(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水槽内の一部の領域の周囲に配置された、複数の前記水生生物誘導装置の各々の前記電極に対して電力を印加することにより、前記水槽内の一部の領域に、前記水生生物を当該領域の外部へ誘導するための電界を形成する制御手段
をさらに備えることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の水生生物誘導システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、
図1〜
図7を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0010】
(水生生物誘導装置100の概略構成)
初めに、
図1を参照して、水生生物誘導装置100の概略構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る水生生物誘導装置100の外観斜視図である。
図1(a)は、水生生物誘導装置100の前側(第1の面102A側)の外観斜視図である。
図1(b)は、水生生物誘導装置100の後ろ側(第2の面102B側)の外観斜視図である。
図2は、
図1(a)に示す水生生物誘導装置100のA−A断面図である。
【0011】
図1および
図2に示す水生生物誘導装置100は、水生生物が収容される任意の水槽20内に設置することが可能な装置である。水生生物誘導装置100は、水槽20内の一部の領域に電界を形成することにより、水槽20内に収容されている水生生物30を、水槽20内の他の領域へ誘導することが可能な装置である。なお、
図1および
図2では、水生生物誘導装置100が設置される水槽20の底面に対して平行な方向を、X軸方向およびY軸方向とし、水生生物誘導装置100が設置される水槽20の底面に対して垂直な方向を、Z軸方向としている。
【0012】
図1および
図2に示すように、水生生物誘導装置100は、ケース102および電極104を備えている。
【0013】
ケース102は、水生生物誘導装置100の外形をなす、容器状の部材である。ケース102は、電極104が収容される。ケース102としては、例えば、樹脂等の絶縁素材を用いることができる。本実施形態では、ケース102は、比較的薄型の直方体形状をなしている。すなわち、ケース102は、前方から平面視したときに矩形状をなしているが、これに限らない。例えば、ケース102は、前方から平面視したときに円形状、その他の多角形状等をなすものであってもよい。また、
図2に示すように、ケース102は、中空構造を有しているが、これに限らず、中空構造を有さないものであってもよい。
【0014】
図1(a)に示すように、ケース102は、その前側に第1の面102Aを有している。また、
図1(b)に示すように、ケース102は、その後ろ側に第2の面102Bを有している。
【0015】
第1の面102Aは、水槽20(
図3参照)の内側を向く面である。第1の面102Aは、電極104を露出させる開口部103と、電極104への外部からの接触を防ぐ防護部105とを有している。
図1に(a)に示す例では、第1の面102Aは、矩形状の開口部103を有しており、当該開口部103内には、電極104への接触を防止するための防護部105が設けられている。
図1に(a)に示す例では、防護部105は、2本の縦枠105aと3本の横枠105bとが、互いに直交することによって格子状をなしている。開口部103は、防護部105によって、複数(4×3列)の開口部103に分割されている。
図1(a)に示す例では、複数の開口部103の各々は、いずれも矩形状をなしているが、これに限らない。例えば複数の開口部103の各々は、円形状、その他の多角形状等をなすものであってもよい。なお、複数の開口部103の各々は、水生生物30が電極104に触れない程度のサイズを有することが好ましく、作業員の指が電極104に触れない程度のサイズを有することがより好ましい。
【0016】
第2の面102Bは、水槽20の外周壁部22の内周面と対向する面である。第2の面102Bは、全体的に絶縁素材によって覆われている。すなわち、第2の面102Bは、電極104を露出させる開口部を有していない。
【0017】
電極104は、一方の面が第1の面102A側を向き、他方の面が第2の面102B側を向くように、ケース102内に収容される。電極104は、水槽20内の水生生物30を誘導するための電力が印加される。電極104としては、例えば、銅、銅タングステン、銀タングステン、真鍮、アルミ等の、導電性素材を用いることができる。また、
図1および
図2に示す例では、電極104は、平板状をなしており、且つ、前方から平面視したときに矩形状をなしている。これに限らず、電極104は、その他の形状(例えば、棒状、フィルム状等)をなすものであってもよい。また、ケース102内には、複数の電極104が設けられてもよい。
【0018】
(水生生物誘導システム10の構成)
図3は、本発明の第1実施形態に係る水生生物誘導システム10の構成を示す図である。
図3に示すように、水生生物誘導システム10は、複数の水生生物誘導装置100、水槽20、電源140、制御装置150、フットスイッチ160、およびインジケータランプ170を備えて構成されている。
【0019】
水槽20は、外周壁部22および底部24を有して構成されており、上方が開口した容器状をなしている。水槽20内には、水40と、水生生物30とが収容される。水槽20は、例えば、金属素材(例えば、ステンレス)が用いられる。但し、これに限らず、水槽20は、その他の導電性素材(例えば、アルミ、銅等)を用いたものであってもよく、その他の絶縁性素材(例えば、ガラス、FRP等)を用いたものであってもよい。また、
図3に示す例では、水槽20は、上方から平面視したときに楕円形状をなしているが、これに限らない。例えば、水槽20は、上方から平面視したときに、矩形状、円形状、その他の多角形状等をなすものであってもよい。
【0020】
複数の水生生物誘導装置100は、水槽20の外周壁部22の内周面に沿って、当該内周面に近接して設置される。
図3に示す例では、複数(14個)の水生生物誘導装置100が、水槽20内の所定の一部の領域20Aを取り囲むように、水槽20の外周壁部22の内周面の一部の範囲に亘って、設置されている。これに限らず、複数の水生生物誘導装置100は、水槽20内の全領域を取り囲むように、水槽20の外周壁部22の内周面の全周に亘って、設置されてもよい。
【0021】
電源140は、制御装置150に対して電力(直流電力)を供給する。本実施形態では、電源140として、交流電源(例えば、商用電源等)を用いている。これに限らず、電源140として、直流電源(例えば、バッテリ等)を用いてもよい。
【0022】
制御装置150は、「制御手段」の一例である。制御装置150は、配線152を介して、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に電気的に接続されている。制御装置150は、電源140から供給された電力を用いて、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力を印加することができる。例えば、制御装置150は、電源140から供給された第1の電圧(例えば、100V)の交流電力を、当該制御装置150が備えるAC−ACコンバータにより、出力用の第2の電圧(例えば、30V)の交流電力へ変換する。そして、制御装置150は、第2の電圧の交流電力を、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に印加する。
【0023】
制御装置150は、複数の水生生物誘導装置100を、互いに対向する2つの水生生物誘導装置100を一つの組み合わせとして、複数の組み合わせに分類する。そして、制御装置150は、各組み合わせに対し、一方の水生生物誘導装置100と、他方の水生生物誘導装置100とで、互いに電圧の極性が異なる交流電力を印加する。例えば、制御装置150は、一方の水生生物誘導装置100に対し、+極性の電圧の交流電力を印加するとき、他方の水生生物誘導装置100に対し、−極性の電圧の交流電力を印加する。反対に、制御装置150は、一方の水生生物誘導装置100に対し、−極性の電圧の交流電力を印加するとき、他方の水生生物誘導装置100に対し、+極性の電圧の交流電力を印加する。これにより、制御装置150は、水中内で、一方の水生生物誘導装置100と他方の水生生物誘導装置100との間に、電気を伝搬させることにより、一方の水生生物誘導装置100と他方の水生生物誘導装置100との間の領域内に、電界を形成することができる。
【0024】
ここで、制御装置150は、特定の水生生物30を防除するのに好適な電力設定値(例えば、電圧、電流、周波数、デューティ比等)に基づく電力を、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して印加することができる。
【0025】
例えば、制御装置150は、誘導対象とする水生生物30のサイズが比較的小さい場合には、比較的小さい電圧値を設定することができる。また、例えば、制御装置150は、誘導対象とする水生生物30のサイズが比較的大きい場合には、比較的大きい電圧値を設定することができる。また、例えば、制御装置150は、誘導対象とする水生生物30にとって感受性の高い周波数およびデューティ比を、設定することができる。
【0026】
特に、制御装置150は、水生生物30に電気的刺激を与えることを可能としつつ、生物が死滅および損傷するに至らない電圧値(例えば、30V以下)を設定するようにしている。これにより、本実施形態の水生生物誘導装置100は、水槽20内において、水生生物を死滅および損傷させることなく、電気的刺激によって所定の方向へ誘導することができる。よって、本実施形態の水生生物誘導装置100は、水生生物を、生きたまま誘導することが可能である。
【0027】
なお、制御装置150は、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に印加する電力の電力設定(例えば、電圧、電流、周波数、デューティ比等)を、変更可能であってもよい。この場合、制御装置150は、各電極104に印加する電力の電力設定を、誘導対象とする水生生物30に応じて変更することにより、より多様な種類の水生生物30を誘導対象とすることが可能となる。また、この場合、制御装置150は、水槽20のサイズや、水生生物誘導装置100の配置間隔等、電界強度の各種変動要因に応じて、電界強度が好適なものとなるように、各電極104に印加する電力の電力設定を変更することもできる。
【0028】
また、制御装置150は、複数の水生生物誘導装置100のうち、電極104に電力を印加する水生生物誘導装置100を、選択的に切り換えることが可能であってもよい。この場合、制御装置150は、電極104に電力を印加する水生生物誘導装置100を選択的に切り換えることにより、水槽20内における電界を形成する領域を変更することができる。
【0029】
例えば、制御装置150の設定変更は、制御装置150の本体に設けられた変更手段(例えば、ディップスイッチ等)によって行うようにしてもよい。また、例えば、制御装置150の設定変更は、制御装置150と接続可能な外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等)から行うようにしてもよい。
【0030】
なお、各電極104に印加される交流電力は、矩形波によるものであってもよく、正弦波によるものであってもよい。また、各電極104に印加される交流電力の周波数は、所定の周波数(例えば、1KHz)を中心周波数として、時系列に変化するものであってもよい。これにより、水生生物誘導装置100は、電力に対する感受性のピーク周波数が様々である多様な水生生物30を、各電極104が形成する電界によって誘導することができる。なお、この場合、各電極104に印加される交流電力の周波数は、予め定められた複数の周波数に順に切り換えられてもよく、ランダムに切り換えられてもよい。
【0031】
フットスイッチ160は、制御装置150に電気的に接続されている。フットスイッチ160は、「手動スイッチ」の一例であり、制御装置150によって複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に印加される電力のオンおよびオフを切り替える。例えば、フットスイッチ160が押下されていないとき、制御装置150は、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力を印加しない。一方、フットスイッチ160が押下されたとき、制御装置150は、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力を印加する。
【0032】
インジケータランプ170は、水生生物誘導システム10の稼働状態に応じて点灯する。例えば、インジケータランプ170は、緑色のランプ、黄色のランプ、および赤色のランプを有して構成される。この場合、例えば、水生生物誘導システム10の電源がONになっており、且つ、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に印加されていない状態のとき、緑色のランプが点灯する。また、例えば、インジケータランプ170は、水生生物誘導システム10の電源がONになっており、且つ、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に印加されている状態のとき、緑色のランプおよび黄色のランプが点灯する。また、例えば、インジケータランプ170は、水生生物誘導システム10に故障が生じている状態のとき、赤色のランプが点灯する。
【0033】
(水生生物誘導装置100の設置例)
図4は、本発明の第1実施形態に係る水生生物誘導装置100の設置例を示す図である。
【0034】
図4(a)は、
図3に示す水槽20のB−B断面の一部を示す図である。
図4(a)に示すように、複数の水生生物誘導装置100は、水槽20内且つ水40の水中において、水槽20の外周壁部22の内周面に沿って、水平方向に並べて設置される。複数の水生生物誘導装置100は、少なくとも電極104の全体が水40の水中に水没するように、適切な高さ位置に配置される。
【0035】
ここで、複数の水生生物誘導装置100の各々は、電極104が露出している、ケース102の第1の面102Aが、水槽20の内側を向くように、設置される。すなわち、複数の水生生物誘導装置100の各々は、電極104が覆われている、ケース102の第2の面102Bが、水槽20の外周壁部22の内周面と対向するように、設置される。
【0036】
これにより、水槽20に導電性素材(例えば、ステンレス)が用いられている場合であっても、複数の水生生物誘導装置100の各々において、電極104から伝搬される電気が、水槽20の外周壁部22に伝わってしまうことを防止することができる。また、複数の水生生物誘導装置100の各々において、第1の面102Aに設けられている防護部105により、電極104への外部からの接触(水生生物30の接触、作業員の接触等)を防ぐことができる。
【0037】
図4(b)は、
図3に示す水槽20のC−C断面を示す図である。
図4(b)に示すように、各水生生物誘導装置100は、ケース102の第2の面102Bにおいて、任意の取付手段106(例えば、磁石、吸盤、接着剤、両面テープ等)により、外周壁部22の内周面に取り付けられる。
【0038】
(水生生物誘導装置100の設置例)
図5は、本発明の第1実施形態に係る水生生物誘導装置100による誘導方法の一例を示す図である。
【0039】
図5(a)は、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力が印加されていない状態を表している。例えば、水槽20内の所定の一部の領域20Aに滞留している水生生物30の数が比較的少ない場合には、作業者は、フットスイッチ160を押下しない。このため、制御装置150は、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力を印加しない。よって、
図5(a)に示すように、領域20Aに電界が形成されず、水生生物30は、領域20Aに滞留することができる。
【0040】
一方、
図5(b)は、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力が印加されている状態を表している。例えば、水槽20内の所定の一部の領域20Aに滞留している水生生物30の数が比較的多い場合には、作業者は、フットスイッチ160を押下する。これにより、制御装置150は、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力を印加する。このとき、制御装置150は、水生生物誘導装置100の各組み合わせ(互いに対向する2つの水生生物誘導装置100の組み合わせ)に対し、一方の水生生物誘導装置100と、他方の水生生物誘導装置100とで、互いに電圧の極性が異なる交流電力を印加する。その結果、
図5(b)に示すように、領域20Aに複数の電界e(水生生物誘導装置100の組み合わせ毎の電界e)が形成され、領域20Aに滞留していた水生生物30は、電界eによる電気的刺激を受けて、領域20Aの外部へ退避する(すなわち、誘導される)こととなる。
【0041】
(水生生物誘導装置100の変形例)
図6は、本発明の第1実施形態に係る水生生物誘導装置100の変形例を示す図である。
図6(a)は、水生生物誘導装置100'の前側(第1の面112A側)の外観斜視図である。
図6(b)は、水生生物誘導装置100'の後ろ側(第2の面112B側)の外観斜視図である。
図7は、
図6(a)に示す水生生物誘導装置100'のD−D断面図である。
【0042】
図6および
図7に示す水生生物誘導装置100'は、ケース102の代わりにケース112を備える点で、
図1および
図2に示す水生生物誘導装置100と異なる。
【0043】
ケース112は、水生生物誘導装置100'の外形をなす、容器状の部材である。ケース112は、電極104が収容される。ケース112としては、例えば、樹脂等の絶縁素材を用いることができる。本実施形態では、ケース112は、縦長の円柱形状をなしている。すなわち、ケース112は、前方から平面視したときに矩形状をなしており、且つ、上方から平面視したときに円形状をなしている。また、
図7に示すように、ケース112は、中空構造を有しているが、これに限らず、中空構造を有さないものであってもよい。
【0044】
図6(a)に示すように、ケース112は、その前側に第1の面112Aを有している。また、
図6(b)に示すように、ケース112は、その後ろ側に第2の面112Bを有している。ここでは、
図7に示すように、上方から平面したときに、ケース112を前後に分割する線を中心線CLとし、中心線CLよりも前側の面を第1の面112Aとし、中心線CLよりも後ろ側の面を第2の面112Bとする。
【0045】
第1の面112Aは、水槽20(
図3参照)の内側を向く面である。第1の面112Aは、電極104を露出させる開口部113と、電極104への外部からの接触を防ぐ防護部115とを有している。
図6に(a)に示す例では、第1の面112Aは、概ね矩形状の開口部113を有しており、当該開口部113内には、防護部115として、互いに直交する、2本の縦枠115aと、3本の横枠115bとを有している。開口部113は、防護部115によって、複数(4×3列)の開口部113に分割されている。複数の開口部113の各々は、いずれも矩形状をなしているが、これに限らない。例えば複数の開口部113の各々は、円形状、その他の多角形状等をなすものであってもよい。第2の面112Bは、水槽20の外周壁部22の内周面と対向する面である。第2の面112Bは、全体的に絶縁素材によって覆われている。すなわち、第2の面112Bは、電極104を露出させる開口部を有していない。
【0046】
電極104は、一方の面が第1の面112A側に向き、他方の面が第2の面112B側を向くように、ケース112内に収容される。電極104は、水槽20内の水生生物30を誘導するための電力が印加される。電極104としては、例えば、銅、銅タングステン、銀タングステン、真鍮、アルミ等の、導電性素材を用いることができる。また、
図6および
図7に示す例では、電極104は、平板状をなしており、且つ、前方から平面視したときに矩形状をなしている。これに限らず、電極104は、その他の形状(例えば、棒状、フィルム状等)をなすものであってもよい。また、電極104は、ケース112の内周面(第1の面112Aの裏側の部分)に沿って湾曲した形状をなすものであってもよい。また、ケース112内には、複数の電極104が設けられてもよい。
【0047】
〔第2実施形態〕
次に、
図8〜
図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、水生生物誘導装置100が複数連結された構成の一例について説明する。
【0048】
(水生生物誘導ユニット12の構成)
図8は、本発明の第2実施形態に係る水生生物誘導ユニット12の構成を示す図である。
図8に示す水生生物誘導ユニット12は、第1実施形態で説明した水生生物誘導装置100が複数連結されているものである。具体的には、水生生物誘導ユニット12は、複数の水生生物誘導装置100が水平方向に並べて配置されており、且つ、互いに隣接する2つの水生生物誘導装置100が、その間に設けられた連結部108によって互いに連結されている。そして、水生生物誘導ユニット12は、各連結部108において、折曲可能である。
【0049】
水生生物誘導ユニット12を構成する複数の水生生物誘導装置100の各々は、第1実施形態と同様に、ケース102の内部に電極104を有しており、当該電極104は、制御装置150に電気的に接続される。
【0050】
図8に示す例では、連結部108は、当該連結部108によって連結される2つのケース102と同一の素材により、これら2つのケース102と一体的に形成されている。さらに、連結部108は、2つのケース102の間の中間部分において、肉厚が薄くなっており、これにより、当該中間部分において、折曲可能となっている。
【0051】
なお、連結部108の構成は、
図8に示すものに限らず、少なくとも2つの水生生物誘導装置100を連結および折曲可能とする構成であれば、如何なる構成であってもよい。例えば、連結部108として軸部を設け、当該軸部によって、2つの水生生物誘導装置100を連結および折曲可能としてもよい。
【0052】
(水生生物誘導システム10'の構成)
図9は、本発明の第2実施形態に係る水生生物誘導システム10'の構成を示す図である。
図9に示す水生生物誘導システム10'は、複数の水生生物誘導装置100の代わりに、
図8で説明した水生生物誘導ユニット12を備える点で、第1実施形態の水生生物誘導システム10(
図3参照)と異なる。
【0053】
図9に示すように、水生生物誘導ユニット12は、水槽20の外周壁部22の内周面に沿って、当該内周面に近接して設置される。
図9に示す例では、水生生物誘導ユニット12は、複数(18個)の水生生物誘導装置100が連結部108によって連結されて構成されており、水槽20内の所定の一部の領域20Aを取り囲むように、水槽20の外周壁部22の内周面の一部の範囲に亘って、設置されている。これに限らず、水生生物誘導ユニット12は、水槽20内の全領域を取り囲むように、水槽20の外周壁部22の内周面の全周に亘って、設置されてもよい。なお、水生生物誘導ユニット12は、各連結部108が折曲可能である。このため、水生生物誘導ユニット12は、
図9に示すように、湾曲した外周壁部22の内周面に沿って、設置が可能である。
【0054】
制御装置150は、配線152を介して、水生生物誘導ユニット12を構成する複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に電気的に接続されている。制御装置150は、電源140から供給された電力を用いて、水生生物誘導ユニット12を構成する複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力を印加することができる。
【0055】
(水生生物誘導ユニット12の設置例)
図10は、本発明の第2実施形態に係る水生生物誘導ユニット12による誘導方法の一例を示す図である。
図10(a)は、水生生物誘導ユニット12を構成する複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力が印加されていない状態を表している。
図10(b)は、水生生物誘導ユニット12を構成する複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力が印加されている状態を表している。
【0056】
この第2実施形態においても、例えば、水槽20内の所定の一部の領域20Aに滞留している水生生物30の数が比較的少ない場合には、作業者は、フットスイッチ160を押下しない。このため、制御装置150は、水生生物誘導ユニット12を構成する複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力を印加しない。よって、
図10(a)に示すように、領域20Aに電界が形成されず、水生生物30は、領域20Aに滞留することができる。
【0057】
一方、水槽20内の所定の一部の領域20Aに滞留している水生生物30の数が比較的多い場合には、作業者は、フットスイッチ160を押下する。これにより、制御装置150は、水生生物誘導ユニット12を構成する複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、電力を印加する。このとき、制御装置150は、水生生物誘導装置100の各組み合わせ(互いに対向する2つの水生生物誘導装置100の組み合わせ)に対し、一方の水生生物誘導装置100と、他方の水生生物誘導装置100とで、互いに異なる極性の交流電力を印加する。その結果、
図10(b)に示すように、領域20Aに複数の電界e(水生生物誘導装置100の組み合わせ毎の電界e)が形成され、領域20Aに滞留していた水生生物30は、電界eによる電気的刺激を受けて、領域20Aの外部へ退避する(すなわち、誘導される)こととなる。
【0058】
以上説明したように、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'は、水槽20内の一部の領域20Aの周囲に配置された、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して電力を印加することにより、水槽20内の一部の領域20Aに、水生生物30を当該領域20Aの外部へ誘導するための電界を形成することができる。したがって、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'によれば、水槽20内の水生生物30を所定の方向へ誘導することができる。
【0059】
特に、第1,第2実施形態の水生生物誘導装置100は、水槽20の内側を向く第1の面102Aに、電極104を露出させる開口部103と、電極104への外部からの接触を防ぐ防護部105とを有している。これにより、第1,第2実施形態の水生生物誘導装置100は、電極104から伝搬される電気が、水中内に伝わり易くすることができるとともに、電極104への外部からの接触(水生生物30の接触、作業員の接触等)を防ぐことができる。
【0060】
また、第1,第2実施形態の水生生物誘導装置100は、水槽20の外周壁部22の内周面と対向する第2の面102Bが、絶縁素材によって覆われている。これにより、第1,第2実施形態の水生生物誘導装置100は、水槽20に導電性素材(例えば、ステンレス)が用いられている場合であっても、電極104から伝搬される電気が、水槽20の外周壁部22に伝わってしまうことを防止することができる。
【0061】
また、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'は、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に対して、水生生物30の種類に応じた電力設定値に基づく電力を印加することができる。これにより、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'は、水槽20内において、特定の種類の水生生物30を所定の方向へ誘導することができる。
【0062】
特に、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'は、水生生物30の種類に応じた電力設定値に、水生生物30に電気的刺激を与えることを可能としつつ、水生生物30が死滅および損傷するに至らない電圧値(例えば、30V以下)を含めるようにしている。これにより、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'は、水槽20内において、特定の種類の水生生物30を死滅および損傷させることなく、電気的刺激によって所定の方向へ誘導することができる。
【0063】
また、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'は、フットスイッチ160により、複数の水生生物誘導装置100の各々の電極104に印加される電力のオンおよびオフを切り替えることができる。これにより、例えば、作業員は、必要なときだけ、フットスイッチ160を押下することにより、水槽20内の一部の領域20Aに滞留している水生生物30を、当該領域20Aの外部へ誘導することができる。
【0064】
なお、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'は、例えば、魚の養殖システムにおいて、魚をその重量によって自動的に選別する選別装置と組み合わせて利用することが可能である。例えば、選別装置によって選別された魚が、水槽20内の所定の一部の領域20Aに排出されるようにする。また、水槽20内における領域20Aの外部の他の領域を、魚を捕獲するための捕獲エリアに設定する。そして、例えば、領域20A内に滞留している魚の数が比較的多くなったとき、作業者が、フットスイッチ160を押下する。これにより、領域20Aに複数の電界eが形成され、領域20Aに滞留していた複数の魚は、電界eによる電気的刺激を受けて、領域20Aから捕獲エリアへ退避する(すなわち、誘導される)。これにより、作業者は、捕獲エリアにおいて、当該捕獲エリアに誘導されてきた複数の魚を、容易に捕獲することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0066】
例えば、ケース102および電極104の構成(例えば、形状、サイズ、数、配列、材質等)は、第1,第2実施形態で説明した実施形態で説明および図示したものに限らない。
【0067】
また、第1,第2実施形態では、ケース102内に1つの電極104を収容するようにしているが、これに限らず、ケース102内に複数の電極104を収容するようにしてもよい。
【0068】
また、第1,第2実施形態の水生生物誘導装置100において、ケース102に対して、電極104が着脱自在に収容される構成としてもよい。これにより、例えば、電極104の交換を容易に行うことが可能となる。
【0069】
また、第1,第2実施形態の水生生物誘導装置100において、ケース102自体が、湾曲または折曲可能であってもよい。これにより、例えば、設置面が湾曲または折曲している場合であっても、ケース102を、設置面の形状に沿って変形させることが可能となる。
【0070】
また、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'において、水槽20内の複数の領域の各々に対して、複数の水生生物誘導装置100を設置することにより、当該複数の領域の各々に対して、電界を形成することができるように構成してもよい。この場合、領域毎にフットスイッチ160を設けて、領域毎に個別に電界を形成できるようにしてもよく、複数の領域で共通のフットスイッチ160を設けて、複数の領域に同時に電界を形成できるようにしてもよい。
【0071】
また、第1,第2実施形態の水生生物誘導システム10,10'において、複数の水生生物誘導装置100(複数のケース102)を、水槽20の外周壁部22に一体的に形成するようにしてもよい。すなわち、水槽20の外周壁部22内に、複数の電極を水平方向に並べて収容し、各電極が、外周壁部22の内周面に形成された開口部から露出するように構成してもよい。