特許第6837718号(P6837718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837718
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ヘミング加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/02 20060101AFI20210222BHJP
   B21D 19/08 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B21D39/02 E
   B21D19/08 C
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-97291(P2017-97291)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-192495(P2018-192495A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】抱 博高
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−249454(JP,A)
【文献】 特開2013−248620(JP,A)
【文献】 特開2008−272791(JP,A)
【文献】 特開2012−024832(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0040135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/02
B21D 19/04 − 19/08
B21D 43/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルとインナパネルとを重ね合わせるとともに、前記アウタパネルの縁部又は前記インナパネルの縁部に立設されるフランジ部を、ヘミングツールにより加工するヘミング加工装置において、
前記アウタパネルを保持するヘミング型と、前記ヘミング型を操作する第一操作装置と、前記インナパネルを支持する支持装置と、前記ヘミングツールを操作する第二操作装置とを備え
前記ヘミング型は、前記アウタパネルの外面に面接触することで前記アウタパネルの位置決めを行う規制面と、前記アウタパネルの前記縁部に接触するとともにヘミング加工時に前記ヘミングツールから前記フランジ部に加えられる荷重を受ける受け面と、前記ヘミングツールを前記フランジ部に沿って移動するように案内する案内部と、を有することを特徴とするヘミング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘミングツールによりパネル部材のヘミング加工を行うヘミング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、フードやドア等の車両用パネル部品では、金属製のアウタパネルとインナパネルとを結合一体化したパネル複合体が基材として製作される。二枚のパネルを一体化するには、重ね合わせた二枚のパネルを治具(ヘミング型)に載置し、アウタパネルの縁部に設けられたフランジ部をヘミング加工で折り曲げてヘム部に成形し、当該ヘム部によりインナパネルの縁部を挟持する。
【0003】
従来のヘミング加工装置では、プレス装置を用いて行う場合が多かったが、パネル形状に応じた多種多様なプレスヘミング型を保有しなければならず、多額の設備投資、及び広大な設備設置スペースが必要となっていた。そこで近年では、設備費用の低減化、省スペース化の観点から、ロボットアームによりヘミングツールを操作するヘミング加工装置が主流になりつつある。
【0004】
例えば特許文献1には、アウタパネル及びインナパネルからなるワークを載置・位置決めする治具と、ヘミングツール(ヘムローラ及びガイドローラ)を有する加工ヘッドと、加工ヘッドを搬送位置決めするロボットを備えるローラヘミング加工装置が開示される。このローラヘミング加工装置のロボットは、多軸多関節のロボットアームを備えており、加工ヘッドを操作することにより、アウタパネルの縁部に設けられるフランジ部(折曲げ部)を加工する。
【0005】
また、特許文献2には、定位置に水平に固定された作業ステージ上に汎用治具と下型の一式を位置決め保持し、下型上に位置決め保持されたワーク(アウタパネル及びインナパネル)の周縁部を、ヘミングツール(加工ユニット)を有するロボットアームによって加工するシステムが開示される。このヘミング加工システムでは、汎用治具上の複数箇所にクランプ機構が設置される。クランプ機構は、汎用治具上の下型にセットされたワークの周辺部における任意の複数箇所を押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−88217号公報
【特許文献2】特開2003−225721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に係るヘミング加工システムでは、ヘミング加工を精度良く行うために、複数のクランプ機構によってワークの複数箇所をクランプする必要があった。しかしながら、このようにワークの複数箇所をクランプしてしまうと、ロボットアームがワークの周縁部に沿ってヘミングツールを移動させる場合に、当該ヘミングツールを各クランプ機構から回避させる動作が必要となり、これによる作業効率の低下を招いていた。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、ヘミング加工の作業性を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、アウタパネルとインナパネルとを重ね合わせるとともに、前記アウタパネルの縁部又は前記インナパネルの縁部に立設されるフランジ部を、ヘミングツールにより加工するヘミング加工装置において、前記アウタパネルを保持するヘミング型と、前記ヘミング型を操作する第一操作装置と、前記インナパネルを支持する支持装置と、前記ヘミングツールを操作する第二操作装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、アウタパネルをヘミング型により保持し、当該へミンング型を第一操作装置により操作することで、支持装置に支持されるインナパネルにアウタパネルを効率良く重ねることができる。また、ヘミング型によりアウタパネルを保持し、当該アウタパネルをインナパネルに重ね合わせた状態を維持することにより、クランプ機構を使用することなく各パネルの位置決めを行うことができる。したがって、ヘミングツールを保持する第二操作装置は、クランプ機構を回避する動作を行う必要がなく、ヘミング加工を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヘミング加工の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一実施形態に係るヘミング加工装置の側面図である。
図2】へミング加工装置の要部拡大図である。
図3】ヘミング加工装置を含む加工システムの平面図である。
図4】ヘミング加工方法の一工程を示す側面図である。
図5】ヘミング加工方法の一工程を示す側面図である。
図6】ヘミング加工方法の一工程を示す側面図である。
図7】ヘミング加工方法の一工程を示す拡大側面図である。
図8】ヘミング加工方法の一工程を示す拡大側面図である。
図9】第二実施形態に係るヘミング加工装置の側面図である。
図10】第三実施形態に係るヘミング加工装置の側面図である。
図11】第四実施形態に係るヘミング加工装置の側面図である。
図12】第五実施形態に係るヘミング加工装置の側面図である。
図13】ヘミング加工方法の一工程を示す拡大側面図である。
図14】ヘミング加工方法の一工程を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1乃至図8は、本発明に係るヘミング加工装置の第一実施形態を示す。
【0014】
図1乃至図8に示すように、ヘミング加工装置1は、アウタパネル2とインナパネル3とを重ね合わせるとともに、アウタパネル2の縁部に立設されるフランジ部4をヘミングツール5により加工することで、両パネル2,3を一体化してなるパネル複合体Pを形成する。パネル複合体Pは、例えば車両のドア、フード、トランクリッド、フェンダその他の各種車体パネル部品の基材となる。
【0015】
図1に示すように、アウタパネル2は、車両の外側に面する第一の面2a(外面)と、インナパネル3に面する第二の面2b(内面)とを有する。アウタパネル2は、ヘミング加工前において、その周縁部に立設されるフランジ部4を有する。
【0016】
インナパネル3は、アウタパネル2に面する第一の面3aと、車室側に面する第二の面3bとを有する。インナパネル3は、ヘミング加工装置1の一部が挿入される位置決め孔3cと、各種部品を装着するための開口部3dとを有する。
【0017】
図1及び図2に示すように、ヘミング加工装置1は、アウタパネル2を保持するヘミング型6と、ヘミング型6を操作する第一操作装置7と、インナパネル3を支持する支持装置8と、ヘミングツール5を操作する第二操作装置9とを備える。
【0018】
ヘミング型6は、型本体10と、アウタパネル2の縁部に接触する受け部11と、アウタパネル2を保持する吸着部12とを備える。
【0019】
型本体10は、樹脂製とされるが、これに限らず金属により構成されてもよい。型本体10は、アウタパネル2の第一の面2aに接触してその位置決めを行う規制面10aと、吸着部12を配置するための開口部10bと、ヘミングツール5の一部に係合する案内部10cとを有する。
【0020】
規制面10aは、アウタパネル2の第一の面2aに面接触するように、凹状の曲面として構成される。開口部10bは、型本体10を貫通する孔として構成されてもよく、規制面10aから凹む凹部として構成されてもよい。案内部10cは、ヘミングツール5の一部が嵌合する溝部により構成される。案内部10cは、ヘミングツール5がアウタパネル2のフランジ部4に沿って移動するように、当該ヘミングツール5を案内(規制)する。
【0021】
受け部11は、例えば金属により構成されるが、この材質に限定されない。受け部11は、アウタパネル2の縁部に接触する受け面11aを有する。受け面11aは、ヘミング加工時にヘミングツール5と対向し、当該ヘミングツール5からフランジ部4に加えられる荷重を受ける。
【0022】
吸着部12は、真空ポンプ(図示せず)に接続される吸着パッドにより構成される。吸着部12は、真空ポンプを介して吸着パッドの内部に負圧を生じさせることで、アウタパネル2における第一の面2aの一部を吸着するとともに、当該第一の面2aの他の部分を型本体10の規制面10aに密着させる。
【0023】
支持装置8は、インナパネル3の位置決め孔3cに挿通可能なピン8aと、インナパネル3を支持する支持部8bとを有する治具である。支持装置8は、混流生産における段替えを可能にすべく、複数種の車種に対応するように、複数種のピン8a及び複数種の支持部8bを備える。
【0024】
ピン8aは、その端部が尖端状に構成されるとともに、その基部が支持部8bに対して着脱自在に構成される。ピン8aは、インナパネル3の位置決め孔3cに挿入されることにより、当該インナパネル3の位置決めを行う。
【0025】
支持部8bは、ピン8a及び位置決め孔3cよりも大径に構成されるとともに、その端面によりインナパネル3の第二の面3bを支持する。支持部8bは、ピストン・シリンダ機構その他の手段により、上下方向及び水平方向に移動可能に構成される。
【0026】
本実施形態における第一操作装置7は、多軸多関節ロボットアームにより構成されており、ヘミング型6を操作して三次元的に移動させる。第一操作装置7は、オートアタッチメントチェンジャ(AAC)等の使用により、複数のヘミング型6を交換可能に保持する。第一操作装置7は、ヘミング型6との連結部分にイコライザ機構を備え得る。
【0027】
第二操作装置9は、多軸多関節ロボットアームにより構成されており、ヘミングツール5を三次元的に移動させる。第二操作装置9は、オートアタッチメントチェンジャ(AAC)、オートツールチェンジャ(ATC)等の使用により、複数のヘミングツール5を交換可能に支持する。
【0028】
ヘミングツール5は、ツール本体13と、ヘムローラ14と、ガイドローラ15とを備える。ツール本体13は、ヘムローラ14を角度変更可能に支持し、ガイドローラ15を位置変更可能に支持する。
【0029】
ヘムローラ14は、ローラ部14aと、ローラ部14aを支持する軸部14bとを有する。ローラ部14aの長さは、アウタパネル2のフランジ部4よりも長く構成される。軸部14bの一端部は、ローラ部14aを支持しており、軸部14bの他端部は、ツール本体13に連結される。軸部14bは、ローラ部14aの角度を変更するように、ツール本体13によって回動自在に支持される。
【0030】
ガイドローラ15は、ローラ部15aと、ローラ部15aを支持する軸部15bとを有する。ガイドローラ15のローラ部15aは、ヘムローラ14から離間された状態で軸部15bを介してツール本体13に支持される。ローラ部15aは、ヘミング型6の型本体10に形成される案内部10cに嵌る環状の規制部15cを有する。規制部15cは、ローラ部15aの半径方向外方に突出する凸部である。軸部15bは、ローラ部15aがヘムローラ14に対して接近・離反するように、ツール本体13に支持される。
【0031】
図3は、パネル複合体Pを製造可能な加工システム(製造組立ライン)を示す。加工システムは、インナパネル3の搬入ステーションS1と、アウタパネル2とインナパネル3とを重ねてパネル複合体Pを組み立てる組立ステーションS2と、アウタパネル2の搬入ステーションS3と、ヘミング型6の待機ステーションS4と、パネル複合体Pの搬出ステーションS5とを含む。また、加工システムは、組立ステーションS2に配置されるヘミング加工装置1及び溶接装置16と、インナパネル3を移載する第一移載装置17と、アウタパネル2を移載する第二移載装置18と、パネル複合体Pの搬送装置19と、各装置1,16〜19の制御を実行する制御装置20とを備える。
【0032】
組立ステーションS2に配備されるヘミング加工装置1は、一台の第一操作装置7と、一台の支持装置8と、二台の第二操作装置9とを有する。この構成に限らず、ヘミング加工装置1は、複数台の第一操作装置7及び支持装置8を備え得る。
【0033】
溶接装置16は、多軸多関節ロボットアームにより構成されるが、この構成に限定されない。溶接装置16は、インナパネル3に対して、リインフォースメント、防護ビーム、ヒンジ等の各種部品をスポット溶接により固定する。なお、本実施形態では、組立ステーションS2に二台の溶接装置16が配置されているが、溶接装置16の数は、これに限定されない。
【0034】
第一移載装置17及び第二移載装置18は、多軸多関節ロボットアームにより構成されるが、この構成に限定されない。第一移載装置17は、インナパネル3を把持可能なアタッチメントを有する。第二移載装置18は、アウタパネル2を把持可能なアタッチメントを有する。第一移載装置17は、搬入ステーションS1に配置されるインナパネル3を、組立ステーションS2の支持装置8へと移載する。第二移載装置18は、アウタパネル2を搬入ステーションS3から待機ステーションS4へと移載する。
【0035】
搬送装置19は、多軸多関節ロボットアームにより構成されるが、この構成に限定されない。搬送装置19は、ヘミング型6を着脱自在に保持できる。搬送装置19は、ヘミング加工装置1によるヘミング加工を経て構成されるパネル複合体Pを、組立ステーションS2の支持装置8から搬出ステーションS5へと搬出する。
【0036】
制御装置20は、例えばCPU、ROM、RAM、HDD、モニタ、入力インタフェース(キーボード、マウス等)といった各種ハードウェアを実装するコンピュータ(例えばPC、制御盤等)を含む。制御装置20は、CPUにより構成される演算処理部と、ROM、RAM、HDD等により構成される記憶部と、各装置7〜9,16〜19に対して制御信号の送受信を行う通信部とを備える。これらの各要素はバスにより相互に接続されている。
【0037】
以下、上記構成の加工システムによるパネル複合体Pの製造方法(ヘミング加工方法)を説明する。
【0038】
本方法は、パネル複合体Pの組立工程と、パネル複合体9の搬出工程とを備える。組立工程は、インナパネル3に各種部品を固定する溶接工程と、インナパネル3にアウタパネル2を重ねる準備工程と、アウタパネル2に形成されるフランジ部4を加工するヘミング加工工程とを備える。
【0039】
溶接工程では、まず、搬入ステーションS1にて待機するインナパネル3を支持装置8へと移載する。第一移載装置17は、制御装置20から送信される制御信号により、インナパネル3を保持するとともに、当該インナパネル3の位置決め孔3cを、組立ステーションS2に配置される支持装置8のピン8aに挿通させる。これにより、インナパネル3は支持装置8の支持部8bに支持される。次に、インナパネル3に、リインフォースメント、防護ビーム、ヒンジ等の各種部品が組み付けられる。その後、溶接装置16によって各部品がインナパネル3に固定される。
【0040】
準備工程では、第二移載装置18は、制御装置20からの制御信号により、搬入ステーションS3に配されたアウタパネル2を待機ステーションS4へと移動させる。第二移載装置18は、アウタパネル2を待機ステーションS4に配されたヘミング型6に設置する。ヘミング型6は、アウタパネル2の第一の面2aを吸着部12に吸着させる。アウタパネル2の第一の面2aは、ヘミング型6の規制面10aに接触する。これにより、アウタパネル2は、ヘミング型6に固定される。その後、ヘミング型6は、第一操作装置7に装着される。第一操作装置7は、制御装置20の制御により、アウタパネル2を保持したヘミング型6を組立ステーションS2へと移動させる。
【0041】
図4及び図5に示すように、準備工程において第一操作装置7は、ヘミング型6を移動させることで、アウタパネル2をインナパネル3に重ね合わせる。第一操作装置7は、アウタパネル2がインナパネル3に重ねられると、ヘミング型6を停止させる。第一操作装置7は、当該第一操作装置7及びヘミング型6の自重がアウタパネル2及びインナパネル3に作用しないように、当該ヘミング型6をその停止位置で支持し続ける。また、第一操作装置7は、アウタパネル2の位置決めを維持するために、この状態において吸着部12によるアウタパネル2の保持を継続する。以上により、準備工程が終了する。
【0042】
ヘミング加工工程では、制御装置20の制御によって、第二操作装置9に保持されるヘミングツール5がヘミング型6に設置される。具体的には、図6に示すように、第二操作装置9の操作により、ヘミング型6の案内部10cに、ガイドローラ15の規制部15cが嵌合する。また、ヘミングツール5は、ヘムローラ14とガイドローラ15との離間距離、位置等を調整する。これにより、ヘムローラ14のローラ部14aがアウタパネル2のフランジ部4に接触する。その後、第二操作装置9は、アウタパネル2のフランジ部4に沿ってヘミングツール5を移動させる。このとき、ガイドローラ15は、規制部15cがヘミング型6の案内部10cに嵌合した状態で、当該案内部10cに沿って走行(回転)する。
【0043】
図7に示すように、ヘミングツール5は、加工中にヘムローラ14の角度を複数回にわたって変更する。これにより、アウタパネル2のフランジ部4は徐々に曲げられる。最終的に、ヘムローラ14がフランジ部4をインナパネル3の縁部に接触するように曲げることで、アウタパネル2とインナパネル3との周縁部に、接合部Paが構成される(図8参照)。
【0044】
搬出工程では、支持装置8にパネル複合体Pを支持させた状態で、オートアタッチメントチェンジャにより、第一操作装置7によるヘミング型6の保持が解除される。その後、搬送装置19は、ヘミング型6を装着する。搬送装置19は、制御装置20の制御によってヘミング型6を移動させることにより、パネル複合体Pを支持装置8から取り外す。さらに、搬送装置19は、ヘミング型6及びパネル複合体Pを組立ステーションS2から搬出ステーションS5へと移動させる。その後、搬送装置19は、ヘミング型6の保持を解除する。これにより、パネル複合体Pは、ヘミング型6に保持された状態で、搬出ステーションS5に移載される。
【0045】
以上説明した本実施形態のヘミング加工装置1によれば、アウタパネル2をヘミング型6により保持し、当該ヘミング型6を第一操作装置7により操作することで、支持装置8に支持されるインナパネル3に、アウタパネル2を効率良く重ねることができる。また、ヘミング型6によりアウタパネル2を保持し、当該アウタパネル2をインナパネル3に重ね合わせた状態を維持することにより、クランプ機構を使用することなく各パネル2,3の位置決めを行うことができる。したがって、ヘミングツール5を保持する第二操作装置9は、クランプ機構を回避する動作を行う必要がなく、ヘミング加工を効率良く行うことができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、インナパネル3を支持装置8に支持させることで、インナパネル3の組立工程(溶接工程)と、その後の準備工程、ヘミング加工工程を同じ組立ステーションS2(同一工程)にて実行できる。これにより、パネル複合体Pの製造効率を向上させることができる。
【0047】
上記のヘミング加工装置1は、多品種の車両に対応する車体パネル部品を混流生産する場合に、その段替えを効率良く行うことができる。すなわち、ヘミング加工装置1は、複数種の車両に対応する複数種のヘミング型6を使用し、各車両に対応するヘミング型6により各アウタパネル2を保持し、車種に対応するインナパネル3の形状・構造に応じて、支持装置8の位置を変更することにより、当該アウタパネル2及びインナパネル3の段替えを実行できる。
【0048】
図9は、ヘミング加工装置の第二実施形態を示す。本実施形態に係るヘミング加工装置1では、ヘミングツール5の構成が第一実施形態と異なる。ヘミングツール5は、ヘムローラ14の他、第一ガイドローラ15A及び第二ガイドローラ15Bを有する。第一ガイドローラ15A及び第二ガイドローラ15Bとは、相互の離間距離を変更するように、ツール本体13に支持される。各ガイドローラ15A,15Bの具体的な構成は、第一実施形態のガイドローラ15と同じである。
【0049】
ヘミング型6の型本体10は、第一ガイドローラ15Aを案内する第一案内部10cと、第二ガイドローラ15Bを案内する第二案内部10dとを有する。第一案内部10cは、上方に面する溝部であり、第二案内部10dは、下方に面する溝部である。第一案内部10cには、第一ガイドローラ15Aのローラ部15aにおける規制部15cが嵌合する。第二案内部10dには、第二ガイドローラ15Bのローラ部15aにおける規制部15cが嵌合する。このように、ヘミングツール5は、上方に位置する第一ガイドローラ15Aと、下方に位置する第二ガイドローラ15Bとによってヘミング型6の型本体10の一部を挟持することで、当該ヘミング型6に装着される。
【0050】
図10は、ヘミング加工装置の第三実施形態を示す。上記の第一実施形態では、アウタパネル2は、そのフランジ部4が下方を向くように、インナパネル3に重ねられていたが、本実施形態では、アウタパネル2のフランジ部4が側方を向くように、起立状態で第一操作装置7に支持される。また、支持装置8は側方(水平方向)を向いており、インナパネル3を起立状態で支持する。
【0051】
図11は、ヘミング加工装置の第四実施形態を示す。本実施形態において、支持装置8は、多軸多関節ロボットアームにより構成される。支持装置8は、その端部にインナパネル3を着脱自在に保持する保持型21を有する。保持型21は、インナパネル3の第二の面3bに接触可能な受け面21aと、インナパネル3を保持する吸着部22とを有する。
【0052】
ヘミング加工装置1は、保持型21によってインナパネル3を吸着保持した状態で、支持装置8により、インナパネル3を三次元的に移動させる。したがって、ヘミング加工装置1は、インナパネル3の形状に応じて、当該インナパネル3を最適な姿勢に位置決めできる。
【0053】
図12乃至図14は、ヘミング加工装置の第五実施形態を示す。本実施形態において、ヘミングツール5は、予備ヘム刃23と、本ヘム刃24とを有する(図12参照)。第二操作装置9は、予備ヘム刃23と、本ヘム刃24とを操作する駆動機構を有する。駆動機構としては、例えばテーブルトップ式のヘミング加工装置に使用されるヘミングリンクユニットを使用することが望ましい。駆動機構は、流体圧シリンダ、サーボモータ等の駆動源により駆動される。本実施形態では、ヘミング加工工程において、図13に示す予備ヘム刃23による予備ヘミング加工と、図14に示す本ヘム刃24による本ヘミング加工とが実行される。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
上記の実施形態では、アウタパネル2にフランジ部4が形成された例を示したが、これに限定されず、インナパネル3にフランジ部4が形成されてもよい。
【0056】
上記の第一実施形態では、準備工程において、ヘミング型6が保持したアウタパネル2を第一操作装置7によってインナパネル3に重ね合わせる例を示したが、これに限定されない。第一操作装置7とは別の搬送手段(例えば第二移載装置18)によって、アウタパネル2をインナパネル3に重ねた後、第一操作装置7が保持するヘミング型6をアウタパネル2に接触させ、当該アウタパネル2を位置決めした上で、ヘミング加工を実行してもよい。この場合、ヘミング型6は吸着部12を備えていなくともよい。すなわち、本発明におけるヘミング型6によるアウタパネル2の「保持」は、規制面10aにアウタパネル2の第一の面2aを接触させた状態をいう。
【0057】
上記の実施形態では、ヘミング型6の型本体10における案内部10c,10dを溝部とした例を示したが、この構成に限定されない。案内部10c,10dは、型本体10に設けられるガイドレールにより構成されてもよい。この場合、ヘミングツール5のヘムローラ14には、ガイドレールに接触する係合部が形成される。
【0058】
上記の第一実施形態では、搬入ステーションS1に配置されるインナパネル3を第一移載装置17によって組立ステーションS2の支持装置8に移載する例を示したが、この構成に限定されない。例えば、インナパネル3の搬入ステーションS1に、台車等によって支持装置8を移動可能に配置し、支持装置8にインナパネル3を支持させた状態で、インナパネル3の組立工程を実行してもよい。その後、インナパネル3を支持装置8に支持させた状態で、当該支持装置8を組立ステーションS2に移動させ、そのままヘミング加工工程へと移行してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ヘミング加工装置
2 アウタパネル
3 インナパネル
4 フランジ部
5 ヘミングツール
6 ヘミング型
7 第一操作装置
8 支持装置
9 第二操作装置
図1
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