(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る建物の天井構造の一例について説明する。
【0015】
〔全体構成〕
図1には、建物の天井構造の一例としての天井構造40が適用された建物10の一部が示されている。天井構造40の詳細については後述する。なお、
図1では、建物10の構成を分かり易く示すために、天井構造40の詳細な部位の図示を簡略化して示している。以後の説明では、建物10の桁方向をX方向、妻方向をY方向、上下方向(高さ方向)をZ方向と称する。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する。X方向及びY方向は、上下方向と交差する横方向の一例である。
【0016】
建物10は、一例として、下階としての一階部分12と、上階としての二階部分14と、図示しない屋根部とを有する。また、建物10は、図示しない基礎上に鉄骨の柱16(
図2参照)及び梁18を組み上げた鉄骨軸組構造の躯体15と、Z方向に立設された外壁パネル22とを含んで構成されている。梁18は、H型鋼で構成されX方向に延在された床大梁24と、床小梁としての後述する床梁54とを含んで構成されている。床大梁24のウェブ24Aには、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔24Bが形成されている。なお、
図1では、床大梁24の上フランジ及び下フランジの図示は省略している。
【0017】
一階部分12は、外壁パネル22側にZ方向に沿って立設された壁部28と、外壁パネル22側とはX方向の反対側にZ方向に沿って立設された壁部26と、壁部26及び壁部28の上側でX方向及びY方向に広がる天井部32とを有する。壁部26及び壁部28の詳細については後述する。二階部分14は、図示しない壁部と、該壁部の下側でX方向及びY方向に広がる床部34とを有する。
【0018】
床部34は、床大梁24及び床梁54と、床大梁24及び床梁54の上面に敷設された床パネル36とを含んで構成されている。床パネル36は、一例として、軽量気泡コンクリート(ALC)で構成されると共に、平面視で矩形の板状に形成されている。また、床パネル36は、X方向に沿って所定の枚数で敷設されている。
【0019】
<壁部>
図3(A)に示すように、壁部26は、スタッド64と、ランナー66と、内壁パネル68と、内壁パネル72とを含んで構成されている。スタッド64は、Y方向に間隔をあけて配置され、Z方向に沿って直立している。ランナー66は、Y方向に沿って延在され、2つのスタッド64の上端部を繋いでいる。また、ランナー66は、Y方向から見た場合の断面形状が、Z方向の下側に向けて開口した逆U字状に形成されている。具体的には、ランナー66は、Y方向から見た場合に、X方向に沿って配置された上壁66Aと、上壁66AのX方向の両端部からZ方向の下側に向けて延在された2つの縦壁66Bとを有する。
【0020】
内壁パネル68及び内壁パネル72は、一例として、X方向から見た場合に矩形の板状に形成された石膏ボードで構成されている。内壁パネル68は、一方側の縦壁66Bにネイル69によって取付けられている。内壁パネル72は、他方側の縦壁66Bに図示しないネイルによって取付けられている。内壁パネル68と内壁パネル72との間には、グラスウールを含む図示しない断熱材が配置されている。
【0021】
図1に示す壁部28は、一例として、壁部26において内壁パネル72が外壁パネル22に置き換えられた構成とされている。言い換えると、壁部28は、外壁パネル22を除く他の構成は、壁部26と同様の構成とされている。このため、外壁パネル22について説明し、壁部28における他の部材の説明を省略する。外壁パネル22は、一例として、X方向から見た場合に矩形の板状に形成された石膏ボードで構成されている。また、外壁パネル22は、縦壁66Bにネイル69(
図3(A)参照)によって取付けられている。なお、壁部26及び壁部28は、一階部分12の壁の一部を構成している。
【0022】
〔要部構成〕
次に、天井構造40について説明する。
【0023】
天井構造40は、一例として、固定部42、44と防振部46とを有する。固定部42は、天井部32のX方向の一端部(X方向における外壁パネル22側とは反対側の端部)を壁部26に固定する部位である。固定部44は、天井部32のX方向の他端部(外壁パネル22側の端部)を壁部28に固定する部位である。防振部46は、天井部32における固定部42よりも内側(中央側)の部位と、床部34における固定部42よりも内側(中央側)の部位とを連結すると共に防振する部位である。
【0024】
図2に示すように、建物10を平面視して(Z方向の上側から見て)、固定部42、44と防振部46とは、X方向に並んでいる。固定部42、44、防振部46は、斜線で示されている。固定部42、固定部44及び防振部46は、一例として、Y方向に間隔をあけてそれぞれ5箇所設けられている。
【0025】
図3(A)及び
図4(A)に示すように、天井構造40は、具体的には、天井材52と、床梁54と、天井下地材56と、連結部材58と、固定部材の一例としてのネジ62とを有する。
【0026】
<天井材>
天井材52は、壁部26及び壁部28よりもZ方向の上側に配置されており、一階部分12の天井部32の一部を構成している。また、天井材52は、一例として、平面視で(Z方向の上側から見て)矩形の板状に形成された石膏ボードで構成されている。図示を省略するが、天井材52は、Y方向に沿って複数枚敷設されると共にZ方向に複数枚重ねられている。そして、天井材52は、後述する野縁84にZ方向の下側から重ねられ、ネイル53(
図3(A)参照)によって野縁84に取付けられている。
【0027】
<床梁>
床梁54は、二階部分14の床部34の一部を構成している。また、床梁54は、第1床梁74と2つの第2床梁76とを有する。さらに、床梁54は、天井材52よりもZ方向の上側で、Y方向に並ぶ2つの床大梁24にY方向に沿って架設され、床大梁24が延在するX方向に対して直交するY方向に沿って延在されている。
【0028】
(第1床梁)
図4(A)に示す第1床梁74は、一例として、天井材52の壁部26と壁部28との間のX方向中央部(
図1参照)に対して、Z方向の上側に配置されている。また、第1床梁74は、H型鋼で構成されており、Z方向に沿って直立するウェブ74Aと、ウェブ74Aの上端部からX方向両側に張出された上フランジ74Bと、ウェブ74Aの下端部からX方向両側に張出された下フランジ74Cとを有する。
【0029】
下フランジ74Cのウェブ74Aに対する一方側のX方向中央部には、後述する吊ボルト96が挿通される図示しない挿通孔がZ方向に貫通して形成されている。下フランジ74Cの下面から上フランジ74Bの上面までの高さは、床大梁24(
図1参照)の下フランジの下面から上フランジの上面までの高さよりも低い。これにより、天井材52の上面と下フランジ74Cの下面との間には空間が形成されている。
【0030】
(第2床梁)
図3(A)に示す第2床梁76は、壁部26のZ方向の上側と、壁部28(
図1参照)のZ方向の上側とに配置されている。また、第2床梁76は、H型鋼で構成されており、Z方向に沿って直立するウェブ76Aと、ウェブ76Aの上端部からX方向両側に張出された上フランジ76Bと、ウェブ76Aの下端部からX方向両側に張出された下フランジ76Cとを有する。
【0031】
下フランジ76Cのウェブ76Aに対する一方側のX方向中央部には、後述する吊ボルト88が挿通される図示しない挿通孔がZ方向に貫通して形成されている。下フランジ76Cの下面から上フランジ76Bの上面までの高さは、床大梁24(
図1参照)の下フランジの下面から上フランジの上面までの高さよりも低い。これにより、天井材52の上面及びランナー66の上面と、下フランジ76Cの下面との間には空間が形成されている。
【0032】
<天井下地材及びネジ>
天井下地材56は、天井材52よりもZ方向の上側に配置され、天井材52に設けられている。また、天井下地材56は、野縁受82と、野縁84と、クリップ86とを含んで構成されている。
【0033】
(野縁受)
野縁受82は、第2床梁76の延在方向であるY方向と直交するX方向に延在されている。また、
図3(B)に示すように、野縁受82は、X方向から見た場合の断面形状が四角筒状とされた鋼材で構成されている。さらに、
図3(A)に示すように、野縁受82は、第2床梁76に後述する吊ボルト88及びハンガー89によって取付けられることにより、第1床梁74(
図4(A)参照)及び第2床梁76に対するZ方向の下側でかつ壁部26及び壁部28(
図1参照)よりも上側に配置されている。言い換えると、野縁受82のX方向の両端部は、後述する吊ボルト88及びハンガー89により支持されている。野縁受82の底部には、Z方向に貫通する貫通孔82A(
図3(B)参照)が形成されている。
【0034】
(野縁)
野縁84は、野縁受82の延在方向であるX方向と直交するY方向に延在されている。また、野縁84は、Y方向から見た場合の断面形状がZ方向の上側に向けて開口した略U字状の鋼材で構成されている。野縁84のX方向の両端部には、それぞれZ方向の下側に向けて開口した逆U字状の被引掛部84Aが形成されている。また、野縁84の底部におけるX方向の中央には、Z方向に貫通する図示しない貫通孔が形成されている。
【0035】
さらに、野縁84は、野縁受82のZ方向の下側にX方向に間隔をあけて複数配置されている。野縁84のZ方向の下面には、天井材52がネイル53により固定されている。なお、複数の野縁84のうち、壁部26の上側及び壁部28(
図1参照)の上側に配置された野縁84は、ネジ62によりランナー66の上面に固定されている。言い換えると、ネジ62は、天井下地材56のX方向の端部を壁部26、壁部28の上端に固定している。
【0036】
(クリップ)
クリップ86は、Y方向に沿った平板状の上壁86Aと、上壁86AのY方向の端部からZ方向の下側に延びる縦壁86Bと、縦壁86BのX方向の両端部にそれぞれ形成されZ方向の上側に開口するJ字状に形成された引掛部86Cとを有する。また、クリップ86は、縦壁86Bが図示しないネジ等の取付部材によって野縁受82の側壁に固定されている。そして、クリップ86は、野縁84の被引掛部84Aが引掛部86Cに引掛けられることにより、野縁84及び天井材52を支持している。言い換えると、野縁受82は、クリップ86を介して野縁84及び天井材52を支持している。
【0037】
(ハンガー)
図5(A)に示すように、ハンガー89は、一例として、X方向から見た場合に略J字状に形成されている。言い換えると、ハンガー89は、平面視で矩形板状の鋼材を3箇所で屈曲させて形成されている。ハンガー89は、Y方向に延びる上壁部89Aと、上壁部89Aの一端からZ方向の下側へ延びる縦壁部89Bと、縦壁部89Bの下端からY方向に延びる下壁部89Cと、下壁部89Cの縦壁部89B側とは反対側の端部で上側に延びる縦壁部89Dとを有する。
【0038】
上壁部89Aには、後述する吊ボルト88が挿通される挿通孔89Eが形成されている。下壁部89Cには、ネジ62がZ方向に挿通される図示しない貫通孔が形成されている。縦壁部89Bと縦壁部89DとはY方向に対向している。縦壁部89Bと縦壁部89Dとの間隔の大きさは、野縁受82(
図3(B)参照)のY方向の幅の大きさよりも僅かに大きい。そして、ハンガー89は、下壁部89C上に野縁受82が載置されることにより、野縁受82を支持している。
【0039】
(吊ボルト)
図3(A)に示す吊ボルト88は、丸鋼の軸方向(長さ方向)の全体にネジが切られたボルトであり、固定対象の固定位置(固定高さ)の調整が可能となっている。また、吊ボルト88は、Z方向を軸方向として、野縁受82のX方向の端部に設けられている。吊ボルト88のZ方向の上部は、第2床梁76の下フランジ76Cに複数のナット92を用いて固定されている。吊ボルト88のZ方向の下部には、ハンガー89の上壁部89Aが複数のナット94を用いて固定されている。
【0040】
ここで、野縁受82のX方向の両端部は、吊ボルト88及びハンガー89を用いて、第2床梁76に対して固定され、吊り下げられた状態とされている。そして、野縁84及び天井材52は、野縁受82に支持されている。言い換えると、吊ボルト88及びハンガー89は、天井下地材56のX方向(延在方向)のそれぞれの端部を第2床梁76に固定する補助固定部材の一例である。
【0041】
既述のように、天井材52のX方向の両端部は、壁部26(
図1参照)及び壁部28に固定されている。つまり、天井材52は、壁部に固定されていない独立天井ではなく、非独立天井とされている。
【0042】
<連結部材>
図4(A)、(B)に示すように、連結部材58は、一例として、吊ボルト96と、防振金具97と、ネジボルト98と、ハンガー99とを含んで構成されている。そして、連結部材58は、天井下地材56のX方向の壁部26、28(
図1参照)側の端部よりもX方向の内側の部位(本実施形態では中央部)と第1床梁74(床梁54)とをZ方向に連結している。
【0043】
(吊ボルト)
吊ボルト96は、丸鋼の軸方向(長さ方向)の全体にネジが切られたネジボルトであり、固定対象の固定位置(固定高さ)の調整が可能となっている。また、吊ボルト96は、Z方向を軸方向として、野縁受82のX方向の中央部とZ方向に対向する位置に設けられている。吊ボルト96のZ方向の上部は、第1床梁74の下フランジ74Cに複数のナット92を用いて固定されている。吊ボルト96のZ方向の下部は、後述するハウジング102の貫通孔102B(
図5(B)参照)に挿通されている。そして、吊ボルト96の下部には、複数のナット94を用いてハウジング102が固定されている。
【0044】
(防振金具)
防振金具97は、吊ボルト96を介して第1床梁74の下フランジ74Cに連結されている。
図5(B)に示すように、防振金具97は、一例として、ハウジング102と、弾性体の一例としての防振ゴム104と、ワッシャ106とで構成されている。ハウジング102は、Y方向から見た場合に矩形の枠状に形成された鋼材で構成されており、Z方向に対向する底壁及び上壁と、X方向に対向する2つの側壁とを有する。ハウジング102の底壁には、Z方向に貫通した貫通孔102Aが形成されている。ハウジング102の上壁には、Z方向に貫通した貫通孔102Bが形成されている。
【0045】
防振ゴム104は、ハウジング102の底壁の上面に固定された円柱状の上部104Aと、底壁の下面に固定された円錐台状の下部104Bとを有する。上部104Aの上面には、ワッシャ106が取付けられている。また、防振ゴム104には、Z方向に貫通する貫通孔104Cが形成されている。貫通孔104Cは、貫通孔102A及びワッシャ106の貫通孔106Aと連通しており、後述するネジボルト98(
図4(A)参照)を挿通可能な大きさとされている。防振ゴム104は、ハウジング102において、Z方向の振動の伝達を抑制する(振動を減衰させる)ようになっている。
【0046】
(ネジボルト)
図4(A)に示すネジボルト98は、一例として、吊ボルト96と同様の構成とされているが、吊ボルト96よりも軸方向(Z方向)の長さが短い点が吊ボルト96とは異なっている。また、ネジボルト98は、貫通孔102A(
図5(B)参照)に挿通されると共に複数のナット94が螺合されることにより、防振金具97とハンガー99とを連結している。
【0047】
(ハンガー)
図6(A)に示すように、ハンガー99は、一例として、X方向から見た場合に略J字状に形成されている。言い換えると、ハンガー99は、平面視で矩形板状の鋼材を3箇所で屈曲させて形成されている。ハンガー99は、Y方向に延びる上壁部99Aと、上壁部99Aの一端からZ方向の下側へ延びる縦壁部99Bと、縦壁部99Bの下端からY方向に延びる下壁部99Cと、下壁部99Cの縦壁部99B側とは反対側の端部で上側に延びる縦壁部99Dとを有する。
【0048】
上壁部99Aには、ネジボルト98(
図4(A)参照)が挿通される挿通孔101が形成されている。下壁部99Cには、図示しないネジがZ方向に挿通される貫通孔103が形成されている。また、縦壁部99Bと縦壁部99DとはY方向に対向している。縦壁部99Bと縦壁部99Dとの間隔の大きさは、野縁受82(
図4(B)参照)のY方向の幅の大きさよりも僅かに大きい。そして、ハンガー99は、下壁部99C上に野縁受82が載置されることにより、野縁受82を支持している。野縁受82は、図示しないネジにより下壁部99Cに固定されている。なお、
図4(A)に示すように、野縁受82における連結部材58が設けられた部位では、一例として、クリップ86(
図3(A)参照)が用いられておらず、野縁受82と野縁84とが別体として存在している。
【0049】
図4(B)に示すように、ハウジング102の上部は、貫通孔102Bに吊ボルト96が挿通された状態で吊ボルト96にナット94を螺合させることにより、吊ボルト96に取付けられている。また、ハウジング102のワッシャ106の上面には、ハンガー99の上壁部99Aが載置されている。そして、ハウジング102の下部には、上壁部99Aの挿通孔101(
図6(A)参照)、貫通孔106A、貫通孔104C及び貫通孔102A(
図5(B)参照)にネジボルト98が挿通された状態で、ネジボルト98にナット94を螺合させることにより、ハンガー99が取付けられている。そして、ハンガー99は、野縁受82を支持する。
【0050】
〔作用〕
次に、第1実施形態の作用について説明する。なお、
図1から
図6(A)までを参照して説明する。
【0051】
天井構造40では、二階部分14で居住者の動作等によって振動が発生した場合に、二階部分14から一階部分12への振動の伝達が、連結部材58の防振ゴム104によって抑制される。また、天井構造40では、天井下地材56のX方向の端部と壁部26、28の上端とがネジ62によって固定されている。このため、二階部分14で発生した振動が連結部材58を介して天井下地材56に伝達されることがあっても、この振動が、壁部26、28の剛性及び減衰作用によって低減される。このようにして、二階部分14の振動が一階部分12に伝達されるのを抑制することができる。
【0052】
さらに、天井構造40では、天井下地材56の端部と壁部26、28の上端とがネジ62によって固定されていることで、独立天井方式の壁と天井材とを用いた構造に比べて、地震発生時に天井材52の端部と壁部26、28とが接触することが抑制される。これにより、地震発生時に壁部26、28から天井材52に衝撃力が作用して天井材52が落下することが抑制されるので、地震発生時の天井材52の耐震性を向上させることができる。
【0053】
また、天井構造40では、第2床梁76と天井下地材56の端部とが吊ボルト88によって固定される。つまり、天井下地材56の端部は、壁部26、28に固定されるだけでなく、第2床梁76にも固定されるので、地震発生時に天井下地材56及び天井材52が過大に変位し難くなる。これにより、地震発生時の天井材52の耐震性をさらに向上させることができる。
【0054】
建物10では、天井構造40を適用することにより、壁部26、28にネジ62を用いて天井下地材56を固定した部位について、防振のための連結部材58を設けなくてもよい。これにより、二階部分14の振動が一階部分12に伝達されるのを、必要最小限の数の連結部材58で抑制することができる。また、建物10では、壁部26、28に天井下地材56を固定するため、壁部26、28に天井下地材56を固定しない構成に比べて、天井部32の施工を行い易くなる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る建物の天井構造の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材、部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。「基本的に同一」とは、一部の形状が異なりあるいは大きさが僅かに異なっていても、同様の機能を有する構成であれば同一の構成とみなすことを意味する。
【0056】
図7には、第2実施形態に係る建物の天井構造の一例としての天井構造110が示されている。天井構造110は、第1実施形態の建物10(
図1参照)において、天井構造40(
図1参照)に換えて設けられている。また、天井構造110は、天井材52と、床梁54と、天井下地材56と、連結部材112と、ネジ62(
図3(A)参照)とを有する。
【0057】
天井構造110における野縁受82は、壁部26(
図1参照)から第1床梁74までと、第1床梁74から壁部28(
図1参照)までの2つに分割されている。また、野縁受82は、上面が第1床梁74の下フランジ74Cとほぼ同じ高さとなる位置に配置される。なお、天井構造110では、一例として、第1床梁74に対して壁部26側の構造と壁部28側の構造とが同様の構成とされている。このため、第1床梁74に対する壁部26側の構造について図示及び説明して、第1床梁74に対する壁部28側の構造の図示及び説明を省略する。
【0058】
<連結部材>
連結部材112は、一例として、ネジボルト114と、フック116と、横架材の一例としての補強部材118と、ハンガー89と、防振金具97と、ネジボルト98と、ハンガー99と、ネジボルト122とを含んで構成されている。ハンガー89、防振金具97及びハンガー99は、連結金具の一例である。そして、連結部材112は、天井下地材56の壁部26、28(
図1参照)側の端部よりもX方向の内側の部位と、第1床梁74(床梁54)とをZ方向に連結している。
【0059】
(ネジボルト)
ネジボルト114は、固定対象の固定位置(固定高さ)の調整が可能となっている。また、ネジボルト114のZ方向の下部は、第1床梁74の下フランジ74Cに複数のナット92を用いて固定されている。ネジボルト114のZ方向の上部は、後述するフック116の貫通孔116D(
図6(B)参照)に挿通され、複数のナット92を用いて下壁部116Bに固定されている。
【0060】
(フック)
図6(B)に示すように、フック116は、一例として、X方向から見た場合にL字状に形成されている。また、フック116は、Z方向に延びる縦壁部116Aと、縦壁部116Aの下端からY方向の一方側に延びる下壁部116Bとを有する。縦壁部116Aには、Y方向に貫通した3つの貫通孔116Cが形成されている。貫通孔116Cの大きさは、ネジ117(
図7参照)が挿通可能な大きさとされている。下壁部116Bには、ネジボルト114(
図7参照)がZ方向に挿通される貫通孔116Dが形成されている。
【0061】
(補強部材)
図7に示す補強部材118は、第1床梁74から壁部26側の第2床梁76(
図1参照)までX方向に延在されている。また、補強部材118は、一例として、X方向から見た場合の断面形状が四角筒状とされた鋼材で構成されている。さらに、補強部材118のY方向に対向する側壁118AのX方向の両端部には、フック116及びハンガー89を取付けるための図示しない締結孔が形成されている。
【0062】
補強部材118のX方向における第1床梁74側の端部には、既述のように、ネジ117によりフック116が取付けられている。そして、補強部材118は、フック116がネジボルト114により下フランジ74CにZ方向の上側から固定されることで、第1床梁74側の端部が支持されている。
【0063】
なお、図示を省略するが、補強部材118のX方向における壁部26(
図1参照)側の端部には、同様に、ネジ117によりフック116が取付けられている。そして、補強部材118は、フック116がネジボルト114により下フランジ76C(
図3(A)参照)にZ方向の上側から固定されることで、壁部26側の端部が支持されている。言い換えると、補強部材118は、天井下地材56よりもZ方向の上側において、第1床梁74と第2床梁76とに架設され、X方向に沿って延びている。
【0064】
また、補強部材118のX方向における両端部には、それぞれ図示しないネジによりハンガー89が固定されている。ハンガー89には、防振金具97が固定されている。具体的には、防振金具97は、防振ゴム104及びワッシャ106が設けられた部位が上側となるように配置されている。つまり、ワッシャ106が防振ゴム104よりも下側に位置している。そして、ワッシャ106に対して下側からハンガー89の上壁部89Aが重ねられた状態で、ネジボルト98にナット92が螺合されることにより、防振金具97にハンガー89が固定されている。
【0065】
防振金具97の下側(防振ゴム104側とは反対側)には、ハンガー99の上壁部99Aが固定されている。そして、ハンガー99は、野縁受82を支持している。このようにして、補強部材118は、第1床梁74とZ方向に対向する部分で分割された野縁受82(天井下地材56)を支持している(補強している)。補強部材118の壁部26(
図1参照)側の端部については、第1床梁74側と同様の構成であるため、図示及び説明を省略する。
【0066】
(ネジボルト)
ネジボルト122は、固定対象の固定位置(固定高さ)の調整が可能となっている。また、ネジボルト122は、防振金具97にハンガー99を固定するために用いられている。
【0067】
ここで、ナット92、ネジボルト114及びフック116を用いて、第1床梁74と第2床梁76とに補強部材118を架設する。続いて、ハンガー89、ナット92、防振金具97、ネジボルト98、ハンガー99、ネジボルト122を用いて、補強部材118と野縁受82(天井下地材56)とを連結する。このようにして、野縁受82が補強部材118に対して吊り下げられた状態となる。
【0068】
〔作用〕
次に、第2実施形態の作用について説明する。なお、
図1、
図3及び
図7を参照して説明する。
【0069】
天井構造110では、二階部分14で居住者の動作等によって振動が発生した場合に、二階部分14から一階部分12への振動の伝達が、連結部材112の防振ゴム104によって抑制される。また、天井構造110では、天井下地材56のX方向の端部と壁部26、28の上端とがネジ62によって固定されている。このため、二階部分14で発生した振動が連結部材112を介して天井下地材56に伝達されることがあっても、この振動が壁部26、28の剛性及び減衰作用によって低減される。このようにして、二階部分14の振動が一階部分12に伝達されるのを抑制することができる。
【0070】
さらに、天井構造110では、天井下地材56の端部と壁部26、28の上端とがネジ62によって固定されていることで、独立天井方式の壁と天井材とを用いた構造に比べて、地震発生時に天井材52の端部と壁部26、28とが接触することが抑制される。これにより、地震発生時に壁部26、28から天井材52に衝撃力が作用して天井材52が落下することが抑制されるので、地震発生時の天井材52の耐震性を向上させることができる。
【0071】
また、天井構造110では、第2床梁76と天井下地材56の端部とがネジボルト114によって固定される。つまり、天井下地材56の端部は、壁部26、28に固定されるだけでなく、第2床梁76にも固定されるので、地震発生時に天井下地材56及び天井材52が過大に変位し難くなる。これにより、地震発生時の天井材52の耐震性をさらに向上させることができる。
【0072】
加えて、天井構造110では、床梁54と天井下地材56とを連結しにくい場所があった場合に、補強部材118に沿って(X方向に)ハンガー89、防振金具97及びハンガー99の位置をずらすことで、床梁54と天井下地材56とを連結することができる。このように、ハンガー89、防振金具97及びハンガー99の配置が床梁54の配置によって規制されにくくなるので、ハンガー89、防振金具97及びハンガー99の設置の自由度を高めることができる。
【0073】
建物10では、天井構造110を適用することにより、壁部26、28にネジ62を用いて天井下地材56を固定した部位について、防振のための連結部材112を設けなくてもよい。これにより、二階部分14の振動が一階部分12に伝達されるのを、必要最小限の数の連結部材112で抑制することができる。
【0074】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0075】
(変形例)
図8には、天井構造110(
図7参照)の変形例として、天井構造120が示されている。天井構造120は、天井構造110において、ハンガー89の上壁部89Aが防振金具97よりもZ方向の上側に位置するようにハンガー89と防振金具97とを連結(固定)すると共に、フック116をネジボルト114の上部に配置した構造とされている。このように、連結部材112を構成する各部材の配置を変更することで、補強部材118と天井下地材56とのZ方向の間隔を調整することができる。
【0076】
(他の変形例)
天井構造40において、吊ボルト88を取り除いて、天井下地材56を壁部26のみに固定してもよい。
【0077】
壁部26、28への天井下地材56の固定は、天井下地材56を直接、壁部26、28へ固定する構成に限らず、ブラケット等の別部材を介して固定してもよい。また、壁部26、28に対して野縁84を固定せずに、野縁受82を固定してもよい。
【0078】
天井材52は、石膏ボード以外の材料で構成されていてもよい。また、天井材52はZ方向に1枚、複数枚のいずれで配置されていてもよい。
【0079】
連結部材58、112を連結する第1床梁74は、X方向の中央部に配置されたものに限らず、X方向の中央部に対して壁部26側、壁部28側に配置されたものであってもよい。また、連結部材58、112を連結する第1床梁74の数は、1つに限らず、複数あってもよい。さらに、連結部材58、112は、下フランジ74CのX方向の一方側だけでなく他方側にも連結してよい。
【0080】
固定部材は、ネジ62に限らず、ボルト及びナット、ビス、ネイルなどを用いてもよい。