(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837599
(24)【登録日】2021年2月12日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】金属加工におけるロールを冷却するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B21B 27/06 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
B21B27/06
【請求項の数】55
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-506152(P2020-506152)
(86)(22)【出願日】2019年6月13日
(65)【公表番号】特表2020-526396(P2020-526396A)
(43)【公表日】2020年8月31日
(86)【国際出願番号】US2019037041
(87)【国際公開番号】WO2019241551
(87)【国際公開日】20191219
【審査請求日】2020年2月4日
(31)【優先権主張番号】62/684,443
(32)【優先日】2018年6月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エドワード・ガンツァー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・エフ・スタニストリート
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ウィリアム・マロリー
(72)【発明者】
【氏名】レナート・ルフィノ・ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・チャールズ・リッグズ
(72)【発明者】
【氏名】フランク・スー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・スキングリー・ライト
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−005827(JP,A)
【文献】
特開平07−239040(JP,A)
【文献】
特開2008−185203(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00313516(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/00−35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に適用された粘性材料を封じ込めるためのシステムであって、
ハウジングと、
粘性材料送達デバイスと、
第1の位置と第2の位置との間で移動可能な複数のシールであって、前記複数のシールの各シールの接触縁は、前記第1の位置においては前記表面に接触し、前記第2の位置においては前記表面からあるギャップだけ離間し、前記表面は、前記複数のシールのうちの少なくとも1つのシールに向かって前記粘性材料を運搬する、複数のシールと、
複数のガス送達デバイスであって、前記複数のガス送達デバイスの各々は、前記複数のシールのうちの少なくとも1つのシールの前記接触縁に向かってガスを供給して、前記少なくとも1つのシールを前記第1の位置から前記第2の位置に移動させるように構成され、前記少なくとも1つのシールの前記接触縁は前記表面から前記ギャップだけ離間している、複数のガス送達デバイスと、を備え、
前記複数のシールの各々が前記第2の位置にあるとき、前記複数のガス送達デバイスによって供給される前記ガスは、前記ハウジングと前記表面との間の非接触シールとして作用することにより、前記粘性材料を前記ハウジング内に維持するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記粘性材料は、液体、ゲル、ゾルゲル、ガラス、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記粘性材料は、クリーナー、潤滑剤、処理剤、前処理剤、美的コーティング剤、冷却剤、またはこれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記表面は、移動表面を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記移動表面は、圧延ロールまたはロール加工エンジニアリング材料を含み、前記ロール加工エンジニアリング材料は、圧延ロールによって加工された材料である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ロール加工エンジニアリング材料は、金属ストリップ、ポリマー、複合材料、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ハウジングは、頂部、底部、第1の側部、前記第1の側部とは反対側に配置された第2の側部、背部、および前記背部とは反対側の正面部を備え、前記正面部は前記表面に向けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記頂部、前記底部、前記第1の側部、前記第2の側部、および前記背部は、中実パネルである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記背部は、通気口をさらに備える、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記正面部は、開放されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記表面がロール加工エンジニアリング材料であって、前記正面部は、実質的に平坦な表面に少なくとも部分的に適合するような形状をなしている、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記正面部の形状は、前記頂部の正面部縁、前記底部の正面部縁、前記第1の側部の正面部縁、および前記第2の側部の正面部縁によって決定されている、請求項7〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記頂部の前記正面部縁および前記底部の前記正面部縁は真直である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記頂部の前記正面部縁と前記底部の前記正面部縁とは平行である、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の側部の前記正面部縁および前記第2の側部の前記正面部縁は真直である、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の側部の前記正面部縁と前記第2の側部の前記正面部縁とは平行である、請求項12または15に記載のシステム。
【請求項17】
前記表面がロールであって、前記第1の側部の正面部縁および前記第2の側部の正面部縁は、前記ロールの曲率に一致するように湾曲している、請求項7に記載のシステム。
【請求項18】
前記正面部は、複数の円形ロールの周りに少なくとも部分的に適合するような形状をなしている、請求項7〜17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記頂部の正面部縁および前記底部の正面部縁は真直である、請求項17または18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記頂部の正面部縁と前記底部の正面部縁とは平行である、請求項17〜19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記複数の円形ロールは、第1のロールおよび第2のロールを有して成り、前記第1の側部の正面部縁および前記第2の側部の正面部縁は、少なくとも第1のロールの曲率、第2のロールの曲率、およびニップ領域に一致するような形状をなしており、前記ニップ領域は、システム、第1のロールおよび第2のロールの間の領域である、請求項12〜18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記底部と前記背部との交差部は、排出部を形成している、請求項7に記載のシステム。
【請求項23】
前記粘性材料送達デバイスは、前記ハウジング内に配置されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項24】
前記粘性材料送達デバイスは、通気口を通して挿入されている、請求項1〜8および10〜23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記粘性材料送達デバイスは、前記ハウジングの前記第1の側部、前記第2の側部、前記頂部、または前記底部内に配置されたポートを通して挿入されている、請求項7〜23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記粘性材料送達デバイスは、
前記第1の側部、前記第2の側部、前記頂部、または前記底部内に配置された粘性材料入口ポートと、
前記粘性材料入口ポートとは反対側に配置された粘性材料出口ポートとをさらに備える、請求項7〜23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記粘性材料送達デバイスは、複数のノズルをさらに備える、請求項7〜23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記複数のノズルの各々は、前記ハウジングの前記正面部に向けられている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
破片除去ブラシをさらに備える、請求項1〜28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
前記破片除去ブラシは、静的ブラシまたは可動ブラシである、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記可動ブラシは、回転ブラシ、発振ブラシ、また振動ブラシを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記複数のシールは、頂部の正面部縁に取り付けられた頂部シール、底部の正面部縁に取り付けられた底部シール、第1の側部の正面部縁に取り付けられた第1の側部シール、および第2の側部の正面部縁に取り付けられた第2の側部シールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
前記複数のシールの各シールが前記第1の位置にあるとき、各シールは、前記表面に実質的に平行な角度と実質的に垂直な角度との間にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項34】
前記複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスは、前記複数のシールの各シールを前記第2の位置に移動させるのに十分な速度で前記ガスを供給するように構成されている、請求項1〜33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項35】
前記複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスは、前記複数のシールの各シールが前記第2の位置にあるとき、粘性材料が前記ギャップを通過するのを防ぐのに十分な速度で前記ガスを供給するように構成されている、請求項1〜33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項36】
供給されるガスが存在しないとき、前記複数のシールの各シールは前記第1の位置にあり、前記粘性材料は、前記複数のシールのうちの少なくとも1つのシールの上を流れ、前記ハウジング内に流入し、前記ハウジングを通り、排出部内に流入することができる、請求項1〜21および23〜33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項37】
収集デバイスをさらに備え、前記収集デバイスは、前記排出部の出口に配置されている、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記収集デバイスは、チャネル、真空バー、またはシンクである、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記複数のシールの各シールは、可撓性シールである、請求項1〜38のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項40】
前記可撓性シールは、ポリマーシール、ポリシリコンシール、または布シールを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記複数のシールの各シールは、剛性である、請求項1〜40のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項42】
前記複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスは、強制ガス送達デバイスである、請求項1〜41のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項43】
前記強制ガス送達デバイスは、エアナイフである、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
請求項1〜3、6〜21、23〜33、42および43のいずれかに記載のシステムを使用して、少なくとも1つの表面に適用された粘性材料を封じ込める方法であって、
前記ハウジングを前記少なくとも1つの表面に隣接して移動させることと、
前記粘性材料を前記少なくとも1つの表面に送達することと、
前記複数のガス送達デバイスから前記複数のシールの各シールの前記接触縁に向かって前記ガスを送達して、前記複数のシールの各シールを、前記複数のシールの各シールの前記接触縁が前記少なくとも1つの表面から前記ギャップだけ離間される前記第2の位置に移動させることと、を含み、
前記ガスの速度は、前記少なくとも1つの表面上の前記粘性材料が前記ギャップを通過するのを防ぐのに十分である、方法。
【請求項45】
前記ハウジングを前記少なくとも1つの表面に隣接して移動させることは、前記複数のシールの各シールを前記第1の位置に移動させて、前記少なくとも1つの表面に接触させることを含み、前記複数のシールの各シールは可撓性シールである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ハウジングを前記少なくとも1つの表面に隣接して移動させことは、前記複数のシールの各シールを前記第1の位置に移動させて、前記少なくとも1つの表面に接触させることを含み、前記複数のシールの各シールは剛性シールである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記複数のシールを前記第1の位置に移動させて前記少なくとも1つの表面に接触させることは、前記複数のシールの各シールを前記少なくとも1つの表面に向かって付勢することをさらに含む、請求項44〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記複数のガス送達デバイスにより前記ガスを送達することは、複数の強制ガス送達システムによって実行される、請求項44〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記複数の強制ガス送達デバイスにより前記ガスを送達することは、複数のエアナイフによって実行される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ガスを送達することが、前記複数のシールの各シールが前記第2の位置に移動するのを促す、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記粘性材料を前記少なくとも1つの表面から除去することをさらに含み、前記少なくとも1つの表面は移動表面であり、前記移動表面は、前記粘性材料を前記複数のシールのうちの少なくとも1つのシールに向かって運搬する、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記ガスを送達して、前記粘性材料が各ギャップを通過するのを防ぐことにより、前記粘性材料が前記複数のシールの各シールのうちの少なくとも1つの上を流れて前記ハウジング内に流入することを可能にする、請求項44〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスを停止して、前記複数のシールの各シールを前記第1の位置に移動させることをさらに含み、前記第1の位置では、前記粘性材料が前記ハウジングの底部のシール上を流れて前記ハウジング内に流入することを許容する、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記粘性材料は、前記ハウジングを通って排出部内に流入し、前記排出部は、チャネル、真空バー、またはシンクである収集デバイスをさらに備える、請求項44〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
請求項1〜43のいずれかに記載のシステムを使用して、少なくとも1つの表面に適用された粘性材料を封じ込める方法であって、
前記ハウジングを前記少なくとも1つの表面に隣接して移動させることと、
前記粘性材料を前記少なくとも1つの表面に送達することと、
前記複数のガス送達デバイスから前記複数のシールの各シールの前記接触縁に向かって前記ガスを送達して、前記複数のシールの各シールを、前記複数のシールの各シールの前記接触縁が前記少なくとも1つの表面から前記ギャップだけ離間される前記第2の位置に移動させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月13日に出願された米国仮特許出願第62/684,443号の優先権および利益を主張し、その全体は、参照により本明細書に取り込まれるものとする。
【0002】
本開示は、概して、冶金に関し、より具体的には、金属製造に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において特に断りのない限り、本セクションで説明する材料は、本出願の特許請求の範囲の先行技術ではなく、本セクションに含めることにより先行技術であるとは認められない。
【0004】
既存のロール冷却システムおよび方法は、高温で実行される処理ステップ(例えば、熱間圧延、冷間圧延、および/または温間圧延)の間および/またはあとに、冷却剤適用ヘッダーを使用して作業ロールに冷却剤を供給し、さらに別個のワイパーを使用して、作業ロールおよび/または圧延金属製品(例えば、金属品)に適用された冷却剤を封じ込める。いくつかの態様では、既存のロール冷却システムおよび方法は、さまざまなプロセスの相互汚染をもたらし得る(例えば、冷却剤は潤滑剤を汚染し、クリーナーは前処理剤を汚染するなど)。さらなる態様では、ワイパーはロール表面と常に接触しており、作業ロールおよび/または金属品表面を損傷させ得る破片を収集する危険性がある。加えて、真空システムを使用して、冷却後に作業ロールおよび/または金属品から冷却剤を除去することができる。特に処理が停止および/または反転されたとき、作業ロールおよび/または金属品から冷却剤を除去する際に、未封じの冷却剤を吸引することは効果的でないことがある。
【発明の概要】
【0005】
実施形態という用語および同様の用語は、本開示の主題および以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すように意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載される主題を限定するものでもなく、以下の「特許請求の範囲」の意味または範囲を限定するものでもないと理解されるべきである。本明細書で網羅される本開示の実施形態は、この「発明の概要」ではなく、以下の「特許請求の範囲」によって定義される。この「発明の概要」は、本開示のさまざまな態様の大まかな概要であり、以下の「発明を実施するための形態」でさらに説明される概念のいくつかを紹介する。この「発明の概要」は、特許請求された主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、本開示の明細書全体の適切な部分、任意のまたはすべての図面および各特許請求項を参照することによって理解されるべきである。
【0006】
本明細書に記載されるのは、表面に適用された粘性材料を封じ込めるためのシステムであって、システムは、ハウジングと、粘性材料送達デバイスと、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な複数のシールであって、複数のシールの各シールの接触縁は、第1の位置においては表面に接触し、第2の位置においては表面からあるギャップだけ離間し、表面は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールに向かって粘性材料を運搬する、複数のシールと、複数のガス送達デバイスであって、複数のガス送達デバイスの各々は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールの接触縁に向かってガスを供給して、少なくとも1つのシールを第1の位置と第2の位置との間で移動させるように構成され、少なくとも1つのシールの接触縁は表面からギャップだけ離間している、複数のガス送達デバイスと、を備え、複数のシールの各々が第2の位置にあるとき、複数のガス送達デバイスによって供給されるガスは、非接触シールとして作用することにより、粘性材料がハウジングから出るのを防ぐ。場合によっては、粘性材料は、液体、ゲル、ゾルゲル、ガラス、またはこれらの任意の組み合わせ(例えば、クリーナー、潤滑剤、処理剤、前処理剤、美的コーティング剤、冷却剤、またはこれらの任意の組み合わせ)であり得る。いくつかの態様では、表面は、移動表面(例えば、ロールまたはロール加工エンジニアリング材料)である。いくつかの態様では、移動表面は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールに向かって粘性材料を運搬する。いくつかの非限定的な実施例では、ロールは、作業ロール、バックアップロール、または中間ロールであり得、ロール加工エンジニアリング材料は、金属、ポリマー、複合材料、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0007】
いくつかの実施例では、ハウジングは、頂部、底部、第1の側部、第1の側部とは反対側の第2の側部、背部、および背部とは反対側の正面部を含み、正面部は、少なくともロールに向けられ、頂部、底部、第1の側部、第2の側部、および背部は、中実パネルであり得る。場合によっては、背部は、通気口をさらに含み得、正面部は、開放され得る。いくつかの非限定的な実施例では、表面がロール加工エンジニアリング材料であるとき、正面部は、実質的に平坦な表面に少なくとも部分的に適合するような形状をなしている。したがって、正面部の形状は、頂部の正面部縁、底部の正面部縁、第1の側部の正面部縁、および第2の側部の正面部縁によって決定されている(例えば、頂部の正面部縁および底部の正面部縁は真直かつ平行であり得、第1の側部の正面部縁および第2の側部の正面部縁は真直である。いくつかのさらなる非限定的な実施例では、表面がロールであるとき、第1の側部の正面部縁および第2の側部の正面部縁は、ロールの曲率に一致するように湾曲し得る。場合によっては、正面部は、複数の円形ロールの周りに少なくとも部分的に適合するような形状をなし得る(例えば、頂部の正面部縁および底部の正面部縁は真直かつ平行であり得、第1の側部の正面部縁および第2の側部の正面部縁は、少なくとも第1のロールの曲率、第2のロールの曲率、およびニップ領域に一致するような形状をなし得る)。いくつかの態様では、底部と背部との交差部は、排出部を形成し得る。
【0008】
いくつかの非限定的な実施例では、粘性材料送達デバイスは、ハウジング内に配置され得る(例えば、通気口を通して挿入されているか、またはハウジングの第1の側部、第2の側部、頂部、もしくは底部に配置されたポートを通して挿入されている)。粘性材料送達デバイスは、第1の側部、第2の側部、頂部、または底部に配置された粘性材料入口ポートと、粘性材料入口ポートとは反対側に配置された粘性材料出口ポートとをさらに含み得る。場合によっては、粘性材料送達デバイスは、ハウジングの正面部に向けられた複数のノズルをさらに含む。加えて、システムは、静止ブラシまたは可動ブラシ(例えば、回転ブラシ、発振ブラシ、または振動ブラシ)であり得る破片除去ブラシを含み得る。
【0009】
いくつかの非限定的な実施例では、複数のシールは、頂部の正面部縁に取り付けられた頂部シール、底部の正面部縁に取り付けられた底部シール、第1の側部の正面部縁に取り付けられた第1の側部シール、および第2の側部の正面部縁に取り付けられた第2の側部シールを含む。いくつかの実施例では、複数のシールの各シールは、システムを少なくとも表面に隣接して配置することにより、第1の位置に維持される。いくつかの態様では、複数のシールの各シールが第1の位置にあるとき、各シールは、少なくとも表面に実質的に平行な角度と少なくとも表面に実質的に垂直な角度との間にある。いくつかの実施例では、複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスは、複数のシールの各シールを第2の位置に移動させるのに十分な速度でガスを供給するように構成されている。いくつかの態様では、複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスは、複数のシールの各シールが第2の位置にあるときに、粘性材料がギャップを通過するのを防ぐのに十分な速度でガスを供給するように構成されている。場合によっては、供給されるガスが存在しないとき、複数のシールの各シールは第1の位置にあり、粘性材料は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールの上を流れ、ハウジング内に流入し、ハウジングを通り、排出部内に流入することができる。いくつかのさらなる実施例では、収集デバイスを、排出部の出口に配置し得る(例えば、チャネル、真空バー、またはシンク)。
【0010】
いくつかの非限定的な実施例では、シールは、可撓性シール(例えば、ポリマーシール、ポリシリコンシール、または布シール)であり得る。場合によっては、シールは、剛性であり得る。いくつかのさらなる実施例では、複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスは、強制ガス送達デバイス(例えば、エアナイフ)である。
【0011】
また、本明細書に記載されるのは、上述のシステムを使用して、少なくとも1つの表面に適用された粘性材料を封じ込める方法であって、ハウジングを表面に隣接して移動させることと、粘性材料を表面に送達することと、複数のガス送達デバイスから複数のシールの各シールの接触縁に向かってガスを送達して、複数のシールの各シールを、複数のシールの各シールの接触縁が表面からギャップだけ離間される第2の位置に移動させることと、を含み、ガスの速度は、表面上の粘性材料がギャップを通過するのを防ぐのに十分である、方法である。いくつかの態様では、ハウジングを表面に隣接して移動させることは、複数のシールの各シールを第1の位置に移動させて1つの表面に接触させることを含み、複数のシールの各シールは可撓性シールまたは剛性シールである。いくつかの非限定的な実施例では、複数のシールを第1の位置に移動させて表面に接触させることは、複数のシールの各シールを表面に向かって付勢することをさらに含む。
【0012】
場合によっては、複数のガス送達デバイスによりガスを送達することは、複数の強制ガス送達システム(例えば、エアナイフ)によって実行される。いくつかの態様では、ガスを送達することが、複数のシールの各シールが第2の位置に移動するのを促す。いくつかのさらなる実施例では、本明細書に記載の方法は、粘性材料を表面から除去することを含み得る。例えば、ガスを送達して、粘性材料が各ギャップを通過するのを防ぐことにより、粘性材料が複数のシールのうちの少なくとも1つのシールの上を流れてハウジング内に流入することを可能にし得る。加えて、複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスを停止して、複数のシールの各シールを第1の位置に移動させることにより、粘性材料が、例えば、底部縁シール上を流れ、ハウジング内に流入することを可能にし得る。次いで、粘性材料は、ハウジングを通って排出部内に流入することができ、排出部は、チャネル、真空バー、またはシンクであり得る収集デバイスをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書は、以下の添付図面を参照し、そこで、異なる図面における同様の参照番号の使用は、同様または類似する構成要素を例示することを意図する。
【0014】
【
図1】本開示の特定の態様に従う冷却剤封じ込めシステムの斜視図である。
【
図2】本開示の特定の態様に従う、作業ロールに隣接して配置された冷却剤封じ込めシステムの斜視図である。
【
図3】本開示の特定の態様に従う、作業ロールに隣接して配置された冷却剤封じ込めシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の特定の態様および特徴は、粘性材料の適用、封じ込め、および/または除去に関する。特定の態様において、粘性材料は、エンジニアリング材料(例えば、ロール加工されている金属ストリップなどの金属品)、エンジニアリング材料を加工する作業ロール、または、移動物品を処理する一部としての粘性材料の適用、封じ込め、および/もしくは除去を必要とする任意の適切な移動物品の表面に、適用される、その上に封じ込まれる、かつ/またはそこから除去される。本開示のさらなる態様および特徴は、熱間圧延モード、冷間圧延モード、温間圧延モード、またはこれらの任意の組み合わせで金属品を圧延するための圧延機に関する。本開示のさらなる態様および特徴は、熱間圧延、冷間圧延、もしくは温間圧延に関与するロールおよび/または圧延されている金属品を冷却するシステムおよび方法に関する。本開示のなおさらなる態様は、金属品の表面を損傷させることなく、ロールおよび/または金属品に適用された冷却剤を封じ込めるためのシステムおよび方法に関する。
【0016】
本明細書で使用される「発明」、「その発明」、「この発明」、および「本発明」という用語は、本特許出願および以下の「特許請求の範囲」の主題の全てを広く参照することが意図されている。これらの用語を含有する記述は、本明細書に記載の主題を限定するものではなく、または以下の「特許請求の範囲」の意味もしくは範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、単数および複数の言及を含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「室温」の意味は、約15℃〜約30℃、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度を含み得る。
【0019】
いくつかの非限定的な実施例では、圧延機は少なくとも1つの作業スタンドを含むことができ、いくつかの実施例では、圧延機は複数のスタンドを含むことができる。例えば、圧延機は、2つのスタンド、3つのスタンド、4つのスタンド、5つのスタンド、6つのスタンド、または必要または所望に応じて他の任意の数のスタンドを含み得る。各スタンドは、垂直に整列された1対の作業ロールを含むことができる。場合によっては、各スタンドは、1対の作業ロールを支持する1対のバックアップロールを含む。いくつかの実施例では、各スタンドは、1対の中間ロールも含む。ロールは、ステンレス鋼、鋼、または任意の適切な材料であり得る。金属品の圧延中、金属品は、作業ロール間に画定されたロールギャップを通過する。金属品を圧延すると、金属品の厚さが所望の厚さまで減少し、金属品の組成に応じて金属品に特定の特性が付与される。最終金属製品の所望の特性または他の考慮事項に応じて、圧延機は、熱間圧延モード、冷間圧延モード、温間圧延モード、またはこれらの任意の組み合わせで稼働し得る。
【0020】
いくつかの実施例では、金属品は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムベースの材料、チタン、チタンベースの材料、銅、銅ベースの材料、鋼、鋼ベースの材料、青銅、青銅ベースの材料、真鍮、真鍮ベースの材料、複合材料、複合材料に使用されるシート、またはその他の任意の適切な金属もしくは材料の組み合わせである。物品は、モノリシック材料や、ロールボンド材料、クラッド材料、複合材料など(限定されないが、炭素繊維含有材料など)の非モノリシック材料、または他のさまざまな材料を含み得る。いくつかの実施例では、金属品は、金属コイル、金属ストリップ、金属プレート、金属シート、金属ビレット、金属インゴットなどである。場合によっては、本明細書に記載のシステムおよび方法は、非金属品に使用することができる。
【0021】
熱間圧延は、一般に、金属の再結晶温度を超える温度で起こる。例えば、金属品がアルミニウムまたはアルミニウム合金であるいくつかの場合では、熱間圧延は、約250℃〜約550℃など、約250℃を超える温度で起こり得る。他の実施例では、熱間圧延のための他のさまざまな温度が使用され得る。
【0022】
熱間圧延とは対照的に、冷間圧延は、一般に、金属の再結晶温度より低い温度で起こる。例えば、金属品がアルミニウムまたはアルミニウム合金であるいくつかの場合では、冷間圧延は、約20℃〜約200℃など、約200℃未満の温度で起こり得る。他の実施例では、冷間圧延のための他のさまざまな温度が使用され得る。
【0023】
場合によっては、金属品は、金属の再結晶温度よりも低いが冷間圧延温度よりも高い温度で起こる温間圧延プロセスによって圧延され得る。例えば、金属品がアルミニウムまたはアルミニウム合金であるいくつかの場合では、温間圧延は、約200℃〜約250℃の温度で起こり得る。他の実施例では、温間圧延のための他のさまざまな温度が使用され得る。
【0024】
いくつかの実施例では、圧延機は、冷却剤送達デバイスと、作業ロールおよび/またはバックアップロールに隣接する冷却剤封じ込めシステムとを含むロール冷却システムを有する。いくつかの実施例では、ロール冷却システムは、処理中に作業ロールおよび/またはバックアップロールの温度を下げるように構成されている。さまざまな実施例において、冷却剤送達デバイスは、作業ロールおよび/またはバックアップロールの少なくとも1つの表面に冷却剤を適用して、作業ロールおよび/またはバックアップロールの温度を制御するように構成されている。いくつかの実施例では、冷却剤封じ込めシステムは、作業ロールおよび/またはバックアップロール上の所望の領域に冷却剤を封じ込め、かつ冷却剤を除去するか、あるいは作業ロールおよび/またはバックアップロールを乾燥させるように構成されている。場合によっては、冷却剤封じ込めシステムは、冷却剤が金属品に接触するのを防止または最小限に抑えるのを助ける。さまざまな実施例では、圧延機の構成に応じて、任意の数の冷却剤送達デバイスおよび冷却剤封じ込めシステムが利用され得る。ロール冷却システムは、上方作業ロール、下方作業ロール、上方バックアップロール、下方バックアップロール、これらの組み合わせ、または冷却が望ましい任意の場所など、圧延機内のさまざまな場所に提供され得る。
【0025】
本説明は液体冷却剤に関連して提供されるが、本明細書に記載のシステムおよび方法は、冷却剤、クリーナー、処理剤、前処理剤、美的コーティング剤、潤滑剤(例えば、ゲル、ゾルゲル、および特定のガラス)など、またはこれらの任意の組み合わせを含む、任意の粘性材料に使用することができる。
【0026】
いくつかの非限定的な実施例では、ロール冷却システムは、ハウジング、冷却剤送達システム、冷却剤、および冷却剤封じ込めシステムを含み得る。開示された冷却システムは、従来のロール冷却システムと比較すると、コンパクトな冷却システムであり得、したがって、開示された冷却システムを既存の圧延機に後付けすることを含め、圧延機内の所望の点に実装することが可能となる。
【0027】
いくつかの実施例では、開示された冷却システムのハウジングは、複数のシールと複数のガス送達デバイスとをさらに含み得る。複数のシールは、可撓性シールまたは剛性シールであり得る。可撓性である場合、複数のシールは、複数のポリマーシールであり得る。ポリマーシールに使用するポリマーには、例えば、合成ゴム(スチレンブタジエン)、天然ゴム、エラストマー、セルロースなど、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施例では、シールは、ポリシリコンシール、ブラシ、布シール、または作業ロールに接触したとき作業ロールを損傷させない、あるいは例えば金属品の冷却に使用される場合では金属品に接触したときに金属品を傷つけない、任意の適切な材料で作られたシールであり得る。場合によっては、シールは、作業ロールおよび/またはバックアップロールに接触したときに作業ロールおよび/またはバックアップロールを損傷させない任意の適切な材料で作られた剛性シールであり得る。いくつかの非限定的な実施例では、複数のガス送達システムは、複数の強制ガス送達システムである。場合によっては、複数の強制ガス送達システムは、複数のエアナイフである。
【0028】
いくつかの態様では、ロール冷却システムは、回転ロールに隣接して配置することができる。場合によっては、回転ロール(例えば、作業ロールおよび/またはバックアップロール)は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールに向かって冷却剤を運搬するような方向に回転する。
【0029】
いくつかの実施例では、圧延機は、追加でまたは代わりに、金属品の外側表面に冷却剤を適用して、金属品の温度を制御するように構成された金属品冷却システムを含む。いくつかの非限定的な実施例では、冷却剤は、水、油、ゲル、または任意の適切な熱伝達媒体である。場合によっては、冷却剤は、有機熱伝達媒体、シリコーン流体熱伝達媒体、またはグリコールベースの熱伝達媒体(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、他の任意のポリアルキレングリコール、またはこれらの任意の組み合わせ)などである。
【0030】
場合によっては、圧延機は、さまざまな粘性材料を、例えば金属品と作業ロールとに同時に適用できる1つ以上のシステムを含む。いくつかの非限定的な実施例では、ロール冷却システムと金属品潤滑システムとを同時に使用できる。そのようなシナリオでは、ロール冷却システムによって適用される液体冷却剤と、金属品潤滑システムによって適用される液体潤滑剤とは相互汚染してはならず、液体冷却剤を液体潤滑剤から隔離することがさらに必要である。いくつかの非限定的な実施例では、ロール冷却システムはロールへの液体冷却剤を封じ込むことができ、かつ金属品潤滑システムは金属品への液体潤滑剤を封じ込むことができ、したがって、液体冷却剤を液体潤滑剤から隔離する。
【0031】
いくつかの実施例では、複数のシールおよび複数のガス送達デバイスを含むことにより、冷却剤などの粘性材料を封じ込めることができる周界を画定することができる。簡単に説明すると、以下で詳細に説明するように、複数のシールおよび複数のガス送達デバイスは、シールと、例えば作業ロールおよび/またはバックアップロールの表面との間を伝播するガスが、粘性材料および/または破片を望ましい位置に保持できる非接触シールを作り出すことできる(すなわち、粘性材料および/または破片はシールを通過できない)。いくつかの非限定的な実施例では、そのような非接触シールを作り出すことで、シールと作業ロールおよび/またはバックアップロールとの間に破片が封じ込められ、作業ロールおよび/もしくはバックアップロール、ならびに/またはシールを損傷させる恐れなく、粘性材料および/または破片を封じ込めることができる。いくつかの態様では、複数のシールおよび複数のガス送達デバイスは、封じ込め領域を画定するように構成され得る。封じ込め領域は、そこに封じ込まれるいかなる粘性材料および/または破片も作業ロールおよび/またはバックアップロールから遠ざけてハウジング内に導くようにさらに構成することができる。場合によっては、ハウジングは、ロール冷却システムから粘性材料および/または破片を排出するように構成され得る。いくつかの非限定的な実施例では、粘性材料(例えば、冷却剤)を、洗浄、リサイクル、および/または再使用することができる。
【0032】
これらの例示的な例は、本明細書で説明される一般的な主題を読者に紹介するために与えられ、かつ開示された概念の範囲を限定することを意図するものではない。以下の部分は、図面を参照してさまざまな追加の特徴および実施例を説明するが、例示的な実施形態のように本開示を限定するために使用されるべきではなく、図面において、同じ番号は同じ要素を示し、方向の説明は例示的な実施形態を説明するために使用される。本明細書の実施例に含まれる要素は、縮尺通りに描かれていなくてもよい。
【0033】
図1は、本明細書に記載するような粘性材料封じ込めシステム100の斜視図である。粘性材料封じ込めシステム100は、1つ以上のロールを冷却するために使用でき、1つ以上のロールに適用された任意の液体冷却剤を封じ込めるように構成でき、かつ/または冷却中にロール上に蓄積する汚染物質および破片(例えば、気体冷却剤による冷却中にロールの周りでかき混ぜられた破片、および/または液体冷却剤による冷却中にロールから持ち上げられた破片)を封じ込めるように構成できる。例えば、粘性材料封じ込めシステム100は、1つ以上のロールに適用された冷却剤が作業スタンドを通過する金属品に接触することを防止または最小限に抑えるように構成することができる。粘性材料封じ込めシステム100は、底部115、頂部120、背部125、第1の側部130、および第2の側部135を含み得るハウジング110を含む。いくつかの非限定的な実施例では、第1の側部130および第2の側部135は、ハウジング110が粘性材料封じ込めシステム100を使用して冷却を受けるロール(例えば、作業ロール)の形状に適合することができるような形状を有し得る。いくつかのさらなる非限定的な実施例では、第1の側部130および第2の側部135は、ハウジング110が1対のロール(例えば、作業ロールおよびバックアップロール)の形状に適合できるような形状を有し得る。なおさらなる非限定的な実施例では、第1の側部130および第2の側部135は、ハウジング110が実質的に平坦な材料物品(例えば、金属品、ポリマーフィルム、または粘性材料の適用、封じ込め、および除去を必要とする任意の適切な物品)の形状に適合できるような形状を有し得、粘性材料封じ込めシステム100は、1つ以上のロールの代わりに、またはそれに加えて、材料物品を冷却するために使用することができる。いくつかの態様では、ハウジング110の正面部140は、底部115、頂部120、第1の側部130、および第2の側部135によって画定される開口部であり得る。いくつかの実施例では、正面部140の少なくとも一部は、ハウジング110の正面部140がロールおよび/または1対のロールに適合することができるように、底部115、頂部120、第1の側部130、および/または第2の側部135によって画定される凸形状を有し得る。
【0034】
図1に示すように、粘性材料封じ込めシステム100のハウジング110は、ハウジング110の正面部140の周りに配置された複数の可撓性シールをさらに含み得、かつハウジング110は、複数の可撓性シールに隣接して配置された複数のガス送達デバイスをさらに含み得る。例えば、底部115は底部縁シール117を含み得、頂部120は頂部縁シール122を含み得る。底部115および頂部120は、それぞれ、底部縁ガス送達デバイス119および頂部縁ガス送達デバイス124をさらに含み得る。底部縁シール117および頂部縁シール122は、可撓性または剛性であり得、任意の適切な材料で形成され得る。例えば、底部縁シール117および頂部縁シール122は、ポリマーシールであり得る。ポリマーシールに使用する例示的なポリマーには、例えば、合成ゴム(スチレンブタジエン)、天然ゴム、エラストマー、セルロースなど、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施例では、シールは、ポリシリコンシール、ブラシ、布シール、またはロールもしくはロール対を損傷させない任意の適切な材料で作られたシールであり得る。
【0035】
ハウジング110はまた、第1の側部130の正面部縁に取り付けられた第1の側部縁シール132と、第2の側部135の正面部縁に取り付けられた第2の側部縁シール137とを有し得る。第1の側部130および第2の側部135は、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137に隣接して配置された複数のガス送達デバイス145をさらに含み得る。いくつかの非限定的な実施例では、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137は、第1の側部130の形状および第2の側部135の形状に適合することができる可撓性シールであり、したがって、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137は、さらにロールに適合することができる。
【0036】
いくつかの非限定的な実施例では、少なくとも第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137はブラシであり得る。場合によっては、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137のうちの1つ以上はブラシであり得る。したがって、粘性材料封じ込めシステム100が第1の位置にあるとき、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137を作り出すブラシは、複数のブラシ毛を介して作業ロールに接触し得る。いくつかの実施例では、複数のブラシ毛は、作業ロールおよび/またはバックアップロールを損傷させない任意の適切な材料であり得る。例えば、ブラシ毛は、ポリマーブラシ毛であり得る。ポリマーブラシ毛に使用する例示的なポリマーには、例えば、合成ゴム(スチレンブタジエン)、天然ゴム、エラストマー、セルロースなど、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施例では、ブラシ毛は、ポリシリコンブラシ毛、布ブラシ毛、またはロールおよび/もしくは材料物品に接触したときにロールおよび/もしくは材料物品を損傷させない任意の適切な材料で作られたブラシ毛であり得る。
【0037】
背部125は、ハウジング110の洗浄、冷却剤アプリケータの挿入、ロール洗浄ブラシの挿入、保守作業のためのアクセスなどを可能にし得る通気口150を含み得る。粘性材料封じ込めシステム100は、粘性材料送達デバイス160をさらに含み得る。粘性材料送達デバイス160は、少なくとも1つのノズル165を含み得、複数のノズル165もなおさらに含み得る。粘性材料送達デバイス160は、粘性材料送達デバイス160を第1の側部130に配置された入口ポート170を通し、かつ任意選択で第2の側部135に配置された出口ポート175を通すことを含め、任意の適切な方法でハウジング110内に配置し得る。任意選択で、粘性材料送達デバイス160は、背部125に配置された通気口150を通してハウジング110に挿入し得る。
【0038】
粘性材料封じ込めシステム100は、
図2に示すように、ロール(例えば、作業ロール、バックアップロール、および/または中間ロール)、1対のロール(例えば、作業ロールおよびバックアップロール)に隣接して、または金属品などに隣接して、配置され得る。粘性材料封じ込めシステム100は、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132(
図1を参照)および第2の側部縁シール137(
図1を参照)が第1の位置にあるように、作業ロール210に隣接して配置され得る。第1の位置にあるとき、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137は各々、作業ロール210に接触し、頂部縁シール122はバックアップロール215に接触する。いくつかの非限定的な実施例では、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137は、上述したような封じ込め領域を画定する。
【0039】
いくつかの非限定的な実施例では、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137は、粘性材料封じ込めシステム100がロール、1対のロール、または金属品などに隣接して配置されたき、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137の弾性によって、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137が、ロール、1対のロール、または金属品など(すなわち、表面)と接触状態に維持されるように、十分な弾性を有する。例えば、粘性材料封じ込めシステム100は、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137が表面に接触するような位置に移動し得る。続いて、粘性材料封じ込めシステム100を、表面に向かってさらに駆動すると、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137を、表面に接触しながら、屈曲させることができる。次いで、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137の弾性により、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137を付勢して、表面とさらに接触させ、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137を非屈曲構成に戻す。
【0040】
追加でまたは代わりに、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137は、ばね負荷デバイス、アクチュエータ、テンショナ、または任意の適切な可動付勢機構によって作業ロール210と接触するように付勢し得る。頂部縁シール122は、ばね負荷デバイス、アクチュエータ、テンショナ、または任意の適切な可動付勢機構により、バックアップロール215と接触するように付勢し得る。1つ以上の付勢機構は、底部縁シール117、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137に圧力を印加して、底部縁シール117、第1の側部縁シール132、および第2の側部縁シール137が作業ロール210と接触するのを促すように構成され得る。1つ以上の付勢機構は、頂部縁シール122に圧力を印加してバックアップロール215と接触させるように構成され得る。場合によっては、頂部縁シール122は、バックアップロール215の代わりに作業ロール210に接触する。付勢機構からの圧力の印加には、手動制御(例えば、つまみねじを使用)、コンピューター制御(例えば、サーボ駆動アクチュエータを使用)、または非制御(例えば、圧力は印加できるが調整はされない)が可能である。いくつかの非限定的な実施例では、作業ロール210は時間が経つと直径が縮小し得るので、付勢機構により、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137を作業ロール210と接触状態に維持することができる。いくつかの非限定的な実施例では、バックアップロール215は時間が経つと直径が縮小し得るので、付勢機構により、頂部縁シール122をバックアップロール215と接触状態に維持することができる。
【0041】
底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137は、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137が作業ロール210に接触しない第2の位置に移動し得る。同様に、頂部縁シール122は、頂部縁シール122がバックアップロール215に接触しない第2の位置に移動し得る。具体的には、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137の長手方向接触縁は、作業ロール210から、あるギャップだけ離間され、頂部縁シール122はバックアップロール215から、あるギャップだけ離間される。エアナイフまたは他の強制ガス送達デバイスであり得る、底部縁ガス送達デバイス119、頂部縁ガス送達デバイス124、および複数のガス送達デバイス145は、ガス流を、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137の長手方向接触縁に向かって送達するように構成され得る。底部縁ガス送達デバイス119、頂部縁ガス送達デバイス124、および複数のガス送達デバイス145からガス流を送達することにより、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137を第1の位置から第2の位置へ移動させて、作業ロール210と底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137との間のギャップと、頂部縁シール122とバックアップロール215との間のギャップとを作り出すことができる。ギャップは、約0.1ミリメートル(mm)〜約3.0mmまたはそれより大きい幅など、任意の適切な寸法を有し得る。例えば、ギャップは、約0.1mm、約0.15mm、約0.2mm、約0.25mm、約0.3mm、約0.35mm、約0.4mm、約0.45mm、約0.5mm、約0.55mm、約0.6mm、約0.65mm、約0.7mm、約0.75mm、約0.8mm、約0.85mm、約0.9mm、約0.95mm、約1.0mm、約1.1mm、約1.2、mm、約1.3mm、約1.4mm、約1.5mm、約1.6mm、約1.7mm、約1.8mm、約1.9mm、約2.0mm、約2.1mm、約2.2、mm、約2.3mm、約2.4mm、約2.5mm、約2.6mm、約2.7mm、約2.8mm、約2.9mm、もしくは約3.0mm、またはこれらの間であり得る。
【0042】
底部縁ガス送達デバイス119、頂部縁ガス送達デバイス124、および複数のガス送達デバイス145からのガス流は、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137が作業ロール210と長手方向接触縁で接触し、かつ頂部縁シール122がバックアップロール215と長手方向接触縁で接触する位置に、ガスが集中するような方向に向けられる。ガス流を送達することによって印加される力は、底部縁シール117、頂部縁シール122、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137を第2の位置に移動させ、それによって、作業ロール210と底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137との間のギャップと、頂部縁シール122とバックアップロール215との間のギャップとを作り出すことができる。
【0043】
ガス流は、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137と作業ロール210との間のギャップと、頂部縁シール122とバックアップロール215との間のギャップとを通って、適切な速度で、伝播し得る。速度は、ガス流の流量と、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137と作業ロール210との間のギャップのサイズと、頂部縁シール122とバックアップロール215との間のギャップのサイズとによって決定され得る。底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137と作業ロール210との間のギャップのサイズ、および頂部縁シール122とバックアップロール215との間のギャップのサイズは、付勢機構によって印加される圧力によって決定され得る。付勢機構によって印加される圧力は、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137が第1の位置にあるとき、またはガス流が停止され、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137が第2の位置から第1の位置に移動したとき、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137が作業ロール210を損傷させないような任意の圧力であり得る。同様に、付勢機構によって印加される圧力は、頂部縁シール122が第1の位置にあるとき、またはガス流が停止され、頂部縁シール122が第2の位置から第1の位置に移動したとき、頂部縁シール122がバックアップロール215を損傷させないような任意の圧力であり得る。ガス流の速度は、液体冷却剤などの任意の粘性材料を作業ロール210およびバックアップロール215の表面上のある位置に維持して、液体冷却剤が作業ロール210上に作り出されたギャップまたはバックアップロール215上に作り出されたギャップに進入できなくするのに十分とし得る。いくつかのさらなる実施例では、液体冷却剤などの粘性材料は、シールが第2の位置にあるとき、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137と作業ロール210との間のギャップ、および/または頂部縁シール122とバックアップロール215との間のギャップを通って移動できない(すなわち、粘性材料は、作業ロール210および/またはバックアップロール215を通り越すことにより、ギャップを通って金属品上に移動できない)。
【0044】
任意選択で、補助ガス送達デバイス200を、ハウジング110の第1の側部130の外表面に隣接しておよび/または第2の側部135の外表面に隣接して配置し得る(
図2を参照)。補助ガス送達デバイス200は、粘性材料封じ込めシステム100、作業ロール210およびバックアップロール215の間のニップ領域220にガスが送達されるように配置し得る。補助ガス送達デバイス200は、ニップ領域220内のいかなる液体も、ニップ領域220内に封じ込められ、最終的に粘性材料封じ込めシステム100によって封じ込められ得るように、作業ロール210およびバックアップロール215の外側縁から作業ロール210およびバックアップロール215の長手方向中心に向かってガスを送達するように構成され得る。任意選択で、対向ガス送達システム230を、粘性材料封じ込めシステム100、作業ロール210およびバックアップロール215の間のニップ領域220とは反対側の、作業ロール210およびバックアップロール215の側部上のニップ領域225内に配置し得る。対向ガス送達システム230はさらに、作業ロール210およびバックアップロール215のほぼ長手方向中心に配置し得る。対向ガス送達システム230は、作業ロール210およびバックアップロール215の長手方向中心から作業ロール210およびバックアップロール215の外側縁に向かう方向にガスを送達するように構成され得る(例えば、ガスは、作業ロール210とバックアップロール215との間を通過しようとする任意の粘性材料が、粘性材料封じ込めシステム100、作業ロール210およびバックアップロール215の間のニップ領域220内に押し戻され、粘性材料封じ込めシステム100と、ハウジング110の第1の側部130の外表面に隣接しておよび/または第2の側部135の外表面に隣接して配置された補助ガス送達デバイス200とによって封じ込められように送達される)。対向ガス送達システム230からガスを送達することにより、いかなる粘性材料および/または破片も、作業ロール210とバックアップロール215との間を通過し、続いて圧延されている金属品上に堆積するのを防ぐことができる。
【0045】
任意選択で、本明細書に記載の粘性材料封じ込めシステム100は、ロール(例えば、作業ロール、バックアップロール、および/または中間ロール)に付着し得る汚染物質および破片を除去する破片除去ブラシをさらに含み得る。破片除去ブラシは、粘性材料封じ込めシステム100が作業ロール210および/またはバックアップロール215に接触しているときに、ブラシが作業ロール210および/またはバックアップロール215に接触できるように、ハウジング110内に粘性材料送達デバイス160に隣接して配置され得る。破片除去ブラシは、静的ブラシまたは可動ブラシ(例えば、回転ブラシ、発振ブラシ、または振動ブラシ)であり得る。
【0046】
静的破片除去ブラシは、粘性物質封じ込めシステム100が第1の位置にあるとき、静的破片除去ブラシが作業ロール210に複数のブラシ毛を介して接触するように、ハウジング110内に配置され得る。したがって、作業ロール210が回転しているとき、静的破片除去ブラシは、複数のブラシ毛を通過するいかなる破片も除去し得る。他の実施例では、可動破片除去ブラシが、粘性物質封じ込めシステム100が第1の位置にあるときに、可動破片除去ブラシは作業ロール210に複数のブラシ毛を介して接触するように、ハウジング110内に配置され得る。加えて、例えば、回転ブラシを採用する場合、さらに駆動機構をハウジング110に挿入して、回転ブラシと係合させることができる。いくつかの実施例では、ロールに付着した破片を除去するのに十分な複数のブラシ毛は、作業ロール210および/またはバックアップロール215を損傷させない任意の適切な材料であり得る。例えば、ブラシ毛はポリマーブラシ毛であり得る。ポリマーブラシ毛に使用する例示的なポリマーには、例えば、合成ゴム(スチレンブタジエン)、天然ゴム、エラストマー、セルロースなど、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施例では、ブラシ毛は、ポリシリコンブラシ毛、布ブラシ毛、またはロールおよび/もしくは材料物品に接触したときにロールおよび/もしくは材料物品を損傷させない任意の適切な材料で作られたブラシ毛であり得る。いくつかの非限定的な実施例では、破片除去ブラシは、作業ロール210から汚染物質および/または破片を除去し、汚染物質および/または破片を粘性材料封じ込めシステム100内に押し込むことができる。続いて、汚染物質および/または破片は、排出部240を通って流れることおよび/または通気口150を通して除去されることにより、粘性材料封じ込めシステム100から除去され得る。
【0047】
いくつかの非限定的な実施例では、ハウジング110は、
図2に示すように、収集されたいかなる粘性材料および/または破片も排出部240を通して排出するように構成され得る。排出部240は、収集されたいかなる粘性材料および/または破片も、真空システム、収集チャネル、シンク、または任意の適切な収集デバイス内に排出し得る。場合によっては、収集された粘性材料および/または破片は、システムを通して、ろ過、リサイクル、および/または再循環され得る。
【0048】
いくつかの非限定的な実施例では、複数のガス送達デバイスが停止されると、複数のシールは第1の位置に戻ることができ、そこで、複数のシールはロールに、複数のシールの各シールの長手方向接触縁を介して接触する。複数のシールをロールに接触させることは、ロール上のいかなる粘性材料も除去することの助けとなる。例えば、場合によっては、粘性材料(例えば、冷却剤)を、ロールに送達し、ハウジング110の頂部縁シール122、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137によって封じ込めることができる。次いで、粘性材料は、ロール上を流れ落ちることができ、さらに底部縁シール117の長手方向接触縁上を流れ落ちることができる。底部縁シール117は、冷却剤をハウジング110内に導くことができ、ハウジング110は、粘性材料を排出部240内に導くことができる。いくつかの態様では、排出部240は、収集トレイ、真空回収システム(例えば、真空バー、真空ライン)、シンク、または任意の適切な粘性材料収集デバイスに接続され得る。粘性材料は、所望であれば、リサイクルおよび/または再循環することができる。
【0049】
粘性材料封じ込めシステム100は、既存の冷却および冷却剤封じ込めシステムと比較すると、コンパクトなシステムであり得る。サイズが小さいため、粘性材料封じ込めシステム100は、従来の粘性材料適用および/または封じ込めシステムを収容するのに十分なスペースを有さない圧延機に後付けすることができる。いくつかの実施例では、粘性材料封じ込めシステム100は、圧延機内の任意のロールまたはロール対に隣接して配置され得る。いくつかの態様では、粘性材料封じ込めシステム100は、適用された粘性材料の封じ込めを必要とする任意のロールに隣接して配置され得る。粘性材料封じ込めシステム100は、上方作業ロール、下方作業ロール、上方バックアップロール、下方バックアップロール、垂直圧延機の第1の作業ロール、垂直圧延機の第2の作業ロール、垂直圧延機の第1のバックアップロール、垂直圧延機の第2のバックアップロール、もしくは液体冷却剤を使用した冷却を必要とする任意のロール、またはこれらの任意の適切な組み合わせに隣接して配置され得る。いくつかの実施例では、粘性材料は、一般的な粘性材料供給システムによって供給でき、その場合、本明細書に記載のコンパクトなシステムには、供給ラインを介して粘性材料が供給され、貯蔵タンクを必要としないため、粘性材料封じ込めシステム100のコンパクトさが維持される。いくつかの態様では、供給ラインを介して粘性材料を供給することにより、粘性材料封じ込めシステム100を、ロール潤滑、ロール洗浄、ロール加工エンジニアリング材料冷却、ロール加工エンジニアリング材料潤滑、ロール加工エンジニアリング材料洗浄、ロール加工エンジニアリング余熱、または粘性材料の適用、封じ込め、および除去を必要とする任意の適切なプロセスを含む用途に適合させることが可能となる。
【0050】
図3は、作業ロール210およびバックアップロール215に隣接して配置された粘性材料封じ込めシステム100の斜視図を示す概略図である。ガス出力マニホールド231が作業ロール210およびバックアップロール215の長手方向中心に配置されるように配置された対向ガス送達システム230も示されている。粘性材料封じ込めシステム100は、底部縁シール117、第1の側部縁シール132および第2の側部縁シール137(
図1を参照)が作業ロール210に接触し、かつ頂部縁シール122(
図1を参照)バックアップロール215に接触するように配置され得る。粘性材料送達デバイス160は、外部粘性材料供給システムに接続することができ、したがって、粘性材料封じ込めシステム100を、粘性材料の適用、封じ込め、および除去を必要とする任意のロールおよび/またはロール対に隣接して配置することが可能となる(例えば、粘性材料封じ込めシステム100は、より大きなシステムを作り出す粘性材料貯蔵容器を含まない)。加えて、排出部240は、任意の適切な外部粘性材料収集デバイス(例えば、チャネル、真空バー、真空ライン、またはシンク)に取り付けることができる。外部粘性材料収集デバイスを使用することにより、小設置面積システムがさらに提供され、粘性材料封じ込めシステム100を、粘性材料の適用、封じ込め、および除去を必要とする任意のロールおよび/またはロール対に隣接して配置することが可能となる。
【0051】
以下で使用されるように、一連の実施例へのいかなる言及も、これらの実施例のそれぞれへの言及として分離的に理解されるべきである(例えば、「実施例1〜4」は「実施例1、2、3、又は4」として理解される)。
【0052】
実施例1は、表面に適用された粘性材料を封じ込めるためのシステムであって、ハウジングと、粘性材料送達デバイスと、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な複数のシールであって、複数のシールの各シールの接触縁は、第1の位置においては表面に接触し、第2の位置においては表面からあるギャップだけ離間し、表面は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールに向かって粘性材料を運搬する、複数のシールと、複数のガス送達デバイスであって、複数のガス送達デバイスの各々は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールの接触縁に向かってガスを供給して、少なくとも1つのシールを第1の位置から第2の位置に移動させるように構成され、少なくとも1つのシールの接触縁は表面からギャップだけ離間している、複数のガス送達デバイスと、を備え、複数のシールの各々が第2の位置にあるとき、複数のガス送達デバイスによって供給されるガスは、非接触シールとして作用することにより、粘性材料がハウジングから出るのを防ぐ、システムである。
【0053】
実施例2は、粘性材料が、液体、ゲル、ゾルゲル、ガラス、またはこれらの任意の組み合わせを含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0054】
実施例3は、粘性材料が、クリーナー、潤滑剤、処理剤、前処理剤、美的コーティング剤、冷却剤、またはこれらの任意の組み合わせをさらに含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0055】
実施例4は、表面が、移動表面を含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0056】
実施例5は、移動表面が、ロールまたはロール加工エンジニアリング材料を含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0057】
実施例6は、ロールが、作業ロール、バックアップロール、または中間ロールを含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0058】
実施例7は、ロール加工エンジニアリング材料が、金属ストリップ、ポリマー、複合材料、またはこれらの任意の組み合わせを含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0059】
実施例8は、ハウジングが、頂部、底部、第1の側部、第1の側部とは反対側に配置された第2の側部、背部、および背部とは反対側の正面部を含み、正面部は表面に向けられている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0060】
実施例9は、頂部、底部、第1の側部、第2の側部、および背部が中実パネルである、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0061】
実施例10は、背部が、通気口をさらに備える、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0062】
実施例11は、正面部が開放されている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0063】
実施例12は、表面がロール加工エンジニアリング材料であるとき、正面部が、実質的に平坦な表面に少なくとも部分的に適合するような形状をなしている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0064】
実施例13は、正面部の形状が、頂部の正面部縁、底部の正面部縁、第1の側部の正面部縁、および第2の側部の正面部縁によって決定されている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0065】
実施例14は、頂部の正面部縁および底部の正面部縁が真直である、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0066】
実施例15は、頂部の正面部縁と底部の正面部縁とが平行である、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0067】
実施例16は、第1の側部の正面部縁および第2の側部の正面部縁が真直である、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0068】
実施例17は、第1の側部の正面部縁と第2の側部の正面部縁とが平行である、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0069】
実施例18は、表面がロールであるとき、第1の側部の正面部縁および第2の側部の正面部縁が、ロールの曲率に一致するように湾曲している、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0070】
実施例19は、正面部が、複数の円形ロールの周りに少なくとも部分的に適合するような形状をなしている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0071】
実施例20は、頂部の正面部縁および底部の正面部縁が真直である、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0072】
実施例21は、頂部の正面部縁と底部の正面部縁とが平行である、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0073】
実施例22は、第1の側部の正面部縁および第2の側部の正面部縁が、少なくとも第1のロールの曲率、第2のロールの曲率、およびニップ領域に一致するような形状をなしている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0074】
実施例23は、底部と背部との交差部が、排出部を形成している、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0075】
実施例24は、粘性材料送達デバイスが、ハウジング内に配置されている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0076】
実施例25は、粘性材料送達デバイスが、通気口を通して挿入されている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0077】
実施例26は、粘性材料送達デバイスが、ハウジングの第1の側部、第2の側部、頂部、または底部に配置されたポートを通して挿入されている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0078】
実施例27は、粘性材料送達デバイスが、第1の側部、第2の側部、頂部、または底部に配置された粘性材料入口ポートと、粘性材料入口ポートとは反対側に配置された粘性材料出口ポートとをさらに備える、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0079】
実施例28は、粘性材料送達デバイスが、複数のノズルをさらに備える、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0080】
実施例29は、複数のノズルの各々が、ハウジングの正面部に向けられている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0081】
実施例30は、破片除去ブラシをさらに備える、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0082】
実施例31は、破片除去ブラシが、静的ブラシまたは可動ブラシである、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0083】
実施例32は、可動ブラシが、回転ブラシ、発振ブラシ、または振動ブラシを含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0084】
実施例33は、複数のシールが、頂部の正面部縁に取り付けられた頂部シール、底部の正面部縁に取り付けられた底部シール、第1の側部の正面部縁に取り付けられた第1の側部シール、および第2の側部の正面部縁に取り付けられた第2の側部シールを含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0085】
実施例34は、複数のシールの各シールが第1の位置にあるとき、各シールは、表面に実質的に平行な角度と実質的に垂直な角度との間にある、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0086】
実施例35は、複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスが、複数のシールの各シールを第2の位置に移動させるのに十分な速度でガスを供給するように構成されている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0087】
実施例36は、複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスが、複数のシールの各シールが第2の位置にあるとき、粘性材料がギャップを通過するのを防ぐのに十分な速度でガスを供給するように構成されている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0088】
実施例37は、供給されるガスが存在しないとき、複数のシールの各シールは第1の位置にあり、粘性材料は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールの上を流れ、ハウジング内に流入し、ハウジングを通り、排出部内に流入することができる、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0089】
実施例38は、収集デバイスをさらに備え、収集デバイスは、排出部の出口に配置されている、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0090】
実施例39は、収集デバイスが、チャネル、真空バー、またはシンクである、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0091】
実施例40は、複数のシールの各シールが、可撓性シールである、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0092】
実施例41は、可撓性シールが、ポリマーシール、ポリシリコンシール、または布シールを含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0093】
実施例42は、複数のシールの各シールが、剛性である、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0094】
実施例43は、複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスが、強制ガス送達デバイスである、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0095】
実施例44は、強制ガス送達デバイスが、エアナイフである、いずれかの先行または後続の実施例に記載のシステムである。
【0096】
実施例45は、いずれかの先行または後続の実施例のいずれかに記載のシステムを使用して、少なくとも1つの表面に適用された粘性材料を封じ込める方法であって、ハウジングを少なくとも1つの表面に隣接して移動させることと、粘性材料を少なくとも1つの表面に送達することと、複数のガス送達デバイスから複数のシールの各シールの接触縁に向かってガスを送達して、複数のシールの各シールを、複数のシールの各シールの接触縁が少なくとも1つの表面からギャップだけ離間される第2の位置に移動させることと、を含み、ガスの速度は、少なくとも1つの表面上の粘性材料がギャップを通過するのを防ぐのに十分である、方法である。
【0097】
実施例46は、ハウジングを少なくとも1つの表面に隣接して移動させることが、複数のシールの各シールを第1の位置に移動させて、少なくとも1つの表面に接触させることを含み、複数のシールの各シールは可撓性シールである、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法。
【0098】
実施例47は、ハウジングを少なくとも1つの表面に隣接して移動させることが、複数のシールの各シールを第1の位置に移動させて、少なくとも1つの表面に接触させることを含み、複数のシールの各シールは剛性シールである、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法である。
【0099】
実施例48は、複数のシールを第1の位置に移動させて少なくとも1つの表面に接触させることが、複数のシールの各シールを少なくとも1つの表面に向かって付勢することをさらに含む、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法である。
【0100】
実施例49は、複数のガス送達デバイスによりガスを送達することが、複数の強制ガス送達システムによって実行される、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法である。
【0101】
実施例50は、複数の強制ガス送達デバイスによりガスを送達することが、複数のエアナイフによって実行される、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法である。
【0102】
実施例51は、ガスを送達することが、複数のシールの各シールが第2の位置に移動するのを促す、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法である。
【0103】
実施例52は、少なくとも1つの表面から粘性材料を除去することをさらに含み、表面は移動表面であり、移動表面は、複数のシールのうちの少なくとも1つのシールに向かって粘性材料を運搬する、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法である。
【0104】
実施例53は、ガスを送達して粘性材料が各ギャップを通過するのを防ぐことにより、粘性材料が複数のシールの各シールのうちの少なくとも1つの上を流れてハウジング内に流入することを可能にする、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法である。
【0105】
実施例54は、複数のガス送達デバイスの各ガス送達デバイスを停止して、複数のシールの各シールを第1の位置に移動させることをさらに含み、第1の位置では、粘性材料がハウジングの底部のシール上を流れてハウジング内に流入することを許容する、いずれかの先行または後続の実施例に記載の方法である。
【0106】
実施例55は、粘性材料が、ハウジングを通って排出部に流入し、排出部は、チャネル、真空バー、またはシンクである収集デバイスをさらに備える、いずれかの先行の実施例に記載の方法である。
【0107】
図示した実施形態を含む実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的でのみ提示されており、網羅的であることまたは開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。その多数の修正、適合、および使用は、当業者には明らかである。