(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837797
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置とこの裁断装置に使用される打ち抜き刃物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/44 20060101AFI20210222BHJP
B26F 1/00 20060101ALI20210222BHJP
F16H 55/06 20060101ALI20210222BHJP
B23H 7/02 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
B26F1/44 B
B26F1/00 B
B26F1/44 J
F16H55/06
B23H7/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-196056(P2016-196056)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2018-58136(P2018-58136A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】300082863
【氏名又は名称】喜岡 達
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】喜岡 達
【審査官】
藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−091128(JP,A)
【文献】
特開平10−235600(JP,A)
【文献】
実開昭52−144492(JP,U)
【文献】
実開昭51−131787(JP,U)
【文献】
特開昭50−121883(JP,A)
【文献】
米国特許第04754677(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/44
B26F 1/00
F16H 55/06
B23H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維マットを載せて裁断する裁断面を上面に有する受け台と、この受け台の裁断面に向かって移動して、裁断面の繊維マットを、歯車形状に裁断する刃先を先端縁に設けてなる打ち抜き刃物と、この打ち抜き刃物を往復運動させる刃物駆動機構とを備え、
前記打ち抜き刃物は、繊維マットを歯車形状に裁断する刃先を先端に設けてなる鋼材からなる筒状の歯形刃物を備え、
前記歯形刃物の刃先は、歯車の歯先を切断する歯先刃と、歯車の歯底を切断する歯底刃と、前記歯先刃と前記歯底刃とに連結されて歯車の歯面を切断する歯面刃とを有し、
前記歯形刃物は、前記刃先から後端に向かって次第に厚く成形されて、前記刃先に前記歯先刃を設けてなり、
外面には、前記歯底刃と前記歯面刃とを先端縁とし、刃先から後端に向かって延びる複数のV溝を設けており、
前記V溝は、刃先から前記歯形刃物の後端に向かって次第に浅く、
前記歯形刃物は、内面に、往復運動方向に伸びる縦溝と凸条とを交互に設けており、
前記縦溝の先端縁に前記歯先刃が設けられ、
前記縦溝の先端縁と前記凸条の先端縁との間に前記歯面刃が設けられ、
前記凸条の先端縁に前記歯底刃を設けてなることを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置。
【請求項2】
請求項1に記載される繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置であって、
前記歯底刃から前記歯形刃物後端までの歯底ラインの刃物角(α1)が、前記歯先刃から歯形刃物後端までの外側ラインの刃物角(α2)よりも大きいことを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置であって、
前記歯形刃物は、前記歯底刃を設けてなる領域における後端部の厚さ(W1)が、前記歯先刃を設けてなる領域における後端部の厚さ(W2)よりも厚くしてなることを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置であって、
前記歯形刃物の内側形状が、先端から後端に向かって一部又は全体を次第に大きくしてなることを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載される繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置であって、
前記歯形刃物が、前記凸条の高さを、先端から後端に向かって次第に低くしてなることを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載される繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置であって、
前記打ち抜き刃物が、前記歯形刃物の内側に、歯車状シートに貫通穴を裁断する円筒刃物を有し、
前記円筒刃物が先端縁にサブ刃先を有し、前記サブ刃先が前記歯形刃物の先端に設けてなる刃先と同一平面に配置されてなることを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置。
【請求項7】
繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットを歯車形状に裁断する打ち抜き刃物であって、
繊維マットを歯車形状に裁断する刃先を先端に設けてなる鋼材からなる筒状の歯形刃物を備え、
前記歯形刃物の刃先は、歯車の歯先を切断する歯先刃と、歯車の歯底を切断する歯底刃と、前記歯先刃と前記歯底刃とに連結されて歯車の歯面を切断する歯面刃とを有し、
前記歯形刃物は、前記刃先から後端に向かって次第に厚く成形されて、前記刃先に前記歯先刃を設けてなり、
外面には、前記歯底刃と前記歯面刃とを先端縁とし、刃先から後端に向かって延びる複数のV溝を設けており、
前記V溝は、刃先から前記歯形刃物の後端に向かって次第に浅く、
前記歯形刃物は、内面に、往復運動方向に伸びる縦溝と凸条とを交互に設けており、
前記縦溝の先端縁に前記歯先刃が設けられ、
前記縦溝の先端縁と前記凸条の先端縁との間に前記歯面刃が設けられ、
前記凸条の先端縁に前記歯底刃を設けてなることを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットを歯車形状に裁断する打ち抜き刃物。
【請求項8】
受け台の裁断面に載せてなる繊維マットを歯車形状に打ち抜きする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの打ち抜き刃物の製造方法であって、
鋼材からなる金属ブロックを放電加工して所定の厚さの筒体に加工する切断工程と、
前記切断工程で得られる前記筒体を研削して歯形刃物の先端縁に歯車形状の刃先を設けて歯形刃物とする研削工程と、
前記研削工程で得られた前記歯形刃物を焼き入れする焼き入れ工程と、
焼き入れされた前記歯形刃物を仕上げ研磨する研磨工程とからなり、
前記切断工程において、金属ブロックを放電加工して、内面に、往復運動方向に伸びる縦溝と凸条とを交互に設けてなる歯車形状とする筒体に加工し、
前記研削工程において、前記筒体の先端部の外面を研削して刃先に歯先刃を設けると共に、前記筒体の外面を研削して、一定の間隔で、筒体の先端から後端に向かって次第に浅くなるV溝を設け、前記V溝の先端縁に歯底刃と歯面刃とからなる刃先を設けて、前記歯形刃物の先端縁に、歯先刃と歯面刃と歯底刃とからなる刃先を設け、
前記焼き入れ工程において前記刃先を焼き入れ硬化し、前記研磨工程で前記刃先を仕上げ研磨することを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの打ち抜き刃物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載される繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの打ち抜き刃物の製造方法であって、
前記打ち抜き刃物に、前記研磨工程後に前記歯形刃物の内側に、先端にサブ刃先を設けてなる円筒刃物を、サブ刃先を前記歯形刃物の刃先と同一平面に配置して連結することを特徴とする繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの打ち抜き刃物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)、ポリイミド繊維、PBO繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリリート繊維、炭素繊維、フッ素繊維、PPS繊維等の有機繊維や、カーボン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維を所定の厚さに集合してなる繊維マットを歯車の外形に裁断する裁断装置と、この裁断装置に使用する打ち抜き刃物
とその製造方法に関する。
本明細書において「繊維マット」は、繊維を方向性なく所定の厚さの集合した不織布に特定するものでなく、複数枚の不織布を積層したもの、さらに繊維を種々の織り方で編組してなる複数の繊維クロスを積層したもの、さらに積層した繊維層を厚さ方向に貫通する厚さ方向糸のある三次元繊維などの立体繊維組織として所定の厚さとしてなるものを含む意味に使用する。
さらに、「繊維マット」は繊維組織のみからなるものには特定せず、繊維間に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を添加してなるプリプレグを含む意味に使用する。
【背景技術】
【0002】
繊維シートで補強された繊維強化プラスチック歯車は開発されている。このプラスチック歯車の製造方法として、繊維強化プラスチックを円筒形に成形した後、外周を切削して歯形とする方法(特許文献1参考)と、強化用長繊維と熱可塑性樹脂プリプレグの積層体を歯車の形状に打ち抜きして歯車とする方法(特許文献2)とが開発されている。
【0003】
円筒状に加工して外周を歯形に切削する方法は、切削工程における切削量が多く、製造コストが高くなる欠点がある。プリプレグを歯形に打ち抜きして歯車を製造する方法は、切削加工を簡単にして能率よく多量生産できる特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−97700号公報
【特許文献2】特開平6−114863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載される製造方法は、ポンチを使用して、繊維強化プラスチック歯車に使用される強化用長繊維と熱可塑性樹脂プリプレグの有角度積層板を歯形に打ち抜きする。ポンチは、雌型に設けた貫通穴に挿入されて有角度積層板を打ち抜きする。ポンチによる裁断は、厚い有角度積層板を正確な外形の歯形に裁断することが難しく、とくにカーボン繊維などの強靭な強化用長繊維からなる有角度積層板を能率よく裁断できない欠点がある。とくに、小さい歯車の外形を正確な歯型に裁断できない欠点がある。また、裁断時におけるポンチ外周縁の損傷が甚だしく、充分な耐久性を実現できないことから、ランニングコストが相当に高くなる欠点もある。
【0006】
本発明者はポンチの欠点を解消するために、先端縁に
刃先を設けた金属板を歯型に折曲加工してトムソン刃を製作した。トムソン刃を使用して、平面状の受け台に繊維シートを載せ、繊維シートに
刃先を押し付けて裁断すると、切断しやすい繊維を集合している薄い繊維シートを歯型に裁断できるが、カーボン繊維やケブラー繊維などの強靭な繊維シートを繰り返し裁断できない。とくに、トムソン刃は、強靭な繊維を厚く積層している繊維マットを切断できない。
刃先が強靭な繊維を切断できず、また、切断時に金属板が変形して歯形が崩れるからである。
【0007】
プラスチック歯車は金属歯車に代わって使用されることから、金属に匹敵する強度が要求される。とくに、歯車は、噛み合わせ状態で歯を局部的に接触させてトルクを伝達する繊維強化プラスチック歯車には、強靭な繊維を相当に厚く集合している繊維マットが使用される。このことから、繊維強化プラスチック歯車用の繊維マットを裁断する打ち抜き刃物には、強靭な繊維を厚く集合している繊維マットを、繰り返し正確な歯型に裁断できるという極めて難しい特性が要求される。
【0008】
本発明は、以上の難しい課題を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、低コストに製作できる打ち抜き刃物を使用しながら、強靭な補強繊維を厚く集合している繊維マットをも能率よく正確な歯形に裁断でき、さらに多数の繊維マットを繰り返し裁断しながら、正確な歯形に打ち抜きして、プラスチック歯車を安価に多量生産できるプラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置とこの裁断装置に使用する打ち抜き刃物
とその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置は、繊維マット10を載せて裁断する裁断面2を上面に有する受け台1と、この受け台1の裁断面2に向かって移動して、裁断面2の繊維マット10を、歯車形状に裁断する刃先4を先端縁に設けてなる打ち抜き刃物3と、この打ち抜き刃物3を往復運動させる刃物駆動機構5とを備える。
【0010】
打ち抜き刃物3は、繊維マット10を歯車形状に裁断する刃先4を先端に設けてなる、焼き入れして硬化する炭素鋼やハイスなどの鋼材からなる筒状の歯形刃物3Aを備える。歯形刃物3Aの刃先4は、歯車の
歯先を切断する歯先刃4Aと、歯車の歯底を切断する歯底刃4Bと、歯先刃4Aと歯底刃4Bとに連結されて歯車の歯面を切断する歯面刃4Cとからなる。さらに、歯形刃物3Aは、外面を往復運動方向に傾斜する傾斜面として、刃先4から後端に向かって次第に厚く
成形して刃先4に歯先刃4Aを設けており、その外面には、歯底刃4Bと歯面刃4Cとを先端縁として、刃先4から後端に向かって伸びる複数のV溝16を設けている。V溝16は、刃先4から歯形刃物3Aの後端に向かって次第に浅く
しており、さらに歯形刃物3Aは、内面に、往復運動方向に伸びる縦溝21と凸条22とを交互に設けており、縦溝21の先端縁に歯先刃4Aを設けて、縦溝21の先端縁と凸条22の先端縁との間に歯面刃4Cを設けて、凸条22の先端縁に歯底刃4Bを設けている。
【0011】
以上の繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置は、低コストに製作できる打ち抜き刃物を使用して、強靭な補強繊維を厚く集合している繊維マットをも能率よく正確な歯形に裁断でき、さらに多数の繊維マットを繰り返し裁断しながら、正確な歯形の歯車状シートに打ち抜きでき、裁断された歯車状シートでもって繊維強化プラスチック歯車を安価に多量生産できる特徴を実現する。
【0012】
それは、以上の裁断装置の打ち抜き刃物が、繊維マット10を歯車形状に裁断する刃先4を先端に設けている鋼材の歯形刃物3Aを備え、歯形刃物3Aは、刃先4に、歯車の頂上部を切断する歯先刃4Aと、歯車の歯底を切断する歯底刃4Bとを設けて、歯先刃4A及び歯底刃4Bから後端までの断面形状の外側ライン18を、刃先4から後端に向かって外側に突出する方向に傾斜して、刃先4から後端に向かって次第に厚く形成しており、さらに、歯形刃物3Aは、歯底刃4Bと歯面刃4Cとを先端縁として、刃先4から後端に向かって伸びる複数のV溝16を設けて、このV溝16を、刃先4から歯形刃物3Aの後端に向かって次第に浅くし
ているからである。
【0013】
以上の打ち抜き刃物は、鋼材からなる歯形刃物3Aの先端に、歯車の歯底を裁断する歯底刃4Bと、歯車の頂上部を裁断する歯先刃4Aからなる刃先4を設け、この歯形刃物3Aの厚さを、先端の刃先4から後端に向かって次第に厚くし、さらに、歯形刃物3Aの外面には、先端を歯底刃4Bと歯面刃4Cとに配置しているV溝16を設けて、V溝16を先端の刃先4から歯形刃物3Aの後端に向かって次第に浅くして、刃先4の変形を防止して繊維マット10を裁断する。とくに、以上の歯形刃物3Aは、局部的に内側に突出する形状から変形しやすい歯底刃4Bを強靭な構造として、打ち抜き時の衝撃で歯底刃4Bが変形するのを確実に防止する。歯底刃4Bは、歯車の歯底部を切断するために、局部的に内側に突出する形状で、打ち抜き時の瞬間的な応力で変形しやすい。さらに、歯底刃4Bは、打ち抜きされた繊維マット10を内側に案内するために片刃形状とされることから、
図6の断面図に示すように、
刃先両面の中心線(A)が歯形刃物3Aの刃先4が往復運動する方向に対して内側に傾斜し、打ち抜き時に矢印Bで示す応力を受ける。この応力は、繊維マット10を裁断する毎に繰り返し歯底刃4Bに作用して変形させる原因となる。歯底刃4Bが刃先4に作用する応力で次第に変形すると、打ち抜き刃物は多数の繊維マット10を正確な歯車形状に裁断できない。
【0014】
さらに、以上の打ち抜き刃物は、歯形刃物を前述の独得の形状として、打ち抜き時に瞬間的に作用する応力による刃先4の変形を防止するので、裁断するのが極めて難しい強靭な繊維を厚く集合してなる繊維マットをも、正確な歯車形状に裁断でき、しかも繰り返し厚い繊維マットを裁断しながら正確な歯車形状に裁断できる特徴を実現する。
【0015】
本発明の裁断装置は、歯底刃4Bから歯形刃物3A後端までの歯底ライン17の刃物角(α1)を、歯先刃4Aから歯形刃物3A後端までの外側ライン18の刃物角(α2)よりも大きくすることができ、さらに、歯形刃物3Aは、歯底刃4Bを設けている領域における後端部の厚さ(W1)を、歯先刃4Aを設けている領域における後端部の厚さ(W2)よりも厚くすることができる。
本発明の繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置は、歯形刃物3Aの内側形状を、先端から後端に向かって、一部又は全体を次第に大きくすることができる。この裁断装置は、繊維マットを裁断して得られる歯車状シートをスムーズに歯形刃物の内部に案内でき、また内側に案内された歯車状シートをスムーズに歯形刃物から取り出しできる特徴がある。
【0017】
本発明の繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置は、歯形刃物3Aの内面に設けている凸条
22の高さを、先端から後端に向かって次第に低くすることができる。
【0018】
また、本発明の繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置は、歯形刃物3Aの内側に、歯車状シートに貫通
穴を裁断する円筒刃物
3Bを配置し、この円筒刃物
3Bの先端縁にはサブ刃先
4Dを設けて、サブ刃先
4Dを歯形刃物3Aの刃先4と同一平面に配置することができる。この裁断装置は、中心に貫通穴のある歯車状シートを裁断できる。
【0019】
本発明の繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マット10の打ち抜き刃物の製造方法は、鋼材からなる金属ブロックを放電加工して所定の厚さの筒体に加工する切断工程と、切断工程で得られる筒体を研削して歯形刃物3Aの先端縁に歯車形状の刃先4を設けて歯形刃物3Aとする研削工程と、研削工程で得られた歯形刃物3Aを焼き入れする焼き入れ工程と、焼き入れされた歯形刃物3Aを仕上げ研磨する研磨工程とで打ち抜き刃物を製造する。
切断工程においては、金属ブロック19を放電加工して、
内面に、往復運動方向に伸びる縦溝21と凸条22とを交互に設けている歯車形状とする筒体20に加工し、研削工程においては、筒体20の先端部
の外面を研削して刃先に歯先刃4Aを設けると共に、筒体20の外面を研削して、一定の間隔で、筒体20の先端から後端に向かって次第に浅くなるV溝16を設け、V溝16の先端縁に歯底刃4Bと歯面刃4Cとからなる刃先4を設けて、歯形刃物3Aの先端縁に、歯先刃4Aと歯面刃4Cと歯底刃4Bとからなる刃先4を設け
て、焼き入れ工程においては、刃先4を焼き入れ硬化し、研磨工程で刃先4を仕上げ研磨する。
【0020】
本発明の繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マット10の打ち抜き刃物の製造方法は、打ち抜き刃物3に、研磨工程後に歯形刃物3Aの内側に、先端にサブ刃先4Dを設けてなる円筒刃物3Bを、サブ刃先4Dを歯形刃物3Aの刃先4と同一平面に配置して連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例にかかる裁断装置に使用する打ち抜き刃物の斜視図である。
【
図5】
図1に示す打ち抜き刃物の歯底刃と歯先刃部分の垂直断面図である。
【
図6】打ち抜き刃物の歯底刃が繊維マットを裁断する状態を示す断面図である。
【
図7】金属ブロックを放電加工して筒体とし筒体を研削して歯形刃物とする状態を示す斜視図である。
【
図8】繊維マットを打ち抜きする裁断装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置と打ち抜き刃物の製造方法を例示するものであって、本発明は裁断装置と打ち抜き刃物の製造方法を以下に特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0023】
本発明の裁断装置は、繊維マットを歯車形状の歯車状シートに裁断し、歯車状シートを繊維強化プラスチック歯車の補強繊維に使用する。プリプレグの繊維マットを裁断して得られる歯車状シートは、加圧状態でプラスチックを硬化させて繊維強化プラスチック歯車とし、プラスチックを含まない歯車状シートは、プラスチックを含浸し、あるいはプラスチックに埋設し、プラスチックを成形して繊維強化プラスチック歯車に加工する。歯車状シートを埋設している繊維強化プラスチック歯車は、プラスチックを硬化させた状態で外周面を切削し、あるいは研磨してより高精度な外形の繊維強化プラスチック歯車となる。本発明は、繊維強化プラスチック歯車に使用する繊維マットを裁断するための装置と打ち抜き刃物にかかるものであって、繊維強化プラスチック歯車の製造装置や製造方法にかかるものでない。したがって、繊維マットを歯車形状に裁断して得られる歯車状シートを使用して繊維強化プラスチック歯車とする方法や装置は、現在使用され、あるいはこれから開発される方法と装置が使用できる。
【0024】
繊維強化プラスチック歯車の補強用に使用される繊維マットは、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)、ポリアミド繊維等の有機繊維や、カーボン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維をからなり、これ等の繊維を集合して所定の厚さとしたもの、さらに繊維間に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を添加してなるプリプレグである。繊維マットは、繊維を三次元に集合したもので、とくに厚さ方向に延びる繊維によって層間剥離が防止される。したがって、繊維マットを補強繊維として埋設している繊維強化プラスチック歯車は金属歯車に匹敵する強度を実現する。
【0025】
繊維マットを歯車形状に裁断した歯車状シートは、積層して、あるいは積層することなくプラスチックに埋設されて繊維強化プラスチック歯車に加工される。刃幅の広い、言い換えると厚い繊維強化プラスチック歯車は、歯車状シートを積層する枚数で刃幅を調整できる。また、薄い歯車状シートは積層して刃幅の広い繊維強化プラスチック歯車に加工できる。したがって、歯車状シートの積層して得られる繊維強化プラスチック歯車は、歯車状シートの厚さと、繊維強化プラスチック歯車の刃幅で積層枚数を調整する。
【0026】
図8の繊維強化プラスチック歯車に使用される繊維マットの裁断装置は、繊維マット10を載せて打ち抜き刃物3で裁断する裁断面2を上面に有する受け台1と、この受け台1の裁断面2に向かって移動して、裁断面2に配置している繊維マット10を、歯車形状に裁断する打ち抜き刃物3と、この打ち抜き刃物3を往復運動させる刃物駆動機構5とを備える。
【0027】
受け台1は金属プレートで、裁断面2を平面状としている。受け台は、全体又は表面をプラスチックやゴム製とすることもできる。金属プレートの受け台は、
図6に示すように、表面に弾性シート1Aを積層している。弾性シート1Aは厚さを1mm〜10mmとするゴム状弾性体をシート状である。上面に弾性シート1Aを積層している受け台1は、打ち抜き刃物3で繊維マット10を打ち抜き加工する状態で、打ち抜き刃物3の
刃先4を弾性シート1Aに密着させ、あるいは打ち抜き刃物3の
刃先4を弾性シート1Aに挿入させて、繊維マット10から打ち抜き加工される歯車状シート11の裁断縁11Aを確実に綺麗に裁断できる。ただし、受け台は、必ずしも上面に弾性シートを配置する必要はなく、受け台の裁断面に打ち抜き刃物を接近ないし接触させて、繊維マットを打ち抜き加工して裁断することもできる。
【0028】
刃物駆動機構5は、打ち抜き刃物3を上下に往復運動させて、受け台1の裁断面2に載せている繊維マット10を打ち抜き刃物3で打ち抜きして裁断する。刃物駆動機構5は、打ち抜き刃物3を固定する上下台6と、この上下台6を上下に往復運動させるシリンダ7とを備えている。打ち抜き刃物3は上下台6の下面に固定され、上下台6をシリンダ7で上下に往復運動されて、受け台1に載せている繊維マット10を打ち抜きして歯車形状に裁断する。すなわち、打ち抜き刃物3を刃物駆動機構5で往復運動させて、受け台1の裁断面2に配置している繊維マット10を受け台1と打ち抜き刃物3で挟んで、歯車形状に裁断する。
【0029】
図1ないし
図5に示す打ち抜き刃物3は、繊維マット10を歯車形状の歯車状シート11に裁断する歯形刃物3Aと、この歯形刃物3Aの内側に固定されて、歯車形状に裁断される歯車状シート11の中心に貫通穴を設ける円筒刃物3Bとからなる。
【0030】
打ち抜き刃物3は、歯形刃物3Aで繊維マット10を歯車形状の歯車状シート11に裁断し、円筒刃物3Bで歯車形状に裁断される歯車状シート11の中心に貫通穴を裁断する。歯形刃物3Aと円筒刃物3Bは、各々の先端縁に、同一平面に刃先4を配置して、繊維マット10の外形と貫通穴とを同時に打ち抜きして裁断する。この打ち抜き刃物3で裁断される歯車状シート11は、中心に貫通穴のある繊維強化プラスチック歯車に使用される。
図1の打ち抜き刃物3は、歯形刃物3Aと円筒刃物3Bとを設けて、中心に貫通穴のある歯車状シート11を裁断するが、打ち抜き刃物3は必ずしも円筒刃物3Bを設けることなく、歯形刃物3Aのみの構造とすることもできる。円筒刃物3Bのない打ち抜き刃物3は、中心に貫通穴のない歯車形状に歯車状シート11を裁断する。中心に貫通穴のない歯車状シートは、中心に貫通穴のない繊維強化プラスチック歯車に使用され、あるいは、最後の工程で中心貫通穴を設けて、貫通穴のある繊維強化プラスチック歯車に加工される。
【0031】
歯形刃物3Aは、従来の打ち抜き刃物3のように、金属板を歯車形状に折曲加工して製作しない。歯形刃物3Aは、金属ブロック19を切削加工して製作される。金属ブロック19は、円柱状又は厚い板状で、放電加工で筒状に加工した後、切削加工して製作される。金属ブロック19の厚さは、歯形刃物3Aの長さ(正確には往復運動方向の長さ)とする。歯形刃物3Aの長さ、すなわち金属ブロック19の厚さは、裁断される歯車の外径で調整する。金属ブロック19の厚さ、すなわち歯形刃物3Aの長さは、例えば繊維強化プラスチック歯車の外径の20%以上であって200%以下、好ましくは30%以上であって150%以下、さらに好ましくは35%以上であって100%以下とする。例えば、外径を100mmとする繊維強化プラスチック歯車に使用する繊維マット10の歯形刃物3Aは、厚さを45mmとする金属ブロック19を加工して製作される。
【0032】
炭素鋼の金属ブロックは、歯形刃物に要求される硬さと脆さとを考慮して炭素の含有量を用途に最適な値に調整する。歯形刃物は、炭素の含有量を多くして硬くできる。ただ、炭素の含有量が多くなると脆くなるので、金属ブロック19の炭素の含有量は、例えば1.4%以下、好ましくは0.7%以下、最適には0.4%以上とする。ただし、本明細書において炭素の含有量は質量パーセント濃度とする。金属ブロック19は、放電加工で筒状に加工された後、砥石やヤスリで切削して先端に歯車形状の刃先4を設け、その後焼き入れして、さらに研削して歯形刃物3Aに加工される。歯形刃物3Aの内側に固定される円筒刃物3Bは、炭素の含有量を金属ブロック19と同等とする炭素鋼板で製作される。歯形刃物は、炭素鋼に代わってハイスなどの鋼材で製作することもできる。
【0033】
以下の製造工程で加工される歯形刃物の形状を
図7に示す。
[切断工程]
この工程は、
図7に示すように、金属ブロック19を放電加工でもって所定の厚さの筒体20に加工する。放電加工は、金属ブロック19にワイヤ(図示せず)を貫通し、ワイヤと金属ブロック19との間で放電させて、金属ブロック19を切断する。放電加工は、ワイヤと金属ブロック19とを相対的に移動させて、金属ブロック19から筒体20を切り離す。放電加工で金属ブロック19から切り離された筒体20は、内面に、刃物の往復運動方向に延びる縦溝21と凸条22とを交互に設けて歯車形状としている。筒体20は、その後の研削工程において、筒体20の内面に設けられる縦溝21の先端縁を歯先刃4Aに、縦溝21の間に設けられる凸条22の両側面の先端縁を歯面刃4Cに、溝底の先端縁を歯底刃4Bに加工する。
【0034】
筒体20の内面の歯車形状は、先端から後端まで同じ形状に加工される。この筒体20は、縦溝21と凸条22が、歯形刃物3Aの往復運動方向、言い換えると歯形刃物3Aの中心軸方向に平行となる。ただ、筒体20は、縦溝21と凸条22とを交互に設けている内面を、先端から後端に向かって次第に大きくなるテーパー状とすることもできる。
【0035】
筒体20は、外面を円柱に沿う形状としている。外面を円柱状として、内面を先端から後端までを同じ形状の歯車形状とする筒体は、放電加工でもって金属ブロックから簡単に製作できる。放電加工のワイヤを、金属ブロックの両面に対して垂直方向に配置し、金属ブロックとワイヤとを、相対的に両面に平行な面でX軸方向とY軸方向に移動して、筒体の内面と外面の両方を切断できるからである。ただし、筒体は、内面を先端から後端まで同じ形状とし、外面を先端から後端に向かって大きくするテーパー状に加工し、また内面と外面の両方を後端に向かって大きな形状とすることもできる。円柱状の金属ブロックを筒体に加工する方法は、筒体の外径に等しい円柱状の金属ブロックを使用して、筒体の内形のみを放電加工で切断して筒体を製作できる。
【0036】
[研削工程]
外面を円柱状とする筒体20は、この工程で外側面を研削して、先端から後端に向かって外径を大きくするテーパー状に研削する。研削工程で外面をテーパー状に加工している筒体は、外面を研削してテーパー状に加工する工程を省略できる。さらに筒体20は、先端部の外側を研削して、先端に片刃の刃先4を設ける。
【0037】
繊維マット10を裁断する刃先4は、歯先刃4Aと歯面刃4Cと歯底刃4Bとが連結された歯車形状である。歯先刃4Aは、歯車の歯先となる部分を切断し、歯面刃4Cは歯車の歯面となる部分を切断し、歯底刃4B歯車の歯底となる部分を切断する。歯先刃4Aと歯面刃4Cと歯底刃4Bとからなる刃先4は、内面を歯車形状とする筒体20の外側面を研削して設けられる。
【0038】
片刃の歯面刃4Cと歯底刃4Bは、筒体20先端部の外面にV溝16を研削して設けられる。V溝16は、両面を歯面刃4Cに、溝底部を歯底刃4Bに配置する。V溝16の溝底部が歯底刃4Bを設けるので、図に示すように、溝底部を所定の曲率半径で湾曲する形状とし、あるいは図示しないが所定の横幅とすることができる。V溝16が、筒体20の先端から後端に向かって次第に浅くなる形状によって、歯底刃4Bの刃物角を歯先刃4Aの刃物角の大きくする。
【0039】
図5の断面図は、歯先刃4Aと歯底刃4Bの断面形状を示す。この図において、実線は歯底刃4Bの断面形状を示し、鎖線は歯先刃4Aの断面形状を示している。歯底刃4Bの刃物角は、V溝16を先端から後端に向かって浅くすることで、歯先刃4Aの刃物角よりも大きくなる。
図1と
図5の歯形刃物3Aは、
図4の正面図に示すように、V溝16を筒体20の後端(図において下端)まで延長せず、また歯底刃4Bを、筒体20の内面に突出する部分に設けているので、歯底刃4Bを設けている歯形刃物3Aの後端部の厚さ(W1)は、歯先刃4Aを設けている歯形刃物3Aの後端部の厚さ(W2)よりも厚い。耐久性に優れた歯形刃物3Aの実現において、この独得の構造は極めて重要である。繊維マット10の打ち抜き工程において、内側に突出する歯底刃4Bの変形歪みを防止して耐久性を向上させるからである。
【0040】
図1ないし
図5に示す歯形刃物3Aは、V溝16を後端に向かって次第に浅くし、さらに、歯底刃4Bを設けた部分の後端部の厚さ(W1)を、歯先刃4Aを設けた部分の後端部の厚さ(W2)より大きくすることで、歯底刃4Bから歯形刃物3A後端までの歯底ライン17の傾斜角、即ち歯底刃4Bの刃物角(α1)が、歯先刃4Aから歯形刃物3A後端までの傾斜角である歯先刃4Aの刃物角(α2)よりも大きくしている。
【0041】
さらに、刃先4の先端部分を、先端縁から1mm〜5mm幅で外側面を研削して、刃物角を先端に向かって次第に大きくして、刃先先端の仕上げ角を10度以上であって60度以下、さらに好ましくは15度以上であって45度以下として耐久性を向上している。
【0042】
さらに
図5に示す歯形刃物3Aは、筒体20の内側面の一部を研削して、先端から後端に向かって内側形状が次第に大きくしてなるテーパー状に加工している。
図5の歯形刃物3Aは、歯底刃4Bを設けるために、筒体20の内側に突出している凸条22を後端部で研削して、凸条22を設けている部分を、後端に向かって次第に大きくなる形状としている。凸条22は内側に突出するので簡単に切削できる。また、切断工程で得られる筒体20は、後端を大きく開口しているので、この開口部からヤスリや砥石を筒体20の内側に挿入して、凸条22を簡単に研削できる。この歯形刃物3Aは、凸条22を後端部に向かって厚く研削することで、歯形刃物3Aの後端に向かって凸条22を次第に低くして、凸条22部分の内側形状を後端に向かって次第に大きく加工できる。後端に向かって内側形状を大きくしてなる歯形刃物3Aは、繊維マット10の裁断された歯車状シート11をスムーズに内側に案内でき、また内側に案内した歯車状シート11を速やかに排出できる。
【0043】
[焼き入れ工程]
研削工程で得られた炭素鋼の歯形刃物3Aは、刃先4を硬くするために焼き入れされる。刃先4を設けた歯形刃物3Aは、刃先4のHRC硬度を62以上、好ましくは約65とするように焼き入れする。刃先
4の硬度は硬くして寿命を長くできるが、硬すぎると脆くなって打ち抜き加工時に損傷しやすくなる。したがって、歯形刃物3Aは、刃先
4のHRC硬度が62よりも高く、好ましくは64よりも高く、かつ72よりも低く、好ましくは66より低くなるように焼き入れする。焼き入れ後の刃先
4の硬度は、炭素の含有量と焼き入れ温度でコントロールする。焼き入れの温度を高くして刃先
4の硬度を高くでき、温度を低くして硬度を低くできる。たとえば、歯形刃物3Aは、炭素の含有量を0.6%とする金属ブロック19を使用し、焼き入れ温度を780℃〜950℃として、HRC硬度を62〜72の範囲とする。刃先4の焼き入れ後のHRC硬度を65とする歯形刃物3Aは、炭素の含有量を0.6%、焼き入れ温度を850℃とする。
【0044】
[研磨工程]
焼き入れされた歯形刃物3Aは、最後に仕上げ研磨して鋭利な刃先4とする。特に
研磨工程は、刃先4の先端部分の外側面を研磨して、仕上げ角を最適値に調整する。
【0045】
歯形刃物3Aは以上の工程で製作されるが、円筒刃物3Bは、細長い炭素鋼板を円柱に沿う形状に湾曲し、両端を溶接して筒状に加工すると共に、先端部分を研削して刃先4を設けた後、焼き入れし、焼き入れの後さらに仕上げ研磨して製作される。円筒刃物3Bは、2mm〜5mmの鋼材板で製作される。この鋼材板は、焼き入れする前工程で湾曲して円筒状に加工して、先端縁に円形のサブ刃先4Dを設ける。円筒状の鋼材板は、先端部分の内側面を研削して円形のサブ刃先4Dを設ける。
【0046】
円筒刃物3Bは、サブ刃先4Dに向かって刃物角が次第に大きくなる形状として、打ち抜き時の衝撃でサブ刃先4Dが損傷するのを防止する。先端に向かって次第に刃物角を大きくする円筒刃物3Bは、先端の仕上げ角が、耐久性と裁断能力に影響を与える。したがって、円筒刃物3Bの仕上げ角は、好ましくは、15度以上であって60度以下、最適には約30度とする。円筒刃物3Bは、刃先4のHRC硬度を歯形刃物3Aと同等とするように焼き入れする。
【0047】
円筒刃物3Bは連結金具23を介して歯形刃物3Aに固定される。連結金具23は、円筒刃物3B及び歯形刃物3Aの後端に溶接して固定されて、円筒刃物3Bを歯形刃物3Aの同心位置に配置し、かつ、円筒刃物3Bと歯形刃物3Aの刃先4を同一平面に配置する。
図4の打ち抜き刃物3は、円筒刃物3Bと歯形刃物3Aとの間に4本の連結金具23を放射状に固定している。
図4の連結金具23は、一端を円筒刃物3Bの外側に溶接して固定し、他端を歯形刃物3Aに設けた嵌合凹部に入れて溶接して固定している。連結金具23と円筒刃物3Bと歯形刃物3Aは後端面を同一平面に配置している。この打ち抜き刃物3は、連結金具23と円筒刃物3Bと歯形刃物3Aとを同一平面に配置している後端面を刃物駆動機構で押圧して、繊維マット10を裁断する。
【符号の説明】
【0048】
1…受け台 1A…弾性シート
2…裁断面
3…打ち抜き刃物
3A…歯形刃物
3B…円筒刃物
4…刃先
4A…歯先刃
4B…歯底刃
4C…歯面刃
4D…サブ刃先
5…刃物駆動機構
6…上下台
7…シリンダ
10…繊維マット
11…歯車状シート
11A…裁断縁
16…V溝
17…歯底ライン
18…外側ライン
19…金属ブロック
20…筒体
21…縦溝
22…凸条
23…連結金具