特許第6838002号(P6838002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838002
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】金属帯の段付き圧延方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/26 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   B21B37/26
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-561806(P2017-561806)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公表番号】特表2018-519163(P2018-519163A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016061784
(87)【国際公開番号】WO2016193089
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年3月27日
(31)【優先権主張番号】15169819.8
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】317017955
【氏名又は名称】ギーベル・カルトヴァルツヴェルク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】シャルフェンノルト・シュテファン
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−161894(JP,A)
【文献】 特開2014−113629(JP,A)
【文献】 特開平10−277618(JP,A)
【文献】 特開昭63−144815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00−37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯(4)を段付き圧延する方法であって、
前記金属帯(4)が繰出リール装置(5)によって繰り出され、巻取リール装置()によって巻き取られ、前記金属帯(4)が圧延プロセス中に、2つのワークロール(1、2)の間に形成されるロール間隙(3)を通って案内され、かつ前記ロール間隙(3)が圧延プロセス中に的確に変更され、これにより、圧延プロセス中に前記金属帯(4)の帯厚さが長さ方向(7)において段状に変化する方法において、
前記ワークロール(1、2)によって前記金属帯(4)に加えられる圧延力(W)が、圧延プロセス中に一定であるように、前記金属帯(4)に加えられる帯張力が的確に制御され、
圧延プロセス中、ほぼ一定の圧延力(W)が、圧延プロセス中に前記ワークロール(1、2)の弾性変形が一定またはほぼ一定である範囲内でしか変化せず、
圧延プロセス中、前記巻取リール装置(6)によって加えられる前方帯張力(σ)および/または前記繰出リール装置(5)によって加えられる後方帯張力(σ)が制御され、
前記帯厚さを小さくするために前記ロール間隙(3)が縮小され、かつ前記前方帯張力(σ)および前記後方帯張力(σ)が増大され、
前記帯厚さを大きくするために前記ロール間隙(3)が拡大され、かつ前記前方帯張力(σ)および前記後方帯張力(σ)が減少されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
的確な帯張力の制御ならびに前記ワークロール(1、2)の回転数および位置調整速度の的確な制御により、前記金属帯(4)の前記段状に変化する帯厚さの間の移行部の幾何形状、前記移行部の勾配および移行部位(12、13、14、15)の半径が影響を受ける
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワークロール(1、2)の位置調整速度、ならびに/または前記ワークロール(1、2)、前記繰出リール装置(5)および/もしくは前記巻取リール装置(6)の回転数が、予め計算した速度データに基づいて制御される
ことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項4】
ロール間隙(3)を形成する少なくとも2つのワークロール(1、2)と、繰出リール装置(5)と、巻取リール装置(6)と、前記ワークロール(1、2)の位置調整、前記ワークロール(1、2)の回転数、ならびに前記繰出リール装置(5)および/または前記巻取リール装置(6)の回転数を調整可能および/または制御可能である調整および制御手段(9)とを備える、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法を実施するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に基づく金属帯の段付き圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
段付き圧延(Stufenwalzen、段階的圧延)は、金属帯の製造方法として、既に実践から「フレキシブル圧延」の概念でも知られている。この方法は、長さに沿って異なる帯厚さを有する金属帯の製造を可能にする。このために、圧延プロセス中に、第1のワークロールと第2のワークロールとの間に形成されるロール間隙を的確に操作する。こうして、ロール間隙を通って案内される金属帯の、異なる長さの区間または任意に交替する区間を、異なる帯厚さで圧延することができる。これにより、金属帯の長さに沿って割り振られた、帯厚さのより大きな帯区間と帯厚さのより小さな帯区間が生じる。加えてこれらの厚さの異なる帯区間を、形態の異なる勾配、即ち移行区間を介して相互に結合することができる。
【0003】
段付き圧延の方法により、負荷および重量が最適化された断面形状をもつ圧延製品を製造することができる。通常は、コイルからコイルへの、繰出リール装置および巻取リール装置を用いた帯圧延として設計されている。リールによって加えられる帯張力が、圧延プロセスを補助し、出来上がった金属帯を長さ方向、圧延方向においてより平らにまたはより真っ直ぐにすることは一般にも知られている。EP1908534A1(特許文献1)からは、巻取プロセスの障害を回避し、均一なコイル応力または巻取応力を保証するために、マスフロー変化および帯張力変化の発生を、リール駆動部の駆動調節および追加的なS字型ロール対によって補償する段付き圧延方法が知られている。
【0004】
特に重要なのは、従来の帯圧延の場合とは違い段付き圧延の場合は、圧延プロセス中に、金属帯の厚さの変化に基づいて常に圧延力の大きな変化が発生することである。帯厚さの所望の変化は確かに達成されるが、しかしその結果、圧延負荷およびスタンド負荷のかなりの変化ならびにそれに伴う弾性変形が発生する。これにより、ロール間隙の幾何形状および帯の幾何形状が望ましくなく変化し、それにより、圧延された帯の平坦性に悪影響が及ぶ。したがって圧延プロセス中の圧延力の変化は、すべてのロールの弾性変形、例えばロールの平坦化、ロールのたわみ、およびロールへの包埋を生じさせる。このことが、結果として帯プロファイルを変化させ、これは一様でない場合には平坦性の欠陥になる。これまではこれらの影響を、EP1074317B1(特許文献2)で開示されているように、ワークロールのたわみ曲線の修正によって低減することが試みられている。そのような修正なしでは、前述の圧延プロセスの際に、この荷重変動に特有の平坦でない金属帯プロファイルが生じるであろう。
【0005】
相対的な高さ変化およびそれに応じた相対的な長さ変化は、圧延材幅に沿って一定ではないので、金属帯の波打ち、例えば縁の波または中央の波が形成される。これにより、金属帯幅に沿って異なる厚さが生じ、これらの異なる厚さは、この金属帯における異なる長さを生じさせ、したがって挙げた帯欠陥の原因となる。
【0006】
良好にまたは十分に平坦な場合にしか、金属帯の幅全体に沿って均質なまたは等しい比率が存在することはないので、とりわけ金属帯の平坦性は、金属帯の完璧なその後の加工にとって不可欠である。
【0007】
金属帯の長さに沿って厚さが変わらない単純で平坦な金属帯を製造するための従来の帯圧延工程では、制御系により帯厚さだけでなく平坦性も監視し、相違する場合は調節する。このような調節の欠点は、このために、そのような調節が応答して相違の作用を修正の作用によって調節するまでの応答および調節時間が必要なことである。
【0008】
特に段付き圧延で、調節応答の問題が提起されており、修正までの必要な調節時間が重要である。とりわけ段の間の移行部が短い場合および帯速度が速い場合に調節時間が短くなることが特に不利と分かっている。これは、可能な段付き帯の幾何学的限界を生じさせる、即ち、1つの帯厚さから次の帯厚さへのすべての所望の移行が、圧延技術によって実現可能なわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP1908534A1
【特許文献2】EP1074317B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術から知られている方法では問題が生じ得る。即ち、段付き圧延の際にロール位置調整を変更すると、常に圧延力が大きく変化し、それに基づく金属帯での変化を修正するための調節は、必要な応答および調節時間により、段付き圧延での帯厚さの速い交替には適していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によればこの問題は、特許請求項1の特徴を有する方法によって解決される。
【0012】
本発明によって達成可能な利点は、圧延プロセス中に、ワークロールによって加えられる圧延力が一定またはほぼ一定に保たれることから生じる。これにより、圧延力に依存する欠陥、例えば平坦性の欠陥のような悪影響が簡単に回避される。一定の圧延力を達成するには、ロール間隙が変化してもなお圧延力が変わらないように、即ち一定またはほぼ一定であり続けるように、さらなるプロセスパラメータを適合させなければならない。このために特に適しているのは、金属帯に加えられる帯張力の制御である。このような帯張力の制御は、圧延プロセス中に、ワークロールによって金属帯に加えられる圧延力が一定またはほぼ一定であるように的確に行われることが望ましい。帯張力を的確に変化させることにより、ロール間隙の変更中に圧延力が一定またはほぼ一定のレベルで推移することを達成できる。段付き圧延の場合、応答時間および調節時間のような調節に伴う欠点が、短い規定の移行部および小さな半径を交互のプロファイルで任意に繰り返して満足に製造するのに適していないことが分かった。この理由から、有利なのは、帯張力を予め設定可能な値に調整および制御し、かつ2つの予め設定された値の間の適合も制御して行う場合である。このような制御された帯張力の適合は、圧延力が影響を及ぼすすべての効果、例えばロールの平坦化、たわみ、および帯の包埋を補償すること、ならびに圧延プロセスのために一定の条件を保証することを可能にする。圧延力が一定であればロールの弾性変形は変化しないので、一定の圧延力により、圧延力の変化に依存する欠陥を非常に簡単かつ効果的に制限することができる。
【0013】
本発明の一実施形態では、圧延プロセス中、ほぼ一定の圧延力は、圧延プロセス中にワークロールの弾性変形、例えばロールの平坦化、ロールのたわみ、およびロールへの帯の包埋が一定またはほぼ一定である範囲内でしか変化しない。これにより、圧延力の変化に依存する欠陥を非常に簡単かつ効果的に制限することができる。このために、圧延プロセス中に弾性変形がさほど変化しないように、圧延力が変化する際のワークロールの特性が考慮される。
【0014】
本発明の特別な一実施形態は、圧延プロセス中、巻取リール装置によって加えられる前方帯張力または繰出リール装置によって加えられる後方帯張力を制御する。さらに、前方帯張力も後方帯張力も制御することができる。帯張力の制御は、たとえワークロールの間に形成されるロール間隙が変化するとしても圧延力を一定またはほぼ一定に保つことを適切に可能にする。
【0015】
特に有利な実施形態と認められたのは、的確な帯張力の制御、即ち前方帯張力もしくは後方帯張力の的確な変更または両方の帯張力の的確な変更ならびにワークロールの回転数および位置調整速度の的確な制御、好ましくはこれらすべてのパラメータの同時の変更により、金属帯の段状に変化する帯厚さの間の移行部の幾何形状、とりわけ移行部の勾配および移行部位の半径に影響を及ぼすことである。これにより、段付き圧延によって達成可能な幾何形状の範囲を広げることができる。そのうえ、幾何形状の変化によって引き起こされる圧延力変化、ならびにそれに伴う帯幾何形状の、プロファイルの、および平坦性の欠陥を低減することができる。これは特に重要である。なぜなら段付き圧延の際は、移行部位において、圧延プロセスの安定性に悪影響を及ぼす圧延力ピークが生じ易いからである。この関連で特にクリティカルと確認されたのは、ロール間隙の減少によって形成される負の勾配と、その後に続くよりフラットで平らな平面との間に生じる移行部位である。これらの移行部位では、さらなる措置なしでは圧延力が非常に強く増大し、これは既に述べた問題を生じさせる。
【0016】
本発明のさらなる一実施形態は、帯厚さを小さくするためにロール間隙を縮小し、かつ一定またはほぼ一定の圧延力を得るために前方帯張力および後方帯張力を増大させる。これらの帯張力の増大なしでは、とりわけロール間隙の縮小が必然的に圧延力を増大させ、これにより、既に述べた圧延プロセスに関する問題が発生する。特に有利なのは、ワークロールの位置調整によるロール間隙の縮小中に、前方向および後方向での帯張力を、即ち繰出リール装置の帯張力も巻取リール装置の帯張力も、同時に制御することである。帯張力の的確な制御により、ワークロールの位置調整中の圧延力の変化を回避または低減することができる。
【0017】
さらに有利なのは、帯厚さを大きくするためにロール間隙を拡大し、かつ一定またはほぼ一定の圧延力を得るために前方帯張力および後方帯張力を減少させる場合である。この制御により、圧延力を一定またはほぼ一定のレベルに保つことができる。
【0018】
特に有利な実施形態と分かったのは、ワークロールの位置調整速度またはワークロールの回転数またはワークロールの回転数も位置調整速度も、予め計算したデータに基づいて制御することである。繰出リール装置もしくは巻取リール装置の回転数も、または両方のリール装置の回転数も、予め計算したデータに基づいて制御し得ることが好ましい。これらの予め計算した速度データにより、適切なパラメータを的確に制御することができる。応答および調節時間による調節の欠点はこうして回避することができる。これにより、段付き圧延プロセスを最適に整え、かつロール間隙の変化から生じると思われる圧延力の変化を回避することができる。予め計算した速度データにより、最適な圧延プロセスに必要なパラメータを調整および制御することができるであろう。速度データの計算では、材料特性および所望の幾何形状が考慮される。
【0019】
上で挙げた問題は、ここでおよび以下に述べるような方法に基づいて動作し、かつこのために本方法を実施するための手段を含む装置によっても解決される。このために本発明による装置は、ロール間隙を形成する少なくとも2つのワークロールと、繰出リール装置と、巻取リール装置と、ワークロールの位置調整、ワークロールの回転数、ならびに繰出リール装置および/または巻取リール装置の回転数を調整可能および/または制御可能な調整および制御手段とを含んでいる。
【0020】
まとめると、本発明に関して本質的なことは、帯厚さを的確に変化させる際に、形状変化が異なるにもかかわらず圧延力はほぼ一定のままであるように、ロール間隙での前方張力および後方張力を制御することである。これにより、平坦性に影響を及ぼす効果、例えばロールの平坦化、たわみ、および帯の包埋がまったくまたは少しだけしか変化せず、したがってこれにより、通常は引き起こされる平坦性の欠陥が生じない。
【0021】
このために、とりわけ帯張力、即ち外側への長さ方向張力の作用下での、ロール間隙内の作用する力およびキネマティクスを表す閉じたプロセスモデルが用いられる。圧延プロセス、とりわけ段付き圧延は、ロール間隙内で、結合した力系が長さ方向および幅方向に作用する3次元の変形プロセスである。力の協働により、ワークロールは径方向にも軸方向にも変形される。これらのとりわけ軸方向に発生する変形は、幅方向での異なる高さ変化を生じさせ、これが帯での平坦性の欠陥に至る。プロセスモデルにより、帯張力を的確に変更することで、ロール間隙内の作用する力に影響を及ぼすように、それも、ほぼ一定の圧延力によりロールの弾性変形がほぼ一定のままであり、したがって制御されていないロール変形による平坦性の欠陥が発生せず、かつ安定な圧延プロセスが達成されるように、ロール間隙内の作用する力に影響を及ぼすように、圧延工程を制御する。段付き圧延の場合、帯厚さの時間依存性変動により、プロセスが一時的に多次元になることに追加的に注意を払わなければならない。帯張力の変更を制御することで圧延力を一定に保つことは、これらの一時的な依存性を考慮しなければならない。
【0022】
本発明のさらなる特徴、詳細、および利点は、以下の説明および図面に基づいて明らかである。本発明の1つの例示的実施形態を、図面に純粋に概略的に示しており、以下でより詳しく説明する。互いに対応する対象または要素には、すべての図で同じ符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】本発明による装置の概略図である。
図1b】バックアップロールおよびワークロールを備えた本発明による装置の概略図である。
図2】本発明に適合していない圧延工程でのプロファイル輪郭を示すグラフである。
図3】本発明に適合していない圧延工程での経時的な圧延力推移を示すグラフである。
図4】本発明に適合していない繰出リール装置の生成された経時的な帯張力を示すグラフである。
図5】本発明に適合していない巻取リール装置の生成された経時的な帯張力を示すグラフである。
図6】本発明に適合した圧延工程でのプロファイル輪郭を示すグラフである。
図7】本発明に適合した圧延工程での経時的な圧延力推移を示すグラフである。
図8】本発明に適合した繰出リール装置の適合された経時的な帯張力を示すグラフである。
図9】本発明に適合した巻取リール装置の適合された経時的な帯張力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1aは、本発明による装置を概略図で示している。図示した例示的実施形態では、金属帯4が帯幅8全体で、上のワークロール1と下のワークロール2によって形成されるロール間隙3を通って長さ方向7に案内される。その際、金属帯4は繰出リール装置5によって繰り出され、ワークロール1、2の間で行われる圧延工程の後、巻取リール装置6によって巻き取られる。これにより金属帯4は長さ方向7にロール間隙3を通って移動し、帯幅8全体でワークロール1、2によって処理される。ワークロール1、2の間のロール間隙3の変更により、圧延プロセス中に金属帯4の帯厚さが長さ方向7において段状に変化し、こうしてプロファイル輪郭11(図2および図6)が達成される。好ましくはワークロール1、2の位置調整速度および回転数、繰出リール装置5および巻取リール装置6の回転数を、予め計算した速度データに基づき制御部9を用いて制御し、かつ調整手段(示されていない)によって調整することにより、帯幅8全体でプロファイル輪郭11(図2および図6)が生じる。
【0025】
図1bでは、シングルスタンドの4本ロール可逆スタンドをロール軸の方向から概略的に示している。ワークロール1、2は、2つのバックアップロール23によって突っ張り支持されている。破線矢印は、力、速度、およびトルクを表しており、圧延プロセスを図解している。
【0026】
図2および図6に基づく図面は、圧延工程後の長さLの金属帯4(図1a)のプロファイル輪郭11をグラフとして例示的に示しており、このグラフは、0Lから1.12Lまで続いている。「L」は、ここでは製造後のプロファイル長さに関する自由に選択可能な値である。グラフに示したプロファイル高さhは、金属帯4(図1a)の真ん中から高さ方向に測定されており、したがって圧延プロセス後の金属帯4(図1a)は、2倍の高さの金属帯厚さを有している。以下に考察する例では、入側厚さがHの金属帯4(図1a)を使用しており、この「H」は、入側厚さに関する任意の値であり、1.2mm〜5mmの間であることが好ましい。この圧延プロセス中には、帯厚さを0.425Hのプロファイル高さh、即ち0.85Hの金属帯厚さに低下させ、続いてワークロール1、2(図1a)のさらなる段状の位置調整を行い、材料帯4(図1a)を一部の区間で0.2875Hのプロファイル高さh、即ち0.575Hの金属帯厚さに低下させている。金属帯プロファイル11の平らな区間、平面16、平面18、平面20の間には、符号17および19の勾配を有する移行部が存在している。図2および図6に示したプロファイル輪郭11は、平らな区間、平面16、平面18、平面20、および勾配17、19の間に、後の説明に使用する移行部位12、13、14、および15を有している。図2で認識できるのは、ロールの位置調整によって達成可能なプロファイル輪郭11が、とりわけ移行部位13で、図6に基づくプロファイル輪郭11と相違しており、詳しくは、移行部位13内で達成可能な半径が、明らかにより小さく、または図2ではもうほとんど認識できないという意味で相違していることである。
【0027】
図3からは、図2に示した圧延工程の時間間隔Tに沿った圧延力推移21をグラフとして見ることができる。圧延力WはWkNで始まり、この「W」は、圧延力に関して生じる値であり、移行部位12の後、ワークロール1、2(図1a)の位置調整中に上昇する。移行部位13での圧延力Wが、2.32WkNで、圧延力の最大値に達している。続いて圧延力Wは、移行部位13と14との間の平らな区間、平面18中では2.0WkNで一定であり、その後、移行部位14の後にワークロール1、2(図1a)の新たな位置調整により再び低下し、そして移行部位15の後に再びWkNの値に達する。
【0028】
図4および図5は、同じ考察した時間間隔Tに沿って、帯張力の応力推移をグラフとして示している。図4では、繰出リール装置5(図1a)の後方帯張力σの応力推移22を見ることができ、応力推移22は圧延プロセス中ずっとσMPaで一定である。これに対して巻取リール装置6(図1a)の前方帯張力σの応力22は、考察した時間間隔T中に変化している。この帯張力の応力は図5から分かるように、移行部位12と13との間の圧延工程の際に最大1.23σMPaに上昇し、その後、応力は移行部位14の後で再び低下する。σおよびσは、考察した帯プロファイルポジションでの流動応力の15%〜60%の範囲内にある応力値である。
【0029】
図6は、圧延工程後の金属帯4(図1a)のプロファイル輪郭11を例示的に示している。既に上で言及したように、帯厚さを0.425Hのプロファイル高さh、即ち0.85Hの金属帯厚さに低下させ、続いてワークロール1、2(図1a)のさらなる段状の位置調整を行い、材料帯4(図1a)を一部の区間で0.2875Hのプロファイル高さh、即ち0.575Hの金属帯厚さに低下させている。金属帯プロファイル11の平らな区間、平面16、平面18、平面20の間には、符号17および19の勾配を有する移行部が存在している。図6で分かるのは、ロール1、2(図1a)の位置調整によって達成可能なプロファイル輪郭11が、とりわけ移行部位13で、図2に基づくプロファイル輪郭11と相違しており、詳しくは、移行部位13内で達成可能な半径が、明らかにより大きく、かつ移行部位14内の半径に相当するという意味で相違していることである。このプロファイル輪郭11は、圧延プロセス中の帯張力、ロール回転数、および位置調整速度の的確な適合によってのみ可能である。
【0030】
図7から明らかなグラフは、図6に示した圧延工程の時間間隔Tに沿った圧延力推移21を示している。圧延力WはWkNで始まり、移行部位12の後、ワークロール1、2(図1a)の位置調整中にごくわずかに上昇する。移行部位13での圧延力Wが、だいたい1.14WkNで、圧延力の最大値に達している。続いて圧延力Wは、移行部位13と14との間の平らな区間、平面18中では一定であり、その後、移行部位14の後にワークロール1、2(図1a)の新たな位置調整により再び低下し、そして移行部位15の後に再びWkNの値に達する。
【0031】
図8および図9は、同じ考察した時間間隔Tに沿って、帯張力の応力推移をグラフで示している。図8では、繰出リール装置5(図1a)の後方帯張力σの応力推移22を見ることができ、応力推移22は圧延プロセス中に適合されている。この帯張力は、移行部位12と13との間のワークロール1、2(図1a)の位置調整中に6.7σMPaの張力応力に適合されている。この張力応力が移行部位14までの圧延プロセスのために保たれ、その後、繰出リール装置5(図1a)の帯張力は再び低下する。巻取リール装置6(図1a)の前方帯張力σの応力22も、考察した時間間隔T中に変化している。即ちこの帯張力の応力22は、移行部位12と13との間の圧延工程の際に8σMPaに上昇し、その後、応力22は移行部位14の後で再び低下する。
【0032】
本発明は以下のようにまとめることができる。即ち、ロール間隙3(図1a)内での形状変化状態および応力状態を、金属帯4(図1a)に加えられる帯張力σ、σによって変化させることにより、圧延力W(図1a)の増大を効果的に阻止する。通常は、ロール間隙の減少により鉛直応力が増大し、これに基づいてより高い圧延力W(図1a)が生じる。これに対し、帯張力σ、σの適合により、ロール間隙3(図1a)内の流動条件の達成に、より低い結果的に生じる鉛直応力が必要であることが達成される。
【0033】
帯張力σ、σの制御は、リール回転数の変更を介して行われ、その際、帯張力σ、σに作用する所望のリールモーメントをリール回転数の変更によって達成するには、帯張力σ、σの的確な制御のためにコイル直径を考慮しなければならない。こうして帯張力σ、σの制御により、鉛直応力、したがって圧延力W(図1a)を著しく変化させずに、ロール間隙3(図1a)内の流動条件を的確に達成および獲得する。
【0034】
もちろん本発明の前述の例示的実施形態は、基本的思想を逸脱することなく、さらに多種多様な観点で改変することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 上のワークロール(上ロール)
2 下のワークロール(下ロール)
3 ロール間隙
4 金属帯
5 繰出リール装置
6 巻取リール装置
7 長さ方向
8 帯幅
9 制御部
10 帯張力測定ロール
11 プロファイル輪郭
12、13、14、15 移行部位
16 平面
17 勾配
18 平面
19 勾配
20 平面
21 圧延力推移
22 応力推移
23 バックアップロール
W 圧延力 単位kN
圧延力に関する初期値
h プロファイル高さ 単位mm
金属帯の入側厚さ
l 圧延後のプロファイル長さ 単位mm
L プロファイル長さ全体に関する値
t 時間 単位s
T 時間間隔
σ 後方帯張力 単位MPa
σ 後方帯張力に関する初期値
σ 前方帯張力 単位MPa
σ 前方帯張力に関する初期値
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9