(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る携帯用情報機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
先ず、携帯用情報機器10の全体構成を説明する。
【0019】
図1は、一実施形態に係る携帯用情報機器10を180度姿勢とした状態での斜視図である。
図2は、
図1に示す携帯用情報機器10を0度姿勢として一部を拡大した斜視図である。
図3は、
図1に示す携帯用情報機器10を360度姿勢として一部を拡大した斜視図である。
【0020】
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器10は、第1筐体12A及び第2筐体12Bと、第1ディスプレイ14A及び第2ディスプレイ14Bと、ヒンジ装置16と、を備える。本実施形態では携帯用情報機器10として、本のように二つ折りに折り畳み可能なタブレット型PCを例示する。携帯用情報機器10は、携帯電話、スマートフォン、電子手帳又は携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0021】
筐体12A,12Bは、互いの隣接縁部である一縁部12Aa,12Ba同士がヒンジ装置16で連結されている。ヒンジ装置16は、各筐体12A,12B間を
図2及び
図4Cに示す0度姿勢(第1積層形態)から、
図1及び
図4Aに示す180度姿勢(平板形態)を経て、
図3及び
図4Dに示す360度姿勢(第2積層形態)まで回動可能に連結している。0度姿勢では、筐体12A,12B間が重ねて配置され、ディスプレイ14A,14Bの表示面同士、つまり筐体12A,12Bの上面12Ac,12Bc同士が対向する。180度姿勢では、各筐体12A,12Bが面内方向に並んで略同一平面上に配置され、各ディスプレイ14A,14Bが一体となって略1枚の大画面を構成する。360度姿勢では、0度姿勢とは反対向きで筐体12A,12B間が重ねて配置され、各筐体12A,12Bの下面12Ab,12Bb同士が対向する。
【0022】
以下、
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、筐体12A,12Bの一縁部12Aa,12Baに沿った方向をY方向、各筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向と呼んで説明する。
【0023】
筐体12A,12Bは、矩形の薄い箱体である。筐体12A,12Bは、例えばステンレス、マグネシウム又はアルミニウム等の金属板、各種樹脂材料、炭素繊維等を含む繊維強化樹脂板等で箱状に形成されている。筐体12A,12Bは、それぞれ一縁部12Aa,12Ba及びその周辺部に他の部分よりも板厚を大きくし、下面12Ab,12Bb側を膨出させた側面視略台形状の膨出部18を有する。筐体12A,12Bは、大部分の板厚が極めて薄い構造である。そこで、筐体12A,12Bは、一部に膨出部18を設け、ここにヒンジ装置16や後述するリンク機構20A,20Bを収容している。携帯用情報機器10は、膨出部18を設けず、全体を均一の板厚で構成してもよい。各筐体12A,12Bの内部には、演算装置等を実装した基板、バッテリ装置、アンテナ、冷却装置等の各種電子部品が搭載されている。各筐体12A,12Bは、ヒンジ装置16に対してそれぞれX方向に相対的にスライド可能な状態で連結されている。
【0024】
ディスプレイ14A,14Bは、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ14A,14Bは、それぞれ筐体12A,12Bの上面12Ac,12Bcに固定されている。
【0025】
本実施形態の筐体12A,12Bは、一縁部12Aa,12Baの端面がZ方向に沿った鉛直平面で形成されている(
図1及び
図4A参照)。これら一縁部12Aa,12Baの端面同士は、180度姿勢で当接又は近接する。これにより携帯用情報機器10は、180度姿勢において、1枚板状に形成された筐体12A,12B間でディスプレイ14A,14Bがほとんど隙間なく連続し、1枚の大画面を形成する。
【0026】
次に、ヒンジ装置16の構成例を説明する。
【0027】
図4A〜
図4Dは、ヒンジ装置16による筐体12A,12Bの回動動作を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
図4Aは、180度姿勢を示す。
図4Bは、180度姿勢から0度姿勢に回動している途中の状態を示す。
図4Cは、0度姿勢を示す。
図4Dは、360度姿勢を示す。
図5A〜
図5Cは、ヒンジ装置16による筐体12A、12Bの回動動作時のリンク機構20A(20B)の動作を模式的に示す底面図である。
図5Aは、180度姿勢を示す。
図5Bは、0度姿勢を示す。
図5Cは、360度姿勢を示す。
【0028】
図1に示すように、ヒンジ装置16は、Y方向で一対設けられている。各ヒンジ装置16は、筐体12A,12Bの一縁部12Aa,12BaのY方向両端部にそれぞれ配置されている。
【0029】
図2、
図3、
図4A及び
図5Aに示すように、各ヒンジ装置16は、一縁部12Aa,12Baに沿って延在するヒンジ軸連結体24を共用している。各ヒンジ装置16は、第1ヒンジベース16Aと、第2ヒンジベース16Bと、を備える。各ヒンジベース16A,16Bは、略矩形状の金属プレートである。第1ヒンジベース16Aは、第1筐体12Aとの連結板である。第2ヒンジベース16Aは、第2筐体12Bとの連結板である。
【0030】
ヒンジ軸連結体24は、X方向に並んだ第1ヒンジ軸25a及び第2ヒンジ軸25bと、ヒンジ軸25a,25b間を連結するブリッジ部26と、支持機構部29と、を備える。
【0031】
2本のヒンジ軸25a,25bは、互いの軸方向が平行するように配置され、ブリッジ部26で連結されている。ブリッジ部26は、ヒンジ軸25a,25b間に跨るように設けられた金属部品であり、各ヒンジ軸25a,25bを回転不能に支持している。ブリッジ部26は、ヒンジ軸25a,25bの軸方向で例えば2個以上、本実施形態では3個が適宜間隔で並列され、ヒンジ軸25a,25bに外嵌されている。
【0032】
図5Aに示すように、第1ヒンジ軸25aは、第1筐体12A側の第1ヒンジベース16Aに対して支持機構部29を介して連結されている。第2ヒンジ軸25bは、第2筐体12B側の第2ヒンジベース16Bに対して支持機構部29を介して連結されている。支持機構部29は、第1筒体29aと、第2筒体29bと、筒体29a,29b間に亘るギヤシャフト29cと、を有する。
【0033】
第1筒体29aは、第1ヒンジ軸25aを軸回りに回転可能に支持する軸受として機能する金属筒である。第1筒体29aは、外周面から取付板が突出しており、この取付板がねじ27を介して第1ヒンジベース16Aに固定される。第2筒体29bは、第2ヒンジ軸25bを軸回りに回転可能に支持する軸受として機能する金属筒である。第2筒体29bは、外周面から取付板が突出しており、この取付板がねじ27を介して第2ヒンジベース16Bに固定される。
【0034】
筒体29a,29bは、ヒンジ軸25a,25bの軸方向で一方側の端面に、それぞれギヤ29d,29eを有する。ギヤシャフト29cは、両端部にギヤが形成された金属シャフトであり、例えば隣接するブリッジ部26に回転可能に支持されている。ギヤ29d,29eは、ギヤシャフト29cの各ギヤとそれぞれ噛み合いしている。各ギヤ29d,29e及びギヤシャフト29cの各ギヤは、例えばヘリカルギヤである。
【0035】
このように、支持機構部29は、ヒンジ連結体24を各ヒンジベース16A,16Bに連結する支持ブラケットとして機能する。さらに支持機構部29は、第1ヒンジ軸25aに対する第1筒体29aの相対回転と、第2ヒンジ軸25bに対する第2筒体29bの相対回転とを同期させる同期機構としても機能する。これにより、携帯用情報機器10は、筐体12A,12B間を回動させると、ブリッジ部26で連結された各ヒンジ軸25a,25bに対して、各ヒンジベース16A,16Bが各筒体29a,29bを介して相対的に旋回動作する。その際、各ヒンジベース16A,16Bで支持された各リンク機構20A,20Bも各ヒンジ軸25a,25bの軸回りに旋回する。
【0036】
ヒンジ装置16は、各ヒンジ軸25a,25bの端部にトルク発生部26a,26bを有する(
図2及び
図3参照)。トルク発生部26a,26bは、筒体29a,29bとヒンジ軸25a,25bとの間の相対回転に所定の回転トルクを付与する。これにより、筐体12A,12B間は、互いの相対的な回動動作に所定の回動トルクが付与される。
【0037】
なお、ヒンジ軸25a,25bは、ブリッジ部26に対して回転可能に支持された構成でもよい。この構成とする場合は、例えば支持機構部29の各筒体29a,29bを各ヒンジ軸25a,25bに対して回転不能に固定する。さらに、軸出力部32,33は、ヒンジ軸25a,25Bの外周面ではなく、例えばヒンジ軸25a,25bに対して回転可能に外挿され、且つブリッジ部26に対して回転不能に連結された筒体の端面にカム面として形成する。そして、このカム面からなる軸出力部32,33にピン30a,31aを摺接させる構成等とすれば、
図5Aに示す構成例と同様な動作が可能となる。
【0038】
次に、ヒンジ装置16と筐体12A,12Bとの間の連結構造を説明する。
【0039】
図4A〜
図4Dに示すように、第1筐体12Aは、第1ヒンジベース16Aに対してX方向に相対的にスライド可能に連結されている。第2筐体12Bは、第2ヒンジベース16Bに対してX方向に相対的にスライド可能に連結されている。
【0040】
図4Aに示すように、第1筐体12Aは、一縁部12Aaの下部に開口部28を有する。ヒンジ装置16は、開口部28を通して第1筐体12A内に挿入され、第1リンク機構20Aを介して第1筐体12Aと連結されている。第2筐体12Bは、第1筐体12Aと左右対称構造である。つまり第2筐体12Bは、一縁部12Baの下部に設けられた開口部28からヒンジ装置16が挿入される。第2筐体12Bは、第2リンク機構20Bを介してヒンジ装置16と連結されている。
【0041】
第1リンク機構20Aは、ヒンジ装置16による筐体12A,12B間の回動動作と連動して動作し、第1筐体12Aとヒンジ装置16との間をX方向に相対移動させる機構である。第2リンク機構20Bは、ヒンジ装置16による筐体12A,12B間の回動動作と連動して動作し、第2筐体12Bとヒンジ装置16との間をX方向に相対移動させる機構である。
【0042】
図4A及び
図5Aに示すように、第1リンク機構20Aは、一対のスライダ30,31と、一対の軸出力部32,33と、第1駆動部34Aと、を備える。なお、第2筐体12B及び第2リンク機構20Bは、第1筐体12A及び第1リンク機構20Aと左右対称構造である。そこで、第2筐体12B及び第2リンク機構20Bの各要素については、第1筐体12A及び第1リンク機構20Aの各要素と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
スライダ30,31は、第1ヒンジ軸25aの軸方向(X方向)に並んでいる。一方のスライダ30は、例えば円筒状部材であり、その軸方向の貫通孔に第1ヒンジ軸25aが挿通されている。スライダ30は、一方の軸出力部32と連係する。スライダ30は、ヒンジ軸25aに対して軸方向に相対移動可能に外挿されている。スライダ30には、ピン30aが突設されている。ピン30aは、第1ヒンジ軸25aの外周面に形成された軸出力部32に対して摺動可能に係合している。
図5A等では、スライダ30,31と第1ヒンジ軸25aの連係状態を明示するため、スライダ30(31)を円筒状部材ではなく、ブロック状の部品として図示している。スライダ30(31)は、第1ヒンジ軸25aに対してその軸方向に相対移動可能に設けられ、ピン30a(31a)が軸出力部32(33)に摺動可能に係合していれば、その形状や構造は適宜変更可能である。
【0044】
他方のスライダ31は、他方の軸出力部33と連係する。スライダ31の基本的な構成は、スライダ30と同様である。つまりスライダ31は、第1ヒンジ軸25aに対して軸方向に相対移動可能に設けられ、突設されたピン31aが第1ヒンジ軸25aの外周面に形成された軸出力部33に対して摺動可能に係合している。
【0045】
図6A〜
図6Cは、第1ヒンジ軸25aを周方向に展開して軸出力部32,33の構成を模式的に示した説明図である。
図6Aは、180度姿勢を示す。
図6Bは、0度姿勢を示す。
図6Cは、360度姿勢を示す。
【0046】
図5A及び
図6Aに示すように、一方の軸出力部32は、第1ヒンジ軸25aの外周面に形成され、外周面の周方向に沿って次第に軸方向(Y方向)に変位した螺旋状の溝部である。軸出力部32は、第1ヒンジ軸25aを周方向に展開した
図6Aに示す状態で略クランク形状を成す。
図6Aに示すように、軸出力部32は、カム部32aと、空振部32bと、を有する。
【0047】
カム部32aは、第1ヒンジ軸25aの周方向に沿って軸方向に傾斜するように延在している。本実施形態のカム部32aは、空振部32bの境界部分32cからの傾斜角度が2段に変化している。カム部32aは、境界部分32cに近い部分の傾斜角度が大きく、途中から緩やかな傾斜角度となっている。空振部32bは、第1ヒンジ軸25aの周方向に沿って延在している。空振部32bは、カム部32aから連続している。
【0048】
ピン30aは、カム部32aから空振部32bまでを摺動しながら移動可能である。180度姿勢において、ピン30aは、境界部分32cにおける空振部32bよりもカム部32a側に寄った位置に配置される(
図6A参照)。筐体12A,12B間が180度姿勢から0度姿勢に回動する動作時において、ピン30aは、境界部分32cからカム部32aを移動する(
図6B参照)。筐体12A,12B間が180度姿勢から360度姿勢に回動する動作時において、ピン30aは、境界部分32cから空振部32bを移動する(
図6C参照)。ピン30aは、カム部32aを移動している間、つまり180度姿勢と0度姿勢との間での動作時、そのY方向位置が変化し、スライダ30を第1ヒンジ軸25aの軸方向に移動させる。
【0049】
図5A及び
図6Aに示すように、他方の軸出力部33は、第1ヒンジ軸25aの外周面に形成され、一方の軸出力部32と並んでいる。軸出力部33は、第1ヒンジ軸25aの外周面の周方向に沿って次第に軸方向(Y方向)に変位した螺旋状の溝部である。軸出力部33は、第1ヒンジ軸25aを周方向に展開した
図6Aに示す状態で略クランク形状を成す。
図6Aに示すように、軸出力部33は、カム部33aと、空振部33bと、を有する。
【0050】
カム部33aは、第1ヒンジ軸25aの周方向に沿って軸方向に傾斜するように延在している。本実施形態のカム部33aは、カム部32aとは異なり、カム部33aと空振部33bの境界部分33cから一定の傾斜角度で延在している。本実施形態の場合、カム部33aのY方向の変位量が、カム部32aのY方向の変位量よりも小さい構成となっている。空振部33bは、第1ヒンジ軸25aの周方向に沿って延在している。空振部33bは、カム部32aから連続している。
【0051】
ピン31aは、カム部33aから空振部33bまでを摺動しながら移動可能である。180度姿勢において、ピン31aは、境界部分33cにおける空振部33bよりもカム部33a側に寄った位置に配置される(
図6A参照)。筐体12A,12B間が180度姿勢から0度姿勢に回動する動作時において、ピン31aは、境界部分33cから空振部33bを移動する(
図6B参照)。筐体12A,12B間が180度姿勢から360度姿勢に回動する動作時において、ピン31aは、境界部分32cからカム部33aを移動する(
図6C参照)。ピン31aは、カム部33aを移動している間、つまり180度姿勢と360度姿勢との間での動作時、そのY方向位置が変化し、スライダ31を第1ヒンジ軸25aの軸方向に移動させる。
【0052】
図6A〜
図6Cに示すように、本実施形態のピン30a,31aは、少なくとも軸出力部32,33に挿入される先端部が断面略六角形状を成している。これによりピン30aは、カム部32aの溝部を形成する両側の側面32dと略平行した外面30bを両側に有する。同様に、ピン31aは、カム部33aの溝部を形成する両側の側面33dと略平行した外面31bを両側に有する。その結果、ピン30a,31aは、境界部分32c,33cからの動作開始時にカム部32a,33aへとより円滑に摺動する。ピン30a,31aは、例えば円形状や六角形以外の多角形状でもよい。
【0053】
図5Aに示すように、第1駆動部34Aは、一対のリンク部材36,37と、出力部材38と、第1レバー部材40Aと、を有する。
【0054】
リンク部材36,37は、帯板状部材である。一方のリンク部材36は、第1端部が連結軸36aを介して一方のスライダ30と回転可能に連結されている。リンク部材36は、第1端部とは反対側の第2端部が係合ピン36bを介して出力部材38と係合されている。他方のリンク部材37は、第1端部が連結軸37aを介して他方のスライダ31と回転可能に連結されている。リンク部材37は、第1端部とは反対側の第2端部が係合ピン37bを介して出力部材38と係合されている。
【0055】
図5A中の参照符号35a,35bは、それぞれ連結軸36a,37aが摺動可能に挿入され、スライダ30、31の移動をガイドするガイド孔である。ガイド孔35a,35bは、ヒンジベース16A,16Bに形成され、Y方向に延在している。
【0056】
一対のリンク部材36,37は、互いに公差してX形状を成している。リンク部材36,37間は、互いの第1端部と第2端部の間となる位置同士が回転軸42で連結されている。つまりリンク部材36,37は、互いの上下に重なって交差する略中央部分が回転軸42で連結されている。これによりリンク部材36,37は、中央の回転軸42を介してシザー構造を成し、連結軸36a,37aと係合ピン36b,37bとの間のX方向距離が伸縮する。
【0057】
出力部材38は、Y方向に延びた帯板状部材である。出力部材38は、ヒンジ装置16の第1ヒンジベース16Aに対してX方向に沿って移動可能な状態で設置されている。出力部材38は、その長手方向(Y方向)に沿って延びた長孔38aを有する。長孔38aには、係合ピン36b,37bが長手方向に並んで摺動可能に係合している。リンク部材36,37は、互いに交差している。このため、Y方向を基準とすると、係合ピン37bが連結軸36a側に配置され、係合ピン36bが連結軸37a側に配置されている。
【0058】
第1レバー部材40Aは、帯板状部材である。第1レバー部材40Aは、出力部材38がX方向に移動した際に回動し、第1筐体12Aをヒンジ装置16に対して相対的にスライドさせる部材である。第1レバー部材40Aは、第1端部が連結軸40Aaを介して出力部材38と回転可能に連結されている。第1レバー部材40Aは、第1端部とは反対側の第2端部が駆動ピン43を介して第1筐体12Aの出力穴44に係合している。出力穴44は、Y方向に延びた長穴である。出力穴44は、例えば第1筐体12Aの下面12Ab側の内面に設けられている(
図4A参照)。第1レバー部材40Aは、第1端部と第2端部との間が、第1ヒンジベース16Aに対して支持軸40Abを介して回転可能に支持されている。
【0059】
図4A及び
図5Aに示すように、第2リンク機構20Bは、第1リンク機構20Aと左右対称構造である。第2リンク機構20Bは、第1リンク機構20Aと比べて、第1ヒンジ軸25aに代えて第2ヒンジ軸25bと連結され、第1筐体12A側ではなく第2筐体12B側に配設されている点が異なる以外は同一構造である。つまり第2リンク機構20Bは、第2ヒンジ軸25bに連結されたスライダ30,31と、第2ヒンジ軸25bに形成された軸出力部32,33と、第2ヒンジベース16Bに支持された第2駆動部34Bと、を備える。第2駆動部34Bは、第1駆動部34Aと左右対称構造であり、リンク部材36,37と、出力部材38と、第2レバー部材40Bと、を有する。第2レバー部材40Bは、第2筐体12Bと連結されている。
【0060】
なお、
図4A〜
図4D中の参照符号46は、筐体12A,12Bに固定されたカバープレートである。カバープレート46は、筐体12A,12B間の回動動作時に拡大する一縁部12Aa,12Ba間の隙間を内側から覆い隠すものである。
【0061】
次に、ヒンジ装置16による筐体12A,12Bの回動動作時の第1リンク機構20Aの動作及び作用効果を説明する。第2リンク機構20Bの動作は、第1リンク機構20Aの動作と左右対称である以外は同一のため、詳細な説明は省略する。
【0062】
携帯用情報機器10が
図1に示す180度姿勢にある場合、第1リンク機構20A(第2リンク機構20B)は、
図5Aに示す状態にある。この状態では、左右のスライダ30,31は、それぞれのピン30a,31aが軸出力部32,33の境界部分32c,33cにある(
図6A参照)。このため、左右のスライダ30,31は、互いに最も近接した位置に配置されている。
【0063】
この状態では、リンク部材36,37は、
図5Aに示すように、連結軸36a,37a間が最も近接し、係合ピン36b,37b間も最も近接した位置にある。このため、リンク部材36,37は、X方向に最も伸長した姿勢にあり、出力部材38がX方向で最も第1ヒンジ軸25aから離間した位置にある。その結果、第1レバー部材40Aは、支持軸40Abを中心として
図5A中で最も反時計方向に回動した位置にある。このため、駆動ピン43は、X方向で最も第1ヒンジ軸25aに近接した位置にあり、第1筐体12Aが最も第2筐体12Bに近接した位置にある(
図4Aも参照)。なお、第2筐体12Bは、第2リンク機構20Bの第1リンク機構20Aに対する左右対称構造である。このため、第2筐体12Bも、最も第1筐体12Aに近接した位置にある。
【0064】
以上より、180度姿勢において、各筐体12A,12Bはいずれもヒンジ装置16に最も近接した位置にある。つまり筐体12A,12B間は、互いの一縁部12Aa,12Ba同士が当接又は近接した最接近位置にある。このため、携帯用情報機器10は、筐体12A,12Bが並んで平板状に配置され、ディスプレイ14A,14Bが略1枚の大画面を形成したタブレット型PCの使用モード(大画面タブレットモード)となる。従って、ユーザは、携帯用情報機器10を大画面のタブレット側PCとして利用できる。
【0065】
ところで、上記の通り、180度姿勢時、ピン30aは、境界部分32cに位置しているが、空振部32bよりもカム部32a側に寄った位置にある(
図6A参照)。このため、ピン30aは、両側の外面30bがカム部32aの側面32dと対向した状態にある。同様に、ピン31aは、境界部分33cに位置しているが、空振部33bよりもカム部33a側に寄った位置にある。このため、ピン31aは、両側の外面31bがカム部33aの側面33dと対向した状態にある。
【0066】
次に、携帯用情報機器10が、
図4Aに示す180度姿勢から
図4Cに示す0度姿勢に変化する場合の動作を説明する。この動作時、第1リンク機構20A(第2リンク機構20B)は、第1ヒンジベース16A(第2ヒンジベース16B)と共に第1ヒンジ軸25a(第2ヒンジ軸25b)の軸回りに旋回する。このため、ピン30a,31aが軸出力部32,33を摺動する。
【0067】
具体的には、
図6A及び
図6Bに示すように、スライダ30のピン30aは、境界部分32cを出発し、同時にカム部32aを摺動する。一方、スライダ31のピン31aは、境界部分33cを出発し、空振部33bを摺動する。つまり、一方のスライダ30は、
図5Bに示すようにY方向に沿って図中で左側に移動する。他方のスライダ31は、
図5Bに示すようにY方向位置は変化しない。
【0068】
その結果、
図5Bに示すように、第1駆動部34Aでは、連結軸36aが連結軸37aから離間する方向に移動する。このため、一方のリンク部材36は、回転軸42を中心として図中で反時計方向に回動する。これにより、係合ピン36bがY方向で第1ヒンジ軸25a側に移動し、出力部材38をY方向で第1ヒンジ軸25a側に押圧して移動させる。同時に、他方のリンク部材37は、出力部材38によって係合ピン37bが押圧される結果、回転軸42を中心として図中で時計方向に回動する。
【0069】
従って、リンク部材36,37は、
図5Bに示すようにX方向に最も収縮した姿勢となり、出力部材38がX方向で最も第1ヒンジ軸25aに近接した位置に移動する。その結果、第1レバー部材40Aは、支持軸40Abを中心として
図5B中で最も時計方向に回動した姿勢となる。このため、駆動ピン43は、X方向で最も第1ヒンジ軸25aから離間した位置に移動し、第1筐体12Aをヒンジ装置16から最も離間した位置までスライドさせる(
図4Cも参照)。なお、第2筐体12Bについても、第2リンク機構20Bが第1リンク機構20Aと左右対称に動作するため、ヒンジ装置16から最も離間した位置までスライドする。
【0070】
以上より、180度姿勢から0度姿勢への回動時、筐体12A,12B間は、互いの一縁部12Aa,12Ba同士が干渉することが防止され、筐体12A,12B間の円滑な回動動作が可能となっている。つまり
図4Aから
図4Bに示す回動開始直後に、筐体12A,12B間がそれぞれヒンジ装置16から離間する方向にスライドするため、筐体12A,12Bの一縁部12Aa,12Ba同士が干渉することが回避される。
【0071】
特に、当該携帯用情報機器10では、各リンク機構20A,20Bのピン30aは、180度姿勢時に、軸出力部32の境界部分32cにおける空振部32bよりもカム部32a側に寄った位置にある(
図6A参照)。そして、このピン30aが、180度姿勢から0度姿勢への回動時に筐体12A,12Bをヒンジ装置16から離間する方向にスライドさせる駆動源となる。このため、筐体12A,12B間の回動開始直後、ピン30aは、タイムラグや引っ掛かりを生じることなく、迅速にカム部32aを摺動し、筐体12A,12Bを迅速にスライドさせる。その結果、当該携帯用情報機器10は、
図4Aに示すように筐体12A,12Bの一縁部12Aa,12Baが平面接触する構成でありながらも、回動開始直後の互いの干渉を回避可能となっている。
【0072】
しかもピン30aは、180度姿勢時に、左右の外面30bがカム部32aの溝部の左右の側面32dと対向している。このため、ピン30aは、180度姿勢から0度姿勢への動作開始と同時に円滑にカム部32aを摺動する。その結果、筐体12A,12B間は、回動開始直後の互いの干渉が一層確実に回避可能である。
【0073】
次に、携帯用情報機器10が、
図4Aに示す180度姿勢から
図4Dに示す360度姿勢に変化する場合の動作を説明する。この動作時にも、第1リンク機構20A(第2リンク機構20B)は、第1ヒンジベース16A(第2ヒンジベース16B)と共に第1ヒンジ軸25a(第2ヒンジ軸25b)のの軸回りに旋回する。このためピン30a,31aが軸出力部32,33を摺動する。
【0074】
具体的には、
図6A及び
図6Cに示すように、スライダ30のピン30aは、境界部分32cを出発し、空振部32bを摺動する。一方、スライダ31のピン31aは、境界部分33cを出発し、同時にカム部33aを摺動する。つまり、一方のスライダ30は、
図5Cに示すようにY方向位置は変化しない。他方のスライダ31は、
図5Cに示すようにY方向に沿って図中で右側に移動する。
【0075】
その結果、
図5Cに示すように、第1駆動部34Aでは、連結軸37aが連結軸36aから離間する方向に移動する。このため、他方のリンク部材37は、回転軸42を中心として図中で時計方向に移動する。これにより、係合ピン37bがY方向で第1ヒンジ軸25a側に移動し、出力部材38をY方向で第1ヒンジ軸25a側に押圧して移動させる。同時に、一方のリンク部材36は、出力部材38によって係合ピン36bが押圧される結果、回転軸42を中心として図で反時計方向に回動する。
【0076】
従って、リンク部材36,37は、
図5Cに示すように、
図5Aに示す姿勢よりはX方向に収縮し、
図5Bに示す姿勢よりは伸長した中間姿勢となる。このため、出力部材38は、X方向で
図5Aに示す位置から第1ヒンジ軸25aにある程度近接した位置に移動する。つまり180度姿勢から360度姿勢に変化する場合では、180度姿勢から0度姿勢に変化する場合の動作と比べて、第1レバー部材40Aの回動方向は同一であるが、その回動量が小さい。その結果、第1筐体12Aは、ヒンジ装置16からある程度離間した位置までスライドする(
図4D参照)。同時に、第2筐体12Bは、ヒンジ装置16からからある程度離間した位置までスライドする。
【0077】
以上より、この動作でも、筐体12A,12B間は、180度姿勢から360度姿勢への回動直後に、互いの一縁部12Aa,12Ba同士が干渉することが防止され、筐体12A,12B間の円滑な回動動作が可能となっている。
【0078】
特に、当該携帯用情報機器10では、各リンク機構20A,20Bのピン31aは、180度姿勢時に、軸出力部33の境界部分33cにおける空振部33bよりもカム部33a側に寄った位置にある(
図6A参照)。そして、このピン31aが、180度姿勢から360度姿勢への回動時に筐体12A,12Bをヒンジ装置16から離間する方向にスライドさせる駆動源となる。このため、当該携帯用情報機器10は、180度姿勢から360度姿勢への変化時にも、筐体12A,12B間の回動開始直後、ピン31aは、タイムラグや引っ掛かりを生じることなく、迅速にカム部33aを摺動し、筐体12A,12Bを迅速にスライドさせることができる。
【0079】
しかもピン31aは、180度姿勢時に、左右の外面31bがカム部33aの溝部の左右の側面33dと対向している。このため、ピン31aは、180度姿勢から360度姿勢への動作開始と同時に円滑にカム部33aを摺動する。その結果、筐体12A,12B間は、回動開始直後の互いの干渉が一層確実に回避可能である。
【0080】
なお、
図4A〜
図4Dに示すように、本実施形態の携帯用情報機器10は、180度姿勢から0度姿勢への変化時と、180度姿勢から360度姿勢への変化時とで、筐体12A,12Bの必要スライド距離が異なる。このため、ヒンジ軸25a,25bの上面12Ac,12Bcからの距離と下面12Ab,12Bbからの距離が異なるためである。そこで、本実施形態では、軸出力部32,33のカム部32a,33aのY方向の変位量を異ならせている。従って、例えば筐体12A,12Bのスライド距離が同一でよい場合は、カム部32a,33aのY方向の変位量を同一にすればよい。勿論、仕様によっては、カム部32aのY方向の変位量をカム部33aよりも小さくしてもよい。
【0081】
また、0度姿勢から180度姿勢への回動時の動作、及び360度姿勢から180度姿勢への動作は上記動作と逆であり、筐体12A,12B間が次第に近接することになる。
【0082】
以上のように、当該携帯用情報機器10は、リンク機構20A,20Bを備えることで、筐体12A,12B間が180度姿勢から0度姿勢、360度姿勢へと変化する際、筐体12A,12Bがいずれもヒンジ装置16から離間する方向にスライドする。このため、筐体12A,12Bは、互いの隙間がほとんどなく近接して配置された構成であっても、回動時に互いに干渉することが抑えられる。その結果、当該携帯用情報機器10は、180度姿勢時のディスプレイ14A,14B間の隙間を低減することができる。すなわち、当該携帯用情報機器10は、上記の通り、筐体12A,12B間の一縁部12Aa,12Baの当接端面の特に上面12Ac,12Bc側の上端部を直角な角部で構成しつつも(
図4A参照)、姿勢変化動作直後の両端面間の干渉を抑制できる。
【0083】
ここで、当該携帯用情報機器10は、リンク機構20A(20B)が、それぞれ軸出力部32,33と、駆動部34A(34B)を有する。そして、軸出力部32は、180度姿勢から0度姿勢への変化時に、スライダ30をヒンジ軸25a(25b)の軸方向に移動させる。一方、軸出力部32は、180度姿勢から360度姿勢への変化時には、スライダ30をヒンジ軸25a(25b)の軸方向に移動させない。また、軸出力部33は、180度姿勢から0度姿勢への変化時に、スライダ31をヒンジ軸25a(25b)の軸方向に移動させない。一方、軸出力部33は、180度姿勢から360度姿勢への変化時には、スライダ31をヒンジ軸25a(25b)の軸方向に移動させる。そして、各軸出力部32,33は、駆動部34A(35A)を介して筐体12A(12B)をスライドさせる。このように、当該携帯用情報機器10は、180度姿勢から0度姿勢への変化時と、180度姿勢から360度姿勢への変化時とで、駆動源となる軸出力部32,33を使い分けている。このため、各変化時には、専用の軸出力部32,33が駆動力を発生するため、各動作開始直後に筐体12A(12B)を円滑にスライドさせることが可能となっている。
【0084】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0085】
上記では、一対の筐体12A,12Bと一対のディスプレイ14A,14Bを備えた構成を例示したが、それぞれディスプレイが搭載された3体以上の筐体を備えた構成としてもよい。例えば3体構造の筐体の場合、中央の筐体の両側部にそれぞれ筐体がヒンジ装置16を用いて連結された観音開き構造等とすればよい。
【0086】
上記では、左右両方の筐体12A,12Bを同時にスライドさせる構成を例示した。しかしながら携帯用情報機器10は、筐体12A,12Bのいずれか一方、例えば第1筐体12Aのみがスライドし、第2筐体12Bはスライドしない構成としてもよい。この場合、第2筐体12B側の第2リンク機構20Bは省略し、第2筐体12Bを第2ヒンジベース16B等と一体に固定すればよい。
【0087】
上記では、筐体12A,12Bは、ヒンジベース16A,16Bに対して相対的にスライドする構成を例示した。しかしながら、筐体12A,12Bは、例えばヒンジベース16A,16Bに固定されるベース筐体と、このベース部に対して相対的にスライド可能に支持されたスライド筐体とを備えた構成等としてもよい。この場合、スライド筐体は、ディスプレイを支持した上面部分となる。
【0088】
上記では、軸出力部32,33が溝部であり、この溝部の一部にあるカム部32a,33aをピン30a,31aが摺動する構成を例示した。しかしながら、カム部32a,33a(空振部32b,33b)及びピン30a,31aは、例えばヒンジ軸25a(25b)の外周面に外嵌され、互いに摺動可能に当接した筒体の端面等で構成されてもよい。
【解決手段】携帯用情報機器は、第1筐体と、前記第1筐体と隣接する第2筐体と、前記第1筐体の上面に設けられた第1ディスプレイと、前記第2筐体の上面に設けられた第2ディスプレイと、ヒンジ装置と、前記ヒンジ装置による前記第1筐体と前記第2筐体との間の回動動作と連動して動作する少なくとも1つのリンク機構と、を備える。前記第1筐体及び前記第2筐体の少なくとも一方は、前記ヒンジ装置に対して前記第1筐体と前記第2筐体の並び方向に沿って相対的にスライド可能に設けられている。前記リンク機構は、第1スライダと、第1軸出力部と、第2スライダと、第2軸出力部と、駆動部と、を有する。