特許第6837812号(P6837812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタホーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6837812-建物外壁の断熱改修構造 図000002
  • 特許6837812-建物外壁の断熱改修構造 図000003
  • 特許6837812-建物外壁の断熱改修構造 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837812
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】建物外壁の断熱改修構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20210222BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   E04G23/02 H
   E04B1/76 500F
   E04B1/76 400F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-228332(P2016-228332)
(22)【出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2018-84095(P2018-84095A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大屋 綾子
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−115658(JP,A)
【文献】 特開2014−173256(JP,A)
【文献】 特開2004−308277(JP,A)
【文献】 特開2013−064262(JP,A)
【文献】 米国特許第04637187(US,A)
【文献】 特開平03−115659(JP,A)
【文献】 特開2014−218814(JP,A)
【文献】 特開2012−154063(JP,A)
【文献】 特開2016−075113(JP,A)
【文献】 特開2002−161591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 1/62−1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱を挟んで対向して配置された外壁材及び既存内壁材と、これらの外壁材と既存内壁材との間に配設された既存断熱材と、を含んで構成された既存壁部と、
前記既存内壁材の建物内側に離間して配置されると共に前記外壁材側から見て前記柱と重ならない位置に配置された複数の桟を介して当該既存内壁材に固定された新規内壁材と、当該既存内壁材と当該新規内壁材との間に配設された新規断熱材と、を含んで構成された断熱改修部と、
を有し、
前記既存壁部は、前記外壁材を支持する外壁フレームを含み、
前記柱、前記外壁フレーム及び前記桟が同一のモジュール単位で配置され、前記外壁材側から見て、すべての前記桟が前記柱及び前記外壁フレームと重ならない、
建物外壁の断熱改修構造。
【請求項2】
前記建物は、四隅に立設された4本の柱と柱の端部同士を連結する複数本の梁とを含んで各々構成された複数の建物ユニットを相互に連結して構築されており、
前記外壁フレームは前記建物ユニットにおいて建物外周に配置された桁側面又は妻側面に対して前記モジュール単位で等間隔に配置されており、
前記新規内壁材は桁方向又は妻方向に前記モジュール単位で分割されており、当該分割されて左右に隣接する一対の前記新規内壁材の各隣接端部が共通の前記桟に固定されている、
請求項1に記載の建物外壁の断熱改修構造。
【請求項3】
前記柱は、ラチス柱を含む、
請求項1に記載の建物外壁の断熱改修構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外壁の断熱改修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存外壁の外側に、断熱材及び新規外壁材から構成される新規外壁を後付することにより、建物外壁の断熱性能を向上させる断熱改修構造が知られている(特許文献1〜特許文献4参照)。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、新規外壁面を構成するサイディング材の裏面に所要厚さの断熱材を備えた外壁パネルを、既存外壁の表面に直接接着する外壁のリフレッシュ工法が開示されている。
【0004】
具体的に説明すると、新規外壁面を構成するサイディング材の裏面全体に亘って断熱材が予め固着され、断熱材の他方の面の周縁部に接着剤を塗布してこれを既存外壁の表面に接着するため、新規外壁と既存外壁との間に挟み込まれるように断熱材が配置される。その結果、屋内外の熱の伝達が断熱材により遮られ、建物外壁の断熱性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−195521号公報
【特許文献2】特公平6−33670号公報
【特許文献3】特公平5−43829号公報
【特許文献4】特開2011−52414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ユニット建物に上記先行技術を適用した場合、以下の不具合が生じる。すなわち、ユニット建物では、建物ユニットの躯体フレームの側面に、外壁フレームに外壁材が支持された外壁パネルが組付けられ、また、外壁パネルの屋内側には、下地材を介して内壁材が組付けられている。そして、断熱材は外壁材と内壁材との隙間における柱と外壁フレーム間等に配置されるため、柱や外壁フレーム等の配置位置で熱橋が発生して断熱性能が低下する可能性がある。従って、既存の外壁の断熱性能(外壁のどの位置に断熱性能の低い部分が存在するのかといった点)を評価することなく、既存の外壁材の屋外側の面に新たな断熱材付きの外壁材を単純に貼り合わせただけでは、充分な断熱性能を担保することができない可能性がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、既存外壁の断熱性能に応じて、適切に断熱材を後付けして建物外壁の断熱性を向上させることができる建物外壁の断熱改修構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の態様に係る建物外壁の断熱改修構造は、柱を挟んで対向して配置された外壁材及び既存内壁材と、これらの外壁材と既存内壁材との間に配設された既存断熱材と、を含んで構成された既存壁部と、前記既存内壁材の建物内側に離間して配置されると共に前記外壁材側から見て前記柱と重ならない位置に配置された複数の桟を介して当該既存内壁材に固定された新規内壁材と、当該既存内壁材と当該新規内壁材との間に配設された新規断熱材と、を含んで構成された断熱改修部と、を有している。
【0009】
第2の態様に係る建物外壁の断熱改修構造は、第1の態様において、前記既存壁部が、前記外壁材を支持する外壁フレームを含み、前記桟が、前記外壁材側から見て前記外壁フレームと重ならない位置に配置されている。
【0010】
第3の態様に係る建物外壁の断熱改修構造は、第2の態様において、前記建物は、四隅に立設された4本の柱と柱の端部同士を連結する複数本の梁とを含んで各々構成された複数の建物ユニットを相互に連結して構築されており、前記外壁フレームは前記建物ユニットにおいて建物外周に配置された桁側面又は妻側面に対してモジュール単位で等間隔に配置されており、前記内壁材は桁方向又は妻方向に前記モジュール単位で分割されており、当該分割されて左右に隣接する一対の内壁材の各隣接端部が共通の前記桟に固定されている。
【0011】
第4の態様に係る建物外壁の断熱改修構造は、第1又は第2の態様において、前記柱は、ラチス柱を含んでいる。
【0012】
第1の態様に係る建物外壁の断熱改修構造によれば、外壁材と既存内壁材とが柱を挟んで対向して配置されており、これらの外壁材と既存内壁材との間に既存断熱材が配設されて既存壁部が構成される。
【0013】
上記既存壁部に対して断熱改修する場合は、既存壁部の建物内側に断熱改修部が設けられる。具体的には、既存内壁材の建物内側に新規内壁材が離間して配置され、この新規内壁材が複数の桟を介して既存内壁材に固定される。そして、既存内壁材と新規内壁材との間に新規断熱材が配設される。これにより、既存壁部の建物内側に断熱改修部が新たに設けられ、断熱層が重層化される。
【0014】
ここで、本態様では、新規内壁材を既存内壁材に複数の桟を介して固定するにあたり、外壁材側から見て柱と重ならない位置に複数の桟が配置されている。このため、外壁材側から見て柱と桟が重なって配置されることがなくなる。これにより、柱と桟を直列的に経由した熱橋による部分的な断熱性能の低下が解消される。
【0015】
第2の態様に係る建物外壁の断熱改修構造によれば、既存壁部は、外壁材を支持する外壁フレームを含んで構成されている。
【0016】
これに対し、複数の桟は、外壁材側から見て外壁フレームと重ならない位置に配置されているため、外壁材側から見て外壁フレームと重なる部分においては、新規断熱材が配設されることとなる。よって、外壁材と既存内壁材との間に柱の他に外壁フレームが配置される場合でも、外壁フレームと桟を直列的に経由した熱橋による部分的な断熱性能の低下が解消される。
【0017】
第3の態様に係る建物外壁の断熱改修構造によれば、建物は、四隅に立設された4本の柱と柱の端部同士を連結する複数本の梁とを含んで各々構成された複数の建物ユニットを相互に連結して構築されている。
【0018】
また、外壁フレームは、建物ユニットにおいて建物外周に配置された桁側面又は妻側面に対してモジュール単位で等間隔に配置されている。また、新規内壁材は、桁方向又は妻方向に同一のモジュール単位で分割されており、当該分割されて左右に隣接する一対の新規内壁材の各隣接端部が共通の前記桟に固定されている。このように外壁フレームと桟とが同一のモジュール単位で配置されているため、外壁材側から見て外壁フレームと桟とが重ならないように1本の桟を配置すれば、残りの桟も外壁フレームと重ならないように配置される。
【0019】
第4の態様に係る建物外壁の断熱改修構造によれば、柱はラチス柱を含んでいる。ラチス柱の近傍においては、断熱性能が部分的に低下しやすいものの、複数の桟が、外壁材側から見てラチス柱と重ならない位置に配置されるため、外壁材側から見てラチス柱と重なる部分に新規断熱材を配設することができる。
【0020】
その結果、建物がラチス柱を用いた鉄骨軸組工法等により構築されている場合でも、既存壁部の断熱性能に応じて新規断熱材を適切に後付けできる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、第1の態様に係る建物外壁の断熱改修構造は、既存外壁の断熱性能に応じて、適切に断熱材を後付けして建物外壁の断熱性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0022】
第2の態様に係る建物外壁の断熱改修構造は、柱の他に外壁フレームが配置されていても、適切に断熱材を後付けして建物外壁の断熱性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0023】
第3の態様に係る建物外壁の断熱改修構造は、断熱改修部の設計や施工が容易になるという優れた効果を有する。
【0024】
第4の態様に係る建物外壁の断熱改修構造は、建物がラチス柱を用いた鉄骨軸組工法等により構築されている場合でも、適切に断熱材を後付けして建物外壁の断熱性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る建物外壁の断熱改修構造が適用された既存壁部の横断面図である。
図2図1に示される建物外壁の断熱改修構造に繊維系断熱材が適用された場合の変形例である。
図3】第2実施形態に係る建物外壁の断熱改修構造が適用された既存壁部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、図1及び図2を用いて、本発明に係る建物外壁の断熱改修構造の第1実施形態について説明する。
【0027】
(建物10の全体構成)
まず、図1を用いて、建物10の全体構成について説明する。
【0028】
図1に示されるように、建物10は、複数の建物ユニット11が相互に連結されることにより構築されたユニット建物とされている。各建物ユニット11は、四隅に立設された4本の柱12と、4本の柱12の下端部同士を連結する4本の図示しない床梁と、4本の柱12の上端部間同士を連結する4本の図示しない天井梁とによって箱型に形成されている。
【0029】
各建物ユニット11は、尺モジュール又はメートルモジュールによってモジュール化されている。従って、建物ユニット11の桁側面48の梁長手方向の長さ及び妻側面の梁長手方向の長さは、モジュールの整数倍の長さになっている。なお、建物ユニット11のユニットサイズは複数種類あり、住宅プランに応じて同一サイズ又は異なるサイズの建物ユニット11が組み合わされて使用される。
【0030】
(建物壁14の詳細構成)
[建物壁14]
建物10を構成する建物ユニット11の外周に配置された建物壁14は、建物外側に配置された既存壁部16と、この既存壁部16の建物内側に重ねて配置された断熱改修部18と、によって構成されている。
【0031】
[既存壁部16]
既存壁部16は、複数の柱12、外壁フレーム20、外壁材22、既存内壁材24、及び既存断熱材26を含んで構成されており、外壁材22及び既存内壁材24は、柱12を挟んで対向して配置されている。複数の柱12は、角形鋼管により形成されており、建物ユニット11の四隅に立設されている。柱12の下端部同士及び上端部同士は、溝形鋼により形成された床梁及び天井梁により連結されており、溶接により剛接合されている。
【0032】
外壁材22は、矩形平板状に形成されている。一方、外壁フレーム20には、外フランジ28、内フランジ30及びウェブ32から成る溝形鋼が使用されている。外壁材22は外壁フレーム20の外フランジ28に図示しないスクリューで固定されており、これにより外壁パネルが構成されている。外壁パネルの外壁フレーム20が躯体フレームの天井梁及び床梁に固定されることにより、外壁材22が建物外周に沿って組み付けられるようになっている。
【0033】
上述した外壁材22の建物内側には、矩形平板状に形成された既存内壁材24が配設されている。なお、本実施形態では、既存内壁材24としては石膏ボードが使用されている。既存内壁材24の建物外側には、木製の角材で構成された下地材40が配置されている。下地材40は、建物外側から見て外壁フレーム20と重なる位置に配置されている。既存内壁材24は、この下地材40に建物内側から図示しないスクリューによって固定されている。
【0034】
上述した外壁材22及び既存内壁材24間には既存断熱材26が配設されている。柱12A及び柱12B間、柱12及び既存内壁材24間には、狭幅な隙間36が形成されており、柱12A及び柱12B間に形成された隙間36には、グラスウール、ロックウールといった繊維系断熱材が、例えば袋詰めされた状態で配設されている。一方、柱12及び既存内壁材24間に形成された隙間36には、硬質ウレタンフォームやポリスチレンフォームといったプラスチック系断熱材が隙間36の形状に合わせ成形され、この隙間36を埋めるように配設されている。
【0035】
柱12及び外壁フレーム20間並びに一対の外壁フレーム20間には、幅の広い隙間36が形成されており、同様に繊維系断熱材が、例えば袋詰めされた状態で配設されている。建物内側においては既存内壁材24に密着した状態で配置される一方、建物外側においては通気層38が設けられている。
【0036】
[断熱改修部18]
既存壁部16の建物内側には、改修時に後付けされる断熱改修部18が設けられており、以下に詳細に説明する。
【0037】
断熱改修部18は、複数の桟42、新規内壁材44、及び新規断熱材46を含んで構成されている。複数の桟42は、各々木製の角材であり、当該複数の桟42の建物外側の面42Aが既存内壁材24の建物内側の面に接着により固定されている。
【0038】
一方、新規内壁材44は、石膏ボードにより平板状に形成されており、内面にはクロス等の内装材が接着されている。新規内壁材44は、桁方向又は妻方向(梁長手方向)にモジュール単位で分割されており、当該分割されて左右に隣接する一対の新規内壁材44の各隣接端部が改修に際して共通の桟42にスクリューで固定されている。
【0039】
既存内壁材24及び新規内壁材44間には幅の広い隙間45が形成されており、この隙間45には新規断熱材46が配設されている。新規断熱材46は、ボード状に成形したプラスチック系断熱材とされており、隙間45の形状に合わせてカットされて隙間45を埋めるように配設されている。これにより、既存内壁材24及び新規内壁材44間の隙間45には複数の桟42と新規断熱材46のいずれかが隙間なく配設されることとなる。
【0040】
この複数の桟42は、建物壁14の断熱性能を所定値以上に担保する位置に配置されている。すなわち、複数の桟42は、外壁材22側から見て、既存壁部16において断熱性能が低下しやすい領域(具体的には、柱12及び外壁フレーム20が配置された領域)と重ならない位置に配置されている。換言すれば、外壁材22側から見て、既存壁部16において断熱性能が低下しやすい領域と重なる領域Sを除外した領域に桟42が配置されている。より具体的には、柱12の左端から右端(柱12が隣接する場合は、左側の柱12Aの左端から右側の柱12Bの右端)、及び外壁フレーム20(既存内壁材24の下地材40が設置されている場合は下地材40)の左端から右端までの領域と重ならないように、桟42が配置されている。その結果、外壁材22側から見て、隙間45において外壁フレーム20及び下地材40と重なる位置には、必ず新規断熱材46が配設され、所定の断熱性能が担保される。
【0041】
本実施形態では、各断面位置(一点鎖線A〜D)における断熱材(既存壁部16及び断熱改修部18の断熱材)の熱抵抗値が、以下の値を満たすようになっている。
(1) 柱部 0.63[m・K/W]以上
(2) 桟部 0.72[m・K/W]以上
(3) 一般部 2.22[m・K/W]以上
(4) 外壁フレーム部 0.72[m・K/W]以上
【0042】
ここで、「柱部」とは、断面位置Aのように既存壁部16に柱12が配置されかつ断熱改修部18に新規断熱材46が配置されている部位である。また、「桟部」とは、断面位置Bのように既存壁部16に既存断熱材26が配置されかつ断熱改修部18に桟42が配置される部位である。また、「一般部」とは、断面位置Cのように既存壁部16に既存断熱材26が配置されかつ断熱改修部18には新規断熱材46が配置される部位である。さらに、「外壁フレーム部」とは、断面位置Dのように既存壁部16に外壁フレーム20及び下地材40が配置されかつ断熱改修部18に新規断熱材46が配置される部位である。
【0043】
また、上述した外壁フレーム20は建物ユニット11において建物外周に配置された桁側面48又は妻側面に対してモジュール単位で等間隔に配置されている。ここでは、一例として尺モジュールが使用されている。従って、外壁フレーム20は、尺モジュールの整数倍の位置に配置されている。同様に、断熱改修部18の新規内壁材44も桁方向又は妻方向にモジュール単位で分割されており、当該分割されて左右に隣接する一対の新規内壁材44の各隣接端部が共通の桟42にビス50で固定されている。そして、複数の桟42のうち、任意の1本の桟42が、外壁材22側から見て柱12や外壁フレーム20と重ならないように配置されることで、すべての桟42が柱12や外壁フレーム20と重ならないようになっている。なお、桁方向又は妻方向の端となる部位では、外壁フレーム20と桟42のピッチの差に相当する幅の新規内壁材44が配置されるようになっている。
【0044】
なお、本実施形態においては、新規断熱材46として硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等のプラスチック系断熱材を配設しているが、フィルム入りのグラスウール、ロックウール等の繊維系断熱材を配設してもよい。この場合、プラスチック系断熱材を配設した場合に比し、既存内壁材24及び新規内壁材44間に形成された隙間45に内部結露が生じやすい。そこで、図2に示されるように、新規内壁材44の外面に、透湿抵抗の高いフィルム、例えばポリエチレンフィルムにより形成されたシート部材52を接着することにより、内部結露が新規内壁材44に浸透することを抑制できる。
【0045】
また、新規断熱材46が袋詰めされた状態で配設される場合には、この袋を透湿抵抗の高いフィルムにより形成し、袋内に繊維系断熱材を収容した上で隙間45に配設しても、同様に内部結露が新規内壁材44に浸透することを抑制できる。
【0046】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0047】
本実施形態に係る建物外壁の断熱改修構造では、複数の柱12が建物10の隅部に立設されており、この柱12に沿うように外壁フレーム20が設置され、外壁材22が支持されている。そして、外壁材22と既存内壁材24とが、柱12及び外壁フレーム20を挟んで対向して配置されており、これらの柱12と外壁フレーム20との間に既存断熱材26が配設されて既存壁部16が構成される。
【0048】
この既存断熱材26により屋内外の熱伝達が一定程度遮られるものの、隙間36を埋めるように配設されているため、建物10や建物壁14の構成に応じ、建物壁14各部に配設される断熱材量や熱抵抗値、これらに基づく断熱性能が異なる。特に柱12や外壁フレーム20の近傍は、断熱性能が部分的に低下しやすく、熱橋が発生する等、建物構成部材を介して外壁各部に伝熱される結果、既存壁部16の断熱性能が低下するおそれがある。
【0049】
上記既存壁部16に対して断熱改修する場合は、既存壁部16の建物内側に断熱改修部18が設けられる。具体的には、既存内壁材24の建物内側に新規内壁材44が離間して配置され、この新規内壁材44が複数の桟42を介して既存内壁材24に固定される。そして、既存内壁材24と新規内壁材44との間に新規断熱材46が配設される。これにより、既存壁部16の建物内側に断熱改修部18が新たに設けられ、断熱層が重層化される。
【0050】
ここで、本実施形態では、新規内壁材44を既存内壁材24に複数の桟42を介して固定するにあたり、外壁材22側から見て柱12と重ならない位置に複数の桟42が配置されている。このため、外壁材22側から見て柱12と桟42が重なって配置されることがなくなる。これにより、柱12と桟42を直列的に経由した熱橋による部分的な断熱性能の低下が解消される。その結果、本実施形態によれば、既存壁部16の断熱性能に応じて、適切に既存断熱材26を後付けして建物外壁の断熱性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、複数の桟42は、外壁材22側から見て、柱12及び外壁フレーム20(下地材40)と重ならない位置に配置されているため、外壁材22側から見て外壁フレーム20と重なる部分においては、新規断熱材46が配設されることとなる。よって、外壁材22と既存内壁材24との間に柱12の他に外壁フレーム20が配置される場合でも、外壁フレーム20と桟42を直列的に経由した熱橋による部分的な断熱性能の低下が解消される。その結果、本実施形態によれば、柱12の他に外壁フレーム20が配置されていても、適切に新規断熱材46を後付けして建物外壁の断熱性を向上させることができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、外壁フレーム20は、建物ユニット11において建物外周に配置された桁側面48又は妻側面に対してモジュール単位で等間隔に配置されている。また、新規内壁材44は、桁方向又は妻方向に同一のモジュール単位で分割されており、当該分割されて左右に隣接する一対の新規内壁材44の各隣接端部が共通の桟42に固定されている。このように外壁フレーム20と桟42とが同一のモジュール単位で配置されているため、外壁材22側から見て外壁フレーム20と桟42とが重ならないように1本の桟42を配置すれば、残りの桟42も外壁フレーム20と重ならないように配置される。よって、本実施形態によれば、断熱改修部18の設計や施工が容易になる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、図3を用いて、本発明に係る建物外壁の断熱改修構造の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成を備えた部材については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、上述した建物外壁の断熱改修構造をユニット工法により構築されたユニット建物ではなく、鉄骨軸組工法により構築された建物53に適用した点に特徴がある。
【0055】
図3に示されるように、建物53の外周に配置された建物壁54は、建物外側に配置された既存壁部55と、この既存壁部55の建物内側に重ねて配置された断熱改修部18と、によって構成されている。既存壁部55には、柱56の他にラチス柱58が設置されている。ラチス柱58は、一対の間柱60と、一対の間柱60に架設されたラチス材62とを含んで構成されており、柱56に沿って立設されている。一対の間柱60は、角形鋼管により構成されている。ラチス材62は建物上下方向にジグザグ状に延出されており、一方の間柱60には溶接され、他方の間柱60には図示しない接合部を介して接合されている。
【0056】
既存壁部55は、柱56及びラチス柱58を挟んで対向して配置された外壁材22及び既存内壁材24と、これらの外壁材22と既存内壁材24との間に配設された既存断熱材66と、を含んで構成されている。既存断熱材66は、既存断熱材26と同様の構成とされている。なお、既存断熱材66と外壁材22、既存内壁材24との間には、通気層68がそれぞれ設けられている。
【0057】
既存壁部16の建物内側には、改修時に後付けされる断熱改修部18が設けられている。断熱改修部18の構成は、前述した第1実施形態と同様とされている。すなわち、既存壁部55の既存内壁材24には、モジュール単位の所定の間隔で複数の桟42が接着されている。複数の桟42は、外壁材22側から見て、既存壁部55において断熱性能が低下しやすい領域(具体的には、柱56及びラチス柱58が配置された領域)と重ならない位置に配置されている。換言すれば、外壁材22側から見て、既存壁部55において断熱性能が低下しやすい領域と重なる領域Kを除外した領域に桟42が配置されている。そして、これらの桟42に新規内壁材44がビス50で固定されている。さらに、既存内壁材24と新規内壁材44との間に形成された隙間45に新規断熱材46が配設されている。これにより、所定の断熱性能が担保される。
【0058】
上記構成によれば、建物53の建物壁54には、柱56の他にラチス柱58が配設されている。ラチス柱58の近傍においては、断熱性能が部分的に低下しやすいものの、複数の桟42が、外壁材22側から見てラチス柱58と重ならない位置に配置されるため、外壁材22側から見てラチス柱58と重なる部分に新規断熱材46を配設することができる。その結果、建物53がラチス柱58を用いた鉄骨軸組工法等により構築されている場合でも、既存壁部55の断熱性能に応じて新規断熱材46を適切に後付けでき、既存壁部55の構成や断熱性能にかかわらず建物壁54全体において所定の断熱性能を担保することができる。
【0059】
<本実施形態の補足説明>
なお、上述した実施形態では、建物10にあってはユニット工法によって構築されており、建物53にあっては鉄骨軸組工法により構築されているが、建物が他の工法により構築されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10、53 建物
11 建物ユニット
12、56 柱
16、55 既存壁部
18 断熱改修部
20 外壁フレーム
22 外壁材
24 既存内壁材
26、66 既存断熱材
42 桟
44 新規内壁材
46 新規断熱材
58 ラチス柱
図1
図2
図3