(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料と空気の混合気の流量を調整するスロットル弁と過給機のタービンへの排気のバイパス量を調整する排気バイパス弁とを具備するエンジンの負荷に応じて前記燃料の流量制御を行うエンジン制御装置であって、
空燃比が空燃比目標値と一致するように前記スロットル弁のフィードバック制御を行うとともに、
スロットル弁開度がスロットル弁目標開度と一致するように前記排気バイパス弁のフィードバック制御を行い、
前記負荷を入力とする前記スロットル弁目標開度のテーブルに基づき制御を行うエンジン制御装置。
前記エンジンの前記負荷が中負荷から定格点の範囲の場合は、前記スロットル弁目標開度を90%から100%の範囲の値とする請求項1または2に記載のエンジン制御装置。
燃料と空気の混合気の流量を調整するスロットル弁と過給機のタービンへの排気のバイパス量を調整する排気バイパス弁とを具備するエンジンの負荷に応じて前記燃料の流量制御を行うエンジン制御方法であって、
空燃比が空燃比目標値と一致するように前記スロットル弁のフィードバック制御を行うとともに、
スロットル弁開度がスロットル弁目標開度と一致するように前記排気バイパス弁のフィードバック制御を行い、
前記負荷を入力とする前記スロットル弁目標開度のテーブルに基づき制御を行うエンジン制御方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン、特に発電用ガスエンジンにおいては、エンジンの燃焼状態を一定に保つために、燃料であるガスと空気の割合を示す空燃比を目標値に一致させるようにスロットル弁もしくは排気バイパス弁の開度を決める制御を行っている。
【0003】
スロットル弁による空燃比制御では、制御代(制御のために余分に必要な弁開度)を確保しておく必要があり、運転条件によっては定格点でもスロットル弁が全開とならない可能性がある。スロットル弁が全開とならない場合は、圧力損失が発生し、結果として発電効率が低下することとなる。
【0004】
圧力損失を低減し、発電効率を向上させるために、スロットル弁を廃止または全開とし、排気バイパス弁による空燃比制御を行うことが考えられる。しかし、排気バイパス弁はスロットル弁と比較すると応答性が悪いため、スロットル弁による空燃比制御に比べて負荷投入性能が悪化する。
【0005】
そこで、負荷投入性能と発電効率の向上を両立するために、スロットル弁と排気バイパス弁を組み合わせた制御が行われている。
例えば、特許文献1には、排気バイパス弁として機能するウエストゲート弁とスロットル弁とを組み合わせた制御を行うことが開示されている。また、特許文献2には、エンジン負荷に対応した排気バイパス弁の開度を記憶したデータテーブルを参照し、排気バイパス弁に対してマップ制御を行うことが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、シーケンス的にウエストゲート弁の弁開度を決定しているため、運用の柔軟性に欠けるという問題があった。
また、上記特許文献2に開示された発明においても、負荷によって排気バイパス弁の弁開度マップを参照して弁開度を決定しているため、運用の柔軟性に欠けるとともに負荷の変動や環境条件の変化などへの対応が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成により負荷投入性能と発電効率の向上を両立し柔軟性のある運用が可能なエンジン制御装置、エンジン、およびエンジン制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のエンジン制御装置、エンジン、およびエンジン制御方法は以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係るエンジン制御装置は、燃料と空気の混合気の流量を調整するスロットル弁と過給機のタービンへの排気のバイパス量を調整する排気バイパス弁とを具備するエンジンの負荷に応じて前記燃料の流量制御を行うエンジン制御装置であって、空燃比が空燃比目標値と一致するように前記スロットル弁のフィードバック制御を行うとともに、スロットル弁開度がスロットル弁目標開度と一致するように前記排気バイパス弁のフィードバック制御を行
い、前記負荷を入力とする前記スロットル弁目標開度のテーブルに基づき制御を行う。
【0010】
エンジンにおいては、エンジンの燃焼状態を一定に保つために、燃料と空気の割合を示す空燃比を目標値に一致させるようにスロットル弁もしくは排気バイパス弁の開度を決める制御を行っている。
スロットル弁による空燃比制御では、制御代(制御のために余分に必要な弁開度)を確保しておく必要があり、運転条件によっては定格点でもスロットル弁が全開とならない可能性がある。スロットル弁が全開とならない場合は、圧力損失が発生し、結果として発電効率が低下することとなる。
圧力損失を低減し、発電効率を向上させるために、スロットル弁を廃止または全開とし、排気バイパス弁による空燃比制御を行うことが考えられる。しかし、排気バイパス弁はスロットル弁と比較すると応答性が悪いため、スロットル弁による空燃比制御に比べて負荷投入性能が悪化する。
本態様では、この制御において、スロットル弁及び排気バイパス弁のフィードバック制御を行うこととした。
これにより、本構成によれば、負荷投入性能の向上と発電効率の向上とを両立させることができる。
また、シーケンス処理や不連続な制御の切替を行うこと無く、単純な構成のみで実現が可能である。またシーケンス処理でないことから、負荷の変動や、環境条件の変化などに柔軟に対応することができる。
また本構成によれば、目標値をテーブル情報として設定することにより、任意の値を設定することが可能であり、負荷投入性能と効率とのバランスを調整することができる。また、負荷の変動や環境条件の変化などに柔軟に対応することができる。
【0011】
上記第一態様では、前記エンジンの前記負荷が低負荷から中負荷までの範囲の場合は、前記スロットル弁目標開度を0%から10%の範囲の値とするとしてもよい。
【0012】
スロットル弁目標開度を0%から10%の範囲の値とし、フィードバック制御を行うことから、排気バイパス弁はスロットル弁開度を0%から10%の範囲の目標値に一致させるように空気流量を増やす方向に動作、すなわち排気バイパス弁は閉じる方向に動作する。
これにより、本構成によれば、スロットル弁により空燃比制御が行われ、排気バイパス弁は全閉またはほぼ全閉となることから、過給圧が上がり負荷投入性能を確保することができる。
ここで、低負荷とは0%の負荷を示し、中負荷とは50%の負荷を示すものとする。
【0013】
上記第一態様では、前記エンジンの前記負荷が中負荷から定格点の範囲の場合は、前記スロットル弁目標開度を90%から100%の範囲の値とするとしてもよい。
【0014】
スロットル弁目標開度を90%から100%の範囲の値とし、フィードバック制御を行うことから、排気バイパス弁はスロットル弁開度を90%から100%の範囲の目標値に一致させるように空気流量を減らす方向に動作、すなわち排気バイパス弁が開いてスロットル弁が全開またはほぼ全開となる点で整定する。
これにより、本構成によれば、スロットル弁は全開またはほぼ全開となり、排気バイパス弁により空燃比制御が行われることから、圧力損失を低減し、発電効率の向上を図ることができる。
ここで、定格点とは100%の負荷を示すものとする。
【0015】
また、上記第一態様では、前記スロットル弁目標開度のテーブルに基づき前記スロットル弁目標開度を設定するとしてもよい。
【0016】
本構成によれば、目標値をテーブル情報として設定することにより、任意の値を設定することが可能であり、負荷投入性能と効率とのバランスを調整することができる。また、負荷の変動や環境条件の変化などに柔軟に対応することができる。
【0017】
本発明の第二態様に係るエンジンは、上述のいずれかに記載のエンジン制御装置を備える。
【0018】
本発明の第三態様に係るエンジン制御方法は、燃料と空気の混合気の流量を調整するスロットル弁と過給機のタービンへの排気のバイパス量を調整する排気バイパス弁とを具備するエンジンの負荷に応じて前記燃料の流量制御を行うエンジン制御方法であって、空燃比が空燃比目標値と一致するように前記スロットル弁のフィードバック制御を行うとともに、スロットル弁開度がスロットル弁目標開度と一致するように前記排気バイパス弁のフィードバック制御を行
い、前記負荷を入力とする前記スロットル弁目標開度のテーブルに基づき制御を行う。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スロットル弁及び排気バイパス弁をフィードバック制御することから、簡易な構成で負荷投入性能と発電効率の向上を両立し、負荷や環境などの変化に柔軟に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るエンジン制御装置、エンジン、およびエンジン制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
以下、本発明の一実施形態について、
図1乃至8を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係るエンジンが概略構成図に示されている。
このエンジンは、例えば発電用に用いられ、図示しない発電機を駆動するためのものであり、燃料をガスとする発電用ガスエンジンであるとする。
【0022】
このガスエンジン1は、内部でピストン2が摺動するシリンダ3に、吸気バルブ4で開閉される吸気ポート5と、排気バルブ6で開閉される排気ポート7とが繋がっている。シリンダ3とピストン2との間には燃焼室8が画成され、この燃焼室8に点火プラグ9が設けられている。
【0023】
吸気ポート5にはインテークマニホルド11が接続され、その上流端に過給機12のコンプレッサ12cが接続されている。インテークマニホルド11の中間部にはスロットル弁14とインタークーラ15が接続されている。また、コンプレッサ12cに接続された吸気管17の中間部に、ガス燃料を供給するガス流量調整弁18が接続され、上流端にエアクリーナ19が接続されている。
また、インテークマニホルド11には、インテークマニホルド11の圧力を計測するインテークマニホルド圧力センサ20が設置されている。
【0024】
一方、排気ポート7にはエキゾーストマニホルド22が接続され、その下流端に過給機12のタービン12tが接続されている。過給機12のコンプレッサ12cとタービン12tとは回転軸12sを介して一体に回転する。タービン12tには排気管24が接続され、この排気管24とエキゾーストマニホルド22とを結ぶ排気バイパス通路25に排気バイパス弁26が設けられている。
【0025】
このように構成されたガスエンジン1において、エアクリーナ19から吸入された空気は、ガス流量調整弁18においてガス燃料を噴射されて燃料混合気とされ、過給機12のコンプレッサ12cにより圧縮され、インテークマニホルド11を経てシリンダ3に過給されてガスエンジン1を作動させる。燃料混合気は、インタークーラ15により圧縮熱を冷却され、スロットル弁14の弁開度を調節することにより流量を調整される。
【0026】
また、シリンダ3から排出された排ガスは、エキゾーストマニホルド22を経て過給機12のタービン12tに供給され、タービン12tを高速回転させる。この回転は回転軸12sを介してコンプレッサ12cを高速で駆動し、新気の圧縮および過給を継続させる。また、排気バイパス通路25に設けられた排気バイパス弁26の弁開度を調節することで、タービン12tに流れる排ガス流量を調整して、コンプレッサ12cにおける空気圧縮量を調整する。
【0027】
ガスエンジン制御装置(エンジン制御装置)50は、ガス流量調整弁18、スロットル弁14、インテークマニホルド圧力センサ20及び排気バイパス弁26のそれぞれに接続され、インテークマニホルド圧力センサ20からインテークマニホルド11の計測圧力の値を取得するとともに、ガス流量調整弁18、スロットル弁14及び排気バイパス弁26の制御を行う。
【0028】
ガスエンジン制御装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0029】
図2には、本実施形態に係るガスエンジンの負荷投入性能と発電効率の両立に必要な制御が図に示されている。
ガスエンジン1の負荷が低負荷から中負荷までの範囲の場合は、負荷投入性能を確保する必要がある。排気バイパス弁26は、タービン12tへの排気をバイパスさせるために作動していることから、例えば負荷投入性能を上げるためには、空気(排気)を増やすために排気バイパス弁26を閉じる必要がある。これによりタービン12tへの空気(排気)が増加するが、スロットル弁14による空燃比制御と比較すると、応答が遅いことから負荷投入性能が悪化する。
そこで、低負荷から中負荷までの範囲の場合は、
図2に示されるように排気バイパス弁26は全閉とすることが望ましい。排気バイパス弁26を全閉とすることにより、過給機12の過給圧を上昇させ、負荷投入性能を確保することができる。よって、空燃比制御はスロットル弁14で行うこととなる。
【0030】
これに対して、ガスエンジン1の負荷が中負荷から定格点の範囲の場合は、発電効率の向上を行う必要がある。ここで、スロットル弁14は、空燃比制御を行う場合、負荷変動に備えてスロットルを絞り加減での運転とし、スロットル弁開度に余裕を持たせ、スロットル弁開度の制御代を確保している。定常運転時にスロットルを絞っているため、定格点においてもスロットル弁14が全開とならない可能性があり、絞りによる圧力損失が増加し、ガスエンジン1の発電効率(燃費)が悪化する。
そこで、中負荷から定格点の範囲の場合は、
図2に示されるようにスロットル弁14は全開とすることが望ましい。スロットル弁14を全開とすることにより、絞りによる圧力損失を低減し、発電効率の向上を図ることができる。よって、空燃比制御は排気バイパス弁26で行うこととなる。
図2に示される制御を行うため、本実施形態ではスロットル弁14と排気バイパス弁26のフィードバック制御を行うものとする。
【0031】
図3には、本実施形態に係るガスエンジン制御装置がブロック図に示されている。
ガスエンジン制御装置50は、スロットル弁フィードバック制御部505と、排ガスバイパス弁フィードバック制御部510とを主な構成として備えている。
【0032】
ガスエンジン1のガスエンジン制御装置50は以下のように制御を行う。
減算器501において、ガスエンジン1の目標回転数(rpm)から実回転数(rpm)を減算し、回転数フィードバック制御部502においてガスエンジン1の回転数に対しPI制御を行う。目標混合気量演算部503は、回転数フィードバック制御部502の出力値及び目標空燃比を入力値とし、目標混合気量を算出する。
また、実混合気量演算部507は、実回転数及びインテークマニホルド圧力センサ20によって計測されたインテークマニホルド11の圧力(インマニ圧)を入力値とし、実混合気量を算出する。
【0033】
減算器504において、目標混合気量から実混合気量を減算し、スロットル弁フィードバック制御部505において混合気量に対しPI制御を行う。混合気量はすなわちスロットル弁14の開度を表すことから、スロットル弁14の開度が導出される。リミッタ506により0から100%の間にスロットル弁14の開度の値が制限され、スロットル弁開度指令が制御量(スロットル弁開度指令値)として出力される。ここで、スロットル弁14は0%なら全閉、100%なら全開とされる。
このように、空燃比が目標空燃比に一致するようにスロットル弁14のフィードバック制御が行われる。
【0034】
一方、ガスエンジン1の負荷を入力値として、スロットル弁目標開度テーブル508はスロットル弁目標開度を設定する。本実施形態では、スロットル弁目標開度テーブル508は
図4のグラフに示されるように設定されるものとする。
図4において、縦軸はスロットル弁目標開度(%)、横軸はガスエンジン1の負荷率(%)である。負荷率が0%から50%までの間は、スロットル弁目標開度には10%が設定され、負荷率が50%から100%の間は、スロットル弁目標開度には100%が設定される。
【0035】
図3の減算器509において、スロットル弁目標開度からスロットル弁フィードバック制御部505にて導出されたスロットル弁14の開度(実開度)を減算し、排気バイパス弁フィードバック制御部510においてスロットル弁14の開度に対しPI制御を行う。このようにして、排気バイパス弁26の開度が導出される。リミッタ511により0から100%の間に排気バイパス弁26の開度の値が制限され、排気バイパス弁開度指令が制御量(排気バイパス弁開度指令値)として出力される。ここで、排気バイパス弁26は0%なら全閉、100%なら全開とされる。また、排気バイパス弁フィードバック制御部510における時定数は、スロットル弁フィードバック制御部505における時定数よりも大きい値が設定されている。
このように、スロットル弁開度がスロットル弁目標開度に一致するように排気バイパス弁26のフィードバック制御が行われる。
【0036】
次に、
図3を用いてガスエンジン1の負荷が低負荷から中負荷までの範囲におけるガスエンジン制御装置50の制御について説明する。
図3のスロットル弁フィードバック制御部505において、空燃比が目標空燃比に一致するようにスロットル弁14をフィードバック制御する。ここで、例えばスロットル弁14の開度の制御量が15%であるとすると、減算器509においてスロットル弁目標開度テーブル508から出力されたスロットル弁目標開度からスロットル弁フィードバック制御部505の出力値15%を減算する。ガスエンジン1の負荷が低負荷から中負荷までの範囲であることから、スロットル弁目標開度は
図4より10%であり、減算器509により算出されるスロットル弁14の開度の偏差は−5%、すなわち負の値となる。負の値を入力値とする排気バイパス弁フィードバック制御部510によって、排気バイパス弁26はスロットル弁14の開度を10%に一致させるように空気流量を増やす方向、すなわち排気バイパス弁26を閉じる方向に制御される。
これにより、ガスエンジン1の負荷が低負荷から中負荷の範囲において、排気バイパス弁26は全閉とされる。
【0037】
次に、
図3を用いてガスエンジン1の負荷が中負荷から定格点の範囲におけるガスエンジン制御装置50の制御について説明する。
図3のスロットル弁フィードバック制御部505において、空燃比が目標空燃比に一致するようにスロットル弁14をフィードバック制御する。ここで、例えばスロットル弁14の開度の制御量が80%であるとすると、減算器509においてスロットル弁目標開度テーブル508から出力されたスロットル弁目標開度からスロットル弁フィードバック制御部505の出力値80%を減算する。ガスエンジン1の負荷が中負荷から定格点の範囲であることから、スロットル弁目標開度は
図4より100%であり、減算器509により算出されるスロットル弁14の開度の偏差は20%、すなわち正の値となる。正の値を入力値とする排気バイパス弁フィードバック制御部510によって、排気バイパス弁26はスロットル弁14の開度を100%(全開)に一致させるように空気流量を減らす方向、すなわち排気バイパス弁26を開く方向に制御される。
【0038】
排気バイパス弁26が開く方向に制御されると、スロットル弁14が全開となる点で整定する。この時、
図3のスロットル弁フィードバック制御部505にて導出されるスロットル弁14の実開度は100%となり、減算器509により算出される偏差は0となる。
また、スロットル弁14が全開となっている時に、目標空燃比と実空燃比との間に偏差が生じる場合には、まずスロットル弁開度指令値が変化するため、スロットル弁14の実開度とスロットル弁目標開度との間にも偏差が生じる。この場合、スロットル弁14の開度の偏差を解消するように排気バイパス弁26が動作し、結果としてスロットル弁14の開度がスロットル弁目標開度となるように排気バイパス弁26による空燃比制御が行われ、排気バイパス弁26は整定する。
【0039】
次に、
図5乃至8を用いて、本実施形態を使用したシミュレーション結果について説明する。
図5乃至8は各値の時間t0からt12までのタイムチャートであり、横軸は時間を示し、
図5の縦軸はガスエンジン1のエンジン回転数、
図6の縦軸はガスエンジン1の負荷、
図7の縦軸はスロットル弁14の開度及び排気バイパス弁26の開度、
図8の縦軸は実空燃比及び目標空燃比を示す。また、
図7において、実線はスロットル弁14の開度、破線は排気バイパス弁26の開度を示し、
図8において、実線は目標空燃比、破線は実空燃比を示す。
【0040】
図5に示されるように、ガスエンジン1は時間t0とt4の直後に回転数を下げているが、通常の回転数は定格回転数となっている。
図6に示されるように、ガスエンジン1の負荷は、時間t0からt4の間は40%、時間t4からt12の間は60%となっている。つまり、時間t0からt4の間は低負荷から中負荷までの範囲であり、時間t4からt12の間は中負荷から定常点の範囲であるといえる。
【0041】
図7に示されるように、時間t0からt4の低負荷から中負荷までの範囲の場合は、破線で示される排気バイパス弁26の開度は0%となっている。また、スロットル弁14の開度は、時間t0からt4の期間において
図8の破線に示される実空燃比が目標空燃比に一致するように、スロットル弁14によって
図7の実線で示されるように空燃比制御が行われる。
【0042】
また、
図7の時間t4からt12の中負荷から定常点の範囲の場合は、破線で示される排気バイパス弁26の開度はスロットル弁目標開度(100%)となるように空気流量を減らす方向、すなわち排気バイパス弁26を開く方向に制御される。これに応じて、
図7の実線で示されるスロットル弁14の開度は、時間t12において100%に整定する。
また、時間t4からt9の期間において
図8の破線に示される実空燃比が目標空燃比に一致するように、排気バイパス弁26によって
図7の破線で示されるように空燃比制御が行われる。
【0043】
以上、説明してきたように、本実施形態に係るエンジン制御装置、エンジン、およびエンジン制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、スロットル弁及び排気バイパス弁のフィードバック制御を行うこととしたため、負荷投入性能の向上と発電効率の向上とを両立させることができる。
また、シーケンス処理や不連続な制御の切替を行うこと無く、単純な構成のみで実現が可能である。またシーケンス処理でないことから、負荷の変動や、環境条件の変化などに柔軟に対応することができる。
【0044】
また本実施形態によれば、ガスエンジン1の負荷が低負荷から中負荷までの範囲の場合は、スロットル弁14により空燃比制御が行われ、排気バイパス弁26は全閉またはほぼ全閉となることから、過給圧が上がり負荷投入性能を確保することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、ガスエンジン1の負荷が中負荷から定格点の範囲の場合は、スロットル弁14は全開またはほぼ全開となり、排気バイパス弁26により空燃比制御が行われることから、圧力損失を低減し、発電効率の向上を図ることができる。
【0046】
また本実施形態によれば、スロットル弁開度の目標値をテーブル情報として設定することにより、任意の値を設定することが可能であり、負荷投入性能と効率とのバランスを調整することができる。また、負荷の変動や環境条件の変化などに柔軟に対応することができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。
【0048】
たとえば、上述した実施形態においてはスロットル弁目標開度には10%または100%を設定するとしたが、低負荷から中負荷までの範囲では0%とするなど、これに限らず任意の値を設定するとしてもよい。