(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838032
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】回転テーブル装置、回転テーブル制御装置、プログラム及び回転テーブル制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20210222BHJP
B23Q 5/04 20060101ALI20210222BHJP
B23Q 16/08 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
G05B19/18 X
B23Q5/04 F
B23Q16/08
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-207079(P2018-207079)
(22)【出願日】2018年11月2日
(65)【公開番号】特開2020-71795(P2020-71795A)
(43)【公開日】2020年5月7日
【審査請求日】2020年4月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】立木 伸吾
【審査官】
松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−002613(JP,A)
【文献】
特開2005−254410(JP,A)
【文献】
特開2017−074837(JP,A)
【文献】
特開2015−126647(JP,A)
【文献】
特開2001−047342(JP,A)
【文献】
特開2002−001633(JP,A)
【文献】
特開2012−198734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
B23Q 16/00 − 17/24
B23Q 15/00 − 15/28
B23Q 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルを支持する主軸と、
前記主軸を回転駆動する駆動機構と、
前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、
前記主軸の回転を制止するクランプ機構と、
前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御部と、
前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定部と、
を備え、
前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始してから所定の第1時間が経過したとき及び前記第1時間の経過後さらに所定の第2時間が経過したときにそれぞれ所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、
前記判定部は、前記第1時間経過後最初の負荷のピーク値と前記第2時間経過後最初の負荷のピーク値との差が所定の閾値以上である場合に前記クランプ機構の動作不良と判定する回転テーブル装置。
【請求項2】
テーブルを支持する主軸と、
前記主軸を回転駆動する駆動機構と、
前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、
前記主軸の回転を制止するクランプ機構と、
前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御部と、
前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定部と、
を備え、
前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、
前記判定部は、前記検査パターンの駆動時に前記負荷検出部が検出した負荷の波形に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する回転テーブル装置。
【請求項3】
前記判定部が前記クランプ機構の動作不良と判定した場合にそれに関する情報を外部に報知又は信号出力する出力部をさらに備える請求項1又は2に記載の回転テーブル装置。
【請求項4】
テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置を制御する制御装置であって、
前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御部と、
前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定部と、
を備え、
前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始してから所定の第1時間が経過したとき及び前記第1時間の経過後さらに所定の第2時間が経過したときにそれぞれ所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、
前記判定部は、前記第1時間経過後最初の負荷のピーク値と前記第2時間経過後最初の負荷のピーク値との差が所定の閾値以上である場合に前記クランプ機構の動作不良と判定する回転テーブル制御装置。
【請求項5】
テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置を制御する制御装置であって、
前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御部と、
前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定部と、
を備え、
前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、
前記判定部は、前記検査パターンの駆動時に前記負荷検出部が検出した負荷の波形に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する回転テーブル制御装置。
【請求項6】
テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置を制御するプログラムであって、
前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御要素と、
前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定要素と、
を備え、
前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始してから所定の第1時間が経過したとき及び前記第1時間の経過後さらに所定の第2時間が経過したときにそれぞれ所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、
前記判定要素は、前記第1時間経過後最初の負荷のピーク値と前記第2時間経過後最初の負荷のピーク値との差が所定の閾値以上である場合に前記クランプ機構の動作不良と判定するプログラム。
【請求項7】
テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置を制御するプログラムであって、
前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御要素と、
前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定要素と、
を備え、
前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、
前記判定要素は、前記検査パターンの駆動時に前記負荷検出部が検出した負荷の波形に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定するプログラム。
【請求項8】
テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置の制御方法であって、
前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる工程と、
前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する工程と、
を備え、
前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始してから所定の第1時間が経過したとき及び前記第1時間の経過後さらに所定の第2時間が経過したときにそれぞれ所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、
前記クランプ機構の動作の良否を判定する工程では、前記第1時間経過後最初の負荷のピーク値と前記第2時間経過後最初の負荷のピーク値との差が所定の閾値以上である場合に前記クランプ機構の動作不良と判定する回転テーブル制御方法。
【請求項9】
テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置の制御方法であって、
前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる工程と、
前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する工程と、
を備え、
前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、
前記クランプ機構の動作の良否を判定する工程では、前記検査パターンの駆動時に前記負荷検出部が検出した負荷の波形に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する回転テーブル制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転テーブル装置、回転テーブル制御装置、プログラム及び回転テーブル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表面にワークや冶具等を固定するテーブルを回転させる回転テーブル装置が工作機械等に利用されている。回転テーブル装置は、端部にテーブルが固定される回転可能な主軸を有し、この主軸をサーボモータ等で回転させることによってテーブルの回転位置決め(割出し)を行う。回転テーブル装置は、テーブルの割出し位置を保持するために主軸をクランプ(挟み込み)するクランプ機構を備えることが多い。
【0003】
一般的に、回転テーブル装置のクランプ機構は、以下のように構成される。主軸に設けられるブレーキディスクを、流体圧によりピストンで主軸と並行な方向に移動させられるピストンによって、不動に設けられるクランプ部材に対して押圧する。これにより、摩擦力によりブレーキディスク、ひいては主軸の回転を防止する。このようなクランプ機構は、使用環境や経年劣化の影響でピストンの動作遅れやストローク減少等の動作不良が発生する可能性がある。
【0004】
ブレーキディスクとクランプ部材及びピストンとの間の摩擦力が大きい状態で主軸を回転させると、ブレーキディスク、クランプ部材及びピストンの少なくともいずれかの摩耗が促進され、クランプ時の摩擦力(ブレーキトルク)が低下することにより、テーブルが位置ずれする等の不都合が生じるおそれがある。近接スイッチ等を設けてピストンの位置を検出することによりクランプの解除を確認してから主軸を駆動する技術もある。しかし、ピストンの位置を検出する場合、ピストンが十分にブレーキディスクから離間した状態となるまで主軸の駆動を開始することができない。近年の工作機械の高速化により、アンクランプ開始から主軸の回転開始までの時間を短くすることが要求されている。しかし、流体圧によるピストンの移動速度は十分に大きくないため、アンクランプを開始してからピストンが離間位置に達したことが検出されるまでには、比較的時間がかかる。また、近接スイッチ等を使用すると、装置の大型化、コストの増大、信頼性の低下といった不都合もある。
【0005】
そこで、特許文献1には、アンクランプを開始した場合に主軸を微小移動量だけ回転させるような指令を発し、主軸の回転が確認されてから、目標移動量から確認された移動量を差し引いた残存移動量だけ主軸を回転させる指令を発する技術が提案されている。この技術によれば、クランプが完全に解除される前に主軸を無理に回転させることによるブレーキディスク等の摩耗を抑制しつつ、主軸の目標移動量の回転を短時間で達成するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−198734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の制御方法では、クランプが完全に解除される前に微小移動量だけ回転させるよう主軸を駆動するので、少しではあるがブレーキディスク等の摩耗が促進される。特許文献1に記載の制御方法では、微小移動量の設定値を小さくするほどアンクランプ確認時のブレーキディスク等の摩耗を低減することができるが、微小移動量を小さくし過ぎるとクランプ機構のアンロックを確実に検出することができなくなる。このため、特許文献1に記載の制御方法では、ブレーキトルクが十分に低下する前に主軸を駆動してクランプ機構の摩耗を促進してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、クランプ機構の摩耗を抑制しながらクランプ機構の動作不良を検出することができる回転テーブル装置、回転テーブル制御装置、プログラム及び回転テーブル制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係る回転テーブル装置(例えば、後述の回転テーブル装置100)は、テーブルを支持する主軸(例えば、後述の主軸1)と、前記主軸を回転駆動する駆動機構(例えば、後述の駆動機構2)と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部(例えば、後述の負荷検出部3)と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構(例えば、後述のクランプ機構4)と、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御部(例えば、後述の回転制御部54)と、前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定部(例えば、後述の判定部55)と、を備える。
【0010】
(2) (1)の回転テーブル措置において、前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始してから所定の第1時間が経過したとき及び前記第1時間の経過後さらに所定の第2時間が経過したときにそれぞれ所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、前記判定部は、前記第1時間経過後最初の負荷のピーク値と前記第2時間経過後最初の負荷のピーク値との差が所定の閾値以上である場合に前記クランプ機構の動作不良と判定してもよい。
【0011】
(3) (1)の回転テーブル措置において、前記検査パターンは、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に所定の検査角度だけ前記主軸を駆動するパターンであり、前記判定部は、前記検査パターンの駆動時に前記負荷検出部が検出した負荷の波形に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定してもよい。
【0012】
(4) (1)〜(3)の回転テーブル措置は、前記判定部が前記クランプ機構の動作不良と判定した場合にそれに関する情報を外部に報知又は信号出力する出力部(例えば、後述の出力部56)をさらに備えてもよい。
【0013】
(5) 本発明に係る回転テーブル制御装置(例えば、後述の制御装置5)は、テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置を制御する制御装置であって、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御部と、前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定部と、を備える。
【0014】
(6) 本発明に係るプログラムは、テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置を制御するプログラムであって、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる回転制御要素と、前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する判定要素と、を備える。
【0015】
(6) 本発明に係る回転テーブル制御方法は、テーブルを支持する主軸と、前記主軸を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構の負荷を検出する負荷検出部と、前記主軸の回転を制止するクランプ機構とを備える回転テーブル装置の制御方法であって、前記クランプ機構がクランプの解除を開始した後に前記駆動機構に所定の検査パターンで前記主軸を駆動させる工程(例えば、後述の主軸駆動工程S2)と、前記主軸を前記検査パターンで駆動する際に前記負荷検出部が検出した負荷の継時変化に基づいて前記クランプ機構の動作の良否を判定する工程(例えば、後述の判定工程S5)と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クランプ機構の摩耗を抑制しながらクランプ機構の動作不良を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る回転テーブル装置の構成図である。
【
図2】
図1の回転テーブル装置のクランプ機構の構成を示す断面図である。
【
図3】
図1の回転テーブル装置の制御装置のブロック図である。
【
図4】
図1の回転テーブル装置の制御手順を示すフローチャートである、
【
図5】
図1の回転テーブル装置の主軸の正常動作時のトルク変化の一例を示すグラフである。
【
図6】
図1の回転テーブル装置の主軸の動作不良時のトルク変化の一例を示すグラフである。
【
図7】
図1の回転テーブル装置の主軸の
図7とは異なる動作不良時のトルク変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る回転テーブル装置100の構成図である。
図2は、
図1の回転テーブル装置のクランプ機構の機械的構成を示す断面図である
【0019】
回転テーブル装置100は、一端に二点鎖線で示すテーブルTを支持する主軸1と、主軸1を回転駆動する駆動機構2と、駆動機構2の負荷を検出する負荷検出部3と、主軸1をクランプしてその角度位置を固定するクランプ機構4と、駆動機構2及びクランプ機構4を制御する制御装置5とを備える。
【0020】
主軸1は、駆動機構2によって回転させられることにより、一端に支持するテーブルTを一体に回転させる。
【0021】
駆動機構2は、典型的には主軸1と一体に形成された出力軸を有するダイレクトドライブサーボモータによって構成される。なお、駆動機構2は、例えば軸接手、伝動機構、減速機構等を介して主軸1を駆動するものであってもよい。
【0022】
負荷検出部3は、例えば、駆動機構2の内部又は駆動機構2と主軸1との間で負荷トルクを検出するトルクセンサ、駆動機構2の動力源とされるモータの負荷電流を検出する電流計、又は、負荷電力を検出する電力計等によって構成することができる。
【0023】
クランプ機構4は、
図2に詳しく示すように、主軸1の外周に固定され、主軸1と一体に回転する例えば円盤状のブレーキディスク41と、ブレーキディスク41の一方の面に隣接して主軸1と共に回転しないよう不動に配設されるクランプ部材42と、ブレーキディスク41の他方の面側に流体圧によって主軸1と平行な方向に移動可能に設けられるピストン43と、クランプ部材42が取り付けられ、ピストン43を移動可能に収容するハウジング44と、ピストン43を移動させる作動流体の供給及び排出を制御する切換弁45とを有する構成とすることができる。
【0024】
ハウジング44は、ピストン43の移動方向一方側の受圧面に流体圧を作用させる第1空間46と、ピストン43の移動方向他方側の受圧面に流体圧を作用させる第2空間47とを画定する。切換弁45は、第1空間46及び第2空間47の一方に作動流体を供給し、第1空間46及び第2空間47の他方から作動流体を排出するよう、流路を切り替える。作動流体としては、典型的には油(圧油)又は空気(圧縮空気)が用いられるが、他の液体や気体を使用してもよい。
【0025】
クランプ機構4は、流体圧によってピストン43をブレーキディスク41に押圧してブレーキディスク41の反対側の面をクランプ部材42に圧接することによって、ブレーキディスク41とクランプ部材42及びピストン43との間に大きい摩擦力を生じさせてブレーキディスク41と一体に回転する主軸1の回転を制止する(クランプ)。また、クランプ機構4は、流体圧によってピストン43をブレーキディスク41から離間させてブレーキディスク41とクランプ部材42及びピストン43との間の圧接力(摩擦を生じる垂直抗力)を除去することで主軸1の回転を可能にする(アンクランプ)。
【0026】
制御装置5は、それ自体が本発明に係る回転テーブル制御装置の一実施形態であると共に、本発明に係る回転テーブル制御方法を実施する装置である。制御装置5は、例えば専用集積回路等によって構成することができ、又は、汎用コンピュータに本発明に係るプログラムを読み込ませることによって実現することができる。このため、後述するクランプ機構4の動作確認についての説明は、本発明に係る回転テーブル装置、回転テーブル制御装置、プログラム及び回転テーブル制御方法についての説明として相互に読み替えられる。なお、制御装置5は、例えば工作機械等を制御する制御装置の一部であってもよい。つまり、本発明に係るプログラムは、工作機械の制御プログラムに組み込まれたサブルーチンやパートプログラム等であってもよい。
【0027】
図3に示すように、制御装置5は、工作機械等の要求に応じてテーブルTの回転位置決め(割出)を行うよう駆動機構2及びクランプ機構4を動作させる主制御部51と、クランプ機構4の動作状態を確認する動作確認部52とを有する。主制御部51及び動作確認部52並びにそれらを構成する複数の要素は、機能的に区別されるものであって、物理的構成及び制御装置5を実現するためのプログラムの構造において明確に区分できるものでなくてもよい。
【0028】
主制御部51は、工作機械等の要求に応じてテーブルTの割出しを行うために主軸1を回転位置決めするよう駆動機構2を制御する。また、主制御部51は、テーブルTの位置を保持する場合には、工作機械の振動等によってテーブルTが位置ずれしないようクランプ機構4に主軸1の回転を制止(クランプ)させる、主制御部51は、テーブルTの位置を変更する場合には、クランプ機構4にクランプを解除(アンクランプ)させて主軸1を回転可能にする。
【0029】
動作確認部52は、クランプ機構4にアンクランプを指示するクランプ制御部53と、クランプ機構4がクランプの解除を開始した後に駆動機構2に所定の検査パターンで主軸1を駆動させる回転制御部54と、主軸1を検査パターンで駆動する際に負荷検出部3が検出した負荷の継時変化に基づいてクランプ機構4の動作の良否を判定する判定部55と、クランプ機構4の動作不良に関する情報を外部に放置又は信号出力する出力部56とを有する。従って、制御装置5を実現するためのプログラムは、クランプ制御部53を実現するプログラム要素(アンクランプ制御要素)、回転制御部54実現するプログラム要素(回転制御要素)、判定部55実現するプログラム要素(判定要素)及び出力部56を実現するプログラム要素(出力制御要素)を有する。
【0030】
動作確認部52は、クランプ機構4の動作が良好であるか否かを確認する。このクランプ機構4の動作確認は、例えば所定の時間経過、所定の運転時間経過、所定回数のアンクランプ動作実行等があった場合に行うことが好ましく、上述の条件を満たし、且つ主軸1を動かしても工作機械の他の動作に影響が出ない最先のタイミングで行うことがより好ましい。また、クランプ機構4の動作確認は、工作機械の起動時、ワークの交換時等の所定のイベントが発生する度に行うようにしてもよい。
【0031】
クランプ制御部53は、クランプ機構4に対してアンクランプを指示する制御信号を出力する。
【0032】
回転制御部54は、クランプ機構4がクランプの解除を開始、つまりクランプ制御部53がアンクランプを指示する制御信号を出力すると、駆動機構2に対して所定の検査パターンで主軸1を駆動させるような信号の出力を開始する。駆動機構2に対して出力される信号は、例えば駆動機構2の駆動源であるサーボモータに角度位置を指示する信号等である。
【0033】
前記検査パターンは、主軸1の目標角度位置を微小なステップ状に変化させる信号とすることができ、階段状又は矩形波状に主軸1の目標角度位置を変更するものであってもよい。このような検査パターンの1ステップにおける主軸1の目標角度位置の変化量(以下検査角度という)としては、クランプ機構4が完全にアンクランプした状態で目標角度位置が検査角度だけステップ状に変化した場合に負荷検出部3により検出される負荷が安定した値となる値以上とすることが好ましい。具体例として、検査角度は、駆動機構2の構成にもよるが、駆動機構2の駆動源であるサーボモータの最小変位量としてもよい。例えば検査角度を0.1°以上1.0°以下とすることで、負荷検出部3による再現性の高い負荷の検出が可能となる。
【0034】
また、検査パターンは、クランプ機構4がクランプの解除を開始してから所定の微小な第1時間(微小な待ち時間)が経過したときに主軸1の目標角度位置を変更するものとすることができる。この第1時間は、クランプ機構4が正常である場合にクランプ制御部53がアンクランプを指示してからクランプ機構4が主軸1を開放するまでに必要とされる最小時間に対応する時間とすることができる。このような第1時間を設定することにより、クランプ機構4が主軸1の回転を制止している状態で駆動機構2が不必要に主軸1を駆動してクランプ機構4のブレーキディスク41等を摩耗させることを抑制できる。ただし、第1時間を必要以上に長く設定すると、クランプ機構4の動作の遅れを早期に検出できなくなる。第1時間の値としては、クランプ機構4の構造等にもよるが、例えば50msec以上500msec以下とすることができる。
【0035】
検査パターンを階段状のパターンとする場合、前記第1時間における主軸1の目標角度位置の最初の変化から主軸1の目標角度位置の次の変化までの第2時間は、クランプ機構4のピストン43の移動速度が低下した場合にも、アンクランプが完了すると考えられる時間に対応する値とすることが好ましい。第2時間の値は、クランプ機構4の構造等にもよるが、例えば0.5sec以上2sec以下とすることができる。
【0036】
また、前記第1時間経過時に主軸1を検査角度だけ駆動した後の次の主軸1の検査角度の駆動は、クランプ機構4のピストン43がブレーキディスク41から完全に離間したことをセンサ等で確認できたときに行ってもよい。つまり、前記第2時間は、可変時間であってもよい。
【0037】
検査パターンを階段状のパターンとして、第2時間経過時に主軸1を再度検査角度だけ駆動することで、負荷検出部3でクランプ機構4がクランプを完全に解除している状態で主軸1を検査角度だけ駆動した場合の駆動機構2の負荷変動を確認することができる。このため、第1時間経過時に主軸1を検査角度だけ駆動した際に負荷検出部3が検出した負荷変動と比較することで、第1時間経過後の負荷変動が正常なものであるか、又は、クランプ機構4の動作不良を示すものであるかを判断するための基準を、その都度与えることができる。これにより、例えばテーブルTに保持されるワークによる駆動機構2の負荷の変化等の影響を排除してクランプ機構4の動作状態を正確に判定することができる。
【0038】
判定部55は、例えば駆動機構2が主軸1を検査パターンで駆動したときに負荷検出部3が検出した負荷の継時変化から所定の情報を抽出して、クランプ機構4の動作の良否を判定する。
【0039】
具体的には、判定部55は、第1時間経過時に主軸1を駆動した際の駆動機構2の負荷の継時変化と第2時間経過時に主軸1を駆動した際の駆動機構2の負荷の継時変化との対応する特徴をそれぞれ抽出して比較するよう構成することができる。両者の差が大きい場合には、判定部55は、第1時間経過時にクランプ機構4がアンクランプを完了していない動作不良であったものと判断する。抽出する負荷の継時変化の特徴としては、例えばピーク値、ピーク面積、減衰時間、波形率等を挙げることができる。クランプ機構4は、このような数値化できる特徴を比較して、その差が予め設定される閾値以上である場合には、クランプ機構4の動作不良と判定することができる。特にピーク値は、比較的抽出が容易であると共に、クランプ機構4の摩擦トルクを比較的正確且つ顕著に反映する。そのため、判定部55は、負荷のピーク値を抽出することで比較的容易且つ確実にクランプ機構4の動作不良を検出できる。
【0040】
また、判定部55は、主軸1を検査パターンで駆動した際の駆動機構2の負荷の継時変化の特徴の1つに基づいてクランプ機構4の動作の良否を判定してもよい。つまり、判定部55は、検査パターンで駆動したときに負荷検出部3が検出した負荷の継時変化の特徴と、予め設定されるクランプ機構4が正常に動作している場合の負荷の継時変化の対応する特徴とを比較して、その差異が大きい場合にクランプ機構4の動作不良と判定してもよい。なお、駆動時の負荷の絶対値はテーブルTに固定されるワーク等によっても変化する可能性があるため、予め設定されるクランプ機構4が正常動作時の特徴と比較する場合、波形の相似度合の目安とすることができるような特徴を抽出することが好ましい。
【0041】
出力部56は、判定部55がクランプ機構4の動作不良と判定した場合にそれに関する情報を外部に報知又は信号出力する。外部への報知手段としては、視覚信号(回転灯、モニタ表示等)、聴覚信号(ビープ音、音声アナウンス等)などを用いることができる。
【0042】
続いて、
図4を参照しながら、動作確認部52によるクランプ機構4の動作確認の手順を詳しく説明する。
【0043】
動作確認部52によるクランプ機構4の動作確認は、先ず、ステップS1のアンクランプ工程において、クランプ制御部53により、クランプ機構4に主軸1を開放(アンクランプ)させる。
【0044】
続いて、ステップS2の主軸駆動工程において、回転制御部54により、駆動機構2に主軸1を所定の検査パターンで駆動させ、ステップS3のトルク変化記録工程において、駆動機構2が主軸1を検査パターンで駆動する間に負荷検出部3が検出した駆動機構2の負荷トルクの継時変化を判定部55によって記録(例えばメモリー等に記憶)する。
【0045】
その後、判定部55は、ステップS4の特徴抽出工程において、ステップS3で記録した負荷トルクの継時変化から、例えばピーク値等の所定の特徴を抽出し、ステップS5の判定工程において、抽出した特徴からクランプ機構4の動作の良否を判定する。
【0046】
ステップS5でクランプ機構4の動作が不良と判断された場合(ステップS5:YES)は、処理はステップS6に進んで、出力部56によって、それに係る情報を外部に出力してから処理を終了する。一方、ステップS5でクランプ機構4の動作が良好と判断された場合(ステップS5:NO)は、ステップS6を経ずに処理を終了する。
【0047】
図5〜
図7に、回転制御部54から駆動機構2に入力される検査パターン、つまり主軸1の角度位置の目標時の時間変化と、負荷検出部3が検出した負荷トルクの継時変化とを合わせて示す。
図5は、クランプ機構4の動作が良好である場合であり、
図6は、クランプ機構4の動作に遅れがある場合であり、
図7は、クランプ機構4の動作が完了しない場合である。
【0048】
図5〜
図7では、検査パターンとして、クランプ制御部53がクランプ機構4にアンクランプを指示してから所定の第1時間が経過したときに駆動機構2に主軸1を所定の検査角度だけ正方向にステップ状に駆動させ、その後さらに所定の第2時間が経過したときに駆動機構2の駆動機構2に主軸1を検査角度だけ同じ正方向にステップ状に駆動した。また、
図5〜
図7では、正方向の検査パターンの駆動後に、一度クランプ機構4にクランプ動作をさせて主軸1の回転を制止してから、再度クランプ機構4にクランプを解除させ、駆動機構2に回転方向を逆にした検査パターンで主軸1を駆動させて負荷トルクの継時変化を記録した。
【0049】
図5に示すように、クランプ機構4の動作が良好である場合には、第1時間経過時のステップ駆動による負荷トルクのピーク値(第1時間経過最初の付加のピーク値)と、第2時間経過時のステップ駆動による負荷トルクのピーク値(第2時間経過最初の付加のピーク値)とが略等しくなる。つまり、第1時間経過時には既にクランプ機構4のアンクランプが完了しているため、第1時間経過時及び第2時間経過時の駆動時の負荷トルクが共に小さくなる。
【0050】
しかしながら、
図6に示すように、クランプ機構4の動作に遅れがある場合には、第1時間経過時にはクランプ機構4のアンクランプが完了していないため負荷検出部3が比較的大きい負荷トルクを検出し、第2時間経過時にはクランプ機構4のアンクランプが完了しているため、
図5と同様の負荷トルクの波形が記録される。従って、第1時間経過後最初の負荷のピーク値と第2時間経過後最初の負荷のピーク値とを比較し、それらの差が一定の値以上である場合には、クランプ機構4の動作不良であると考えることができる。
【0051】
また、
図7に示すように、クランプ機構4の動作完了しない場合には、動作が遅れている場合と同様に負荷トルクのピーク値が上昇すると共に、負荷トルクがピーク後に反対方向にオーバーシュートする等、負荷トルクの値が落ち着くまでに時間を要する。このため、負荷変動の波形の形状をクランプ機構4の動作が良好である場合に記録される波形の形状と比較することで、クランプ機構4の摩耗を抑制しながらクランプ機構4の動作不良を検出することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0053】
検査パターンは、ステップ状のものに限られず、例えば主軸の角度位置をランプ状に変化するパターン等、任意のパターンとすることができる。また、ステップ状の検査パターンを用いる場合であっても、負荷の継時変化から抽出する特徴によっては、アンクランプの開始から主軸の実質的な駆動を開始するまでの第1時間の値をゼロに設定してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 主軸
2 駆動機構
3 負荷検出部
4 クランプ機構
5 制御装置
51 主制御部
52 動作確認部
53 クランプ制御部
54 回転制御部
55 判定部
56 出力部
100 テーブル装置