し、当該駆動により回転軸に固着されたウォーム14aがベースプレート4に枢軸31により枢支されたウォームホイールにより構成されるオープン用回転体15に噛合することでオープン用回転体15をオープン方向(
図7において反時計方向)へ回転させる。
【0030】
オープン用回転体15の回転面には、オープン用回転体15がオープン方向へ回転することで第1オープンレバー19をオープン方向(
図7において時計方向)へ回転させるためのカム部15aが設けられる。
【0031】
アウトサイドレバー16は、枢軸32によりベースプレート4に枢支されると共に、下端部に設けた入力部16aにはボーデンケーブル又はロッドにより構成される操作力伝達部材33を介してアウトサイドハンドルOHが連結される。アウトサイドハンドルOHの操作力は、操作力伝達部材33を介してアウトサイドレバー16の入力部16aに入力される。これにより、アウトサイドレバー16は、アウトサイドハンドルOHの操作に基づいて、
図7に示す初期位置からオープン作動(
図7において時計方向への回動)する。
【0032】
アウトサイドレバー16には、そのオープン作動を第1インサイドレバー17及び第2インサイドレバー18に伝達するための爪状の出力部16bが設けられる。これにより、アウトサイドレバー16がオープン作動した場合には、当該作動は、第1インサイドレバー17及び第2
インサイドレバー18に常に伝達される。
【0033】
第1インサイドレバー17は、アウトサイドレバー16と独立して回転し得るように、枢軸32によりベースプレート4に枢支される。第1インサイドレバー17の下部に設けた前後方向の長孔17aには、ボーデンケーブル又はロッドにより構成される操作力伝達部材34を介してインサイドハンドルIHが連結される。インサイドハンドルIHの操作力は、操作力伝達部材34を介して第1インサイドレバー17に伝達される。
【0034】
さらに、第1インサイドレバー17には、アウトサイドレバー16がオープン作動した際、アウトサイドレバー16の出力部16bが回転方向へ当接可能な入力部17bと、後斜め下方へ延伸する長孔17cとが設けられる。長孔17cには、チャイルドプルーフレバー21の作動に伴って長手方向へスライドする第2ロックピン35が係合される。
【0035】
上述により、第1インサイドレバー17は、インサイドハンドルIHの操作及びアウトサイドハンドルOHの操作に伴うアウトサイドレバー16のオープン作動に基づいて、枢軸32に巻装されたスプリング36の付勢力に抗して、
図7に示す初期位置からオープン作動(
図7において時計方向への回動)する。なお、インサイドハンドルIHの操作に基づいて、第1インサイドレバー17がオープン作動した際には、当該作動はアウトサイドレバー16には伝達されない。
【0036】
第2インサイドレバー18は、アウトサイドレバー16及び
第1インサイドレバー17と独立して回転し得るように、枢軸32によりベースプレート4に枢支される。第2インサイドレバー18には、アウトサイドレバー16がオープン作動した際、アウトサイドレバー16の出力部16bが回転方向へ当接することにより、アウトサイドレバー16のオープン作動を入力可能な第1入力部18aと、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35が後述のアンロック位置にある場合には、第1インサイドレバー17のオープン作動を入力可能で、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35が後述のロック位置にある場合には、第1インサイドレバー17のオープン作動を入力不能となる第2入力部18bと、第2インサイドレバー18のオープン作動を第1オープンレバー19に伝達するための出力部18cが設けられる。
【0037】
これにより、第2インサイドレバー18は、アウトサイドハンドルOHの操作によるアウトサイドレバー16のオープン作動に対しては、常時アウトサイドレバー16に連動してオープン作動するが、インサイドハンドルIHの操作による第1インサイドレバー17のオープン作動に対しては、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がアンロック位置にある場合に限って、第1インサイドレバー18のオープン作動に伴って、スプリング36の付勢力に抗して、
図7に示す初期位置からオープン作動(
図7において時計方向への回動)する。
【0038】
チャイルドプルーフレバー21は、枢軸37によりベースプレート4に枢支されると共に、スライドドアDの後端面から突出する操作部21aが手動操作されることで、
図7に示すアンロック位置及び当該位置から時計方向へ所定角度回転した
図11に示すロック位置に回動可能である。チャイルドプルーフレバー21に設けられた長孔21b(枢軸32を中心とした円弧孔)には、第1インサイドレバー17の長孔17cにスライド可能に係合した第2ロックピン35が長孔21bの円弧方向へスライド可能に係合される。
【0039】
第2ロックピン35は、
図7に示すように、チャイルドプルーフレバー21がアンロック位置にある場合には、第2インサイドレバー18の第2入力部18bに対して当接可能なアンロック位置に保持され、
図11に示すように、チャイルドプルーフレバー21がロック位置にある場合には、第2インサイドレバー18の第2入力部18bに対して当接不能なロック位置に待避する。
【0040】
これにより、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がアンロック位置にある場合には、第1インサイドレバー17のオープン作動は、第2ロックピン35を介して第2インサイドレバー18に伝達されて、第2インサイドレバー18をオープン作動(
図7において時計方向への回動)させる。チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がロック位置にある場合には、第1インサイドレバー17がオープン作動しても、第2ロックピン35は、第2インサイドレバー18の第2入力部18bに対して当接しないため、第1インサイドレバー17のオープン作動は、第2インサイドレバー18に伝達されない。
【0041】
チャイルドプルーフ機構とは、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35を含んで構成される。チャイルドプルーフ機構のアンロック状態とは、第1インサイドレバー17のオープン作動(
図7において時計方向への回動)を第2インサイドレバー18に伝達可能とした状態を指す。チャイルドプルーフ機構のロック状態とは、第1インサイドレバー17のオープン作動を第2インサイドレバー18に伝達不能とした状態を指す。
【0042】
第1オープンレバー19は、枢軸38によりベースプレート4に枢支されると共に、前方へ延伸するアームの先端部には、オープン用回転体15のカム部15aのカム面に摺接可能な摺接部19aが設けられる。これにより、オープン用回転体15が
図7に示す初期位置からオープン用モータ14の駆動により反時計方向へ回転して
図12に示す位置に達すると、第1オープンレバー19は、
図7に示す初期位置からオープン作動(
図7において反時計方向への回動)して
図12に示す作動位置に回動する。なお、オープン用回転体15は、第1オープンレバー19をオープン作動させた後、オープン用回転体15に作用する図示略のスプリングの付勢力により初期位置に復帰する。
【0043】
さらに、第1オープンレバー19には、第1ロックピン28が上下方向へスライド可能に係合する上下方向へ延伸する伝達孔19b及び当該伝達孔19bの上端から後斜め下方へ延伸する逃げ孔19cと、第1オープンレバー19のオープン作動を全開解除レバー22に伝達するための出力部19dと、第2インサイドレバー18のオープン作動を入力するための入力部19eとが設けられる。好ましくは、逃げ孔19cは、枢軸38を中心とした円弧状とする。
【0044】
第1ロックピン28は、ロックレバー12の長孔12aに対してその長手方向へのみスライド可能に係合しているため、
図7に示すように、ロックレバー12がアンロック位置にある場合には、伝達孔19bの下端部に位置し、ロックレバー12がロック位置に回動した場合には、伝達孔19bの上端部に位置する。
【0045】
これにより、
図7に示すように、ロックレバー12がアンロック位置にある場合には、第1オープンレバー19がオープン作動すると、第1ロックピン28が伝達孔19bに対して係合するため、第1オープンレバー19のオープン作動は、第1ロックピン28を介して第2オープンレバー20に伝達される。
図9に示すように、ロックレバー12がロック位置にある場合には、第1オープンレバー19がオープン作動しても、第1ロックピン28は、第1オープンレバー19のオープン作動に伴って逃げ孔19c内を相対移動するだけで、第1オープンレバー19のオープン作動は、第2オープンレバー20に伝達されない。
【0046】
第1オープンレバー19の出力部19dは、第1オープンレバー19がオープン作動した際、全開解除レバー22の上端部に設けられた入力部22bに当接することにより、第1オープンレバー19のオープン作動を全開解除レバー22に伝達する。同じく入力部19eは、第2インサイドレバー18がオープン作動した際、第2インサイドレバー18の出力部18cに当接することにより、第2インサイドレバー18のオープン作動を入力する。これにより、第1オープンレバー19は、オープン用モータ14の駆動によるオープン用回転体15の回転に加えて、第2インサイドレバー18のオープン作動によってもオープン作動する。
【0047】
上述により、第1オープンレバー19は、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がアンロック位置にある場合には、ロックレバー12及び第1ロックピン28がアンロック位置又はロック位置のいずれの位置にあっても、オープン用モータ14の駆動によるオープン用回転体15の回転、アウトサイドハンドルOHの操作及びインサイドハンドルIHの操作による第2インサイドレバー18のオープン作動に連動してオープン作動し、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がロック位置にある場合には、オープン用モータ14の駆動によるオープン用回転体15の回転、及びアウトサイドハンドルOHの操作によりオープン作動可能であるが、インサイドハンドルIHの操作ではオープン作動不能となる。
【0048】
第2オープンレバー20は、第1オープンレバー19と独立して回転し得るように、枢軸38によりベースプレート4に枢支される。第2オープンレバー20は、後方へ延伸するアームの後端部にあって、ラチェット8をオープン作動させるための出力部20aと、第1ロックピン28が上下方向へスライド可能で、枢軸38を中心とする回転方向へスライド不能に係合する長孔20bとを有する。
【0049】
第2オープンレバー20の出力部20aは、オープン作動(
図7において時計方向への回動)した際、ラチェット8に固着された軸状の入力部8aに対して上方から当接することにより、ラチェット8をオープン作動させる。
【0050】
ロックレバー12がアンロック位置にあって、第1ロックピン28が第1オープンレバー19の伝達孔19bの下端部に位置する場合には、第1オープンレバー19のオープン作動に伴って、第1ロックピン28が枢軸38を中心に公転しつつ長孔20bに対して当接するため、第1オープンレバー19のオープン作動を第2オープンレバー20に対して伝達可能である。ロックレバー12がロック位置にあって、第1ロックピン28が第1オープンレバー19の伝達孔19bの上端部に位置する場合には、第1オープンレバー19がオープン作動しても、第1ロックピン28が第1オープンレバー19の逃げ孔19c内を相対的に移動するだけで、第1オープンレバー19のオープン作動は第2オープンレバー20に伝達されない。
【0051】
上述により、第2オープンレバー20は、ロックレバー12及び第1ロックピン28がアンロック位置、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がアンロック位置にある場合には、アウトサイドハンドルOHの操作力、インサイドハンドルIHの操作力、及びオープン用モータ14の駆動をラチェット8に伝達可能としてスライドドアDの開扉を可能とし、ロックレバー12及び第1ロックピン28がロック位置、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がアンロック位置又はロック位置にある場合には、アウトサイドハンドルOHの操作力、インサイドハンドルIHの操作力、及びオープン用モータ14の駆動をラチェット8に伝達不能としてスライドドアDの開操作を不能とし、ロックレバー12及び第1ロックピン28がアンロック位置、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がロック位置にある場合には、アウトサイドハンドルOHの操作力及びオープン用モータ14の駆動をラチェット8に伝達可能としてスライドドアDの開操作を可能とするが、インサイドハンドルIHの操作力をラチェット8に伝達不能としてスライドドアDの開操作を不能とする。
【0052】
全開解除レバー22は、枢軸39によりベースプレート4に枢支されると共に、上端部には第1オープンレバー19のオープン作動を入力するための入力部22bが設けられる。全開解除レバー22の下端部に設けられる出力部22aには、全開解除レバー22のオープン作動(
図7において反時計方向への回動)をフロントドアラッチ装置FD及び全開ラッチユニットODに伝達するためのボーデンケーブル又はロッドにより構成される操作力伝達部材40が連結される。
【0053】
好ましくは、操作力伝達部材40は、全開解除レバー22のオープン作動をフロントドアラッチ装置FD及び全開ラッチユニットODにそれぞれ伝達し得るように、全開解除レバー22とフロントドアラッチ装置FD及び全開ラッチユニットODとの連結途中において操作力伝達部材40A、40Bに分岐される。
【0054】
全開解除レバー22の入力部22bには、第1オープンレバー19がオープン作動した際、第1オープンレバー19の出力部19dが当接することにより第1オープンレバー19のオープン作動が入力される。入力部22bに
第1オープンレバー19のオープン作動が入力された場合には、全開解除レバー22はオープン作動する。
【0055】
全開解除レバー22のオープン作動は、操作力伝達部材40を介してフロントドアラッチ装置FD及び全開ラッチユニットODにそれぞれ伝達され、フロントドアラッチ装置FD及び全開ラッチユニットODはそれぞれアンラッチ作動する。これにより、スライドドアDが閉鎖位置にある場合には、フロントドアラッチ装置FDのアンラッチ作動に基づいてスライドドアDの開操作を可能にし、スライドドアDが全開位置にある場合には、全開ラッチユニットODのアンラッチ作動に基づいてスライドドアDの閉操作を可能にする。
【0056】
したがって、チャイルドプルーフレバー21及び第2ロックピン35がアンロック位置にあれば、ロックレバー12及び第1ロックピン28がアンロック位置又はロック位置のいずれの位置にあっても、オープン用モータ14による電動操作、アウトサイドハンドルOHの操作及びインサイドハンドルIHの操作によって、第1オープンレバー19を介して全開解除レバー22をオープン作動させて、全開ラッチユニットOD及びフロントドアラッチ装置FDをアンラッチ作動させて、スライドドアDが全開位置にあればスライドドアDの閉動作を可能にする。しかし、ロックレバー12及び第1ロックピン28がロック位置にある場合には、第1オープンレバー19のオープン作動はラチェット8に伝達されないため、フロントドアラッチ装置FDをアンラッチ作動させてもスライドドアDを開くことはできない。
【0057】
第1クローザレバー23は、左右方向を向く枢軸41により操作機構配置部2aに枢支されると共に、上端部の入力部23aには、一端部がクローザ装置CLの図示略の出力レバーに連結されたボーデンケーブル又はロッドにより構成される操作力伝達部材43の他端部が連結される。クローザ装置CLの出力レバーは、クローザ装置CLのモータが駆動することにより、所定方向へ所定角度回動する。これにより、出力レバーが回動すると、当該回動は、操作力伝達部材43を介して第1クローザレバー23の入力部23aに入力されて、第1クローザレバー23は、
図7に示す初期位置からクローズ作動(
図7において反時計方向への回動)する。
【0058】
第1クローザレバー23の下端部には、左右方向(車内外方向)を向く連結軸42により第2クローザレバー24が回動可能に連結される。
【0059】
第2クローザレバー24は、連結軸42により第1クローザレバー
23に回動可能に連結されると共に、スプリング45により
図7において反時計方向へ付勢されて、常時は
図7に示す初期位置に停止している。第2クローザレバー24の後端部には、第1クローザレバー23がクローズ作動した際、ラッチ6のアーム部6cに下方から当接可能な出力部24aが設けられる。第2クローザレバー24の前端部には、円柱状の仮想軸部24bが設けられる。仮想軸部24bの中心は、第2クローザレバー24が初期位置にある場合、第1クローザレバー23の回転中心である枢軸41の中心と一致している。したがって、第2クローザレバー24は、仮に第1クローザレバー23に対して回動不能とすれば、第1クローザレバー23が回動した場合には、第1クローザレバー23と一緒に枢軸41を中心に回動する。
【0060】
第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bは、第1オープンレバー19及び第2オープンレバー20と共通の枢軸38により独立回転可能に枢支される。
【0061】
第1クローザキャンセルレバー25Aの後端部は、上下方向へ移動可能な連結杆44を介して第1インサイドレバー17に連結される。これにより、第1クローザキャンセルレバー25Aは、第1インサイドレバー17のオープン作動に連動して、枢軸38を中心に、
図7に示す初期位置からキャンセル作動(
図7において時計方向への回動)する。
【0062】
第2クローザキャンセルレバー25Bは、第1クローザキャンセルレバー25Aのキャンセル作動に連動して、枢軸38を中心に、
図7に示す初期位置からキャンセル作動(
図7において時計方向への回動)して
図14に示すキャンセル位置に回動する。第2クローザキャンセルレバー25Bの下方へ延伸するアーム部の先端部には、ストッパ部25Baが設けられる。
【0063】
ストッパ部25Baは、第2クローザキャンセルレバー25Bが初期位置にある場合には、第2クローザレバー24の連結軸42を中心とする時計方向への回動を阻止し得るように、第2クローザレバー24の回動による仮想軸部24bの軌道内、すなわち仮想軸部24bの外周部に当接可能な位置(以下、「ストッパ位置」という)に停止しており、第2クローザキャンセルレバー25Bがキャンセル作動した場合には、仮想軸部24bの軌道外に待避することで、第2クローザレバー24の連結軸42を中心とする時計方向への回動を自由にする。
【0064】
上述により、第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bがそれぞれ初期位置にあって、第2クローザキャンセルレバー25Bのストッパ部25Baがストッパ位置にある場合、第1クローザレバー23がクローザ装置CLの動力により初期位置からクローズ作動すると、第2クローザレバー24は、第1クローザレバー23と共に枢軸41を中心にクローズ作動し、当該作動により出力部24aがハーフラッチ位置にあるラッチ6のアーム部6cを下方から押し上げることで、ラッチ6をハーフラッチ位置からフルラッチ位置まで強制回動させる。
【0065】
しかし、第1クローザレバー23及び第2クローザレバー24がクローザ装置CLの動力によりクローズ作動している最中、第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bがそれぞれキャンセル作動した場合には、ストッパ部25Baが退避位置に移動して第2クローザレバー24の連結軸42を中心とする時計方向への回動を自由とするため、ラッチ6のアーム部6cに当接していた第2クローザレバー24は、スプリング45の付勢力に抗して時計方向へ回動して、第1クローザレバー23のクローズ作動をラッチ6に対して伝達不能になる。これにより、ラッチ6がフルラッチ位置へ向けて強制的に回動させられている最中であっても、クローザ装置CLの動力による伝達経路を切断して、クローザ装置CLの動力を伝達不能とすることができる。
【0066】
次に、本実施形態における自動車用ドアラッチ装置1の各状態での作用について説明する。
【0067】
(A)アウトサイドハンドルOHの操作(施解錠機構がアンロック状態、チャイルドプルーフ機構がアンロック状態又はロック状態の場合)
図8に基づいて説明する。アウトサイドハンドルOHの操作力は、操作力伝達部材33を介してアウトサイドレバー16の入力部16aに入力される。
図8に示すように、アウトサイドレバー16は、枢軸32を中心にして
図7に示す初期位置からオープン作動する。アウトサイドレバー16のオープン作動は、出力部16bが第1インサイドレバー17の入力部17b及び第2インサイドレバー18の第1入力部18aに当接することにより、第1インサイドレバー17及び第2インサイドレバー18にそれぞれ伝達される。これにより、第1インサイドレバー17及び第2インサイドレバー18は、それぞれオープン作動する。
【0068】
第1インサイドレバー17のオープン作動は、連結杆44を介して第1クローザキャンセルレバー25Aに伝達される。これにより、第1クローザキャンセルレバー25Aは、
図7に示す初期位置から
図8に示すようにオープン作動し、当該作動により第2クローザキャンセルレバー25Bも初期位置からキャンセル作動する。第2クローザキャンセルレバー25Bは、キャンセル作動すると、ストッパ部25Baが退避位置に移動する。
【0069】
第2インサイドレバー18のオープン作動は、出力部18cが第1オープンレバー19の入力部19eに当接することにより、第1オープンレバー19に伝達される。これにより、第1オープンレバー19は、初期位置から
図8に示すようにオープン作動する。第1オープンレバー19のオープン作動は、第1ロックピン28を介して第2オープンレバー20に伝達され、出力部19dを介して全開解除レバー22に伝達される。これにより、第2オープンレバー20及び全開解除レバー22は、それぞれ初期位置から
図8に示すようにオープン作動する。
【0070】
上述のアウトサイドハンドルOHにおける操作力作動経路を
図16(A)を参照して説明すると、アウトサイドハンドルOHの操作力は、アウトサイドレバー16から第1インサイドレバー17を経由して第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bに伝達され、さらに、アウトサイドレバー16からは第2インサイドレバー18、第1オープンレバー19、第1ロックピン28、第2オープンレバー20を経由してラチェット8にも伝達され、さらに、第1オープンレバー19からは全開解除レバー22、操作力伝達部材40を経由して全開ラッチユニットOD及びフロントドアラッチ装置FDにも伝達される。
【0071】
したがって、
図8に示す状態においては、アウトサイドハンドルOHの操作に基づいて、スライドドアDが閉じた状態であれば、自動車用ドアラッチ装置1及びフロントドアラッチ装置FDをアンラッチ作動させてスライドドアDの開操作を可能とし、スライドドアDが全開状態であれば、全開ラッチユニットODをアンラッチ作動させてスライドドアDの閉操作を可能にする。
【0072】
(B)アウトサイドハンドルOHの操作(施解錠機構がロック状態、チャイルドプルーフ機構がアンロック状態又はロック状態の場合)
図9に基づいて説明する。アウトサイドハンドルOHの操作力は、操作力伝達部材33を介してアウトサイドレバー16の入力部16aに入力される。
図9に示すように、アウトサイドレバー16は、枢軸32を中心にして
図7に示す初期位置からオープン作動する。アウトサイドレバー16のオープン作動は、出力部16bが第1インサイドレバー17の入力部17b及び第2インサイドレバー18の第1入力部18aに当接することにより、第1インサイドレバー17及び第2インサイドレバー18にそれぞれ伝達される。これにより、第1インサイドレバー17及び第2インサイドレバー18は、それぞれオープン作動する。
【0073】
第1インサイドレバー17のオープン作動は、連結杆44を介して第1クローザキャンセルレバー25Aに伝達される。これにより、第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bは、
図7に示す初期位置から
図9に示すようにキャンセル作動する。
【0074】
第2インサイドレバー18のオープン作動は、出力部18cが第1オープンレバー19の入力部19eに当接することにより、第1オープンレバー19に伝達される。これにより、第1オープンレバー19は、初期位置から
図9に示すようにオープン作動する。当該オープン作動は、出力部19dを介して全開解除レバー22に伝達されるが、第1ロックピン28がロック位置にあるため第2オープンレバー20には伝達されない。
【0075】
したがって、
図9に示す状態においては、アウトサイドハンドルOHの操作力は、全開ラッチユニットOD及びフロントドアラッチ装置FDには伝達されるが、ラチェット8には伝達されない。
【0076】
上述の操作力作動経路を
図16(B)を参照して説明すると、アウトサイドハンドルOHの操作力は、アウトサイドレバー16から第1インサイドレバー17を経由して第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bに伝達され、さらに、アウトサイドレバー16からは、第2インサイドレバー18、第1オープンレバー19、全開解除レバー22、操作力伝達部材40を経由して全開ラッチユニットOD及びフロントドアラッチ装置FDに伝達されるが、第1オープンレバー
19から第1ロックピン28には伝達されない。
【0077】
したがって、
図9に示す状態においては、アウトサイドハンドルOHの操作に基づいて、スライドドアDが閉じた状態であれば、スライドドアDの開操作が不能であり、スライドドアDが全開状態であれば、全開ラッチユニットODをアンラッチ作動させてスライドドアDの閉操作を可能にする。
【0078】
(C)インサイドハンドルIHの操作(施解錠機構がアンロック状態、チャイルドプルーフ機構がアンロック状態の場合)
図10に基づいて説明する。インサイドハンドルIHの操作力は、操作力伝達部材34を介して第1インサイドレバー17の長孔17aを介して第1インサイドレバー17に入力される。
図10に示すように、第1インサイドレバー17は、枢軸32を中心に初期位置からオープン作動する。第1インサイドレバー17のオープン作動は、連結杆44を介して第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25B、また、第2ロックピン35を介して第2インサイドレバー18にそれぞれ伝達される。
【0079】
第2インサイドレバー18のオープン作動は、出力部18cが第1オープンレバー19の入力部19eに当接することにより、第1オープンレバー19に伝達される。これにより、第1オープンレバー19は、初期位置から
図10に示すようにオープン作動する。第1オープンレバー19のオープン作動は、第1ロックピン28を介して第2オープンレバー20、また、出力部19dを介して全開解除レバー22にそれぞれ伝達される。これにより、第2オープンレバー20及び全開解除レバー22は、それぞれ初期位置から
図10に示すようにオープン作動し、当該作動はラチェット8、全開ラッチユニットOD及びフロントドアラッチ装置FDにそれぞれ伝達される。
【0080】
上述の操作力作動経路を
図16(C)を参照して説明すると、インサイドハンドルIHの操作力は、第1インサイドレバー17、第2ロックピン35、第2インサイドレバー18、第1オープンレバー19、第1ロックピン28、第2オープンレバー20を経由してラチェット8に伝達され、さらに、第1オープンレバー19からは全開解除レバー22、操作力伝達部材40を経由して全開ラッチユニットOD及びフロントドアラッチ装置
FDにも伝達される。さらに、第1インサイドレバー17からは、連結杆44を経由して、第1クロー
ザキャンセルレバー25A及び第2クロー
ザキャンセルレバー25Bにも伝達される。
【0081】
したがって、
図10に示す状態においては、インサイドハンドルIHの操作に基づいて、スライドドアDが閉じた状態であれば、自動車用ドアラッチ装置1及びフロントドアラッチ装置FDをアンラッチ作動させてスライドドアDの開操作を可能とし、スライドドアDが全開状態であれば、全開ラッチユニットODをアンラッチ作動させてスライドドアDの閉操作を可能にする。
【0082】
(D)インサイドハンドルIHの操作(施解錠機構がアンロック状態又はロック状態、チャイルドプルーフ機構がロック状態の場合)
図11に基づいて説明する。インサイドハンドルIHの操作力は、操作力伝達部材34を介して第1インサイドレバー17の長孔17aを介して第1インサイドレバー17に入力される。
図11に示すように、第1インサイドレバー17は、枢軸32を中心に初期位置からオープン作動する。
【0083】
この場合、チャイルドプルーフレバー21及び第
2ロックピン35がそれぞれロック位置にあるため、第1インサイドレバー17のオープン作動は、第2インサイドレバー18に対して伝達されないが、連結杆44を経由して第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bに対しては伝達される。
【0084】
上述の操作力作動経路を
図17(D)を参照して説明すると、インサイドハンドルIHの操作力は、第1インサイドレバー17を経由して第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bに伝達されるが、それ以外の要素には伝達されない。
【0085】
したがって、
図11に示す状態においては、インサイドハンドルIHが操作されても、閉鎖位置にあるスライドドアDを開けることもできなければ、全開位置にあるスライドドアDを閉じることもできないが、第2クローザキャンセルレバー25Bのキャンセル作動は可能としている。このようにすると、チャイルドプルーフ機構がロック状態にあっても、インサイドハンドルIHの操作により、クローザ装置CLのクローズ作動をキャンセルできる。
【0086】
なお、上述の作動は、施解錠機構がアンロック状態であってもロック状態であっても同様である。
【0087】
(E)インサイドハンドルIHの操作(施解錠機構がロック状態、チャイルドプルーフ機構がアンロック状態の場合)
インサイドハンドルIHの操作力は、操作力伝達部材34を介して第1インサイドレバー17の長孔17aを介して第1インサイドレバー17に入力される。第1インサイドレバー17は、枢軸32を中心にして初期位置からオープン作動する。第1インサイドレバー17のオープン作動は、連結杆44を介して第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25B、また、第2ロックピン35を介して第2インサイドレバー18にそれぞれ伝達される。これにより、第2キャンセルレバー25Bは、キャンセル作動し、第2インサイドレバー18は、オープン作動する。
【0088】
第2インサイドレバー18のオープン作動は、出力部18cが第1オープンレバー19の入力部19eに当接することにより、第1オープンレバー19に伝達される。これにより、第1オープンレバー19は、初期位置からオープン作動することで、当該オープン作動を出力部19dを介して全開解除レバー22に伝達するが、第1ロックピン28がロック位置にあるため、第2オープンレバー20には伝達しない。
【0089】
上述の操作力作動経路を
図17(E)を参照して説明すると、インサイドハンドルIHの操作力は、第1インサイドレバー17、第2ロックピン35、第2インサイドレバー18、第1オープンレバー19を経由して全開解除レバー22に伝達される。しかし、第1ロックピン28がロック位置にあるため、第1オープンレバー19のオープン作動は、第1ロックピン28には伝達されない。また、第1インサイドレバー17からは、連結杆44を介して第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bに伝達される。
【0090】
したがって、上述の状態においては、インサイドハンドルIHの操作に基づいて、閉鎖位置にあるスライドドアDを開けることはできないが、全開位置にあるスライドドアDは閉じることができる。また、第2クローザキャンセルレバー25Bのキャンセル作動を可能としているため、インサイドハンドルIHの操作により、クローザ装置CLのクローズ作動もキャンセルできる。
【0091】
(F)オープン用モータ14による電動操作(施解錠機構がアンロック状態、チャイルドプルーフ機構がアンロック状態の場合)
図12に基づいて説明する。例えばワイヤレス操作スイッチの操作に基づいて、オープン用モータ14を駆動させると、ウォーム14aに噛合しているオープン用回転体15は、初期位置から反時計方向へ回転する。そして、カム部15aに摺接している第1オープンレバー19は、カム部15aの回転に伴ってオープン作動する。
【0092】
第1オープンレバー19のオープン作動は、第1ロックピン28、第2オープンレバー20を経由してラチェット8に伝達され、また、出力部19d、全開解除レバー22、操作力伝達部材40を経由して全開ラッチユニットOD及びフロントドアラッチ装置FDにそれぞれ伝達される。
【0093】
上述の操作力作動経路は、
図17(F)に示す通りである。
したがって、
図12に示す状態においては、オープン用モータ14の動力に基づいて、スライドドアDが閉状態にあれば、自動車用ドアラッチ装置1及びフロントドアラッチ装置FDをアンラッチ作動させてスライドドアDの開操作を可能とし、スライドドアDが全開状態にあれば、全開ラッチユニットODをアンラッチ作動させてスライドドアDの閉操作を可能にする。
【0094】
なお、スライドドアDが閉状態で、施解錠機構がロック状態にあるとき、ワイヤレス操作スイッチが操作された場合には、先ず、施解錠用モータ11を駆動制御して、ロックレバー12、第1ロックピン28及びノブレバー13をそれぞれロック位置からアンロック位置に移動させて施解錠機構をアンロック状態にした後に、オープン用モータ14を駆動制御する。このようにすると、ワイヤレス操作スイッチの操作においては、施解錠機構がロック状態にあっても、一度の操作によってスライドドアDを開けることができる。
【0095】
オープン用モータ14における動力の作動は、チャイルドプルーフ機構に関連する要素の第1インサイドレバー17及び第2インサイドレバー18には伝達されることはない。したがって、チャイルドプルーフ機構の状態に関係なく、オープン用モータ14による動力の作動経路は、常時上述のような経路となる。
【0096】
(G)クローザ装置CLによるクローズ作動
図13を参照して説明する。スライドドアDの閉動作に伴って、ラッチ6がオープン位置からハーフラッチ位置(ラッチ6のアーム部6cが
図13に示す位置より下方にある位置)に回動すると、当該回動を図示略の検知スイッチが検出する。当該検出を契機にクローザ装置CLは、図示略の制御回路装置により駆動制御され、その動力は操作力伝達部材43を介して第1クローザレバー23に伝達される。これにより、第1クローザレバー23は、枢軸41を中心に初期位置からクローズ作動する。この場合、第2クロー
ザキャンセルレバー25Bが初期位置にあって、そのストッパ部25Baが第2クローザレバー24の仮想軸部24bに当接可能なストッパ位置にあるため、第2クローザレバー24は、第1クローザレバー23と実質的に一体となってクローズ作動し、当該作動に伴って、出力部24aが上方移動することによりラッチ6のアーム部6cに対して下方から当接してラッチ6をハーフラッチ位置からフルラッチ位置まで強制回動させる。そして、ラッチ6のフルラッチ位置への回動により、スライドドアDを完全に閉じた後、クローザ装置CLは反転制御されて、第1クローザレバー23及び第2クローザレバー24は初期位置に戻る。
【0097】
上述の作動経路について
図18(G)に基づいて説明すると、クローザ装置CLの動力は、操作力伝達部材43、第1クローザレバー23、第2クローザレバー24を経由してラッチ6に伝達される。
【0098】
(H)クローザ装置CLによるクローズ作動のキャンセル作動
上記(G)において説明したクローザ装置CLの作動途中において、例えば、スライドドアDとその乗降口との間に何らかの挾み込みが生じる等して、緊急にクローズ作動をキャンセルしなければならない場合には、アウトサイドハンドルOH又はインサイドハンドルIHを操作することによって、クローズ作動をキャンセル可能である。
【0099】
クローズ作動のキャンセル作動を
図13、14に基づいて説明する。なお、
図14は、アウトサイドハンドルOHが操作された場合の状態を示している。
【0100】
クローザ装置CLの動力により、第1クローザレバー23及び第2クローザレバー24がクローズ作動している最中、又はクローズ作動する直前に、アウトサイドハンドルOH又はインサイドハンドルIHが操作されると、前述のように、第1インサイドレバー17のオープン作動は、連結杆44を介して第1クローザキャンセルレバー25A及び第2クローザキャンセルレバー25Bに伝達される。これにより、第2クローザキャンセルレバー25Bは、キャンセル作動し、ストッパ部25Baが第2クローザレバー24の仮想軸部24bに対して当接不能な待避位置に移動する。
【0101】
第2クローザキャンセルレバー25Bがキャンセル作動すると、第2クローザレバー24は、連結軸42を中心に時計方向への回動が自由な状態となる。これにより、ラッチ6のアーム部6cに当接してラッチ6をフルラッチ位置へ向けて回動させていた第2クローザレバー24のクローズ作動は、ラッチ6に対して伝達不能となって、クローザ装置CLのクローズ作動は第2クロー
ザレバー24とラッチ6との間で切断される。また、これと同時に、第2オープンレバー20がオープン作動することから、第2オープンレバー20のオープン作動により、ラチェット8がオープン作動させられているため、ラッチ6のオープン位置への回動が自由になる。この結果、スライドドアDを即座に開けて、挾み込みの危険性を回避可能となる。
【0102】
上述の作動経路は、
図18(H)に示すようになる。すなわち、クローザ装置CLのクローズ作動は、操作力伝達部材43、第1クロー
ザレバー23を経由して第2クロー
ザレバー24まで伝達されるが、アウトサイドハンドルOH又はインサイドハンドルIHが操作されると、第2クローザレバー24とラッチ6との間の伝達経路は切断される。
【0103】
上述のクローズ作動のキャンセル作動は、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHの操作により常時連動する第1インサイドレバー17のオープン作動により第2クローザキャンセルレバー25Bをキャンセル作動させることで達成されるものであるから、施解錠機構及びチャイルドプルーフ機構の状態に無関係に、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHの操作により行うことができる。
【0104】
以上により、本実施形態の自動車用ドアラッチ装置1においては、ラッチ機構と、ベース部に、アウトサイドハンドルOHの操作を入力してオープン作動するアウトサイドレバー16と、アウトサイドレバー16のオープン作動に連動する第1オープンレバー19と、第1オープンレバー19のオープン作動を出力可能とするアンロック状態及び出力不能とするロック状態に切り替え可能な施解錠機構(ロックレバー12及び第1ロックピン28)と、施解錠機構から出力される第1オープンレバー19のオープン作動に連動してラチェット8をアンラッチ作動させる第2オープンレバー20と、第1オープンレバー19のオープン作動に連動する全開解除レバー22を集約して配置した構成とを備えることによって、ベース部に配置した全開解除レバー22のオープン作動を単一の操作力伝達部材40を介して全開ラッチユニットODに直接伝達可能となるため、従来技術に比して、操作力伝達部材の数を減少させることが可能となるため、操作力伝達部材の連結作業及び各ユニットの取付け作業の軽減化を図ることができる。