(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、水中探知装置10の電気的及び機械的構成を示すブロック図である。なお、以下の説明では、鉛直方向の上向き及び下向き等を、単に「上向き」及び「下向き」等と称することがある。また、以下の説明では、「平行」、「一致」等の用語には、完全に平行、一致という概念だけでなく、略平行、略一致という概念も含まれるものとする。
【0012】
初めに、水中探知装置10の概要について説明する。水中探知装置10は、水中の所定の範囲(例えば方位方向に360度)に超音波を送信するとともに、当該超音波の反射波であるエコー信号を受信する。水中探知装置10は、このエコー信号に基づいて魚群及び海底等を示す水中探知映像を生成して表示する。
【0013】
図1に示すように、水中探知装置10は、制御装置11と、送受信装置12と、送受波器13と、駆動装置14と、表示部17と、操作部18と、を備える。
【0014】
制御装置11は、FPGA、ASIC、又はCPU等の演算装置と、RAM等の記憶装置と、を備える。演算装置は、予め作成されたプログラムを実行することで、水中探知装置10に関する様々な処理(例えば、超音波を発生させるタイミング及び振幅等の制御)を実行可能に構成されている。記憶装置は、水中を探知することで得られたエコー信号を一時的に記憶する。
【0015】
送受信装置12は、送信回路と、受信回路と、を備える。送信回路は、制御装置11からの指示に基づいて、外部に送信する送信信号を生成し、送受波器13へ出力する。受信回路は、送受波器13が受信したエコー信号に対して増幅及びA/D変換等の処理を行って制御装置11へ出力する。
【0016】
送受波器13は、送受信装置12から入力された送信信号に基づいて、水中に向けて超音波を送信する。送受波器13は、複数の振動子を備えており、所定の方位範囲に同時に超音波を送信することができる。送受波器13が送信した超音波は、例えば平面視でリング形状であり、放射状に広がるようにして進行する。また、送受波器13の振動子は、この超音波が魚や海底によって反射した反射波をエコー信号として受信する。
【0017】
また、送受波器13は、船底等に取り付けられている。送受波器13は、上下方向に直線的に移動可能に構成されている。この構成により、船舶が移動しているときは送受波器13を船底の上方に格納することで、水の抵抗を軽減する。一方、水中探知装置10を使用する場合は、送受波器13を船底から下方に突出させることで、様々な方向に超音波を送信することができる。
【0018】
なお、水中探知装置10が探知する方位は全方位に限られず、設定された方位範囲(例えば、前方の180度等)のみを探知し続ける構成であっても良い。また、水中探知装置10は、全方位範囲ではなく所定の方向のみに超音波を送信し、超音波を送信する方位を少しずつ変化させることで、探知を行う構成(PPIソナー、サーチライトソナー)であっても良い。
【0019】
駆動装置14は、送受波器13に機械的に接続されており、送受波器13を上下方向に移動させる。具体的には、駆動装置14は、駆動モータ20と、駆動機構30と、ブレーキ機構40と、を備える。駆動モータ20は、送受波器13を駆動する駆動力を発生させる。駆動機構30は、駆動モータ20が発生させた駆動力を送受波器13に伝達して送受波器13を上下方向に移動させる。ブレーキ機構40は、駆動機構30と機械的に接続されており、送受波器13の下向きの移動に対して制動力を付与する。なお、駆動装置14の詳細な構造は後述する。
【0020】
送受波器13が受信したエコー信号は、送受信装置12によって処理された後に、制御装置11へ出力される。制御装置11は、このエコー信号に基づいて水中探知映像を生成する。具体的には、制御装置11は、エコー信号を送信した方向に応じて物標の方向を取得し、超音波を送信してからエコー信号を受信するまでの時間に基づいて自船からの距離を求め、エコー信号の振幅に基づいて物標を描画する際の信号レベルを決定する。この処理を全方位(探知方位)について行うことで水中探知映像を生成する。制御装置11が生成した水中探知映像は、表示部17に表示される。
【0021】
操作部18は、オペレータが水中探知装置10に関する指示又は設定等を行うためのものである。例えばオペレータが操作部18を操作して送受波器13の上昇を指示した場合、制御装置11は、駆動モータ20を所定方向に回転させるための指示信号を生成し、送受信装置12を介して駆動モータ20に出力する。これにより、駆動モータ20が所定の方向に回転し、その駆動力が駆動機構30を介して伝達されることで、送受波器13が上昇する。
【0022】
次に、送受波器13を上下方向に移動させるための駆動装置14の詳細について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、駆動装置14及び送受波器13の側面図である。
図3は、駆動機構30及びブレーキ機構40の構成を示す断面図である。なお、
図2及び
図3の説明において、一般的な機械要素である、シャフト、ギア、ナット等についてはハッチングの記載を省略する。
【0023】
図2及び
図3に示すように、駆動機構30は、シャフト31と、第1ギア32と、第2ギア33と、ボールネジ34と、可動軸35と、を備える。
【0024】
図3に示すように、シャフト31には、第1ギア32が取り付けられている。シャフト31と第1ギア32は一体的に回転するように構成されている。第1ギア32には、駆動モータ20が発生させた駆動力が伝達されている。また、第1ギア32には、第2ギア33が噛み合っており、第1ギア32に伝達された駆動力が第2ギア33へ伝達されている。
【0025】
第2ギア33は、第1ギア32と噛み合うことで第1ギア32とともに回転する。なお、第1ギア32のギア径は、第2ギア33のギア径よりも小さい。また、第2ギア33は、第1ギア32から伝達された駆動力をボールネジ34に伝達する。
【0026】
ボールネジ34は、
図2に示すように、ネジ軸34aと、可動部34bと、を備えている。ネジ軸34aには、第2ギア33が取り付けられており、第2ギア33と一体的に回転するように構成されている。可動部34bはナット等を有して構成されており、ネジ軸34aが回転することで可動部34bが上下方向に移動する。
図2に示すように、可動部34bには、可動軸35が接続されている。可動軸35の下端部には、送受波器13が接続されている。なお、シャフト31、ネジ軸34a、及び可動軸35は、それぞれの軸方向が互いに平行となるように配置されている。
【0027】
以上の構成により、駆動モータ20を所定の方向に回転させることで、第1ギア32、第2ギア33、及びネジ軸34aが回転し、可動部34b及び可動軸35が下方に移動する。これにより、送受波器13を下降させて、船底100(
図2を参照)より下方に突出させることができる。なお、送受波器13を下降させる際のシャフト31の回転方向を第1方向と称する。一方、駆動モータ20を逆回転してシャフト31を第1方向と反対方向(以下、第2方向)に回転させることで、送受波器13を上昇させて、船底100より上方に収容することができる。
【0028】
なお、
図1で示したように、送受信装置12と送受波器13とは電気的に接続されており、送信信号又はエコー信号等がやり取りされる。
図2に示すケーブル71は、送受信装置12と送受波器13とを電気的に接続している。ケーブル71は、送受波器13とともに昇降する昇降部分と、送受波器13が昇降しても昇降しない固定部分と、に保持されている。そのため、ケーブル71は弛みを持たせた状態で、昇降部分と固定部分とに保持されている。
【0029】
図3に示すように、ブレーキ機構40は、第1転がり軸受け41と、第2転がり軸受け42と、ワンウェイクラッチ43と、外側筒部44と、予圧付与部45と、を備える。
【0030】
第1転がり軸受け41は、内側に配置されるシャフト31を回転可能に支持する。第1転がり軸受け41は、内輪41aと、ボール41bと、外輪41cと、を備える。第1転がり軸受け41は、内輪41aとボール41bの接触点と、外輪41cとボール41bの接触点と、を結ぶ仮想直線が、ラジアル方向に対してなす角度である接触角が0度ではない所定の値となっている。具体的には、この仮想直線は、ラジアル方向の外側に向かうに従って下方に向かうように傾斜している。第1転がり軸受け41は、アンギュラ玉軸受けである。第1転がり軸受け41は、スラスト方向が上下方向と一致するように配置されている。
【0031】
第2転がり軸受け42は、第1転がり軸受け41に対してスラスト方向に並べて配置されている。第2転がり軸受け42は、第1転がり軸受け41の下側に接触部材52を介して、配置されている。第2転がり軸受け42は、内輪42aと、ボール42bと、外輪42cと、を備え、第1転がり軸受け41と同様に、内側に配置されるシャフト31を回転可能に支持するアンギュラ玉軸受けである。なお、第1転がり軸受け41の仮想直線を、ラジアル方向を基準として反転させることで、第2転がり軸受け42の仮想直線となる。
【0032】
ワンウェイクラッチ43は、シャフト31と、第1転がり軸受け41(第2転がり軸受け42)と、の間に配置されている。ワンウェイクラッチ43は、シャフト31が上記の第1方向に回転する場合は、シャフト31から回転トルクが伝達されることで、シャフト31と一体的に回転する。一方、ワンウェイクラッチ43は、シャフト31が第2方向に回転する場合はシャフト31からワンウェイクラッチ43へ回転トルクが伝達されないので、シャフト31を空転させる(ワンウェイクラッチ43に対してシャフト31が相対回転する)。
【0033】
外側筒部44は、第1転がり軸受け41の外輪41c及び第2転がり軸受け42の外輪42cの外側を覆うように配置されている。
【0034】
予圧付与部45は、第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42に対してスラスト方向に予圧を付与することで、シャフト31に制動力を付与する。
図3に示すように、予圧付与部45は、内側筒部51と、接触部材52と、バネ53と、第1バネ連結部材54と、第2バネ連結部材55と、ナット(調整部)56とを備える。
【0035】
内側筒部51は、シャフト31及びワンウェイクラッチ43の外側であって、第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42の内側に配置されている。詳細には、内側筒部51は内側の面がワンウェイクラッチ43に接触するとともに、外側の面が第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42に接触する。また、ワンウェイクラッチ43と内側筒部51の間には相対回転しない程度以上の摩擦力が発生している。同様に、内側筒部51と、第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42と、の間にも相対回転しない程度以上の摩擦力が発生している。この構成により、シャフト31がワンウェイクラッチ43と一体的に回転する場合は、内側筒部51、内輪41a、ボール41b、内輪42a、及びボール42bも一体的に回転する。
【0036】
図3に示すように、内側筒部51は、フランジ部51aと、ベース部51bと、ネジ溝部51cと、を有する。フランジ部51aは、内側筒部51の上端に形成されており、外形が径方向に大きくなっている部分である。フランジ部51aは、第1転がり軸受け41の内輪41aに接触している。ベース部51bは、フランジ部51aとネジ溝部51cの間に位置している部分である。ネジ溝部51cは、外表面にネジ溝が形成された部分である。ネジ溝部51cにはナット56が取り付けられている。なお、内側筒部51には、第1転がり軸受け41、第2転がり軸受け42、バネ53、第1バネ連結部材54、及び第2バネ連結部材55が、スラスト方向にスライド可能に配置されている。
【0037】
接触部材52は、第1転がり軸受け41と第2転がり軸受け42の間に配置されている。接触部材52は、第1転がり軸受け41の外輪41cと、第2転がり軸受け42の外輪42cと、の両方に接触している。
【0038】
バネ53は、圧縮バネであり、スラスト方向において第1バネ連結部材54と第2バネ連結部材55に挟まれるように(かつ接触するように)配置されている。第1バネ連結部材54は、第2転がり軸受け42(特に内輪42a)の下端部に接触するように配置されている。また、第2バネ連結部材55は、ナット56の上端部に接触するように配置されている。
【0039】
以上の構成により、ナット56を締め付けて上側に移動させることで、バネ53が圧縮される。バネ53の圧縮に伴う付勢力は、第1バネ連結部材54を介して、第2転がり軸受け42(特に内輪42a)を上方へ押圧する。この付勢力は、接触部材52を介して第1転がり軸受け41にも伝達される。また、第1転がり軸受け41(特に内輪41a)はフランジ部51aにより上方への移動が規制されている。これにより、内輪41a及び外輪42cには下方向の力が掛かるとともに、外輪41c及び内輪42aには上方向の力が掛かる。以上の構成により、第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42のスラスト内部隙間を小さくする方向に予圧を付与することができる。
【0040】
ここで、一般的に予圧は、スラスト内部隙間を小さくすることで、シャフトの位置決めを正確にするとともに、軸受けの剛性を高めたり、共振による異音防止等を目的として行われる。これに対し、本実施形態では、一般的に付与される予圧よりも大きい予圧を第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42に付与することで、ボール41b及びボール42bの回転抵抗を大きくして、シャフト31を回転しにくくする(シャフト31に制動力を付与する)ことを予圧の目的としている。
【0041】
更に具体的に説明すると、シャフト31を第1方向に回転させる場合は、シャフト31、ワンウェイクラッチ43、内側筒部51、内輪41a、ボール41b、内輪42a、及びボール42bも一体的に回転する。しかし、予圧付与部45により第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42に過剰な予圧が付与されているため、ボール41b及びボール42bの回転には回転抵抗が生じている。従って、シャフト31を第1方向に回転させる場合は、シャフト31に制動力が付与される。
【0042】
ここで、シャフト31を所定以上のトルクで第1方向に回転させることで、回転抵抗より大きな力が掛かることで、ボール41b及びボール42bが回転するため、シャフト31を回転させることができる。これにより、第1ギア32、第2ギア33、ボールネジ34、及び可動軸35を介して、送受波器13を下降させることができる。なお、本実施形態では、ブレーキ機構40は、送受波器13の自重による落下を防止することを目的としているため、シャフト31に付与する制動力は送受波器13が自重により落下する力よりも若干強い(例えば、自重により落下する力の1.1倍以上2倍以下)程度であることが好ましい。従って、ネジ軸34a等に手動操作用のハンドルが付いていれば、オペレータが手動で送受波器13を下降させることも可能である。
【0043】
また、送受波器13の自重による落下を防止するために電磁ブレーキを用いる場合は抵抗が大きくなり易いため、当該抵抗に反して送受波器13を移動させることで、ブレーキ機構又は駆動機構が摩耗し易くなる。これに対し、本実施形態では、シャフト31を第1方向に回転させた場合であっても、ボール41b及びボール42bは回転するだけであり、ボール41b及びボール42bは摩耗しにくいため、耐摩耗性に優れたブレーキ機構40が実現できる。
【0044】
特に、本実施形態では、第1ギア32のギア径よりも第2ギア33のギア径の方が大きい、言い換えれば第1ギア32が1回転した場合においても、第2ギア33の回転量は1回転より少ない。従って、シャフト31に付与された制動力を増大させてネジ軸34aに伝達することができる。これにより、第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42に付与する予圧の力を抑えつつ(つまり第1転がり軸受け41等の寿命を更に長くしつつ)、要求する大きさの制動力を実現することができる。
【0045】
一方で、シャフト31を第2方向に回転させる場合、シャフト31が回転してもワンウェイクラッチ43は回転しないため、シャフト31にはブレーキ機構40の制動力は付与されない。これにより、駆動モータ20が発生させた駆動力をブレーキ機構40が低下させることなく、送受波器13を上昇させることができる。このように、ブレーキ機構40の制動力が付与されないので、ネジ軸34a等に手動操作用のハンドルが付いていれば、オペレータが手動で送受波器13を上昇させることも可能である。
【0046】
このように、本実施形態では、シャフト31の第1方向の回転及び第2方向の回転の何れも想定されており、シャフト31を第1方向に回転させる場合にのみ制動力が付与される。
【0047】
なお、時間の経過により、ブレーキ機構40を構成する各部材の緩みにより予圧付与部45が付与する予圧の力が低下することが考えられる。あるいは、ボールネジ34又は送受波器13等を交換することにより、送受波器13の自重により落下する力が変化することが考えられる。以上を考慮し、本実施形態のブレーキ機構40は、第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42に付与する予圧の力を変更させる調整部として、ナット56を備える。
【0048】
予圧の力を大きくして制動力を大きくする場合は、ナット56を回転させて上方に移動させる。これにより、バネ53の圧縮量が大きくなり、付勢力が大きくなるため、予圧の力が大きくなる。一方で、予圧の力小さくして制動力を小さくする場合は、ナット56を回転させて下方に移動させる。これにより、バネ53の圧縮量が小さくなり、付勢力が小さくなるため、予圧の力が小さくなる。このように、ナット56の位置を変化させることで、シャフト31に付与される制動力を調整できる。
【0049】
以上に説明したように、上記実施形態の水中探知装置10は、送受波器13と、転がり軸受け(第1転がり軸受け41及び第2転がり軸受け42、以下同様)と、予圧付与部45と、駆動モータ20と、駆動機構30と、を備える。送受波器13は、水中に超音波を送信するとともに水中からの超音波を受信する。転がり軸受けは、内側に配置されるシャフト31を回転可能に支持する。予圧付与部45は、転がり軸受けに対してスラスト方向に予圧を付与することで、転がり軸受けに回転抵抗を持たせてシャフト31に制動力を付与する。駆動モータ20は、駆動力を発生させる。駆動機構30は、駆動モータ20が発生させた駆動力を伝達することで送受波器13を直線的に移動させるとともに、予圧付与部45が発生させた制動力を受ける。
【0050】
これにより、転がり軸受けの外側に滑り軸受けを配置することで制動力を発生させる機構と比較して、シンプルな構成にすることができる。また、制動力が掛かっている状態でシャフト31を回転させた場合であっても、転がり軸受けのボール又はコロが回転するため、耐摩耗性に優れたブレーキ機構40が実現できる。また、水中探知装置10では、1度の航海で送受波器13を複数回出し入れすることが多いため耐摩耗性が重要であり、更に、水中探知装置は部品交換が困難であるため耐摩耗性が重要である。従って、耐摩耗性に優れるという効果を有効に発揮させることができる。
【0051】
また、上記実施形態の水中探知装置10において、予圧付与部45は、転がり軸受けに付与する予圧の大きさを変化させて制動力の大きさを調整するナット56を有する。
【0052】
これにより、シャフト31に付与する制動力の大きさを調整できる。また、時間経過等により予圧付与部45が付与する予圧の大きさが変化した場合であっても、以前と同じ大きさの予圧が付与されるように調整できる。
【0053】
また、上記実施形態の水中探知装置10は、シャフト31と転がり軸受けとの間に配置されるワンウェイクラッチ43を備える。ワンウェイクラッチ43は、シャフト31が第1方向に回転する場合は当該シャフトと一体的に回転し、シャフト31が第2方向に回転する場合は当該シャフト31を空転させる。
【0054】
これにより、シャフト31が一方向(第1方向)へ回転する場合にのみ制動力を付与し、シャフト31が他方向へ回転する場合には制動力を付与しない構成が実現できる。
【0055】
更に、上記実施形態の水中探知装置10において、送受波器13は、駆動モータ20が発生させた駆動力により、鉛直方向上向き及び下向きに移動する。
【0056】
これにより、送受波器13が鉛直方向に移動する場合は、送受波器13の自重により落下する力が存在するため、送受波器13を上向きに移動させる場合と下向きに移動させる場合とで必要な力が異なる。この点、上記のように下向きの移動にのみ制動力を付与することで、必要な力のバランスを取ることができる。
【0057】
また、上記実施形態の水中探知装置10は、駆動モータ20が発生させた駆動力により回転することで、送受波器13を鉛直方向上向き及び下向きに移動させるボールネジ34を備える。ブレーキ機構40は、送受波器13が自重で落下する力よりも強い制動力を発生させる。
【0058】
これにより、送受波器13が自重で落下することを機械的な構成で防止できるので、電源を入れていない状態においても、送受波器13の落下を防止できる。また、電源が入れていない状態で送受波器13を下降させる場合においても、ボール41b及びボール42bが回転するだけであるため、駆動装置14に対する負荷を小さくすることができる。
【0059】
また、上記実施形態の水中探知装置10において、駆動機構30は、駆動モータ20が発生させた駆動力を送受波器13に伝達する第1ギア及び第2ギアを有する。第1ギアは、シャフト31と一体的に回転する。第2ギアは、第1ギアと噛み合うとともに、第1ギアを介して伝達された駆動力を送受波器13に向けて伝達する。第1ギアのギア径が第2ギアのギア径よりも小さい。
【0060】
これにより、上記のギア比を採用することで、駆動機構30が受ける制動力を増大させることができる。
【0061】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0062】
上記実施形態では、転がり軸受けとしてアンギュラ玉軸受けを用いたが、スラスト方向に予圧を加えることで回転抵抗が発生する構成であれば、別の転がり軸受けを用いることができる。例えば、アンギュラ玉軸受け以外の玉軸受けを用いても良いし、コロ軸受け(例えば円錐コロ軸受け)を用いても良い。また、上記実施形態では、2つの転がり軸受けをセットで用いたが、予圧を付与する転がり軸受けは1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
【0063】
上記実施形態では、バネ53及びナット56を用いて予圧を付与したが、別の弾性部材を用いて予圧を付与しても良い。また、バネを用いる場合は、転がり軸受けの位置が変化しても予圧の大きさが略一定となる定圧予圧になるが、定位置予圧を用いることもできる。定位置予圧としては、例えば、バネ53を介さずにナット56が直接的に転がり軸受けを押圧する構成を挙げることができる。なお、予圧を付与する方法・構成は任意であり、ソレノイドアクチュエータ又はシリンダ等で予圧を付与することも可能であるが、機械的な方法で予圧を付与することが好ましい。機械的な方法で予圧を付与することで、電源が入っていない状態でも予圧が維持されるため、シャフト31に付与する制動力を維持できる。
【0064】
上記実施形態では、制動力が付与されるシャフト31と、ボールネジ34と、が異なる軸であるが、この2つを同じ軸にすることができる。例えば、シャフト31を下方に延伸してネジ溝を設けることで、ネジ軸34aを省略できる。また、上記実施形態では、シャフト31の軸方向は鉛直方向と同じであるが、シャフト31の軸方向が鉛直方向に対して傾斜(例えば垂直)していても良い。
【0065】
上記実施形態では、ワンウェイクラッチ43を備えることで、シャフト31の回転方向の一方のみに制動力を付与する構成であるが、ワンウェイクラッチ43を省略しても良い。この場合、シャフト31を何れの方向に回転させる場合であっても制動力が付与されることとなる。また、上記実施形態では、送受波器13が下降する場合のみに制動力が付与される構成であるが、送受波器13が上昇する場合のみに制動力が付与される構成としても良い。
【0066】
上記実施形態では、送受波器13を鉛直方向の上向き及び下向きに移動させる構成であるが、送受波器13を別の方向(例えば鉛直方向に対して傾斜した方向)に移動させる構成であっても良い。
【0067】
上記実施形態では、駆動源として駆動モータ20を例に挙げて説明したが、ブレーキ機構を適用する装置に応じて、モータではなく別の駆動源(例えばエンジン)を用いることもできる。
【0068】
上記実施形態では、第1ギア32のギア径が第2ギア33のギア径よりも小さい構成であるが、要求される制動力に応じて、第1ギア32と第2ギア33のギア径を同じにしても良いし、第1ギア32のギア径を第2ギア33のギア径よりも大きくしても良い。
【0069】
上記実施形態では、送受波器13を手動で操作することを考慮し、送受波器13の自重により落下する力よりも若干大きい力を制動力としたが、手動の操作が想定されない場合等においては、送受波器13の自重により落下する力よりもかなり大きい力を制動力としても良い。また、別のブレーキ機構を更に備える場合は、送受波器13の自重により落下する力よりも小さい力を制動力としても良い。
【0070】
上記実施形態では、駆動モータ20が発生させた回転運動をボールネジ34により直線運動に変換しているが、別の機構(例えばラックピニオン機構)により回転運動を直線運動に変換しても良い。
【0071】
上記実施形態では、水中探知装置10に、上記の構成の駆動装置14及びブレーキ機構40を適用する例を説明したが、駆動装置14及びブレーキ機構40は、被駆動物(送受波器13に相当)を駆動する別の装置にも適用することができる。この場合、上述のシャフト31を何れの方向に回転させる場合であっても制動力が付与される構成は、所定以上の力が掛からないと被駆動物が駆動しない装置に採用できる。また、被駆動物を直線的に移動させる構成に限られず、例えば被駆動物を回転させる構成であっても良い。また、被駆動物を回転させる構成の場合、被駆動物を一方向のみに回転させる構成であっても良いし、一方向と他方向の両方に回転させる構成であっても良い。