(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837627
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】丸太七輪
(51)【国際特許分類】
F24B 1/18 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
F24B1/18 E
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-16174(P2017-16174)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-115846(P2018-115846A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】518104186
【氏名又は名称】公立大学法人長野大学
(72)【発明者】
【氏名】森本 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 和典
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−001417(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0126452(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0247455(US,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02808665(FR,A1)
【文献】
登録実用新案第3032807(JP,U)
【文献】
特開2015−021036(JP,A)
【文献】
特開2002−003868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24B1/00,1/18
F23B20/00,99/00
C10L5/44,11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野外での調理や暖房、照明に使用する丸太七輪において、丸太上部を凹状に形成して設けられる凹部と、該凹部よりも下側の丸太側面から前記凹部が連通するように貫通された空気孔を備え、前記空気孔が、前記側面から前記凹部に向かって斜め上方向へ貫通するように形状されていることを特徴とする丸太七輪。
【請求項2】
前記凹部は半球形状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の丸太七輪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野外でのキャンプや災害時の調理や暖房、照明に使用する丸太七輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全国各地の山林保全を目的として森林資源の間伐や間伐材利用が求められている。ところが、それら全部が利用されることはなく、カットされた残りの原木の未利用部分は、山林に放置された状態にある。一方で、従来の電気やガスなどは災害時に供給停止するリスクがあり、食料や暖房などの熱源損失に直結し防災上非常に大きな懸念事項となっている。このような課題に対して、木材を災害時、熱源確保のための備蓄用品として丸太コンロが注目されている。これまで、丸太を外筒部材と芯部材とに分け、芯部材に複数の鉛直方向の貫通孔を設けた木製コンロ(下記特許文献1参照)が開発されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−40633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明と類似している既存の技術(上記特許文献1)は、芯部材をホールソーなどで抜き取る工程が必要であり、加工場への運搬や別途電動ノコギリやドリル等の準備が求められる。しかし、本発明は、伐採作業で使用されるチェーンソーひとつで作製が可能で、現場で製造(玉切り)した材をその場で加工するため、余分な運搬工程が不要である。
【0005】
本発明は間伐材等を原料としているが、特に松くい虫被害木をそれとした場合、水分率が若干低い上に松ヤニも十分含まれているため、火力も強く、熱源としての役割を十分発揮する。マツの松くい虫被害は日本各地で確認され、適宜対処が施されているものの、除伐後の利用が確立されていない。本発明により、松くい虫被害木の利用が促進され、日本の里山の30%を占めるアカマツ林の再生に少なからず貢献する。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題に十分応えられるものであり、間伐材や枯損木等を原料に使用し、地震等の災害発生時に着火時に必要となる少量の燃料で利用できる。丸太七輪本体に着火すれば、その後は自燃し続ける。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る丸太七輪は、野外での調理や暖房、照明に使用する丸太七輪において、丸太上部を半球形の凹状に形成して設けられる凹部と、該凹部よりも下側の丸太側面から前記凹部が
、前記側面から前記凹部に向かって斜め上方向へ貫通するように形状されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、従来の木製コンロ(上記特許文献1)のような鉛直方向ではなく、斜め上方向に向かう空気孔を形成しているため、空気が下部から流れ込んできて上昇気流を自然的に発生させ、燃焼を補助する効果が発生する。
【0009】
上部がくぼんでいるため、着火剤や炭等を配置することができ、上記の効果から燃焼が促進される。
【0010】
空気孔を複数(例えば4方向)設けることにより、風向きを気にせずに設置できるため、災害時やレジャーで利用する際は、基本的には動かす必要はない。また、空気孔を塞ぐことによって火力を調節することも可能である。
【0011】
使用後の消火の際、丸太を上下反対に置き、丸太全体ならびに空気孔に水を掛けることで容易に鎮火させることができる。レジャー等で炭を使用した後、水を掛けて鎮火させることが多いが、その際、通常多量の灰が舞うことがある。既存の木製コンロにおいても上部と下部が貫通しているため掛水による消火の際は大気中に多量の灰が舞ってしまう。しかし、本発明は、上下反対に設置することで空気孔のみが大気に接するため、消火時に舞う灰の量が既存の七輪やレジャー用コンロなどよりも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の一実施形態に係る丸太七輪の斜視図(
図1の内部可視化)
【
図3】本発明の一実施形態に係る丸太七輪の平面図(
図1の平面図)
【
図4】本発明の一実施形態に係る丸太七輪の平面図(
図3の内部可視化)
【
図5】本発明の一実施形態に係る丸太七輪の斜視図(
図1に対して通気口の角度が異なる)
【
図6】本発明の一実施形態に係る丸太七輪の斜視図(
図5の内部可視化)
【
図7】本発明の一実施形態に係る丸太七輪の平面図(
図5の平面図)
【
図8】本発明の一実施形態に係る丸太七輪の平面図(
図7の内部可視化)
【符号の説明】
【0013】
1 丸太七輪
2 丸太
3 上部凹部
4 側面下部の通気口
5 空気孔
6 上部凹部の通気口
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。ここに、
図1は本発明の一実施形態に係る丸太七輪の斜視図、
図2は
図1の内部を可視化した図、
図3は本発明の一実施形態に係る丸太七輪の平面図、
図4は
図3の内部を可視化した図である。
図5〜8は
図1〜4の通気口4の形状を鉛直縦方向のした図である。
【0015】
各図において、この実施形態に係る丸太七輪1は、例えばアカマツの丸太2を使用して製作され、使用するアカマツの丸太2は、外径が20センチ以上30センチ以下、好ましくは20センチ程度であり、高さが30センチ以上50センチ以下、好ましくは30センチ以上40センチ以下のものが望ましい。外径、高さともに大きくなるとその分重量が大きくなり運搬が困難となってしまう。
【0016】
上部の凹部3は、着火場所となるため、ある程度の深さが必要で、5cm程度の深さが望ましい。浅すぎると着火時に上部からの風に煽られやすく、深すぎると着火後の燃焼時間(火持ち時間)が短くなってしまう。
【0017】
側面下部からの通気口4の位置は、地面から5センチ程度の高さが望ましい。通気口4の位置が高いと燃焼時間が短くなり、逆に低すぎると土埃が入りやすくなるためである。さらに、空気孔5が形成されるように通気口4から凹部3に向かって斜め上方向に連通させ、通気口6を形成する。風は常に流動的(東西南北ランダム)に吹くため、空気孔は4カ所(円周等分位置に)設置するのが望ましい。
【0018】
また、凹部3ならびに空気孔5はチェーンソーの先端を利用し、凹部3は半球形状に削り彫り、空気孔は通気口4から凹部3へ向かって斜めに切り込むことが望ましい。
【0019】
また、
図5〜8のように通気口4が地面に対して鉛直縦方向の形状でも本発明の効果を発揮する。