(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記p側コンタクト電極上に設けられるp側パッド開口を有し、前記p側パッド開口とは異なる箇所において前記p側コンタクト電極を被覆し、酸化物の誘電体材料を含む保護層と、
前記保護層上に設けられ、前記p側パッド開口において前記p側コンタクト電極と接続するp側パッド電極と、をさらに備えることを特徴する請求項3に記載の半導体発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0018】
本実施の形態は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成される半導体発光素子であり、いわゆるDUV−LED(Deep UltraViolet-Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料が用いられる。本実施の形態では、特に、中心波長λが約240nm〜320nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0019】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、少なくとも窒化アルミニウム(AlN)および窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In
1−x−yAl
xGa
yN(0<x+y≦1、0<x<1、0<y<1)の組成で表すことができ、AlGaNまたはInAlGaNを含む。本明細書の「AlGaN系半導体材料」は、例えば、AlNおよびGaNのそれぞれのモル分率が1%以上であり、好ましくは5%以上、10%以上または20%以上である。
【0020】
また、AlNを含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、GaNやInGaNが含まれる。同様に、GaNを含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、AlNやInAlNが含まれる。
【0021】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、基板20と、ベース層22と、n型半導体層24と、活性層26と、p型半導体層28と、p側コンタクト電極30と、n側コンタクト電極32と、保護層34と、p側パッド電極36pと、n側パッド電極36nとを備える。
【0022】
図1において、矢印Aで示される方向を「上下方向」または「厚み方向」ということがある。また、基板20から見て、基板20から離れる方向を上側、基板20に向かう方向を下側ということがある。
【0023】
基板20は、第1主面20aと、第1主面20aとは反対側の第2主面20bとを有する。第1主面20aは、ベース層22からp型半導体層28までの各層を成長させるための結晶成長面である。基板20は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する材料から構成され、例えば、サファイア(Al
2O
3)から構成される。第1主面20aには、深さおよびピッチがサブミクロン(1μm以下)である微細な凹凸パターン(不図示)が形成されてもよい。このような基板20は、パターン化サファイア基板(PSS;Patterned Sapphire Substrate)とも呼ばれる。第2主面20bは、活性層26が発する深紫外光を外部に取り出すための光取り出し面である。基板20は、AlNから構成されてもよいし、AlGaNから構成されてもよい。基板20の第1主面20aは、パターン化されていない平坦面で構成されてもよい。
【0024】
ベース層22は、基板20の第1主面20aの上に設けられる。ベース層22は、n型半導体層24を形成するための下地層(テンプレート層)である。ベース層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、具体的には高温成長させたAlN(HT−AlN;High Temperature-AlN)層である。ベース層22は、AlN層上に形成されるアンドープのAlGaN層を含んでもよい。基板20がAlN基板またはAlGaN基板である場合、ベース層22は、アンドープのAlGaN層のみで構成されてもよい。つまり、ベース層22は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含む。
【0025】
n型半導体層24は、ベース層22の上に設けられる。n型半導体層24は、n型のAlGaN系半導体材料層であり、例えば、n型の不純物としてSiがドープされるAlGaN層である。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが4.3eV以上となるように形成される。n型半導体層24は、AlNのモル分率が80%以下、つまり、バンドギャップが5.5eV以下となるように形成されることが好ましく、AlNのモル分率が70%以下(つまり、バンドギャップが5.2eV以下)となるように形成されることがより望ましい。n型半導体層24は、1μm〜3μm程度の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0026】
n型半導体層24は、不純物であるSiの濃度が1×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下となるように形成される。n型半導体層24は、Si濃度が5×10
18/cm
3以上3×10
19/cm
3以下となるように形成されることが好ましく、7×10
18/cm
3以上2×10
19/cm
3以下となるように形成されることが好ましい。ある実施例において、n型半導体層24のSi濃度は、1×10
19/cm
3前後であり、8×10
18/cm
3以上1.5×10
19/cm
3以下の範囲である。
【0027】
n型半導体層24は、第1上面24aと、第2上面24bとを有する。第1上面24aは、活性層26が形成される部分であり、第2上面24bは、活性層26が形成されない部分である。第1上面24aおよび第2上面24bは、互いに高さが異なり、基板20から第1上面24aまでの高さは、基板20から第2上面24bまでの高さよりも大きい。ここで、第1上面24aが位置する領域を「第1領域W1」と定義し、第2上面24bが位置する領域を「第2領域W2」と定義する。第2領域W2は、第1領域W1に隣接している。
【0028】
活性層26は、n型半導体層24の第1上面24aの上に設けられる。活性層26は、AlGaN系半導体材料で構成され、n型半導体層24とp型半導体層28の間に挟まれてダブルへテロ構造を形成する。活性層26は、波長355nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長320nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。
【0029】
活性層26は、例えば、単層または多層の量子井戸構造を有し、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成される障壁層と、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成される井戸層の積層体で構成される。活性層26は、例えば、n型半導体層24と直接接触する第1障壁層と、第1障壁層の上に設けられる第1井戸層とを含む。第1障壁層と第1井戸層の間に、井戸層および障壁層の一以上のペアが追加的に設けられてもよい。障壁層および井戸層は、1nm〜20nm程度の厚さを有し、例えば、2nm〜10nm程度の厚さを有する。
【0030】
活性層26は、p型半導体層28と直接接触する電子ブロック層をさらに含んでもよい。電子ブロック層は、アンドープのAlGaN系半導体材料層であり、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように形成される。電子ブロック層は、AlNのモル分率が80%以上となるように形成されてもよく、実質的にGaNを含まないAlN系半導体材料で形成されてもよい。電子ブロック層は、1nm〜10nm程度の厚さを有し、例えば、2nm〜5nm程度の厚さを有する。
【0031】
p型半導体層28は、活性層26の上に形成される。p型半導体層28は、p型のAlGaN系半導体材料層またはp型のGaN系半導体材料層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層またはGaN層である。p型半導体層28は、p型第1クラッド層28aと、p型第2クラッド層28bと、p型コンタクト層28cとを有する。p型第1クラッド層28a、p型第2クラッド層28bおよびp型コンタクト層28cは、それぞれAlN比率が異なるように構成される。
【0032】
p型第1クラッド層28aは、相対的に高AlN比率のp型AlGaN層であり、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択される。p型第1クラッド層28aは、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上または60%以上となるように形成される。p型第1クラッド層28aのAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率と同程度、または、n型半導体層24のAlN比率よりも大きい。p型第1クラッド層28aのAlN比率は、70%以上または80%以上であってもよい。p型第1クラッド層28aは、10nm〜100nm程度の厚さを有し、例えば、15nm〜70nm程度の厚さを有する。
【0033】
p型第2クラッド層28bは、AlN比率が中程度のp型AlGaN層であり、p型第1クラッド層28aよりもAlN比率が低く、p型コンタクト層28cよりもAlN比率が高い。p型第2クラッド層28bは、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。p型第2クラッド層28bのAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率の±10%程度となるように形成される。第2クラッド層31は、5nm〜250nm程度の厚さを有し、例えば、10nm〜150nm程度の厚さを有する。なお、p型第2クラッド層28bが設けられなくてもよい。
【0034】
p型コンタクト層28cは、相対的に低AlN比率のp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層28cは、p側コンタクト電極30と良好なオーミック接触を得るためにAlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。つまり、p型コンタクト層28cは、実質的にAlNを含まないp型GaN系半導体材料で形成されうる。その結果、p型コンタクト層28cは、活性層26が発する深紫外光を吸収しうる。p型コンタクト層28cは、活性層26が発する深紫外光の吸収量を小さくするために薄く形成されることが好ましい。第2クラッド層31は、5nm〜30nm程度の厚さを有し、例えば、10nm〜20nm程度の厚さを有する。
【0035】
p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上に設けられる。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28(具体的にはp型コンタクト層28c)とオーミック接触可能であり、活性層26が発する深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。p側コンタクト電極30は、ロジウム(Rh)層30aと、アルミニウム(Al)層30bと、チタン(Ti)層30cと、窒化チタン(TiN)層30dとを含む。
【0036】
Rh層30aは、p型半導体層28の上面に直接接触するように設けられる。Rh層30aは、p側コンタクト電極30の紫外光反射率を高めるために厚みを小さくすることが好ましい。Rh層30aの厚さは、10nm以下とすることが好ましく、5nm以下とすることがより好ましい。Al層30bは、Rh層30aの上面に直接接触するように設けられる。Al層30bは、p側コンタクト電極30の紫外光反射率を高めるために厚みを大きくすることが好ましい。Al層30bの厚さは、20nm以上とすることが好ましく、100nm以上とすることがより好ましい。
【0037】
Ti層30cは、Al層30bの上面に直接接触するように設けられる。Ti層30cは、Al層30bの酸化を防ぐために設けられる。Ti層30cの厚さは、10nm以上とすることが好ましく、25nm以上とすることが好ましい。Ti層30cの厚さを10nm以上とすることで、半導体発光素子10の使用に伴うAl層30bの酸化を好適に防止し、p側コンタクト電極30の反射率および平坦性の低下を防止できる。Ti層30cの厚さは、例えば、10nm〜50nm程度である。
【0038】
TiN層30dは、Ti層30cの上に設けられる。TiN層30dは、導電性を有するTiNで構成される。TiN層30dの導電率は、1×10
−5Ω・m以下であり、例えば4×10
−7Ω・m程度である。TiN層30dの厚さは、5nm以上であり、例えば10nm〜100nm程度である。TiN層30dを設けることで、p側コンタクト電極30と保護層34の接着性を高めることができる。なお、TiN層30dは、必須ではなく、TiN層30dが設けられなくてもよい。
【0039】
p側コンタクト電極30は、Rh層30aの厚さを10nm以下とし、Al層30bの厚さを20nm以上とすることで、1×10
−2Ω・cm
2以下(例えば1×10
−4Ω・cm
2以下)のコンタクト抵抗と、波長280nmの紫外光に対して70%以上(例えば71%〜81%程度)の反射率を得ることができる。なお、本明細書において、p型半導体層28側から入射する波長280nmの紫外光に対するp側コンタクト電極30の反射率を「第1反射率R1」ともいう。
【0040】
p側コンタクト電極30は、第1領域W1の内側に形成される。ここで、p側コンタクト電極30が形成される領域を「第3領域W3」と定義する。p側コンタクト電極30は、第3領域W3の全体にわたってp型半導体層28とオーミック接触し、第3領域W3の全体にわたって深紫外光に対して高反射率となるように構成される。p側コンタクト電極30を構成する各層30a〜30dは、第3領域W3の全体にわたって厚さが均一となるように構成されることが好ましい。これにより、p側コンタクト電極30は、第3領域W3の全体において、活性層26からの紫外光を反射させて基板20の第2主面20bに向かわせる高効率の反射電極として機能するとともに、低抵抗のコンタクト電極として機能できる。なお、p側コンタクト電極30には、紫外光反射率の低下の要因となりうる金(Au)が含まれないことが好ましい。
【0041】
n側コンタクト電極32は、n型半導体層24の第2上面24bの上に設けられる。n側コンタクト電極32は、活性層26が設けられる第1領域W1とは異なる第2領域W2に設けられる。n側コンタクト電極32は、n型半導体層24とオーミック接触が可能であり、かつ、活性層26が発する深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。n側コンタクト電極32は、第1Ti層32aと、Al層32bと、第2Ti層32cと、TiN層32dとを有する。
【0042】
第1Ti層32aは、n型半導体層24の第2上面24bに直接接触するように設けられる。第1Ti層32aの厚さは1nm〜10nm程度であり、5nm以下であることが好ましく、1nm〜2nmであることがより好ましい。第1Ti層32aの厚さを小さくすることで、n型半導体層24から見たときのn側コンタクト電極32の紫外光反射率を高めることができる。Al層32bは、第1Ti層32aの上面に直接接触するように設けられる。Al層32bは、n側コンタクト電極32の紫外光反射率を高めるために厚みを大きくすることが好ましい。Al層32bの厚さは、100nm以上とすることが好ましく、200nm以上とすることがより好ましい。Al層32bの厚さは、例えば200nm〜600nm程度である。
【0043】
第2Ti層32cは、Al層32bの上面に直接接触するように設けられる。第2Ti層32cは、Al層32bの酸化を防ぐために設けられる。第2Ti層32cの厚さは、10nm以上とすることが好ましく、25nm以上とすることが好ましい。Ti層30cの厚さは、例えば、25nm〜50nm程度である。
【0044】
TiN層32dは、第2Ti層32cの上に設けられる。TiN層32dは、導電性を有するTiNで構成される。TiN層32dの導電率は、1×10
−5Ω・m以下であり、例えば4×10
−7Ω・m程度である。TiN層32dの厚さは、5nm以上であり、例えば10nm〜100nm程度である。TiN層32dを設けることで、n側コンタクト電極32と保護層34の接着性を高めることができる。なお、TiN層32dは、必須ではなく、TiN層32dが設けられなくてもよい。
【0045】
n側コンタクト電極32は、第1Ti層32aの厚さを10nm以下とし、Al層32bの厚さを100nm以上とすることで、1×10
−2Ω・cm
2以下(例えば1×10
−3Ω・cm
2以下)のコンタクト抵抗と、波長280nmの紫外光に対して80%以上(例えば85%〜90%程度)の反射率を得ることができる。なお、本明細書において、n型半導体層24側から入射する波長280nmの紫外光に対するn側コンタクト電極32の反射率を「第2反射率R2」ともいう。
【0046】
n側コンタクト電極32は、第2領域W2の内側に形成される。ここで、n側コンタクト電極32が形成される領域を「第4領域W4」と定義する。n側コンタクト電極32を構成する各層32a〜32dは、第4領域W4の全体にわたって厚さが均一となるように構成されることが好ましい。これにより、n側コンタクト電極32は、第4領域W4の全体において、活性層26からの紫外光を反射させて基板20の第2主面20bに向かわせる高効率の反射電極として機能するとともに、低抵抗のコンタクト電極として機能できる。なお、n側コンタクト電極32には、紫外光反射率の低下の要因となりうる金(Au)が含まれないことが好ましい。
【0047】
保護層34は、活性層26およびp型半導体層28の側面(メサ面40ともいう)を被覆するように設けられる。保護層34は、p側コンタクト電極30の上のp側パッド開口38pとは異なる箇所においてp側コンタクト電極30の上面および側面を被覆する。保護層34は、n側コンタクト電極32の上のn側パッド開口38nとは異なる箇所においてn側コンタクト電極32の上面および側面を被覆する。
【0048】
保護層34は、酸化シリコン(SiO
2)、酸窒化シリコン(SiON)または酸化アルミニウム(Al
2O
3)などの酸化物の誘電体材料で構成される。保護層34は、窒化シリコン(SiN)や窒化アルミニウム(AlN)などの窒化物の誘電体材料で構成されてもよいし、酸化物層と酸化物層の積層構造で構成されてもよい。保護層34は、p側コンタクト電極30またはn側コンタクト電極32と直接接触する部分が酸化物層で構成されてもよく、少なくとも酸化物の誘電体材料を含んでもよい。保護層34の厚さは、例えば100nm以上であり、例えば500nm〜2000nm程度である。保護層34の厚みを大きくすることで、n型半導体層24の上に形成される各層の表面を好適に被覆して保護できる。保護層34は、活性層26やp型半導体層28よりも低屈折率の材料で構成される。保護層34は、活性層26やp型半導体層28と直接接触する部分が酸化物層で構成されてもよい。SiO
2やAl
2O
3などの酸化物は、SiNやAlNなどの窒化物よりも低い屈折率を有する。保護層34が酸化物層を含むことで、活性層26またはp型半導体層28に対する保護層34の屈折率差を大きくし、活性層26またはp型半導体層28と保護層34の界面において紫外光を効率的に全反射させることができる。
【0049】
活性層26およびp型半導体層28の側面(メサ面40)は、
図1において基板20に対して垂直となるように示されているが、メサ面40は、基板20に対して所定の傾斜角で傾斜していてもよい。メサ面40の傾斜角は、15度以上50度以下であり、例えば20度以上40度以下である。メサ面40の傾斜角θは、活性層26の屈折率nを用いて、θ<{π/2+sin
-1(1/n)}/2となることが好ましい。メサ面40の傾斜角θをこのような値に設定することで、基板20の第2主面20bにて紫外光が全反射されることを防止し、基板20の外部に紫外光が出射されなくなることを防止できる。
【0050】
p側パッド電極36pおよびn側パッド電極36nは、半導体発光素子10をパッケージ基板などに実装する際にボンディング接合される部分である。p側パッド電極36pは、保護層34の上に設けられ、p側パッド開口38pにおいてp側コンタクト電極30と電気的に接続する。n側パッド電極36nは、保護層34の上に設けられ、n側パッド開口38nにおいてn側コンタクト電極32と電気的に接続される。
【0051】
p側パッド電極36pおよびn側パッド電極36nは、耐腐食性の観点からAuを含むように構成され、例えば、Ni/Au、Ti/AuまたはTi/Pt/Auの積層構造で構成される。p側パッド電極36pおよびn側パッド電極36nが金錫(AuSn)で接合される場合、金属接合材となるAuSn層をp側パッド電極36pおよびn側パッド電極36nが含んでもよい。
【0052】
図2は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す上面図である。上述の
図1は、
図2のB−B線断面を示す。半導体発光素子10の外形は、基板20の外周により規定され、長方形または正方形である。
図2の平面視において半導体発光素子10が占める領域Wの面積S0(全体面積ともいう)は、基板20の第1主面20aまたは第2主面20bの面積と同じである。第1領域W1は、活性層26およびp型半導体層28が形成される領域である。第1領域W1の面積は、全体面積S0の55%〜65%程度である。第2領域W2は、活性層26およびp型半導体層28が形成されていない領域であり、第1領域W1を除く領域である。第2領域W2の面積は、全体面積S0の35%〜45%程度である。
【0053】
第3領域W3は、p側コンタクト電極30が形成される領域であり、第1領域W1よりもわずかに小さい領域である。p側コンタクト電極30が占める第3領域W3の面積(第1面積S1ともいう)は、全体面積S0の45%〜50%程度であり、第1領域W1(つまり、p型半導体層28の上面)の面積の80%以上または90%以上である。n側コンタクト電極32が占める第4領域W4は、n側コンタクト電極32が形成される領域であり、第2領域W2よりも小さい領域である。第4領域W4の面積(第2面積S2ともいう)は、全体面積S0の25%〜30%程度である。したがって、p側コンタクト電極30が占める第1面積S1(45%〜50%)は、n側コンタクト電極32が占める第2面積S2(25%〜30%)よりも大きい(つまり、S1>S2)。例えば、第1面積S1は、第2面積S2の1.5倍以上となるよう構成される。また、p側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32が占める面積、つまり、第1面積S1と第2面積S2の和(S1+S2)は、全体面積S0の70%〜80%となる。
【0054】
図2に示す例において、p側コンタクト電極30が形成される第3領域W3およびn側コンタクト電極32が形成される第4領域W4は、四隅を曲線で面取りした長方形である。なお、第3領域W3および第4領域W4の形状は、四隅を曲線で面取りした長方形に限られず、任意の形状を有してもよい。例えば、第3領域W3および第4領域W4が櫛歯状に形成され、それぞれの櫛歯が互いに間挿されるように構成されてもよい。
【0055】
本実施の形態によれば、半導体発光素子10の全体面積S0に対し、p側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32の反射電極としての反射効率を60%以上にすることができる。本明細書において、素子全体の反射効率Rtは、Rt=(S1/S0)×R1+(S2/S0)×R2と定義することができる。すでに上述しているが、基板20の主面の全体面積をS0とし、p型半導体層28上のp側コンタクト電極30の形成面積(第1面積)をS1とし、n型半導体層24上のn側コンタクト電極32の形成面積(第2面積)をS2とし、p型半導体層28側から入射する波長280nmの紫外光に対するp側コンタクト電極30の反射率(第1反射率)をR1とし、n型半導体層24側から入射する波長280nmの紫外光に対するn側コンタクト電極32の反射率(第2反射率)をR2としている。
【0056】
ある実施例によれば、p側コンタクト電極30が厚さ5nm/100nm/25nm/25nmのRh/Al/Ti/TiNで構成され、n側コンタクト電極32が厚さ2nm/600nm/25nm/25nmのTi/Al/Ti/TiNで構成される。本実施例において、第1反射率R1は約81%であり、第2反射率R2は約89%である。したがって、第1反射率R1および第2反射率R2はいずれも80%以上であり、第1反射率R1は、第2反射率R2以下である(つまり、R1≦R2)。本実施例において、第1面積S1を46%以上とし、第2面積S2を26%以上とすることで、素子全体の反射効率Rtは60%以上となる。例えば、第1面積S1を47%とし、第2面積S2を27%とした場合には、素子全体の反射効率Rtは62%となる。
【0057】
図3は、p側コンタクト電極30の反射率を示すグラフである。
図3は、Rh層30aの厚みを(a)5nm、(b)10nm、(c)20nm、または、(d)100nmとした場合のp側コンタクト電極30の波長280nmの紫外光に対する反射率を示す。(a)〜(c)は、100nm厚のAl層30bを積層した場合の反射率を示し、(d)はAl層30bを積層していないRh層単体の反射率を示す。
図3では、p側コンタクト電極30に対するアニール処理前の反射率と、アニール処理後の反射率とを示している。
図3の例では、窒素雰囲気中で600℃のアニール温度で1分間のアニール処理をp側コンタクト電極30に施している。
【0058】
図3に示されるように、アニール処理前の条件では、Rh層30aの厚さが小さいほど紫外光反射率が高い傾向にあるが、(a)〜(d)のいずれの条件であっても、反射率は70%未満である。アニール処理前では、Rh層単体の反射率66%とそれほど変わらない。アニール処理後の条件では、Rh層30aの厚さによって反射率が大きく変化する。特に、Rh層30aの厚さが10nm以下である(a)および(b)の条件では、反射率が70%以上となり、(a)の条件で81%、(b)の条件で73%の反射率が得られる。(a)および(b)の反射率は、(d)のRh層単体の反射率66%に比べて5%以上高い。これは、アニール処理によってRh層30aとAl層30bの材料が混ざり合うことでRh層単体に比べて紫外光反射率が向上したことが原因と推定される。一方、Rh層30aの厚さが20nmである(c)の条件では、アニール処理によって反射率が低下し、50%未満となっている。これは、アニール処理によってRh層30aとAl層30bの界面が乱れて高さの大きい凹凸が形成されることが原因と推定される。
【0059】
図3から、Rh層30aの厚さを10nm以下としてp側コンタクト電極30にアニール処理を施すことによって、p側コンタクト電極30の波長280nmの紫外光に対する反射率を70%以上にできることが分かる。特に、Rh層30aの厚さを5nm以下としてp側コンタクト電極30にアニール処理を施すことによって、p側コンタクト電極30の波長280nmの紫外光に対する反射率を80%以上にできる。
【0060】
図4は、反射電極の機能を概略的に示す図であり、基板20の第2主面20bに向けて出射される紫外光の光線L1,L2,L3を例示している。第1光線L1は、p側コンタクト電極30にて反射されてから基板20の第2主面20bに向かう場合を示している。p側コンタクト電極30の第1面積S1および第1反射率R1を大きくすることで、第1光線L1のようにp側コンタクト電極30にて反射されてから外部に出射される紫外光の強度を高めることができる。第2光線L2は、n側コンタクト電極32にて反射されてから基板20の第2主面20bに向かう場合を示している。n側コンタクト電極32の第2面積S2および第2反射率R2を大きくすることで、第2光線L2のようにn側コンタクト電極32にて反射されてから外部に出射される紫外光の強度を高めることができる。第3光線L3は、活性層26またはp型半導体層28のメサ面40で反射されてから基板20の第2主面20bに向かう場合を示している。低屈折率の保護層34を設けることでメサ面40で全反射される紫外光の割合を高めることができ、第3光線L3のようにメサ面40で反射されてから外部に出射される紫外光の強度を高めることができる。
【0061】
図示する光線L1〜L3は、p側コンタクト電極30、n側コンタクト電極32またはメサ面40にて1回だけ反射される場合を示しているが、半導体発光素子10の内部で複数回の反射を繰り返してから外部に出射される紫外光も存在する。また、p側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32の双方で反射してから外部に出射される紫外光も存在する。本実施の形態によれば、素子全体の反射効率Rtを定義し、反射効率Rtが60%以上となるように半導体発光素子10を構成することで、基板20の第2主面20bから出射される紫外光の強度を好適に高めることができる。このようにして、本実施の形態によれば、半導体発光素子10の光取り出し効率を高めることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、n側コンタクト電極32が占める第2面積S2よりもp側コンタクト電極30が占める第1面積S1を大きくすることで、活性層26が設けられる第1領域W1の面積を大きくできる。活性層26が占める第1領域W1の面積割合を大きくすることで、基板20の単位面積あたりの発光効率を高めることができ、半導体発光素子10の光取り出し効率を高めることができる。
【0063】
本実施の形態では、p型コンタクト層28cの厚みを小さくすることで、p型コンタクト層28cによる紫外光の吸収量を低減できる。つまり、第1光線L1で示されるように、p型コンタクト層28cを往復で透過してp側コンタクト電極30にて反射される紫外光の減衰量を小さくできる。これにより、半導体発光素子10の光取り出し効率を高めることができる。
【0064】
つづいて、半導体発光素子10の製造方法について説明する。
図5〜
図10は、半導体発光素子10の製造工程を概略的に示す図である。
図5において、まず、基板20の第1主面20aの上にベース層22、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28(p型第1クラッド層28a、p型第2クラッド層28bおよびp型コンタクト層28c)を順に形成する。
【0065】
基板20は、例えばパターン化サファイア基板である。ベース層22は、例えばHT−AlN層と、アンドープのAlGaN層とを含む。n型半導体層24、活性層26およびp型半導体層28は、AlGaN系半導体材料、AlN系半導体材料またはGaN系半導体材料から構成される半導体層であり、有機金属化学気相成長(MOVPE;Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法や、分子線エピタキシ(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0066】
次に、p型半導体層28上の第1領域W1にマスク50を形成する。マスク50は、活性層26およびp型半導体層28の側面(メサ面40)を形成するためのエッチングマスクである。マスク50は、公知のリソグラフィ技術を用いて形成できる。マスク50は、マスク50の側面が傾斜するように形成されてもよい。マスク50の側面の傾斜角は、後続するエッチング工程において所定の傾斜角θで傾斜するメサ面40が形成されるように設定される。
【0067】
次に、
図6に示すように、マスク50の上からp型半導体層28および活性層26をエッチングし、マスク50と重ならない第2領域W2にあるn型半導体層24を露出させる。このエッチング工程により、メサ面40が形成され、n型半導体層24の第2上面24bが形成される。
図6のエッチング工程では、塩素系のエッチングガスを用いた反応性イオンエッチングを用いることができ、誘導結合型プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)エッチングを用いることができる。例えば、エッチングガスとして塩素(Cl
2)、三塩化ホウ素(BCl
3)、四塩化ケイ素(SiCl
4)などの塩素(Cl)を含む反応性ガスを用いることができる。なお、反応性ガスと不活性ガスを組み合わせてドライエッチングしてもよく、塩素系ガスにアルゴン(Ar)などの希ガスを混合させてもよい。メサ面40および第2上面24bの形成後、マスク50が除去される。
【0068】
次に、
図7に示すように、第3領域W3に開口42を有するマスク52を形成し、p型半導体層28の上の第3領域W3にp側コンタクト電極30を形成する。マスク52は、例えば、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。p側コンタクト電極30は、Rh層30a、Al層30b、Ti層30cおよびTiN層30dを順に積層することで形成できる。p側コンタクト電極30を構成する各層30a〜30dは、スパッタリング法で形成できる。p側コンタクト電極30は、メサ面40の形成直後にp型半導体層28の上に形成することが好ましい。言い換えれば、p側コンタクト電極30は、n側コンタクト電極32の形成前に形成されることが好ましい。これにより、p型半導体層28とp側コンタクト電極30の間で良好なオーミック接触を実現できる。
【0069】
つづいて、マスク52を除去した後に、p側コンタクト電極30にアニール処理を施す。p側コンタクト電極30のアニール処理は、Alの融点(約660℃)未満の温度で実行され、例えば500℃以上650℃以下、好ましくは550℃以上625℃以下の温度で実行される。p側コンタクト電極30にアニール処理をすることで、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗を1×10
−2Ω・cm
2以下(例えば1×10
−4Ω・cm
2以下)とし、波長280nmの紫外光に対する反射率を70%以上(例えば71%〜81%程度)とすることができる。
【0070】
次に、
図8に示すように、第4領域W4に開口44を有するマスク54を形成し、n型半導体層24の第2上面24bの上の第4領域W4にn側コンタクト電極32を形成する。マスク54は、例えば、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。n側コンタクト電極32は、第1Ti層32a、Al層32b、第2Ti層32cおよびTiN層32dを順に積層することで形成できる。n側コンタクト電極32を構成する各層32a〜32dは、スパッタリング法で形成できる。
【0071】
つづいて、マスク54を除去した後に、n側コンタクト電極32にアニール処理を施す。n側コンタクト電極32のアニール処理は、Alの融点(約660℃)未満の温度で実行され、例えば500℃以上650℃以下、好ましくは550℃以上625℃以下の温度で実行される。アニール処理をすることで、n側コンタクト電極32のコンタクト抵抗を1×10
−2Ω・cm
2以下にできる。また、アニール温度を560℃以上650℃以下とすることで、アニール処理後のn側コンタクト電極32の平坦性を高め、紫外光反射率を80%以上(例えば90%程度)にできる。
【0072】
次に、
図9に示すように、保護層34を形成する。保護層34は、素子構造の上面の全体を被覆するように形成される。保護層34は、p側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32のそれぞれの上面および側面を被覆するとともに、活性層26およびp型半導体層28のメサ面40を含む露出面を被覆するように設けられる。保護層34は、n型半導体層24の第2上面24bの少なくとも一部を被覆するように設けられる。
【0073】
次に、
図10に示すように、開口46p,46nを有するマスク56を形成し、マスク56が設けられていない箇所の保護層34を除去する。マスク56は、例えば、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。マスク56の開口46p,46nは、それぞれp側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32の上に位置する。保護層34は、六フッ化エタン(C
2F
6)などのCF系のエッチングガスを用いてドライエッチングできる。このエッチング工程により、p側コンタクト電極30が露出するp側パッド開口38pと、n側コンタクト電極32が露出するn側パッド開口38nとが形成される。
【0074】
図10のドライエッチング工程にて、p側コンタクト電極30のTiN層30dおよびn側コンタクト電極32のTiN層32dがエッチングストップ層として機能する。TiNは、保護層34を除去するためのフッ素系のエッチングガスとの反応性が低く、エッチングによる副生成物が発生しにくい。そのため、保護層34のエッチング工程において、p側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32へのダメージを防止できる。その結果、p側パッド開口38pにおけるp側コンタクト電極30の露出面およびn側パッド開口38nにおけるn側コンタクト電極32の露出面を高品質に維持できる。
【0075】
つづいて、p側パッド開口38pを塞ぐようにp側パッド電極36pを形成し、n側パッド開口38nを塞ぐようにn側パッド電極36nを形成する。p側パッド電極36pおよびn側パッド電極36nは、例えば、Ni層またはTi層を堆積し、その上にAu層を堆積することで形成できる。Au層の上にさらに別の金属層が設けられてもよく、例えばSn層、AuSn層、または、Sn/Auの積層構造を形成してもよい。p側パッド電極36pおよびn側パッド電極36nは、マスク56を利用して形成されてもよいし、マスク56とは別のレジストマスクを利用して形成されてもよい。p側パッド電極36pおよびn側パッド電極36nの形成後、マスク56または別のレジストマスクが除去される。
【0076】
以上の工程により、
図1に示す半導体発光素子10ができあがる。本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32のそれぞれについて、好適なコンタクト抵抗および紫外光反射率を両立することができ、光取り出し効率を向上させることができる。本実施の形態によれば、厚さが10nm以下のRh層30aと厚さが20nm以上のAl層30bを組み合わせたp側コンタクト電極30を用いることで、p側コンタクト電極30をRh層のみとする場合に比べて反射率を好適に高めることができる。特に、Rh層30aの厚さを5nm以下とすることで、p側コンタクト電極30の反射率を80%以上にすることができ、Rh層単体でp側コンタクト電極30を構成する場合に比べて、光取り出し効率を約8%向上させることができる。
【0077】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【解決手段】半導体発光素子10は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層24と、n型半導体層24上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層26と、活性層26上に設けられるp型半導体層28と、p型半導体層28の上面と接触する厚さが10nm以下のRh層30aと、Rh層30aの上面と接触する厚さが20nm以上のAl層30bとを含むp側コンタクト電極30と、を備える。