(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
他に説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、単語「又は」は「及び」を含むことを意図している。さらに、核酸又はポリペプチドについて与えられたすべての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、及びすべての分子量又は分子量の値は近似値であり、説明のために提供されていることを理解されたい。「概ね」、「約」、「実質的」などの用語は、説明されている文脈及びパラメータに基づいて当業者人によって理解されるように値/説明を修飾し、理解されるためにさらなるガイダンスが必要とされる場合、5%の値が挙げられ得る。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。用語「含む」は「含有する」ことを意味する。略語「e.g.」はラテン語の例示に由来し、本明細書では非限定的な例を示すために使用される。したがって、略語「e.g.」は「例えば」と同義である。記載されたパーセント配列同一性は、参照配列と同一である、それぞれ所与のDNA、RNA又はタンパク質内の核酸残基又はアミノ酸残基の百分率を指す。
【0018】
矛盾がある場合は、本明細書(用語の説明を含む)が優先するものとする。さらに、すべての材料、方法、及び実施例は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
【0020】
本開示は、腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍相乗剤の調製におけるカスパーゼ活性化剤の使用である。上記腫瘍溶解性ウイルスは、少なくとも1つのアルファウイルスから選択される。
【0021】
本開示は、腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍相乗剤の調製におけるカスパーゼ活性化剤の使用である。上記腫瘍溶解性ウイルスは、少なくとも1つのアルファウイルスから選択される。
【0022】
好ましくは、上記アルファウイルスは、M1ウイルス及びゲタウイルスからなる群より選択される少なくとも1つである。M1ウイルスは、ゲタ様ウイルスに属し、ゲタウイルスとの相同性が発見された関連ウイルスにおいて97.8%と高いことが報告されている(Wen et al. Virus Genes.2007;35(3):597−603)。
【0023】
例えば、M1ウイルス及びゲタウイルスに関する情報は、中国特許104814984Aを参照することができる。
【0024】
本明細書に記載の上記アルファウイルス(例えば、M1ウイルス、ゲタウイルス)は、既存の腫瘍溶解性ウイルスに加えて、自然変異、突然変異(自然、強制又は選択的)、又は遺伝的修飾(例えば、配列の一部の付加、欠失又は置換)を受けたウイルスを含んでもよい。本明細書に記載の腫瘍溶解性ウイルスは、上記の変更を受けたウイルスものを含む。好ましくは、上記変化は、該腫瘍溶解性ウイルスが本開示に記載の機能を発揮するのを妨げない。
【0025】
上記腫瘍溶解性ウイルスは、例えば、ジーンバンク登録番号EF011023に記載のM1ウイルス、又はジーンバンク登録番号EF011023に記載のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%であるゲノムを有するウイルスであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記腫瘍溶解性ウイルスは、2014年7月17日に中国典型培養物保蔵センターに寄託されたM1ウイルス(寄託番号:CCTCC V201423)である。腫瘍溶解性ウイルスは、寄託番号CCTCC V201423の上記M1ウイルスのゲノムヌクレオチドとの同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%であるゲノムを含んでもよい。
【0027】
他の実施形態において、上記腫瘍溶解性ウイルスは、ジーンバンク登録番号EU015062に記載のゲタウイルスであってもよいか、又はジーンバンク登録番号EU015062に記載のゲノムヌクレオチド配列との同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%であるゲノムを有するウイルスであってもよい。
【0028】
特定の実施形態において、上記腫瘍溶解性アルファウイルスは、2014年7月17日に中国典型培養物保蔵センターに寄託されたM1ウイルス(寄託番号:CCTCC V201423)である(中国特許104814984A)。
【0029】
上記使用のいくつかの実施形態において、上記カスパーゼ活性化剤は、カスパーゼ−3、7、8及び9の活性化剤からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0030】
理解できるように、カスパーゼ活性化剤は、上記カスパーゼの少なくとも1つの発現レベルを向上できるか、或いは上記カスパーゼの少なくとも1つのタンパク質活性を向上できる組成物、化合物、物質、又は薬剤である。いくつかの実施形態において、上記カスパーゼ活性化剤は、NCBI遺伝子ID:836に記載のカスパーゼ3、NCBI遺伝子ID:840に記載のカスパーゼ7、NCBI遺伝子ID:841に記載のカスパーゼ8、又はNCBI遺伝子ID:842に記載のカスパーゼ9に対して有効であるか、それを標的とするか、それを用いて調製されるか、又はそれに対して特異的である。他の実施形態において、上記カスパーゼ活性化剤は、NCBI遺伝子ID:836に記載のカスパーゼ3の変異体、NCBI遺伝子ID:840に記載のカスパーゼ7の変異体、NCBI遺伝子ID:841に記載のカスパーゼ8の変異体、又はNCBI遺伝子ID:842に記載のカスパーゼ9の変異体に対して有効であるか、それを標的とするか、それを用いて調製されるか、又はそれに対して特異的である。上記変異体タンパク質は、例えば、カスパーゼタンパク質と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、カスパーゼ活性化剤は、カスパーゼアゴニストである。いくつかの実施形態において、カスパーゼ活性化剤は、カスパーゼ脱阻害剤であり得る。いくつかの好適実施態様において、カスパーゼ活性化剤は、IAP阻害剤であり得る。好ましくは、上記IAP阻害剤は、cIAP−1、cIAP−2及びXIAPからなる群より選択される少なくとも1つのIAPを標的とする。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記IAP阻害剤は、IAPタンパク質の活性を阻害する物質、IAPタンパク質を分解する物質、IAPタンパク質のレベルを低下させる遺伝的手段である。特定の実施形態において、上記IAPタンパク質の活性を阻害する物質、IAPタンパク質を分解する物質は、タンパク質又は化合物からなる群より選択される。特定の実施形態において、このような化合物は、Smacタンパク質、又はLCL161及びビリナパントなどのSmac様化合物から選択される。
【0033】
IAPタンパク質の活性を阻害する他の化合物であって、本明細書に記載のIAP阻害剤として適用できるものは、AT406(SM−406)、BV−6、SM−12d、GDC−0152、GDC−0197、SM−164、HGS、1029、LBW−242、WO2014060767、WO2014060768、WO2014060770、WO2014026882、JP1400、JP1201、JP1584、LBW242を含む。本明細書に記載されるように使用可能なさらなるIAP阻害剤は、Rama Rathore(アポトーシス;2017,22:898-919; その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0034】
さらなる実施形態において、上記IAPタンパク質のレベルを低下させる遺伝的手段は、RNA干渉(RNAi)剤、マイクロRNA、遺伝子編集又は遺伝子ノックアウト材料である。
【0035】
本発明の好適な実施形態において、上記IAPタンパク質阻害剤はIAPのRNA干渉断片、又はIAPに対する抗体である。いくつかの実施形態において、上記IAP阻害剤は、cIAP−1に記載のNCBI遺伝子ID:329、NCBI遺伝子ID:330に記載のcIAP−2、又はNCBI遺伝子ID:331に記載のXIAPに対して有効であるか、それを標的とするか、それを用いて調製されるか、又はそれに対して特異的である。他の実施形態において、上記IAP阻害剤は、NCBI遺伝子ID:329に記載のcIAP−1の変異体、NCBI遺伝子ID:330に記載のcIAP−2の変異体、又はNCBI遺伝子ID:331に記載のXIAPの変異体に対して有効であるか、それを標的とするか、それを用いて調製されるか、又はそれに対して特異的である。上記変異体タンパク質は、上記IAPタンパク質と、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有することができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記IAP阻害剤は抗体である。上記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び/又はIAP結合抗体断片であり得る。上記抗体は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、又はヒト抗体であり得る。上記抗体断片は、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、Fd、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、又はVL若しくはVHドメインであり得る。上記抗体は、例えばタグ、検出可能な標識、又は細胞毒性薬に結合した結合物の形態であり得る。上記抗体は、アイソタイプIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)、IgA、IgM、IgE又はIgDであり得る。
【0037】
上記IAP阻害剤は、例えば、IAPの発現を減少又は除去する低阻害性核酸分子(低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、及び小ヘアピンRNA(shRNA)など)をさらに含む。
【0038】
このような低阻害性核酸分子は、互いにハイブリダイズして1つ以上の二本鎖領域を形成する第1鎖及び第2鎖を含み得る。各鎖の長さは、約18〜28個のヌクレオチド、好ましくは約18〜23個のヌクレオチド、より好ましくは約18、19、20、21又は22個のヌクレオチドである。或いは、shRNA分子のように、一本鎖には、互いにハイブリダイズして二本鎖領域を形成することができる領域を含んでもよい。
【0039】
このような低阻害性核酸分子は、IAP発現を減少又は除去する能力を維持しながら修飾ヌクレオチドを含み得る。修飾ヌクレオチドは、安定性、活性及び/又は生物学的利用能などのインビトロ又はインビボの特性を改善するために含まれ得る。例えば、このような低阻害性核酸分子は、siRNA分子に存在する総ヌクレオチドに対して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%or 100%の修飾ヌクレオチドを含み得る。このような修飾ヌクレオチドは、例えば、デオキシヌクレオチド、2'−O−メチルヌクレオチド、2'−デオキシ−2'−フルオロヌクレオチド、4'−チオヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、及び/又は2'−O−メトキシエチルヌクレオチドを含み得る。siRNAなどの低阻害性核酸分子は、エキソヌクレアーゼによる分解を防ぐために、例えば「5−及び/又は3」−キャップ構造を含んでもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記IAP阻害剤は、配列番号1−12に記載の核酸と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一の核酸である。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記低阻害性核酸分子は、平滑末端を有する二本鎖核酸又はオーバーハングヌクレオチドを含み得る。存在する他のヌクレオチドは、例えば、ミスマッチ、バルジ、ループ、又はゆらぎ塩基対をもたらすヌクレオチドを含み得る。上記低阻害性核酸分子は、例えばリポソームに封入すること、又は生分解性ポリマー、ヒドロゲルもしくはシクロデキストリンなどの他の担体に組み込むことによって、投与用に製剤化することができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記低阻害性核酸分子は、平滑末端を有する二本鎖核酸又はオーバーハングヌクレオチドを含み得る。存在する他のヌクレオチドは、例えば、ミスマッチ、バルジ、ループ、又はゆらぎ塩基対をもたらすヌクレオチドを含み得る。上記低阻害性核酸分子は、例えばリポソームに封入すること、又は生分解性ポリマー、ヒドロゲルもしくはシクロデキストリンなどの他の担体に組み込むことによって、投与用に製剤化することができる。
【0043】
本開示は、腫瘍を治療するための医薬組成物をさらに提供する。上記医薬組成物は、(a)天然及び合成カスパーゼ活性化剤を含むカスパーゼ活性化剤、及び(b)腫瘍溶解性ウイルスを含む。上記腫瘍溶解性ウイルスは、少なくとも1つのアルファウイルスから選択され、例えば、M1ウイルス又はゲタウイルスである。特定の実施形態において、上記カスパーゼ活性化剤は、カスパーゼ−3、7、8及び9活性化剤からなる群より選択される少なくとも1つであり、好ましくはカスパーゼ脱阻害剤、より好ましくはIAP阻害剤である。いくつかの実施形態において、上記IAP阻害剤は、cIAP−1、cIAP−2及びXIAPからなる群より選択される少なくとも1つのIAPを標的とする。
【0044】
上記組成物の特定の実施形態において、上記IAP阻害剤は、IAPタンパク質の活性を阻害する物質(本明細書において薬剤としても記載される)、IAPタンパク質を分解する物質、又はIAPタンパク質のレベル(本明細書において発現としても記載される)を低下させる遺伝的手段である。
【0045】
特定の実施形態において、上記IAP阻害剤は、天然又は合成ペプチド、核酸、又は化合物、例えば、低分子薬剤である。
【0046】
例えば、いくつかの実施形態において、上記IAPタンパク質の活性を阻害する物質又はIAPタンパク質を分解する物質は、タンパク質又は化合物(例えば、Smacタンパク質、又はLCL161及びビリナパントなどのSmac様化合物)から選択される。
【0047】
特定の実施形態において、上記IAP阻害剤は、IAPタンパク質のレベルを低下させる遺伝的手段、例えば、RNAi剤、マイクロRNA、遺伝子編集又は遺伝子ノックアウト材料である。
【0048】
本開示は、腫瘍を治療するための医薬品キットをさらに提供する。上記医薬品キットは、(a)カスパーゼ活性化剤、及び(b)腫瘍溶解性ウイルスを含む。上記腫瘍溶解性ウイルスは、少なくとも1つのアルファウイルスから選択され、好ましくは、上記アルファウイルスは、M1ウイルス及びゲタウイルスからなる群より選択される少なくとも1つである。上記医薬品キットにおいて、カスパーゼ活性化剤及び腫瘍溶解性ウイルスは、別々に包装されている。好ましくは、上記カスパーゼ活性化剤は、カスパーゼ−3、7、8及び9活性化剤のうちの少なくとも1つであり、より好ましくは、上記カスパーゼ活性化剤は、カスパーゼ脱阻害剤である。より好ましくは、上記カスパーゼ活性化剤は、IAP阻害剤である。より好ましくは、上記IAPは、cIAP−1、cIAP−2及びXIAPからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0049】
上記医薬品キットの特定の実施形態において、上記IAP阻害剤は、IAPタンパク質の活性を阻害する物質、IAPタンパク質を分解する物質、又はIAPタンパク質のレベルを低下させる遺伝的手段である。好ましくは、上記IAPタンパク質の活性を阻害する物質又はIAPタンパク質を分解する物質は、タンパク質又は化合物からなる群より選択される。より好ましくは、上記IAPタンパク質の活性を阻害する物質又はIAPタンパク質を分解する物質は、Smacタンパク質又はSmac様化合物から選択される。より好ましくは、上記IAPタンパク質の活性を阻害する物質又はIAPタンパク質を分解する物質は、Smac様化合物であるLCL161及びビリナパントからなる群より選択される少なくとも1つである。より好ましくは、上記IAPタンパク質のレベルを低下させる遺伝的手段は、RNA干渉剤、マイクロRNA、遺伝子編集又は遺伝子ノックアウト材料である。
【0050】
本開示は、腫瘍を治療するための医薬品の調製における上記カスパーゼ活性化剤と腫瘍溶解性ウイルスの組み合わせの使用をさらに提供する。
【0051】
様々な実施形態において、カスパーゼ活性化剤と腫瘍溶解性ウイルスの組み合わせは、さまざまな種類の腫瘍の治療に使用できる。上記使用、医薬組成物及びキットの特定の実施形態において、上記腫瘍は、固形腫瘍又は血液腫瘍である。好ましくは、上記固形腫瘍は、肝臓がん、大腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵がん、鼻咽頭がん、肺がん、又は胃がんを有する患者の体内におけるものであるか、又はその患者からのものである。好ましくは、上記腫瘍は、上記腫瘍溶解性ウイルスに非感受性の腫瘍である。より好ましくは、上記腫瘍は、腫瘍溶解性ウイルスに非感受性の肝臓がん、大腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵がん、鼻咽頭がん、肺がん、又は胃がんである。より好ましい実施形態において、上記腫瘍は、M1腫瘍溶解性ウイルスに非感受性の腫瘍である。
【0052】
単一のカスパーゼ活性化剤を使用してもよく、或いはいくつかを組み合わせて同時に又は連続して使用してもよい。カスパーゼ活性化剤及び/又は腫瘍溶解性ウイルスは、1つ以上の阻害剤、1つ以上の担体、賦形剤、希釈剤、薬学的に許容される担体、安定剤、緩衝剤、防腐剤、非イオン性洗剤、酸化防止剤、及び他の添加物を含む組成物の形態であり得る。上記医薬組成物は、経口投与、経皮投与、皮下投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、局所投与などの様々な投与経路で患者に投与することができる。一般的に、上記カスパーゼ活性化剤は、経口的、非経口的、静脈内的又は皮下的に患者に投与される。カスパーゼ活性化剤は、腫瘍溶解性ウイルスと組成物中に混在してもよく、又は別の組成物中に存在してもよい。
【0053】
本開示は、腫瘍を治療する方法にも関する。いくつかの実施形態において、1つ以上のカスパーゼ活性化剤及び1つ以上の腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍を有する被験体に投与する。上記腫瘍は、固形腫瘍又は血液腫瘍であり得る。好ましくは、上記固形腫瘍は、肝臓がん、大腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵がん、鼻咽頭がん、肺がん、又は胃がんである。好ましくは、上記腫瘍は、腫瘍溶解性ウイルスに非感受性の腫瘍である。より好ましくは、上記腫瘍は、腫瘍溶解性ウイルスに非感受性の肝臓がん、大腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵がん、鼻咽頭がん、肺がん、又は胃がんである。上記カスパーゼ活性化剤は、本明細書の腫瘍溶解性ウイルスと同時に投与してもよく、腫瘍溶解性ウイルスの投与の前後に投与してもよい。さらに、上記カスパーゼ活性化剤及び/又は腫瘍溶解性ウイルスは、週に1回又は数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)投与することができる。上記カスパーゼ活性化剤及び/又は腫瘍溶解性ウイルスは、1週間又は数週間(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)、1ヶ月間又は数ヶ月間(2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上)投与することができる。
【0054】
特定の実施形態において、カスパーゼ活性化剤(例えば、LCL161又はビリナパント)及び腫瘍溶解性ウイルスは、0.01〜15mg:10
3−10
9PFUの比、好ましくは0.01−10mg:10
4−10
9PFUの比、より好ましくは、0.01−10mg:10
5−10
9PFUの比で提供される。より好ましくは、用量は以下の通りである。カスパーゼ活性化剤 (例えば、LCL161又はビリナパント)は、0.01mg/kg〜15mg/kgの範囲で用いられる一方、腫瘍溶解性ウイルスは、MOIが10
3〜10
9(PFU/kg)になるような力価で用いられる。好ましくは、上記カスパーゼ活性化剤(例えば、LCL161又はビリナパント)は、0.01mg/kg〜10mg/kgの範囲で用いられる一方、腫瘍溶解性ウイルスは、MOIが10
4〜10
9(PFU/kg)になるような力価で用いられる。より好ましくは、上記カスパーゼ活性化剤(例えば、LCL161又はビリナパント)は、0.1mg/kg〜10mg/kgの範囲で用いられる一方、腫瘍溶解性ウイルスは、MOIが10
5〜10
9(PFU/kg)になるような力価で用いられる。
【0055】
いくつかの特定の実施形態において、上記医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。他の特定の実施形態において、上記組成物は、投与のために、凍結乾燥粉末、注射剤、錠剤、カプセル剤、キット又はパッチ剤に製剤化される。
【0056】
本発明は、被験体における固形腫瘍又は血液腫瘍を治療する方法をさらに提供する。上記方法は、上記治療を必要とする被験体に、本明細書に記載される腫瘍溶解性アルファウイルス及び本明細書に記載されるカスパーゼ活性化剤を投与することにより腫瘍を治療することを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記カスパーゼ活性化剤は、DNA又はRNAi剤(siRNA、shRNA、マイクロRNAを含む)などの、核酸を含むIAP阻害剤である。このようなRNAi剤の特定の例は、配列番号:1−12に記載の核酸を含む。
【0058】
III.カスパーゼ活性化剤及び腫瘍溶解性アルファウイルスによる抗腫瘍の併用療法
本明細書に記載されているのは、驚くべき抗腫瘍効果をもたらす、カスパーゼ活性化剤とアルファウイルスの組み合わせを用いた抗腫瘍療法の発見である。カスパーゼ活性化は細胞アポトーシスを引き起こすことが知られている。カスパーゼファミリーのプロテイナーゼは、3つの亜群に分けられる。カスパーゼ−1、4、5及び11は第1亜群、カスパーゼ−2及び9は第2亜群、カスパーゼ−3、7、8,及び10は第3亜群に属する。最初のカスパーゼは、外来タンパク質シグナルの作用下で切断され活性化され、活性化されたカスパーゼは、さらに及びエグゼキューターカスパーゼを切断し活性化し、活性化されたエグゼキューターカスパーゼは、さらにカスパーゼ標的タンパク質を加水分解することによってプログラム細胞死(即ち、アポトーシス)をもたらす。
【0059】
腫瘍溶解性ウイルス及びカスパーゼ活性化剤を用いる併用療法において、観察された相乗効果をもたらすメカニズムはまだ明らかではない。しかし、いくつかの組み合わせにおいて、腫瘍溶解性ウイルス及びカスパーゼ活性化剤は、本明細書に記載されるような相乗的なアポトーシス促進効果をもたらさないことが見出された。
【0060】
好ましくは、上記カスパーゼ活性化剤は、カスパーゼ−3、7、8及び9活性化剤からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0061】
より好ましくは、上記カスパーゼ活性化剤は、カスパーゼ脱阻害剤である。より好ましくは、上記カスパーゼ活性化剤は、IAP阻害剤である。より好ましくは、上記阻害剤又はアポトーシス(IAP)阻害剤は、アポトーシスタンパク質−1の細胞阻害剤(cIAP−1)、cIAP−2及びアポトーシスのx結合阻害剤(XIAP)からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0062】
代替の技術的解決策として、上記IAP阻害剤は、IAPタンパク質の活性を阻害する物質、IAPタンパク質を分解する物質、又はIAPタンパク質のレベルを低下させる遺伝的手段である。このような物質は、本明細書において「剤」とも呼ばれ、天然又は合成ペプチド(即ち、ポリペプチド又はタンパク質)、RNA干渉剤を含む核酸、及び低分子生化学的モジュレーター(阻害剤又は活性化剤)などの化合物を含む。
【0063】
好ましくは、上記IAPタンパク質の活性を阻害する物質又はIAPタンパク質を分解する物質は、タンパク質又は化合物から選択される。より好ましくは、上記IAPタンパク質の活性を阻害する物質又はIAPタンパク質を分解する物質は、第2ミトコンドリア由来カスパーゼ活性化剤(second mitochondria−derived activator of caspases;Smac)タンパク質又はSmac様化合物から選択される。より好ましくは、上記IAPタンパク質の活性を阻害する物質又はIAPタンパク質を分解する物質は、Smac様化合物であるLCL161及びビリナパントからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0064】
より好ましくは、上記IAPタンパク質のレベルを低下させる遺伝的手段は、RNA干渉剤、マイクロRNA、遺伝子編集又は遺伝子ノックアウト材料である。RNA干渉剤の例は、siRNA、shRNAなどを含む。上記siRNA剤は、配列番号1−12に記載される。このような薬剤及びそれらの組み合わせは、本明細書に記載の使用、組成物及び方法のいずれかに適用できる。同様に、それらの機能を維持するこのような薬剤の修飾物も適用できる。特定の例において、上記核酸に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90% 、95%、又はそれ以上の配列同一性(すなわち相同性)を有する核酸も適用できる。
【0065】
本開示は、上記カスパーゼ活性化剤及び腫瘍溶解性アルファウイルスを含む医薬組成物、又はIAP阻害剤及び腫瘍溶解性ウイルスが別々に包装される医薬品キットをさらに提供する。特定の実施形態において、上記カスパーゼ活性化剤は天然に存在する。他の実施形態において、RNAi剤、LCL161、ビリナパントなどの化合物(又は低分子モジュレーター)を用いる任意の実施形態のように、上記カスパーゼ活性化剤は、合成物である。
【0066】
上記医薬組成物は、当技術分野において標準的であるように、任意の担体、フィラー、塩などの薬学的に許容される担体を含み得る。特定の例において、上記組成物は、投与又は提供のために、標準的な薬学的担体と共に、溶液、凍結乾燥粉末、注射剤、錠剤、ゲル、カプセル、カプレット剤、キット、パッチ剤又は当分野で標準的な他の投与剤形に製剤化される。
【0067】
特定の実施形態において、カスパーゼ活性化剤及び腫瘍溶解性ウイルスは、同一の組成物において提供される。他の実施形態において、上記カスパーゼ活性化剤及び腫瘍溶解性ウイルスは、別々に製剤化される。同様に、両方の活性剤は、特定の実施形態では同時に投与することができ、他の特定の実施形態では別々に投与することができる。
【0068】
本明細書に記載の使用、組成物、及び方法は抗腫瘍療法に直接向けられている。特定の実施形態において、上記腫瘍は、固形腫瘍であり得る。他の実施形態において、上記腫瘍は、血液(血)腫瘍であってもよい。
【0069】
好ましくは、上記固形腫瘍は、肝臓がん、大腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵がん、鼻咽頭がん、肺がん,又は胃がんに由来することができる。特定の実施形態において、上記腫瘍又はがんの種類のいずれかは、腫瘍溶解性アルファウイルスのような腫瘍溶解性ウイルスに非感受性の種類であり得る。
【0070】
上記のように、治療的実施形態において、カスパーゼ活性化剤は、化合物(例えば、低分子)、タンパク質又は遺伝的手段であり得る。
【0071】
Smacタンパク質(第2ミトコンドリア由来カスパーゼ活性化剤;Smac又はSMAC)は、ミトコンドリア中に存在し、アポトーシスの際にミトコンドリアから細胞リンパへ運ばれ、アポトーシス関連経路を調節する。さらに、Smac(Smac様化合物を含む)は、腫瘍壊死因子(TNF)−α及びTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)のような細胞因子に対する腫瘍細胞の感受性を可能にするか又は増強することによって、このような因子の傍細胞効果を強化することができる。Smacは、主にIAPファミリーのタンパク質のレベル及び機能を阻害することによってその機能を発揮する。現在、cIAP−1、cIAP−2、及びXIAPを含む、8種類の既知のIAPタンパク質がある。IAPは、カスパーゼの活性化を阻害することによりアポトーシスを阻害する。IAPタンパク質は、様々な腫瘍において高度に発現されており、腫瘍発生及び予後不良に関連している。従って、Smac(Smac様化合物を含む)は、IAP阻害による抗腫瘍に用いられている。しかし、本明細書に記載されるように、IAPの個々の標的化による抗腫瘍効果は、上記の組み合わせよりも小さい。
【0072】
Smac様化合物とさらなる化学療法薬との組み合わせは、膵がんの治療について試験されている。. 例えば、Dineenら(Cancer Res. 2010; 70 (7) : 2852−61)は、JP1021(Smac様化合物)とゲムシタビンの組み合わせが細胞の増殖を顕著に減少させることができることを見出した。ここで、薬物で処理しなかった細胞は、17%のアポトーシス率を有し、JP1021(10μmol/L)単独で処理した細胞、及びゲムシタビン(10μmol/L)単独で処理した細胞は、それぞれ31%及び58%のアポトーシス率を有する。また、本明細書の結果と反対に、JP1021とゲムシタビンの組み合わせは相乗効果を有さず、ゲムシタビン単独を使用する場合に比べて、早期アポトーシス率がわずかに高い。
【0073】
多くの組成物の治療効果の予測は難しい。例えば、いくつかの薬物間の相互作用は所望の治療効果を低下させるか又は望ましくない副作用を引き起こすことがある。いくつかの医薬組成物については、このような組成物の治療効果は個々の薬物の組み合わせと比較することによって証明され、いくつかの医薬組成物については、このような組成物の治療指数が個々の薬物の組み合わせよりも高い場合に相乗効果が存在する。
【0074】
本開示は、カスパーゼ活性化剤、例えば、IAP阻害剤が腫瘍溶解性アルファウイルスと併用することで相乗効果を奏し、腫瘍溶解性アルファウイルスの抗腫瘍相乗剤として使用できることを初めて発見した。
【0075】
本発明者は、cIAP1及びcIAP2(配列番号1−12)の干渉断片(siRNA)を用いてこの2つの遺伝子の発現を阻害することで、対応するタンパク質の発現を低下させた。結果は、cIAP1及びcIAP2単独の干渉及び非干渉が細胞形態の病理学的変化をもたらさず、M1ウイルス単独を用いる場合も細胞形態の病理学的変化をもたらさないことを示した。cIAP1及びcIAP2の干渉とM1ウイルスによる感染との組み合わせは、細胞の生存率を顕著に減少させた。したがって、cIAP1及びcIAP2の阻害は腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍効果を顕著に増強できると推定された。また、IAP阻害剤であるSmac様化合物LCL161及びビリナパントと腫瘍溶解性ウイルスとの組み合わせは、相乗的な抗腫瘍効果をもたらすことが実証された。
【0076】
理解できるように、本明細書に記載の所望効果を提供するのに必要な用量は、治療される対象及び使用される薬剤に応じて変化することができる。
【0077】
腫瘍溶解性アルファウイルスがLCL161又はビリナパントと併用される例示的な実施形態において、化合物及び腫瘍溶解性ウイルスは、0.01〜15mg:10
3−10
9PFU、好ましくは0.01〜10mg:10
4−10
9PFU、より好ましくは0.01〜10mg:10
5−10
9PFUの比で提供される。
【0078】
いくつかの実施形態において、カスパーゼ活性化剤(例えば、LCL161又はビリナパント)は、0.01mg/kg〜15mg/kgの範囲で用いられる一方、腫瘍溶解性ウイルスは、MOIが10
3〜10
9(PFU/kg)になるような力価で用いられる。いくつかの好適実施態様において、カスパーゼ活性化剤(例えば、LCL161又はビリナパント)は、0.01mg/kg〜10mg/kgの範囲で用いられる一方、腫瘍溶解性ウイルスは、MOIが10
4〜10
9(PFU/kg)になるような力価で用いられる。他の実施形態において、カスパーゼ活性化剤(例えば、LCL161又はビリナパント)は、0.1mg/kg〜10mg/kgの範囲で用いられる一方、腫瘍溶解性ウイルスは、MOIが10
5〜10
9(PFU/kg)になるような力価で用いられる。
【0079】
理解できるように、本明細書に記載の化合物(低分子化合物を含む)のような薬剤は、化学的分離若しくは合成、又は他の標準的な商業的アプローチによって得られるが、これらに限定されない。
【0080】
例示的な実施形態において、カスパーゼ活性化剤は、cIAP1及びcIAP2の干渉RNA断片(配列番号1−12に記載のRNAi剤を含むが、これらに限定されない)であってもよい。
【0081】
本明細書に記載の腫瘍溶解性ウイルス(例えば、M1ウイルス及びゲタウイルスなどのアルファウイルス)は、既存の腫瘍溶解性ウイルスを特に指す場合があるが、自然変異、突然変異、修飾、配列の付加若しくは欠失を受けたウイルスは除外され得ない。本開示に記載の前記腫瘍溶解性ウイルスの効果に影響を及ぼさない、自然変異、突然変異、修飾、配列の付加若しくは欠失などの変化を受けた腫瘍溶解性ウイルスは、本開示に記載される同種ウイルスに属する。
【0082】
他の実施形態において、上記IAP阻害剤は、IAPの遺伝子発現を低下、ノックダウン又はそれに影響を与えるか、或いはIAPのタンパク質量又はタンパク質活性を低減する薬剤(物質、例えば、化合物、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列)又は手段である。したがって、上記薬剤は、転写又は翻訳レベルでIAP発現を阻害するように機能することができると理解されるべきである。さらなる実施形態において、このような薬剤は翻訳後に作用することができ、IAPタンパク質自体の安定性に影響を及ぼすことができる。当業者は、これらの化合物、アミノ酸配列又は遺伝的手段を修飾、置換及び/又は変更することができる。得られた物質がIAPを阻害する効果を有すれば、このような物質及び薬剤は本明細書に記載されるように使用することができ、明示的に記載される上記化合物、アミノ酸配列及び遺伝的手段の同等の代替物として作用することができる。
【0083】
本発明は、医薬組成物又は医薬品キットをさらに提供する。上記医薬品キットは、カスパーゼ活性化剤(又はその誘導体若しくはそれらの組み合わせ)が必ずしも腫瘍溶解性ウイルスと混合される必要がなく、通常別々に包装されるという点で組成物とは異なる。別々に包装される腫瘍溶解性ウイルス及びカスパーゼ活性化剤は、それぞれアジュバントを含んでもよい。このようなアジュバントは、医薬品の治療効果を促進できる手段を含む。医薬品キットは、別々に包装されるカスパーゼ活性化剤、その誘導体又はそれらの組み合わせ、及び腫瘍溶解性ウイルスを含んでもよい。
【0084】
上記医薬品キットに含まれる本明細書に記載のカスパーゼ活性化剤、その誘導体、又はそれらの組み合わせ及び腫瘍溶解性ウイルスは、同時に又は任意の順序(先に一方の薬物を患者に投与し、次いで他方の薬物を患者に投与することを含む)で投与することができる。上記患者は、本明細書に記載の治療的処理を必要とする患者などの哺乳動物被験体、特にヒトを指す。
【0085】
本発明は、被験体における固形腫瘍又は血液腫瘍を治療する方法をさらに提供する。該方法は、上記治療を必要とする被験体に本明細書に記載の腫瘍溶解性ウイルス及び本明細書に記載のカスパーゼ活性化剤を投与することで腫瘍を治療することを含む。上記方法に用いられる腫瘍溶解性ウイルス及びカスパーゼ活性化剤は、上記使用、組成物、及びキットについて記載されたウイルス又は活性化剤であり得る。上記のように、ウイルス及びカスパーゼ活性化剤は、当該分野において標準的であるように、それぞれの製剤又は組み合わせた製剤として投与することができる。理解できるように、薬剤の固体及び液体形態は本開示の範囲内である。局所的及び全身的投与態様も同様である。特定の例において、局所投与形態は、全身投与(注射など)に一般的に使用される方法を含み得ることに留意されたい。本明細書に記載の治療方法は、治療する腫瘍の消失を必要としないこともまた理解されるであろう。治療的であると考えられるいかなる効果も、現在の治療の理解に含まれると理解される。
【0086】
本開示において、カスパーゼ活性化剤、例えば、LCL161及びビリナパントは、腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍効果を増強することができることにより、抗腫瘍薬としての腫瘍溶解性アルファウイルスの治療有効性を改善することができる。例えば、細胞学的実験により、M1ウイルスとLCL161又はビリナパントとの組み合わせは、それぞれ腫瘍細胞の形態学的病変を引き起こすことで腫瘍細胞増殖を顕著に阻害することが実証されている。
【0087】
本発明者は、LCL161又はビリナパントとM1ウイルスとの組み合わせをヒト大腸がんHCT116細胞株に使用した結果、抗ウイルス化合物LCL161をM1ウイルスと併用することにより、腫瘍細胞の形態学的病変が顕著に増加し、腫瘍細胞の生存率が顕著に減少したことを発見した。いくつかの例では、腫瘍細胞の形態変化は、細胞の膨張、核凝縮、細胞の断片化、及びアポトーシスを含む。例えば、本発明の実施例では、以下により詳細に説明するように、大腸がんHCT116細胞の処理にM1ウイルス(MOI=0.001)を単独で使用する場合に、腫瘍細胞の生存率は84%であった。5μmのLCL161を同じMOIを有するM1ウイルスと併用する場合に、腫瘍細胞の生存率は21.6%に急激に減少した。従って、M1ウイルス単独の抗腫瘍効果と比較して、LCL161とM1の併用は、腫瘍溶解効果を顕著に改善した。
【0088】
本発明者により提出された中国特許CN201510990705.7には、EGFR阻害剤クリソファノール及びその誘導体はM1ウイルスの抗腫瘍相乗剤として使用でき、両者の組み合わせは腫瘍細胞の生存率を39.6%に減少させることが開示されている。具体的には、50μMのクリソファノールをM1ウイルス(MOI=0.001)と併用することにより、肝臓がん細胞株Hep3Bを顕著に死滅させることができる。しかし、本発明では、より低い濃度のカスパーゼ活性化剤をアルファウイルスと併用することにより、より低い腫瘍細胞の生存率が得られた。さらに、本開示に用いられる腫瘍細胞は、CN201510990705.7に用いられる腫瘍細胞Hep3Bに比べて感受性がより低い。本開示において、5μMのLCL161をM1と併用する場合、大腸がん細胞株HCT116は顕著に殺され得る。実際には、Hep3B(0.01MOIで処理した後の細胞の生存率は85.1%であった)細胞に比べて、HCT116細胞は、M1細胞(10MOIで処理した後の細胞の生存率は84.0%であった)に対して感受性がさらに低い。明らかに、クリソファノールに比べて、本開示のM1の抗腫瘍相乗剤は、非感受性腫瘍に対する殺傷効果を有意に改善することができた。一方、LCL161の用量は、クリソファノールのわずか10分の1であり、顕著な優位性を有する。
【0089】
LCL161自体は、腫瘍細胞においてアポトーシスを阻害するタンパク質cIAP1及びcIAP2を阻害することによって抗腫瘍効果を生じることが報告されているが、本開示において、LCL161などのカスパーゼ活性化剤とアルファウイルスとの併用は、同じ濃度でのLCL161などのカスパーゼ活性化剤単独の使用と比較して、腫瘍細胞に対する殺傷効果を顕著に増大させることができることが見出された。例えば、5μMのLCL161で腫瘍細胞を処理した場合、腫瘍細胞の生存率は92.6%と高い一方、例えば、5μMのLCL161をM1ウイルスと併用した場合、腫瘍細胞の生存率は、33.6%に急激に減少した。明らかに、LCL161とM1ウイルスの組み合わせにより大幅に増強された腫瘍溶解効果は、LCL161の抗腫瘍メカニズムによる機能よりも、LCL161とM1ウイルスとの間の相乗的メカニズムによるものである。
【0090】
本開示の重要な意義は、薬物に対する感受性が低いいくつかの腫瘍について、本開示に提供される特定の併用療法がこのような腫瘍の治療のために信頼的かつ効果的な治療を提供することにもある。
【0091】
以下の実施例は、特定の特定の特徴及び/又は実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、本発明を特定の特徴又は実施形態に限定すると解釈されるべきではない。
【0092】
特に明記しない限り、本発明で使用される材料及び実験方法は従来の材料及び方法である。
【実施例】
【0093】
実施例1: LCL161及びM1ウイルスは、ヒト大腸がん細胞株の形態学的病変を顕著に増加させる。
【0094】
材料
ヒト大腸がん細胞株HCT116(ATCCから購入)、M1ウイルス(CTCC V201423から取得)、高グルコースDMEM培地(4.5g/lグルコース)(Corningから購入)、倒立位相差顕微鏡
【0095】
方法
a)細胞培養
ヒト大腸がん細胞株HCT116を10%FBS、100U/mlのペニシリン及び0.1mg/mlのストレプトマイシンを含むDMEM完全培地中で増殖させた。全ての細胞を5%CO
2、37℃の恒温密閉インキュベーター(相対湿度95%)に入れて継代培養した。培養した細胞の増殖を倒立顕微鏡で観察した。細胞を約2〜3日毎に継代し、対数増殖期にある細胞をアッセイに使用した。
【0096】
b) 対数増殖期にある細胞を選択してDMEM完全培地(10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を含む)に入れ、細胞懸濁液を調製した。細胞を2.5×10
4/ウェルの密度で24ウェル培養プレートに接種した。72時間後、細胞をLCL161(5μM)単独処理し、M1ウイルス(MOI=0.01)で感染したか、又はM1ウイルス(MOI=0.01)とLCL151(5μM)との組み合わせで処理した。倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化を観察した。未処理の培養物を対照群とした。
【0097】
結果
図1に示すように、位相差顕微鏡により細胞の形態を観察した。HCT116細胞は、単一層で接着増殖し、同一な表現型で緊密に並んでいた。LCL161(5μM)及びM1ウイルス(MOI=1)で72時間処理した後、細胞の形態は顕著に変化した。対照群の細胞、M1単独処理群の細胞、及びLCL161単独処理群の細胞と比較すると、併用処理群の細胞数は顕著に減少し、細胞体は球形に収縮し、屈折率は顕著に増加し、細胞は細胞死を示す病理学的変化を示した。
【0098】
実施例2. LCL161/ビリナパントとM1ウイルスとの併用処理は、ヒト大腸及び肝臓がん細胞の生存率を顕著に低下させる。
【0099】
材料
ヒト大腸がん細胞株HCT116、SW480、ヒト肝臓がん細胞株Huh7、PLC、M1ウイルス、高グルコースDMEM培地、酵素免疫測定法のための自動マイクロプレートリーダー。細胞及びウイルスは実施例1と同じ供給源に由来する。
【0100】
方法
a)細胞の培養及び投与処理
対数増殖期にある細胞を選択してDMEM完全培地(10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む(Life Technologies))に加え、細胞懸濁液を調製した。細胞を4×10
3/ウェルの密度で96ウェル培養プレートに接種した。12時間後、細胞はウェルに完全に付着した。試験を対照群、単剤群(5μMLCL161単独又はビリナパント単独)、M1感染群、及びLCL161/M1併用群又はビリナパント/M1併用群に分けた。M1含有アッセイでは、ウイルスは様々なMOIで提供された。LCL161又はビリナパントの濃度は5μMであった。
【0101】
b)MTTと細胞内のコハク酸デヒドロゲナーゼとの反応
培養72時間後、20μlのMTT(5mg/ml)を各ウェルに加え、さらに4時間インキュベートした。インキュベートした後、生細胞中に形成された粒状の青紫色ホルマザン結晶を顕微鏡検査により観察した。
【0102】
c)ホルマザン粒子の溶解
ホルマザン結晶を有する細胞を含む培養物を以下のようにさらに処理した。上澄みを注意深く吸い取って捨てた後、100μl/ウェルでDMSOを加えて形成された結晶を溶解し、マイクロ振動機で5分間振盪した。次いで、酵素結合検出器を用いて570nmの波長で各ウェルの光学密度(OD値)を測定した。実験は各群につき3回繰り返した。細胞の生存率=薬物処理群のOD値/対照群のOD値×100%
【0103】
結果
図2aに示すように、M1ウイルス単独処理は、腫瘍細胞株HCT116の生存率を減少させた(84.0%)。5μMのLCL161で処理した腫瘍細胞の生存率は92.6%と高かった。一方、M1/LCL161の組み合わせ(M1+LCL161)で処理した腫瘍細胞は、生存率が33.6%に急激に低下した。同様に、M1ウイルス単独処理群又はLCL161単独処理群に比べて、様々な用量のLCL161/M1の組み合わせで処理した腫瘍細胞は、生存率が大幅に低下した。ビリナパント/M1併用処理群では、HCT116について同様な結果が観察された(
図2b)。さらに、LCL161又はビリナパントとM1との組み合わせも腫瘍細胞SW620(
図2c及びd)、Huh7細胞(
図2e及びf)及びPLC細胞(
図2g及びh)の生存率を顕著に低下させた。
【0104】
実施例3: cIAP1及びcIAP2の阻害とM1腫瘍溶解性ウイルスによる感染との組み合わせは抗腫瘍効果を達成した。
【0105】
材料
M1ウイルス、ヒト大腸がん細胞株HCT116、肝臓がん細胞株Huh7、cIAP1及びcIAP2のRNA干渉断片、MTT(メチルチアゾリルテトラゾリウム)(MPbioから購入)、位相差顕微鏡。細胞及びウイルスは実施例1と同じ供給源に由来する。
【0106】
方法
対数増殖期にある細胞を選択してDMEM完全培地に加え、細胞懸濁液を調製した。細胞を1×10
5/ウェルの密度で6ウェルプレートに接種した。24時間後、リポソームで包まれたSiRNA標的遺伝子断片を加えた(
図3a−3d、配列番号1−12)。48時間後、細胞をM1ウイルスに感染させた。感染の48時間後、試料を以下のように処理した。
(1)細胞の一部を採取し、タンパク質を単離した。ウエスタンブロットによりRNA干渉効率を検出した。
(2)MTT法により細胞の生存率を計算した。
【0107】
結果
異なる干渉断片でcIAP1及びcIAP2をそれぞれ干渉した後、IAPタンパク質のウエスタンブロット検出により測定した。少なくとも2つのsiRNA断片がcIAP1及びcIAP2タンパク質(
図3a及び3b)の発現を顕著に低減できることが発見された。これは、RNAi干渉断片が翻訳のレベルでcIAP1及びcIAP2タンパク質の発現を干渉できることを示している。
図3c−3dには、controlは対照群、即ち、未処理群を示し、mockはトランスフェクション試薬RNAiMAX)単独使用群を示し、NCはスクランブルsiRNA干渉断片群を示し、最後の3つのコラムは発現がsiRNA断片によって阻害された細胞を示す。
処理細胞のMTT法により、cIAP1及びcIAP2単独のRNA干渉群は、非干渉群(対照群)又はスクランブル干渉(NC)群と比較して、腫瘍細胞の生存率の変化を引き起こさず、M1ウイルス単独による干渉も細胞生存率の変化を引き起こさない一方、cIAP1又はcIAP2のRNA干渉とM1感染との組み合わせは、腫瘍細胞の生存率を顕著に減少させることが実証された(
図3c及び3d)。データをANOVA統計にかけたところ(*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示す)、細胞の生存率の減少に統計的有意性があることを示した。
これらの結果は、cIAP1及びcIAP2の阻害とM1ウイルスの使用との組み合わせは、抗腫瘍効果を生じることを示している。
【0108】
実施例4. LCL161とM1ウイルスとの組み合わせは、ヒト大腸及び肝臓がん細胞株の移植可能な腫瘍の増殖を顕著に阻害する。
【0109】
材料
M1ウイルス、大腸がん細胞株HCT116、肝臓がん細胞株Huh7、4週齢の雌BALB/cヌードマウス(南京大学モデル動物研究センター)。細胞及びウイルスは実施例1と同じ供給源に由来する。
【0110】
方法
無作為化単盲検試験を実施した。5×10
6個のHCT116又は1×10
7個のHuh7細胞を4週齢のBALB/cヌードマウスの背部に皮下注射した。腫瘍の大きさが50mm
3に達した後、マウスを未処理対照群(対照)、LCL161単独処理群(i.p. 20mg/kg/d)、M1単独感染群(HCT116がん株の移植可能な腫瘍をM1ウイルスと共に尾静脈注射した(2×10
6PFU/回)、Huh7がん株の移植可能な腫瘍をM1ウイルスと共に尾静脈注射した(5×10
5PFU/回))、及びLCL161/M1併用群(LCL161及びM1ウイルスを同じ方法及び同じ用量で投与する)に分け、注射を4回連続して行った(HCT116は、5日目、6日目、7日目及び8日目に注射を行った。Huh7は、10日目、11日目、12日目及び13日目に注射を行った)。腫瘍の重量、長さ及び幅を2日ごとに測定し、腫瘍体積を式:(長さ×幅
2)/2に従って計算した。腫瘍体積を測定した後、一元配置分散分析統計を行った。ここで、***はp<0.001、**はp<0.01、*はp<0.05を示す。
【0111】
結果
腫瘍移植動物についての病理学研究を実施して、腫瘍体積を測定した。結果は、対照群と比較して、LCL161単独処理群及びM1単独処理群は、腫瘍体積のわずかな減少しかもたらさなかった(
図4a及び4b。左パネル) .
HCT116腫瘍を接種した動物において、LCL61処理群は、対照群と比較して、わずか29.15%の腫瘍体積の減少を示した。M1処理群は、対照群と比較して、わずか27.93%の腫瘍体積の減少を示した。一方、LCL161/M1併用処理群は、腫瘍体積の顕著な減少を誘導した(
図4a及び4b、左パネル)。対照群と比較して、併用処理群は80.42%の腫瘍体積の減少をもたらした。
同様に、Huh7腫瘍を接種した動物において、LCL161処理群は、対照群と比較して、わずか18.1%の腫瘍体積の減少を示した。M1処理群は、対照群と比較して、わずか4.7%の腫瘍体積の減少を示した。一方、LCL161/M1併用処理群は、腫瘍体積の顕著な減少を誘導した(
図4a及び4b、右パネル)。対照群と比較して、併用処理群は70.3%の腫瘍体積の減少をもたらした。図に示すように、一元配置分散分析統計は提示されたデータの統計的有意性を示す。
【0112】
実施例5. LCL161とM1ウイルスとの組み合わせは、ヒト大腸及び肝臓がん細胞株のカスパーゼ−3/7、8及び9の活性を顕著に向上させる
【0113】
材料
M1ウイルス、LCL161、カスパーゼ3/7/8/9の活性を検出するキット (Promegaから購入;カスパーゼ3/7 G8091;カスパーゼ8 G8201;カスパーゼ9 G8211)、DMEM完全培地(10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む(Life Technologies))、大腸がん細胞株HCT116、肝臓がん細胞株Huh7、酵素免疫測定法のための自動マイクロプレートリーダー。細胞及びウイルスは実施例1と同じ供給源に由来する。
【0114】
方法
対数増殖期にある細胞を選択してDMEM完全培地(10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む(Life Technologies))に加え、細胞懸濁液を調製した。細胞を4×10
3/ウェルの密度で96ウェル培養プレートに接種した。12時間後、細胞は培養プレートの壁に完全に付着した。この試験において、培養物を対照群、単剤群(LCL161単独)、M1単独感染群、LCL161/M1併用処理群に分けた。用量は以下の通りである。細胞を1MOI(HCT161細胞)又は0.1MOI(Huh7細胞)でM1に感染させ、LCL161を5μMの濃度で加えた。MTTとカスパーゼ3/7、8及び9の活性を検出するために、上記の各処理群を4つに分けた。処理の72時間後、体積に基づいてカスパーゼ3/7、8及び9を検出するための試薬を各ウェルに添加し、得られたウェルをインキュベーターに入れてさらに30分間培養した。液体を不透明な96ウェルプレートに吸い込んで、マイクロプレートリーダーにより化学発光強度を測定した。一方、MTTを検出して細胞の生存率を計算した。カスパーゼの活性は、MTT値に対する化学発光値の比によって標準化された。
【0115】
結果
図5a−5fに示すように、検出されたカスパーゼ3/7、8及び9の活性は、HCT116細胞及びHuh7細胞において、対照群(Ctrl)と比較して、LCL161又はM1(M)単独による処理は、カスパーゼ3/7、8及び9の活性をわずかに向上させることを示した。一方、LCL161/M1併用処理群(LM)は、カスパーゼ3/7、8及び9において顕著な向上を示した(
図5a−f)。これらの観察は、カスパーゼ活性剤、即ち、LCL161とM1の組み合わせがカスパーゼ3/7、8、及び9の活性を顕著に活性化できることを実証する。
【0116】
開示された発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は本発明の好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本発明の範囲は特許請求の範囲によって規定される。したがって、これらの請求の範囲と精神の範囲内に入るすべてのものは、本発明に含まれる。