(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837686
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】スライド部材に対する押圧機構および気体封入装置
(51)【国際特許分類】
A61G 10/02 20060101AFI20210222BHJP
F16J 13/22 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
A61G10/02 Z
F16J13/22
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-113452(P2019-113452)
(22)【出願日】2019年6月19日
(65)【公開番号】特開2020-203020(P2020-203020A)
(43)【公開日】2020年12月24日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】397074378
【氏名又は名称】入船テクニカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】川村 修一
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3081479(JP,U)
【文献】
特開2013−121396(JP,A)
【文献】
特開2006−265889(JP,A)
【文献】
特開2012−135599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 10/02
F16J 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド部材と当接し、前記スライド部材のスライド方向からの力を利用して、前記スライド部材のスライド方向に対して垂直方向の力の成分を伴って前記スライド部材を押圧する押圧機構であり、
前記押圧機構は、
回動部材を含み、
前記回動部材は、前記スライド部材がスライドした際に当接する当接部を含み、
前記スライド部材がスライド方向に対して前記当接部に力を作用させると、前記回動部材が回動し、前記スライド部材を押圧し、
前記回動部材が前記スライド部材を押圧する位置と前記回動部材の回動軸との距離は、前記回動部材と前記当接部との接触位置と前記回動部材の回動軸との間の距離よりも短い、押圧機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記スライド部材は、気体封入装置を閉鎖するための扉である押圧機構。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記回動部材は、てこの作用により前記スライド部材を押圧する押圧機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の押圧機構を含む気体封入装置であり、
前記気体封入装置は、人または動物が内部に入ることができる筐体と、
前記筐体に前記人または動物が出入できるように設けられた開口部とを含み、
前記スライド部材が前記開口部を閉鎖するための扉である気体封入装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記気体封入装置に気体を供給するためのポンプを含み、
前記ポンプの出力は、20〜300Wである気体封入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド部材に対する押圧機構および空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気供給装置の扉を閉鎖するための機構として、袋を膨らませて引き戸を壁に押し付けるもの(特許文献1)、空気圧により膨張・収縮するパッキングを設けるもの(特許文献2)、エアシリンダーを使用するもの(特許文献3)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−080719号公報
【特許文献2】特開2009−195344号公報
【特許文献3】特開2013−121396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡易な構成でスライド部材を押圧することができるスライド部材に対する押圧機構および気体封入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の押圧機構は、
スライド部材と当接し、前記スライド部材のスライド方向からの力を利用して、前記スライド部材のスライド方向に対して
垂直方向の力の成分を伴って前記スライド部材を押圧するものである。
【0006】
これによれば、簡易な構成によりスライド部材をスライド方向に対して
垂直方向の力の成分を伴って押圧することができる。
【0007】
本発明においては、
前記スライド部材は、気体封入装置を閉鎖するための扉とすることができる。
【0008】
本発明において、
前記押圧機構は、
回動部材を含み、
前記回動部材は、前記スライド部材がスライドした際に当接する当接部を含み、
前記スライド部材がスライド方向に対して前記当接部に力を作用させると、前記回動部材が回動し、前記スライド部材のスライド方向に対して
垂直方向の力の成分を伴って前記スライド部材を押圧する
ものとすることができる。
【0009】
回動部材により、スライド方向への力をスライド方向に対して
垂直方向への力の成分に変換することができる。
【0010】
本発明において、
前記回動部材が前記スライド部材を押圧する位置と前記回動部材の回動軸との距離は、前記回動部材と前記当接部との接触位置と前記回動部材の回動軸との間の距離よりも短くすることができる。
【0011】
本発明によれば、回動軸を支点として、回動部材と当接部との接触点が力点となり、回動部材がスライド部材を押圧する点が作用点となり、てこの原理にてスライド部材を楽に押圧することができる。
【0012】
本発明において、
本発明の押圧機構を含む気体封入装置であり、
前記気体封入装置は、人または動物が内部に入ることができる筐体と、
前記筐体に前記人または動物が出入できるように設けられた開口部とを含み、
前記スライド部材が前記開口部を閉鎖するための扉であることができる。
【0013】
本発明において、
前記気体封入装置に気体を供給するためのポンプを含み、
前記ポンプの出力は、20〜300Wであることができる。
【0014】
本発明の気体封入装置によれば、このような低出力のポンプも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係る押圧機構を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る押圧機構において、当接部が回動部材に接する前段階を模式的に示す斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る押圧機構において、当接部が回動部材に接する前段階を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係る押圧機構において、当接部が回動部材に接する前段階を模式的に示す説明図である。
【
図5】実施の形態に係る押圧機構において、当接部が回動部材に接し、押圧した段階を模式的に示す斜視図である。
【
図6】実施の形態に係る押圧機構において、当接部が回動部材に接し、押圧した段階を模式的に示す図である。
【
図7】実施の形態に係る押圧機構において、当接部が回動部材に接し、押圧した段階を模式的に示す説明図である。
【
図8】実施の形態に係る押圧機構の押圧原理を説明するための図である。
【
図9】実施の形態に係る押圧機構の押圧原理を説明するための図である。
【
図10】筐体とスライド部材との関係に基づき、実施の形態に係る押圧機構の作用効果を説明するための図である。
【
図11】実施の形態に係る気体封入装置の筐体を模式的に示す図である。
【
図12】実施の形態に係る気体封入装置における押圧機構を模式的に示す図である。
【
図13】スライド部材の当接部と、押圧機構の回動部材との平面的位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
1.押圧機構
以下、
図1〜
図8を参照しながら、実施の形態に係る押圧機構10を説明する。
【0018】
実施の形態に係る押圧機構10は、スライド部材30と当接し、スライド部材30のスライド方向からの力を利用して、スライド部材30のスライド方向に対してスライド部材30を
垂直方向の力の成分を伴って押圧するものである。
【0019】
押圧機構10は、回動部材12を含む。回動部材12は、スライド部材30がスライドした際に当接する当接部12aを含み、スライド部材30がスライド方向に対して当接部12aに力を作用させると、回動部材12が回動し、スライド部材30のスライド方向に対して
垂直方向の力の成分を伴ってスライド部材30を押圧するものである。回動部材12は、スライド部材30を押圧する押圧部12aを含む。
【0020】
スライド部材30は、たとえば、スライドして開閉する開閉扉とすることができ、特に、気体封入装置40を閉鎖するための扉に好適である。スライド部材30は、回動部材12を押し当てる押し当て部32を含む。
【0021】
図7に示すように、回動部材12がスライド部材30を押圧する位置P1と回動部材12の
回動軸P2との距離は、回動部材12と当接部12aとの接触位置P3と回動部材12の
回動軸P2との間の距離よりも短くするとよい。これにより、てこの作用により、押圧力を容易に高めることができる。
【0022】
筐体20には、スライド部材30の歯車が案内されるための案内路が設けられている。案内路には、歯車を回動部材12に誘導するための案内スロープ16が設けられている。このように案内スロープ16を設けることで、案内スロープ16に上がる前に、スライド部材30が筐体20や封止材に当たったり、こすれたりすることを防ぐことでき、スライド部材30をスライドさせやすくすることができる。特に、筐体20に封止材を装着した場合においてもその封止材の寿命も延ばすことができる。
【0023】
本実施の形態に係る押圧機構10によれば、簡易な構成で、スライド部材30を押圧することができる。
【0024】
2.動作
スライド部材30をスライドさせることで、車輪34がスロープ16を上がり、
図2〜
図4に示される位置をとる。さらに、スライド部材30をスライドすると、押し当て部32の押し当て面32aが回動部材12の当接部12aと当接し、回動部材12を回動させる。
図5〜
図8に示すように、回動部材12が回動すると、押出部12bが
回動部材12の回動方向に車輪34を押し出す。これにより、スライド部材30のスライド方向の力を、スライド部材30がスライド方向に対して垂直方向に押し出されるための力
の成分に変換される。つまり、
図9に示すように、回動部材12が回動することで、長さh1だけ押し当て部32が押し出されることになる。
【0025】
3.気体封入装置
気体封入装置40は、
図11および
図12に示すように、筐体20と、筐体20の開口部20aを開閉するスライド扉とを含む。筐体20は、内部に人または動物が入ることができる空間が設けられている。
【0026】
気体封入装置40は、実施の形態に係る押圧機構10を含む。気体封入装置40は、人または動物が内部に出入するための開口部20aを含む。スライド部材30が気体封入装置40の人または動物が出入する開口部20aを閉鎖するための扉であることができる。
【0027】
気体封入装置40において、スライド部材30の押し当て部32は、
図13に示すように、スライド部材30の四隅に設けることができる。押圧機構10の押圧部12aは、スライド扉を閉じたときに、押し当て部32が回動部材12に当接するように設けられていることができる。このようにすることで、スライド部材30からなるスライド扉を均一に持ち上げることができる。
【0028】
気体封入装置40は、気体を供給するためのポンプ50を含む。ポンプ50の出力は、20〜300W、好ましくは40〜200Wとすることができる。気体封入装置40は、必要に応じて、気体を排出する排出部を設けてもよい。
【0029】
気体封入装置40は、大気圧よりも高圧状態で空気を封入する装置として好適である。気体封入装置40に入ることができる動物としては、特に限定されないが、犬、猫、うさぎなどを挙げることができる。
【0030】
4.作用効果
気体封入装置40の使用例の一例を説明する。気体封入装置40は、開口部20aから内部に人または動物が入った後に、スライド扉を閉鎖し、密閉空間を確保し、ポンプ50から気体(たとえば空気)を供給し、その空間内の圧力を上げて、人または動物の体の回復を促すために使用されるものである。
【0031】
このような気体封入装置40において、本願発明者は、次の課題を発見した。
気体封入装置40の内部空間を閉鎖するためには、スライド部材30と筐体20との間の隙間をいかになくすかが重要となる。隙間が大きいと、気体が漏れて、その閉鎖空間の圧力が上昇しない。また、隙間が不安定だと、経年劣化の進行が早く、隙間が広がり、圧力が上がらなくなるなどの問題や、メンテナンス上の問題も発生するという課題がある。
【0032】
本願発明者は、隙間の発生や耐久性が高い気体封入装置40の実現のために、本実施の形態に係る気体封入装置40を見出した。
【0033】
つまり、スライド部材30と筐体20との間に、多少のゆがみがあっても、スライド部材30と筐体20との間にシール部材22を設け、スライド部材30を押圧することで、隙間を埋めることができる。
図10に示すように、押圧機構10がスライド部材30を押し出し(押し上げ)て、スライド部材30と筐体20との隙間をなくすことができる。
【0034】
これにより次の効果を奏することができる。
(1)筐体20やスライド部材30に歪みが生じていても、その隙間の違いをシール部材22で吸収することができ、スライド部材30や筐体20の形状を厳密に対応させる必要はない。このため、加工費用などのコストを安くすることができる。スライド部材30や筐体20をたとえば金属の板金加工品により構成することができる。
【0035】
(2)多少の隙間が生じた場合でも、大きくハイパワーのポンプを使用すれば、漏れる量以上に空気が入るので圧力は上がる。ハイパワーのポンプの問題は、価格が高い、騒音が大きくなる、制御にトラブルが発生した場合カプセル内の圧力が上昇しすぎるので危険になる可能性がある。本実施の形態に係る気体封入装置40によれば、密閉性が高いため、小さいポンプを適用することができる。小さい出力のポンプを適用することができるため、ゆっくり気圧を上げられるため、内部空間に入った人または動物において、耳が痛くなることを抑えることができる。さらに、安全装置が不要か、簡易な安全装置で足りる。
【0036】
(3)簡易な構成であり、構成要素の消耗等により破損も生じにくい。このため、メンテナンスの回数も減らすことができる。
【0037】
(4)気体封入装置に通常適用されるポンプは、400W以上のものが一般的である。このようなポンプを適用する場合に、消費電力量が大きく、電気代の関係からランニングコストが大きい。また、ブレーカーの契約容量も大きなものとする必要があり、ブレーカーの契約容量は、気体封入装置を複数台稼働するような酸素カプセルサービスを行うような業務施設では特に顕著な問題である。さらに、ポンプの出力が大きいと騒音や振動も大きなものになる。
【0038】
しかし、ポンプの出力が20〜300Wのもの、好ましくは40〜200Wであるポンプを適用することで、消費電力を抑えることができ、ランニングコストを安くすることができると共に、騒音や振動も抑えることができる。このようなことから、ポンプの出力が20〜300Wのものを気体封入装置に適用して構成した場合には、その気体封入装置40を家庭においても使用することができる。また、家庭の用途のみではなく、業務用として、本実施の形態に係る気体封入装置40を複数台稼働させても、ブレーカーの契約容量を抑えることができるという利点もある。
【0039】
さらに、ポンプの出力が小さいことで、自動車のシガーソケットから電力をとって気体封入装置40を稼働させることも容易となる。本願発明者は、ポンプの出力が80Wのポンプを用いた気体封入装置40を、車のシガーソケットから電力を取って、稼働させることができることを確認した。
【0040】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 押圧機構
12 回動部材
12a 当接部
12b 押出部
14 回動軸
16 スロープ
20 筐体
22 シール部材
30 スライド部材
32 押し当て部
34 車輪
40 気体封入装置
50 ポンプ