特許第6837898号(P6837898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837898
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/12 20130101AFI20210222BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20210222BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20210222BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20210222BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20210222BHJP
【FI】
   H01G11/12
   H01G11/06
   H01G11/50
   H01M2/16
   H01M10/052
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-77000(P2017-77000)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-181982(P2018-181982A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】加納 幸司
(72)【発明者】
【氏名】横島 克典
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/112068(WO,A1)
【文献】 特開2007−067105(JP,A)
【文献】 特開2011−204378(JP,A)
【文献】 特開2013−089625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/12
H01G 11/06
H01G 11/50
H01M 10/052
H01M 50/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極がセパレータを介して交互に積層された第1の電極ユニットと、
正極と負極がセパレータを介して交互に積層された第2の電極ユニットと、
正極と負極がセパレータを介して交互に積層され、前記第1の電極ユニットと前記第2の電極ユニットの間に位置する第3の電極ユニットと、
前記第1の電極ユニットと前記第3の電極ユニットの間に配置され、前記第1の電極ユニット側の第1の主面と、前記第3の電極ユニット側の第2の主面とを有する金属箔である第1の集電体を備える第1のリチウムイオン供給源と、
前記第2の電極ユニットと前記第3の電極ユニットの間に配置され、前記第2の電極ユニット側の第3の主面と、前記第3の電極ユニット側の第4の主面とを有する金属箔である第2の集電体を備える第2のリチウムイオン供給源と
前記第1の電極ユニット、前記第2の電極ユニット、前記第3の電極ユニット、前記第1のリチウムイオン供給源及び前記第2のリチウムイオン供給源が浸漬されている電解液と
を具備し、
前記第1の電極ユニット、前記第2の電極ユニット及び前記第3の電極ユニットが備える負極には、前記第1の主面に貼付された第1の厚みを有する第1の金属リチウム、前記第2の主面に貼付され、前記第1の厚みより小さい第2の厚みを有する第2の金属リチウム、前記第3の主面に貼付された前記第1の厚みを有する第3の金属リチウム及び前記4の主面に貼付された前記第2の厚みを有する第4の金属リチウムからリチウムイオンのプレドープがなされている
電気化学デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学デバイスであって、
前記第1の厚みと前記第2の厚みの比は3:1から3:2の範囲内である
電気化学デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学デバイスであって、
前記第1の電極ユニット、前記第2の電極ユニット及び前記第3の電極ユニットが備える正極は、多孔金属箔である正極集電体と、正極活物質を含み、前記正極集電体の表裏両面に積層された正極活物質層を備え、
前記第1の電極ユニット、前記第2の電極ユニット及び前記第3の電極ユニットが備える負極は、多孔金属箔である負極集電体と、負極活物質を含み、前記負極集電体の表裏両面に積層された負極活物質層を備える
電気化学デバイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気化学デバイスであって、
前記第1の電極ユニット、前記第2の電極ユニット及び前記第3の電極ユニットは互いに同一の厚みを有する
電気化学デバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電気化学デバイスであって、
リチウムイオンキャパシタである
電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極ユニットから構成された電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
大容量キャパシタはエネルギー回生やロードレベリング等の大電力による充放電の繰り返しが要求される分野にて利用が進んでいる。大容量キャパシタとして従来は電気二重層キャパシタが多く利用されてきたが、近年ではエネルギー密度が高いリチウムイオンキャパシタの利用が検討されている。
【0003】
リチウムイオンキャパシタはリチウムイオンを予め負極にドープしておくプレドープが必要であるが、リチウムイオンキャパシタを長期間安定的に利用するためには負極のプレドープ状態を均一とすることが重要となる。
【0004】
ここで、リチウムイオンのプレドープは、負極に電気的に接続された金属リチウムを電解液に浸すことによって行われる。リチウムイオンは電解液中を移動して負極に到達するため、負極とリチウムイオン供給源の位置関係によってプレドープ状態が影響を受ける。
【0005】
例えば、特許文献1にはセルを構成する複数の電極ユニットの両側にリチウムイオン供給源を配置することによって、負極へリチウムイオンを供給する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/112068号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、電極ユニットが2組の場合には部品点数が多くなるため、電極ユニット間にリチウムイオン供給源を配置することでプレドープを進めることができる。電極ユニットが3組以上の場合には電極ユニットにおけるプレドープの比率が変わり、ドープ量が不均一となるおそれがある。さらに、電極ユニットの端子面積当たりのリチウム両を調整する必要がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、生産性に優れ、負極のプレドープ状態を均一化することが可能な電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、第1の電極ユニットと、第2の電極ユニットと、第3の電極ユニットと、第1のリチウムイオン供給源と、第2のリチウムイオン供給源と、電解液とを具備する。
上記第1の電極ユニットは、正極と負極がセパレータを介して交互に積層されている。
上記第2の電極ユニットは、正極と負極がセパレータを介して交互に積層されている。
上記第3の電極ユニットは、正極と負極がセパレータを介して交互に積層され、上記第1の電極ユニットと上記第2の電極ユニットの間に位置する。
上記第1のリチウムイオン供給源は、上記第1の電極ユニットと上記第3の電極ユニットの間に配置され、上記第1の電極ユニット側の第1の主面と、上記第3の電極ユニット側の第2の主面とを有する金属箔である第1の集電体を備える。
上記第2のリチウムイオン供給源は、上記第2の電極ユニットと上記第3の電極ユニットの間に配置され、上記第2の電極ユニット側の第3の主面と、上記第3の電極ユニット側の第4の主面とを有する金属箔である第2の集電体を備える。
上記電解液は、上記第1の電極ユニット、上記第2の電極ユニット、上記第3の電極ユニット、上記第1のリチウムイオン供給源及び上記第2のリチウムイオン供給源が浸漬されている。
上記第1の電極ユニット、上記第2の電極ユニット及び上記第3の電極ユニットが備える負極には、上記第1の主面に貼付された第1の厚みを有する第1の金属リチウム、上記第2の主面に貼付され、上記第1の厚みより小さい第2の厚みを有する第2の金属リチウム、上記第3の主面に貼付された上記第1の厚みを有する第3の金属リチウム及び上記4の主面に貼付された上記第2の厚みを有する第4の金属リチウムからリチウムイオンのプレドープがなされている。
【0010】
この構成によれば、第1の金属リチウムから放出されるリチウムイオンは、第1の金属リチウムが面する第1の電極ユニットに多くが供給され、第2の金属リチウムから放出されるリチウムイオンは、第2の金属リチウムが面する第3の電極ユニットに多くが供給される。また、第3の金属リチウムから放出されるリチウムイオンは、第3の金属リチウムが面する第2の電極ユニットに多くが供給され、第4の金属リチウムから放出されるリチウムイオンは、第4の金属リチウムが面する第3の電極ユニットに多くが供給される。第1の電極ユニットには第1の金属リチウムから、第2の電極ユニットには第3の金属リチウムからリチウムイオンが供給されるのに対し、第3の電極ユニットには第2の金属リチウム及び第4の金属リチウムの両者からリチウムイオンが供給される。ここで、第2の金属リチウム及び第4の金属リチウムの厚み(第2の厚み)は、第1の金属リチウム及び第3の金属リチウムの厚み(第1の厚み)より小さいため、第3の電極ユニットに供給されるリチウムイオンの量は、第1の電極ユニット及び第2の電極ユニットと同等となり、各電極ユニットの間でリチウムイオンのドープ量を均一化することが可能である。
【0011】
上記第1の厚みと上記第2の厚みの比は3:1から3:2の範囲内であってもよい。
【0012】
第1の厚みと第2の厚みの比は、電極ユニットの厚み(正極と負極の積層数)に応じて調整することが可能であり、3:1から3:2の範囲内が好適である。
【0013】
上記第1の電極ユニット、上記第2の電極ユニット及び上記第3の電極ユニットが備える正極は、多孔金属箔である正極集電体と、正極活物質を含み、上記正極集電体の表裏両面に積層された正極活物質層を備え、上記第1の電極ユニット、上記第2の電極ユニット及び上記第3の電極ユニットが備える負極は、多孔金属箔である負極集電体と、負極活物質を含み、上記負極集電体の表裏両面に積層された負極活物質層を備えてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1のリチウムイオン供給源及び第2のリチウムイオン供給源から放出されたリチウムイオンは正極、負極及びセパレータによって妨げられることなく各電極ユニット内を移動することができ、各電極ユニット内においてリチウムイオンのドープ量を均一化することが可能となる。
【0015】
上記第1の電極ユニット、上記第2の電極ユニット及び上記第3の電極ユニットは互いに同一の厚みを有してもよい。
【0016】
この構成によれば、同一構造の電極ユニットを第1の電極ユニット、第2の電極ユニット及び第3の電極ユニットとして利用することが可能であると共に各電極ユニット内においてリチウムイオンのドープ量を均一化することが可能となる。
【0017】
上記電気化学デバイスは、リチウムイオンキャパシタであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、生産性に優れ、負極のプレドープ状態を均一化することが可能な電気化学デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る電気化学デバイスの斜視図である。
図2】同電気化学デバイスの断面図である。
図3】同電気化学デバイスが備える電極ユニットの断面図である。
図4】同電気化学デバイスの拡大図である。
図5】同電気化学デバイスにおけるリチウムイオンプレドープの態様を示す模式図である。
図6】本発明の実施例及び比較例に係る電気化学デバイスの構成及び抵抗上昇率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る電気化学デバイスについて説明する。
【0021】
[電気化学デバイスの構造]
図1は本実施形態に係る電気化学デバイス100の斜視図であり、図2は電気化学デバイス100の断面図である。図2図1のA−A線での断面図である。
【0022】
電気化学デバイス100はリチウムイオンのプレドープが必要な電気化学デバイスであり、リチウムイオンキャパシタとすることができる。また電気化学デバイス100はリチウムイオン電池等のリチウムイオンのプレドープが必要な他の電気化学デバイスであってもよい。以下の説明では電気化学デバイス100はリチウムイオンキャパシタであるものとする。
【0023】
図1及び図2に示すように、電気化学デバイス100は、第1電極ユニット101、第2電極ユニット102、第3電極ユニット103、第1リチウムイオン供給源104、第2リチウムイオン供給源105、外装フィルム106、正極端子107及び負極端子108を備える。以下、第1電極ユニット101、第2電極ユニット102、第3電極ユニット103、第1リチウムイオン供給源104及び第2リチウムイオン供給源105の積層体を電極体109とする。
【0024】
第1電極ユニット101、第2電極ユニット102及び第3電極ユニット103はそれぞれが蓄電可能なユニットである。第1電極ユニット101、第2電極ユニット102及び第3電極ユニット103は同一構造を有するものとすることができる。
【0025】
図3は、第1電極ユニット101、第2電極ユニット102及び第3電極ユニット103として利用することが可能な電極ユニット110の模式図である。同図に示すように電極ユニット110は正極120、負極130及びセパレータ140を備える。
【0026】
正極120は、正極集電体121及び正極活物質層122を備える。正極集電体121は多数の貫通孔が形成された多孔金属箔であり、例えばアルミニウム箔である。正極集電体121の厚みは例えば0.03mmである。
【0027】
正極活物質層122は、正極集電体121の表裏両面に形成されている。正極活物質層122は正極活物質とバインダ樹脂が混合されたものとすることができ、さらに導電助剤を含んでもよい。正極活物質は、電解液中のリチウムイオン及びアニオンが吸着可能な材料、例えば活性炭やポリアセン炭化物等である。
【0028】
バインダ樹脂は、正極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばスチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0029】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、正極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子等であってもよい。
【0030】
負極130は、負極集電体131及び負極活物質層132を備える。負極集電体131は、多数の貫通孔が形成された多孔金属箔であり、例えば銅箔である。負極集電体131の厚みは例えば0.015mmである。
【0031】
負極活物質層132は、負極集電体131の表裏両面に形成されている。負極活物質層132は負極活物質とバインダ樹脂が混合されたものとすることができ、さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質は、電解液中のリチウムイオンを吸蔵可能な材料、例えば難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、グラファイトやソフトカーボン等の炭素系材料や、Si、SiOなどの合金系材料、または、それらの複合材料を用いることができる。
【0032】
バインダ樹脂は、負極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばスチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0033】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、負極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子等であってもよい。
【0034】
セパレータ140は、正極120と負極130を隔て、電解液中に含まれるイオンを透過する。セパレータ140は、織布、不織布又は合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができ、例えばオレフィン系樹脂を主材料としたものとすることができる。
【0035】
正極120、負極130及びセパレータ140は、図3に示すように、正極120と負極130がセパレータ140を介して交互となるように積層され、セパレータ140を除く最下層及び最上層は負極130となるように構成されている。正極120及び負極130の積層数は特に限定されず、例えば正極120が9層、負極130が10層等とすることができる。
【0036】
上記構造を有する電極ユニット110を第1電極ユニット101、第2電極ユニット102及び第3電極ユニット103として利用することができる。各電極ユニットの正極集電体121は直接又は図示しない配線を介して正極端子107に電気的に接続され、各電極ユニットの負極集電体131は直接又は図示しない配線等によって負極端子108に電気的に接続されている。
【0037】
第1リチウムイオン供給源104は、第1電極ユニット101と第3電極ユニット103の間に配置され、各電極ユニットの負極130にリチウムイオンを供給する。図4は、電極体109の拡大図である。同図に示すように、第1リチウムイオン供給源104は、リチウム用集電体151、第1金属リチウム152及び第2金属リチウム153を備える。
【0038】
リチウム用集電体151は、金属箔であり、例えば銅箔である。リチウム用集電体151は、孔径は数十〜数百μm程度の貫通孔が多数形成された多孔金属箔であってもよく、貫通孔を有しない金属箔であってもよい。リチウム用集電体151は、各電極ユニットの負極集電体131と直接又は負極端子108を介して電気的に接続されている。
【0039】
図4に示すように、リチウム用集電体151の主面のうち、第1電極ユニット101側の面を第1の主面151aとし、第3電極ユニット103側の面を第2の主面151bとする。
【0040】
第1金属リチウム152は圧着等によって第1の主面151aに貼付され、第2金属リチウム153は圧着等によって第2の主面151bに貼付されている。図4に示すように、第1金属リチウム152の厚みを第1の厚みD1とし、第2金属リチウム153の厚みを第2の厚みD2とする。
【0041】
ここで、第1の厚みD1は第2の厚みD2より大きい。具体的には比D1:D2が3:1から3:2の範囲が好適であり、特にD1:D2は2:1がより好適である。
【0042】
第2リチウムイオン供給源105は、第2電極ユニット102と第3電極ユニット103の間に配置され、各電極ユニットの負極130にリチウムイオンを供給する。図4に示すように、第2リチウムイオン供給源105は、リチウム用集電体161、第3金属リチウム162及び第4金属リチウム163を備える。
【0043】
リチウム用集電体161は、金属箔であり、例えば銅箔である。リチウム用集電体161は、孔径は数十〜数百μm程度の貫通孔が多数形成された多孔金属箔であってもよく、貫通孔を有しない金属箔であってもよい。リチウム用集電体161は、各電極ユニットの負極集電体131と直接又は負極端子108を介して電気的に接続されている。
【0044】
図4に示すように、リチウム用集電体161の主面のうち、第2電極ユニット102側の面を第3の主面161aとし、第3電極ユニット103側の面を第4の主面161bとする。
【0045】
第1金属リチウム162は圧着等によって第3の主面161aに貼付されている。第2金属リチウム163は圧着等によって第4の主面161bに貼付されている。図4に示すように、第3金属リチウム162は第1金属リチウム152と同一の厚みD1を有し、第4金属リチウム163は第2金属リチウム153と同一の厚みD2を有する。
【0046】
上記のように第1の厚みD1は第2の厚みD2より大きく、比D1:D2が3:1から3:2の範囲が好適であり、特にD1:D2は2:1がより好適である。
【0047】
外装フィルム106は、電極体109及び電解液を収容する収容空間を形成する。外装フィルム106はアルミニウム箔等の金属箔と樹脂を積層したラミネートフィルムであり、電極体109の周囲で融着され、封止されている。外装フィルム106に代えて、収容空間を封止可能な缶状部材等を利用してもよい。
【0048】
電極体109と共に収容空間に収容される電解液は特に限定されないが、例えばLiPF等を溶質とする溶液を用いることができる。
【0049】
正極端子107は、正極120の外部端子であり、各電極ユニットの正極120に電気的に接続されている。正極端子107は図1に示すように外装フィルム106の間から収容空間の外部へ引き出されている。正極端子107は導電性材料からなる箔や線材であってもよい。
【0050】
負極端子108は、負極130の外部端子であり、各電極ユニットの負極130に電気的に接続されている。負極端子108は図1に示すように外装フィルム106の間から収容空間の外部へ引き出されている。負極端子108は導電性材料からなる箔や線材であってもよい。
【0051】
[リチウムイオンのプレドープについて]
電気化学デバイス100の製造段階において、リチウム用集電体151及びリチウム用集電体161と負極集電体131を電気的に接続した状態で電極体109を電解液に浸漬させると、第1金属リチウム152、第2金属リチウム153、第3金属リチウム162及び第4金属リチウム163が溶解し、リチウムイオンが電解液中に放出される。リチウムイオンは電解液中を移動し、各電極ユニットが備える負極130の負極活物質層132中にドープ(プレドープ)される。
【0052】
図5はリチウムイオンのプレドープを示す模式図である。同図に示すように、第1金属リチウム152から放出されたリチウムイオンは多くが第1金属リチウム152が面する第1電極ユニット101に供給される(図中矢印A)。また、第2金属リチウム153から放出されたリチウムイオンは多くが第2金属リチウム153が面する第3電極ユニット103に供給される(図中矢印B)。
【0053】
第1金属リチウム152の厚みである第1の厚みD1は、第2金属リチウム153の厚みである第2の厚みD2より大きいので、第2金属リチウム153から第3電極ユニット103に供給されるリチウムイオンの量は第1金属リチウム152から第1電極ユニット101に供給されるリチウムイオンの量より小さくなる。
【0054】
同様に第3金属リチウム162から放出されたリチウムイオンは多くが第3金属リチウム162が面する第2電極ユニット102に供給される(図中矢印C)。また、第4金属リチウム163から放出されたリチウムイオンは多くが第4金属リチウム163が面する第3電極ユニット103に供給される(図中矢印D)。
【0055】
第3金属リチウム162の厚みである第1の厚みD1は、第4金属リチウム163の厚みである第2の厚みD2より大きいので、第4金属リチウム163から第3電極ユニット103に供給されるリチウムイオンの量は第3金属リチウム162から第2電極ユニット102に供給されるリチウムイオンの量より小さくなる。
【0056】
しかしながら第3電極ユニット103には、第2金属リチウム153及び第4金属リチウム163の両者からリチウムイオンが供給されるため、第3電極ユニット103に供給されるリチウムイオンの量は第1電極ユニット101及び第2電極ユニット102と同等となる。これにより、第1電極ユニット101、第2電極ユニット102及び第3電極ユニット103の間でリチウムイオンのドープ量が均一となり、電気化学デバイス100の長期安定性を確保することが可能である。
【0057】
仮に第1の厚みD1と第2の厚みD2を同等とすると、第3電極ユニット103に供給されるリチウムイオンの量が第1電極ユニット101及び第2電極ユニット102のそれぞれに供給されるリチウムイオンの量の倍程度になる。このため、各電極ユニットのドープ量を同程度にするには第1電極ユニット101の上層及び第2電極ユニット102の下層にさらにリチウムイオン供給源を配置する必要がある。
【0058】
これに対し、第1の厚みD1を第2の厚みD2より大きくすることにより、第1リチウムイオン供給源104及び第2リチウムイオン供給源105のみによって各電極ユニットにドープされるリチウムイオンの量を同程度にすることができる。また、各電極ユニットの厚さ(正極120と負極130の積層数)が異なる場合であっても、第1の厚みD1と第2の厚みD2の比を調整することにより、各電極ユニットのドープ量を均一とすることができる。
【0059】
また、第1リチウムイオン供給源104及び第2リチウムイオン供給源105は同一の構造を有するため、両者を作り分ける必要がなく、製造コストの低減が可能である。
【0060】
なお、上記のように各金属リチウムはプレドープにおいて溶解し、電気化学デバイス100の使用時には各金属リチウムは存在しない。しかしながら、リチウム用集電体151及びリチウム用集電体161に存在する金属リチウムの残渣等によってプレドープ前の金属リチウムの配置は判別可能である。
【0061】
[変形例]
上記のように電気化学デバイス100は第1電極ユニット101、第2電極ユニット102、第3電極ユニット103、第1リチウムイオン供給源104及び第2リチウムイオン供給源105が積層された電極体109を備える。ここで電気化学デバイス100は、複数の電極体109が積層され、収容空間に収容された構造を有するものであってもよい。この場合でもそれぞれの電極体109が備える電極ユニットの間でリチウムイオンのドープ量を均一化することが可能である。
【実施例】
【0062】
銅箔の両面に厚みの異なる金属リチウムを圧着し、上述のリチウムイオン供給源を作製した。正極と負極をセパレータを介して積層し、上述の電極ユニットを作製した。電極ユニット間にリチウムイオン供給源を配置して3つの電極ユニットを積層し、電極体を作製した。電極体に正極端子及び負極端子を接続し、電解液と共にラミネートフィルム内に封入した。これにより、実施例に係るリチウムイオンキャパシタを作製した。
【0063】
また、銅箔の両面に厚みが同一の金属リチウムを圧着し、リチウムイオン供給源を作製した。この他は実施例と同様の構成とし、比較例に係るリチウムイオンキャパシタを作製した。
【0064】
図6は、実施例及び比較例に係るリチウムイオンキャパシタにおける第1の厚みD1と第2の厚みD2の比を示す表である。
【0065】
実施例及び比較例に係るリチウムイオンキャパシタを40℃環境下で30日保管後、最外層の電極ユニットの外側の負極、それ以外の電極ユニットは中央部の負極にドープされたリチウムイオン量を評価した。セル容量を基準とした電流量100Cで充放電を行った。充電100CのCCCV1min、放電100C、2.2Vカットオフで充放電サイクルを実施した。初期の内部抵抗を100として、内部抵抗の変化率を評価した。なお、内部抵抗は放電曲線から求められる電圧降下から求めた。内部抵抗の変化率を図6に示す。
【0066】
同図に示すように、実施例に係るリチウムイオンキャパシタでは比較例に係るリチウムイオンキャパシタに比べて内部抵抗の上昇率が小さく、ドープ量の均一化により寿命が向上していることがわかる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
100…電気化学デバイス
101…第1電極ユニット
102…第2電極ユニット
103…第3電極ユニット
104…第1リチウムイオン供給源
105…第2リチウムイオン供給源
106…外装フィルム
109…電極体
110…電極ユニット
120…正極
121…正極集電体
122…正極活物質層
130…負極
131…負極集電体
132…負極活物質層
140…セパレータ
151、161…リチウム用集電体
152…第1金属リチウム
153…第2金属リチウム
162…第3金属リチウム
163…第4金属リチウム
図1
図2
図3
図4
図5
図6