(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838067
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】液化ガスのための船舶格納システム
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20210222BHJP
F17C 3/02 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
B63B25/16 101B
F17C3/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-531365(P2018-531365)
(86)(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公表番号】特表2019-501064(P2019-501064A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】EP2016081871
(87)【国際公開番号】WO2017108756
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】15202067.3
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】サイード,ムハンマド・アフメール
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−204990(JP,U)
【文献】
国際公開第2014/132661(WO,A1)
【文献】
特開2013−124100(JP,A)
【文献】
特開昭52−051697(JP,A)
【文献】
特開昭54−003793(JP,A)
【文献】
特開昭50−071087(JP,A)
【文献】
米国特許第03677021(US,A)
【文献】
米国特許第03680323(US,A)
【文献】
国際公開第2009/147162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
F17C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化水素を貯蔵及び/または輸送するための船舶格納システムであって、前記システムが、前記船舶の船殻内部に球形の貨物タンク構造を備え、
(a)前記貨物タンクが、前記船舶の前記船殻上に取り付けられたスカート構造によって支持され、それを通って、前記タンクが、前記貨物タンクと前記船殻との間に保持空間[10]を伴って、前記貨物タンク[4]の外層と前記船殻との間の直接接触を伴わずに、前記船舶に取り付けられ、前記貨物タンクが、前記スカートの上側部分と前記スカートの下側部分との間に構造用異材継手[8]を備え、
前記システムが、
(b)ポンプ塔[1]内に位置する液化ガスを充填及び放出するためのポンプと、
(c)タンクカバー[2]と、
(d)前記貨物タンク[4]の前記外層に適用された貨物タンク絶縁層[3]と、をさらに備え、
−前記船舶の船殻[6]の内側には、前記保持空間[10]側で内面ライニングによって被覆され、前記内殻の縦辺において任意の好適な箔である、絶縁層[11]が設けられ、前記船舶の船殻構造[9]の底部上の貨物タンク下方の辺には、適用される諸条件下で最小限の膨張及び/または収縮を示すメンブレンがあり、
−前記保持空間[10]が、不活性ガスで充填され、圧力を管理するための手段、及び温度を監視するための手段が設けられており、
−前記スカートが、前記スカートと前記内殻[6]の内側との間にある絶縁層を備える取り付け機構によって前記船殻構造上に取り付けられており、
−前記タンクカバー(2)には、内部絶縁層[12]が設けられる、船舶格納システム。
【請求項2】
前記不活性ガスが、低温の窒素ガスである、請求項1に記載の船舶格納システム。
【請求項3】
貨物タンク絶縁層[3]が、ガス状水素で充填される、請求項1または2に記載の船舶格納システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶格納システムを備える、海上輸送船。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶格納システムの絶縁材を管理するためのプロセスであって、前記保持空間[10]を低温の窒素ガスで充填することと、前記保持空間[10]内の前記窒素の圧力を、水素を包含する前記貨物タンク[4]の内圧よりも低い圧力で維持することとを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化水素を貯蔵及び/または輸送するための船舶格納システム、及び前記格納システムを備える海上輸送ベッセルに関する。さらに、本発明は、前記格納システムの絶縁材及びその漏れを管理するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、精油及び肥料産業において、ならびにいくつかの他の化学プロセスにおいて用いられる重要な工業用ガスである。水素は、特に輸送分野におけるエネルギー担体として、著しい役割を果たし得ることが予想される。
【0003】
概して、ガスは、近距離については、パイプラインを介して圧力によって輸送することができる。長距離については、ガスは、一般的には海上輸送によって輸送される。ガス状水素用の好適なパイプラインネットワークがない場合、かつ輸入目的では、液体形態の水素は、その供給及び配送のための最も効果的な方法の1つであることが予想される。体積の増大に起因して、かつ経済的に顕著な量のエネルギーを移動させるために、ガス状水素は、好適に液化され、その後液体形態で輸送される場合がある。水素を全世界的に配送するための最も実用的な方法の1つは、海上輸送による、すなわち大型船舶/タンカーによる液体水素の輸送である。そのような船舶またはタンカー上の格納建造物は、何らかの非常に特異な性質を有する液体水素の輸送に好適でなければならない。
【0004】
臨界温度及び臨界圧力というガスの2つの性質は、それらの液化のための方法の開発において重要である。ガスの臨界温度は、どれだけ圧力が印加されようとも液化され得ない温度及びそれを上回る温度である。その臨界温度においてガスを液化するために必要とされる圧力は、臨界圧力と呼ばれる。ガス間の臨界温度の差は、いくつかのガスが他のものよりも液化しやすいことを意味する。例えば、二酸化炭素の臨界温度は比較的高く(31℃)、このことは、室温または室温付近で(約73バールの臨界圧力で)比較的容易に液化され得ることを意味する。比較すると、LNGの臨界温度は、約−82℃であり、臨界圧力は、約45バールである。
【0005】
臨界温度及び圧力に依存して、あるガスは、他のものよりも容易に周囲温度またはその付近で液化され得ることが理解されよう。特に、必要とされる圧力が比較的小さい場合、液化された形態でのバルク輸送を経済的に可能にする比較的大型の圧力ベッセルを建造することができる。反対に、液化に高圧を必要とする場合、より大きな圧力ベッセルを建造することは難易度が高く、このことは、依然として液化ガスのバルク輸送に対する経済性に関連がある。
【0006】
一部の液化石油ガス(LPG)のような特定のガスの輸送中、圧力及び冷蔵/冷却を併せて適用すること含む対策を利用して、ボイルオフガスを再液化し、ガスの液体形状を維持する。天然ガスのような特定のガスに対しては、臨界圧力(約45バール)はかなり高いが、一方で臨界温度(約−82℃)はかなり低い。一般的には、そのようなガスは、通常の沸点まで冷却され、周囲温度またはその付近かつ大気圧で輸送される。例えば、液化天然ガス(LNG)は、大気圧で約−163℃で輸送される。液体水素は、同様に取り扱われる必要がある。水素が大気圧において完全な液体状態であるためには、−253℃まで冷却する必要がある。
【0007】
WO2009/147162A1には、液化ガス、例えば液化天然ガス、液化窒素、酸素、二酸化炭素、または水素を貯蔵するための極低温コンテナが開示されている。
【0008】
極低温液化ガスを大気圧に近い圧力で運送するためのタンクが既知である。例えば、US3,339,5151Aは、揮発性液体の大気圧貯蔵及び輸送に関する。他の液体ガス貯蔵装置及びその運搬用ベッセルは、JP3401727B2に開示されている。そのような極低温格納システムは、一般的には2つの主なタイプ、すなわちメンブレン格納システムと、いわゆるIMOタイプB格納システムとに分類することができる。例えば、GB2,523,581Aは、IMOタイプの海上ベッセル用極低温システムを開示している。主にLNGを運送するために利用される格納システムのタイプは、メンブレンタイプの格納システムである。このシステムでは、メンブレンは、船舶内殻によって支持され、貨物の荷重は、内殻によって担持される。極低温格納システムの第2のタイプに対しては、船舶の内殻及び内側から離間されるか、または分離された、構造的に自己支持型または自立型の貨物タンクが利用される。そのような貨物タンクは、船舶の船殻から構造的に独立しているため、船殻の強度が、タンクの格納機能には関連していない。そのような独立型IMOタイプBの貨物格納システムの1つの設計は、球形のタンクを利用し(米国特許第3,677,021号及び3,680,323号(MossMaritime)を参照のこと)、球形のタンクは、船舶内殻の上方に位置するタンク底部を備える金属製の円筒型スカート上の船倉内に取り付けられている。他のIMOタイプB貨物格納システムは、矩形/角柱型タンク(IHI SPB、日本)を利用し、これは、タンクの真下にあるいくつかの支持部上で支持される。
【0009】
効率的な輸送のためには、極低温格納システム内に貯蔵された液化ガスの温度が、充填されたときの温度に近いままであることが必要とされる。格納システム内への熱侵入は、運搬された液化ガスのボイルオフにつながり、生成されたガスは、タンクから取り除かれない場合、タンク内での圧力が増大する。天然ボイルオフガス(NBOG)を管理するための手段は、ボイラ及び/もしくはエンジンにおける利用、または再液化を含む。しかしながら、再液化は、非常に著しい電力量を必要とし、したがって、大規模な発電設備のオンボードでの存在も必要とする。さらに、LNG運搬船に対しては、LNG運搬船の従来用いられていた推進システムである蒸気タービンの代わりに、二元燃料ディーゼル電気(DualFuelDieselElectric(DFDE))推進システムが次第に用いられており、燃料効率を向上させている。蒸気タービンは、DFDEのものよりもはるかに低い効率を有する。しかしながら、DFDEの使用により、過剰なガスの有用性の状況が、LNG運搬船に関する懸念となる。したがって、液化ガスのボイルオフ率(BOR)の低減が所望され、現在、球形のタンクを用いて稼働中のLNG運搬船は、0.15%のBORが保証されているが、しかしながら、新たに建造されたLNG運搬船に対しては、最大率0.1%であることも知られている。新たな運搬船では、格納システムは、タンク内への熱侵入を防止するために厳重に絶縁されている。2つの主な熱侵入領域は、1つが周囲から、第2には金属スカート構造からの電動を通して、に分類することができる。
【0010】
IMOタイプBの球形貨物格納システムは、主にLNG海上輸送で用いられるが、そのようなシステムもまた、液体水素、液体窒素、液体酸素等のような他の液化ガスを運搬するために考慮され得る。しかしながら、他の貨物の運搬は、他の特定の技術的要件の必要性につながり得る。例えば、液体水素貨物に対しては、絶縁材の増大に従ってBORの増大が予想される。液体水素の単位体積あたりの潜熱は、LNGのもののおよそ1/7である。さらに、液体としての水素の温度(その通常沸点における)と周囲温度との間の温度差が、LNGの同等の温度差の1.5倍に近い。結果として、液体水素は、同じ周囲温度におけるLNGと比較して、気化が約10倍容易である。このことは、水素格納システム内への熱侵入を低減させてBORを許容可能な限度内に維持するための新規な解決策の発見の必要性を発生させる。
【0011】
IMOタイプBの球形貨物格納システムの現在の設計においては、球形のタンクは、いわゆるスカート構造によって支持され、これは、舶上に取り付けられた、船舶の船殻の上方でタンクを保持する構造である。一般的には、スカート構造は、上側部分で球形のタンクの周辺部に溶接され、下側部分で船舶の船殻に溶接された金属板である。スカート構造は、船殻構造に堅固差を提供し、船殻構造からタンクへの応力の転移を最小限にする。例えば、US3,677,021を参照のこと。IMOタイプBの球形貨物格納システムにおけるスカート構造は、構造用異材継手(STJ)をさらに包含する。構造用異材継手は、断熱層または熱バリアとして機能し、これは、伝導性材料間の熱エネルギーの流れを低減または防止するためのアセンブリ内に置かれた低い熱伝導率の要素である。現在のIMOタイプBの球形貨物格納システム内のスカートからのタンク内への熱伝導は、貨物タンク内への総熱侵入20〜30%の範囲内であることが知られている。残りの熱侵入は、環境から船舶の船殻/船倉空間内に、かつ貨物タンク内に、または開放デッキ上に露出したドーム領域を通してである。同様に、自己支持型の角柱形IMOタイプB(SPB)タンクに対しては、熱侵入は、支持部及び周囲を通してである。熱侵入は、タンク外面を絶縁することによって低減される。タンクの定期的な膨張及び収縮は、課題をもたらし、予期されるベッセルの寿命に対するこれらの条件に応じるために、注意して絶縁材を設計及び設置しなければならない。IMOタイプBのタンク(貨物格納システム)が主にLNG海上輸送で利用される場合、それは、液体水素、液体窒素、液体酸素、または他の液化ガスを運搬することに関しても考慮され得る。液体水素等の貨物の運搬が考慮される場合、その後、大幅な絶縁材の増大に伴うBORの増大が予想される。タンク内への熱侵入を可能な限り高い範囲まで低減する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特に液体水素の輸送のために、船舶の貨物タンク内への熱侵入を低減させるための手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって、本発明は、液化水素を貯蔵及び/または輸送するための船舶格納システムを提供し、当該システムは、船舶の船殻内部に球形の貨物タンク構造を備え、
(a)貨物タンクが、船舶の船殻上に取り付けられたスカート構造によって支持され、それを通って、タンクが、貨物タンクと船殻との間に保持空間[10]を伴って、貨物タンク[4]の外層と船殻との間の直接接触を伴わずに、船舶に取り付けられ、貨物タンクが、スカートの上側部分とスカートの下側部分との間に
構造用異材継手[8]を備え、
当該システムが、
(b)ポンプ塔[1]内に位置する液化ガスを充填及び放出するためのポンプと、
(c)タンクカバー[2]と、
(d)貨物タンク[4]の外層に適用された貨物タンク絶縁層[3]と、をさらに備え、
−船舶の船殻[6]の内側には[11]、保持空間[10]側で内面ライニングによって被覆され、内殻の縦辺において任意の好適な箔である、絶縁層が設けられ、船舶の船殻構造[9]の底部上の貨物タンク下方の辺には、適用される諸条件下で最小限の膨張及び/または収縮を示すメンブレンがあり、
−保持空間[10]が、不活性ガスで充填され、圧力を管理するための手段、及び温度を監視するための手段が設けられており、
−スカートが、スカートと内殻[6]の内側との間にある絶縁層を備える取り付け機構によって船殻構造上に取り付けられており、
−タンクカバー
[2]には、内部絶縁層[12]が設けられる。
【0014】
本発明の格納システムは、海上輸送ベッセルの使用に、特に液体水素の輸送に理想的に適合する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】先行技術による球形のタンク貨物格納システムを概略的に示す。
【
図2】本発明による球形のタンク貨物格納システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従来のLNGコンテナの貨物タンクの絶縁は、約45℃(周囲温度)に対するタンク温度における−163℃の温度差、すなわち−208℃あたりを管理するように設計される。液体水素のケースでは、この差は、およそ−298℃である。分析によって、非常に大きな液体水素コンテナ船において約0.3〜0.4%程度のBORを有するためには、必要とされる絶縁材料の量は、厚さ
600〜1000mm程度またはそれ以上である可能性があり、多層構成の可能性が最も高いことが示される。絶縁材がより厚い(LNGコンテナにおける現在の慣行の3〜5倍以上)場合、このことは、30〜40年の寿命に必要とされる耐用性及び信頼性に関する著しい懸念を生じさせる。とりわけ、関連するBORは、著しく高すぎ(LNG産業における0.1〜0.15%と比較して)、商業規模の大型船舶に対するベッセル燃料補給要求よりも高いことが予想される。このことは、(a)タンク内への熱侵入を低減させてBORを許容可能な限度内に維持し、(b)液化ガスを運搬するベッセルから必要とされる耐用性を意図したロバストな絶縁の解決策を開発し、(c)タンク周囲の絶縁空間を管理するための新規な解決策の発見の必要性を発生させる。
【0017】
本発明によれば、対策の組み合わせは、上記の問題に対する解決策を提供する。
【0018】
船殻の内側(「内殻」)は、例えばポリウレタンフォーム、フェノール樹脂フォームまたは同様のもの等の絶縁材料、好ましくはポリウレタンフォーム(PUF)パネルを用いて絶縁されるが、しかしながら他の絶縁材料もまた考慮され得る。内殻の絶縁層は、両辺、及び任意に、保持空間の上側部分において、内面ライニングによって被覆され、内殻の縦辺において、木材、スズ箔等の好適な箔、好ましくは抗放射箔であり、貨物タンクの下方の辺には、適用される諸条件下で最小限の膨張及び/または収縮を示すメンブレン、好ましくは、液体水素温度に耐えるために好適なメンブレンがある。好ましくは、そのようなメンブレン材料は、インバー鋼である。他の好適な材料は、当技術分野で既知のように、ステンレス鋼、極低温条件またはSPS(サンドイッチプレートシステム)に好適な複合材料から選択され得る。絶縁材を向上させることは別として、そのようなメンブレンはまた、貨物格納タンクの故障の場合の二次的バリアとしても機能する。液体の漏れは、結果として、本発明によるメンブレンからなる船舶の内殻絶縁タンク構造の底に集められる。
【0019】
さらに、タンクカバーには、好適な材料の、及び許容可能な厚さの内部絶縁層が設けられる。適切な絶縁材料として適するために、これらの材料は、タンクカバー自体が作られる材料と比較して低減された熱導電性の要件に適合する必要があるが、さらに好ましい付加的な特性は、極低温温度に耐える能力であり、別の好ましい特性は、耐火性である。好ましくは、絶縁材料は、湿気を含む環境要因に対して耐性である。絶縁材のために好適な材料は、木材、複合材料及び高密度発泡体から選択される。タンクカバーを絶縁するために利用される絶縁材料は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)もしくは射出成形複合物、または極低温温度で用いるために好適な任意の他の材料、またはそのような材料の組み合わせから選択される。
【0020】
さらに、保持空間には、圧力を管理するための手段と、温度を監視するための手段とが設けられている。このことは、LNG輸送のための現行の設計で用いられる乾燥空気の代わりに、不活性ガスで、好ましくは低温での窒素ガスで保持空間を充填することを可能にする。窒素は、例えば炭素鋼の43、ステンレス鋼の16、PUFの0.03及びパーライトの0.31と比較して、25℃で0.024kW/(m.k)の熱伝導率を有する。保持空間内に充填された窒素ガスは、絶縁層を通した貨物タンクから保持空間内へのあらゆるガス蒸気の漏れのリスクを取り除いて、絶縁効果全体を向上させることと、貨物タンク内への熱侵入を低減させることとを含む、さまざまな目的を満たす。したがって、本発明は、本発明の格納システムを絶縁するためのプロセスをさらに提供し、保持空間を低温の窒素ガスで充填する一方で、保持空間内での窒素の圧力を、液化ガスを包含する貨物タンクの内圧よりも低い圧力(約3〜5ミリバール)で維持することを備える。好ましくは、保持空間内の温度は、−10℃〜−60℃の間に、より好ましくは−30℃〜−50℃の間に維持される。
【0021】
好ましくは、船舶の船殻及び/または保持空間の内側の絶縁層には、例えばバラストタンクから、船舶の(金属)外板における亀裂を介して船倉空間絶縁材に進入する、船倉空間絶縁材内への可能性のある海水の侵入を監視するための水分検出センサがさらに設けられる。これらのセンサは、保持空間内に液体がある場合には警告を与える。
【0022】
保持空間は、断続的に検査される必要がある場合がある。その目的のために、保持空間にはまた、検査の準備のための空間及び乾ドック等を通気するための空気ラインが設けられる。さらに、該システムは、空気及び/またはガスを通気させるための圧力解放弁及びラインによって保護される。
【0023】
本発明船の舶格納システムは、貨物タンクの外層に適用された貨物タンク絶縁層をさらに備え、当該層は、従来のLNG運搬船におけるものよりもいくぶん厚く、既存の利用されている厚さ(すなわち、絶対的には最大で150mm)のおよそ125〜175%の範囲内であり得る。絶縁材料は、タンクカバー絶縁材で用いられるものに類似していてもよい。現行のLNGコンテナ(LNGC用)では、タンク周囲の絶縁空間(
図1、参照番号[3]参照)は、窒素ガスでパージ処理される。LNGC上の絶縁空間を十分にパージ処理を行うため(保持空間及び/または貨物タンクからの−軽度な−漏れを管理するため)に、窒素(液化温度−196℃)が用いられる場合、液体水素貨物タンクに絶縁空間に適用されると液化し凍結する。液体水素コンテナシステムでの用途に対しては、本質的に不活性であり、−253℃よりも低い液化温度を有するガスを、漏れ検出及び貨物タンク絶縁層に進入する窒素の排除のために利用することができる。これには、ヘリウム等のガスが好適である。しかしながら、ヘリウムは有限かつ高価であり、厚い絶縁材を有する大型ベッセルでは著しい量を必要とし、実使用におけるベッセルに対する課題をもたらす。したがって、本発明の一実施形態によれば、水素蒸気を用いて、貨物タンク絶縁層を充填する。よって、貨物タンク絶縁層には、貨物タンクからの漏れ検出のために、及び保持空間から貨物タンク絶縁層内への可能性のある窒素の侵入の排除のために利用されるガスを管理するために、圧力を管理するための手段が設けられる。したがって、本発明によれば、さらに漏れを管理するためのプロセス、すなわち本発明の格納システムの絶縁材からの漏れ検出及び窒素排除を提供し、貨物タンク絶縁層をガス状水素で充填することと、絶縁層内の水素圧力を、保持空間内の窒素圧力よりもわずかに高い一定の圧力に維持することとを含む。好適には、保持空間内の窒素圧力のほうがより低い限り、絶縁層内の水素圧力は、2〜10バール、好ましくは5〜7ミリバールの範囲内である。
【0024】
本発明の貨物タンクは、球形のタンクである。球形のタンクの構造には、スカート内の構造用異材継手(STJ)が設けられる。スカートの下側部分は、より低い温度に供されるため、スカートの下側部分の材料はそれに応じて選択され、そのため下側のスカートが絶縁される必要があり、さもなければSTJは底部に位置しなければならない。それに応じて、EP14197674.6に開示されるように、貨物タンクは、船舶の船殻上に取り付けられたスカート構造によって支持され、スカートは、スカートと内殻の内側との間にある絶縁層を備える取り付け機構によって船殻構造に取り付けられる。
【0025】
図1では、先行技術による、スカート及び船殻接続構造を備える球形のタンク貨物格納システムの一例が概略的に示され、[1]は、貨物ポンプと装填及び放出パイプラインを収容するためのポンプ塔であり、[2]は、タンクシステムの外面を取り囲む天候保護のための層を備えるタンクカバーであり、[3]は、周囲環境からの熱侵入を低減させるためのタンク絶縁層であって、ポリウレタンフォーム及び/もしくはフェノール樹脂フォーム、または発泡スチロール及び/もしくは乾燥窒素ガスの層のパネル絶縁部を備え、[4]は、貨物タンクの外層であり、[5]は、船舶の船殻であり、[6]は、船舶の船殻の内側であって、両面性である[7]はタンクスカートであり、それを通してタンクが船殻上に装着され、[8]は、構造用異材継手(STJ)であって、これは異なる材料の層を含み得る、スカートの上側部分とスカートの下側部分との間の断熱層であり、[9]は、バラスト空間を提供する船舶の船殻構造の二重底を示し、[10]は、保持空間であって、貨物タンクと船殻との間の空き空間であり、周囲温度の乾燥空気で充填される。
【0026】
図2では、本発明による球形のタンク貨物格納システムの一例が示され、番号[1]〜[10]は、
図1におけるものと同じ特徴を指し、さらに、[11]は、内殻絶縁層を指し、[12]は、タンクカバー絶縁層であり、[13]は、給気ラインであり、[14]は、窒素用ラインであり、[15]は、空気/ガスを通気させるためのラインである。
図2には、水素のためのラインと、圧力を管理するための手段と、漏れ検出のための手段とが示されていないが、しかしながらこれらは、貨物タンク絶縁層[3]が水素で充填され、一定の圧力下で維持される本発明の実施形態に存在する。
〔態様1〕
液化水素を貯蔵及び/または輸送するための船舶格納システムであって、前記システムが、前記船舶の船殻内部に球形の貨物タンク構造を備え、
(a)前記貨物タンクが、前記船舶の前記船殻上に取り付けられたスカート構造によって支持され、それを通って、前記タンクが、前記貨物タンクと前記船殻との間に保持空間[10]を伴って、前記貨物タンク[4]の外層と前記船殻との間の直接接触を伴わずに、前記船舶に取り付けられ、前記貨物タンクが、前記スカートの上側部分と前記スカートの下側部分との間に構造転移継手[8]を備え、
前記システムが、
(b)ポンプ塔[1]内に位置する液化ガスを充填及び放出するためのポンプと、
(c)タンクカバー[2]と、
(d)前記貨物タンク[4]の前記外層に適用された貨物タンク絶縁層[3]と、をさらに備え、
−前記船舶の船殻[6]の内側には、前記保持空間[10]側で内面ライニングによって被覆され、前記内殻の縦辺において任意の好適な箔である、絶縁層[11]が設けられ、前記船舶の前記船殻構造[9]の底部上の貨物タンク下方の辺には、適用される諸条件下で最小限の膨張及び/または収縮を示すメンブレンがあり、
−前記保持空間[10]が、不活性ガスで充填され、圧力を管理するための手段、及び温度を監視するための手段が設けられており、
−前記スカートが、前記スカートと前記内殻[6]の内側との間にある絶縁層を備える取り付け機構によって前記船殻構造上に取り付けられており、
−前記タンクカバー(2)には、内部絶縁層[12]が設けられる、船舶格納システム。
〔態様2〕
前記不活性ガスが、低温の窒素ガスである、態様1に記載の船舶格納システム。
〔態様3〕
貨物タンク絶縁層[3]が、ガス状水素で充填される、態様1または2に記載の船舶格納システム。
〔態様4〕
貨物タンク絶縁層[3]には、漏れ検出のための手段と、さらに圧力を管理するための手段とが設けられる、態様3に記載の船舶格納システム。
〔態様5〕
前記絶縁層[11]及び/または前記保持空間[10]には、水分検出センサが設けられる、態様1〜4のいずれか1項に記載の船舶格納システム。
〔態様6〕
態様1〜5のいずれか1項に記載の船舶格納システムを備える、海上輸送ベッセル。
〔態様7〕
態様1〜5のいずれか1項に記載の船舶格納システムの絶縁材を管理するためのプロセスであって、前記保持空間[10]を低温の窒素ガスで充填することと、前記保持空間[10]内の前記窒素の圧力を、水素を包含する前記貨物タンク[4]の内圧よりも低い圧力で維持することと、を含む、プロセス。
〔態様8〕
前記保持空間[10]内の前記温度が、−10℃〜−60℃に維持される、態様7に記載のプロセス。
〔態様9〕
前記貨物タンク絶縁層[3]には、漏れ検出のための手段、及び圧力を管理するための手段が設けられ、前記貨物タンク絶縁層[3]をガス状水素で充填することと、前記絶縁層[3]内の前記水素の圧力を前記保持空間[10]内の前記窒素ガスの圧力よりもわずかに高く維持することと、を含み、前記窒素ガスが、3〜5ミリバールの圧力である、態様7または8に記載のプロセス。