(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837721
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】搬送ローラーの状態管理システム
(51)【国際特許分類】
B65G 43/02 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-162935(P2017-162935)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-38670(P2019-38670A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 素史
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 信幸
【審査官】
宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/019431(WO,A1)
【文献】
特開2008−185231(JP,A)
【文献】
特開2005−138979(JP,A)
【文献】
特開2009−233982(JP,A)
【文献】
特開2011−213440(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0206606(US,A1)
【文献】
特開2005−225582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00−69/34
F27B 1/00−21/14
G01B 1/00−21/32
B41F 1/00−35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送させる搬送ローラーが複数設けられたローラー式搬送装置における搬送ローラーの状態管理システムにおいて、前記の搬送ローラーの変形量を検知する変形量検知センサーとして、搬送ローラーにおけるローラー軸の曲がり量を計測する曲がり量計測センサーと、搬送ローラーにおけるローラー軸の伸び量を計測する伸び量計測センサーとの少なくとも1つを設けると共に、前記の変形量検知センサーによって検知された搬送ローラーにおけるローラー軸の変形量に基づいて搬送ローラーにおける変形状態を判別する判別装置と、この判別装置による判別結果に基づいて各搬送ローラーの状態を管理する管理装置を設け、前記の判別装置による判別結果に基づいて、前記の管理装置により、各搬送ローラーの交換時期を管理して、各搬送ローラーの交換を行うことを特徴とする搬送ローラーの状態管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の変形量検知センサーとして、前記の判別装置による判別結果を前記の管理装置に通信する通信手段を設けたことを特徴とする搬送ローラーの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搬送させる搬送ローラーが複数設けられたローラー式搬送装置において、前記の各搬送ローラーの変形量を検知して、各搬送ローラーの状態を管理するようにした搬送ローラーの状態管理システムに関するものである。特に、搬送ローラーが複数設けられたローラー式搬送装置において、各搬送ローラーにおける変形量を検知して、各搬送ローラーにおける変形状態を判別し、各搬送ローラーの状態を適切に管理して、搬送ローラーが変形して使用できなくなる以前の段階で、劣化した搬送ローラーの交換等を適切な時期に簡単に行えるようにした点に特徴を有するものでる。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉内などにおいて、ワークを搬送させながら処理するにあたっては、従来から、複数の搬送ローラーをワークの搬送方向に所要間隔を介して配置させるようにし、このように配置された搬送ローラーによってワークを搬送させるようにしたローラー式搬送装置が広く利用されている。
【0003】
ここで、前記のように複数の搬送ローラーをワークの搬送方向に所要間隔を介して配置させたローラー式搬送装置により、熱処理炉内などにおいて搬送させるようにした場合、搬送ローラーが熱などによって次第に劣化し、搬送ローラーが折損したり、変形したりして、ワークをローラー式搬送装置によって適切に搬送させることが困難になるという問題があった。
【0004】
そして、従来においては、特許文献1に示されるように、各々のローラーにおける一端部側の外周面の一部分に電極部を形成し、また各々のローラーに対しては、電極部を形成側の外周面に接触する接触子を配置する一方、各接触子には、各搬送ローラーの回転に伴う電極部と接触子を介しての電気的な導通、非導通を検出する検出手段を接続し、この検出手段によってローラーの折損を検出するようにしたものが提案されている。
【0005】
しかし、このように検出手段によって各ローラーが折損したことを検出するようにした場合、熱処理炉などにおいては、ローラーが折損した時点で、ローラーによってワークを搬送させる作業を停止させることが必要になり、生産性が大幅に低下し、またローラーが折損するのを予測することができないため、交換用のローラーをどの程度準備しておけばよいか予測することができず、ローラーを交換する準備が困難になるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2においては、熱処理炉内などにおいて、ワークを搬送ローラーが複数設けられたローラー式搬送装置により搬送させるようにした場合、搬送ローラーが熱などによって次第に変形するため、搬送ローラーを回転駆動させるモーターの回転を制御する制御手段を設け、この制御手段が、搬送ローラーの重心位置を合わせる重心位置合わせ手段と、搬送ローラーの曲がりを強制する搬送ローラーの曲がり矯正手段とを備えるようにしたものが提案されている。
【0007】
そして、この特許文献2のものにおいては、熱処理炉内などにおいて搬送ローラーが熱によって変形した場合に、前記の制御手段によって搬送ローラーを回転駆動させるモーターの回転を制御して、重心位置がずれたりして変形した搬送ローラーを、所定の状態に適当な時間維持させて、変形した搬送ローラーの状態を矯正させることが提案されている。
【0008】
しかし、このように熱によって変形した搬送ローラーの状態を、搬送ローラーを回転駆動させるモーターの回転を制御して、変形した搬送ローラーを矯正させるためには、その制御が非常に面倒であると共に時間を要し、生産性が大きく低下するという問題があった。また、変形した搬送ローラーを前記のようにして適切に矯正させることが困難な場合もあり、この場合には、変形した搬送ローラーを交換させることが必要になり、前記の特許文献1の場合と同様に、交換用の搬送ローラーをどの程度準備しておけばよいか予測することができず、搬送ローラーを交換する準備が困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−110168号公報
【特許文献2】特開2008−185231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ワークを搬送させる搬送ローラーが複数設けられたローラー式搬送装置において、各搬送ローラーにおける変形量を適切に検知して、各搬送ローラーにおける変形状態を判別し、各搬送ローラーの状態を適切に管理して、搬送ローラーが変形して使用できなくなる以前の段階で、劣化した搬送ローラーの交換等を適切な時期に簡単に行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る搬送ローラーの状態管理システムにおいては、前記のような課題を解決するため、ワークを搬送させる搬送ローラーが複数設けられたローラー式搬送装置における搬送ローラーの状態管理システムにおいて、前記の搬送ローラーの変形量を検知する変形量検知センサー
として、搬送ローラーにおけるローラー軸の曲がり量を計測する曲がり量計測センサーと、搬送ローラーにおけるローラー軸の伸び量を計測する伸び量計測センサーとの少なくとも1つを設けると共に、前記の変形量検知センサーによって検知された搬送ローラーにおけるローラー軸の変形量に基づいて搬送ローラーにおける変形状態を判別する判別装置と、この判別装置による判別結果に基づいて各搬送ローラーの状態を管理する管理装置
を設け、前記の判別装置による判別結果に基づいて、前記の管理装置により、各搬送ローラーの交換時期を管理して、各搬送ローラーの交換を行うようにした。
【0013】
そして、この搬送ローラーの状態管理システムのように、前記の変形量検知センサーによって搬送ローラーにおけるローラー軸の変形量を検知し、この変形量検知センサーによって検知された搬送ローラーにおけるローラー軸の変形量に基づいて、判別装置により搬送ローラーにおける変形状態を判別し、この判別装置による判別結果に基づいて管理装置により各搬送ローラーの状態を管理させるようにすると、搬送ローラーが変形して使用できなくなる以前の段階で、交換すべき搬送ローラーの変形状態及びその数や位置を簡単に確認できるようになる。
【0014】
ここで、前記の搬送ローラーの状態管理システムにおいては、前記の判別装置による判別結果を前記の管理装置に通信する通信手段を設けるようにすることができる。そして、このように判別装置による判別結果を通信手段によって前記の管理装置に通信させるようにすると、例えば、管理装置を搬送ローラーのメンテナンスを管理するメーカーなどに設置しておくことにより、搬送ローラーが変形して使用できなくなる以前の段階で、搬送ローラーの変形状態及びその数や位置等を簡単に確認でき、予め交換を行う搬送ローラーの数量などを準備しておくことができるようになる。
【0015】
そして、
本発明の搬送ローラーの状態管理システムにおいては、前記の
ように判別装置による判別結果に基づいて、前記の管理装置により各搬送ローラーの交換時期を管理し、この管理装置による管理結果に基づいて搬送ローラーの交換を行うように
している。このようにすると、ローラー式搬送装置において劣化した搬送ローラーを適切な時期にすぐに交換できるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における搬送ローラーの状態管理システムにおいては、前記のように
搬送ローラーにおけるローラー軸の曲がり量を計測する曲がり量計測センサーや、搬送ローラーにおけるローラー軸の伸び量を計測する伸び量計測センサーを用いた変形量検知センサーによって搬送ローラーにおけるローラー軸の変形量を検知し、この変形量検知センサーによって検知された搬送ローラーにおけるローラー軸の変形量に基づいて、判別装置により搬送ローラーにおける変形状態を判別し、この判別装置による判別結果に基づいて
、管理装置により各搬送ローラーの状態を管理し
て、各搬送ローラーの交換時期を管理し、各搬送ローラーの交換を行うようにしたため、搬送ローラーが変形して使用できなくなる以前の段階で、交換すべき搬送ローラーの変形状態及びその数や位置を簡単に確認できるようになる。
【0017】
この結果、本発明においては、ローラー式搬送装置において劣化した搬送ローラーを適切な時期に交換することができ、熱処理炉などにおける生産性が低下するのを防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態において、熱処理炉内におけるローラー式搬送装置によりワークを搬送させて熱処理する状態を示した長手方向に沿った縦方向の概略断面図である。
【
図2】前記の実施形態において、ワークを搬送させる搬送方向に所要間隔を介して、複数の搬送ローラーを配置させ、各搬送ローラーにおけるローラー軸の変形量を、曲がり量計測センサーと伸び量計測センサーとからなる変形量検知センサーにより検知し、検知されたローラー軸の変形量に基づいて搬送ローラーにおける変形状態を判別装置により判別し、この判別結果を各搬送ローラーの状態を管理する管理装置に通信する構成を示した長手方向に沿った横方向の部分断面説明図である。
【
図3】前記の実施形態において、ローラー式搬送装置における1つの搬送ローラーを例にして、この搬送ローラーにおけるローラー軸の変形量を、曲がり量計測センサーと伸び量計測センサーとからなる変形量検知センサーにより検知し、検知されたローラー軸の変形量に基づいて搬送ローラーにおける変形状態を判別装置により判別し、この判別結果を搬送ローラーの状態を管理する管理装置に通信する構成を示した搬送方向と交差する方向における概略断面説明図である。
【
図4】帯状のワークを巻き付けて搬送するローラー式搬送装置を示す縦方向の概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る搬送ローラーの状態管理システムを添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る搬送ローラーの状態管理システムは下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0020】
ここで、
図1においては、熱処理炉10の長手方向両側における搬入口11から搬出口12に向けてワークWを搬送させるにあたり、ローラー式搬送装置20として、複数の搬送ローラー21をワークWの搬送方向に所要間隔を介して配置させるようにしている。ワークWは、ここでは帯状の鋼帯(金属ストリップ)として説明するが、ローラーで搬送できるものであればどのようなものであってもよい。
【0021】
そして、前記のローラー式搬送装置20においては、
図2及び
図3に示すように、各搬送ローラー21におけるローラー軸21aの両側の端部を、熱処理炉10のワークWを搬送方向に沿った両側の側壁13を通して、それぞれ側壁13の外側に設けたそれぞれの軸受け部材22、23に回転可能に保持させるようにしている。
【0022】
ここで、前記の各搬送ローラー21におけるローラー軸21aの一端側においては、ローラー軸21aの端部が上下方向や及び軸方向にずれないようにして回転可能に保持する市販の軸受け部材22に保持させるようにしている。一方、各搬送ローラー21におけるローラー軸21aの他端側においては、ローラー軸21aの端部が軸方向に延びたり、上下方向に曲がったりできるようにして回転可能に保持する市販の軸受け部材23に保持させるようにしている。
【0023】
また、この実施形態においては、前記のようにローラー軸21aの端部が軸方向に延びたり、上下方向に曲がったりできるようにして前記の軸受け部材23に回転可能に保持させた各搬送ローラー21におけるローラー軸21aの他端側において、各搬送ローラー21における変形量を検知する変形量検知センサー30として、前記のように側壁13を通して前記の軸受け部材23に回転可能に保持されたローラー軸21aの端部において、ローラー軸21aにおける上下方向の曲がり量を計測する曲がり量計測センサー31と、前記のローラー軸21aの伸び量を計測する伸び量計測センサー32とを設けている。
【0024】
そして、この実施形態においては、前記の各曲がり量計測センサー31によって計測した各搬送ローラー21におけるローラー軸21aの上下方向の曲がり量と、前記の各伸び量計測センサー32によって計測した各搬送ローラー21におけるローラー軸21aの軸方向の伸び量とをそれぞれ判別装置40に出力し、前記の搬送ローラー21におけるローラー軸21aの上下方向の曲がり量と搬送ローラー21におけるローラー軸21aの軸方向の伸び量とに基づいて、この判別装置40によって各搬送ローラー21における変形状態を判別するようにしている。
【0025】
次いで、このように各曲がり量計測センサー31によって計測した各搬送ローラー21におけるローラー軸21aの上下方向の曲がり量と、各伸び量計測センサー32によって計測した各搬送ローラー21におけるローラー軸21aの軸方向の伸び量とに基づいて、前記の判別装置40によって判別した各搬送ローラー21における変形状態の結果を、インターネット等の通信手段60によって管理装置50に出力し、判別装置40から出力された結果に基づいて、この管理装置50により各搬送ローラー21の変形状態の結果を管理し、各搬送ローラー21における交換時期を管理するようにしている。
【0026】
このように、各曲がり量計測センサー31や各伸び量計測センサー32を用いた変形量検知センサー30によって計測した各搬送ローラー21における変形量に基づいて、前記の判別装置40により各搬送ローラー21における変形状態を判別し、この判別装置40による判別結果に基づいて、前記の管理装置50により各搬送ローラー21の変形状態の結果を管理させるようにすると、各搬送ローラー21が変形して使用できなくなる以前の段階で、各搬送ローラー21の交換時期や、交換すべき搬送ローラー21の数及び位置を簡単に確認できるようになる。
【0027】
ここで、前記のように判別装置40による判別結果を通信手段60によって管理装置50に通信させるにあたり、管理装置50を搬送ローラー21のメンテナンスを管理するメーカーなどに設置しておくことにより、各搬送ローラー21が変形して使用できなくなる以前の段階で、各搬送ローラー21の変形状態及びその数や位置等を簡単に確認でき、予め交換を行う搬送ローラー21の数量などを準備しておき、ローラー式搬送装置20において、劣化した搬送ローラー21を適切に検知して、適当数の搬送ローラー21を適切な時期にすぐに交換できるようになる。
【0028】
なお、ここで言う「適切な時期」とは、ローラー式搬送装置20を用いた設備の操業において、操業を停止することが予め定められたメンテナンス日などが該当する。設備の使用者は、メンテナンス日を含めて生産量を計画しているため、本発明を用いてメンテナンス日に交換ができれば、生産量が低下することが無い。
【0029】
また、判別結果を通信する通信手段60としては、有線通信、無線通信、インターネットなどどのようなものでもよく、判別装置40と管理装置50とは、遠隔地にあってもよい。同様に、変形量検知センサー30と判別装置40の間を通信手段で接続し、遠隔地に配置してもよい。
【0030】
また、管理装置50は、搬送ローラー21を製作する部品メーカーなどに設置し、予め交換を行う搬送ローラー21を必要数、先に制作し、メンテナンス日までに設備の使用者に届けるようにしてもよい。そのようにすれば、設備の使用者が発注を忘れて交換できず、設備がトラブルを起こす恐れを防ぐことができる。
【0031】
また、本実施例では、搬送ローラー21の上にワークWを載せて搬送する形態で説明したが、「搬送」はそのような形態以外にも、
図4のように帯状のワークW’を搬送ローラー21’に巻き付けながら搬送する形態など、どの様なものであってもよい。
【0032】
この結果、この実施形態においては、熱処理炉10に設けられたローラー式搬送装置20において劣化した搬送ローラー21だけを適切な時期に簡単に交換することができ、熱処理炉10における生産性が低下するのを防止できるようになる。
【0033】
また、ここでは熱処理炉10を例にしたが、それ以外の設備の搬送ローラーにも採用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10 :熱処理炉
11 :搬入口
12 :搬出口
13 :側壁
20 :ローラー式搬送装置
21、21’ :搬送ローラー
21a :ローラー軸
22 :軸受け部材
23 :軸受け部材
30 :変形量検知センサー
31 :曲がり量計測センサー
32 :伸び量計測センサー
40 :判別装置
50 :管理装置
60 :通信手段
W、W’ :ワーク