(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837870
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ロールヘム加工装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/02 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
B21D39/02 F
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-44781(P2017-44781)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-144097(P2018-144097A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】317003822
【氏名又は名称】日産車体マニュファクチュアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】特許業務法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 康一
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/138503(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0038361(US,A1)
【文献】
特開2005−014069(JP,A)
【文献】
特開平07−132327(JP,A)
【文献】
特開2002−011525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールヘムを備える第1ロボットと、
ワークを保持する保持装置を備える第2ロボットと、
前記ワークの縁部を前記ロールヘムによりロールヘム加工する際に前記ワークの縁部を受ける受面部を備えるワーク受部材と、を有し、
前記受面部は、直線状又は円弧状に形成され、
前記ロールヘム加工の際、前記ロールヘムを前記受面部に沿って移動させるよう前記第1ロボットを制御すると同時に、前記ロールヘムの移動に合わせて前記ワークの縁部が前記受面部に沿って移動するよう前記第2ロボットを制御する、前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する制御装置を備える、
を有することを特徴とするロールヘム加工装置。
【請求項2】
前記ワークは、アウターパネルとインナーパネルとで形成されて、前記ロールヘム加工により両者が接合されるようアウターフランジが形成されることを特徴とする請求項2に記載のロールヘム加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールヘム加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のドアやボンネット等の部品の製造において、板状の部品の周縁を折り曲げて丸みを持たせたり、アウターパネルとインナーパネルを接合させたりする場合にロールヘム加工(ヘミング加工)が行われている。そして、そのロールヘム加工を行うロールヘム加工装置が種々開示されている。例えば、特許文献1では、アウターパネル又はインナーパネルの一方の縁部が他方の縁部からフランジ状に突出するよう組み合わせたワークを下型に載置して、このワークのフランジを、ローラ状に形成される工具であるロールヘムで押圧してアウターパネルとインナーパネルを接合するロールヘム加工装置が開示されている。そして下型は、ワーク(製品)の種類によって、ロールヘム加工を施すワーク形状が異なるため、ワークの種類ごとに交換を要する。そのため、特許文献1では、加工ステージの型受け台を多段化して段替えを効率化している。
【0003】
また、特許文献2に開示されるロールヘム加工装置は、下型に代えて、ワークの縁部を支える第1ローラと、フランジを折り曲げるための第2ローラとを備える。第1ローラと第2ローラは、ロボットのアームに取り付けられるアーチ部材により保持されて、第2ローラはアーチ部材に取り付けられた複数の液圧シリンダにより動作される。このように、下型に代えて第1ローラでワークの縁部を支持することにより、高価で製作時間が掛かる下型を廃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−226701号公報
【特許文献2】特開2005−349471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるロールヘム加工装置のように、下型を多段に設けることで段替えに掛かる時間を短縮することができるが、ワークの種類に応じて多数の下型を用意する必要がある。一方、特許文献2に開示されるロールヘム加工装置では、下型を廃することができるが、第1ローラを支持するアーチ部材が第2ローラの押圧力により変形する場合があり、これを防止するためアーチ部材の剛性を高めると、アーチ部材を備えるロボットのアームに負荷が掛かり、より高精度なロールヘム加工に支障が生じる場合がある。
【0006】
本発明の目的は、下型を廃しつつ精度よくロールヘム加工を行うことができるロールヘム加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロールヘム加工装置は、ロールヘムを備える第1ロボットと、ワークを保持する保持装置を備える第2ロボットと、前記ワークの縁部を前記ロールヘムによりロールヘム加工する際に前記ワークの縁部を受ける、板状部材により形成されるワーク受部材と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下型を廃して加工精度も良いロールヘム加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るロールヘム加工装置を示す正面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るロールヘム加工装置を示す平面模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るワーク及びワーク受部材の変形例を示し、(a)は本実施形態を示し、(b)はその変形例を示し、(c)は他の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1、
図2に示すロールヘム加工装置1は、ワークWの縁部にロールヘム加工を施して、アウターパネルW1とインナーパネルW2を接合することができる。ここで、ワークWは、例えば、自動車のボンネットやドア、バックドアが挙げられる。アウターパネルW1の縁部は、インナーパネルW2の縁部よりも外方に形成される。ここで、アウターパネルW1の縁部をアウターフランジW1aとし、インナーパネルW2の縁部をインナーフランジW2aとする。そして、アウターフランジW1aは、その縁部が起立して形成される。ロールヘム加工は、アウターフランジW1aの起立した縁部を折り曲げてインナーフランジW2aを挟むようにして行われる。このロールヘム加工により、アウターパネルW1とインナーパネルW2がワークWの縁部で接合される。
【0011】
ロールヘム加工装置1は、第1ロボット10と第2ロボット20を備える。第1ロボット10は、多関節のロボットアーム11を備える。ロボットアーム11の先端には、回転自在にロールヘム12が設けられる。ロールヘム12は、略円柱形状のローラとされる、ロールヘム加工を行うための工具である。
【0012】
一方、第2ロボット20も、多関節のロボットアーム21を備える。ロボットアーム21の先端には、ワークWを保持するワーク保持装置22が設けられる。ワーク保持装置22は、例えば、密閉内部の空気を吸い込んでワークWを吸着・解放するバキュームカップや磁気によりワークWを吸着・解放する磁気装置、又は、フィンガーグリップ装置によりワークWを把持・解放することができる把持構造等を備えるように形成することができる。
【0013】
また、ロールヘム加工装置1には、ワーク受部材30が設けられる。ワーク受部材30は、台40の上面に固定される。ワーク受部材30は、本実施形態においては直線状の板状部材とされており、長矩形状に形成されて、長手方向の下縁面が台40の上面に固定される。なお、後述するが、ワーク受部材30は、円弧状の板状部材により長円弧状に形成することもできる。ワーク受部材30は、焼入れ等の熱処理を施した硬質な鉄鋼材料により形成される。そして、ワーク受部材30の上縁面は、受面部30aとされる。
【0014】
また、図示しないが、ロールヘム加工装置1には、第1ロボット10及び第2ロボット20を制御する制御装置が設けられる。
【0015】
ロールヘム加工装置1によるワークWの加工は、先ず、事前にアウターパネルW1とインナーパネルW2を組み合わせたワークWを形成しておく。又は、第2ロボット20により、アウターパネルW1を下方から支持するようにワーク保持装置22により支持した状態で、図示しない他のロボット装置によりインナーパネルW2をアウターパネルW1上に載置しても良い。
【0016】
なお、アウターパネルW1のアウターフランジW1aの起立した縁部は、予め起立させておいても良いが、ロールヘム加工装置1により起立させても良い。
【0017】
第2ロボット20は、ワークWを保持した状態で、ロールヘム加工を施すワークWの縁部をワーク受部材30の上面である受面部30aに載置する。その後、第1ロボット10のロールヘム12により、ワーク受部材30の受面部30aに載置されたワークWの縁部に対してロールヘム加工を施す。
【0018】
より具体的には、ロールヘム12は、アウターフランジW1aの縁部における起立部外周を折り曲げながら、ワークWの縁部であるアウターフランジW1aを、ワーク受部材30の受面部30aに押し付ける。そして、ロールヘム12は、アウターフランジW1aの縁部における起立部を折り曲げながら受面部30aの長手方向に沿って移動される。このとき、折り曲げたアウターフランジW1aの縁部における起立部の内側にインナーフランジW2aが位置するように折り曲げる。アウターフランジW1aの折り曲げは、ワークWの形状等に応じて、一度に折り曲げられる場合もあるが、2回又はそれ以上の回数に亘って徐々に折り曲げられることもある。そして、アウターフランジW1aとインナーフランジW2aが塑性変形されて互いに圧着するようロールヘム12をアウターフランジW1aに押し付ければ、アウターフランジW1aとインナーフランジW2aは接合し、ロールヘム加工が完了する。
【0019】
また、第1ロボット10によりロールヘム12が受面部30aに沿って移動してロールヘム加工が行われる際には、第2ロボット20により、ワークWを移動しないように固定しておくこともできるし、ロールヘム12の移動に合わせてワークWの縁を受面部30aに沿って移動するよう第2ロボット20を動作させることもできる。すなわち、ロールヘム加工を施すワークWの縁部の形状とワーク受部材30の受面部30aの長手方向の形状が合致している場合には、第1ロボット10のロールヘム12のみ受面部30aに沿って移動させればよい。しかしながら、ワークWのロールヘム加工を施す縁部の外形が凹円弧状の曲線形状等の異形形状である場合には、直線状の受面部30aにロールヘム12によりワークWの縁が常に押し付けられるように、第1ロボット10を動作させてもよい。
【0020】
なお、上述の第1ロボット10及び第2ロボット20の動作は、ロールヘム加工装置1の制御装置が第1ロボット10及び第2ロボット20を制御して行われる。そして、異なる製品(ワークW)毎に第1ロボット10及び第2ロボット20が動作するよう制御装置を設定することもできる。
【0021】
このようにロールヘム加工装置1は、下型に代えて簡単な形状のワーク受部材30によりワークWを受けて、ヘム加工を行うことができる。そして、異なる形状のワークWであっても、ワーク受部材30を共通して使用することができる。従って、製造コストが掛かる下型を異なる形状のワークW(製品)毎に用意することが無い。さらに、ワーク受部材30は製品毎に共通なので、段替えに係る時間も大幅に短縮することができる。そして、ワーク受部材30が板状に形成されれば、さらに製造に掛かるコストを低減することができる。さらに、ワーク受部材30を高い剛性の材料で形成することができるとともに、台40に固定する等の簡単で剛性の高い構成とすることができるので、精度よくワークWを加工することができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は以上の実施形態によって限定されることはなく、種々の形態で実施することができる。例えば、ワーク受部材30が固定される台40には、ワークWの供給及び取出しを行うローダアンローダ装置を設けることもできる。また、本実施形態におけるワークWは、アウターパネルW1及びインナーパネルW2からなるワークWとしたが、これに限られず、周縁の切断面を人の手等に触れ難くするために折り曲げて丸めるロールヘム加工を施す1枚の板状のワークにも適用することができる。また、ワーク受部材30は、2以上の複数設けるようにしても良い。
【0023】
また、ワークWの縁部は、
図3(a)に示す本実施形態のように直線状に形成することもできるが、
図3(b)に示すように長円弧状のワークW'(アウターパネルW1'、インナーパネルW2')の縁部(アウターフランジW1a'で示される)とすることもできる。また、
図3(c)に示すように、ワーク受部材30の受面部30aは、凸長円弧状のワークW''(アウターパネルW1''、インナーパネルW2'')の縁部(アウターフランジW1a''で示される)に対応して、凸長円弧状の受面部30a''を備えるワーク受部材30''とすることもできる。この他、受面部30aを、板状のワーク受部材30の短手方向又は長手方向に傾斜して設けることもできるし、ワーク受部材30はブロック状等の他の形状とすることもできる。さらに、ワーク受部材30の受面部30aは、ワークWの縁部をロールヘムによりロールヘム加工する際にワークWの縁部を受けることができればよく、面状以外の他の形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0024】
1 ロールヘム加工装置
10 第1ロボット
11 ロボットアーム
12 ロールヘム
20 第2ロボット
21 ロボットアーム
22 ワーク保持装置
30 ワーク受部材
30a 受面部
40 台
W,W',W'' ワーク
W1,W1'W1'' アウターパネル
W1a,W1a',W1a'' アウターフランジ
W2,W2',W2'' インナーパネル
W2a インナーフランジ