【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係るアームヒューズ溶断検出手段を備えた電力変換装置100及び当該電力変換装置100に接続された電動機Mで構成された電力変換システムの概略構成図である。
【0012】
図示した電力変換装置100は、コンバータ部1、インバータ部2、電流検出部3、制御部4及びアームヒューズ溶断検出部5を有して構成される。
【0013】
コンバータ部1は、3相交流電源R(R相)、S(S相)、T(T相)をP相(正極)及びN相(負極)からなる直流電源に変換し、インバータ部2に供給する。
【0014】
インバータ部2は、U相アーム(U相上アーム及びU相下アームの総称)、V相アーム(V相上アーム及びV相下アームの総称)、W相アーム(W相上アーム及びW相下アームの総称)からなる3相アームで構成され、コンバータ部1から供給された直流電源を、電動機Mを駆動するために必要な3相交流電源(U相、V相、W相)に変換する。
【0015】
U相上アームでは、P相とスイッチング素子Qu1のコレクタ間にアームヒューズFu1が接続され、U相下アームは、N相とスイッチング素子Qu2のエミッタ間にアームヒューズFu2が接続される。スイッチング素子Qu1のエミッタとスイッチング素子Qu2のコレクタは接続され、その接続点は電流検出部3を経由して電動機MのU相交流入力端子に接続される。スイッチング素子Qu1及びQu2にはそれぞれ逆並列にダイオードDu1及びDu2が接続されている。スイッチング素子Qu1及びQu2のゲートGは、それぞれ制御部4に接続される。スイッチング素子Qu1及びQu2は、制御部4から出力されるゲート信号によりスイッチング動作を行い、3相交流電源のU相を出力する(インバータのU相出力)。
【0016】
V相上アームでは、P相とスイッチング素子Qv1のコレクタ間にアームヒューズFv1が接続され、V相下アームは、N相とスイッチング素子Qv2のエミッタ間にアームヒューズFv2が接続される。スイッチング素子Qv1のエミッタとスイッチング素子Qv2のコレクタは接続され、その接続点は電流検出部3を経由して電動機MのV相交流入力端子に接続される。スイッチング素子Qv1及びQv2にはそれぞれ逆並列にダイオードDv1及びDv2が接続されている。スイッチング素子Qv1及びQv2のゲートGは、それぞれ制御部4に接続され、スイッチング素子Qv1及びQv2は、制御部4から出力されるゲート信号によりスイッチング動作を行い、3相交流電源のV相を出力する(インバータのV相出力)。
【0017】
W相上アームでは、P相とスイッチング素子Qw1のコレクタ間にアームヒューズFw1が接続され、W相下アームは、N相とスイッチング素子Qw2のエミッタ間にアームヒューズFw2が接続される。スイッチング素子Qw1のエミッタとスイッチング素子Qw2のコレクタは接続され、その接続点は電流検出部3を経由して電動機MのW相交流入力端子に接続される。スイッチング素子Qw1及びQw2にはそれぞれ逆並列にダイオードDw1及びDw2が接続されている。スイッチング素子Qw1及びQw2のゲートGは、それぞれ制御部4に接続され、スイッチング素子Qw1及びQw2は、制御部4から出力されるゲート信号によりスイッチング動作を行い、3相交流電源のW相を出力する(インバータのW相出力)。
【0018】
電流検出部3は、上記インバータのU相出力電流Iu_F、V相出力電流Iv_F、W相出力電流Iw_Fを検出し、アームヒューズ溶断検出部5に出力する。
【0019】
制御部4は、図示されない上位制御装置からの速度指令を、制御部内で互いに直交する2軸のD軸の電流指令値とQ軸の電流指令値に変換する。制御部4は電流検出部3からの上記インバータのU相出力電流Iu_F、V相出力電流Iv_F、W相出力電流Iw_Fを使用し、これを制御部内の電流指令演算回路内で互いに直交する2軸のD軸の電流フィードバック値とQ軸の電流フードバック値に変換する。制御部4は前述のD軸の電流指令値とQ軸の電流指令値に対し、D軸の電流フィードバック値とQ軸の電流フードバック値が追従する様にインバータ部2のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1及びQw2,のゲートGにゲート信号を出力する。
【0020】
このようにして電動機Mは可変速駆動される。
【0021】
なお、制御部4は、インバータ部2を構成するU相上アーム及び下アームを構成するスイッチング素子Qu1及びQu2、V相上アーム及び下アームを構成するスイッチング素子Qv1及びQv2並びにW相上アーム及び下アームを構成するスイッチング素子Qw1及びQw2を制御する制御主体であることから、
図1では、当該インバータ部2に制御部4を含めない場合を例示したが、制御部4をインバータ部2に含めた場合も同様の効果が得られる。何れの場合も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
また、コンバータ部1は、制御部4から出力されるゲート信号によって制御されない場合を例示したが、上記インバータ部2のゲート制御同様に、コンバータ部1が、スイッチング素子で構成され、上記制御部4の制御部4から出力されるゲート信号によって制御される場合もある。何れの場合も本発明の範囲に含まれる。以上のことを前提に以下、説明する。
【0023】
アームヒューズ溶断検出部5は、電流検出部3から出力されたインバータのU相出力電流Iu_F、V相出力電流Iv_F及びW相出力電流Iw_Fを入力し、アームヒューズの溶断を検出する。
【0024】
図2は、時刻t1でU相アームヒューズが溶断した場合の、溶断時の前後における入出力電流波形を示す図である。
図2(1)は、3相交流電源R、S、Tからコンバータ1に入力される3相交流電流Ir、Is,Itの波形の一例である。
図2(2)は、U相出力電流Iu_F、V相出力電流Iv_F及びW相出力電流Iw_F波形の一例である。
図2(3)は、インバータ出力電流I1_F波形の一例である。これらの図を参照して、本実施例に係る上記アームヒューズ溶断検出方法を説明する。
【0025】
図3は、
図1に示すアームヒューズ溶断検出部5の構成を示すブロック図である。アームヒューズ溶断検出部5は、第1のアームヒューズ溶断検出部50(第1のアームヒューズ溶断検出手段)、第2のアームヒューズ溶断検出部60(第2のアームヒューズ溶断検出手段)、切替部70及びアームヒューズ溶断検出出力部80を有して構成される。
図4は、
図3に示すアームヒューズ溶断検出部5を構成する各部の動作を説明するための詳細図である
第1のアームヒューズ溶断検出部50は、通常負荷時に上述した各アームに接続された、アームヒューズの溶断を検出する。検出結果は、第1の検出結果信号(1:アームヒューズ溶断有、0:アームヒューズ溶断無し)として、論理積513の端子Aに入力される。
【0026】
切替部70は、コンパレータ703を有して構成される。コンパレータ703は後述されるインバータ出力電流I1_Fをフィルタ701を経由してコンパレータ703の端子Aに入力した値と、端子Bに入力された設定回路702であらかじめ設定される軽負荷設定値とを比較することにより、通常負荷であるか軽負荷であるかを判別し、その判別結果をコンパレータ703の端子Cから切替信号(1:通常負荷、0:軽負荷)として出力する。出力された切替信号は、論理積513の端子Bに入力される。
【0027】
論理積513の出力信号は、OFFディレイ515及びONディレイ517からなる信号処理回路に入力される。
【0028】
本実施例による第1のアームヒューズ溶断検出は、後述するようにインバータ部2の3相の出力電流を互いに直行する2軸の成分に変換した絶対値のリプル電流が所定の閾値を超え、かつ、上記切替信号によって選択され、さらに、後述する周期Tを1サイクルとする所定のサイクル回数分(例えば、5サイクル)、継続して検出されたときに、第1のアームヒューズ溶断と判定する。このようなアームヒューズ溶断検出方法を用いることにより、誤検出を防止することが可能である。そのために、OFFディレイ515及びONディレイ517からなる信号処理を行っている(詳細は後述する。)
上記ONディレイ517の出力信号は、アームヒューズ溶断検出出力部80の論理和801の端子Aに入力され、論理和801の端子Cからアームヒューズ溶断検出信号(INV_PH_LOSS)が出力される。
【0029】
第2のアームヒューズ溶断検出部60は、軽負荷時に上述した各アームに接続されたアームヒューズの溶断を検出する。検出結果は、検出結果信号(1:アームヒューズ溶断有、0:アームヒューズ溶断無し)として、論理積622の端子Bに入力する。
【0030】
切替部70は、コンパレータ703の端子Cから切替信号(1:通常負荷、0:軽負荷)として出力された信号を反転回路704で反転し、論理積622の端子Aに入力する。
【0031】
論理積2の出力信号は、OFFディレイ2及びONディレイ2からなる信号処理回路に入力される。
【0032】
本実施例による第2のアームヒューズ溶断検出は、後述するようにインバータ部2の3相の出力電流を相毎に半サイクル間積分した値の相間のアンバランスが所定の閾値を超え、かつ、上記切替信号によって選択され、さらに、後述する周期Tを1サイクルとする所定のサイクル回数分(例えば、5サイクル)、継続して検出されたときに、第2のアームヒューズ溶断と判定する。このようなアームヒューズ溶断検出方法を用いることにより、誤検出を防止することが可能である。そのために、OFFディレイ624及びONディレイ626からなる信号処理を行っている(詳細は後述する。)
。
上記ONディレイ
626の出力信号は、アームヒューズ溶断検出出力部80の論理和801の端子Bに入力され、論理和801の端子Cからアームヒューズ溶断検出信号(INV_PH_LOSS)が出力される。
【0033】
論理和801の端子Cからアームヒューズ溶断検出信号(INV_PH_LOSS)が出力された場合は図示されない保護回路により適切な保護連動がおこなわれることになる。
【0034】
図5は、インバータ出力電流の周期T期間における最大値及び最小値を説明する図である。
【0035】
第
1のアームヒューズ溶断検出部50は、通常負荷時に上述した各アームに接続されたアームヒューズの溶断を検出するために、位相検出回路501、リセット信号発生回路502、DQ変換回路503、絶対値算出回路504、最大値保持回路506、最小値保持回路508、コンパレータ512、論理積513、OFFディレイ515、ONディレイ517などを有して構成される。
【0036】
位相検出回路501は、インバータ部2出力の電気角位相θを検出する回路である。位相検出回路501は電動機Mの入力端子電圧や上述したインバータ部2のU相出力電流Iu_F、V相出力電流Iv_F又はW相出力電流Iw_Fを使用した速度推定回路に使用される位相同期回路(PLL)による位相検出回路の出力を使用してもよく、あるいは電動機Mに機械的に取り付けた回転角度検出器やポジションセンサ等の信号を使用して検出してもよい。
【0037】
位相検出回路501は、上述した方法により、インバータ部2の出力電圧又は出力電流の基本波の周期である周期T、及び位相信号θを出力する。
【0038】
位相信号θは、リセット信号発生回路502及びDQ変換回路503に入力される。
【0039】
リセット信号発生回路502は、上記位相信号θからインバータ部2の出力電圧の基本波の1サイクルに1回リセット信号を出力し、各々後述する最大値保持回路506、最小値保持回路508、正側U相積分値演算回路601、正側V相積分値演算回路602、正側W相積分値演算回路603、負側U相積分値演算回路604、負側V相積分値演算回路605および負側W相積分値演算回路606のリセット信号入力に接続される。
【0040】
DQ変換回路503(変換回路)は、位相信号θを基準信号として、入力されたインバータ部2のU相出力電流Iu_F、V相出力電流Iv_F及びW相出力電流Iw_Fからなる3相の電流を、互いに直交するD軸及びQ軸からなる2軸ベクトル電流に変換し、D軸電流ID_FBK及びQ軸電流IQ_FBKを生成する。
【0041】
絶対値算出回路504(第1の絶対値算出回路)は、DQ変換回路503で生成されたD軸電流ID_FBK及びQ軸電流IQ_FBKから絶対値電流I1_Fを算出する。絶対値電流I1_Fは、インバータ部2から出力されるインバータ出力電流(負荷電流)であることから、以下、インバータ出力電流と称する場合もある。インバータ出力電流I1_Fは、下式(1)により算出される。
【0042】
インバータ出力電流I1_Fは最大値保持回路506のA入力、最小値保持回路508のA入力およびフィルタ2の入力端子に入力される。
【0043】
最大値保持回路506は、絶対値算出回路504で算出されたインバータ出力電流I1_Fが初期値1として設定回路505で設定された電流値よりも大きい場合に、その大きいインバータ出力電流I1_Fを検出し保持すると共に、当該インバータ出力電流I1_Fを新たな初期値として設定する。この設定により、初期値が更新される。インバータ出力電流I1_Fが更新された初期値よりも大きい場合に、その大きいインバータ出力電流I1_Fを検出し保持すると共に、当該インバータ出力電流I1_Fを新たな初期値として設定する。この処理を繰り返すことにより、インバータ出力電流の最大値I1_Fmaxが検出され、保持される(
図5参照)。なお、保持されたインバータ出力電流の最大値I1_Fmaxは、リセット信号発生回路502から周期Tごとに出力されるリセット信号によって設定回路505で設定された初期値1にリセットされる。
【0044】
最小値保持回路508は、絶対値算出回路504で算出されたインバータ出力電流I1_Fが初期値2として設定回路507で設定された電流値よりも小さい場合に、その小さいインバータ出力電流I1_Fを検出し保持すると共に、当該インバータ出力電流I1_Fを新たな初期値として設定する。この設定により、初期値が更新される。インバータ出力電流I1_Fが更新された初期値よりも小さい場合に、その小さいインバータ出力電流I1_Fを検出し保持すると共に、当該インバータ出力電流I1_Fを新たな初期値として設定する。この処理を繰り返すことにより、インバータ出力電流の最小値I1_Fminが検出され、保持される(
図5参照)。なお、保持されたインバータ出力電流の最小値I1_Fminは、リセット信号発生回路502から周期Tごとに出力されるリセット信号によって設定回路507で設定された初期値2にリセットされる。
【0045】
減算回路509は、最大値保持回路506から出力されたインバータ出力電流の最大値I1_Fmaxから、最小値保持回路508から出力されたインバータ出力電流の最小値I1_Fminを減算しして得られた差分からなる通常負荷時のリプル電流I1_Frplを算出する(
図5参照。第1のリプル電流算出手段)。上記インバータ出力電流の最大値I1_Fmaxから、最小値I1_Fminを減算しして得られた差分は、通常負荷時のリプル電流I1_Frplを示しており、
図2(3)から明らかなように、当該通常負荷時のリプル電流I1_Frplは、時刻t1以前のアームヒューズ溶断発生前は小さな値を示すが、時刻t1以降のアームヒューズ溶断発生後は、大きな値を示す。算出された通常負荷時のリプル電流I1_Frplは、コンパレータ512の端子Aに入力される。
【0046】
コンパレータ512(第1のコンパレータ)は、端子Aに入力される上記通常負荷時のリプル電流が端子Bに入力される閾値(第1の閾値)を超えているか比較する。上記閾値は以下に示す方法によって設定される。
【0047】
図示されていないインバータ出力電流制御回路により互いに直交する2軸成分に変換されたインバータ出力電流のD軸電流指令値ID_R及びQ軸電流指令値ID_Qから電流指令値の絶対値(以下、電流指令値と称する。)I_Rを絶対値算出回路619にて算出する。電流指令値I_Rは、下式(2)により算出される。
【0048】
尚、
図4では絶対値算出回路619が第2のアームヒューズ溶断検出部60に記載されているが、絶対値検出回路619の出力は第1のアームヒューズ溶断検出部50でも使用するため作図の関係で便宜上であり、絶対値検出回路619は第1のアームヒューズ溶断検出部50にあってもよい。あるいは図示されていないインバータ出力電流の制御回路部でもよい。
【0049】
電流指令値I_Rはフィルタ510で平滑化され、さらに比例回路511にて比例ゲインK1を乗じて閾値としてコンパレータ512のB端子に入力される(第1の閾値決定手段)。すなわちコンパレータ512の閾値は電流指令値I_Rに比例した値に設定されることになる。フィルタ510は一次遅れ要素で、高域ノイズを除去する目的で使用される。
【0050】
比較の結果は、論理積513の端子Aに入力される。論理積513の端子Bには、
図3で説明したコンパレータ703の出力である切替信号が入力される。
【0051】
通常負荷時はコンパレータ703の出力である切替信号は1(High Level)である。
【0052】
よって、アームヒューズ溶断を検出すると、コンパレータ512から1(High Level)が出力され、さらに論理積513の出力も1(High Level)が出力される。
【0053】
論理積513の出力信号は、OFFディレイ515及びONディレイ517からなる信号処理回路に入力される。
【0054】
位相検出回路501から出力されたインバータ出力の基本波の周期Tは比例回路514にてゲインK2を乗じてOFFディレイ515のオフ遅延時間の設定値として入力される。OFFディレイ515は、入力信号のOFFタイミングを比例回路514の出力によって設定された期間遅延する。本実施例の場合、アームヒューズ溶断発生時でもコンパレータ512の出力は、基本波サイクルの周期中に断続が発生する場合もあるので、当該OFFディレイ515で連続信号にする。ゲインK2の値は例えば、1.2程度に設定する。この様に設定すれば基本波サイクルの周期中にOFFディレイ515の入力に断続が生じても出力信号は連続信号となる。
【0055】
さらに、位相検出回路501から出力されたインバータ出力の基本波の周期Tは比例回路516にてゲインN1を乗じてONディレイ517のオン遅延時間の設定値として入力される。
【0056】
ONディレイ517は、入力信号が比例回路516の出力で設定された時間以上継続した場合その出力を1(High Level)とする。
【0057】
不要動作防止の観点からリプル電流I1_Frplが基本波の周期Tで数サイクル(第1のサイクル)連続して閾値を超えた場合にアームヒューズ溶断の発生を検出することが望ましいので比例回路516で設定する値は数サイクルに相当する値とする。例えば5サイクルとする場合は比例回路516の設定ゲインN1は5とする。これによりONディレイ遅延設定値は周期Tの5倍となり、リプル電流I1_Frplが5サイクル連続して閾値を超えた場合にONディレイ517は、出力を1(High Level)とする。
【0058】
この設定により、所定の閾値を超える通常負荷時のリプル電流がサイクル回数分継続している場合にアームヒューズ溶断の発生が検出される。このONディレイ517の出力が第1のアームヒューズ溶断検出部50の出力となる。
図4においてリプル電流I1_Frplが基本波の周期Tで数サイクル連続して閾値を超えた場合の検出をOFFディレイ515とONディレイ517の組み合わせで構成したが、カウンタ回路を組み合わせて同様な機能を構成してもよい。
【0059】
上記ONディレイ517の出力信号は、アームヒューズ溶断検出出力部80の論理和801の端子Aに入力され、論理和801の端子Cからアームヒューズ溶断検出信号(INV_PH_LOSS)が出力される。
【0060】
論理和801の端子Cからアームヒューズ溶断検出信号(INV_PH_LOSS)が出力された場合は図示されない保護回路により適切な保護連動がおこなわれることになる。
【0061】
第2のアームヒューズ溶断検出部60は、軽負荷時に上述した各アームに接続されたアームヒューズの溶断を検出するために、正側U相積分値演算回路601、正側V相積分値演算回路602、正側W相積分値演算回路603、負側U相積分値演算回路604、負側V相積分値演算回路605、負側W相積分値演算回路606、減算回路607・610・613・616、絶対値算出回路619・608・611・614・617、コンパレータ609・612・615・618、論理和627、論理積622、OFFディレイ624、ONディレイ626などを有して構成される。
【0062】
アームヒューズ溶断前は、
図2(2)の時刻t1以前に示すように、U相出力電流Iu_FとV相出力電流Iv_Fは、位相はずれているが、周期T期間積分した値はほぼ同一の電流値を示すことから、その積分値の差分すなわち不平衡は小さな値になる。
【0063】
一方、
図2(2)の時刻t1以降に示すようにU相のアームヒューズ溶断が発生した場合、アームヒューズ溶断後、U相出力電流Iu_Fは、当該U相のアームヒューズ溶断の影響を受けアームヒューズ溶断前に比べて大きく変動し、正方向の電流成分が小さく、負方向の電流成分が減少している。また、U相出力電流Iu_Fのみならず、V相出力電流Iv_F及びW相出力電流Iw_FもU相のアームヒューズ溶断の影響を受け、アームヒューズ溶断前に比べて大きく変動する。
【0064】
従って、アームヒューズ溶断が発生した場合、1サイクル分の各相の電流値を正方向、あるいは逆方向単位で積分し、他の相の同方向の電流値の積分値と比較し、その差分(不平衡)が大きい場合、アームヒューズの溶断が生じたと判断できる。
【0065】
以上の原理に基づく
電流不平衡算出手段によりアームヒューズの溶断検出回路の説明をする。
【0066】
正側U相積分値演算回路601は、インバータのU相出力電流Iu_Fが入力され、
下限値を0とするリミッタ回路601aを経由して積分回路601bで積分される。上記積分回路601bで算出された積分値は、リセット信号502から周期Tごとに出力されるリセット信号によりクリアされ、初期値を0とする。このようにして、インバータのU相出力の周期T期間(1サイクル分)の正方向の電流の積分値が算出される。この値を正側U相積分値と呼ぶ。積分回路601bの出力は正側U相積分値演算回路601の出力となる。正側U相積分値演算回路601から出力された正側U相積分値は、減算回路607の+側端子に出力される。
【0067】
正側U相積分値の算出方法と同様に、正側V相積分値演算回路602は、インバータのV相出力電流Iv_Fの正側電流の、周期T期間の積分値を算出する。この値を正側V相積分値と呼ぶ。算出された正側V相積分値は、減算回路607及び610のー側端子に出力される。
【0068】
さらに、同様にして正側W相積分値演算回路603は、インバータのW相出力電流Iw_Fの正側電流の、周期T期間の積分値を算出する。この値を正側W相積分値と呼ぶ。算出された正側W相積分値は、減算回路610の+側端子に出力される。
【0069】
負側U相積分値演算回路604は、インバータのU相出力電流Iu_Fが入力され、
上限値を0とするリミッタ回路604aを経由して積分回路604bで積分される。上記積分回路604bで算出された積分値は、リセット信号502から周期Tごとに出力されるリセット信号によりクリアされ、初期値を0とする。このようにして、インバータのU相出力の周期T期間(1サイクル分)の負方向の電流の積分値が算出される。この値を負側U相積分値と呼ぶ。積分回路604bの出力は負側U相積分値演算回路604の出力となる。負側U相積分値演算回路604から出力された正側U相積分値は、減算回路613の+側端子に出力される。
【0070】
負側U相積分値の算出方法と同様に、負側V相積分値演算回路605は、インバータのV相出力電流Iv_Fの負側電流の、周期T期間の積分値を算出する。この値を負側V相積分値と呼ぶ。算出された負側V相積分値は、減算回路613及び616のー側端子に出力される。
【0071】
さらに、同様にして負側W相積分値演算回路606は、インバータのW相出力電流Iw_Fの負側電流の、周期T期間の積分値を算出する。この値を負側W相積分値と呼ぶ。算出された負側W相積分値は、減算回路616の+側端子に出力される。
【0072】
減算回路607は、正側U相積分値と正側V相積分値の差分を算出し、絶対値算出回路609に出力する。絶対値算出回路608は、正側U相積分値と正側V相積分値は共に正の値であるが、減算回路607による減算結果は正、負の値をとり得ることから、減算回路607から出力された正側U相積分値と正側V相積分値の差分の絶対値を算出し出力する(第1の電流不平衡算出手段)。
【0073】
コンパレータ609は、端子Aに入力される絶対値算出回路608の出力(軽負荷時のリプル電流)が、端子Bに入力される閾値以上であるか比較する。比較の結果は、コンパレータ609の端子Cから出力され、論理和627の端子Aに入力される。
【0074】
上記閾値は以下に示す方法によって設定される。
絶対値算出回路619
から出力された電流指令値I_Rは、フィルタ620で平滑化されさらに比例回路621にて比例ゲインK3を乗じて閾値としてコンパレータ609のB端子に入力される(第2の閾値決定手段)。すなわちコンパレータ609の閾値は電流指令値I_Rに比例した値に設定されることになる。
【0075】
フィルタ620は、一次遅れ要素で、高域ノイズを除去する目的で使用される。
【0076】
通常負荷時に使用される第1のアームヒューズ溶断部50と、軽負荷時に使用される第2のアームヒューズ溶断部60では使用される周波数が異なることから使用される負荷に合わせた最適な時定数を選択することが好ましい。
【0077】
コンパレータ609(第2のコンパレータ)は、A端子入力(すなわち絶対値算出回路608出力)が比例回路621の出力であるB端子入力(第2の閾値)以上の場合、出力を1(High Level)とする。
【0078】
このようにして、正側U相積分値と正側V相積分値との差分によるアームヒューズ溶断検出結果が論理和627の端子Aに入力される。
【0079】
減算回路610は、正側W相積分値と正側V相積分値の差分を算出する。減算回路610の差分は、絶対値算出回路611で差分の絶対値が算出され(第2の電流不平衡算出手段)、コンパレータ612(第3のコンパレータ)の端子Aに入力される。コンパレータ612の端子Aから論理和627の端子Bに入力される。絶対値算出回路611及びコンパレータ612の動作は、上述した絶対値算出回路608及びコンパレータ609の動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0080】
負側U相積分値の算出方法と同様に、負側V相積分値演算回路605は、インバータのV相出力電流Iv_Fの負側(上限リミッタを超えない負側)電流の、周期T期間の積分値を算出する。算出された正側V相積分値は、減算回路613及び616のー側端子に出力される。
【0081】
減算回路613は、負側U相積分値と負側V相積分値の差分を算出する。減算回路613の差分は、絶対値算出回路614で差分の絶対値が算出され(第3の電流不平衡算出手段)、コンパレータ615(第4のコンパレータ)の端子Aに入力される。コンパレータ615の端子Cから論理和627の端子Cに入力される。
【0082】
減算回路616は、負側W相積分値と負側V相積分値の差分を算出する。減算回路616の差分は、絶対値算出回路617で差分の絶対値が算出され(第4の電流不平衡算出手段)、コンパレータ618(第5のコンパレータ)の端子Aに入力される。コンパレータ618の端子Cから論理和627の端子Dに入力される。絶対値算出回路617及びコンパレータ618の動作は、上述した絶対値算出回路608及びコンパレータ609の動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0083】
なお、上述した各相積分値の組み合わせに限らず、正側U相積分値、
正側V相積分値及び
正側W相積分値の中の少なくとも何れか2つの積分値の差分、並びに負側U相積分値、負側V相積分値及び負側W相積分値の中の少なくとも何れか2つの積分値の差分から電流間の不平衡を算出することができる。(第1ないし第4の電流不平衡算出手段)
論理積622の端子Aには、
図3で説明した切替信号(1:通常負荷、0:軽負荷)が反転回路704で反転され入力される。軽負荷時のアームヒューズ溶断検出の際は、切替信号としてコンパレータ703(第6のコンパレータ)から0(Low Level)が出力されるが、反転回路704により反転されて論理積622の端子Aに入力される。
【0084】
論理積622の出力信号は、OFFディレイ624に入力され、さらにその出力はONディレイ626に入力される。
【0085】
位相検出回路501から出力されたインバータ出力の基本波の周期Tは比例回路623にてゲインK4を乗じてOFFディレイ624のオフ遅延時間の設定値として入力される。さらに、位相検出回路501から出力されたインバータ出力の基本波の周期Tは比例回路625にてゲインN2を乗じてONディレイ626のオン遅延時間の設定値として入力される。
【0086】
ゲインK2の設定は前述のゲインK1の設定と同様にアームヒューズが溶断した場合に、論理積622の出力はT1の周期内で断続信号となるが、連続化した信号になるように様設定する。またゲインN2の設定は、ゲインN1同様に数サイクル(第2のサイクル)分信号が継続した場合にアームヒューズ溶断信号をONディレイ626が出力する様に設定する。
【0087】
OFFディレイ624及びONディレイ626の動作は前述のOFFディレイ515及びONディレイ517の動作と同様であるので説明は省略する。
【0088】
上記ONディレイ
626の出力信号は、アームヒューズ溶断検出出力部80の論理和801の端子Bに入力され、論理和801の端子Cからアームヒューズ溶断検出信号(INV_PH_LOSS)が出力される。
【0089】
論理和801の端子Cからアームヒューズ溶断検出信号(INV_PH_LOSS)が出力された場合は図示されない保護回路により適切な保護連動がおこなわれることになる。
【0090】
以上の様に、実施例によれば、通常負荷時にも軽負荷時にもアームヒューズの溶断を確実に検出することができる。
【0091】
以上説明したように、本発明の実施例によれば、マイクロスイッチを使用せずに、電力変換装置の出力電流からアームヒューズ溶断を検出することができるため、マイクロスイッチの誤検出による電力変換装置を停止する等の誤動作の誤動作を防止することができるアームヒューズ溶断検出手段を備えた電力変換装置を提供できる。