(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837794
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】座台
(51)【国際特許分類】
E02D 29/14 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
E02D29/14 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-192572(P2016-192572)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-53613(P2018-53613A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591084654
【氏名又は名称】エバタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】張替 英樹
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−213712(JP,A)
【文献】
特開平10−204905(JP,A)
【文献】
特開2004−002087(JP,A)
【文献】
実開平05−094388(JP,U)
【文献】
米国特許第05899024(US,A)
【文献】
特開昭51−115570(JP,A)
【文献】
特許第3804010(JP,B2)
【文献】
特開2012−036655(JP,A)
【文献】
特開2009−299452(JP,A)
【文献】
特開2005−256565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12−29/14
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に位置する蓋を支持する蓋支持部と、
前記蓋によって塞がれる上方開口を有すると共に、地中に埋設される立ち上がり管の頂部を囲繞する下方開口とを備えるリング状で、外周部が内周部より肉厚に形成され、該内周部の上面に前記蓋支持部を備える座台であって、
補強材料が配合されたプラスチック材料からなり、比重が1を超え、外径に対する高さ方向の最大厚さの比が0.03以上0.15以下であり、前記補強材料は、硅砂、ガラス繊維、スラグ骨材からなる群から選択される一以上であることを特徴とする座台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールを塞ぐ鉄蓋等を支持する座台に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、地中に埋設されて雨水の流出を防止する雨水貯留浸透槽10には、保守点検を行うためにマンホール用の立ち上がり管11が接続され、その上方に座台21を埋設して鉄蓋22を支持している。また、雨水貯留浸透槽10以外の地下埋設設備等にも上記と同様の構造が採用されている。
【0003】
上記座台21及び鉄蓋22は、
図6に示すように組み合わせて用いられる。座台21は、鉄蓋22を支持する蓋支持部21aと、鉄蓋22によって塞がれる上方開口21bと、下方開口21cとを有する枠状のものである。鉄蓋22は、円板状の蓋22aと、蓋22aの突条22cと係合する溝22dを有する角枠22bからなる。
【0004】
この座台21は、一般的にはコンクリート製であるが、コンクリート製品は、材料特性上衝撃荷重や集中荷重及び曲げ荷重に弱く、肉薄にすることができない。そのため、鉄蓋22を介して長期的に荷重を受ける座台21は、破損を考慮して肉厚な構造が望まれており、例えば肉厚100mm以上となるように製造されていたが、この場合には質量が100kgを超えてしまうため、人手のみで座台21を設置することが困難であり、設置コストが高騰するという問題があった。
【0005】
一方、プラスチック製品は、コンクリート製品よりも衝撃荷重や集中荷重及び曲げ荷重に強い性質を有するため、一般的に薄肉に成形してリブで補強されるが、上記座台は、支持する鉄蓋等の上を車両や人が通行するなど長期的な荷重が掛かるため、リブが破損する虞があった。
【0006】
そこで、特許文献1には、設置を容易にすると共に、長期的な荷重に耐えるものとして比重の小さい再生プラスチック(PE、PP)等で形成した座台が記載されている。この座台は、密閉内蓋を有して側塊に載置され、地面と面一になる保護鉄蓋が載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3804010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、再生プラスチック等の普通のプラスチックは、肉厚に成形しようとすると、厚肉部においてはひけを起こす原因となる引張応力(収縮応力)が樹脂の内部に向かって掛かる。さらに、薄肉部は厚肉部に比べて早く固まるため、 薄肉部と厚肉部の間に応力が生じ、それがそりとなって現れるため、実際には、特許文献1に記載のように座台を肉厚に成形することは困難である。
【0009】
また、上記特許文献1に記載の座台等を再生プラスチック等で成形すると、比重が0.91〜0.98程度となり、座台と地面の間に雨水等が侵入した場合に鉄蓋等と共に浮き上がってしまう虞があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、肉厚成形を容易に行うことができると共に、鉄蓋等の浮き上がりを防止することのできるプラスチック製の座台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、上方に位置する蓋を支持する蓋支持部と、前記蓋によって塞がれる上方開口を有すると共に、地中に埋設される立ち上がり管の頂部を囲繞する下方開口とを備えるリング状
で、外周部が内周部より肉厚に形成され、該内周部の上面に前記蓋支持部を備える座台であって、補強材料が配合されたプラスチック材料からなり、比重が1を超え
、外径に対する高さ方向の最大厚さの比が0.03以上0.15以下であり、前記補強材料は、硅砂、ガラス繊維、スラグ骨材からなる群から選択される一以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の座台は、補強材料が配合されたプラスチック材料を用い、リング状の簡単な形状であるため、肉厚に成形し易く、比重が1を超えるため蓋の浮き上がりも防止することができる。
【0013】
上記座台
は、外径に対する高さ方向の最大厚さの比を0.03以上0.15以下と
したので、プラスチック材料で成形可能な範囲で、長期的な荷重に十分耐えられる座台を提供することができる。
【0014】
前記補強材料
は、硅砂、ガラス繊維、スラグ骨材からなる群から選択される一以上
である
。入手し易い硅砂を選択することで製造コストを低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、肉厚成形を容易に行うことができ、鉄蓋等の浮き上がりを防止することも可能なプラスチック製の座台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る座台の一実施の形態を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【
図2】
図1の座台に支持される鉄蓋を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【
図3】
図1の座台と
図2の鉄蓋を組み合わせた状態を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【
図4】本発明に係る座台の設置例を示す概略断面図である。
【
図5】従来の座台の設置例を示す概略断面図である。
【
図6】従来の座台と鉄蓋を組み合わせた状態を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る座台の一実施の形態を示し、この座台1は、
図2に示す鉄蓋2を支持する蓋支持部1aと、鉄蓋2によって塞がれる上方開口1bと、下方開口1cとを有するリング状のものであって、補強部材が配合されたプラスチック材料により比重が1を超えるように成形される。
【0019】
座台1は、蓋支持部1aが存在する分だけ外周部1dが内周部1eより肉厚に形成される。外周部1dの厚さ(最大厚さ)Tは、外径Dに対して0.03以上0.15以下とする。最大厚さT/外径Dをこの範囲内とすることで、プラスチック材料で容易に成形することができ、長期的な荷重にも十分に耐えることができる。
【0020】
座台1を成形するにあたり、硅砂が入手し易く座台1を低コストで製造することができて好ましいが、配合する補強部材として硅砂、ガラス繊維、スラグ骨材から選択される一以上を用いることもできる。これらの補強材料を配合すると共に、リング状の簡単な形状とすることで座台1を肉厚に形成することができる。また、補強材料の配合により、座台1の比重が1を超えるようにし、好ましくは1.3程度に成形する。
【0021】
座台1に載置される鉄蓋2は、一般的な丸枠式のものであり、円板状の蓋2aと、蓋2aの突条2cと係合する溝2dを有する丸枠2bからなり、蓋2aには摘み穴2eが形成されている。
【0022】
座台1と鉄蓋2を組み合わせた状態を
図3に示す。このように、凹状に形成した座台1の蓋支持部1aに鉄蓋2の丸枠2bを載置することで、鉄蓋2全体を安定して支持することができる。
【0023】
上記構成を有する座台1の設置例を
図4に示す。座台1は、雨水貯留浸透槽10の立ち上がり管11を下方開口1cを介して囲繞した状態で地中に配置され、蓋支持部1aで鉄蓋2を支持している。
【0024】
以上のように、本実施の形態によれば、硅砂等の補強材料を配合すると共に、簡単な形状とすることで座台1を肉厚に成形することができ、比重が1を超えるため、蓋2の浮き上がりも防止することもできる。
【0025】
尚、上記実施の形態として説明した座台1の構成は一例に過ぎず、上方に位置する蓋2を支持する蓋支持部1aと、蓋2によって塞がれる上方開口1bを有すると共に、地中に埋設される立ち上がり管の頂部を囲繞する下方開口1cとを備えるリング状の座台であって、補強材料が配合されたプラスチック材料からなり、比重が1を超えるものであればよく、蓋支持部1aの形状等適宜変更可能である。
【0026】
また、上記実施の形態では、雨水貯留浸透槽10の立ち上がり管11の上方に座台1を設置した場合を例示したが、雨水貯留浸透槽10以外の設備や下水管に接続される立ち上がり管等にも座台1を適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0027】
1 座台
1a 蓋支持部
1b 上方開口
1c 下方開口
1d 外周部
1e 内周部
2 鉄蓋
2a 蓋
2b 丸枠
2c 突条
2d 溝
2e 摘み穴
10 雨水貯留浸透槽
11 立ち上がり管