(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記理想サイクルタイムと前記処理時間の値との差分を前記生産工程のそれぞれにおいて累積し、各累積値を示す情報を前記生産工程毎に前記処理時間の分布上に表示するステップ、
をさらに含む請求項2に記載の製造実績の可視化方法。
前記理想サイクルタイムと前記処理時間の値との差分を前記生産工程のそれぞれにおいて累積し、各累積値を示す情報を前記生産工程毎に前記処理時間の分布上に表示するステップは、
前記処理時間の値が前記理想サイクルタイムより大きい製品個体についてのみ前記理想サイクルタイムと前記処理時間との差分を累積し、前記各累積値を示す情報を前記生産工程毎に前記処理時間の分布上に表示するステップである、
請求項3に記載の製造実績の可視化方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された表示方法を用いた場合、観察されたロスに対して逐次対策を行うことになり、非効率である。繰り返し発生する、生産効率に対する影響が大きいロスから改善を着手する方が効率が良い。例えば、生産のボトルネックになっていない工程に対して改善活動を行っても、他の工程の手待ち時間が拡大するのみであり、生産効率の向上には寄与しないからである。また、特許文献1に記載された方式では、個体単位で処理時間を時系列に表示するのみであるため、ロス全体の生産効率に対する影響度は可視化されない。そして、特許文献1に記載された方式では、ロスを改善した場合の効果を見積もる手段もない。
【0007】
特許文献2に記載された表示方法の場合、利用者が様々な情報を観察してロス対策の優先順位を判断する必要があるため、効率的なロス改善は作業者の能力に大きく依存する。
【0008】
繰り返し発生するロスが存在する工程は、ロスによる散発的な処理時間増加により、処理時間のばらつきが大きくなる。例えば、設備の部品詰まりや部品の供給切れによって、チョコ停と呼ばれる一時的な停止が多発している工程の場合、処理時間の分布は正常時の処理時間である標準時間の母集団にチョコ停によって長くなった処理時間が加わることにより、ばらつきが大きくなる。ロス改善の優先度を判断するためには、この処理時間のばらつきの大きさを一元的に可視化することが必要である。
【0009】
一方で、ロスが多い工程が常に生産のボトルネックであるとは限らないため、処理時間のばらつきのみで、ロス改善の優先順位を判断することはできない。例えば、処理時間のばらつきが少ない工程がボトルネックになっている場合、チョコ停のようなイレギュラーなロスではなく、工程間の標準時間差に起因する恒常的な編成ロスが改善の対象となる。この場合、治具の整備や新規設備の導入等による、標準時間の短縮が優先順位の高い改善目標になる。よって、処理時間のばらつきに加えて、製品の生産速度に対する影響の大きさも同時に可視化することが望ましい。
【0010】
生産速度に対する影響の大きさは、サイクルタイムと実際の処理時間の差異から算出可能である。サイクルタイム自体がロス改善により、削減しうる値であるため、現状のサイクルタイムではなく、改善により到達可能なサイクルタイムと実際の処理時間の差異を可視化する方が望ましい。
【0011】
上記事情に鑑み、本開示は、製品製造時に発生した改善すべきロスを容易に把握できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の代表的な例として、製造実績の可視化方法であって、複数の製品個体のそれぞれの着手時刻及び完了時刻が生産工程毎に記録された製造実績情報を取得するステップと、前記製造実績情報に基づいて前記複数の製品個体のそれぞれの前記生産工程毎の処理時間を算出するステップと、前記複数の製品個体のそれぞれの前記処理時間を前記生産工程毎に分散プロットして表示部に表示するステップと、を含む製造実績の可視化方法を提供する。
【0013】
本開示の別な例として、複数の製品個体のそれぞれの着手時刻及び完了時刻が生産工程毎に記録された製造実績情報を取得するデータ取得部と、前記製造実績情報に基づいて前記複数の製品個体のそれぞれの前記生産工程毎の処理時間を算出する演算部と、前記複数の製品個体のそれぞれの前記処理時間を前記生産工程毎に分散プロットして表示部に表示するグラフ出力部と、を備える画像処理装置を提供する。
【0014】
本開示のさらに別な例として、複数の製品個体のそれぞれの着手時刻及び完了時刻が生産工程毎に記録された製造実績情報を取得するステップと、前記製造実績情報に基づいて前記複数の製品個体のそれぞれの前記生産工程毎の処理時間を算出するステップと、前記複数の製品個体のそれぞれの前記処理時間を前記生産工程毎に分散プロットして表示部に表示するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、製品製造時に発生した改善すべきロスを容易に把握できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本開示の実施例を説明する。なお、本開示の実施例は、後述する実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。また、後述する各実施例の説明に使用する各図の対応部分には同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0018】
なお、「標準時間」とはロスの発生も含めた、各工程において製品の処理に要する標準的な時間を意味し、サイクルタイムとも称する。本明細書において「理想標準時間」とは、改善により散発的なロス要因が取り除かれた後に達成できる標準時間を指す。理想標準時間は、後述するように、処理時間の度数分布を分布曲線で近似した際の、当該分布曲線の最頻値である。理想標準時間は生産工程毎に定まる値である。本明細書において、理想標準時間のうち最も大きい値を、「理想サイクルタイム」と称する。理想サイクルタイムは、ロス改善後に達成しうる製品の生産速度を示す値である。
【0019】
[実施例に係る画像処理装置の構成]
図1は、本開示に係る画像処理装置1の構成図である。画像処理装置1は、製造実績DB(Data Base)が記録された記録部100、演算装置110及び表示部120を備える。演算装置110と記録部100は、同一のマシンであっても、異なるマシンであってもよい。表示部120は、演算装置110の演算結果を表示する装置であり、液晶ディスプレイなどの出力装置、又はスマートフォンやタブレットでもよい。
【0020】
記録部100は、例えば、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)とを備える。ROMには、例えば、演算装置110が実行するプログラムが格納されている。RAMには、例えば、演算装置110が処理するデータが一時的に格納される。HDD又はSSDには、例えば、製造実績DBが記録される。
【0021】
図2は、製造実績DBの例を示す図である。製造実績DBは
図2に示されるように、製品の個体、もしくはロット単位で一意に割り当てられた製品番号と、生産工程毎の着手時刻と完了時刻とを格納する。製造実績DB内のデータは、例えば、MES(Manufacturing Execution System)やSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)等の工場に導入された実績収集システムにより収集される。上記実績収集システムを実行するハードウェアは、記録部100と通信可能に接続されており、実績収集システムは工場内の各製品個体の流れを工程毎にリアルタイムに監視し、収集したデータを記録部100に記録する。
【0022】
演算装置110は、製造現場に設置されている産業用PCや演算機能を持つPLC(Programmable Logic Controller)、さらには、工場外のサーバマシンであってもよい。また、演算装置110は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成され、記録部100に格納されたプログラムを実行することによって、データ取得部111、演算部112及びグラフ出力部113として機能してもよい。
【0023】
データ取得部111は、製造実績DBから複数の製品個体のそれぞれの着手時刻及び完了時刻が生産工程毎に記録された製造実績情報を取得する。
【0024】
演算部112は、取得した製造実績データに対し、演算処理を行い、可視化のためにデータを加工する。具体的には、演算部112は、データ取得部111が取得した製造実績情報に基づいて複数の製品個体のそれぞれの生産工程毎の処理時間を算出する。
【0025】
演算部112は、生産工程毎の処理時間の分布を所定の種類の分布曲線で近似し、当該分布曲線の最頻値を生産工程毎に算出する。上述したとおり、本明細書の以後の説明において、上記生産工程毎の最頻値を理想標準時間と称し、理想標準時間のうち最も大きい値を理想サイクルタイムと称する。
【0026】
演算部112は、理想サイクルタイムと処理時間の値との差分を生産工程のそれぞれにおいて累積する。演算部112は、例えば、処理時間の値が理想サイクルタイムより大きい製品個体についてのみ理想サイクルタイムと処理時間との差分を累積する。
【0027】
グラフ出力部113は、演算部112によって算出された複数の製品個体のそれぞれの処理時間を生産工程毎に分散プロットして表示部120に表示する。
【0028】
[画像処理装置による処理フロー]
図3は、データ取得部111によるデータ取得処理と演算部112による演算処理とグラフ出力部113による表示処理とのシーケンスを示す図である。以下に、
図3に示した処理のシーケンスを説明する。
【0029】
(ステップ301)
まずデータ取得部111が、製造実績DBから複数の製品個体のそれぞれの着手時刻及び完了時刻が生産工程毎に記録された製造実績情報を取得する。
【0030】
(ステップ302)
続いて、演算部112がステップ301でデータ取得部111が取得した生産工程毎の着手時刻と完了時刻とに基づいて、製品番号毎、生産工程毎の処理時間を算出し、記録部100に記録する。例えば、
図2に記載された製造実績の場合、製品番号0001の工程1の処理時間は、完了時刻10:08:00と着手時刻10:00:00の差分から求めることができ、その値は480秒である。
【0031】
図4は、製品番号と工程1〜工程4における処理時間との対応が記録された表である。
図4に示した例では、製品番号0001の製品が、工程1において480秒の処理時間であったことが記録されている。
【0032】
(ステップ303)
演算部112が、ステップ302で算出した処理時間に基づいて、各生産工程の処理時間の分布を求め、対数正規分布で近似する。対数正規分布による近似は、例えば、最小二乗法や最尤推定法等の方式を用いる。
【0033】
図5は、処理時間の分布の例を示す図である。具体的には、
図5は、
図4に示した工程1、工程2、工程3及び工程4のそれぞれにおける製品の処理時間から生成された0秒から1600秒までの区間を階級数30個で区切った度数分布である。
図5からわかるように、散発的にロスが生じる場合、処理時間の分布は対数正規分布でよく近似できる。
【0034】
図6は、
図5の度数分布を対数正規分布を表す曲線で近似した様子を示す図である。
図6において、曲線601、602、603及び604は、それぞれ、対数正規分布を表す曲線であり、
図5に示した度数分布に重畳されて表示されている。
【0035】
(ステップ304)
演算部112が、ステップ303で求めた対数正規分布の最頻値を算出する。
図6に示された垂直線611、612、613、614は、対数正規分布の最頻値を表している。最頻値modeは、対数正規分布のパラメータμとσから、以下の式により算出できる。
mode=e^(μ−σ^2)
なお、最頻値は、小数点以下の切り上げ、切り下げ又は四捨五入により値を丸めてもよい。
【0036】
(ステップ305)
演算部112が、ステップ304で求めた最頻値を各工程の理想標準時間とし、各工程の理想標準時間の中で最も長いものを製造ラインの理想サイクルタイムとして記録部100に記録する。ここで、理想標準時間とは、当該工程で製品を処理するのに最低限必要と見做せる時間である。したがって、理想サイクルタイムより短い時間を製品の製造サイクルとすることは困難である。換言すれば、理想サイクルタイムを定義する工程が製造のボトルネックとなる工程である。
【0037】
(ステップ306)
グラフ出力部113が、ステップ302で算出した処理時間に基づいて一次元散布図を生成する。さらに、グラフ出力部113は、ステップ305で演算部112が設定した理想サイクルタイムの値を示す線分を一次元散布図上に重畳して表示する。
【0038】
図7は、グラフ出力部113が生成した一次元散布図の例である。一次元散布図は、生産工程毎、製品番号毎に処理時間をプロットしたものである。重複する処理時間数が大きいとグラフ上でドットが重複して、可視性が損なわれるため、処理時間をプロットするx軸上の位置は、左右に分散させる。処理時間を左右に分散させる方法は、例えば、乱数を発生させてランダムに行う。これにより、処理時間のばらつきを視覚的に表現すると同時に、製品個別単位でのロス発生も観察することができる。
【0039】
図7内の線分701は、理想サイクルタイムである。
図7に示すように、処理時間の一次元散布図に理想サイクルタイムの線分を重畳することによって、理想サイクルタイムを超える処理時間の多寡を可視化できるため、改善の優先順位の高い工程を視覚的に認識することができる。
図7の場合、理想サイクルタイムを決定しているボトルネック工程は工程4であるが、全体の生産効率に悪影響を及ぼす、ロスの大きい工程は、工程1と工程2であることがわかる。工程1と工程2とは、処理時間のばらつきが大きく、理想サイクルタイムを超えた処理時間のプロットが多く観察できる。
【0040】
(ステップ307)
演算部112が、ステップ305で設定した理想サイクルタイムとステップ302で算出した処理時間とに基づいて、工程毎の総ロス時間を算出する。総ロス時間算出方法の詳細な処理シーケンスを
図9に示す。
図9の説明は後述する。
【0041】
(ステップ308)
グラフ出力部113は、ステップ307で算出した総ロス時間をステップ306で描画した図の上にオーバーレイ表示する。より具体的には、グラフ出力部113は、総ロス時間に対応する高さの棒グラフを、理想サイクルタイムを示す線分をベースにして透過性を有した状態で散布図に重畳する。棒グラフは透過性を有するため、総ロス時間が一次元散布図に重畳された状態であっても、各製品個体の処理時間を視認することができる。
【0042】
図8は、総ロス時間をオーバーレイ表示した一次元散布図の例である。生産工程毎に総ロス時間の大きさは棒グラフ801、802、803、804で表現され、値が棒グラフ801、802、803、804の横に表示されている。この数値の表示により、生産のボトルネックとなっている工程は工程2であることが定量的に確認できる。工程2はばらつきの大きい工程であり、チョコ停などのロス要因が多発していることが読み取れる。また、
図8の内容と異なり、もし総ロス時間が最も大きい工程が、バラつきの少ない工程3や工程4だった場合、治具の見直し等による標準時間の改善が必要になることがわかる。
【0043】
続いて、演算部112が理想サイクルタイムと処理時間とに基づいて累積値を算出する処理を説明する。
【0044】
図9は、工程毎のロス時間の算出方法を示すシーケンス図である。
図9では、複数ある工程のうち一つの工程を例にとって、総ロス時間を算出するフローが示されている。以下に、
図9に示したシーケンスを説明する。
【0045】
(ステップ901)
まず、演算部112が、ステップ305で設定した理想サイクルタイムaを記録部100から取得する。
【0046】
(ステップ902)
続いて総ロス時間Sを定義し、総ロス時間Sの初期値を0とする。また変数iを定義し、変数iの初期値を1とする。ここで変数iは、製品番号を表す変数である。
【0047】
(ステップ903)
i番目の処理時間tiが理想サイクルタイムaよりも大きい場合、総ロス時間Sに計上するロス時間があるため、ステップ904に進む。i番目の処理時間tiが理想サイクルタイムa以下の場合は、Sに計上するロス時間は無いものとして、ステップ905に進む。
【0048】
(ステップ904)
tiとaの差をロス時間として総ロス時間Sに加算し、総ロス時間Sを更新する。続いて、ステップ905へ進む。
【0049】
(ステップ905)
変数iに1を加算し、変数iを更新する。
【0050】
(ステップ906)
変数iが処理時間の総数n、即ち製品番号nよりも大きい場合は、全ての製品番号の処理時間に対し、ロス時間の加算処理が完了したため、総ロス時間の算出を終了する。iがn以下の場合は、まだ未処理の製品番号の処理時間があるため、ステップ903より処理を継続する。
【0051】
グラフ出力部113は、各処理時間の詳細情報1001を
図7及び
図8で示した一次元散布図に重畳して表示することができる。各処理時間の詳細情報1001には、例えば、製品番号、着手時間及び完了時間が含まれる。詳細情報1001は、例えば、一次元散布図上にプロットされた処理時間の点をクリックすると、その処理時間の詳細情報1001がオーバーレイ表示される。このようにすると、ユーザは製造工程において生じたロスの原因を調査できるようになる。
【0052】
図10は、詳細情報1001が一次元散布図に重畳されて表示された様子を示す図である。
図10に示した例では、工程2が処理時間のばらつきが大きい工程であり、設備の稼動状態や作業者の作業時間のロスを分析することが改善につながる。ロス原因の調査のために表示する情報は、上に挙げた例に限らない。画像処理装置がMESやSCADAと連携することによって、グラフ出力部113は、同製品番号の品質情報や作業担当者等の追加情報を表示してもよい。
【0053】
[実施例に係る画像処理装置が奏する効果]
上述したように、実施の形態に係る画像処理装置1は、複数の製品個体のそれぞれの着手時刻及び完了時刻が生産工程毎に記録された製造実績情報を取得するデータ取得部111と、上記製造実績情報に基づいて複数の製品個体のそれぞれの生産工程毎の処理時間を算出する演算部112と、複数の製品個体のそれぞれの処理時間を生産工程毎に分散プロットして表示部に表示するグラフ出力部113と、を備える。
【0054】
このようにすることによって、画像処理装置1は、生産工程毎に各製品個体の処理時間をユーザに視認させることができる。画像処理装置1が、処理時間をプロットするx軸上の位置を左右に分散させた場合、データが膨大であってもユーザは一つ一つの処理時間がどの程度の大きさであるかを確認することができる。
【0055】
演算部112は、生産工程毎の処理時間の分布を所定の分布曲線で近似し、分布曲線の最頻値を生産工程毎に算出し、グラフ出力部113は、生産工程毎の最頻値に基づいて、理想的な生産時間を示す情報を表示部に重畳して表示してもよい。こうすることによって、ユーザは各処理時間の分布のみならず改善により到達可能な理想サイクルタイムと実際の処理時間との差異を容易に把握できる。その結果、ユーザは、製品製造時に発生したロスが散発的に発生したロスなのか、生産工程において恒常的に発生しているロスなのかを推測することができる。また、理想サイクルタイムが表示されることにより、ユーザはどの生産工程がボトルネックとなっているかを確認することができ生産効率を向上させる優先度が高い改善点を知ることができる。
【0056】
グラフ出力部113は、例えば、生産工程毎の最頻値のうち最も大きい値である理想サイクルタイムを示すラインを表示部に重畳する。このようにすることによって、理想サイクルタイムより大きい処理時間のドットを容易に把握できる。
【0057】
演算部112は、理想サイクルタイムと処理時間の値との差分を生産工程のそれぞれにおいて累積し、グラフ出力部113は、各累積値を示す情報を生産工程毎に処理時間の分布上に表示してもよい。こうすることによって、製品個体全体の処理時間が生産速度へ及ぼす影響度が可視化されて、ユーザは改善すべき生産工程の優先順位を把握することができる。
【0058】
演算部112は、例えば、処理時間の値が理想サイクルタイムより大きい製品個体についてのみ理想サイクルタイムと処理時間との差分を累積する。こうすると、理想サイクルタイムを押し上げることに寄与した処理時間の累積を求めることができ、ユーザはロスが改善された場合の改善度を容易に想像することができる。
【0059】
演算部112は、例えば、処理時間の確率分布を所定の確率分布関数でフィッティングする。上記所定の確率分布関数は、例えば、対数正規分布である。こうすることにより、各生産工程の理想標準時間が、ロスを改善して到達できる理想的な工程のサイクルタイムとみなすことができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明した。なお、本製造実績の可視化方法は、各工程の処理時間に関する情報があれば適用可能であり、製品製造の生産方式に依存しない。生産設備や作業員が一連化されるライン生産方式、同一の機能を持った生産設備や作業員を集中的に配置するジョブショップ型の生産方式でも適用可能である。
【0061】
また、本明細書では、処理時間の度数分布にフィッティングさせる分布曲線の例として、対数正規分布を挙げたが、対数正規分布以外の分布曲線を用いてフィッティングさせてもよい。例えば、正規分布、ポアソン分布やガンマ分布など、一般の確率分布を用いた計算が可能である。
【0062】
また、本明細書では、処理時間分布の表示方法として、一次元散布図を用いた。処理時間分布の表示方法は、ヒートマップやヒストグラム等、処理時間の分布が表現できる他の表示方法であってもよい。
【0063】
また、本明細書では、理想的な生産時間を示す情報として一次元散布図に理想サイクルタイムの値を示す線分を重畳した。理想的な生産時間を示す情報は、例えば、理想サイクルタイムよりも大きい処理時間の色を変更することによって表現してもよい。このようにした場合であっても、理想サイクルタイムを超える処理時間の多寡を可視化できるため、改善の優先順位の高い工程を視覚的に認識することができる。
【0064】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。