【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ただし現在利用可能な自動生検銃にはいくつかの不具合がある。
【0017】
第一に、従来の銃は構造が複雑なことである。各種構成要素が複雑な外形形状を有しているので、これらを組み付けるのが至難である。現在このタイプの銃の組付けには、作業者は約8〜10分を要する。市場がこれらの銃の低コスト化を要求していることに鑑みれば、組付けに要する時間はできるだけ短くあるべきである。
【0018】
とりわけ、大部分の構成要素はプラスチック製で成形によって得られるので、対抗面、歯および切込みを有する構成要素の複雑な形状は、製造コストに悪影響を与える。
【0019】
構成要素の複雑な形状にもかかわらず、従来の銃では、キャリッジの双方向移動は往々にして滑らかではなく、時には急発進も見られる。
【0020】
もう1つの不具合は、医療従事者がスプリングを再加圧し、キャリッジを後方位置に戻すためには、常に両方のスタッドを操作しなければならないことである。これは、往々にして把持位置を変えることを強いるので、操作が煩わしくなりかねない。
【0021】
従来の自動生検銃に見られるさらに別の不具合は、キャリッジを押すために使用するスプリングがしばしば湾曲するので、すなわち横方向に歪むので、これによりその位置エネルギーの全てが利用されないことである。
【0022】
米国特許第5284156号は、一列に配置され、等しい走路に沿って移動可能な2つのキャリッジが設けられた生検銃を記載している。
【0023】
米国特許第5036860号は、単一キャリッジを有し、そのキャリッジが銃本体内のカムによって案内される生検銃を記載している。このカムは、直線部分と、キャリッジが向きを変える湾曲部分とを含む経路として配置される。
【0024】
米国特許出願公開第2003/0073929号明細書には、銃本体の半分を他の半分に入れ子式に挿入することによってキャリッジが装填される銃が記載されている。キャリッジを開放して前方へ摺動させるために、操作ボタンが後部に設けられている。
【0025】
米国特許第5243994号は、銃本体上を摺動するコッキング部材(
図3の符号56)を使ってキャリッジがユーザによって装填される生検銃を記載している。このコッキング部材は、駆動部材42に係合するように設計された駆動タング56bを含む。レバーアーム部分58bは、キャリッジの摺動をロックするための連鎖に作用するラチェットホイール66を駆動する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
そこで本発明の目的は、現在利用可能な解決策の不具合を簡単かつ効果的に解決し、同時に構造が簡単で、医療従事者にとって、組み立てが短時間で容易に行え、経済的かつ機能的である自動生検銃を提供することである。
【0027】
したがって、本発明は、請求項1に記載の自動生検銃に関する。
特に、この銃は、例えば上部本体部分および下部本体部分によって画定される箱形本体と、箱形本体から片持ち梁状に延びる針とを、長手方向と定義される方向に備える。
【0028】
この針は、組織試料を収集するための収集空洞部を備えたスタイレットと、カニューレとを含む。スタイレットは、収集空洞部がカニューレを出た後ギロチン作用を伴ってカニューレに入ることができるように、カニューレ内に摺動可能に収容されている。
【0029】
第1押し部材は、カニューレに拘束され、カニューレが箱形の本体から完全に延出する前方位置と、カニューレが部分的に前方に延出する、すなわち一部後退している後方位置との間で移動可能である。
【0030】
第2押し部材は、スタイレットに拘束され、箱形本体内で、スタイレットが箱形本体から完全に延出する前方位置と、スタイレットが一部箱形体内に挿入される後方位置との間で移動可能である。
【0031】
明らかに、第2押し部材に対する第1押し部材がとる位置に応じて、収集空洞部の露出および収集空洞部のカニューレへの挿入のいずれかがもたらされる。
【0032】
銃はさらに、第1押し部材および第2押し部材に対抗する弾性対抗手段を備えている。この弾性手段は、発射時にカニューレおよびスタイレットをそれぞれの前進位置にもたらすために、長手方向の押し込み力を印加する機能を有する。
【0033】
この銃は、第1押し部材および第2押し部材を駆動するために、ユーザによって操作可能な駆動手段を備える。駆動手段は、銃を装填する、すなわち発射ができるように上記の弾性手段を装填するように設計されている。
【0034】
公知の解決策とは異なり、この銃は有利な点として、箱形本体の内側に、第1および第2押し部材を案内する内側ガイドを備える。言い換えれば、押し部材は、それぞれの内側ガイドの従動部材として設計される。第1押し部材の内側ガイドおよび第2押し部材の内側ガイドは、カニューレに対してスタイレット先端を露出させるように、長手方向に沿って異なる位置に配置されている。
【0035】
ここに提案する解決策により、銃構造は著しく容易となる。実際、内側ガイドはそれぞれに、後方位置にて押し部材の停止部を有するように設計することができる。このようにして、弾性部材の押圧作用に対して押し部材を安定に保持するために公知の解決策で提供される歯や切り込みなどの複雑な保持システムを回避することができる
【0036】
本発明による銃は、従来の銃に比べて構成部品の数が少なく、組付け作業の簡素化を促すため、完成に要する時間は3分以下である。
【0037】
内側ガイドによって押し部材を駆動することにより、公知の解決策に対して、これらの要素の滑らかさおよび流動性が大幅に高まるという更なる利点が達成される。内側ガイドは、詰まったり、過度の摩擦を生じさせたりすることなく、それぞれの押し部材を効果的に案内する。これにより、弾性手段のエネルギーを最大限に利用することができる。
【0038】
好ましくは、第1押し部材の内側ガイドおよび第2押し部材の内側ガイドは、長手方向に沿って同じ長さ範囲を有する。すなわち、それぞれの押し部材、したがってそれに接続されたカニューレおよびスタイレットが同じ移動距離を走行することができる。この複数のガイドは、カニューレに対するスタイレットの最大可能露出量に対応する長さだけ、長手方向に沿って異なる位置に配置されている。言い換えれば、カニューレに対するスタイレットのストロークは、第1押し部材(カニューレ)のガイドを、箱形本体の遠位端により近く、すなわち、第2押し部材(スタイレット)のガイドに対して針寄りの位置に配置することによって得られる。
【0039】
好ましい実施形態では、各内側ガイドは主に、それぞれの押し部材の後方位置に対応する停止部を除いて、長手方向に延びている。実際には、この停止部は、長手方向を横切る方向に、例えば90度の角部、または90度より大きな角度をなす、ガイド自体の折り曲げ部である。この構成により、実際にはそれぞれの内側ガイドの従動部材である押し部材は、弾性手段の作用を克服することで一時的に停止部内にロックされる。発射時には、後述するように、押し部材はそれぞれのガイドの長手方向部分に向かって停止部から押し出される。
【0040】
第1押し部材は、
カニューレと一体であり、対応する内側ガイド内を摺動する第1固定部材と、
その長手方向に直交する軸線で第1固定部材に対して回動可能にヒンジ結合され、第1内側ガイドと係合する係合部を備え、上述したように、第1スライダが第1内側ガイドの従節のように動作する第1スライダと、
を備えるのが好ましい。
【0041】
第2押し部材は、
スタイレットと一体であり、対応する内側ガイド内を摺動する第2固定部材と、
その長手方向と直交する軸上で回転するように第2固定部材にヒンジ結合され、第2内側ガイドと係合する係合部分を備えた第2スライダと、
を備えるのが好ましい。
【0042】
押し部材の上記の構成により、固定部材が内部ガイドの折り曲げ部のない部分で摺動するだけでなく、スライダは内部ガイドの折り曲げ部のない部分でもある部分でも摺動することができるが、折り曲げ部には停止部があるため、弾性手段が加圧されていてもスライダはロックされたままである。この結果は、各固定部材に対するスライダの回転により得られる。実際、固定部材は、一方がカニューレに、他方がスタイレットに拘束され、したがって内側ガイドの長手方向の経路から外れることができないため回転できない。一方、スライダは折り曲げ部に追従することができる。
【0043】
スプリングは、それぞれの押し部材が前進位置にあるときには完全に延伸し(銃の内側でできるだけ)、その逆も同様であって、それぞれの押し部材が後退位置にあるときに完全に圧縮される。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態では、スプリングは、長手方向に対して横方向の変形を防止する適切な台座に収容される。すなわち、スプリングは従来の解決策でのように曲がることも歪むこともできず実質的に管状であるので、長手方向のみの変形を受ける。このようにして、その位置エネルギーを最大限に活用することができる。
一実施形態では、この銃は、
―第1ケーシングを備えた第1キャリッジアセンブリと、
―第2ケーシングを備えた第2キャリッジアセンブリと、
を備える。
【0045】
第1押し部材および対応の対抗弾性手段、すなわち第1スプリングは、第1キャリッジアセンブリの一部である。第1内側ガイドは、第1ケーシングの内壁に設けることができる。第2押し部材および対応の対抗弾性手段、すなわち第2スプリングは、第2キャリッジの一部である。第2内側ガイドは、第2ケーシングの内壁に設けることができる。
【0046】
好ましくは、2つのキャリッジアセンブリは、非常に簡単に箱形本体外で予め組み立てられ、箱形本体内に取り付けたり取り替えたりできるように、モジュラ式であり、箱形本体内で交換可能である。こうすると組付け作業を単純化し、組付け時間を最小化するのにも役立つ。
【0047】
駆動手段は、箱形本体に取り付けられ、前方位置と後方位置との間で摺動する装填スタッドからなることが好ましい。この装填スタッドは、使用者によって、例えば親指によって操作可能であり、箱形本体内に位置する第1押し部材と第2押し部材とそれぞれに係合するように設計された少なくとも1つの第1歯と1つの第2歯とを備える。
【0048】
公知の解決策とは異なり、本発明による銃の有利な点は、上述した2つの歯があるため、唯一の装填スタッドが、が互いに異なる時間で2つのそれぞれの距離を移動することによって第1押し部材と第2押し部材の両方を装填するように設計されていることである。この機能により、医療従事者は装填中に把持態様を変更することなく銃を効果的に使用することができる。
【0049】
装填スタッドは、湾曲可能となるように少なくとも部分的に可撓性を持たせるか、第2歯を揺動可能とすることが好ましく、これにより、第1押し部材が後方位置に導かれたときに第2歯が第2押し部材を乗り越えることを可能にし、他方、第1押し部材が後方位置に導かれたときに第2押し部材と係合することができ、それによって弾性手段が2回で、実際には単一スタッドによって装填される。代替手段では、装填スタッドは可撓性であり、第2歯は揺動している。この3つの解決策はすべて、銃の装填を、特に医療従事者にとって、保護手袋を着用していたとしても便利なものにしている。
【0050】
第2歯が揺動する場合、第2押し部材が後退位置に導かれたときに第2押し部材を噛合させるために、歯を初期下降位置に戻す、すなわち装填スタッドから突出させるリターンスプリングを銃に設けてもよい。
【0051】
装填スタッドはさらに、第2押し部材がその後方位置にあるときには第2押し部材をロック解除して発射トリガができるように設計されるのが好ましい。
【0052】
代替的にまたは付加的に、この銃は、使用者に向かって箱状本体の側方または後方に配置された発射ボタンを備える。この発射ボタンは、第2押し部材を弾性手段によって前方位置に移動させるために、第2押し部材をその停止部から解除するようになっている。
第2押し部材は、第2押し部材が後方位置から前方位置に開放されたときに、第1押し部材をその停止部から解除して突進させる開放レバーとしての傾斜面を備えることが好ましい。
【0053】
次に、本発明の銃の動作について説明する。
【0054】
最初、銃は未装填状態である。医療従事者は、第1および第2押し部材の弾性手段を装填するが、それを行うために装填スタッドを操作しなければならない。
【0055】
装填スタッドが前方位置から後方位置に第1移動を走行すると、第1押し部材を後方位置のその停止部に導いてロック状態にし、その対抗手段を加圧することができる。スタッドは、例えば適切なスプリングの復帰動作により前方位置に戻る。装填スタッドによる第1移動の走行は第2押し部材に影響を及ぼさず、第2押し部材はこの移動の影響を受けずにバイパスされる。この状況において、カニューレはスタイレットに対して後退し、収集空洞部が露出されてアクセス可能となる。
【0056】
装填スタッドが前方位置から後方位置に第2移動を走行すると、第2押し部材を後方位置のその停止部に導いてロック状態にし、その対抗手段を加圧することができる。スタッドはほぼ前進位置に戻る。この状況において、スタイレットがカニューレ内を摺動し、収集空洞部がカニューレの内側に導かれる。
【0057】
銃は、この状態で発射準備が整っており、医療従事者は針を患者の体に挿入する。
【0058】
装填スタッドを前方に押すことによって、または発射ボタンを押すことによって、第2押し部材は、その停止部から後方位置に開放される。弾性手段の押圧力により、第2押し部材がその前進位置に向かって前方に突進する。その結果、スタイレットが入れ子式にカニューレから部分的に出て、患者の組織を収容する収集空洞部を露出させる。
【0059】
第2押し部材は、その移動を停止かつ終了させる前方位置に到達する前に、第1押し部材を後方位置に停止していた第1押し部材にぶつかる(第1押し部材の後方位置の停止部が、第2押し部材の後方位置の停止部に対して箱形本体の遠位端により近いことを思い出されたい)。2つの押し部材の接触により、第1押し部材がその停止部から外れる。弾性手段の押圧力により、第1押し部材は前方の前進位置へと突進する。その結果、カニューレはスタイレット上を摺動し、患者の切断された組織を保持している収集空洞部を被覆する。
【0060】
この時点で、針は患者の体から引き出され、医療従事者は、収集空洞部を露出させ組織試料を採取するために、装填スタッドを後方位置に再び押し戻す。
【0061】
こうして銃は再使用できる態勢となる。