特許第6837757号(P6837757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837757
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】断熱部材及びそれを用いた断熱構造
(51)【国際特許分類】
   F27D 11/00 20060101AFI20210222BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   F27D11/00
   F27D1/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-82885(P2016-82885)
(22)【出願日】2016年4月18日
(65)【公開番号】特開2017-194182(P2017-194182A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】竹内 章浩
(72)【発明者】
【氏名】三摩 達雄
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−087859(JP,A)
【文献】 特開昭56−040434(JP,A)
【文献】 特開平10−103876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 11/00−11/12
F27D 1/00− 1/18
F27B 14/00−14/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性と断熱性とを有し、加熱源に接続されて用いられる断熱部材であって、
導電性材料で構成された断熱部に、前記加熱源からの熱伝導を抑制すべく複数の断熱用空隙を形成したものであって、
前記断熱部は、間隔を空けて対向する第1断熱部及び第2断熱部と、前記第1断熱部と前記第2断熱部とを連結する連結部とを有し、
前記断熱部は、前記第1断熱部と前記第2断熱部のうち前記第2断熱部が前記加熱源側に位置するとともに前記第1断熱部が前記第2断熱部に対して反加熱源側に位置し、前記第2断熱部には断熱用空隙が形成されておらず前記第1断熱部に前記断熱用空隙が形成されていることを特徴とする断熱部材。
【請求項2】
前記第1断熱部には外方へ突出する断熱用突出部が設けられ、該断熱用突出部にも断熱用空隙を形成した請求項に記載の断熱部材。
【請求項3】
前記断熱部は、前記第1断熱部及び前記第2断熱部が共に板状をなし、断面H型状に形成されている請求項又は請求項に記載の断熱部材。
【請求項4】
前記断熱部は、前記第1断熱部、前記第2断熱部及び前記連結部を有する単一のユニットを複数連結した複数のユニットにより形成され、
隣り合うユニットでは前記加熱源側のユニットの前記第1断熱部に前記反加熱源側のユニットの前記第2断熱部が連結され、
前記複数のユニットのうち最も前記加熱源側のユニットは、前記第2断熱部が前記加熱源に接続されている請求項から請求項のいずれか1項に記載の断熱部材。
【請求項5】
前記隣り合うユニットでは前記加熱源側のユニットが前記反加熱源側のユニットに対して周方向に回転させた状態で連結されている請求項に記載の断熱部材。
【請求項6】
前記第1断熱部の前記断熱用空隙は、断熱部を貫通する貫通孔により形成されているとともに、少なくとも前後方向及び左右方向に延びる貫通孔で構成され、前後方向の貫通孔と左右方向の貫通孔とが連通して形成されている請求項から請求項のいずれか1項に記載の断熱部材。
【請求項7】
導電性と断熱性とを有し、加熱源に接続されて用いられる断熱部材であって、
導電性材料で構成された断熱部に、前記加熱源からの熱伝導を抑制すべく複数の断熱用空隙を形成したものであって、
前記断熱部は、間隔を空けて対向する第1断熱部及び第2断熱部と、前記第1断熱部と前記第2断熱部とを連結する連結部とを有し、
前記連結部には前記断熱用空隙が形成されていることを特徴とする断熱部材。
【請求項8】
加熱源を構成する加熱容器には一端が電源に接続された導線の他端が電気的に接続され、加熱容器内に収容される被加熱物をプラズマ加熱又は通電加熱により加熱するように構成されるとともに、前記加熱容器と導線との間には請求項1から請求項のいずれか1項に記載の断熱部材が配置されている断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばルツボ(坩堝)内に収容されたアルミニウムを加熱溶融するプラズマ加熱装置において、ルツボから発散される熱量が電極を介して導線(電線)等の外部へと伝熱されることを抑制できる断熱部材及びそれを用いた断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ加熱装置や通電加熱装置においては、高温に加熱されたルツボの熱がそのルツボから電極を介して導線等の外部へ伝熱されて放出される熱流出が生ずる。この熱流出により、外部の導線等が損傷を受けるとともに、加熱装置の熱効率の低下を招く。
【0003】
この種の加熱装置として、例えば特許文献1には通電加熱装置が開示されている。この通電加熱装置は、導電性を有する容器、上部電極及び下部電極を有し、容器の上部と底部との間を上部電極及び下部電極により挟持して通電し、容器に収容された材料を加熱するものである。
【0004】
前記容器と上部電極との間及び容器と下部電極との間には、導電性を有する断熱材が介在されている。このため、容器で発生した熱が上部電極及び下部電極を介して放熱されるロスを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−24453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載されている従来構成の通電加熱装置においては、容器と上部電極との間及び容器と下部電極との間に介在される導電性断熱材は、薄いシート状のものである。そのため、この導電性断熱材は良好な導電性を発揮できる反面、十分な断熱性を発揮することができなかった。導電性断熱材は具体的には黒鉛質ガスケットにより形成され、その厚さが3mmに形成されていることから、伝熱性が高く、容器から電極に接続される導線への熱流出が避け難く、断熱性が不足するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、断熱性を高め、加熱源からの熱伝導を抑制することができる断熱部材及びそれを用いた断熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の断熱部材は、導電性と断熱性とを有し、加熱源に接続されて用いられる断熱部材であって、導電性材料で構成された断熱部に複数の断熱用空隙を形成したことを特徴とする。
【0009】
前記断熱部には外方へ突出する断熱用突出部を設け、該断熱用突出部にも断熱用空隙を形成することが好ましい。
前記断熱部は、対向する第1板状断熱部と第2板状断熱部とが連結部で連結されて断面H型状に形成されていることが好ましい。
【0010】
前記断熱部は、断面H型状をなす単一のユニットを複数連結した複数のユニットにより形成されていることが好ましい。
前記断熱用空隙は、断熱部を貫通する貫通孔により形成されていることが好ましい。
【0011】
前記断熱用空隙は、少なくとも前後方向及び左右方向に延びる貫通孔で構成され、前後方向の貫通孔と左右方向の貫通孔とが連通して形成されていることが好ましい。
前記断熱部材を用いた断熱構造は、加熱源を構成する加熱容器には一端が電源に接続された導線の他端が電気的に接続され、加熱容器内に収容される被加熱物をプラズマ加熱又は通電加熱により加熱するように構成されるとともに、前記加熱容器と導線との間には請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の断熱部材が配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の断熱部材によれば、断熱性を高め、加熱源からの熱伝導を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における断熱部材を示し、(a)は断熱部材を構成する断熱部の平面図、(b)は断熱部の側面図、(c)は断熱部の正面図及び(d)は(c)における1d−1d線断面図。
図2】(a)はプラズマ加熱装置を示す要部を破断した正面図、(b)はプラズマ加熱装置を示す側断面図。
図3】断熱部材の第1板状断熱部に第2板状断熱部を連結する状態を説明するための説明図。
図4】第2実施形態におけるプラズマ加熱装置を示す正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1図3に基づいて詳細に説明する。
この第1実施形態では、断熱部材及びプラズマ加熱装置における断熱構造について説明する。
【0015】
図1(a)〜(c)に示すように、断熱部材10は正四角板状の第1板状断熱部11と、同じく正四角板状の第2板状断熱部12とが長四角柱状の連結部13により連結されて断面H型状(断面横H型状)に賦形された断熱部14により構成されている。この断熱部14は導電性材料により一体的に形成されている。前記導電性材料としては、鋼鉄、ステンレス鋼等の鉄系材料が良好な導電性を有するとともに、熱伝導性を抑えることができるという観点から好適に用いられる。
【0016】
前記第1板状断熱部11には、前後方向に円孔状に延びる4つの断熱用空隙15と、左右方向に円孔状に延びる4つの断熱用空隙16とが第1板状断熱部11を貫通する貫通孔により形成されている。前記連結部13には、前後方向に円孔状に延びる1つの断熱用空隙17が連結部13を貫通する貫通孔により形成されている。これらの断熱用空隙15、16、17が断熱機能を発現し、されにそれらの断熱用空隙15、16、17が外部に開放されて放熱されることによって断熱性を高めるようになっている。
【0017】
図1(d)に示すように、前記第1板状断熱部11において前後方向に延びる4つの断熱用空隙15と左右方向に延びる4つの断熱用空隙16はそれぞれ直交方向へ延び、それらの交点で交差して両方向へ延びる断熱用空隙15、16が各々連通している。このため、断熱用空隙15、16の外部への開放性を良好にして、断熱用空隙15、16による断熱機能が高められている。
【0018】
前記断熱部14の第1板状断熱部11及び第2板状断熱部12は連結部13よりも両側方へ突出した断熱用突出部18を有している。これらの第1板状断熱部11及び第2板状断熱部12の両側方への突出量はいずれも同一に設定されている。第1板状断熱部11の断熱用突出部18と第2板状断熱部12の断熱用突出部18が連結部13より両側方へより大きく突出することにより、外気との接触面積が増大して熱流出が増加し、断熱機能が一層高められる。これらの断熱用突出部18には複数の断熱用空隙15、16が貫通して形成されているため、熱流出が一層顕著になり、高度な断熱性が得られる。
【0019】
次に、上記の断熱部材10を用いた断熱構造について説明する。
図2(a)、(b)に示すように、加熱源を構成する加熱容器としてのルツボ20はラドル形状を有し、内部にアルミニウム、亜鉛等の溶融金属よりなる被加熱物21が収容されるとともに、上端部には注ぎ口22が突出形成されている。このルツボ20は鋳鉄等の金属材料により形成され、具体的には例えば特殊鋼〔古河機械金属(株)製のトケナイト〕により形成されている。なお、ルツボ20の表面には、ルツボ20を保護するために図示しない酸化物層による被膜が形成される。ルツボ20の底壁20aは四角板状に形成され、その底壁20aは周壁20bよりも厚く形成されている。
【0020】
前記ルツボ20の底壁20aとルツボ20を支持する台板(銅板)23との間には、前述した断熱部材10が介在されて底壁20aと台板23との間が電気的に接続されている。この第1実施形態における断熱部材10は、前記断面H型状をなす断熱部14により構成される単一のユニットを上下2段に連結した2つのユニットで構成されている。
【0021】
続いて、この2つのユニットの連結構造について説明する。
図3に示すように、まず下段に位置する断熱部14に対して上段に位置する断熱部14を周方向(水平方向)に90°回転させた状態で、下段の断熱部14上に載せる。次いで、下段に位置する断熱部14の第1板状断熱部11に設けられた2つの挿入孔24にそれぞれ六角穴付きボルト25の軸部25aを挿通する。さらに、それらの六角穴付きボルト25の軸部25aをそれぞれ第2板状断熱部12の挿通孔26に挿通し、上段に位置する断熱部14の第1板状断熱部11に螺刻されている雌ねじ孔27に螺合する。
【0022】
このようにして上段の断熱部14が下段の断熱部14上に連結され、上下2段の断熱部14よりなる2ユニットの断熱部材10が形成される。この上下2段の断熱部14で構成された断熱部材10が前記台板23上に載せられるとともに、さらに上段の断熱部14上にルツボ20が載置される。
【0023】
図2(a)、(b)に示すように、前記ルツボ20の上方位置には、プラズマ加熱装置28のトーチ29が配置され、そのトーチ29内には一方の電極(アノード)30が設けられ、図示しない電源に一端が接続された導線31の他端が接続されている。一方、ルツボ20内の底壁20aには他方の電極(カソード)32が設けられるとともに、図示しない電源に一端が接続された導線33の他端が台板23に接続されている。前記導線33は断熱部材10及びルツボ20の底壁20aを介して電極32に電気的に接続されている。
【0024】
そして、両電極30、32間に所定の高電圧を印加することによりプラズマ34が発生し、発生したプラズマ34がルツボ20内の被加熱物21に照射され、被加熱物21を高温に加熱して溶融するようになっている。
【0025】
図2(a)に示すように、前記ルツボ20の周壁20b上端部の外面の180°対向する位置には、それぞれ断熱性ファインセラミックスにより形成された断熱性板材35を介して前述した1つの断熱部14による断熱部材10が水平方向に取付けられている。そして、その断熱部材10に断熱性板材35を介して取っ手36が固定されている。
【0026】
すなわち、ルツボ20の周壁20b外面に対し1枚の断熱性板材35を宛がった状態で断熱部14の第2板状断熱部12側を断熱性板材35に押し当て、その状態で六角穴付きボルト25の軸部25aを第1板状断熱部11の挿入孔24から第2板状断熱部12の挿通孔26に挿通し、ルツボ20の周壁20bに螺入する。第1板状断熱部11の底面には2枚の断熱性板材35が接合され、それらの断熱性板材35には取っ手36が接合されている。
【0027】
このようにして、ルツボ20の周壁20b上端部の外面の180°対向する位置に断熱部材10を介して一対の取っ手36が取付けられる。そして、これらの取っ手36を把持してルツボ20を傾けることにより、ルツボ20内の溶融した被加熱物21を注ぎ口22から取り出すことができるようになっている。
【0028】
次に、前記のように構成された第1実施形態の断熱部材10及び断熱構造について作用を説明する。
さて、図2(a)、(b)に示すように、被加熱物21としてのアルミニウムをプラズマ加熱装置28により加熱して溶融する場合には、アルミニウムをルツボ20内の下部に収容する。その状態で両電極30、32間に高電圧を印加してプラズマ34を発生させ、アルミニウムを700〜800℃に加熱して溶融させる。
【0029】
この場合、加熱溶融したアルミニウムから発せられる高温の熱は、ルツボ20の底壁20aから断熱部材10を介して導線33側へ伝達される。すなわち、ルツボ20の底壁20aから断熱部材10に伝達される熱は、上段の断熱部14から下段の断熱部14へと伝達される。
【0030】
このとき、これらの断熱部14の第1板状断熱部11には前後方向及び左右方向に延びる断熱用空隙15、16がそれぞれ4つ設けられるとともに、連結部13にも断熱用空隙17が1つ設けられている。このため、これらの断熱用空隙15、16、17により、ルツボ20の底壁20aから導線33への熱伝導が遮られる。
【0031】
さらに、これらの断熱用空隙15、16、17は貫通孔で構成され、外部に通じていることから、各断熱用空隙15、16、17内の空気が冷却され、断熱用空隙15、16、17による熱伝導の遮蔽作用が高められる。言い換えれば、断熱部材10において断熱作用が発現され、熱伝導が抑制される。
【0032】
図1(d)に示すように、前記前後方向に延びる断熱用空隙15と左右方向に延びる断熱用空隙16とは連通されていることから、両断熱用空隙15、16間では空気が相互に出入りして、断熱用空隙15、16による熱伝導による遮蔽作用が著しく高められ、断熱作用が格段に向上する。
【0033】
加えて、断熱部14の第2板状断熱部12及び第1板状断熱部11は、連結部13よりも両側方へ突出した断熱用突出部18を有し、第1板状断熱部11の断熱用突出部18には断熱用空隙15、16が設けられている。このため、断熱用突出部18が放熱用のフィンの働きをし、第2板状断熱部12及び第1板状断熱部11に伝達された高温の熱は断熱用突出部18から熱放出されやすく、断熱作用の向上を図ることができる。
【0034】
このため、上段の断熱部14の下端部の温度はルツボ20の底壁20aの温度より大きく低下し、さらに下段の断熱部14の下端部の温度は上段の断熱部14の下端部の温度より一層大きく低下する。従って、導線33の温度上昇が抑えられる。
【0035】
加えて、ルツボ20の周壁20bの上端部と一対の取っ手36との間には前記断熱部材10が介在されている。このため、ルツボ20の周壁20bから取っ手36への高温の熱伝導が抑えられ、取っ手36の温度上昇が抑制される。その結果、両取っ手36を把持してルツボ20を傾けてルツボ20内の溶融したアルミニウムを取り出す作業を円滑に進めることができる。
【0036】
従って、第1実施形態の断熱部材10では断熱性が著しく高められ、加熱源としてのルツボ20から導線33や取っ手36への伝熱が効果的に遮られる。
以上の第1実施形態により発揮される効果を以下にまとめて記載する。
【0037】
(1)この第1実施形態の断熱部材10は、導電性材料で構成された断熱部14に複数の断熱用空隙15、16、17が形成されて構成されている。このため、断熱部材10は導電性を発揮できるとともに、複数の断熱用空隙15、16、17により良好な断熱性を発揮することができる。
【0038】
従って、第1実施形態の断熱部材10によれば、断熱性を高め、加熱源としてのルツボ20から導線33及び取っ手36への熱伝導を抑制することができるという効果を奏する。
【0039】
(2)前記断熱部14には両側方へ突出する断熱用突出部18を設け、該断熱用突出部18にも断熱用空隙15、16が形成されている。この断熱用突出部18により熱放出を高めることができる上に、断熱用空隙15、16により熱伝導の遮蔽効果を発揮でき、断熱性を一層向上させることができる。
【0040】
(3)前記断熱部14は第2板状断熱部12、第1板状断熱部11及び連結部13により断面H型状に形成されている。そのため、第1板状断熱部11と第2板状断熱部12との双方により熱伝導の遮蔽を図ることができ、断熱性をさらに向上させることができる。
【0041】
(4)前記断熱部14は、断面H型状をなす断熱部14より形成される単一のユニットを2つ連結した2つのユニットにより形成されている。従って、断熱部材10は単一のユニットに比べて、断熱性を格段に向上させることができる。
【0042】
(5)前記断熱用空隙15、16、17は、断熱部14を貫通する貫通孔により形成されている。この貫通孔は外部に開放されていることから、断熱用空隙15、16、17は貫通されていない場合に比べて、断熱用空隙15、16、17内の空気の流通を良好にすることができ、断熱性の向上に大きく寄与することができる。
【0043】
(6)前記断熱用空隙15、16は、前後方向及び左右方向に延びる貫通孔で構成され、前後方向の貫通孔と左右方向の貫通孔とが連通して形成されている。そのため、前後方向の貫通孔と左右方向の貫通孔との間で空気を相互に流通させることができ、断熱部14全体を均一に熱遮蔽でき、断熱性の均一な向上を図ることができる。
【0044】
(7)前記断熱部材10を用いた断熱構造は、一端が電源に接続された導線33の他端がルツボ20に電気的に接続され、ルツボ20内に収容される被加熱物21をプラズマ加熱するように構成され、ルツボ20と導線33との間には前記断熱部材10が配置されている。このため、ルツボ20と導線33との間の断熱性を図ることができ、ルツボ20から導線33への熱伝導を有効に抑制することができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図4に基づいて説明する。なお、この第2実施形態では主に第1実施形態と相違する部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0046】
図4に示すように、前記ルツボ20と台板23との間には、第1実施形態と同じ断熱部14が上下3段に連結されて断熱部材10が構成されている。すなわち、断熱部材10は、断面H型状をなす断熱部14よりなる単一のユニットが上下3段に連結された3つのユニットで構成されている。具体的には、最下段の断熱部14上には中段の断熱部14が最下段の断熱部14に対して周方向に90°回転した状態で連結され、さらにその上に最上段の断熱部14が中段の断熱部14に対して周方向に90°回転した状態で連結されている。
【0047】
前記最下段の断熱部14と中段の断熱部14との連結及び中段の断熱部14と最上段の断熱部14との連結方法は、いずれも第1実施形態で示した連結方法と同じである。
前記一対の取っ手36を取付けるための各断熱部材10はルツボ20の周壁20bの上部外面の180°対向する位置に取付けられている。各断熱部14はルツボ20の周壁20b外面に2枚の断熱性板材35を介して取付けられ、取っ手36は1枚の断熱性板材35を介して前記断熱部14に取付けられている。
【0048】
さて、この第2実施形態では、アルミニウムをルツボ20内に収容し、プラズマ34を照射してアルミニウムを加熱溶融すると、高温に達したルツボ20の底壁20aから最上段の断熱部14へ高温の熱が伝達される。この最上段の断熱部14では、第1実施形態の上段の断熱部14と同様にして、断熱部14自体の材質、複数の断熱用空隙15、16、17、断熱用突出部18等により熱伝導が遮蔽され、断熱作用が発現される。このため、最上段の断熱部14の下端部の温度は、ルツボ20の底壁20aの温度より大きく低下する。
【0049】
引き続いて、中段の断熱部14においては、第1実施形態の下段の断熱部14と同様にして、熱伝導が遮られて断熱作用が発揮される。そのため、中段の断熱部14の下端部の温度は、最上段の断熱部14の下端部の温度より大きく低下する。
【0050】
最後に、最下段の断熱部14においても、最上段の断熱部14及び中段の断熱部14と同様に断熱作用が発現され、最下段の断熱部14の下端部の温度は中段の断熱部14の下端部の温度に比べて大きく低下する。その結果、例えばルツボ20の底壁20aの温度が650℃であったとき、最下段の断熱部14の下端部の温度を200℃に低下させることができる。
【0051】
また、ルツボ20の周壁20bの上部と一対の取っ手36との間には前記断熱部材10が介在されていることから、ルツボ20の周壁20bから取っ手36への熱伝達が抑えられ、取っ手36の温度上昇が抑制される。その結果、例えばルツボ20の底壁20aの温度が650℃であったとき、取っ手36の温度を102℃にまで低下させることができる。
【0052】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態に比べて断熱性をさらに高めることができ、導線33への熱伝導を一層抑制することができる。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
【0053】
・前記断熱部14の第2板状断熱部12にも、強度、取付構造等の点において差支えない範囲で、前後方向の断熱用空隙15や左右方向の断熱用空隙16を設けてもよい。
・前記断熱部14の第2板状断熱部12や第1板状断熱部11に上下方向に延びる断熱用空隙を形成してもよく、さらにその上下方向の断熱用空隙を、前後方向の断熱用空隙15や左右方向の断熱用空隙16と連通するように構成してもよい。
【0054】
・前記断熱部14を構成する連結部13を、楕円柱状、円柱状等の形状に形成してもよい。
・前記断熱部14の断熱用突出部18を円板状等の形状に形成したり、第2板状断熱部12における断熱用突出部18と第1板状断熱部11における断熱用突出部18の形状が異なるように形成したりしてもよい。
【0055】
・前記断熱部材10の断熱用空隙15、16、17を非貫通孔で構成したり、貫通孔と非貫通孔とを組合せて構成したりしてもよい。
・前記断熱部14を、断面I型状、断面ユ型状、断面コ型状、断面エ型状、断面山型状、断面T型状等の断面形状を有するように構成してもよい。
【0056】
・前記ルツボ20の取っ手36に代えて、ロボットのアームを取付ける取付部を設けてもよい。
・通電加熱装置等の加熱装置により加熱源としてのルツボ20を加熱するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…断熱部材、11…第1板状断熱部、12…第2板状断熱部、13…連結部、14…断熱部、15、16、17…断熱用空隙、18…断熱用突出部、20…加熱源を構成する加熱容器としてのルツボ、21…被加熱物、31、33…導線。
図1
図2
図3
図4