特許第6838144号(P6838144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6838144磁気加熱を使用した予備時効システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838144
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】磁気加熱を使用した予備時効システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/02 20060101AFI20210222BHJP
   C21D 9/60 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   H05B6/02 A
   C21D9/60 101
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-516450(P2019-516450)
(86)(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公表番号】特表2019-535104(P2019-535104A)
(43)【公表日】2019年12月5日
(86)【国際出願番号】US2017053661
(87)【国際公開番号】WO2018064136
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】62/400,426
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/505,948
(32)【優先日】2017年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・マイケル・カスターズ
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−112485(JP,A)
【文献】 特開2016−141843(JP,A)
【文献】 米国特許第06327883(US,B1)
【文献】 米国特許第03272956(US,A)
【文献】 特開平05−082248(JP,A)
【文献】 特開昭64−086474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B6/02
C21D9/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップを予備時効する方法であって、
磁気ロータを含む再加熱器で金属ストリップを受け取ることと、
前記再加熱器の前記磁気ロータに隣接した前記金属ストリップを通過させることと、
金属ストリップに平行である回転軸の周りに前記磁気ロータを回転させて前記金属ストリップ内に磁界を誘導して前記金属ストリップを所定温度で加熱することと、
磁気回転子から下流側に配置された巻き戻しコイラによってコイル形状にストリップを巻き戻すこと、
を含み
前記所定温度が60℃〜150℃の予備時効温度であり、加熱されたストリップが巻き戻しコイラによってコイル形状に巻き戻され、コイルがコイル状にある間に温度で冷却する間に、予備時効が起こる、
方法。
【請求項2】
前記金属ストリップは、前記金属ストリップが圧延された後に、前記再加熱器で受け取られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁気ロータが上部磁気ロータであり、前記再加熱器が、前記上部磁気ロータから垂直方向にオフセットされた下部磁気ロータをさらに含み、磁気ロータに隣接して前記金属ストリップを通過させることは、前記金属ストリップに、前記上部磁気ロータと前記下部磁気ロータとの間に画定される間隙を通過させることを含み、前記磁気ロータを回転させることは、前記上部磁気ロータおよび前記下部磁気ロータを回転させて前記金属ストリップを前記予備時効温度で加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記上部磁気ロータおよび前記下部磁気ロータは水平方向にオフセットされている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属ストリップの温度を検出することと、
前記検出された温度を所定の温度と比較することと、
前記磁気ロータを調節して、前記検出された温度が前記所定の温度と一致するように前記金属ストリップの加熱を調節することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気ロータを調節することは、前記磁気ロータの回転速度、前記磁気ロータと前記金属ストリップとの間の垂直距離、前記磁気ロータの横方向位置、または前記磁気ロータの回転方向のうちの少なくとも1つを調節することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記再加熱器を通る前記金属ストリップのライン速度を検出することと、
前記ライン速度が所定のライン速度以下であるときに前記磁気ロータを非活動化または制御することと、
前記ライン速度が前記所定のライン速度よりも大きいときに前記磁気ロータを活動化または制御することと、
をさらに含み、
前記磁気ロータを制御することが、金属ストリップからの磁気回転子の距離、磁気回転子間のギャップ、磁気回転子の回転方向、及び磁気ロータの回転速度のうちの少なくとも一つを調節することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属ストリップの目標特性と、前記目標特性が前記再加熱器による前記金属ストリップの加熱を必要とするかしないかと、を決定することと、
前記目標特性が前記金属ストリップの加熱を必要としない場合には前記磁気ロータを非活動化または制御することと、
前記目標特性が前記金属ストリップの加熱を必要とする場合には前記磁気ロータを活動化または制御することと、
をさらに含み、
前記磁気ロータを制御することが、金属ストリップからの磁気ロータの距離、磁気回転子間のギャップ、磁気回転子の回転方向、及び磁気ロータの回転速度のうちの少なくとも一つを調整することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記再加熱器は第1の再加熱器であり、前記方法は、前記金属ストリップに第2の再加熱器を通過させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属ストリップを前記第1の再加熱器で加熱した後、または前記第1の再加熱器で前記金属ストリップを受け取る前に、前記金属ストリップに前記第2の再加熱器を通過させる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の再加熱器は、非磁性加熱によって前記金属ストリップを加熱するように構成されている、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の再加熱器は、ガス駆動再加熱器、赤外線再加熱器、または誘導再加熱器を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
磁気ロータを備える再加熱器、及び再加熱機より下流に配置された巻き戻しコイラを含む予備時効システムであって、
前記磁気ロータは、前記再加熱器を通る金属ストリップのパスラインから所定の距離に配置され、
前記再加熱器は、
前記磁気ロータに隣接した金属ストリップを受け取り、
金属ストリップに平行である回転軸を中心に前記磁気ロータを回転させて前記金属ストリップ内に磁界を誘導して前記金属ストリップを所定温度で加熱するように構成され、前記巻き戻しコイラがコイル形状に金属ストリップを巻き取るように構成され、
所定温度が60℃〜150℃の予備時効温度であり、前記巻き戻しコイラが加熱されたストリップをコイル形状に巻き取り、コイルがコイル状にある間に温度で冷却する間に、予備時効が起こる、
予備時効システム。
【請求項14】
前記磁気ロータの回転速度、前記磁気ロータと前記金属ストリップとの間の垂直距離、前記磁気ロータの横方向位置、または前記磁気ロータの回転方向のうちの少なくとも1つが調節可能である、請求項13に記載の予備時効システム。
【請求項15】
前記磁気ロータは上部磁気ロータであり、前記再加熱器は、前記上部磁気ロータから垂直方向にオフセットされた下部磁気ロータをさらに含み、前記再加熱器は、
前記上部磁気ロータと前記下部磁気ロータとの間に画定される間隙を通して前記金属ストリップを受け取り、
前記上部磁気ロータおよび前記下部磁気ロータを回転させて前記金属ストリップを前記予備時効温度で加熱するように構成されている、請求項1に記載の予備時効システム。
【請求項16】
前記再加熱器は第1の再加熱器であり、前記予備時効システムは第2の再加熱器をさらに含み、前記第2の再加熱器は非磁性加熱によって前記金属ストリップを加熱するように構成されている、請求項1に記載の予備時効システム。
【請求項17】
前記第2の再加熱器は、前記第1の再加熱器より上流または前記再加熱器より下流にある、請求項1に記載の予備時効システム。
【請求項18】
前記第2の再加熱器は、ガス駆動再加熱器または誘導再加熱器を含む、請求項1に記載の予備時効システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「ROTATING MAGNET HEAT INDUCTION」と題され2016年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/400,426号、および「ROTATING MAGNET HEAT INDUCTION」と題され2017年5月14日に出願された米国仮特許出願第62/505,948号の利益を主張し、これらの開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
さらに、本出願は、「MAGNETIC LEVITATION HEATING OF METAL WITH CONTROLLED SURFACE QUALITY」と題され2017年9月27日に出願されたDavid Anthony Gaensbauerらの米国非仮特許出願第15/716,692号、「COMPACT CONTINUOUS ANNEALING SOLUTION HEAT TREATMENT」と題され2017年9月27日に出願されたDavid Anthony Gaensbauerらの米国非仮特許出願第15/716,608号、および「ROTATING MAGNET HEAT INDUCTION」と題され2017年9月27日に出願されたAntoine Jean Willy Pralongらの米国非仮特許出願第15/716,887号に関連し、これらの開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする。
【0003】
本出願は、金属加工に関し、より詳細には、金属加工中の金属ストリップの予備時効処理のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
金属加工では、様々な加工ステップの前、最中、または後に金属製品の温度を制御することが望ましいことがあり得る。例えば、特定のプロセスを実行する前に金属ストリップを加熱することが望ましいことがあり得、あるいは金属ストリップを最低温度を超えて冷却させずにある期間金属ストリップ内の熱を維持することが望ましいことがあり得る。温度制御は、一般に、金属ストリップに熱エネルギーを加えることまたは金属ストリップから熱エネルギーを除去することを含み得る。
【0005】
金属ストリップに熱エネルギーを加えるための様々な技術が存在する。直接接触技術は、表面損傷、表面上の廃棄物(例えば、間接および/または直接衝突炎からの炭素)の蓄積、または他のそのような望ましくない結果など、金属ストリップに望ましくない影響を引き起こし得る。他の技術は、接触することなく金属ストリップを加熱しようと試みるが、熱エネルギーを金属ストリップに効率的にまたは迅速に伝達することができない。現在の技術に関連する他のいくつかの問題は、高い設置および/または保守費用を必要とすること、かなりの生産スペースを占めること、加工される金属ストリップの可動性を制限すること、および金属ストリップに望ましくない影響を引き起こすことを含む。
【発明の概要】
【0006】
本特許で使用される「発明(invention)」「その発明(the invention)」、「この発明(this invention)」、および「本発明(the present invention)」という用語は、この特許の主題の全ておよび以下の特許請求の範囲を広く指すことを意図している。これらの用語を含む陳述は、本明細書に記載された主題を限定するものではなく、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を限定するものではないと理解すべきである。この特許に含有される本発明の実施形態は、この概要ではなく、以下の特許請求の範囲によって規定される。この概要は、本発明の様々な実施形態のハイレベルな概観であり、以下の詳細な説明の項でさらに説明される概念のいくつかを紹介するものである。この概要は、特許請求される主題の重要または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、本特許の明細書全体の適切な部分、任意のまたは全ての図面、および各請求項を参照することによって理解されるべきである。
【0007】
特定の例によれば、予備時効システムは再加熱器を含む。様々な例において、再加熱器は磁気ロータを含む。再加熱器は、磁気ロータに隣接して金属ストリップを受け取り、磁気ロータを回転させて金属ストリップ内に磁界を誘導して金属ストリップを予備時効温度で加熱するように構成される。
【0008】
特定の例によれば、金属ストリップを予備時効する方法は、再加熱器で金属ストリップを受け取ることを含む。様々な例において、再加熱器は磁気ロータを含む。いくつかの例では、方法は、再加熱器の磁気ロータに隣接して金属ストリップを通過させることと、磁気ロータを回転させて金属ストリップ内に磁界を誘導して金属ストリップを予備時効温度で加熱することと、を含む。
【0009】
本開示に記載された様々な実施は、付加的なシステム、方法、特徴、および利点を含むことができ、これらを、必ずしも本明細書に明白に開示することができるわけではないが、以下に続く詳細な説明および添付の図面を考察した場合、当業者には明らかであろう。すべてのそのようなシステム、方法、特徴、および利点は、本開示内に含まれ、添付の請求項によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下の図面の特徴および構成要素は、本開示の一般的な原則を強調するために図示される。図面全体にわたって、対応する特徴および構成要素は、一貫性および明瞭性のために参照番号を一致させることによって指定することができる。
【0011】
図1】本開示の態様に従う予備時効システムを含む金属加工システムの概略側面図である。
図2図1の予備時効システムの概略側面図である。
図3図1の予備時効システムの概略上面図である。
図4】本開示の態様に従う予備時効システムおよび潤滑剤塗布器を含む金属加工システムの概略側面図である。
図5】本開示の態様に従う予備時効システムの概略側面図である。
図6】本開示の態様に従う予備時効システムの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の例の主題は、法定要件を満たすために、限定的に本明細書に記載されるが、この説明は必ずしも特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求される主題は、他の方法で具体化されてもよく、異なる要素またはステップを含んでいてもよく、他の既存または将来の技術と一緒に使用されてもよい。この説明は、個々のステップの順序または要素の配置が明示的に記載されている場合を除いて、様々なステップまたは要素の間(3つ以上の間または2つの間)に任意の特定の順序または配置を意味するものと解釈されるべきではない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「上方」、「下方」、「垂直」、および「水平」という用語は、あたかも金属ストリップがその上面および底面を地面と概ね平行にして水平方向に動いているかのように、金属ストリップに対する相対的な向きを記述するために使用される。本明細書で使用される「垂直」という用語は、金属ストリップの向きに関係なく、金属ストリップの表面(例えば、上面または底面)に対して垂直な方向を指し得る。本明細書で使用される「水平」という用語は、金属ストリップの向きに関係なく、動いている金属ストリップの走行方向に平行な方向など、金属ストリップの表面(例えば、上面または底面)に平行な方向を指し得る。「上方」および「下方」という用語は、金属ストリップの向きに関係なく、金属ストリップの上面または下面を超えた場所を指し得る。
【0014】
磁気加熱を使用する金属ストリップの予備時効処理のためのシステムおよび方法を開示する。本開示の態様および特徴は、様々な適切な金属ストリップと共に使用することができ、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金の金属ストリップと共に有用であり得る。具体的には、金属ストリップが2xxxシリーズ、6xxxシリーズ、7xxxシリーズ、または8xxxシリーズのアルミニウム合金などの合金であるときに望ましい結果を達成することができる。アルミニウムおよびその合金の命名および識別に最も一般的に使用される番号指定システムの理解に関しては、両方ともThe Aluminum Associationによって出版されている、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」を参照されたい。
【0015】
金属ストリップの予備時効処理は、一般に、連続アニーリング溶液加熱処理(CASH)ラインまたは他の装置など、様々な金属加工ラインと共に使用される。例えば、CASHラインでは、急冷ステップの後、金属ストリップは、コイル化の前に、金属ストリップを再加熱器で再加熱することによって予備時効処理を受け得る。コイル化の前に金属ストリップを再加熱することにより、金属ストリップが硬化したときに金属ストリップに良好な機械的性質(例えば、最大強度および硬度)を得ることができ、したがって民生用により適し得る。CASHラインでは、再加熱器は通常、CASHラインの不連続部分に位置している。再熱器は不連続部分にあるので、巻き戻しコイラでコイル状の金属ストリップが取り外される都度、金属ストリップは停止および始動せねばならない。金属ストリップが停止している間に時折、従来のガス駆動再熱器は、再加熱器内で停止している金属ストリップの部分を過熱して損傷することがある。金属ストリップのこの過熱部分は切り取られてスクラップとして廃棄されなければならず、過熱部分は下流のロールおよび/または金属ストリップのコイルに損傷を惹起することもある。加えて、再加熱中に時折、金属ストリップは張力を失い、従来の再加熱器の1つ以上のノズルと接触する。このような接触は、金属ストリップにしわまたはひずみを惹起する可能性があり、さらに巻き戻しコイラでコイル化された金属ストリップにスクラップとして廃棄しなければならないしわを惹起する可能性がある。
【0016】
本開示の態様および特徴は、動いている金属ストリップの上方および/または下方に配置され、ストリップを通して移動または経時変化する磁界を誘導する1つ以上の磁気ロータを含む再加熱器を有する予備時効システムおよび方法を含む。変化する磁界は、金属ストリップ内に電流(例えば、渦電流)を発生させ、したがって金属ストリップを加熱することができる。
【0017】
場合によっては、本明細書に開示される磁気ロータは、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム系材料、チタン、チタン系材料、銅、銅系材料、鋼、鋼系材料、青銅、青銅系材料、真鍮、真鍮系材料、複合材料、複合材料に使用されるシート、または他の任意の適切な金属、非金属、もしくは材料の組み合わせを含む、非鉄含有材料と共に使用され得る。物品は、モノリシック材料、ならびに圧延接着材料、クラッド材料、複合材料(例えば、限定はされないが、炭素繊維含有材料など)、または他の様々な材料などの非モノリシック材料を含み得る。非限定的な一例では、磁気ロータは、アルミニウム金属ストリップ、スラブ、または、鉄を含有するアルミニウム合金を含むアルミニウム合金から製造された他の物品などの金属物品を加熱することに使用することができる。
【0018】
各磁気ロータは、1つ以上の永久磁石または電磁石を含む。いくつかの例では、1対の整合された磁気ロータを金属ストリップのパスラインの両側に配置することができる。他の例では、1つ以上の磁気ロータがパスラインの上方または下方に配置される。磁気ロータは順方向または逆方向に回転可能であり、電気モータ、空気圧モータ、別の磁気ロータ、または他の様々な適切な機構を含むがこれらに限定されない様々な適切な方法によって回転させ得る。磁気ロータの方向および回転速度は、必要に応じて調節および制御され得る。いくつかの例では、磁気ロータはパスラインから所定の距離に配置される。特定の場合では、磁気ロータとパスラインとの間の距離は、必要に応じて調節および制御され得る。
【0019】
再加熱器を使用すると、予備時効処理のための正確な加熱制御を達成することができる。そのような正確な制御は、ロータ内の磁石の強度、ロータ内の磁石の数、ロータ内の磁石の向き、ロータ内の磁石のサイズ、ロータの速度、順方向または逆方向の回転方向、ロータのサイズ、単一ロータセット内の垂直方向オフセットロータ間の垂直方向ギャップ、単一ロータセット内のロータの横方向オフセット配置、隣接するロータセット間の長手方向ギャップ、加熱されるストリップの厚さ、ロータとストリップとの間の距離、加熱されるストリップの前進速度、および使用されるロータセットの数を含む、様々な要因の操作によって達成できる。他の要因も同様に制御することができる。
【0020】
場合によっては、巻き戻しコイラでコイル状の金属ストリップが取り外されている間に金属ストリップが停止されたときに磁石の回転が停止され得るので、再加熱器は高速応答再加熱器であり、金属ストリップの過熱を防止する。場合によっては、とりわけ、前述の要因のうちの1つ以上の制御は、コンピュータモデル、オペレータフィードバック、または自動フィードバック(例えば、リアルタイムセンサからの信号に基づく)に基づくことができる。
【0021】
金属加工中の金属ストリップ102の予備時効処理のための予備時効システム100の一例を図1に示す。様々な例において、予備時効システム100は加工ライン104と共に使用され得る。様々な例において、加工ライン104は、金属加工後に金属ストリップ102をコイル110Bに巻き取るための巻き戻しコイラ108を含む。任意選択で、加工ライン104はまた、(例えば、熱間圧延、冷間圧延、または他の様々な金属加工技術によって)予め加工された金属ストリップ102のコイル110Aを受け取る巻き出しコイラ111も含む。いくつかの例では、加工ライン104は、任意選択で、CASHラインの部分(例えば、炉、冷却ユニット、もしくは他の装置)または他の適切な装置などの加工装置106を含む。金属加工中、金属ストリップ102は、巻き出しコイラ111から巻き出され、加工ライン104によって加工され、次いで巻き戻しコイラ108に巻き戻され得る。
【0022】
図1図3に示すように、予備時効システム100は、巻き戻しコイラ108上にコイル化する前に金属ストリップ102を加熱するように構成された再加熱器112を含む。いくつかの例では、再加熱器112は、金属ストリップ102と接触することなく金属ストリップ102を加熱するように構成される。再加熱器112は、垂直、斜め、または水平など、地面に対して様々な方向に配向され得、図1図3に示す配向に限定されない。例えば、再加熱器は、垂直に(そうすると金属ストリップ102は再加熱器112を垂直に通過する)、斜めに(そうすると金属ストリップ102は再加熱器112を地面に対してある角度で通過する)、水平に、または他の様々な向きまたは向きの組み合わせに配向され得る。
【0023】
様々な例において、再加熱器112は少なくとも1つの磁気ロータ114を含み、特定の例では、再加熱器112は1つを超える磁気ロータ114を含み得る。例えば、再加熱器は、1つの磁気ロータ114、2つの磁気ロータ114、3つの磁気ロータ114、4つの磁気ロータ114、5つの磁気ロータ114、6つの磁気ロータ114、または6つを超える磁気ロータ114を含み得る。このように、磁気ロータ114の数は、本開示を限定すると見なされるべきではない。図1に示す非限定的な例では、再加熱器112は4つの磁気ロータ114を含む。
【0024】
各磁気ロータ114は、1つ以上の永久磁石または電磁石を含む。磁気ロータ114は、順方向(図1では時計回り方向)または逆方向(図1では反時計回り方向)に回転可能である(図2の矢印120を参照)。様々な例において、磁気ロータ114は、電気モータ、空気圧モータ、別の磁気ロータ、または他の様々な適切な機構を含むがこれらに限定されない様々な適切な方法によって回転させ得る。
【0025】
磁気ロータ114は、金属加工中に磁気ロータ114が金属ストリップ102と非接触構成になるように、金属ストリップ102のパスラインから離間されている。様々な例において、磁気ロータ114は、特定の磁気ロータ114と金属ストリップ102(または金属ストリップ102のパスライン)との間の距離が調節および制御され得るように、垂直方向に調節可能である。
【0026】
いくつかの例では、磁気ロータ114は、パスラインの上方に配置された上部磁気ロータ114Aとパスラインの下方に配置された下部磁気ロータ114Aとを有するセットとして設けられる。他の例では、再加熱器112は、下部磁気ロータ114Bのみ、上部磁気ロータ114Aのみ、または上部磁気ロータ114Aおよび下部磁気ロータ114Bの様々な組み合わせを含む。いくつかの例では、少なくとも1つの上部磁気ロータ114Aは対応する下部磁気ロータ114Bと水平方向に整列しているが、そうである必要はない。特定の例では、上部磁気ロータ114Aは対応する下部磁気ロータ114Bから垂直方向にオフセットされ、磁気ロータ114A〜B間にギャップ116が画定される(図2)。図1および図2に示されるように、加工中、金属ストリップ102はギャップ116を通過する。他の場合では、上部磁気ロータ114Aは、下部磁気ロータ114Bに対して水平方向にオフセットされ得る。
【0027】
様々な例において、上部磁気ロータ114Aおよび下部磁気ロータ114Bは、上部磁気ロータ114Aから下部磁気ロータ114Bまでの距離であるギャップ116のサイズが調節および制御され得るように、垂直方向に調節可能である(図2の矢印118を参照)。様々な例において、ギャップ116は、油圧ピストン、スクリュー駆動、または他の適切な例を含むがこれらに限定されない様々なアクチュエータを通して制御され得る。特定の例では、ギャップ116は、最小ギャップサイズと最大ギャップサイズとの間で変動され得る。場合によっては、磁界の強度、したがって金属ストリップ102に与えられる熱の量は、磁気ロータ114と金属ストリップ102との間の距離を変えることによって制御し得る。様々な例において、上部磁気ロータ114Aは、下部磁気ロータ114Bから独立してまたはそれと関連して、垂直方向に調節可能であり得る。上述のように、磁界の強度、したがって金属ストリップ102に与えられる熱の量は、他の方法または追加の方法で調節することができる。
【0028】
特定の例では、磁気ロータ114A〜Bは横方向に調節し得る(図3の矢印122を参照)。横方向の動きは、特定のロータ114A〜Bによって覆われる金属ストリップ102の表面の割合、したがって金属ストリップ102に与えられる熱の量および位置を制御することができる。特定の例では、磁気ロータ114A〜Bは、金属ストリップ102内の温度分布を制御するために横方向に調節され得る。例えば、場合によっては、金属ストリップ102の縁部は金属ストリップ102の縁部ではない部分よりも迅速に加熱され得るので、磁気ロータ114A〜Bは、金属ストリップ102内の温度差が低減されるように横方向に調節され得る。様々な例において、磁気ロータ114A〜Bは、隣接する磁気ロータ114のセット間のギャップを制御するように長手方向に調節可能であり得る(図2の矢印124を参照)。
【0029】
いくつかの例では、上部磁気ロータ114Aおよび下部磁気ロータ114Bは同じ方向に回転するが、必ずしもそうである必要はない。例えば、場合によっては、上部磁気ロータ114Aおよび下部磁気ロータ114Bは反対方向に回転し得る。様々な例において、1つの磁気ロータセットの磁気ロータ114A〜Bは、別の磁気ロータセットの対応する磁気ロータ114A〜Bと同じ方向または異なる方向に回転し得る。磁気ロータ114A〜Bは、約100rpmから約5000rpmなどの様々な回転速度で回転し得る。非限定的な一例では、磁気ロータ114A〜Bは毎分約1800回転で回転するが、他の様々な回転速度を利用し得る。
【0030】
磁気ロータ114A〜Bが回転すると、磁石が金属ストリップ102内に磁界を誘導して金属ストリップ102が加熱される。様々な例において、磁気ロータ114の回転を通して、再加熱器112は、金属ストリップ102が再加熱器112を通過するときに金属ストリップ102を約60℃から約150℃、例えば約80℃から約120℃の予備時効温度で加熱するように構成される。例えば、再加熱器112は金属ストリップ102を約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、約125℃、約130℃、約135℃、約140℃。約145℃、または約150℃の温度で加熱し得る。特定の例では、ストリップ102は、再加熱器112内の浸漬時間なしに目標温度のみに加熱される。加熱されたストリップ102は次いでコイル状に巻き戻され、静止空気中で自然冷却する。コイルがコイル状にある間に温度で冷却する間に、予備時効が起こる。いくつかの例では、シート温度がより均一であるほど、ストリップ102の幅にわたってかつ長さに沿って均一な目標特性を達成することがより容易になり得るので、ストリップ102の温度を幅にわたって均一化するのを助けるために、再加熱器112と共に従来のガスまたは他のタイプの加熱ユニット。複数の磁気ロータ114A〜Bを備えた特定の例では、磁気ロータ114A〜Bは、任意選択で、各磁気ロータ114A〜Bによって与えられる金属ストリップ102の温度上昇量が制限されるように制御され得る。
【0031】
いくつかの例では、金属ストリップ102を加熱することに加えて、磁気ロータ114A〜Bを回転させることは、金属ストリップ102が磁気ロータ114A〜Bに接触することなく磁気ロータ114の上方および/または磁気ロータ114間を通過することを可能にする垂直方向安定化をもたらし得る(例えば、磁気ロータ114A〜Bは金属ストリップ102を浮揚または浮遊させる)。例えば、場合によっては、磁気ロータ114A〜Bは、金属ストリップ102の表面に対して垂直または実質的に垂直な力を与えて金属ストリップ102を浮遊させ、ロータ114A〜Bと金属ストリップ102との間の接触を最小化および/または排除する。
【0032】
特定の例では、予備時効システム100は、再加熱器112に対して様々な位置にかつ金属ストリップ102の経路に沿って、様々なセンサまたはモニタ126を含む。これらのセンサ126は、金属ストリップ102が加工されるとき、金属ストリップ102の位置、金属ストリップ102の動き、金属ストリップ102の温度、金属ストリップ102にわたる温度分布、および/または金属ストリップ102に関する他の様々な情報を検出およびモニタし得る。いくつかの例では、センサによって収集された情報は、磁気ロータ114A〜B(例えば、回転速度、回転方向、金属ストリップ102からの距離など)を調節し、それによって金属ストリップ102の加熱を制御するためにコントローラによって使用され得る。
【0033】
一例として、再加熱器112は、金属ストリップ102が停止している間の金属ストリップ102の過熱を低減または防止するように制御され得る。例えば、センサまたはモニタ126は、金属ストリップ102が再加熱器112内を動いているとき、およびコイル110Bが巻き戻しコイラ108から取り外されるときなど、金属ストリップ102の動きが停止したときを検出し得る。金属ストリップ102が停止すると、再加熱器112の磁気ロータ114は回転を停止し(したがって金属ストリップ102の加熱を停止し)、金属ストリップ102の過熱を防止し得る。同様に、金属ストリップ102が動こうとするとき、または金属ストリップ102が動いている間、磁気ロータ114A〜Bは再び回転し始め得る(したがって、金属ストリップ102を再び加熱し始め得る)。したがって、磁気ロータ114A〜Bを介して、再加熱器112は金属ストリップ102を迅速に加熱したりまたは加熱を停止し得る。
【0034】
別の例として、再加熱器112は、金属ストリップ102の均一なまたは所望の温度分布を保証するように制御され得る。いくつかの例では、劣化または移動なしに潤滑剤を均一にするための金属ストリップ102の温度は、潤滑剤に依存する。1つの非限定的な例では、劣化または移動のない金属ストリップの温度は約20℃から約100℃であるが、20℃未満または100℃を超える温度を使用してもよい。例えば、センサまたはモニタ126は、再加熱器112を通る金属ストリップ102の温度および/またはライン速度を検出し得る。別の非限定的な例では、金属ストリップ102の温度は、潜在的な劣化または移動を防ぐために、約20℃から約45℃などの設定点温度に維持され得る。検出された温度および/またはライン速度に基づいて、磁気ロータ114を(例えば、磁気ロータ114への電力入力、磁気ロータ114A〜Bの速度、金属ストリップ102からの磁気ロータ114A〜Bの距離を調節することによって)制御し、金属ストリップ102の温度および/または金属ストリップ102にわたる温度を制御し得る。いくつかの例では、熱モデルを使用して再加熱器112の様々な制御変数を制御し、目標ストリップ温度を達成することができる。再加熱器112の制御変数は、ライン速度、再加熱器112の前および/もしくは後の検出もしくはモデル化されたシート温度、再加熱器112内の測定された空気温度、または他の様々な変数を含むがこれらに限定されない。
【0035】
さらなる例として、再加熱器112は、異なる種類の金属ストリップ102に対応するように制御され得る。例えば、金属ストリップ102の種類および/または所望のプロセスまたは製品要件に応じて、金属ストリップ102は異なる速度で再加熱器112を通過させられ得る。磁気ロータ114A〜Bを制御することによって、温度を従来の再加熱器よりも急速に変化させることができる。
【0036】
いくつかの例では、再加熱器112はまた、過時効溶液熱処理製品を修復するために使用され得る。金属加工中に時折、金属ストリップ102のコイルまたはブランクがあまりにも長期間保管されることがあり、その結果、金属ストリップ102は高度な特性および低い成形性を有することになる。再加熱器112を介して、過時効コイルまたはブランクの金属ストリップ102を540℃を超える温度または他の適切な温度に急速に再加熱して金属ストリップ102を再溶体化し、過時効効果を反転させることができる。
【0037】
図4は、別の例の予備時効システム400を示す。予備時効システム400は予備時効システム400と実質的に同様であるが、但し、予備時効システム400は潤滑剤ディスペンサ402も含む。潤滑剤ディスペンサ402は、金属ストリップ102上に潤滑剤を塗布するように構成されている。従来、潤滑剤は塗布のための最高温度限界を有し、高温への暴露は潤滑剤の効果を低め得る。高温はまた、金属ストリップ102上の潤滑剤の移動を増大させ、潤滑剤が金属ストリップ102上に均一に塗布されない可能性がある。従来の再熱器では、金属ストリップ102の加熱は潤滑剤を介して行われなければならず、したがって、潤滑剤は加熱される。予備時効システム400では、磁気ロータ114A〜Bは、金属ストリップ102上の潤滑剤を直接加熱することなく、金属ストリップ102を加熱する(例えば、潤滑剤は金属ストリップ102との接触によって加熱されるだけで、磁気ロータからは加熱されない)。そのため、潤滑剤は最高温度限界を下回るより低い程度に加熱される。さらに、潤滑剤は従来のシステムよりも加熱されないので、より均一なまたは所望のパターンの潤滑剤を潤滑剤ディスペンサ402を介して金属ストリップ102に塗布し得る。さらに、潤滑剤(ドライフィルムなど)が塗布器によって不均一に塗布される(例えば、潤滑剤が均一なフィルムではなく離散液滴として塗布される)場合、金属ストリップ102を温める再加熱器112は液滴も溶融させ、それらを流動させて、より均一な潤滑剤フィルムを形成し得る。
【0038】
図5および図6は、別の例の予備時効システム500および600を示す。予備時効システム500および600は予備時効システム100と同様であるが、但し、予備時効システム500および600は第2の再加熱器502をさらに含む。いくつかの例では、第2の再加熱器502は再加熱器112より上流にある(図5参照)。他の例では、第2の再加熱器502は再加熱器112より下流にある(図6参照)。様々な例において、第2の再加熱器502は、非磁性加熱を通して金属ストリップ102を加熱するように構成され得る。例えば、第2の再加熱器502は、ガス駆動再加熱器502(直接火炎衝突などの直接、または間接)、赤外線再加熱器502、誘導再加熱器502、または他の様々な適切な種類の加熱器とし得る。他の様々な例において、第2の再加熱器502は再加熱器112と同様であり、1つ以上の磁気ロータ114を含み得る。特定の例では、再加熱器112と共に第2の再加熱器502を設けることによって、再加熱器112および502内の温度上昇量を制限することができる。温度上昇を制限することにより、金属ストリップ102の形状性能を向上させ得る。非限定的な一例として、各再加熱器112および502は、温度上昇量を約60℃に制限するように構成され得る。他の例では、温度上昇限界は60℃未満または60℃超であり得る。非限定的な一例では、温度上昇限界は約150℃であり得る。他の例では、温度上昇限界は150℃超であり得る。様々な例において、再加熱器112ごとのまたは磁気ロータ114ごとの温度上昇が低いほど、必要に応じて迅速または急速に変化することを可能にしながら、温度のよりよい制御および/または均一性ならびに形状のよりよい制御および/または均一性を可能にし得る。
【0039】
図1図3に戻って参照すると、様々な例において、金属ストリップ102を予備時効する方法は、再加熱器112で金属ストリップ102を受け取ることを含む。特定の例では、金属ストリップ102は、金属ストリップが圧延された後に再加熱器112で受け取られる。様々な例において、金属ストリップ102は、金属ストリップが加工装置106で加工された後に再加熱器112で受け取られる。非限定的な一例では、金属ストリップ102は、CASHライン上の急冷の後に再加熱器112で受け取られる。
【0040】
特定の例では、方法は、再加熱器112の1つ以上の磁気ロータ114に隣接して金属ストリップ102を通過させることと、1つ以上の磁気ロータ114を回転させて金属ストリップ102内に磁界を誘導して金属ストリップ102を予備時効温度で加熱することと、を含む。いくつかの例では、予備時効温度は約60℃から約150℃、例えば約80℃から約100℃である。場合によっては、金属ストリップ102を通過させることは、金属ストリップに、上部磁気ロータ114Aと下部磁気ロータ114Bとの間に画定されるギャップ116を通過させることと、磁気ロータ114A〜Bを回転させることと、を含む。任意選択で、特定の例では、上部磁気ロータ114Aおよび下部磁気ロータ114Bは水平方向にオフセットされている。
【0041】
いくつかの例では、方法は、金属ストリップ102の温度をモデル化することによって検出または算出することと、検出/算出温度を所定の温度と比較することと、磁気ロータ114を調節し。検出温度が所定の温度と一致するように金属ストリップ102の加熱を調節することと、を含む。様々な例において、磁気ロータ114を調節することは、磁気ロータ114の回転速度、磁気ロータ114と金属ストリップ102との間の垂直距離、磁気ロータ114の横方向位置、金属ストリップ102の速度、または磁気ロータ114の回転方向のうちの少なくとも1つを調節することを含む。
【0042】
特定の例では、方法は、再加熱器112を通る金属ストリップ102のライン速度を検出することを含む。様々な場合において、金属ストリップ102のライン速度は、加工されている金属ストリップ102の種類に応じて変わり得る。非限定的な一例では、金属ストリップのライン速度は、約1m/分から約100m/分であり得る。他の例では、ライン速度は約1m/分未満または約100m/分超であり得る。場合によっては、方法は、ライン速度が所定のライン速度以下であるとき、または予備時効または潤滑剤均一性補正を必要としない金属ストリップ102または製品が走行されているとき、磁気ロータ114を非活動化することを含む。1つの非限定的な例では、所定のライン速度は0m/分であるが、他の様々なライン速度を所定のライン速度として使用し得る。例えば、別の非限定的な例において、金属ストリップ102が再加熱器112の使用を必要としない場合、所定の速度は100m/分であり得る。いくつかの例では、磁気ロータ114を非活動化することは、磁気ロータ114の回転を停止すること、磁界が金属ストリップ102内に誘導されないように磁気ロータ114を金属ストリップ102から遠ざけること、または金属ストリップ102の加熱を停止するための他の様々な調節を含む。様々な例において、方法は、ライン速度が所定のライン速度よりも大きいときに磁気ロータ114を活動化することを含む。
【0043】
いくつかの任意の例では、方法は、図4に示すように、再加熱器112で金属ストリップ102を受け取る前に金属ストリップ102上に潤滑剤を塗布することを含む。いくつかの任意の例では、方法は、金属ストリップ102に第2の再加熱器502を通過させることを含む。特定の例では、金属ストリップ102を再加熱器112で加熱した後、または金属ストリップ102を再加熱器112で加熱する前に、金属ストリップ102に第2の再加熱器502を通過させる。様々な例において、方法は、金属ストリップ102を加熱した後に巻き戻しコイラ108上で金属ストリップ102をコイル化することを含む。
【0044】
「EC」(実施例の組み合わせ)として少なくともいくつかの明示的に列挙されたものを含む例示的な実施形態の集合は、本明細書に記載の概念に従った様々な実施形態のタイプに関する追加の説明を提供する。これらの実施例は、相互に排他的、包括的、または限定的であることを意味しておらず、本発明は、これらの例示的な実施形態に限定されず、むしろ、発行された特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内の全ての可能な修正及び変形を包含する。
【0045】
EC1.金属ストリップを予備時効する方法は、磁気ロータを含む再加熱器で金属ストリップを受け取ることと、再加熱器の磁気ロータに隣接して金属ストリップを通過させることと、磁気ロータを回転させて金属ストリップ内に磁界を誘導して金属ストリップを予備時効温度で加熱することと、を含む。
【0046】
EC2.金属ストリップは、金属ストリップが圧延された後に再加熱器で受け取られる、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0047】
EC3.金属ストリップは、金属ストリップが急冷された後に再加熱器で受け取られる、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0048】
EC4.磁気ロータが上部磁気ロータであり、再加熱器が、上部磁気ロータから垂直方向にオフセットされた下部磁気ロータをさらに含み、磁気ロータに隣接して金属ストリップを通過させることは、金属ストリップに、上部磁気ロータと下部磁気ロータとの間に画定されるギャップを通過させることを含み、磁気ロータを回転させることは、上部磁気ロータおよび下部磁気ロータを回転させて金属ストリップを予備時効温度で加熱することを含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0049】
EC5.上部磁気ロータおよび下部磁気ロータは水平方向にオフセットされている、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0050】
EC6.金属ストリップの温度を検出することと、検出された温度を所定の温度と比較することと、磁気ロータを調節して、検出された温度が所定の温度と一致するように金属ストリップの加熱を調節することと、をさらに含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0051】
EC7.磁気ロータを調節することは、磁気ロータの回転速度、磁気ロータと金属ストリップとの間の垂直距離、磁気ロータの横方向位置、または磁気ロータの回転方向のうちの少なくとも1つを調節することを含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0052】
EC8.再加熱器を通る金属ストリップのライン速度を検出することと、ライン速度が所定のライン速度以下であるときに磁気ロータを非活動化または調節することと、ライン速度が所定のライン速度よりも大きいときに磁気ロータを活動化または調節することと、をさらに含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0053】
EC9.所定のライン速度が0m/sである、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0054】
EC10.磁気ロータを非活動化することは、磁気ロータの回転を停止させることを含み、磁気ロータを活動化することは、磁気ロータを回転させることを含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0055】
EC11.予備時効温度は約60℃から約150℃である、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0056】
EC12.予備時効温度は約80℃から約100℃である、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0057】
EC13.再加熱器で金属ストリップを受け取る前に、金属ストリップ上に潤滑剤を塗布することをさらに含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0058】
EC14.再加熱器は第1の再加熱器であり、方法は、金属ストリップに第2の再加熱器を通過させることをさらに含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0059】
EC15.金属ストリップを第1の再加熱器で加熱した後に、金属ストリップに第2の再加熱器を通過させる、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0060】
EC16.第1の再加熱器で金属ストリップを受け取る前に、金属ストリップに第2の再加熱器を通過させる、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0061】
EC17.第2の再加熱器は、非磁性加熱によって金属ストリップを加熱するように構成されている、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0062】
EC18.第2の再加熱器は、ガス駆動再加熱器、赤外線再加熱器、または誘導再加熱器を含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0063】
EC19.金属ストリップを加熱した後、巻き戻しコイラ上で金属ストリップをコイル化することをさらに含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0064】
EC20.金属ストリップの目標特性と、目標特性が再加熱器による金属ストリップの加熱を必要とするかどうかとを決定することと、目標特性が金属ストリップの加熱を必要としない場合には磁気ロータを非活動化または制御することと、目標特性が金属ストリップの加熱を必要とする場合には磁気ロータを活動化または制御することと、をさらに含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの方法。
【0065】
EC21.磁気ロータを含む再加熱器を含む予備時効システムであって、磁気ロータは、再加熱器を通る金属ストリップのパスラインから所定の距離に配置され、再熱器は、磁気ロータに隣接して金属ストリップを受け取り、磁気ロータを回転させて金属ストリップ内に磁界を誘導して金属ストリップを予備時効温度で加熱するように構成されている、予備時効システム。
【0066】
EC22.磁気ロータの回転速度、磁気ロータと金属ストリップとの間の垂直距離、磁気ロータの横方向位置、または磁気ロータの回転方向のうちの少なくとも1つが調節可能である、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0067】
EC23.磁気ロータは上部磁気ロータであり、再加熱器は上部磁気ロータから垂直方向にオフセットされた下部磁気ロータをさらに含み、再加熱器は、上部磁気ロータと下部磁気ロータとの間に画定されるギャップを通して金属ストリップを受け取り、上部磁気ロータおよび下部磁気ロータを回転させて金属ストリップを予備時効温度で加熱するように構成されている、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0068】
EC24.上部磁気ロータが下部磁気ロータから水平方向にオフセットされている、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0069】
EC25.再加熱器のすぐ下流に巻き戻しコイラをさらに含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0070】
EC26.予備時効温度は約60℃から約150℃である、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0071】
EC27.予備時効温度は約80℃から約100℃である、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0072】
EC28.再加熱器より上流に潤滑剤ディスペンサをさらに含み、潤滑剤ディスペンサは、再加熱器より上流の金属ストリップ上に潤滑剤を塗布するように構成されている、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。他の例では、熱は、潤滑剤ディスペンサより上流に加えられてもよく、潤滑剤ディスペンサは、金属ストリップが加熱された後に潤滑剤を塗布するように構成される。いくつかの例では、潤滑剤を塗布する前に金属ストリップを加熱することは、潤滑剤が流動し、金属ストリップ上で均一になることを助成し得る。
【0073】
EC29.再加熱器は第1の再加熱器であり、予備時効システムは第2の再加熱器をさらに含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0074】
EC30.第2の再熱器は第1の再熱器より上流にある、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0075】
EC31.第2の再加熱器は第1の再加熱器より下流にある、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0076】
EC32.第2の再加熱器は、非磁性加熱によって金属ストリップを加熱するように構成されている、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0077】
EC33.第2の再加熱器は、ガス駆動再加熱器、赤外線再加熱器、または誘導再加熱器を含む、前述または後述の実施例の組み合わせのいずれかの予備時効システム。
【0078】
上記の態様は、単に本開示の原理に関する明確な理解のために記載された、単に実施可能な実施例である。本開示の趣旨および原理から実質的に逸脱することなく、上記の実施例(複数可)に関しては多くの変形および修正をなすことができる。そのような修正および変形の全てが、本開示の範囲内で本明細書に含まれるものとし、要素またはステップの個々の態様または組み合わせに対する全ての可能性のある請求項は、本開示によって裏付けられることが意図されている。さらに、特定の用語は、本明細書ならびに以下の特許請求の範囲で使用されるが、それらは、包括的および説明的な意味でのみ使用され、記載された発明または添付の特許請求の範囲を限定することを目的としていない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6