特許第6837714号(P6837714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6837714-スライドドアのダウンストッパ構造 図000002
  • 特許6837714-スライドドアのダウンストッパ構造 図000003
  • 特許6837714-スライドドアのダウンストッパ構造 図000004
  • 特許6837714-スライドドアのダウンストッパ構造 図000005
  • 特許6837714-スライドドアのダウンストッパ構造 図000006
  • 特許6837714-スライドドアのダウンストッパ構造 図000007
  • 特許6837714-スライドドアのダウンストッパ構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837714
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】スライドドアのダウンストッパ構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/06 20060101AFI20210222BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B60J5/06 A
   B60J5/00 P
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-254425(P2016-254425)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103909(P2018-103909A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 宏
(72)【発明者】
【氏名】高倉 このみ
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−061540(JP,U)
【文献】 米国特許第05606771(US,A)
【文献】 特開平09−030261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/06
E05D 15/10
E05F 5/00, 5/02, 7/04,15/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と前記ベース部に突起形状となる根元部が形成され、前記ベース部でピラー面に固定されるメールと、開口から奥部に向かって凹んだ凹状部材で、スライドドア面に配置されているフィメールを嵌合させるスライドドアのダウンストッパ構造であって、
前記メールの先端から前記ベース部までの間の前記根元部に、前記ベース部と前記根元部の接合部より外周壁間隔が大きく、かつ前記根元部の先端部よりも外周壁間隔が大きい、前記フィメールとの接触部が形成され、
前記メールと前記フィメールが嵌合された際に、前記接触部より直奥側の前記フィメールの内周壁間隔が前記接触部の直外側の前記メールの外周壁間隔より大きいことを特徴とするスライドドアのダウンストッパ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアのダウンストッパの構造に係るものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に設けられたスライドドアでは、車体上部のルーフの側端と、車体下方のロッカ部に設けられたレールに、スライドドア上部および下部に固定されたローラ付フランジでスライド可能に掛止されている。しかし、閉扉時にスライドドアとピラーの相対的な揺れが発生するのを防止するために、ダウンストッパが設けられている。
【0003】
ダウンストッパは、スライドドアとピラーの対向する面に設けられた凸状および凹状の部材で、材質は硬質ゴム、樹脂や金属である。スライドドアの閉扉時には、これらの部材が嵌合することで、スライドドアとピラーの相対的な揺れを防止する。以後、凸状部材を「メール」と呼び、凹状部材を「フィメール」と呼ぶ。
【0004】
メールおよびフィメールは、スライドドアとピラーの対抗する面に閉扉時に嵌合するように配置される。しかし、スライドドアの閉扉位置がずれたり、メールおよびフィメールの取付位置がずれると、強干渉する場合がある。強干渉の弊害としては、異音が発生するといったことが起こる。なお、メールとフィメールの取付位置とは、取付角度と面間距離である。
【0005】
特許文献1はこの問題を解決するスライドドアストッパ構造が開示されている。特許文献1では、フィメールの穴を、開口縁側を広くし、奥に向かって狭くなる断面形状とし、メールの突状部を先端が細く、根元に向かって幅広となる断面形状とする構造としている。このような形状であれば、メールとフィメールの対向位置がずれても、嵌合が可能である。
【0006】
しかし、特許文献1の場合、スライドドアとピラーの面間隔がずれてしまい、メールとフィメールの取付面間の距離が離れてしまうと、メールおよびフィメールの嵌合は不十分となる。このような場合は、特許文献2で示されるように、フィメールの開口断面とメールの突状断面をストレート形状にすることで、面間がばらついても隙が生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−030261号公報
【特許文献2】特開2014−190105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2のように、メールの凸状部とフィメールの凹状部を断面ストレートにすれば、スライドドアとピラーの面間隔のズレに対しては、メールとフィメール間に隙は生じない。しかし、メールとフィメールの取付位置(若しくはスライドドアとピラー間の対向位置関係)がずれてしまうと、強干渉となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、メールとフィメールの取付位置のばらつきと、スライドドアとピラーの面間隔のばらつきを同時に吸収できるスライドドアのダウンストッパ構造を提供するものである。
【0010】
より具体的に本発明に係るスライドドアのダウンストッパ構造は、
ベース部と前記ベース部に突起形状となる根元部が形成され、前記ベース部でピラー面に固定されるメールと、開口から奥部に向かって凹んだ凹状部材で、スライドドア面に配置されているフィメールを嵌合させるスライドドアのダウンストッパ構造であって、
前記メールの先端から前記ベース部までの間の前記根元部に、前記ベース部と前記根元部の接合部より外周壁間隔が大きく、かつ前記根元部の先端部よりも外周壁間隔が大きい、前記フィメールとの接触部が形成され、
前記メールと前記フィメールが嵌合された際に、前記接触部より直奥側の前記フィメールの内周壁間隔が前記接触部の直外側の前記メールの外周壁間隔より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスライドドアのダウンストッパ構造は、メールの外壁面とフィメールの内壁面の面全体同士で嵌合を予定するのではなく、メールとフィメールの間の接触部を、メールの外壁面とフィメールの内壁面のいずれかの一部分の領域に形成させる。すなわち、一方の接触可能領域が他方の接触可能領域より広くなる。したがって、フィメールとメールの取付位置がばらついても、接触部が狭い領域なので、強干渉にはならず、異音の発生を防止することができる。
【0012】
また、他方の接触可能領域が広いので、接触部は広い範囲で形成される。その結果、ピラーとスライドドアの面間隔がばらついたとしても、嵌合が外れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るスライドドアストッパが配置される位置を示す図である。
図2】スライドドアストッパ部の断面図である。
図3図2の嵌合を解いた状態を示す。
図4】取付位置のズレ、面間隔のズレによる本発明に係るスライドドアストッパの効果を示す図である。
図5】フィメール側に狭い接触予定領域を設けた場合の、スライドドアストッパの変形例を示す図である。
図6】メール側に狭い接触予定領域を設けた場合の、スライドドアストッパの変形例を示す図である。
図7】狭い接触予定領域を千鳥配置にした場合のスライドドアストッパの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係るスライドドアのダウンストッパ構造について図面を用いながら説明を行う。なお、以下の説明は本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明は以下の説明に限定されない。したがって、以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて改変することができる。なお、本明細書において矢印Frは車体前方向を示し、矢印Rrは車体後方向を示すものとする。
【0015】
図1(a)には、スライドドアを有する自動車の外観を示す。スライドドア10は車体に対して前後方向にスライドすることで開閉される。スライドドア10とピラー12の対向面が形成される領域11には、スライドドア10のダウンストッパ18が取り付けられている。たとえば、ここでは、領域13にダウンストッパ18が取り付けられているとする。
【0016】
図1(b)を参照して、ダウンストッパ18は、長円形状のメール20とフィメール30がスライドドア10とピラー12のそれぞれに配置される。なお、メール20とフィメール30のどちらをスライドドア10側及びピラー12側に装着するかは特に限定されない。本明細書では、スライドドア10側にフィメール30を配置し、ピラー12側にメール20を配置した状態で説明を続ける。ダウンストッパ18のメール20の長さを外壁長20Lとする。
【0017】
図1(b)のA−A断面を図2に示す。なお、図2では、ダウンストッパ18(図1(b)参照)が取り付けられたスライドドア10とピラー12も記載している。スライドドア10とピラー12の対向面はそれぞれスライドドア面10a、ピラー面12aとする。
【0018】
図2を参照して、ダウンストッパ18はピラー12に設置された凸状部材であるメール20が、スライドドア10側に設置された凹状部材であるフィメール30と嵌合することで、スライドドア10とピラー12の相対的な揺れを防止している。
【0019】
まず、メール20およびフィメール30の各部を説明する。図3にメール20とフィメール30の嵌合が外れた状態の断面図を示す。フィメール30は、開口30aから奥部30bに向かって凹んだ凹状部材である。フィメール30は、スライドドア面10aに配置されている。
【0020】
ここで、「奥部30b」とは、開口30aから見て、凹形状の底をいう。奥部30bは、フィメール30と同一材でなくてもよい。フィメール30が輪状のゴム材だけで形成された場合は奥部30bは、スライドドア面10aとなるからである。
【0021】
また、フィメール30の内周壁30wにおいて、対向する内周壁30w同士の間隔を内周壁間隔31とする。内周壁間隔31はいわゆる隙間である。また、開口30aの縁を開口縁30aeとする。
【0022】
一方メール20はベース部20bに突起が形成された凸状部材である。ベース部20bでピラー面12aに固定されている。メール20の先端を先端部20aとする。先端部20aからベース部20bまでの突起形状部分を根元部20rとする。
【0023】
また、メール20の外周壁20wにおいて、対向する外周壁20w同士の間隔を外周壁間隔21とする。外周壁間隔21は、メール20のいわゆる「厚み」である。また、すでに説明したように、全体として長円形状のメール20において、メール20の長さを外壁長20L(図1(b)参照)という。
【0024】
また、メール20およびフィメール30において、接触予定領域とは、相手部材と接触することを予定されている領域をいう。接触可能領域と呼んでもよい。接触予定領域はメール20とフィメール30の寸法によって判断することができる。
【0025】
図3において、フィメール30は、開口縁30aeから奥部30bに向かって内周壁間隔31が狭くなり、最も内周壁間隔31が狭くなる最短間隔地点32を過ぎてから、内周壁間隔31は広くなっていく。最短間隔地点32での内周壁間隔31を最短内周壁間隔31aとする。
【0026】
図3におけるフィメール30では接触予定領域は、この最短間隔地点32である。後述するように、図3の構成において、フィメール30の接触予定領域は、メール20の接触予定領域より狭い。そこで図3(および図2)において、フィメール30の接触予定領域を狭い接触予定領域45nと呼ぶ。
【0027】
一方、メール20は、根元部20rの外周壁間隔21は一定に形成されており、先端部20aは先細り形状になっている。先細り形状とは、メール20の頂点に向かうほど外周壁間隔21が薄くなる形状である。このメール20においては、接触予定領域は、根元部20rとなる。これはフィメール30の狭い接触予定領域45nより広いので、広い接触予定領域45wと呼ぶ。
【0028】
このように本発明に係るダウンストッパ構造1では、メール20とフィメール30の一方に狭い接触予定領域45nが形成され、他方に広い接触予定領域45wが形成される。後述するように、狭い接触予定領域45nと広い接触予定領域45wは、メール20とフィメール30のどちらにも形成することができる。
【0029】
再び図2を参照する。図3で説明したダウンストッパ18が嵌合した状態において、接触部40は、フィメール30の最短間隔地点32である。そして、メール20とフィメール30はこの接触部40以外では接触が予定されていない構造となっている。図2(b)には、図2(a)の一部拡大図を示す。図2(b)には、フィメール30の最短間隔地点32(接触部40)での最短内周壁間隔31aと、接触部40より奥部30b(図3参照)側のフィメール30の内周壁間隔31、接触部40より外側のメール20の外周壁間隔21を示した。
【0030】
ここで、接触部40より奥部30b側の内周壁間隔31は、接触部40より外側の外周壁間隔21より広い。より限定的には、さらに、接触部40より奥部30b側のメール20の外周壁間隔21は、対向するフィメール30の内周壁30wにおける内周壁間隔31より狭い。つまり、フィメール30の狭い隙間でメール20を摘むように嵌合している。
【0031】
このようなメール20およびフィメール30は、対向面であるスライドドア面10aとピラー面12aに対するそれぞれの取付位置が多少ずれていても、フィメール30がメール20を凹部の中心に導くことができ、嵌合する。
【0032】
図4(a)には、この様子を示す。メール20は正規の位置より図面上方にズレてピラー面12aに取り付けられたので、フィメール30との嵌合では、干渉部50が生じている。しかし、接触部40はフィメール30の内周壁30wのうちで限定的な領域となるので、干渉を乗り越えて嵌合状態を形成することができる。また、この際に異音の発生はほとんどない。
【0033】
また、スライドドア面10aとピラー面12aの面間隔11Lがずれている場合(離れている場合)でも、メール20での広い接触予定領域45wは根元部20rに渡っているので、接触部40より奥部30b側まで根元部20rが挿入されていれば、メール20の挿入深さに関わらず、メール20はフィメール30と嵌合状態を形成できる。
【0034】
図4(b)には、この様子を示す。スライドドア面10aとピラー面12aはスライドドア10を閉じたときに規定内であるが若干広く停止する。したがって、メール20のフィメール30に対する挿入量は図2の場合より浅い。しかし、フィメール30の接触部40がメール20の根元部20rと接触し、嵌合状態を維持できる。
【0035】
本発明に係るダウンストッパ構造1は、メール20とフィメール30が嵌合された際に、接触部40より直奥側のフィメール30の内周壁間隔31が接触部40の直外側のメール20の外周壁間隔21より大きくなるように形成することができれば、上記の構造に限定されるものではない。
【0036】
図5(a)は、接触部40の位置がよりフィメール30の奥部30b側に設けられた場合である。また図5(b)は、フィメール30の凹形状が全体としてストレートな穴形状であって、途中に凸状の接触部40が設けられた場合である。
【0037】
図6(a)、(b)、(c)は、メール20側の根元部20rに外周壁間隔21が大きくなる部分を形成した場合である。このように、接触部40は、フィメール30の内周壁30wに内周壁間隔31が狭い部分をつくるだけでなく、メール20の根元部20r(凸形状)に外周壁間隔21の厚い部分を作ってもよい。
【0038】
図5および図6のような変形例の場合であっても、メール20とフィメール30が嵌合された際に、接触部40より直奥側のフィメール30の内周壁間隔31が接触部40の直外側のメール20の外周壁間隔21より大きくなる。そして、いずれの場合も図2で示した例と同様に、取付位置のズレによって異音が発生することはほとんどなく、スライドドア面10aとピラー面12aの面間隔11Lがずれても、メール20とフィメール30の嵌合状態を確立することができる。
【0039】
なお、このような接触部40は、メール20の外壁長20Lに渡って、一部に形成されていればよい。また、離散的に複数箇所で形成されていてもよい。
【0040】
図7には、その一例を示す。図7(a)はメール20の側面図であり、図7(b)は下面図である。メール20には、狭い接触予定領域45nが千鳥上に配置されている。このような場合でも取付位置のズレによって異音が発生することはほとんどなく、スライドドア面10aとピラー面12aの面間隔11Lがずれても、メール20とフィメール30の嵌合状態を確立することができる。また、フィメール30側に狭い接触予定領域45nを千鳥配置に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るダウンストッパ構造は、スライドドアのダウンストッパ構造として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ダウンストッパ構造
10 スライドドア
10a スライドドア面
11L 面間隔
12 ピラー
12a ピラー面
18 ダウンストッパ
20 メール
20L 外壁長
20b ベース部
20a 先端部
20r 根元部
20w 外周壁
21 外周壁間隔
30 フィメール
30a 開口
30b 奥部
30w 内周壁
31 内周壁間隔
30ae 開口縁
31a 最短内周壁間隔
32 最短間隔地点
40 接触部
45n 狭い接触予定領域
45w 広い接触予定領域
50 干渉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7