特許第6837766号(P6837766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6837766-パネルの輸送治具及びパネルの輸送方法 図000002
  • 特許6837766-パネルの輸送治具及びパネルの輸送方法 図000003
  • 特許6837766-パネルの輸送治具及びパネルの輸送方法 図000004
  • 特許6837766-パネルの輸送治具及びパネルの輸送方法 図000005
  • 特許6837766-パネルの輸送治具及びパネルの輸送方法 図000006
  • 特許6837766-パネルの輸送治具及びパネルの輸送方法 図000007
  • 特許6837766-パネルの輸送治具及びパネルの輸送方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837766
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】パネルの輸送治具及びパネルの輸送方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   E04G21/14
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-139025(P2016-139025)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-9365(P2018-9365A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文岳
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−318969(JP,A)
【文献】 米国特許第08978343(US,B1)
【文献】 特開2014−020003(JP,A)
【文献】 特開2000−297475(JP,A)
【文献】 特開平04−261918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14−21/18
B66C 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平行に間隔を置いて配置される小梁の上面に板材が張り付けられたパネルの輸送治具であって、
前記パネルは、前記小梁の両端が開口された構成となっており、
前記小梁の両端において前記小梁の軸直交方向に差し渡される輸送梁と、
前記輸送梁の側面に取り付けられて複数の前記小梁の開口にそれぞれ挿し込まれる支持金具と
前記輸送梁の少なくとも一方の端部を前記支持金具が挿し込まれない前記小梁の端部に接合させる接合手段を有する固定金具とを備え、
前記固定金具を介して、前記パネルの側縁部を形成する小梁の外側面又は開口と前記輸送梁の端部との間が連結されることを特徴とするパネルの輸送治具。
【請求項2】
前記支持金具は、上面が庇状に張り出されたL形金具であることを特徴とする請求項1に記載のパネルの輸送治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパネルの輸送治具を使用したパネルの輸送方法であって、
前記小梁の開口に対して前記輸送梁の側面に取り付けられた前記支持金具をそれぞれ挿し込むことで、前記パネルの両側縁にそれぞれ前記輸送治具を取り付ける工程と、
前記輸送治具が取り付けられたパネルを目的地まで輸送する工程と、
前記目的地において、前記輸送梁にワイヤを連結して前記パネルを吊り上げ、所定の位置に前記パネルを設置する工程と、
前記パネルの設置後に、前記輸送治具を取り外す工程とを備えたことを特徴とするパネルの輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床パネルや屋根パネルなどのパネルを輸送する際に使用されるパネルの輸送治具、及びそれを使用したパネルの輸送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場で製作された床パネルや屋根パネルなどのパネルを建築現場まで輸送して、クレーンで吊り上げて所定の位置に設置することで建物が構築される工法が知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
通常の床パネルは、周縁が枠材で囲まれた剛性の高い構造となっており、吊り上げの際に作用するねじれなどによる荷重に対しても、耐えられる構造となっている。
【0004】
また、特許文献1には、クレーンのフックを掛ける吊りボルトを取り付けるための金具が固定される床パネルの隅角部が、つなぎ材によって補強された構造が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、建築用パネルの側端面に設けられた係合穴に対して、ワンタッチで取り付けが行える吊り上げ用治具が開示されている。この吊り上げ用治具を使用することで、建築用パネルの側端面にくさびを打ち込む必要がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−297475号公報
【特許文献2】特開2002−339569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吊り上げ時に作用する荷重は一時的な荷重であり、その荷重に合わせて補強を行うと、建物への設置後には過剰な剛性となる場合がある。また、隣接する構造体に接合させる場合などには、パネルの全周が枠材によって囲まれていなくてもよいこともある。
【0008】
そこで、本発明は、輸送時に一時的に作用する荷重に対抗可能なパネルの輸送治具及びパネルの輸送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のパネルの輸送治具は、略平行に間隔を置いて配置される小梁の上面に板材が張り付けられたパネルの輸送治具であって、前記パネルは、前記小梁の両端が開口された構成となっており、前記小梁の両端において前記小梁の軸直交方向に差し渡される輸送梁と、前記輸送梁の側面に取り付けられて複数の前記小梁の開口に挿し込まれる支持金具とを備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記輸送梁の少なくとも一方の端部は、固定金具を介して前記小梁の端部に接合される構成とすることができる。また、前記支持金具は、上面が庇状に張り出されたL形金具である構成とすることができる。
【0011】
そして、パネルの輸送方法の発明は、上記いずれかのパネルの輸送治具を使用したパネルの輸送方法であって、前記小梁の開口に対して前記輸送梁の側面に取り付けられた前記支持金具をそれぞれ挿し込むことで、前記パネルの両側縁にそれぞれ前記輸送治具を取り付ける工程と、前記輸送治具が取り付けられたパネルを目的地まで輸送する工程と、前記目的地において、前記輸送梁にワイヤを連結して前記パネルを吊り上げ、所定の位置に前記パネルを設置する工程と、前記パネルの設置後に、前記輸送治具を取り外す工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明のパネルの輸送治具は、輸送対象となるパネルが、略平行に間隔を置いて配置される小梁の上面に板材が張り付けられたパネルであって、小梁の両端が開口された構成となっている。換言すると、小梁に対して略直交方向に向けられた側縁に配置される枠材が存在しないパネルが輸送対象となる。
【0013】
このようなパネルは、側縁の全周が枠材によって囲まれたものと比べて剛性が低くなるが、本発明のパネルの輸送治具では、輸送梁が小梁に対して略直交方向に向けられた側縁に配置される枠材として機能する。
【0014】
このため、輸送時に一時的に作用する荷重に対抗させることができる。また、この輸送治具は、パネルを所定の位置に設置した後には、回収して再利用することができるので、経済的である。
【0015】
さらに、輸送梁の少なくとも一方の端部が、固定金具を介して小梁の端部に接合される構成であれば、輸送治具が意図せぬタイミングで外れることを確実に防ぐことができる。
【0016】
また、支持金具の上面が庇状に張り出されていれば、小梁の開口に挿しこまれた庇状の部分でパネルの荷重を支持させることができるうえに、接合作業を必要としないため、取り付け及び取り外しを簡単に行うことが可能になる。
【0017】
そして、本発明のパネルの輸送方法であれば、パネルを輸送時に一時的に補強して、パネル設置後には輸送治具を回収することで、パネルの部材点数や組み立て工数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態のパネルの輸送治具を床パネルに取り付ける工程を説明する斜視図である。
図2】床パネルの製造工程を説明する斜視図である。
図3】輸送治具の支持金具周辺の構成を拡大して説明する斜視図である。
図4A】輸送梁の一方に端部を接合させる固定金具の構成を説明するための説明図である。
図4B】輸送梁の他方に端部を接合させる固定金具の構成を説明するための説明図である。
図5】床パネル設置後に輸送治具を取り外す工程を説明する斜視図である。
図6】床パネルを下階ユニットに固定する工程を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態のパネルの輸送治具20を、パネルとなる床パネル1に取り付ける工程を説明する斜視図である。
【0020】
本実施の形態の輸送治具20によって輸送されるパネルは、床面を形成する床パネル1、屋根ふき材の下地又は屋根面を形成する屋根パネルなどの建築用のパネルである。
【0021】
例えば床パネル1は、平面視略長方形に形成され、床の下地面や床の仕上げ面などの床面を形成するために配置される。床パネル1は、図2に示すように、略平行に間隔を置いて配置される小梁としての床小梁12A,12,・・・,12Bと、それらの上面に張り付けられる板材である床板11,11,11Aとによって、主に構成される。
【0022】
ここで、床パネル1の両側の側縁部を形成する小梁を床小梁12A,12Bとし、床小梁12A,12B間に配置される小梁を床小梁12,・・・とする。以下では、共通する構成ついては、床小梁12の符号を使って説明する。
【0023】
床小梁12は、例えば断面視略長方形の中空状の角形鋼管によって形成される。そして、床小梁12の両端は、開口121,121となる。一つの床パネル1に使用される床小梁12,・・・の本数及び間隔は、任意に設定することができる。
【0024】
一方、床板11,11Aは、1対又は3本以上の床小梁12,12間に架け渡される平面視略長方形の板材である。床板11,11Aは、硬質木片セメント板、合板などによって、長さは床小梁12と略同じ長さ、幅は両側の縁部がいずれかの床小梁12,12A,12Bの上に載る長さに成形される。
【0025】
また、床板11,11Aの下面側には、床小梁12,12の間隔以下の長さの木桟111,111Aを取り付けることができる。例えば、図2に示した右端の床板11Aの長手方向の縁部には、床小梁12,12の間隔程度の長さの木桟111が床小梁12の軸直交方向に向けて取り付けられる。
【0026】
さらに、木桟111の端部から床小梁12の幅分だけ開けて、床小梁12,12Bの間隔程度の長さの木桟111Aが、床小梁12の軸直交方向に向けて取り付けられる。要するに、木桟111は床小梁12,12間に収容され、木桟111Aは床小梁12,12B間に収容されることになる。
【0027】
そして、床小梁12A,12B,12,・・・の上面には接着剤13が塗布され、その上に載せられる床板11,11,11Aと接着される。また、床板11,11,11Aの上方から床小梁12A,12B,12,・・・の上面に向けては、ドリルネジ112,・・・がねじ込まれる。
【0028】
このようにして製作された床パネル1は、床小梁12A,12,・・・,12Bと床板11,11,11Aとが一体になっているが、床小梁12の軸直交方向に向いた床梁などの枠材が配置されておらず、剛性は4辺の全周が枠材で囲まれたパネルに比べて低い。特に、床小梁12の軸直交方向の曲げに対して弱くなっている。
【0029】
そこで、輸送時には、輸送治具20が取り付けられる。この輸送治具20は、図1に示すように、床小梁12,・・・の両端において床小梁12の軸直交方向に向けて差し渡される輸送梁2と、輸送梁2の側面が形成される側面部21に取り付けられて床小梁12の開口121に挿し込まれる支持金具3と、輸送梁2の端部を床小梁12の端部に接合させる固定金具(4,5)とによって主に構成される。
【0030】
輸送梁2は、図3に示すように、平板状の側面部21と、側面部21の上縁から張り出される断面視略L字形の上面部22と、側面部21の下縁から張り出される断面視略L字形の下面部23とによって、断面視略C字形に形成される。この輸送梁2には、C形鋼(リップ付き溝形鋼)などが使用できる。
【0031】
輸送梁2の長さは、床パネル1の両側縁を形成する床小梁12A,12B間の間隔とほぼ等しくなる。この輸送梁2は、開放側が床小梁12と反対側に向けられ、側面部21の外側面を床小梁12に対向させる。
【0032】
支持金具3は、この側面部21の外側面に取り付けられる。支持金具3は、庇状に張り出されて支持面が形成される庇部3aと、側面部21の外側面に接触させる垂下部3bとを有するL形金具である。
【0033】
支持金具3の庇部3aは、輸送梁2の上面部22とほぼ同じ高さに配置され、上面を形成する。側面部21の外側面に沿って配置される垂下部3bは、ボルト31によって側面部21に固定される。
【0034】
詳細には図1に示すように、ボルト31は床小梁12側から支持金具3に向けて挿し込まれ、輸送梁2の開放側に突出したボルト31の先端にナット32が装着される。
【0035】
複数の支持金具3,・・・は、床小梁12,・・・の開口121,・・・の位置に合わせて、輸送梁2の側面部21にそれぞれ取り付けられる。そして、輸送梁2の床小梁12A側の端部には、固定金具4が取り付けられる。
【0036】
固定金具4は、図4Aに示すように、輸送梁2の側面部21に接触させる取付片4aと、その取付片4aの内側の側縁から床小梁12Aに向けて張り出される突出片4bとによって、平面視略L字形に形成される。
【0037】
この固定金具4は、ボルト41とナット41aとによって側面部21に接合される。突出片4bは、床小梁12Aの外側面となる縁部122に、外側から接触させる。
【0038】
そして、ボルト42が外側から突出片4bに向けて挿し込まれ、床小梁12Aの内空側に突出したボルト42の先端には、ナット42aが装着される。このようにして、固定金具4は床小梁12Aの端部に接合される。
【0039】
一方、輸送梁2の床小梁12B側の端部に取り付けられる固定金具となる蓋板部5は、図4Bに示すように、床小梁12Bの開口121を塞ぐように端部に接合される。
【0040】
この蓋板部5の床小梁12Bの内空側の面には、固着ナット51が接合されており、輸送梁2の開放側から側面部21に向けて挿し込まれるボルト52の先端は、固着ナット51にねじ込まれる。
【0041】
このようにして固定金具4及び蓋板部5を介して輸送梁2の両端部は床パネル1に固定され、支持金具3,・・・は床小梁12,・・・の開口121,・・・に挿し込まれただけの状態になる。
【0042】
また、一方の床小梁12Aに対しては固定金具4による接合とし、他方の床小梁12Bに対しては蓋板部5による接合とすることで、床パネル1の製作時の精度誤差の吸収が可能となる。
【0043】
次に、本実施の形態のパネルの輸送治具20を使用した床パネル1の輸送方法について説明する。
【0044】
まず工場において、図2に示すように、床小梁12A,12,・・・,12Bを定められた間隔で平行に並べ、それぞれの上面に接着剤13を塗布する。そして、必要に応じて木桟111,111Aが取り付けられた床板11,11,11Aを、床小梁12A,12,・・・,12B上に設置する。
【0045】
床板11,11,11Aの周縁及び床小梁12A,12,・・・,12Bと重なる位置には、ドリルネジ112,・・・がねじ込まれる。なお、床小梁12Bの両端の開口121,121は、この時点で蓋板部5,5によって塞がれている。
【0046】
続いて図1に示すように、床パネル1の両側縁に対して輸送治具20,20の取り付けを行う。輸送梁2の側面部21には、床小梁12,・・・の開口121,・・・の位置に合わせて、支持金具3,・・・がボルト31とナット32によって固定される。
【0047】
また、輸送梁2の床小梁12Aに対峙させる端部には、固定金具4がボルト41とナット41aによって固定される。このようにして組み立てられた輸送治具20を、床小梁12の軸直交方向に向けて、床小梁12の開口121に支持金具3側を対峙させる。
【0048】
そして、輸送治具20の支持金具3,・・・を、それぞれ床小梁12,・・・の開口121,・・・に挿し込む。また、蓋板部5に対しては、輸送梁2の開放側からボルト52をねじ込むことで、輸送治具20の一方の端部を床小梁12Bに固定する。
【0049】
さらに、床小梁12Aの縁部122に突出片4bを接触させた固定金具4を、ボルト42とナット42aによって床小梁12Aに接合させることで、輸送治具20の他方の端部を床小梁12Aに固定する。
【0050】
床小梁12Bに対して蓋板部5を介した接合とすることで、輸送梁2を強固に取り付けることができる。また、床小梁12Aに対しては固定金具4を介した接合とすることで、床パネル1の製作誤差を吸収させて輸送梁2を取り付けることができる。
【0051】
さらに、輸送梁2の上面部22の長穴24(図4A参照)などに、図5に示すように吊りボルト25を取り付ける。両側縁が輸送治具20,20によって補強された床パネル1は、輸送時に一時的に作用する荷重に耐え得る構造となっている。
【0052】
例えば吊りボルト25,25にフックを掛けて床パネル1を吊り上げると、設置時には作用しないねじれなどの荷重が床パネル1に生じることがあるが、輸送治具20,20を取り付けておくことによって、床パネル1の吊り上げ時のたわみを減らして、変形や損傷を防ぐことができる。
【0053】
輸送治具20,20が取り付けられた床パネル1は、工場からトラックに積載されて目的地となる建築現場まで輸送される。そして、建築現場においては、輸送梁2,2の両端付近に取り付けられた吊りボルト25,・・・にフックが掛けられ、クレーンで吊り上げられる。
【0054】
図5には、床パネル1が設置される所定の位置となる下階ユニット6を例示した。この下階ユニット6は、四隅に配置される柱材61,・・・、その柱材61,・・・の上端間に架け渡される梁材62A,62Bなどによって骨組構造が形成されている。
【0055】
クレーンで吊り上げられた床パネル1は、大きなたわみが生じることなく空中を移動して、下階ユニット6の上面に設置される。床パネル1が安定した状態で設置されていることを確認した後に、輸送治具20,20が取り外される。
【0056】
輸送治具20は、図4Aに示すように、ナット42aを緩めてボルト42を外すことで、固定金具4を介した接合を解除させることができる。また、図4Bに示すように、ボルト52を緩めて外すことで、蓋板部5を介した接合を解除させることができる。
【0057】
そして、輸送治具20,20を取り外した後に、図6に示すように、それぞれの床小梁12,・・・を固定ボルトセット14,・・・を使って、隣接する構造体である梁材62B,62Bに接合させる。このように床小梁12,・・・が、その軸直交方向に向けられた梁材62B,62Bに固定されると、床パネル1は四方が枠材によって囲まれたものと同等の剛性を備えることになる。
【0058】
次に、本実施の形態のパネルの輸送治具20、及びそれを使用した床パネル1の輸送方法の作用について説明する。
【0059】
このように構成された本実施の形態のパネルの輸送治具20は、輸送対象となる床パネル1が、略平行に間隔を置いて配置される床小梁12A,12,・・・,12Bの上面に床板11,11,11Aが張り付けられたパネルである。
【0060】
そして、床小梁12の両端は、梁材などで塞がれておらず、開口121,121されたままの状態となっている。換言すると、床小梁12に対して略直交方向に向けられた側縁に配置される枠材が存在しない簡素な構成の床パネル1が輸送対象となる。
【0061】
このような床パネル1は、側縁の全周が枠材によって囲まれたものと比べて剛性が低くなっているが、本実施の形態のパネルの輸送治具20,20を取り付けることによって、床小梁12に対して略直交方向に向けられた枠材が側縁に配置された剛性の高いパネルとなる。
【0062】
このため、輸送時に一時的に作用するねじれなどの荷重に対抗させることができる。また、この輸送治具20は、床パネル1を所定の位置に設置した後には、回収して再利用することができるので、経済的である。
【0063】
さらに輸送梁2の端部が、固定金具4や蓋板部5を介して床小梁12A,12Bの端部に接合される構成であれば、輸送治具20が意図せぬタイミングで外れることを確実に防ぐことができる。
【0064】
また、支持金具3の上面が庇状に張り出されて支持面が形成された庇部3aであれば、床小梁12,・・・の開口121,・・・にそれぞれ挿しこまれた庇部3a,・・・で、パネルの荷重を分散支持させることができる。
【0065】
また、開口121,・・・に挿し込むだけで接合作業を必要としない支持金具3,・・・は、数が多くなっても取り付け及び取り外しを簡単に行うことができるため、施工性に優れている。
【0066】
さらに、床パネル1を輸送時に一時的に補強して、床パネル1を所定の位置に設置後に輸送治具20,20を回収して再利用するのであれば、床パネル1の部材点数や組み立て工数を減らすことができる。
【0067】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0068】
例えば、前記実施の形態では、床パネル1をパネルの例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、屋根パネルなどの建築用パネルや様々なパネルに対して本実施の形態のパネルの輸送治具を適用することができる。
【0069】
また、前記実施の形態では、床パネル1を製作した後に輸送治具20,20を取り付ける方法について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、輸送梁2に先に支持金具3,・・・を取り付けておき、支持金具3,・・・の位置に合わせて床小梁12,・・・を配置して床パネル1を製作する方法であれば、床小梁12,・・・の位置合せが容易に行えるようになる。
【0070】
さらに、前記実施の形態では、輸送梁2の端部は固定金具4と蓋板部5を介して床パネル1と接合させたが、これに限定されるものではなく、輸送治具20に取り付けられる全ての金具が、支持金具3のように床小梁12の開口121に挿し込むだけの構成であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 床パネル(パネル)
11,11A 床板(板材)
12,12A,12B 床小梁(小梁)
121 開口
20 輸送治具
2 輸送梁
21 側面部(側面)
3 支持金具
3a 庇部
4 固定金具
5 蓋板部(固定金具)
6 下階ユニット(所定の位置)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6