特許第6837690号(P6837690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6837690表面貫通レーダーを用いた乗物位置特定方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837690
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】表面貫通レーダーを用いた乗物位置特定方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20210222BHJP
   G01S 13/89 20060101ALI20210222BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   G01C21/26 A
   G01S13/89
   G08G1/16 C
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-539213(P2019-539213)
(86)(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公表番号】特表2020-507750(P2020-507750A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】US2017064458
(87)【国際公開番号】WO2018140134
(87)【国際公開日】20180802
【審査請求日】2019年9月17日
(31)【優先権主張番号】62/451,313
(32)【優先日】2017年1月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/529,740
(32)【優先日】2017年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】スタンレー,バイロン マッコール
(72)【発明者】
【氏名】コーニック,マシュー タイラー
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0121964(US,A1)
【文献】 特開平02−027286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
G01S 13/89
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の位置を特定する方法において、
第1の周波数を有する第1のレーダー信号を乗物の下の表面下領域に送信するステップと
前記第1のレーダー信号に基づいて、第1の表面下領域の表面貫通レーダー(SPR)画像の第1のセットを取得するステップと、
前記SPR画像の第1のセットに基づいて前記乗物の位置データの第1のセットを特定するステップと、
前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数を有する第2のレーダー信号を前記表面下領域に送信するステップと、
前記第2のレーダー信号に基づいて、前記第1の表面下領域と少なくとも部分的に重複する第2の表面下領域のSPR画像の第2セットを取得するステップと
前記位置データの第1のセットおよび前記SPR画像の第2のセットに基づいて前記乗物の位置データの第2のセットを特定するステップとを含み、前記位置データの第2のセットは前記位置データの第1のセットより解像度が大きいことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のレーダー信号は第1の複数の周波数を有し、前記第2のレーダー信号は第2の複数の周波数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の複数の周波数が重複する周波数を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のレーダー信号および/または前記第2のレーダー信号は、経時的な離散周波数の勾配を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のレーダー信号および前記第2のレーダー信号が同時に送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の複数の周波数は、前記第1の複数の周波数のすべての周波数を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の複数の周波数は、前記第2の複数の周波数のすべての周波数を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の表面下領域の深度が、前記第1の表面下領域の深度よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のレーダー信号および前記第2のレーダー信号は、前記第1および第2の周波数を含む単一のレーダー信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2のレーダー信号は、同じレーダー送信素子から送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2のレーダー信号は、異なるレーダー送信素子から送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記位置データに応じて前記乗物の動きを制御するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
それぞれが、前記第1のレーダー信号、前記第2のレーダー信号、および他の追加のレーダー信号のそれぞれとは異なる周波数成分を有する1以上の追加のレーダー信号を前記表面下領域に送信するステップと、
前記追加のレーダー信号ごとにSPR画像の追加のセットを取得するステップと、
前記SPR画像の追加のセットに基づいて乗物の位置データを特定するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1以上の中間レーダー信号を前記表面下領域に送信するステップであって、各中間レーダー信号は、前記第1の周波数より大きく前記第2の周波数より小さい中間周波数を有し、各中間周波数は、他の各中間周波数とは異なる、ステップと、
前記中間レーダー信号のそれぞれについて、中間表面下領域のSPR画像の中間セットを取得するステップと、
前記SPR画像の各中間セットについて、前記SPR画像の中間セットの対応するものに基づいて前記乗物の位置データを特定するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記SPR画像の第1および第2セットを取得するステップが、前記表面下領域からの第1の受信レーダー信号および第2の受信レーダー信号にそれぞれレンジゲートを適用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の周波数および前記第2の周波数のうちの少なくとも1つは、前記表面下領域内の1以上の特徴の特性に基づいて選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記SPR画像の第1および第2のセットのうちの少なくとも1つは、深度に従って重み付けされたSPR画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記SPR画像の第1および第2のセットのうちの少なくとも1つは、除外された深さを有するSPR画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
表面貫通レーダー(SPR)システムにおいて、
複数のアンテナ素子を具え、第1の周波数を有する第1のレーダー信号と、第2の周波数を有する第2のレーダー信号とを乗物の近くの表面下領域に送信するように構成されたSPRアンテナアレイであって、前記第2の周波数は前記第1の周波数よりも高く、前記アンテナ素子はさらに、前記表面下領域からの戻りレーダー信号を受信するように構成されている、SPRアンテナアレイと、
前記SPRアンテナアレイと通信するレーダープロセッサであって、
前記第1のレーダー信号に基づいて、第1の表面下領域のSPR画像の第1のセットを取得し、
前記第2のレーダー信号に基づいて、前記第1の表面下領域と少なくとも部分的に重複する第2の表面下領域の第2セットのSPR画像を取得する、レーダープロセッサと、
前記プロセッサと通信する位置合わせモジュールであって、
前記SPR画像の第1のセットに基づいて乗物の位置データの第1のセットを特定し、
前記位置データの第1のセットおよび前記SPR画像の第2のセットに基づいて乗物の位置データの第2のセット特定し、ここで前記位置データの第2のセットは前記位置データの第1のセットより解像度が大きい、位置合わせモジュールとを具えるSPRシステム。
【請求項20】
前記SPRアンテナアレイは、それぞれが前記第1のレーダー信号、前記第2のレーダー信号、および他のそれぞれと異なる周波数成分を有する少なくとも1つの追加のレーダー信号を前記表面下領域に送信するように構成され、前記レーダープロセッサは、前記追加のレーダー信号のそれぞれについて追加のSPR画像のセットを取得するようにさらに構成される、請求項19に記載のSPRシステム。。
【請求項21】
前記位置合わせモジュールは、前記追加のSPR画像のセットおよび前記乗物について以前に特定された位置データに基づいて、前記乗物の位置データを特定するようにさらに構成される、請求項20に記載のSPRシステム。
【請求項22】
前記SPRアンテナアレイは、1つ以上の中間レーダー信号を前記表面下領域に送信するようにさらに構成され、各中間レーダー信号は、前記第1の周波数より大きく前記第2の周波数より小さい中間周波数を有し、各中間周波数は他の各中間周波数とは異なり、前記レーダープロセッサはさらに、各中間レーダー信号について、中間表面下領域のSPR画像の中間セットを取得するように構成される、請求項19に記載のSPRシステム。
【請求項23】
前記位置合わせモジュールは、各SPR画像の中間セットに対して、前記SPR画像の中間セットの対応する1つおよび前記乗物について以前に特定された位置データに基づいて、前記乗物の位置データを特定するようにさらに構成される、請求項22に記載のSPRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2017年1月27日に出願された「LGPR Capability」という名称の米国仮特許出願第62/451,313号、および2017年7月7日に出願された「Localizing Ground−Penetrating Radar」という名称の米国仮特許出願第62/529,740号の早い出願日の利益を請求するものであり、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明についての政府の権利
本発明は、米国空軍により授与された契約番号FA8721−05−C−0002に基づく政府支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に、表面貫通レーダーを使用して乗物(vehicle)の位置を特定するための方法およびシステムに関する。この方法およびシステムは、車両のナビゲーションに使用することができる。
【背景技術】
【0004】
道路網などの構造化された環境での自律航行へのアプローチは、一般に2つのカテゴリに分類することができる。第1のカテゴリでは、自律型車両は人間のように航行し、簡単な地図や道路の一般的な規則を超える道路の特徴に関する既存の知識はほとんどない。アプローチの第2のカテゴリは、環境に関する広範な事前知識、例えば、車線の境界やすべての一時停止標識、横断歩道などをマーキングした全地球測位システム(GPS)測定の緻密なセットに依存するものである。第1のカテゴリは、実世界の環境は極端に変動するため困難なアプローチとなる。第2のカテゴリのアプローチは、例えば国防高等研究計画局(DARPA)アーバンチャレンジとGoogle自動運転車プロジェクトによって評価されている。結果は、構造化され十分に特性化された地形での信頼性の高い自律航行への「リッチマップ」アプローチが実現可能であることを実証する。ただし、詳細な事前マップに依存することの大きな課題の1つは、システムがマップ内における車両位置の精密かつ正確な情報を維持する必要があることである。
【0005】
従来、GPS受信機はグローバルな位置測定を提供するために使用されてきた。しかしながら、GPSだけでは、車線内に留まるのに必要な精度までは提供されない。さらに、マルチパスまたはシャドーイングがある環境ではGPSの精度が大幅に低下し、操作を妨害しようとする他のユーザによって信号が簡単にブロックされたり、意図的に妨害されたりする可能性があった。GPSベースのシステムは、差分信号アルゴリズムや、慣性センサで位置推定を強化することで改良することができる。しかしながら、得られるシステムは通常高価であり、基地局などの追加インフラストラクチャが必要になる場合がある。
【0006】
これらの制限を解消するために、一部の自動車両はローカル環境を感知し、センサ測定値が事前観測マップと見当合わせされる。このマップマッチングアプローチの成功は、センサの種類と場所に大きく依存する。パッシブビジュアルメソッド、例えば、1以上のデジタルビデオカメラを使用する方法では、シーン照明の変化により、屋外環境でのパフォーマンスが低下する可能性がある。太陽光の角度と曇りの変化により、システムは、事前マップ観測中に感知されたシーンとは実質的に異なるシーンを見ることになる。アクティブビジュアルセンシング(LIDARなど)は別のアプローチであり、Googleの自動運転車などの自動運転車で使用される手法である。自然光または制御されていない照明に頼るのではなく、センサが、典型的には比較的暗い周波数で光を発し、戻りの強度を測定する。アルゴリズムを使用して、事前測定のマップで同様の強度パターンを検索し、車両の位置を特定する。このアクティブセンシングアプローチは、一貫性のないシーンの照明の問題を解決するが、シーンが気象条件によって大きく変化すると、困難に直面する。例えば、雪は、あるシーンを事前取得されたシーンとマッチングするのに必要な重要な特徴を曖昧にしてしまう。霧、雨、ほこりなどの他の気象条件もパフォーマンスに影響を与える。さらに、観察されるシーンの動的な態様は、さらに複雑な問題を引き起こす場合がある。例えば、他の移動車両の存在や、通常は静的な特徴が突風によって動くと、大きな課題となる。主に障害物回避のためであるが、自動車用レーダーも用いられる。現在のところ、位置特定の主要な方法として機能する角度的または範囲的な解像度を有さない。このように、マップベースの位置特定の現在の検知アプローチは、一般的な実世界の条件に対して堅牢ではない。さらに、光検出および測距(LIDAR)センサを搭載するようなアクティブセンサは、一般に高価な精密工学電気光学機械システムを必要とする。
【発明の概要】
【0007】
本技術の例示的な実施形態は、車両の位置特定方法および表面貫通レーダー(SPR)システムを含む。
【0008】
本方法のいくつかの実施形態では、第1の周波数を有する第1のレーダー信号が、車両の下の地下領域に送信される。第2の周波数を有する第2のレーダー信号が当該地下領域に送信され、この第2の周波数は第1の周波数よりも大きい。この方法はさらに、第1のレーダー信号に基づいて第1の地下領域のSPR画像の第1セットを取得するステップと、第2のレーダー信号に基づいて、前記第1の地下領域と少なくとも部分的に重なる第2の地下領域のSPR画像の第2セットを取得するステップとを含む。車両の位置データは、SPR画像の第1セットに基づいて決定され、別のステップで、SPR画像の第2セットに基づいて車両の位置データが決定される。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記SPR画像の第1セットに基づいて車両の位置データを決定するステップは、第1の解像度で位置データを生成し、前記SPR画像の第2セットに基づいて車両の位置データを決定するステップは、さらに第1の解像度での位置データに基づいて、第2の解像度で位置データを生成する。第2の解像度は第1の解像度よりも高い。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、位置データに応じて車両の動きを制御するステップを含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、SPR画像の第1および第2のセットの取得は、地下領域からの第1の受信レーダー信号および第2の受信レーダー信号にそれぞれ距離ゲートを適用するステップを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、SPR画像の第1セットおよび第2セットの少なくとも一方は、深度に従って重み付けされたSPR画像を含む。他の実施形態では、SPR画像の第1セットおよび第2セットの少なくとも一方は、深度が除外されたSPR画像を含む。
【0013】
第1のレーダー信号は第1の複数の周波数を有し、第2のレーダー信号は第2の複数の周波数を有し得る。第1および第2の複数の周波数は、重複する周波数を含んでもよい。第2の複数の周波数は、第1の複数の周波数のすべての周波数を含み得る。第1の複数の周波数は、第2の複数の周波数のすべての周波数を含み得る。第1のレーダー信号および/または第2のレーダー信号は、時間で離散する周波数ランプを有することができる。第1のレーダー信号と第2のレーダー信号は同時に送信されてもよい。第1のレーダー信号および第2のレーダー信号は、第1および第2の周波数を含む単一のレーダー信号であってもよい。第1および第2のレーダー信号は、同じレーダー送信素子または異なるレーダー送信素子から送信されてもよい。第1の周波数および第2の周波数のうちの少なくとも1つは、地下領域内の1以上の特徴の特性に基づいて選択され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2の地下領域の深度は、第1の地下領域の深度よりも小さい。
【0015】
一実施形態では、方法はさらに、少なくとも1つのさらなるレーダー信号であって、それぞれが第1のレーダー信号、第2のレーダー信号、および他のさらなるレーダー信号の各々とは異なる周波数成分を有するレーダー信号を地下領域に送信するステップを含む。さらなるレーダー信号ごとにSPR画像のさらなるセットが取得され、SPR画像のさらなるセットに基づいて車両の位置データが決定される。
【0016】
別の実施形態では、方法はさらに、1以上の中間レーダー信号を地下領域に送信するステップを含む。中間レーダー信号のそれぞれは、第1の周波数より大きく第2の周波数より小さい中間周波数を有し、各中間周波数は他の各中間周波数とは異なる。中間地下領域のSPR画像の中間セットが中間レーダー信号のそれぞれについて取得され、SPR画像の各中間セットについて、SPR画像の中間セットの対応する1つに基づいて車両の位置データが決定される。
【0017】
SPRシステムのいくつかの実施形態では、システムは、SPRアンテナアレイと、レーダープロセッサと、見当合わせモジュール(registration module)とを含む。SPRアンテナアレイは複数のアンテナ素子を含み、第1の周波数を有する第1のレーダー信号および第2の周波数を有する第2のレーダー信号を車両に近接する地下領域に送信するように構成される。第2の周波数は第1の周波数よりも大きく、アンテナ要素はさらに、地下領域からの帰還レーダー信号を受信するように構成される。レーダープロセッサは、SPRアンテナアレイと通信し、第1のレーダー信号に基づいて第1の地下領域のSPR画像の第1セットを取得し、第2のレーダー信号に基づいて、第1の地下領域と少なくとも部分的に重複する第2の地下領域のSPR信号の第2セットを取得する。見当合わせモジュールはプロセッサと通信し、SPR画像の第1セットに基づいて車両の位置データを決定するとともに、SPR画像の第2セットに基づいて車両の位置データを決定するように構成される。
【0018】
SPRアンテナアレイはさらに、1以上のさらなるレーダー信号であって、それぞれが第1のレーダー信号、第2のレーダー信号、および他のさらなるレーダー信号の各々とは異なる周波数成分を有するレーダー信号を地下領域に送信するように構成され、レーダープロセッサはさらに、さらなるレーダー信号の各々についてSPR画像のさらなるセットを取得するように構成される。見当合わせモジュールは、車両について以前に決定されたSPR画像のさらなるセットと位置データとに基づいて車両の位置データを決定するようにさらに構成されてもよい。
【0019】
SPRアンテナアレイは、1以上の中間レーダー信号を地下領域に送信するようにさらに構成され、各中間レーダー信号は、第1の周波数よりも大きく、第2の周波数よりも小さく、他のそれぞれの中間レーダー周波数とは異なる中間周波数を有する。レーダープロセッサは、中間レーダー信号のそれぞれについて、中間地下領域のSPR画像の中間セットを取得するようにさらに構成されてもよい。見当合わせモジュールはさらに、SPR画像の中間セットのそれぞれについて、SPR画像の中間セットの対応する1つおよび車両について以前に決定された位置データに基づいて車両の位置データを決定するように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の上記およびさらなる利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより、よりよく理解することができ、同様の数字は、様々な図の同様の構造要素および特徴を示す。明確のために、すべての図ですべての要素に符号が付されているわけではない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
図1A図1Aは、所定のトリップ経路に従って道路網内を走行する車両を示す。
図1B図1Bは、図1Aの車両の側面図を示す。
図2図2は、本発明による車両の位置特定方法の実施形態を示すフローチャートである。
図3図3は、以前に取得されたGPR画像データが利用可能な地下領域に対する車両軌道に沿ったGPRアンテナアレイの動きを図示する。
図4図4は、本発明による車両の自律的または半自律的な操作に使用される航行システムの実施形態のブロック図である。
図5図5は、車両軌道区画に沿った移動中に取得された表面貫通レーダー(SPR)画像のスライスの例を示す。
図6図6は、図4のレーダープロセッサおよび見当合わせモジュールによって実行される処理をより詳細に示す概略図である。
図7A図7Aは、トリップ経路について以前に取得されたSPR参照画像の軌道に沿ったスライスを示す。
図7B図7Bは、図7AのSPR参照画像に見当合わせされた車両軌道のSPR画像の軌道に沿ったスライスを示す。
図7C図7Cは、図7A図7Bの2つのSPR画像スライスの差分画像を示す。
図8図8は、車両位置特定方法の別の実施形態のフローチャートである。
図9A図9Aは、SPRシステムの送信素子から車両の下の地下への2つの異なるレーダー信号の送信を示す車両の側面図である。
図9B図9Bは、図9Aに示す車両の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に説明する多様な実施形態では、地面と、地面の下の地下領域について参照している。地面には、土壌、アスファルト層やコンクリート層、砂利、砂などの路面または舗装が含まれ、地面とは空気、配列物、流体または自由空間と地面の界面であることが理解されよう。場合によっては、表面には、トンネル、坑道、および車両が走行する他の通路を囲む面も含まれる。
【0022】
より一般的には、本書では、表面貫通レーダー(SPR)および地面貫通レーダー(GPR)を参照する。本書で用いられる場合、SPRは、表面下領域からデータを取得するように構成されたレーダーシステムを意味する。SPRは、壁、天井、床の表面、またはトンネルや通路に沿った1以上の面の背後にある表面下領域のデータを取得するように構成および方向付けられる。場合によっては、SPRは表面のデータも取得することができる。GPRシステムは、地表下の領域からデータを取得するように構成されたSPRシステムの一種であり、地表のデータも取得できることが理解されるであろう。本書で使用する表面下領域とは、地面の下の地下領域などの、表面の背後の領域を意味する。あるいは、表面下領域は、壁や天井構造の内部および/または背後の領域などの、構造体の表面の背後の領域であり得る。
【0023】
簡単な概要では、本開示は、乗物の位置特定方法およびシステムに関する。この方法は、第1の周波数を有するレーダー信号をSPRシステムから乗物の下またはそれに隣接する表面下領域に送信するステップを含む。表面下領域内の第1の表面下ボリュームのSPR画像の第1セットが取得され、このSPR画像の第1セットから車両の位置データが決定される。第1の周波数よりも高い周波数を有する第2のレーダー信号がSPRシステムから表面下領域に送信され、当該表面下領域内の第2の表面下ボリュームのSPR画像の第2のセットが取得される。第2の表面下ボリュームは、第1の表面下ボリュームと少なくとも部分的に重複する。位置データが、SPR画像の第2セットから決定される。一般に、SPR画像の第2セットを取得するのに用いられる周波数が高いことから、SPR画像の第2セットから決定された位置データは、SPR画像の第1セットから決定される位置データよりも解像度が高い。
【0024】
SPR画像の各セットの位置データを決定するステップは、例えば「表面貫通レーダーを使用した車両位置特定」の名称の米国特許第8,949,024号に記載されるように、取得されたSPR画像を、車両軌道に沿った表面下領域と少なくとも部分的に重複する表面下領域について以前に取得されたSPR画像と比較するステップを含むことができ、その開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。以前に取得されたSPR画像は、車両の航行を支援するための表面下マップとして使用することができる。マップは、様々な精度と表面下深度で作成することができる。精度の低いマップは、マッピングされた表面下領域を車両が通過する際の粗い位置追跡に使用される。例えば、低精度のマップをSPR画像の第1セットで使用して低精度の位置データを取得し、その後に高精度のマップを粗い位置データと組み合わせて使用して、SPR画像の第2セットから精密な位置データを取得することができる。粗い位置特定は、精密な位置特定にかかる検索量を削減し、最終的に決定された位置データの堅牢性と精度を向上させるのに役立つ。さらに、複数のマップに基づいて各車両位置について取得された複数の見当一致(registration matches)を用いると、堅牢性と精度がさらに向上する。ある状況では、米国特許第8,949,024号に記載の技術を使用して、マップ内の重要な特徴セットのサブセットを抽出して、粗い位置特定として車両の迅速なグローバル位置特定を実現することができる。削減された処理セットは、グローバル基準(global reference)で車両を迅速に「再配置」するために使用される。この技術は、車両が追跡できなくなり、正確なグローバル位置推定ができない場合などの、GPSが使えない環境で役立つ。
【0025】
以下では主に自律的な地上乗物の航行について説明するが、この方法は、高精度の車両位置特定データが必要なすべての応用例に役立つ。さらに、乗物は、陸上で走行する自動車および他の形態の地上車両に限定されず、代わりに水上、水中、地下、屋内、または飛行による航行が可能な乗物であってもよい。
【0026】
図1Aは、所定のトリップ経路(点線)12に従って道路網内を走行する車両10を示す。トリップ経路12は、空間内および任意に時間内での車両10の所望の経路を表す。事前定義された経路区画を組み合わせて、トリップ経路12を定義することができる。図1Aに示すトリップ12の部分は、右折とその後の左折が含まれる。トリップ経路12は従来の道路網内に示されているが、トリップ経路は、道、道路、高速道路などの確立された経路に限定されず、場合によっては、オープン地形を横切るトリップ経路もあることをを理解されたい。
【0027】
乗物10は自動車として説明されているが、非限定的な例として、乗客や、機器、センサおよび他の物体などの荷物を輸送するためのプラットフォームを含む、任意の移動式プラットフォームまたは構造であり得る。車両10は、方向転換(すなわち、操縦)能力、加速および減速する機能を有する。図中の車両10は、その制御可能な自由度が総自由度よりも小さいことから一般に非ホロノミックであると解されるが、例えば全方向車輪を有する車両などのホロノミック車両も考えられる。他の実施形態では、車両10は、その高さ(または地面からの距離)、ピッチ、ヨー、およびロールのうちの1つまたは複数を変更することができる。車両10は、GPRベースの航行システムを含み、自律モードで動作する、すなわち、車両10の乗客の操作は制限されるか、または不要で、航行のために車両10によって受信されるリモートコマンドもない。一例として、操作の制限には、乗客による速度制御が含まれてもよいが、他の操作は自律制御下にあるものとする。
【0028】
図1Bは、車両10の側面図を示す。航行システムは、車両前部に固定されたGPRアンテナアレイ14を具える。図示する実施形態では、GPRアンテナアレイ14は、レーダー信号を送信するための空間的に不変の送受信アンテナ素子の線形構成を含む。他の実施形態では、GPRアンテナアレイ14は、車両12の他の場所に配置することができ、送受信アンテナ素子は線形に配置する必要はない。この線形アレイ14は、名目上地面に平行であり、進行方向に対して直角に延びている。代替の構成では、GPRアンテナアレイ14は、地面または道路の表面に近接するか接触してもよい。GPR信号16は、送信アンテナ素子から車両の前方の路面を通り、表面下領域に向かって下方に伝播する。上方向に後方散乱されたGPR信号18が、受信アンテナ素子によって検出される。
【0029】
図2も参照すると、本発明の実施形態による車両の位置特定方法100のフローチャートが示されている。方法100は、車両10の軌道に沿った表面下領域からSPR画像(例えば、GPR画像)を取得するステップ(ステップ110)を含む。SPR画像は、定義されたトリップ経路12の表面下領域と少なくとも部分的に重なる表面下領域について以前に取得され保存されたSPR参照画像と比較される(ステップ120)。車両軌道に沿って表面下領域の画像を取得するために使用される車両のSPRシステムは、以前に取得、保存、および比較に使用されるSPR参照画像を取得するために使用されるSPRシステムと同じである必要はないことに留意されたい。例えば、SPRアンテナアレイおよび車両SPRシステムの他の構成要素は、SPR参照画像の取得に使用されるSPRシステムと比較して、かなり安価で異なる性能特性を有してもよい。さらに、SPRシステムの軌道は、例えば、車両10に搭載または取り付けられたSPRシステムの特定位置のために、運用中の車両軌道とは異なってもよい。したがって、車両の軌道に沿って取得されたSPR画像はオフセットできることを理解されたい。
【0030】
いくつかの実施形態では、SPR画像は、表面データ、すなわち、表面下領域と大気またはローカル環境との境界に関するデータも含む。SPRアンテナアレイが表面と接触していない場合、受信される最も強い戻り信号は通常、表面により生じる反射に基づく。場合によっては、表面地形の変化が、ステップ120で行われる比較に役立つ。
【0031】
車両10の位置が、比較に基づいて決定される(ステップ130)。この位置データは、グローバルであってもローカル(例えば、車両の前の軌道に関連するデータ)であってもよい。任意選択で、車両位置データを使用して、車両航行コマンドを生成する(ステップ140)。より具体的には、車両の速度、加速度、方位、角速度、および角加速度を車両航行コマンドを介して連続的に制御して、車両10をトリップ経路12に沿った所望の位置に維持することができる。いくつかの実施形態では、車両の位置データは、車両10を誘導するために1以上の他のセンサまたは航行システムが提供するデータと組み合わせて使用される。そのようなセンサや航行システムには、例として、慣性航法システム(INS)、GPS、音響航法および測距(SONAR)システム、LIDARシステム、カメラ、慣性測定ユニット(IMU)および補助レーダーシステムが含まれる。
【0032】
図3は、GPR参照画像が存在する表面下(地下)領域に対する車両軌道に沿ったGPRアンテナアレイの動きを示す。影付きの領域は、車両GPRアンテナアレイの1つの位置について、GPR参照画像の表面下領域と車両の新たに取得されたGPR画像の表面下領域の部分的な重複を示す。図に示すように、GPR参照画像の表面下領域は、当該参照画像を取得した参照車両のカーブ軌道に対応しているが、参照GPR画像は複数の測定経路を使用して取得し、組み合わせてより大きな地理的範囲にできることを認識すべきである。GPSデータの精度は限られているため、車両が通過した軌道は、通常、GPS座標データに従って規定された選択されたトリップ経路から逸れている。以下に詳述する自律車両航行システムによって生成されたコマンドが、車両経路と選択されたトリップ経路の誤差を低減または最小化するために、車両経路の変更に影響を与えるのに使用される。さらに、車両速度をトリップ経路の区画に沿って変更して、安全な挙動を維持し、速度制限に対応し、トリップ経路を通過するための望ましい完了時間を達成することができる。
【0033】
図4は、図2の方法100によるように、車両を自律的に動作させるために使用することができる航行システム30の実施形態のブロック図である。航行システム30は、ユーザがデータを入力してトリップ経路を定義したり、所定のトリップ経路を選択したりすることができるユーザインターフェース32を具える。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース32は、ユーザへの問いかけを表示し、ユーザがどこに行きたいか、どの経路を辿るかを記述する入力を受け付けるナビゲーションモジュールの一部である。SPR画像は、トリップ経路に従ってSPR参照画像ソース34から検索される。いくつかの実施形態では、選択されたトリップ経路に関係なく、現在位置に基づいてSPR画像データが自動的に取得される。SPR参照画像ソース34は、システム30に対してローカルでもリモートでもよい。代替的に、ローカルとリモートのソースの組み合わせが使用される。モバイル型航行システムも、SPRアンテナアレイを有するモバイルSPRシステム36を具える。モバイルSPRシステム36の送信動作は、レーダープロセッサ38によって制御され、レーダープロセッサ38は、SPRアンテナアレイによって提供される戻りレーダー信号も受信する。いくつかの実施形態では、戻りレーダー信号のデータは、減衰などの距離損失を補償するために深度に応じて重み付けされ、これによりすべてのデータが、深度の関数として均一な振幅分布で同じスケールに調整される。あるいは、特定の深度が強調または除外されるようにデータを重みづけしてもよい。例えば、参照データの寿命を優先すべく、安定した表面下構造を有する深度を重み付けによって強調することができる。同様に、データの解像度を優先させるべく、浅い深度に対して重みづけによる強調を用いてもよい。レーダープロセッサ38は、下の表面下領域の、SPRアンテナアレイの下の路面を含むSPR画像を生成する。
【0034】
図5は、車両軌道の区画に沿って走行中に取得されるSPR画像スライスの例を示す。横軸は車両軌道に沿った距離を示し、縦軸は地表からの深度を示す。画像内に示されている地下領域は、単一のアンテナチャネルに対応し、アンテナ素子の間隔に従って決定されるクロストラック解像度を有する。SPR電圧データが、グレースケールで図に表されている。このSPR画像には、岩石、根、岩、パイプ、空洞、土壌の層状化など、表面下領域の構造と物体を表す特徴と、表面下領域の土壌や材料の特性の変化を示す他の特徴が含まれる。
【0035】
図4に戻ると、車両について取得されたSPR画像は、トリップ経路と重複する以前に取得されたSPR画像と空間的に見当合わせ(register)される。様々な実施形態において、この見当合わせプロセスで特定されたオフセットデータや位置誤差データは変換モジュール42に提供され、ここで車両用に補正されたGPSデータが生成される。補正されたGPSデータは車両制御モジュール44に提供され、それによって、所望のトリップ経路に沿って車両を維持するようにステアリング、方位、速度、姿勢、および加速/減速が制御される。例えば、車両制御モジュールは、ステアリングや速度制御を達成するために、車両内の電気的、機械的、および空気圧装置を具えるか、それらと協働してもよい。様々なタイプの推進および制御機構を有する他の実施形態では、車両制御モジュールはまた、油圧、タービン、プロペラ、制御面、形状変化、および化学システムまたはデバイスを含むかこれらと協働し得る。所望のトリップ経路に戻るために、急速または急激な修正を避け、代わりにずっと前方の地点で所望のトリップ経路に戻るように徐々に経路を横切るように車両を制御することができる。
【0036】
上述のトリップ経路は、SPR参照画像ソース34から検索されたSPR画像を取得するために使用される1以上の「参照車両」が使用した経路区画と一致するように定義することができる。ただし、これは一般的な要件ではない。この方法により、以前に取得されたSPR参照画像と車両の表面下領域のSPR画像に十分な重複がある場合に、グローバルな位置特定データを決定することができる。このように、トリップ経路は、以前に取得したSPR画像データに関連付けられた参照車両経路に制限されない。さらに、参照車両によって取得されたSPR画像がグローバルに参照される場合、見当合わせプロセスで取得されたデータを使用して、車両の位置と姿勢のグローバル推定値を生成することができる。したがって、グローバル経路が当該グローバル経路全体に沿ってSPR参照画像と少なくとも部分的に重複している限り、グローバル推定を使用して、ユーザが定義した任意のグローバル経路を辿ることができる。
【0037】
上記のように、以前に取得したSPR参照画像を組み合わせ、またはつなぎ合わせて、モバイルSPRシステムの1回の通過で取得できるものよりも多くの参照画像データを提供することができる。例えば、複数車線の高速道路のGPR参照画像データを、モバイルGPRシステムの複数の通過によって取得することができ、ここで各通過は高速道路の単一車線に対応する。車線のGPR参照画像をシームレスに組み合わせて、高速道路の幅全体の画像データを提供することができる。したがって、車両の航行システムは、参照画像を使用して、任意の車線を走行したり、隣接する車線間を移動したりすることができる。あるいは、車両の表面下領域と高速道路について保存されたGPR参照画像に表された表面下領域との間に十分な重複が存在する限り、高速道路の幅の一部(例えば、中央車線)のみが保存されたGPR参照画像に表されてもよい。車両のトリップ経路は、SPR参照画像を取得するのに用いられた参照車両の経路を特に参照することなく、グローバル経路によって定義することができる。あるいは、実際の車両軌跡とGPR参照画像に関連する経路との間の望ましい横方向オフセットを維持することにより、中央車線に隣接する車線を使用してトリップ経路を定義することも可能である。車両が収集した他のデータ(経路を辿る途中であっても)を使用して、参照画像データを更新してもよい。
【0038】
図6は、図4のレーダープロセッサ38および見当合わせモジュール40によって実行される処理をより詳細に示す概略図である。トリップ経路について以前に取得されたSPR画像データ50が検索され、3次元グリッド52に補間される。複数のアレイスキャンに対応するクロストラックSPR画像スライス54A〜54N(一般に54)が示され、各画像スライス54は、車両経路に沿った一意の位置での単一のSPRアンテナアレイスキャンに対応している。相関ベースの見当合わせ処理56が緯度、経度、高さ、ロールおよびヨーに適用され、車両アレイスキャン54をグリッドに補間されたSPR画像データ52に見当合わせする。いくつかの実施形態では、補間は見当合わせの前にリアルタイムで行われる。しかしながら、他の実施形態では、補間は、補間データを用いるかなり前に実行してもよい。SPRアンテナアレイの位置は、以前に取得された表面下マップに現在のデータの位置を位置合わせし、結果としての修正されたローカルまたはグローバル位置を計算することによって決定される。この相関ベースの位置合わせ処理56は、SPRアンテナアレイの単一スキャンで取得されたデータを使用して実行することができる。別の実施形態では、複数のスキャンを位置合わせに用いて、より堅牢な位置推定を実現する。例えば、数秒の期間にわたって取得されたデータを、表面下領域の大部分について以前に取得された画像データの複数のスキャンに相関させることができる。
【0039】
マッチング手法としてのデータ表現と相関の最大化に3次元電圧マップを使用する代わりに、特徴ベースの方法を使用することができる。この代替方法では、3次元電圧データが、位置、周波数応答、および配向といった特定の特徴パラメータを持つ岩、マンホールカバー、信号センサ、または根などの可能性のある物体に基づいて識別されたデータ内の特徴点のセットへと変換される。特徴のセットが確立されると、マッチング手法は距離メトリックを使用して、特徴のセットに最も近い一致を見つけて場所を決定することができる。この代替手法は、画像処理で用いられるスケール不変特徴変換(SIFT)および頑健な特徴量の高速化(SURF)の機能検出手法の使用に似ている。
【0040】
図7A、7Bは、トリップ経路について以前に取得されたSPR参照画像の軌道に沿ったスライス60と、参照経路に登録された車両軌道についてのSPR画像の軌道に沿ったスライス62とを示す。参照SPR画像スライス60および登録SPR画像スライス62はそれぞれ、実質的に同一であると期待される。図7Cは、2つのSPR画像スライス60、62の差分画像64を示し、これは、参照スライス60のSPRデータの取得の後に発生または導入された表面下領域の特徴を示す。これらの特徴は、パイプの埋設、電気および排水路などの人為的な変更を示す場合がある。逆に、特徴は修理が必要な表面下条件の変化に起因する場合がある。そのような特徴がどのように検出されるかの例が、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「Mobile Coherent Change Detection Ground Penetrating Radar」という表題の米国特許第8,786,485号に記載されている。以下に説明する車両の位置特定方法の実施形態は、検出GPR技術を変更して、新たに検出された特徴の検出精度を改善するために適用することができる。
【0041】
上記のさまざまな実施形態は、道路網の航行に関するものであり、したがって一般に屋外の地上環境と呼ばれるものに関する。代替的に、建物内または建物複合体内などの屋内環境で乗物を制御することもできる。乗物は、廊下、倉庫、製造エリアなどを航行することができる。他の代替例では、原子力施設やバイオハザードがある可能性のある病院や研究施設など、人体に有害な可能性のある領域の構造物内で乗物を制御することができる。様々な実施形態において、SPRは、床、天井、または壁の中および/または背後の表面下領域を含むSPR画像を取得するために使用される。したがって、モバイルSPRシステムは、所望の方向にレーダー信号を送信し、レーダー信号を受信するように方向付けることができる。
【0042】
別の代替環境は、例として、地下トンネルや鉱山の通路を含む地下環境である。したがって、採掘車両は、以前に取得されたSPR参照画像が利用可能な車両の進行方向に直交する任意の方向で送受信するように構成されたSPRアンテナアレイを設けて構成することができる。任意で、採掘車両は、対応するSPR参照画像への位置合わせ後に車両によって取得されたSPR画像の差分を特定することにより、トンネルまたは通路構造の変化や内容について検査することができる。
【0043】
上記の方法のバリエーションを用いて、車両位置特定の精度と堅牢性を向上させることができる。図8を参照すると、車両の位置特定方法200の実施形態のフローチャート表現が示され、図9A、9Bは、レーダー信号をGPRアレイ82から車両80の下の表面下領に送信している状態の車両80の側面図と正面図をそれぞれ示す。
【0044】
方法200は、第1の周波数Fを有する第1のレーダー信号84を表面下領域に送信するステップ(ステップ210)と、第1のレーダー信号84が伝播する表面下領域のボリュームの少なくとも一部についてのGPR画像の第1のセットを取得するステップ(ステップ220)とを含む。周波数Fを有する第2のレーダー信号86が表面下領域に送信され(ステップ230)、この第2のレーダー信号86を受信する表面下ボリュームの第2の組のGPR画像が取得される(ステップ240)。周波数Fは周波数Fよりも大きい。非限定的な数値例として、第1の周波数Fは、約100MHzから約400MHzにわたる周波数範囲内の周波数であり、第2の周波数Fは、約1GHzから約2GHzにわたる周波数範囲内の周波数であり得る。別の数値例では、第1の周波数Fは、約100MHzから約400MHzにわたる周波数範囲内の周波数であり、第2の周波数Fは、約200MHzから約400MHzにわたる周波数範囲内の周波数であり得る。
【0045】
例えば、上述の位置合わせプロセスの実施形態を用いて、粗い位置特定データが決定され(ステップ250)、GPR画像の第2セットに基づいて車両のより正確な位置特定データが決定される(ステップ260)。周波数の違いにより、第1のレーダー信号84は一般に、第2のレーダー信号86よりも深い深度まで表面下領域に侵入する。しかしながら、GPR画像の第1のセットに基づいて決定された位置特定データは、通常、解像度が粗くなる。一実施形態では、粗い位置特定データは、低解像度マップおよび粗い表面下特徴を用いて決定される。第1のレーダー信号84から得られたこの粗い位置特定データは、最終的に決定される位置データの頑健性および精度を高めるのに役立つGPR画像の第2のセットを使用して行われる位置特定のための探索量を減らすために使用することができる。GPR画像の第2のセットを使用して取得された精密な位置特定データは、より小さな地下の特徴を含んでいる可能性のある高解像度マップを使用して決定することができる。
【0046】
好ましくは、第2のレーダー信号86は、第1のレーダー信号84を送信した後、最小限の遅延で送信される。これにより、2つのレーダー信号による地上サンプリング間の移動距離と、2つの地上サンプリング間のGPRアンテナアレイの位置の違いに起因する誤差が大幅に減少する。一実施形態では、第1の周波数Fおよび第2の周波数Fは同時に送信される。別の実施形態では、3以上のサンプリングを使用することができる。例えば、周波数が増大するレーダー信号のシーケンス(例えば、周波数が階段状に増える)を用いて、より正確な位置特定データを取得してもよい。
【0047】
周波数FとF、および任意の中間周波数または周波数範囲は、少なくともいくつかのGPR画像に存在すると予想される1以上の特徴の特性に応じて選択されてもよい。例えば、周波数は、特定の深度範囲または特徴種別、安定性、散乱レベル、特徴の寸法がデータで強調または非強調されるように選択することができる。したがって、周波数の選択により、信号センサ、パイプ、道路や土壌の層などの特徴を強調することができる。周波数Fは、粗い位置特定に使用される多くの表面下の特徴のレーダー反射率と寸法に基づいて選択することができ、周波数Fは、第2レーダー信号86が貫通する表面下領域の小さな表面下特徴の既知の存在に基づいて選択することができる。
【0048】
第1および第2のレーダー信号84、86は、同じレーダー送信素子から送信されてもよいが、これは必須ではない。例えば、第2のレーダー信号86の探索ボリュームが第1のレーダー信号84の画像化された表面下領域内にある場合、異なる送信素子を使用することができる。
【0049】
表面下への第1および第2のレーダー信号84、86の送信は、表面下領域からの、それぞれ第1の受信レーダー信号および第2の受信レーダー信号をもたらす。GPR画像の第1および第2のセットの取得は、第1および第2の受信レーダー信号にレンジゲートを適用するステップを含み得る。レンジゲートの「幅」を選択して、GPR画像の寸法を定義することができる。例えば、レンジゲートを選択して、GPR画像の上下の深度を定義することができる。レンジゲートは、特徴の安定性の低さ、特徴の個体数の小ささ、および/または変化したことが知られている特徴を有する表面下領域を回避するために選択されてもよい。これにより、より安定したおよび/またはより多くの特徴を有する領域が使用され、より正確な位置特定データの決定をもたらす。
【0050】
一実施形態では、各レーダー信号84、86は複数の周波数を含み、ここで第1のレーダー信号84の周波数は第2のレーダー信号86の周波数よりも低い。あるいは、2つのレーダー信号84、86の周波数範囲にいくらかの重複があってもよい。例えば、第1のレーダー信号84の最も高い周波数成分のいくつかは、第2のレーダー信号86の最も低い周波数成分よりも高い周波数であり得る。別の代替例では、第2のレーダー信号86の周波数範囲は、第1のレーダー信号84のすべての周波数を含むことができる。
【0051】
一実施形態では、第1および第2のレーダー信号84、86のいずれかまたは両方は、時間で変化する周波数を有してもよい。例えば、レーダー信号は、経時的に離散する周波数ランプを含むことができる。別の実施形態では、上述の第1および第2のレーダー信号84、86の実質的に同時和である単一のレーダー信号が送信され、表面下領域からのリターン信号は周波数成分に従って独立して処理され得る。
【0052】
上述の方法200の実施形態では、2つのレーダー信号が使用される。しかしながら、他の実施形態では、3以上のレーダー信号が使用されてもよい。例えば、第1および第2のレーダー信号84、86に加えて、1以上の中間レーダー信号が使用されてもよい。各中間レーダー信号は、第1のレーダー信号84の周波数Fよりも大きく、第2のレーダー信号86の周波数Fよりも小さく、他の中間レーダー信号の周波数とは異なる中間周波数を有することができる。GPR画像のセットは、各中間レーダー信号の対応する表面下領域について取得され、GPR画像のこれらのセットのそれぞれについて、車両の位置データが決定される。このように、複数のレベルで解像度を上げて最終的な位置特定を決定するまでの段階があってもよい。
【0053】
特定の実施形態を参照して本発明を示し説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく形態および詳細の様々な変更を行うことができることを当業者は理解すべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B