(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837993
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】低温蒸気から電力を生成するシステム
(51)【国際特許分類】
F03G 6/00 20060101AFI20210222BHJP
F01K 21/00 20060101ALI20210222BHJP
F24S 90/00 20180101ALI20210222BHJP
F24S 60/30 20180101ALI20210222BHJP
【FI】
F03G6/00 521
F01K21/00 A
F24S90/00 900
F24S90/00 210
F24S60/30 010
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-556725(P2017-556725)
(86)(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公表番号】特表2018-521257(P2018-521257A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】AU2016000152
(87)【国際公開番号】WO2016172761
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年5月1日
(31)【優先権主張番号】2015901526
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】517141524
【氏名又は名称】インテックス ホールディングス ピーティーワイ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィス,ロジャー
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07735323(US,B2)
【文献】
米国特許第00991161(US,A)
【文献】
特開2012−102626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 1/00−21/06
F03G 1/00− 7/10
F24S 10/00−90/10
F25B 31/00−31/02、39/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の生成システムであって、
太陽エネルギーを用いて水を加熱するための太陽熱収集器であって、該加熱された水は第1のタンクに貯蔵される太陽熱収集器、
第1のパイプを通じて前記第1のタンクに接続され、前記加熱された水がその中で蒸気を生成するために噴霧されるヘッドスペースを有する容器であって、該ヘッドスペースの圧力は大気圧より低く、蒸気に変換されない水が該容器の底部でプールに集められる容器、
水を前記プールから汲み出し、第2のパイプを通じて前記第1のタンクに入れる第1のポンプ、
部分噴射タービンに蒸気をパイプで送る第3のパイプ、
蒸気を冷却して水にするように凝縮器へ第2のタンクから水を噴霧するために複数の水の出口を含むタービンの底部に位置する凝縮器、 及び、
第4のパイプを通じて前記第2のタンクに前記タービンの底部から水を汲み出す第2のポンプ、を含み、蒸気は発電装置を駆動する前記部分噴射タービンを駆動する電力の生成システム。
【請求項2】
前記パイプの各々を通じた流量が該パイプの寸法によって決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パイプの各々を通じた流量が個々のバルブによって制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のパイプを通じた流体の流量が少なくとも最初は前記第2のパイプを通じた流量より小さく、そのために前記ヘッドスペースの圧力の減少が生じる、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ヘッドスペースの作動圧力が約−14psigである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
過剰分を収容するように前記第2のタンクに接続される出口パイプを含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、部分噴射軸流タービンを用いて低温蒸気から電力を生成するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力は、現代社会における基本的な必要条件のうちの1つである。電気は太陽電池、風力タービン又は水力を含む多くの方法で生成することができるが、その生成の大部分は、動力の安定した連続的な生産を確実にするために蒸気タービンを用いて達成される。蒸気を生成するためには、化石燃料の燃焼又は核分裂によって生じる熱で水を沸騰させるように大きいボイラーが用いられる。
【0003】
既存の蒸気タービンは概して大きく、損失を克服しかつ財政面で現実的であるように100kW(キロワット)以上を生成するものである。蒸気の膨張により、多段の軸及び放射状の設計において吹出し面積を増加させる必要があり、一方で、高圧、温度及び回転速度により材料の選択が制限される。サイズの大きさと一般に水平な構成により、軸は、軸方向に沿って支持される必要がある。回転羽根の列(回転子)は、静止したノズル列(固定子)によって分離されなければならず、組み立ての複雑さは増大する。
【0004】
起動用の流体として蒸気を用いる長年にわたる発電装置の開発は、生成された電気のMW(メガワット)時当たりのコスト削減に主として焦点を定めてきた。そのために、蒸気タービン技術の改善は、出力、蒸気/ボイラー温度、ユニット信頼性/有効性又はこれらの組合せを増やすことに集中してきた。これらの改善は一般に単位原価を増やすものであり、財政面で現実的であることを維持するためには動力の出力を増加する必要がある。
【0005】
蒸気を生じるために太陽加熱の水を用いることは公知であり、流体の流れを加速し、接続された装置に動力出力を供給するために軸に接続される翼の形状の回転する列(概して「バケット」、「回転子」又は「動翼」と呼ばれる)に当たるように向ける翼の静止した列(概して「ノズル」、「固定子」又は「羽根」と呼ばれる)を含む軸流タービンを駆動する補助エネルギー入力として用いられる。
【0006】
流体密度がタービン入口で非常に高い場合には、多段タービンの第1の段(できる限り第1の数段)が「部分噴射」を有するように設計するのが一般的な慣行である。部分噴射は、ノズル通路が360°の外周の一部(すなわち切片)のみに提供される段の設計に関連するものである。従来の設計で用いられるような部分噴射の主な利点は、より大きいノズルを用いること、及び、動翼通路の高さ(すなわち放射状の長さ)を大きくすることができることであり、結果として、損失が減少するために効率が良くなる。これは、部分噴射タービンにおいて翼高がとても小さい可能性がある高密度の流れにとって特に重要である。
【0007】
従来のタービン、特に蒸気タービンでは、部分噴射は、高密度の流体で作動する第1の段(又は第1の数段)に適用されるだけである。それらの作動圧力及び密度が非常に減少してしまうので、以降の段では部分噴射を利用することができない。その結果、入口からの蒸気が広がり排気されるにつれて生じる高い体積流量を補うために、ノズル及び動翼通路領域を大きく増加させる必要がある。これらの高い体積流量の段の間に概して大きい通路領域を達成する一方で、適正な機械的な応力制限内で翼高を維持するために、全開(360°の)が必要となる。
【0008】
蒸気が全ての段を通過した時、残りの蒸気は凝縮される必要があるので、蒸気はタービンの底部から水として取り除くことができる。概して、凝縮された水は蒸気発生器で再利用されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、部分噴射蒸気タービンに用いるように低温蒸気から電力を生成するシステムを提供することである。個々の構成要素の詳細については、以下の名称の同時係属出願を参照のこと:
(a)低温蒸気での作動に適応する多段軸流タービンに用いるために熱水から低温蒸気を生成する方法及び装置。
(b)低温蒸気で作動するために適応する多段軸流タービン。
(c)低温蒸気で作動するために適応する多段軸流タービンに用いるための軸。
(d)低温蒸気で作動するために適応する多段軸流タービンに用いるための凝縮器システム。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それゆえに、本発明の一形態において以下の構成:太陽エネルギーを用いて水を加熱す
るための太陽熱収集器であって、加熱された水は第1のタンクに貯蔵される太陽熱収集器;
第1のパイプを通じて第1のタンクに接続され、加熱された水がその中で蒸気を生成するために噴霧されるヘッドスペースを有する容器であって、ヘッドスペースの圧力は
大気圧より低く、蒸気に変換されない水が容器の底部でプールに集められる容器;
水をプールから汲み出し、第2のパイプを通じて第1のタンクに入れる第1のポンプ;部分噴射タービンに蒸気をパイプで送る第3のパイプ;
残りの蒸気を冷却して水にするように凝縮器へ第2のタンクから水を噴霧するために複数の水の出口を含むタービンの底部に位置する凝縮器;及び、
第4のパイプを通じて第2のタンクにタービンの底部から水を汲み出す第2のポンプ;を含む電力の生成システムが提案され、そこで、蒸気は発電装置を駆動する部分噴射タービンを駆動する。
【0011】
好ましくは、各々のパイプを通じた流量はパイプの寸法によって決定される。
【0012】
好ましくは、各々のパイプを通じた流量は個々のバルブによって制御される。
【0013】
好ましくは、第1のパイプを通じた流体の流量は、少なくとも最初は第2のパイプを通じた流量より小さく、そのためにヘッドスペースの圧力の減少が生じる。
【0014】
好ましくは、ヘッドスペースの作動圧力は、約−14psig(ポンド毎平方インチゲージ)である。
【0015】
好ましくは、システムは、過剰分を収容するために第2のタンクに接続される出口パイプを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施態様による電力を生成するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な特徴、実施態様及び変形は、本発明を実行するために十分な情報を当業者に提供する以下の詳細な説明から認識することができる。詳細な説明は、いかなる形であれ上記の本発明の開示の範囲を制限するものとはみなされない。詳細な説明は、以下のように図面の番号を参照するものである。ここで、ほんの一例として添付の図面を参照する。
【0018】
以下の本発明の好ましい実施態様の詳細な説明は、添付の図面に関連する。可能である場合は、同じ部分や類似した部分を参照するために同じ参照番号が図面及び以下の記載の全体にわたって用いられる。本明細書で用いられるように、絶対的な配向を示唆する用語(例えば「上部」、「底部」、「前部」、「後部」、「水平」等)の使用は、解説用の便宜のためであり、特定の図で示される配向に関連するものである。しかしながら、様々な構成要素が、記載されたもの又は示されたものと同様である、あるいはそれらと異なる配向において実際に利用されてもよいと考えられるので、そのような用語は限定的に解釈されるべきではない。図面に示される特定の部品の寸法は、明瞭さ又は説明のために修正及び/又は誇張されている可能性がある。
【0019】
ここで図面に戻ると、最も単純な説明において、水を加熱し、その熱水から蒸気を生成して、電力を生成するために電気タービンで蒸気を使用する手段を含む、電力の生成のための電力生成システム10が示されている。
【0020】
本実施態様において、太陽エネルギー12は太陽熱パネル16を使用して水14を加熱するために用いられ、加熱された水は貯蔵タンク18に貯蔵される。水は、パイプ20を通じてタンク18とソーラーパネル16の間で循環する。熱損失を最小化するために、タンクは断熱材22を含む。
【0021】
タンク18からの水14は、密封された室26にパイプ24を経て供給される。水は、その長さに沿って複数の開口(図示せず)を概して有するシャワーヘッド30を用いてヘッドスペース28において噴霧される。噴霧された水は室26の底部でプール32において集められ、そこでポンプ34は、パイプ36を通じて貯蔵タンク18に水を戻すように供給する。バルブ38は、パイプ24及び36を通じて水の流れを制御するために用いることができる。
【0022】
パイプ24及び36の寸法を制御すること、又は、バルブ38を作動することのいずれによっても、パイプ36を通じた流量は、最初はパイプ24を通じた流量よりも大きく、室におけるヘッドスペース28の容積を増やし、それによりヘッドスペース28で真空が作成される。
大気圧が約14.7psia(重量ポンド毎平方インチ)であると、その圧力は、実際には−14psigに減少することができる。ヘッドスペース28の真空により、結果として摂氏100℃よりも非常に低い温度で噴霧された水が蒸気に変わる。
【0023】
蒸気はそれから部分噴射タービン42に蒸気パイプ40を経て供給されて、その蒸気によってタービンが回転し、生成器44がスピンして電力を生じる。蒸気がタービンの底部46に届くと、全ての蒸気が凝縮されるのを確実にするように、それは冷水の流れを浴びて、それから水は、ポンプ50を用いて凝縮器パイプ48を通じて抽出されて、タンク54へパイプ52を通じて供給される。タンクの水はそれから、タービンの真空も約−14psigで維持されるように選択あるいは制御されたパイプ48及びパイプ56を通じた流量でパイプ56を通じて底部46へ戻って再循環する。
【0024】
密封された室26及びタービン42が密封された環境及び真空において作動し、その結果、
大気圧において水の沸点より低い温度で水が蒸発して蒸気になり、更に、部分噴射タービンの動作を援助するということがここで認識される。
【0025】
貯蔵タンク18及びタンク54は、オーバーフローパイプ60を有するタンク54と結合パイプ58を通じて一緒に流動的に連結することができる。
【0026】
上記の参照は太陽で加熱された水を用いるものであるが、例えば地熱水あるいは他の手段によって加熱された水といった他の熱源の水が用いられてもよく、真空も、水ポンプ以外の他の手段によって生成することができる。
【0027】
加えて、システムは発電装置を駆動するために用いられるものであるが、回転電力の源を提供するために使用してもよい。
【0028】
本発明に対する更なる利点及び改善は、その範囲から逸脱することなく作成されてもよい。本発明は最も実用的でありかつ好適な実施態様であると考えられる態様で図と共に記載されているとはいえ、本明細書に開示される詳細に限定されないが、ありとあらゆる同等のデバイス及び装置を受け入れるように請求項の完全な範囲と一致する本発明の範囲及び趣旨の範囲内で変更がなされてもよいと認識される。本明細書全体にわたる従来技術の解説は、そのような従来技術がこの分野において広く公知の、あるいは共通の一般知識の一部を形成することを承認するものではないとみなされる。
【0029】
本明細書及び請求項において(ある場合には)、「含む:comprising」という語、及び、「comprises」や「comprise」といったその派生語は、各々の明示された完全体を含むが、1つ又はそれ以上の更なる完全体の包含を排除するものではない。
【符号の説明】
【0030】
12 太陽エネルギー
10 動力生成システム
14 水
16 加熱パネル
18 貯蔵タンク
20 パイプ
22 断熱材
24 パイプ
26 密封された室
28 ヘッドスペース
30 シャワーヘッド
32 プール
34 ポンプ
36 パイプ
38 バルブ
40 蒸気パイプ
42 部分噴射タービン
44 生成器
46 タービンの底部
48 凝縮器パイプ
50 ポンプ
52 パイプ
54 タンク
56 パイプ
58 結合パイプ
60 オーバーフローパイプ