特許第6837572号(P6837572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6837572-ガスケット 図000002
  • 特許6837572-ガスケット 図000003
  • 特許6837572-ガスケット 図000004
  • 特許6837572-ガスケット 図000005
  • 特許6837572-ガスケット 図000006
  • 特許6837572-ガスケット 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837572
(24)【登録日】2021年2月12日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   F16J15/10 U
   F16J15/10 N
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-551908(P2019-551908)
(86)(22)【出願日】2018年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2018036508
(87)【国際公開番号】WO2019093012
(87)【国際公開日】20190516
【審査請求日】2020年4月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-217723(P2017-217723)
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直樹
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−1156(JP,A)
【文献】 実開平6−82854(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入穴を有するハウジングと、前記挿入穴に挿入される挿入部及び前記挿入穴には挿入されない位置で前記挿入部の外周面から外側に向かって拡がる拡張面部を有する挿入部材と、の間の環状隙間を封止するガスケットであって、
前記挿入部材とは間隔を空けた状態で前記挿入穴の内周面に密着された状態で固定される胴体部と、
前記胴体部から該胴体部の内周面側に向かって伸びるように設けられ、かつ撓み変形可能な可撓部と、
を備えると共に、
前記可撓部は、前記挿入部材の前記拡張面部に押し込まれることで撓んだ状態となり、かつ前記ハウジング及び前記挿入部とはそれぞれ間隔を空けた状態で前記拡張面部に密着することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記可撓部は、前記胴体部における前記拡張面部側の端面に対して、前記拡張面部側とは反対側に離れた位置から伸びるように設けられることで、前記胴体部と前記可撓部との間には環状溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記胴体部は、内周面側と外周面側にそれぞれ円柱面部を有する筒状部により構成されると共に、
前記可撓部は、
前記胴体部から該胴体部の内周面側に向かって伸び、かつ内周面側と外周面側がいずれも前記拡張面部に向かって縮径する縮径部と、
前記縮径部から前記拡張面部に向かって伸びる円筒状部と、
を備え、
前記円筒状部の外径は、前記胴体部の内周面のうち最も小径の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記可撓部には、前記円筒状部よりも前記拡張面部側に設けられると共に、該拡張面部に押し込まれる際に前記可撓部の撓み方向を決定付ける先端部が備えられることを特徴とする請求項3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記先端部は、径方向外側に向かって膨らむ部位を有することで最大肉厚部が前記円筒状部の肉厚よりも厚く構成されると共に、前記拡張面部側の端部に該拡張面部に向かって拡径する傾斜面を有することを特徴とする請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記先端部における最大肉厚部は前記縮径部の肉厚よりも厚く構成されることを特徴とする請求項5に記載のガスケット。
【請求項7】
前記先端部は、径方向内側に向かって膨らむ部位を有することで最大肉厚部が前記円筒状部の肉厚よりも厚く構成されると共に、前記拡張面部側の端部に該拡張面部に向かって縮径する傾斜面を有することを特徴とする請求項4に記載のガスケット。
【請求項8】
前記先端部における最大肉厚部は前記縮径部の肉厚よりも厚く構成されることを特徴とする請求項7に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入穴を有するハウジングと、挿入穴に挿入される挿入部材との間の環状隙間を封止するガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
挿入穴を有するハウジングと、挿入穴に挿入される挿入部材との間の環状隙間を封止するガスケットにおいては、一般的に、ハウジング側の1以上の面と挿入部材側の1以上の面の合計3以上の面に密着するように構成される(特許文献1,2参照)。このように構成されるガスケットにおいては、ハウジングの挿入穴に対する挿入部材の位置が適正であれば、安定した密封性能が保たれる。
【0003】
しかしながら、上記のようなガスケットにおいては、3以上の複数の面によって拘束されるが故に、寸法公差や取り付け方や振動等によって、挿入穴に対して挿入部材が傾いた状態になると密着状態が保たれない箇所が生じて密封性能が不安定になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−105585号公報
【特許文献2】特開平11−173423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、挿入穴に対して挿入部材が傾いた状態となった場合でも安定した密封性能を発揮するガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、本発明のガスケットは、
挿入穴を有するハウジングと、前記挿入穴に挿入される挿入部及び前記挿入穴には挿入されない位置で前記挿入部の外周面から外側に向かって拡がる拡張面部を有する挿入部材と、の間の環状隙間を封止するガスケットであって、
前記挿入部材とは間隔を空けた状態で前記挿入穴の内周面に密着された状態で固定される胴体部と、
前記胴体部から該胴体部の内周面側に向かって伸びるように設けられ、かつ撓み変形可能な可撓部と、
を備えると共に、
前記可撓部は、前記挿入部材の前記拡張面部に押し込まれることで撓んだ状態となり、かつ前記ハウジング及び前記挿入部とはそれぞれ間隔を空けた状態で前記拡張面部に密着することを特徴とする。
【0008】
本発明のガスケットによれば、ハウジングの挿入穴の内周面に胴体部が密着し、挿入部材の拡張面部に可撓部が密着することで、ハウジングと挿入部材との間の環状隙間が封止される。そして、可撓部は、撓んだ状態で拡張面部に密着すると共に、ハウジングと挿入部とはそれぞれ間隔を空けた状態が保たれる。従って、挿入穴に対して挿入部材が傾いた状態となった場合でも、可撓部は、ハウジング及び挿入部から拘束されることなく、可撓部自体が挿入穴に対する挿入部材の傾き状態に応じて変形することで、拡張面部への密着状態を維持させることができる。
【0009】
前記可撓部は、前記胴体部における前記拡張面部側の端面に対して、前記拡張面部側とは反対側に離れた位置から伸びるように設けられることで、前記胴体部と前記可撓部との間には環状溝部が形成されているとよい。
【0010】
これにより、ガスケットの全長を長くすることなく、可撓部を長くすることができる。そして、可撓部を長くすることで、撓み変形が可能な量を大きくすることができる。
【0011】
前記胴体部は、内周面側と外周面側にそれぞれ円柱面部を有する筒状部により構成されると共に、
前記可撓部は、
前記胴体部から該胴体部の内周面側に向かって伸び、かつ内周面側と外周面側がいずれも前記拡張面部に向かって縮径する縮径部と、
前記縮径部から前記拡張面部に向かって伸びる円筒状部と、
を備え、
前記円筒状部の外径は、前記胴体部の内周面のうち最も小径の内径よりも小さいとよい。
【0012】
これにより、円筒状部を撓み易くすることができる。
【0013】
前記可撓部には、前記円筒状部よりも前記拡張面部側に設けられると共に、該拡張面部に押し込まれる際に前記可撓部の撓み方向を決定付ける先端部が備えられるとよい。
【0014】
これにより、先端部によって可撓部の撓み方向が決定付けられるため、可撓部の変形の仕方がばらついてしまったり、拡張面部に密着する位置がばらついてしまったりすることを抑制することができる。
【0015】
前記先端部は、径方向外側に向かって膨らむ部位を有することで最大肉厚部が前記円筒状部の肉厚よりも厚く構成されると共に、前記拡張面部側の端部に該拡張面部に向かって拡径する傾斜面を有するとよい。
【0016】
これにより、先端部が拡張面部に押し込まれる際に、先端部は、その先端が径方向外側に傾くように変形することで、円筒状部が径方向内側に向かって凹むように可撓部を変形させることができる。また、前記先端部における最大肉厚部は前記縮径部の肉厚よりも厚く構成されると、より好適である。
【0017】
また、前記先端部は、径方向内側に向かって膨らむ部位を有することで最大肉厚部が前記円筒状部の肉厚よりも厚く構成されると共に、前記拡張面部側の端部に該拡張面部に向かって縮径する傾斜面を有することも好適である。
【0018】
これにより、先端部が拡張面部に押し込まれる際に、先端部は、その先端が径方向内側に傾くように変形することで、円筒状部が径方向外側に向かって膨らむように可撓部を変形させることができる。また、前記先端部における最大肉厚部は前記縮径部の肉厚よりも厚く構成されると、より好適である。
【0019】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、挿入穴に対して挿入部材が傾いた状態となった場合でも安定した密封性能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の実施例1に係るガスケットの模式的断面図である。
図2図2は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的断面図である。
図3図3は本発明の実施例2に係るガスケットの模式的断面図である。
図4図4は本発明の実施例2に係る密封構造の模式的断面図である。
図5図5は本発明の実施例3に係るガスケットの模式的断面図である。
図6図6は本発明の実施例3に係る密封構造の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。本実施例に係るガスケットは、挿入穴を有するハウジングと、挿入穴に挿入される挿入部材との間の環状隙間を封止する役割を担っている。ハウジングの具体例としては、例えば、ヘッドカバーやインバーターケースを挙げることができる。また、挿入部材の具体例としては、インジェクションパイプやプラグチューブを挙げることができる。
【0023】
(実施例1)
図1及び図2を参照して、本発明の実施例1に係る密封装置について説明する。図1は本発明の実施例1に係るガスケットの模式的断面図である。なお、本実施例に係るガスケットは回転対称形状であり、図1においては、ガスケットの中心軸線を含む面でガスケットを切断した断面図を示している。また、図1においては、ガスケットとハウジング及び挿入部材との配置関係や寸法関係が分かり易いように、点線にて、ハウジングの内周面と挿入部材の外周面を示している。図2は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的断面図である。図2においても、ガスケットの中心軸線を含む面で、ガスケット等を切断した断面図を示している。
【0024】
<ハウジング及び挿入部材>
ハウジング800及び挿入部材900について説明する。ハウジング800は、挿入穴810を有している。この挿入穴810の内周面のうち少なくともガスケット100が密着する部位は円柱面により構成されている。なお、図示の例では、挿入穴810の内周面に段差が設けられているが、段差は必ずしも必要ではない。挿入部材900は、挿入穴810に挿入される挿入部910と、挿入穴810には挿入されない位置で挿入部910の外周面から外側に向かって拡がる拡張面部920とを有している。挿入部材900の具体的な形状の一例として、円柱状部分と、円柱状部分に設けられる外向きフランジ部とを有する形状を挙げることができる。この場合、円柱状部分が挿入部910に相当し、外向きフランジ部における挿入部910側の端面が拡張面部920に相当する。しかしながら、本実施例に係るガスケット100が適用される挿入部材900の形状は、そのような形状には限定されない。また、図示の例では、挿入部910の外周面910aは円柱面の場合を示しているが、外周面910aの形状は特に限定されることはない。また、拡張面部920についても、外向きフランジ部の端面である必要はない。更に、図示の例では、拡張面部920が、ガスケット100の中心軸線に対して垂直な平面で構成される場合を示しているが、ガスケット100が適用される拡張面部920は必ずしも平面でなくてもよい。例えば、拡張面部920は挿入部910側に向かって縮径する傾斜面(例えば、テーパ面)で構成されていてもよいし、挿入部910側に向かって拡径する傾斜面(例えば、テーパ面)で構成されていてもよい。
【0025】
<ガスケット>
ガスケット100について、より詳細に説明する。ガスケット100は、補強環110と、補強環110に対して一体的に設けられるゴム状弾性体製のガスケット本体120とから構成される。例えば、補強環110をインサート部品として、インサート成形によりガスケット本体120を成形することによりガスケット100が得られる。そして、ガスケット本体120は、胴体部121と、胴体部121から胴体部121の内周面側に向かって伸びるように設けられ、かつ撓み変形可能な可撓部122とから構成される。胴体部121は、挿入部材900とは間隔を空けた状態で挿入穴810の内周面に密着された状態で固定されるように構成されている(図2参照)。この胴体部121は、内周面側と外周面側にそれぞれ円柱面部を有する筒状部により構成される。また、胴体部121の外周面側には、環状のシール突起121a,121bが設けられている。
【0026】
また、可撓部122は、挿入部材900の拡張面部920に押し込まれることで撓んだ状態となり、かつハウジング800及び挿入部910とはそれぞれ間隔を空けた状態で拡張面部920に密着するように構成される。そして、この可撓部122は、胴体部121から胴体部121の内周面側に向かって伸び、かつ内周面側と外周面側がいずれも拡張面部920に向かって縮径する縮径部122aと、縮径部122aから拡張面部920に向かって伸びる円筒状部122bとを備えている。円筒状部122bの外径D11は、胴体部121の内周面のうち最も小径の内径D12よりも小さくなるように設計されている。また、可撓部122において、円筒状部122bよりも拡張面部920側には、先端部122cが設けられている。この先端部122cは、拡張面部920に押し込まれる際に可撓部122の撓み方向を決定付けるように設計されている。より具体的には、本実施例に係る先端部122cにおいては、径方向外側に向かって膨らむ部位を有することで最大肉厚部t11が円筒状部122bの肉厚t12よりも厚く構成されている。また、最大肉厚部t11は縮径部122aの肉厚t13よりも厚く構成されている。すなわち、t11>t12≧t13またはt11>t13≧t12を満たす。また、先端部122cにおける拡張面部920側の端部に、拡張面部920に向かって拡径する傾斜面122c1が設けられている。本実施例に係る傾斜面122c1は、テーパ面で構成されているが、当該傾斜面は断面で見た場合に曲線となるような傾斜面とすることもできる。
【0027】
<密封構造>
本実施例に係るガスケット100を用いた密封構造について説明する。ハウジング800の挿入穴810に挿入部材900が挿入される前の状態で、挿入穴810にガスケット100が装着される。これにより、挿入穴810の内周面にガスケット100の胴体部121の外周面が密着した状態となる。そして、挿入部材900が挿入穴810に挿入されると、挿入部材900の拡張面部920によって、ガスケット100の可撓部122における先端部122cが押し込まれる。先端部122cは、上記の通り、径方向外側に向かって膨らむ部位を有し、かつ拡張面部920側の端部に、拡張面部920に向かって拡径する傾斜面122c1が設けられている。そのため、先端部122cが拡張面部920に押し込まれる際に、先端部122cは、その先端が径方向外側に傾くように変形することで、円筒状部122bが径方向内側に向かって凹むように可撓部122は変形する(図2参照)。また、撓んだ状態の可撓部122は、ハウジング800及び挿入部910とはそれぞれ間隔を空けた状態で拡張面部920に密着した状態となる。
【0028】
<本実施例に係るガスケットの優れた点>
本実施例に係るガスケット100によれば、ハウジング800の挿入穴810の内周面に胴体部121が密着し、挿入部材900の拡張面部920に可撓部122が密着することで、ハウジング800と挿入部材900との間の環状隙間が封止される。そして、可撓部122は、撓んだ状態で拡張面部920に密着すると共に、ハウジング800と挿入部910とはそれぞれ間隔を空けた状態が保たれる。従って、挿入穴810に対して挿入部材900が傾いた状態となった場合でも、可撓部122は、ハウジング800及び挿入部910から拘束されることなく、可撓部122自体が挿入穴810に対する挿入部材900の傾き状態に応じて変形する。これにより、可撓部122の拡張面部920への密着状態を維持させることができる。従って、挿入穴810に対して挿入部材900が傾いた状態となった場合でも安定した密封性能が発揮される。
【0029】
また、円筒状部122bの外径D11は、胴体部121の内周面のうち最も小径の内径D12よりも小さくなるように設計されているため、円筒状部122bを撓み易くさせることができる。これにより、可撓部122が撓む過程で、先端部122cの拡張面部920に対する密着位置が大きく移動してしまうことを抑制することができる。従って、拡張面部920に対する先端部122cの密着位置のバラツキを抑制することができ、また、先端部122cが径方向外側に大きく広がってしまうことも抑制することができる。
【0030】
また、本実施例に係るガスケット100においては、先端部122cによって可撓部122の撓み方向が決定付けられるため、可撓部122の変形の仕方がばらついてしまったり、拡張面部920に密着する位置がばらついてしまったりすることを抑制することができる。更に、先端部122cの最大肉厚部t11は、円筒状部122bの肉厚t12よりも厚く、剛性が高いため、先端部122cが径方向外側に大きく広がってしまうことを、より確実に抑制することができる。また、先端部122cの最大肉厚部t11は、縮径部122aの肉厚t13よりも厚く、剛性が高いことによっても、先端部122cが径方向外側に大きく広がってしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0031】
(実施例2)
図3及び図4を参照して、本発明の実施例2に係る密封装置について説明する。図3は本発明の実施例2に係るガスケットの模式的断面図である。なお、本実施例に係るガスケットは回転対称形状であり、図3においては、ガスケットの中心軸線を含む面でガスケットを切断した断面図を示している。また、図3においては、ガスケットとハウジング及び挿入部材との配置関係や寸法関係が分かり易いように、点線にて、ハウジングの内周面と挿入部材の外周面を示している。図4は本発明の実施例2に係る密封構造の模式的断面図である。図4においても、ガスケットの中心軸線を含む面で、ガスケット等を切断した断面図を示している。
【0032】
ハウジング800及び挿入部材900については、上記実施例1で説明した通りであるので、その説明は省略する。
【0033】
本実施例に係るガスケット200について説明する。ガスケット200は、補強環210と、補強環210に対して一体的に設けられるゴム状弾性体製のガスケット本体220とから構成される。例えば、補強環210をインサート部品として、インサート成形によりガスケット本体220を成形することによりガスケット200が得られる。そして、ガスケット本体220は、胴体部221と、胴体部221から胴体部221の内周面側に向かって伸びるように設けられ、かつ撓み変形可能な可撓部222とから構成される。胴体部221は、挿入部材900とは間隔を空けた状態で挿入穴810の内周面に密着された状態で固定されるように構成されている(図4参照)。この胴体部221は、内周面側と外周面側にそれぞれ円柱面部を有する筒状部により構成される。また、胴体部221の外周面側には、環状のシール突起221a,221bが設けられている。
【0034】
また、可撓部222は、挿入部材900の拡張面部920に押し込まれることで撓んだ状態となり、かつハウジング800及び挿入部910とはそれぞれ間隔を空けた状態で拡張面部920に密着するように構成される。そして、この可撓部222は、胴体部221から胴体部221の内周面側に向かって伸び、かつ内周面側と外周面側がいずれも拡張面部920に向かって縮径する縮径部222aと、縮径部222aから拡張面部920に向かって伸びる円筒状部222bとを備えている。円筒状部222bの外径D21は、胴体部221の内周面のうち最も小径の内径D22よりも小さくなるように設計されている。また、可撓部222において、円筒状部222bよりも拡張面部920側には、先端部222cが設けられている。この先端部222cは、拡張面部920に押し込まれる際に可撓部222の撓み方向を決定付けるように設計されている。より具体的には、本実施例に係る先端部222cにおいては、径方向外側に向かって膨らむ部位を有することで最大肉厚部t21が円筒状部222bの肉厚t22よりも厚く構成されている。また、最大肉厚部t21は縮径部222aの肉厚t23よりも厚く構成されている。すなわち、t21>t22≧t23またはt21>t23≧t22を満たす。また、先端部222cにおける拡張面部920側の端部に、拡張面部920に向かって拡径する傾斜面222c1が設けられている。本実施例に係る傾斜面222c1は、テーパ面で構成されているが、当該傾斜面は断面で見た場合に曲線となるような傾斜面とすることもできる。
【0035】
そして、本実施例に係るガスケット200においては、可撓部222は、胴体部221における拡張面部920側の端面に対して、拡張面部920側とは反対側に離れた位置から伸びるように設けられている。これにより、胴体部221と可撓部222との間には環状溝部230が形成されている。
【0036】
本実施例に係るガスケット200を用いた密封構造については、上記実施例1の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0037】
以上のように構成されるガスケット200においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例に係るガスケット200においては、上記の通り、可撓部222は、胴体部221における拡張面部920側の端面に対して、拡張面部920側とは反対側に離れた位置から伸びるように設けられている。これにより、ガスケット200の全長を長くすることなく、可撓部222を長くすることができる。従って、可撓部222を長くすることで、撓み変形が可能な量を大きくすることができる。また、先端部222cを実施例1の場合に比べて、径方向外側に拡がり難くすることもできる。
【0038】
(実施例3)
図5及び図6を参照して、本発明の実施例3に係る密封装置について説明する。図5は本発明の実施例3に係るガスケットの模式的断面図である。なお、本実施例に係るガスケットは回転対称形状であり、図5においては、ガスケットの中心軸線を含む面でガスケットを切断した断面図を示している。また、図5においては、ガスケットとハウジング及び挿入部材との配置関係や寸法関係が分かり易いように、点線にて、ハウジングの内周面と挿入部材の外周面を示している。図6は本発明の実施例3に係る密封構造の模式的断面図である。図6においても、ガスケットの中心軸線を含む面で、ガスケット等を切断した断面図を示している。
【0039】
ハウジング800及び挿入部材900については、上記実施例1で説明した通りであるので、その説明は省略する。
【0040】
<ガスケット>
本実施例に係るガスケット300について説明する。ガスケット300は、補強環310と、補強環310に対して一体的に設けられるゴム状弾性体製のガスケット本体320とから構成される。例えば、補強環310をインサート部品として、インサート成形によりガスケット本体320を成形することによりガスケット300が得られる。そして、ガスケット本体320は、胴体部321と、胴体部321から胴体部321の内周面側に向かって伸びるように設けられ、かつ撓み変形可能な可撓部322とから構成される。胴体部321は、挿入部材900とは間隔を空けた状態で挿入穴810の内周面に密着された状態で固定されるように構成されている(図6参照)。この胴体部321は、内周面側と外周面側にそれぞれ円柱面部を有する筒状部により構成される。また、胴体部321の外周面側には、環状のシール突起321a,321bが設けられている。
【0041】
また、可撓部322は、挿入部材900の拡張面部920に押し込まれることで撓んだ状態となり、かつハウジング800及び挿入部910とはそれぞれ間隔を空けた状態で拡張面部920に密着するように構成される。そして、この可撓部322は、胴体部321から胴体部321の内周面側に向かって伸び、かつ内周面側と外周面側がいずれも拡張面部920に向かって縮径する縮径部322aと、縮径部322aから拡張面部920に向かって伸びる円筒状部322bとを備えている。円筒状部322bの外径D31は、胴体部321の内周面のうち最も小径の内径D32よりも小さくなるように設計されている。また、可撓部322において、円筒状部322bよりも拡張面部920側には、先端部322cが設けられている。この先端部322cは、拡張面部920に押し込まれる際に可撓部322の撓み方向を決定付けるように設計されている。より具体的には、本実施例に係る先端部322cにおいては、径方向内側に向かって膨らむ部位を有することで最大肉厚部t31が円筒状部322bの肉厚t32よりも厚く構成されている。また、最大肉厚部t31は縮径部322aの肉厚t33よりも厚く構成されている。すなわち、t31>t32≧t33またはt31>t33≧t32を満たす。また、先端部322cにおける拡張面部920側の端部に、拡張面部920に向かって縮径する傾斜面322c1が設けられている。本実施例に係る傾斜面322c1は、テーパ面で構成されているが、当該傾斜面は断面で見た場合に曲線となるような傾斜面とすることもできる。
【0042】
そして、本実施例に係るガスケット300においては、可撓部322は、胴体部321における拡張面部920側の端面に対して、拡張面部920側とは反対側に離れた位置から伸びるように設けられている。これにより、胴体部321と可撓部322との間には環状溝部330が形成されている。
【0043】
<密封構造>
本実施例に係るガスケット300を用いた密封構造について説明する。ハウジング800の挿入穴810に挿入部材900が挿入される前の状態で、挿入穴810にガスケット300が装着される。これにより、挿入穴810の内周面にガスケット300の胴体部321の外周面が密着した状態となる。そして、挿入部材900が挿入穴810に挿入されると、挿入部材900の拡張面部920によって、ガスケット300の可撓部322における先端部322cが押し込まれる。先端部322cは、上記の通り、径方向内側に向かって膨らむ部位を有し、かつ拡張面部920側の端部に、拡張面部920に向かって縮径する傾斜面322c1が設けられている。そのため、先端部322cが拡張面部920に押し込まれる際に、先端部322cは、その先端が径方向内側に傾くように変形することで、円筒状部322bが径方向外側に向かって膨らむように可撓部322は変形する(図6参照)。また、撓んだ状態の可撓部322は、ハウジング800及び挿入部910とはそれぞれ間隔を空けた状態で拡張面部920に密着した状態となる。
【0044】
以上のように構成されるガスケット300においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例に係るガスケット300においては、上記実施例2の場合と同様に、ガスケット300の全長を長くすることなく、可撓部322を長くすることができる。従って、可撓部322を長くすることで、撓み変形が可能な量を大きくすることができる。また、本実施例の場合には、上記実施例1,2の場合とは異なり、円筒状部322bが径方向外側に向かって膨らむように可撓部322は変形し、先端部322cは径方向内側を向いた状態となる。従って、拡張面部920の径方向寸法が短い場合であっても、先端部322cが拡張面部920の外側にはみ出してしまうということはない。
【0045】
なお、本実施例においては、上記実施例2の場合と同様に、環状溝部330が形成される場合の構成を示したが、実施例1の場合のように、環状溝部が形成されない構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
100,200,300 ガスケット
110,210,310 補強環
120,220,320 ガスケット本体
121,221,321 胴体部
121a,121b,221a,221b,321a,321b シール突起
122,222,322 可撓部
122a,222a,322a 縮径部
122b,222b,322b 円筒状部
122c,222c,322c 先端部
122c1,222c1,322c1 傾斜面
230,330 環状溝部
800 ハウジング
810 挿入穴
900 挿入部材
910 挿入部
910a 外周面
920 拡張面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6