(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記FETオフ手段は、前記サンプリングタイミング発生手段がサンプリングタイミングを生じさせる毎に前記FETオフ期間を生じさせるように構成されている請求項2に記載のバッテリ充電装置。
前記FETオフ手段は、前記充電時FET制御が行われる過程でも、前記FETオフ期間を設定された周期で生じさせるように構成されている請求項1、2又は3に記載のバッテリ充電装置。
前記短絡制御が行われている間に前記発電機から前記整流回路を構成しているMOSFETの寄生ダイオードを通して単位時間毎に出力される電力量を単位時間毎に前記バッテリが負荷に供給する必要がある電力量の最小値以下に抑えるように、前記FETオフ期間の長さが設定されていることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載のバッテリ充電装置。
前記バッテリが搭載された機器は、エンジンにより駆動される機器であり、前記バッテリが電力を供給する負荷は、前記エンジンを動作させるために必要な電装品である請求項6に記載のバッテリ充電装置。
前記FETオフ手段は、一定の周期で前記FETオフ期間を開始させ、前記オンオフ状態決定手段がオンオフ状態決定処理を完了したときに前記FETオフ期間を終了させるように構成されている請求項2に記載のバッテリ充電装置。
前記整流回路の各入力端子に接続された上側アーム及び下側アームはそれぞれドレインが前記プラス側の出力端子に接続され、ソースが各入力端子に接続された上側MOSFET及びソースが前記マイナス側の出力端子に接続され、ドレインが各入力端子に接続された下側MOSFETからなり、
前記オンオフ状態決定手段は、前記入力電位極性検出回路により検出されている整流回路の各入力端子の電位の極性が各入力端子に接続されている上側アームのMOSFETの寄生ダイオードに順方向電圧を印加する極性であるときに各入力端子に接続されている上側アームのMOSFET及び下側アームのMOSFETがそれぞれとるべき状態をオン状態及びオフ状態と決定し、前記入力電位極性検出回路により検出されている整流回路の各入力端子の電位の極性が各入力端子に接続されている上側アームのMOSFETの寄生ダイオードに逆方向電圧を印加する極性であるときに各入力端子に接続されている上側アームのMOSFET及び下側アームのMOSFETがそれぞれとるべき状態をオフ状態及びオン状態と決定するように構成されている請求項1ないし8の何れか一つに記載のバッテリ充電装置。
前記入力電位極性検出回路は、前記整流回路の各入力端子の電位の極性が正極性のときと負極性のときとでオンオフの状態を異にするように設けられた極性検出スイッチを前記整流回路の各入力端子毎に備え、
前記FET制御部は、前記整流回路の各入力端子に対して設けられた極性検出スイッチの状態から前記整流回路の各入力端子の電位の極性を検出するように構成されている請求項1ないし9の何れか一つに記載のバッテリ充電装置。
【背景技術】
【0002】
バッテリを充電する装置として、エンジンや風車等の駆動源により駆動される磁石式交流発電機の整流出力でバッテリを充電するように構成されたものが知られている。
【0003】
一般にこの種の充電装置は、発電機の出力を整流してバッテリに供給する整流回路と、バッテリの両端の電圧(バッテリ電圧)を検出するバッテリ電圧検出回路と、この検出回路により検出されたバッテリ電圧に応じてバッテリを充電する必要があるのかバッテリの充電を休止する必要があるのかを判定する充電要否判定手段と、充電要否判定手段によりバッテリを充電する必要があると判定されているときに発電機から整流回路を通してバッテリに充電電流を供給し、充電要否判定手段により過充電を防ぐためにバッテリの充電を休止する必要があると判定されたときにバッテリへの充電電流の供給を停止するようにバッテリへの充電電流の供給を制御する制御部とにより構成される。
【0004】
バッテリに充電電流を供給する電源として磁石式交流発電機が用いられる場合には、充電要否判定手段によりバッテリを充電する必要があると判定されているときに発電機の出力を整流してバッテリに充電電流を供給し、充電要否判定手段によりバッテリの充電を休止する必要があると判定されたときに発電機の出力端子間を短絡する短絡制御を行うことによりバッテリへの充電電流の供給を停止するように制御部を構成することが多い。
【0005】
磁石式交流発電機の出力を整流する整流回路としては、ブリッジ回路の上下のアームをダイオードにより構成したダイオードブリッジ全波整流回路が広く用いられている。しかし、ダイオードは順方向電流が流れた際に生じる損失が大きいため、この整流回路を用いると、発電機の出力を整流する際に生じる電力損失が大きくなるのを避けられない。整流回路で大きな電力損失が生じると、整流回路の温度が上昇するだけでなく、バッテリに必要な充電電流を供給するために大形の発電機を用いることが必要になるため好ましくない。
【0006】
そこで、特許文献1に示されているように、発電機の出力を整流する整流回路として、ブリッジ回路の上下のアームをMOSFETにより構成したフルブリッジ形の全波整流回路を用いることが提案された。MOSFETは、オン状態にされた際にその主回路(ドレイン・ソース間回路)で生じる損失が極めて少ないため、発電機の出力を整流する整流回路の各アームをMOSFETにより構成しておくと、発電機から整流回路を通してバッテリに供給する電流を、整流回路のいずれかのアームを構成しているMOSFETのドレイン・ソース間を通して流すように各MOSFETを制御することにより、整流回路で生じる電力損失を少なくすることができる。
【0007】
発電機から整流回路を通してバッテリに供給する電流を、整流回路のいずれかのアームを構成しているMOSFETのドレイン・ソース間を通して流すには、発電機から整流回路の各アームを構成しているMOSFETのドレイン・ソース間に印加される電圧の極性が、各アームを構成しているMOSFETのドレイン・ソース間に形成された寄生ダイオードを順方向にバイアスする極性であるときに各アームを構成しているMOSFETをオン状態にするように制御すればよい。各MOSFETのドレイン・ソース間に印加されている電圧の極性は、整流回路の各入力端子の電位の極性を検出することにより判別することができる。
【0008】
例えば、整流回路の各入力端子の電位の極性が各入力端子に接続されている上側アームのMOSFETの寄生ダイオードに順方向電圧を印加する極性であるときに各入力端子に接続されている上側アームのMOSFET及び下側アームのMOSFETがそれぞれとるべき状態をオン状態及びオフ状態と決定し、入力電位極性検出回路により検出されている整流回路の各入力端子の電位の極性が各入力端子に接続されている上側アームのMOSFETの寄生ダイオードに逆方向電圧を印加する極性であるときに各入力端子に接続されている上側アームのMOSFET及び下側アームのMOSFETがそれぞれとるべき状態をオフ状態及びオン状態と決定することができる。
【0009】
また、発電機の出力を整流する整流回路として、ブリッジ回路の各アームがMOSFETにより構成されたフルブリッジ形の全波整流回路を用いる場合には、整流回路の下アームを構成しているMOSFETを同時にオン状態にすることにより発電機の出力端子間を短絡することができるため、充電要否判定手段によりバッテリの充電を休止する必要があると判定されたときに、バッテリへの充電電流の供給を停止するための短絡制御を容易に行うことができる。磁石式交流発電機の出力を整流するフルブリッジ形の整流回路の下アームを構成しているMOSFETを同時にオン状態にすることにより発電機の出力端子間を短絡することは、例えば特許文献2に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、発電機の出力を整流する整流回路として、上下の各アームがMOSFETにより構成されたフルブリッジ形の全波整流回路を用いると、各時刻において整流回路の各入力端子に接続された上下のアームのMOSFETがそれぞれとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを、整流回路の各入力端子の電位の極性に基づいて決定して、各MOSFETの状態を決定された状態に一致させるように制御することにより電力損失が少ない整流回路を構成して、バッテリの充電を低損失で行わせることができる。
【0012】
しかしながら、バッテリ電圧が規定電圧を超えて、バッテリの充電を休止させる必要があると判定されたときに、整流回路のすべての下アームを構成しているMOSFETを同時にオン状態にして発電機の出力を短絡する短絡制御を行った場合には、短絡制御が行われている間、整流回路の各入力端子の電位がゼロ電位に保たれるため、各時刻において整流回路の各MOSFETがとるべき状態を決定するための情報を得ることができなくなるという問題が生じる。
【0013】
従って、上記のように構成した場合には、短絡制御を終了してバッテリの充電を再開する際に、整流回路の各入力端子に接続された上アームのMOSFET及び下アームのMOSFETの何れをオン状態にし、何れをオフ状態にすべきかを直ちに決定することができないため、バッテリを充電する際のMOSFETのオンオフ制御を速やかに再開することができない。従って、この種のバッテリ充電装置では、短絡制御を終了して充電時の制御に移行する過程ですべてのMOSFETがオフ状態にされる過渡期間が生じ、この過渡期間の間は、MOSFETの寄生ダイオードにより構成された全波整流回路を通してバッテリに充電電流が供給され、電力損失が大きい寄生ダイオードで多くの熱が発生する。負荷が接続されているバッテリを充電する場合には、充電を必要とする状態と充電を休止する必要がある状態とが短い周期で繰り返されることがあるため、短絡制御から充電時の制御に移行する過程でMOSFETの寄生ダイオードを通して電流が流れる過渡期間が生じると、電力損失が大きい寄生ダイオードから発生する熱により整流回路の温度が過度に上昇するという問題があった。
【0014】
上記の問題が生じるのを防ぐため、発電機の磁石回転子の各瞬時における回転角度位置の情報を得るセンサを別途設けて、このセンサにより得られる回転子の回転角度位置情報から、整流回路の各入力端子に印加される電圧の位相を推測し、この位相情報に基づいて整流回路の各入力端子に接続されている上下のMOSFETの何れをオン状態にし、何れをオフ状態にすべきかを決定することが考えられる。しかしながら、磁石回転子の各瞬時における回転角度位置の情報を得るセンサを別途設けると、充電装置を構成する部品の点数が多くなってコストが上昇するのを避けられない。
【0015】
本発明の目的は、磁石式交流発電機の出力を整流する整流回路として、ブリッジ回路の各アームがMOSFETにより構成された全波整流回路を用いるバッテリ充電装置において、発電機の出力電圧の位相を検出するセンサを特別に設けることなく、短絡制御時にも随時整流回路の各入力端子の電位の極性の情報を得て、短絡制御を終了した後速やかに充電時のMOSFETの制御を再開させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、磁石式交流発電機の整流出力でバッテリを充電するバッテリ充電装置を対象とする。本発明に係るバッテリ充電装置は、ブリッジ回路を構成する各アームがMOSFETからなっていて、発電機の出力が入力される入力端子と、バッテリのプラス端子及びマイナス端子にそれぞれ接続されるプラス側及びマイナス側の出力端子とを有するフルブリッジ形の整流回路と、バッテリの両端の電圧を検出するバッテリ電圧検出回路と、整流回路の各入力端子の電位の極性を検出する入力電位極性検出回路と、バッテリ電圧検出回路及び入力電位極性検出回路の検出出力に応じて前記整流回路のMOSFETを制御するFET制御部とを備えている。
【0017】
本発明においては、上記FET制御部が、バッテリ電圧検出回路が検出している電圧に基づいてバッテリを充電する必要があるかバッテリの充電を休止する必要があるかを判定する充電要否判定手段と、発電機の出力を整流してバッテリに供給する際に整流回路の各MOSFETがとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを入力電位極性検出回路が検出している各入力端子の電位の極性に基づいて決定するオンオフ状態決定処理を行うオンオフ状態決定手段と、充電要否判定手段によりバッテリを充電する必要があると判定されているときに整流回路の各MOSFETの状態をオンオフ状態決定手段が決定した状態に一致させるように制御する充電時FET制御を行う充電時FET制御手段と、充電要否判定手段によりバッテリの充電を休止する必要があると判定されているときに整流回路のすべての上アームを構成しているMOSFETを同時にオン状態にするか又はすべての下アームを構成しているMOSFETを同時にオン状態にして発電機の出力端子間を短絡する短絡制御を行う短絡制御手段と、少なくとも短絡制御を行う際に整流回路のすべてのMOSFETがオフ状態になるFETオフ期間を設定された周期で生じさせるFETオフ手段とを備えている。上記オンオフ状態決定手段は、短絡制御手段が短絡制御を行っている間も、各FETオフ期間の間に入力電位極性検出回路が検出した整流回路の各入力端子の電位の極性に基づいてオンオフ状態決定処理を行うように構成されている。
【0018】
上記のように、短絡制御を行っている間に、整流回路のすべてのMOSFETがオフ状態になるFETオフ期間を設定された周期で生じさせると、短絡制御を行っている間も、各FETオフ期間の間に整流回路の各入力端子の電位の極性を検出することができるため、各時刻において整流回路の各入力端子に接続されている上アームのMOSFET及び下アームのMOSFETの何れをオン状態とし、何れをオフ状態とするかを決定することができ、短絡制御を終了した後速やかに充電時FET制御を再開させることができる。従って、短絡制御から充電時FET制御に移行する過程で、整流回路を構成しているMOSFETの寄生ダイオードで生じる発熱を少なくすることができ、短絡制御が繰り返し行われた場合に整流回路の温度が過度に上昇するのを防ぐことができる。
【0019】
上記のように、短絡制御を行う際に整流回路のすべてのMOSFETがオフ状態になるFETオフ期間を設定された周期で生じさせた場合、各FETオフ期間の間は発電機の出力端子間の短絡が解除されるため、発電機の出力が整流回路を構成しているMOSFETの寄生ダイオードからなる全波整流回路により整流されてバッテリに供給される。FETオフ期間は短絡制御が行われている間繰り返し生じるため、各FETオフ期間の間にMOSFETの寄生ダイオードからなる全波整流回路により整流された発電機の出力によりバッテリが充電されると、バッテリが過充電状態になるおそれがある。
【0020】
従って本発明を実施するに当たっては、短絡制御が行われている間に発電機から整流回路を構成しているMOSFETの寄生ダイオードを通して単位時間毎に出力される電力量[Ws]を単位時間毎にバッテリが負荷に供給する必要がある電力量[Ws]の最小値以下に抑えるように、FETオフ期間の長さを設定しておくことが好ましい。このようにFETオフ期間を設定しておくと、FETオフ期間の間に発電機から整流回路のMOSFETの寄生ダイオードを通して出力される電力はすべてバッテリの負荷に供給され、整流回路からバッテリに電力が供給されることがないため、バッテリが過充電状態にされるおそれを無くすことができる。
【0021】
充電要否判定手段は、バッテリ電圧が規定電圧以下であるときにバッテリの充電が必要であると判定し、バッテリ電圧が規定電圧を超えているときにバッテリの充電を休止する必要があると判定するように構成することができる。このように充電要否判定手段を構成する場合、バッテリ電圧を連続的に検出して、バッテリ電圧の変動に追従して充電の要否を判定すると、バッテリの負荷が細かく変動する場合に、バッテリ電圧の変動に合わせて、充電時FET制御と短絡制御とが非常に短い周期で切り換えられる状態が生じ、整流回路が発振状態になることがある。整流回路が発振状態になると、整流回路を構成しているMOSFETが頻繁にオンオフさせられるため、MOSFETで生じるスイッチング損失によりMOSFETが過熱して破壊するおそれがある。
【0022】
そこで、本発明の他の態様では、一定の周期でサンプリングタイミングを生じさせるサンプリングタイミング発生手段が設けられ、充電要否判定手段は、サンプリングタイミング発生手段が生じさせる各サンプリングタイミングでのみバッテリ電圧検出回路が検出している電圧をサンプリングして、サンプリングした電圧に基づいてバッテリの充電が必要であるか、バッテリの充電を休止する必要があるかを判定するように構成される。
【0023】
上記のように、一定の周期でサンプリングタイミングを生じさせて、各サンプリングタイミングでのみバッテリ電圧をサンプリングしてバッテリの充電の要否を判定するようにすると、各サンプリングタイミングから次のサンプリングタイミングまでの間、制御が充電時FET制御又は短絡制御のいずれかに固定されるため、バッテリ電圧が高頻度で変動した場合に、バッテリ電圧の変動に合わせて短絡制御と充電時FET制御とが短い周期で切り換えられる状態が生じるのを防ぐことができる。従って、整流回路が発振状態になるのを防ぐことができ、整流回路を構成しているMOSFETが頻繁にオンオフさせられて、スイッチング損失により過熱するのを防ぐことができる。
【0024】
本発明の他の態様は、以下に記載される発明を実施するための形態についての説明中で明らかにされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、少なくとも短絡制御を行っている間、整流回路のすべてのMOSFETがオフ状態になるFETオフ期間を設定された周期で生じさせて、短絡制御を行っている間も、各FETオフ期間の間に整流回路の各入力端子の電位の極性を検出することができるようにしたので、短絡制御を行っている間も、整流回路の各入力端子に接続されている上アームのMOSFET及び下アームのMOSFETの何れをオン状態とし、何れをオフ状態とするかを決定するオンオフ状態決定処理を行うことができる。従って本発明によれば、短絡制御を終了した後速やかに充電時FET制御を再開させて、整流回路で生じる電力損失の低減を図った状態でバッテリの充電を再開させることができ、短絡制御から充電時FET制御に移行する過程で、整流回路を構成するMOSFETの寄生ダイオードを通して電流が流れる時間を無くすか又は極めて短くして、電力損失が大きい寄生ダイオードから発生する熱により整流回路の温度が過度に上昇するのを防ぐことができる。
【0026】
また本発明において、一定の周期でサンプリングタイミングを生じさせて、各サンプリングタイミングでのみバッテリ電圧をサンプリングしてサンプリングした電圧に基づいてバッテリの充電の要否を判定するように充電要否判定手段を構成した場合には、各サンプリングタイミングから次のサンプリングタイミングまでの間、制御が充電時FET制御又は短絡制御のいずれかに固定されるため、バッテリ電圧が高頻度で変動した場合に、バッテリ電圧の変動に合わせて短絡制御と充電時FET制御とが短い周期で切り換えられる状態が生じるのを防ぐことができ、整流回路を構成しているMOSFETが頻繁にオンオフさせられて、スイッチング損失により過熱するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施形態の構成>
図1を参照すると、本発明に係るバッテリ充電装置の一実施形態の全体的な構成が示されている。同図において、1はエンジンや風車等の動力源により回転駆動される磁石式交流発電機、2は発電機1の出力を整流する全波整流回路、3は整流回路2の出力で充電されるバッテリである。
【0029】
発電機1は、動力源により回転駆動される磁石回転子と、この磁石回転子の磁極に対向する磁極部を有する電機子鉄心にU,V,W3相の発電コイルLu,Lv及びLwを巻回してなる固定子とにより構成されている。
図1に示した例では、発電コイルLu〜Lwがスター結線されていて、これらの発電コイルの非中性点側の端部から3相の出力端子1u,1v及び1wが引き出されている。
【0030】
<整流回路>
整流回路2は、ブリッジ回路の各アームをMOSFETにより構成したフルブリッジ形の3相全波整流回路で、3相の入力端子2u〜2wと、プラス側及びマイナス側の出力端子2a及び2bとを有している。図示の整流回路は、入力端子2u〜2wにソースが接続され、ドレインがプラス側直流出力端子2aに共通接続されたU,V,W3相の上アームのMOSFET F1〜F3と、入力端子2u〜2wにそれぞれドレインが接続されソースがマイナス側直流出力端子2bに共通接続された下アームのMOSFET F4〜F6とにより構成されていて、入力端子2u〜2wはそれぞれ発電機1の出力端子1u〜1wに接続されている。また整流回路2のプラス側出力端子2aは、バッテリ3の正極端子に接続され、整流回路2のマイナス側出力端子2bは、バッテリ3の負極端子と共に接地されている。
【0031】
本実施形態で用いる整流回路2においては、MOSFET F1〜F6のドレイン・ソース間に形成された寄生ダイオードD1〜D6によってもフルブリッジ形の3相全波整流回路が構成されているため、MOSFET F1〜F6をオフにした状態でも、発電機の整流出力がバッテリに供給される。この場合、寄生ダイオードD1〜D6は、順方向電流が流れた際に生じる損失が大きいため、寄生ダイオードD1〜D6により構成された整流回路に発電機1の出力を整流する整流動作を行わせた場合には、整流動作に伴って生じる電力損失が大きくなり、バッテリ3の充電を効率よく行うことができない。
【0032】
そこで本実施形態では、発電機1の出力を整流する過程で寄生ダイオードD1〜D6のそれぞれに順方向電圧が印加される期間、それぞれの寄生ダイオードが形成されているMOSFET F1〜F6をオン状態にして、MOSFET F1〜F6のドレイン・ソース間を通して電流を流しながら整流動作を行わせることにより、整流回路2で生じる電力損失の低減を図る。
【0033】
図1において、4はバッテリ3の両端の電圧(バッテリ電圧)を検出するバッテリ電圧検出回路、5は整流回路2の3相の入力端子2u〜2wの電位の極性を検出する入力電位極性検出回路、6はバッテリ電圧検出回路4の検出出力及び入力電位極性検出回路5の検出出力に応じて整流回路のMOSFET F1〜F6を制御するFET制御部である。
図1に示した例では、整流回路2と、バッテリ電圧検出回路4と、入力電位極性検出回路5と、FET制御部6とによりバッテリ充電装置7が構成されている。バッテリ3の両端には、スイッチ8を通して負荷9が接続されている。
【0034】
本実施形態では、エンジンにより駆動される機器にバッテリ3が搭載されているものとし、バッテリ3が駆動する負荷の中には、エンジンを動作させるために必要不可欠な電装品が含まれるものとする。エンジンを動作させるために必要不可欠な電装品とは、例えば、エンジンに燃料を供給するインジェクタ(燃料噴射弁)、燃料タンク内の燃料をインジェクタに供給する燃料ポンプ、エンジンを点火する点火装置、インジェクタや点火装置を制御するECU(Electrical Control Unit)等である。エンジンのスロットルバルブを電子的に制御する場合には、これらに加えて更にスロットルバルブを駆動するアクチュエータが設けられる。
【0035】
<バッテリ電圧検出回路>
バッテリ電圧検出回路4は、バッテリ電圧の情報を含む電気信号を発生する回路で、例えば、バッテリ3の両端に並列に接続されて、バッテリ電圧に比例した電圧を出力する抵抗分圧回路により構成される。バッテリ電圧検出回路4の出力はFET制御部6を構成するマイクロプロセッサのポートAo に入力されている。FET制御部6を構成するマイクロプロセッサは、エンジンの電装品を制御するECU内に設けられているものでもよく、バッテリ充電装置専用に設けられたものでもよい。
【0036】
<入力電位極性検出回路>
入力電位極性検出回路5は、発電機1の出力を整流する動作を整流回路2に行わせる際に、各時刻において整流回路2の何れのMOSFETをオン状態とし、何れのMOSFETをオフ状態とすべきかを決定するための情報を得るために設けられている。図示の入力電位極性検出回路5は、整流回路の入力端子2u〜2wにそれぞれ対応して設けられて、バッテリの負極の電位(アース電位)に対する入力端子2u〜2wの電位の極性が正極性のときと負極性のときとでオンオフの状態を異にする極性検出スイッチSu〜Swを備えていて、極性検出スイッチSu〜Swの状態により整流回路の入力端子の電位が正極性であるか負極性であるかを検出するように構成されている。
【0037】
図示の例で用いられている各極性検出スイッチは、エミッタが接地されたNPNトランジスタTrと、トランジスタTrのコレクタと図示しない定電圧直流電源の出力端子Bとの間を接続する抵抗器r1 と、トランジスタTrのベースに一端が接続された抵抗r2 と、抵抗r2 の他端にカソードが接続されたダイオードDa と、トランジスタTrのベースエミッタ間に接続された抵抗r3 とからなり、極性検出スイッチSu〜SwのそれぞれのトランジスタTrのベースがダイオードDa を通して整流回路2のU相,V相及びW相の入力端子2u,2v及び2wに接続されている。
【0038】
極性検出スイッチSu〜Swは、整流回路2の入力端子2u〜2wの接地電位に対する電位の極性が正極性であるときにそれぞれのトランジスタTrにベース電流が与えられてオン状態になり、整流回路2の入力端子2u〜2wの接地電位に対する電位の極性が負極性であるとき又は整流回路2の入力端子2u〜2wの接地電位に対する電位がしきい値未満であるときにオフ状態になる。極性検出スイッチSu〜SwのそれぞれのトランジスタTrのコレクタがFET制御部6を構成するマイクロプロセッサのポートA1,A2及びA3に接続され、極性検出スイッチSu〜SwからそれぞれポートA1〜A3にLレベル(ローレベルまたは零レベル)の状態又はHレベル(高レベル)の状態の何れかの状態をとる二値信号が与えられる。
【0039】
整流回路2の入力端子2u〜2wの電位の極性が正極性で極性検出スイッチSu〜Swがオン状態にあるときに、Lレベルの信号がFET制御部6を構成するマイクロプロセッサのポートA1,A2及びA3に入力され、整流回路2の入力端子2u〜2wの電位の極性が負極性で極性検出スイッチSu〜Swがオフ状態にあるときに、Hレベルの信号がFET制御部6を構成するマイクロプロセッサのポートA1〜A3に入力される。ここでは、Lレベルの信号が二進数の「0」に対応し、Hレベルの信号が二進数の「1」に対応するものとする。
【0040】
<FET制御部>
図2に示されているように、本実施形態で用いるFET制御部6には、サンプリングタイミング発生手段601と、充電要否判定手段602と、オンオフ状態決定手段603と、充電時FET制御手段604と、短絡制御手段605と、FETオフ手段606と、FET駆動回路607とが設けられている。
【0041】
サンプリングタイミング発生手段601は、一定の周期でサンプリングタイミングを生じさせる手段である。サンプリングタイミング発生手段601は、マイクロプロセッサ内で発生するクロックパルスに基づいて、各サンプリングタイミングを決定する処理を行う手段により構成されていてもよく、所定のデータをサンプリングすることを指示するサンプリングパルスを一定のサンプル周期で発生する発振器からなっていてもよい。
【0042】
充電要否判定手段602は、バッテリ3の充電の要否を判定する手段で、バッテリ3を充電する必要があるか、バッテリ3の充電を休止する必要があるかを、バッテリ電圧検出回路4が検出している電圧に基づいて判定するように構成される。充電要否判定手段602は、例えば、バッテリ電圧検出回路4により検出されているバッテリ電圧が規定電圧以下のときにバッテリ3の充電が必要であると判定し、バッテリ電圧検出回路4により検出されているバッテリ電圧が規定電圧を超えているときにバッテリ3の充電を休止する必要があると判定するように構成することができる。
【0043】
本実施形態で用いる充電要否判定手段602は、サンプリングタイミング発生手段601が生じさせた各サンプリングタイミングでのみバッテリ電圧検出回路4が検出している電圧をサンプリングして、サンプリングした電圧が規定電圧以下であるときにバッテリの充電が必要であると判定し、サンプリングした電圧が規定電圧を超えているときにバッテリの充電を休止する必要があると判定するように構成されている。
【0044】
オンオフ状態決定手段603は、発電機1の出力を整流してバッテリ3に供給する際に整流回路2で生じる電力損失を最小にするために、各時刻において整流回路2の各MOSFETがとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを、入力電位極性検出回路5が検出している入力端子2u〜2wの電位の極性に基づいて決定するオンオフ状態決定処理を行う手段である。
【0045】
本実施形態で用いるオンオフ状態決定手段603は、入力電位極性検出回路5により検出されている整流回路2の各入力端子の電位の極性が各入力端子に接続されている上側アームのMOSFETの寄生ダイオードに順方向電圧を印加する極性(正極性)であるときに各入力端子に接続されている上側アームのMOSFET及び下側アームのMOSFETがそれぞれとるべき状態をオン状態及びオフ状態と決定し、入力電位極性検出回路5により検出されている整流回路2の各入力端子の電位の極性が各入力端子に接続されている上側アームのMOSFETの寄生ダイオードに逆方向電圧を印加する極性(負極性)であるときに各入力端子に接続されている上側アームのMOSFET及び下側アームのMOSFETがそれぞれとるべき状態をオフ状態及びオン状態と決定するように構成されている。
【0046】
更に詳細に説明すると、本実施形態で用いるオンオフ状態決定手段603は、整流回路のU相の入力端子2uの電位が正極性であるときに、入力端子2uに接続されている上下のアームを構成しているMOSFETのうち、上アームを構成しているMOSFET F1がとるべき状態及び下アームを構成しているMOSFET F4がとるべき状態をそれぞれオン状態及びオフ状態と決定し、整流回路のU相の入力端子2uの電位が負極性であるときには、入力端子2uに接続されている上下のアームを構成しているMOSFETのうち、上アームを構成しているMOSFET F1がとるべき状態及び下アームを構成しているMOSFET F4がとるべき状態をそれぞれオフ状態及びオン状態と決定する。
【0047】
本実施形態で用いるオンオフ状態決定手段603はまた、整流回路のV相の入力端子2vの電位が正極性であるときに、入力端子2vに接続されている上下のアームを構成しているMOSFETのうち、上アームを構成しているMOSFET F2がとるべき状態及び下アームを構成しているMOSFET F5がとるべき状態をそれぞれオン状態及びオフ状態と決定し、整流回路のV相の入力端子2vの電位が負極性であるときには、入力端子2vに接続されている上下のアームを構成しているMOSFETのうち、上アームを構成しているMOSFET F2がとるべき状態及び下アームを構成しているMOSFETF5がとるべき状態をそれぞれオフ状態及びオン状態と決定する。
【0048】
本実施形態で用いるオンオフ状態決定手段603はまた、整流回路のW相の入力端子2wの電位が正極性であるときに、入力端子2wに接続されている上下のアームを構成しているMOSFETのうち、上アームを構成しているMOSFET F3がとるべき状態及び下アームを構成しているMOSFETF6がとるべき状態をそれぞれオン状態及びオフ状態と決定し、整流回路のW相の入力端子2wの電位が負極性であるときには、入力端子2wに接続されている上下のアームを構成しているMOSFETのうち、上アームを構成しているMOSFET F3がとるべき状態及び下アームを構成しているMOSFET F6がとるべき状態をそれぞれオフ状態及びオン状態と決定する。
【0049】
FET制御部6を構成するマイクロプロセッサのポートA1,A2及びA3に入力される2値信号(0又は1)と整流回路2を構成しているMOSFETの状態(ON状態又はOFF状態)との関係を示したテーブルを
図11に示した。このテーブルは、マイクロプロセッサのROMに記憶させておく。
【0050】
オンオフ状態決定手段603は、入力電位極性検出回路5からポートA1,A2及びA3に入力されている二値信号を、サンプリングタイミング発生手段601が生じさせる各サンプリングタイミングで読み込み、ポートA1,A2及びA3に入力されている二値信号を読み込む毎に、
図11に示したテーブルを参照することにより、整流回路2を構成しているMOSFET F1〜F6の何れをオン状態にし、何れをオフ状態にするかを決定する。
【0051】
マイクロプロセッサは、充電要否判定手段602による判定の結果に応じて、充電時FET制御手段604又は短絡制御手段605の何れかに制御動作を行わせる。充電時FET制御手段604は、充電要否判定手段602によりバッテリ3を充電する必要があると判定されているときに整流回2のMOSFET F1〜F6のそれぞれの状態をオンオフ状態決定手段603が決定した状態に一致させるように制御する充電時FET制御を行う手段である。また短絡制御手段605は、充電要否判定手段602によりバッテリ3の充電を休止する必要があると判定されているときに整流回路2のすべての上アームを構成しているMOSFET F1〜F3を同時にオン状態にするか又はすべての下アームを構成しているMOSFET F4〜F6を同時にオン状態にして発電機1の出力端子間を短絡する短絡制御を行う手段である。
【0052】
本実施形態で用いる短絡制御手段605は、充電要否判定手段602によりバッテリ3の充電を休止する必要があると判定されているときに整流回路2のすべての下アームを構成しているMOSFET F4〜F6を同時にオン状態にすることにより発電機1の出力端子間を短絡する短絡制御を行うように構成されている。
【0053】
従来のバッテリ充電装置においては、短絡制御が行われているときに、発電機1の出力端子1u−1v間、1v−1w間及び1w−1u間が短絡されていて、入力電位極性検出回路5が検出する電位が0に保たれていたため、発電機の出力を整流してバッテリに供給するために整流回路のMOSFET F1〜F6の何れをオン状態とし、何れをオフ状態とすべきかを決定するために必要な情報を得ることができなかった。短絡制御を行っている間に充電時FET制御を行う際に整流回路のMOSFET F1〜F6の何れをオン状態とし、何れをオフ状態とすべきかを決定するための情報が得られないと、短絡制御を終了して充電時FET制御を再開する際に直ちにMOSFET F1〜F6のそれぞれがとるべきオンオフの状態を決定することができないため、充電時FET制御の再開が遅れ、その間MOSFETの寄生ダイオードにより構成される整流回路を通して電流が流れて大きな損失が生じるという問題が生じる。
【0054】
このような問題が生じるのを防ぐため、本実施形態では、少なくとも短絡制御を行う際に整流回路2のすべてのMOSFET F1〜F6への駆動信号の供給を停止させて、これらのMOSFETがオフ状態になるFETオフ期間を設定された周期で生じさせるFETオフ手段606を設けている。FETオフ手段606は、短絡制御時にのみFETオフ期間を生じさせるように構成されていてもよいが、本実施形態では、充電時FET制御を行う際にも、整流回路2のすべてのMOSFET F1〜F6がオフ状態になるFETオフ期間を設定された周期で生じさせるようにFETオフ手段606が構成されている。
【0055】
FETオフ手段606は、サンプリングタイミング発生手段が発生するサンプリングタイミングとは別個のタイミングでFETオフ期間を生じさせるように構成されていてもよいが、本実施形態では、制御を簡単にするため、充電時FET制御を行う際も、短絡制御を行う際も、サンプリングタイミング発生手段601が生じさせた各サンプリングタイミングで整流回路を構成しているすべてのMOSFET F1〜F6をオフ状態にするFETオフ期間を生じさせるようにFETオフ手段606が構成されている。
【0056】
FETオフ手段606が生じさせるFETオフ期間は、常に一定の長さを示す期間であってもよく、一定の周期で到来するタイミングで開始し、オンオフ状態決定手段が整流回路のMOSFET F1〜F6のオンオフの状態を決定するために必要な情報を取得した時に終了する期間、又は一定の周期で到来するタイミングで開始し、オンオフ状態決定手段が整流回路のMOSFET F1〜F6のオンオフの状態を決定するためのオンオフ状態決定処理を完了した時点で終了する期間であってもよい。
【0057】
少なくとも短絡制御を行う際に整流回路2のすべてのMOSFET F1〜F6がオフ状態になるFETオフ期間Δtを設定された周期で生じさせるようにしておくと、短絡制御が行われている状態でも、各FETオフ期間の間に整流回路2の入力端子の電位の極性を検出して、発電機の出力を整流してバッテリに供給する際に整流回路の各MOSFETがとるべき状態を決定するオンオフ状態決定処理を行うことができるため、短絡制御を終了した後、速やかに充電時FET制御を再開させることができる。
【0058】
FET駆動回路607は、整流回路2を構成しているMOSFET F〜F6のゲートに駆動信号を与える回路で、充電時FET制御手段603、短絡制御手段605及びFETオフ手段606から与えられる指令に応じて、整流回路2を構成しているMOSFETF1〜F6を所定のタイミングでオンオフさせるように各MOSFETのゲートに駆動信号を供給する。
【0059】
図2に示されたFET制御部6の構成要素のうち、充電要否判定手段602と、オンオフ状態決定手段603と、充電時FET制御手段604と、短絡制御手段605と、FETオフ手段606とは、マイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより構成される。サンプリングタイミング発生手段601は、マイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより構成してもよく、パルス発振器により構成してもよい。
【0060】
<動作説明>
本実施形態で用いる磁石式交流発電機1は、
図6に示したように、U,V,W3相の交流電圧Vu ,Vv ,Vwを出力する。バッテリ充電装置7は、バッテリ電圧が規定電圧以下で、充電要否判定手段602がバッテリ3を充電する必要があると判定しているときに、充電時FET制御を行って、発電機1の整流出力をバッテリ3に供給する。またバッテリ電圧が規定電圧を超えていて、バッテリ3の過充電を防止するために、バッテリ3の充電を休止する必要があると充電要否判定手段602が判定しているときに、MOSFET F4〜F6を同時にオン状態にすることにより発電機の出力端子間を短絡する短絡制御を行って発電機1からバッテリ3への充電電流の供給を停止させる。以下これらの制御について説明する。
【0061】
<充電時FET制御>
図7を参照すると、充電時FET制御を行う際の各部の電圧波形が示されており、
図8を参照すると、短絡制御を行う際の各部の電圧波形が示されている。
図7及び
図8において、(A)は、
図6に示された3相交流電圧の時刻t1とt2との間のZ部の波形を拡大して示しており、(B)は、サンプリングタイミング生成手段601が一定の周期でサンプリングタイミングを生じさせるために出力するサンプリングパルスPs を示している。また(C)ないし(E)はそれぞれ入力電位極性検出回路5によ検出された整流回路2のU相ないしW相の入力端子2uないし2wの電位の極性を示し、(F)ないし(K)はそれぞれ整流回路2を構成しているMOSFET F1〜F6のオンオフの状態を示している。
【0062】
マイクロプロセッサは、サンプリングパルスPs が発生する毎にバッテリ電圧検出回路4が検出しているバッテリ電圧を読み込んで、読み込んだバッテリ電圧が規定電圧以下であるか規定電圧を超えているかを判定する。この判定により、バッテリ電圧が規定電圧以下であると判定されたときにバッテリの充電を行う必要があると判定し、バッテリ電圧が規定電圧を超えていると判定されたときに、過充電を防止するためにバッテリの充電を休止する必要があると判定する。
【0063】
発電機1の出力電圧が
図7(A)の波形を示す区間では、発電機1のU相の出力電圧が正の半波にある間同図(C)に示すように整流回路2のU相の入力端子2uの電位が正極性を示し、発電機1のU相の出力電圧が負の半波にある間整流回路2のU相の入力端子2uの電位が負極性を示す。また
図7(A)に示した区間においては、発電機1のV相の出力電圧が正の半波にあるため、
図7(D)に示すように整流回路2のV相の入力端子2vの電位が正極性を示し、発電機1のW相の出力電圧が負の半波にあるため、
図7(E)に示すように整流回路のW相の入力端子2wの電位が負極性を示す。
【0064】
マイクロプロセッサが構成するオンオフ状態決定手段603は、ポートA1〜A3に入力されている入力電位極性検出回路5の検出出力を各サンプリングタイミングで読み込んで、
図11のテーブルを参照することにより、整流回路2の各入力端子に接続されている上下のアームのMOSFETのいずれをオン状態にし、何れをオフ状態にすべきかを決定する。充電時FET制御手段604は、整流回路2の各入力端子に接続されている上下のアームのMOSFETのオンオフの状態をオンオフ状態決定手段603により決定された状態に一致させるように整流回路の所定のMOSFETに駆動信号を与える。
【0065】
また本実施形態で用いるFETオフ手段606は、サンプリングタイミング発生手段601が各サンプリングタイミングを生じさせる毎に、各サンプリングパルスのパルス幅に相当する時間をFETオフ期間Δtとして、各FETオフ期間Δtの間整流回路のすべてのMOSFETをオフ状態にする。
【0066】
図7に示した区間でバッテリの充電を行う際には、整流回路のU相の入力端子2uの電位が正極性を示している間、
図7(F)に示すように入力端子2uに接続されている上アームのMOSFET F1がオン状態にされ、
図7(I)に示すように、入力端子2uに接続されている下アームのMOSFET F4がオフ状態にされる。またU相の入力端子の電位が負極性を示している間入力端子2uに接続されている上アームのMOSFET F1がオフ状態にされ、入力端子2uに接続されている下アームのMOSFET F4がオン状態にされる。
【0067】
図7に示した区間でバッテリの充電を行う際にはまた、同図(D)に示すように整流回路のV相の入力端子2vの電位が正極性を示しているため、同図(G)に示すように整流回路の入力端子2vに接続された上アームのMOSFET F2がオン状態にされ、同図(J)に示すように、入力端子2vに接続された下アームのMOSFET F5がオフ状態にされる。また
図7(E)に示すように、整流回路のW相の入力端子の電位が負極性であるため、同図(H)に示すように、入力端子2wに接続されている上アームのMOSFET F3がオフ状態にされ、同図(K)に示したように、入力端子2wに接続されている下アームのMOSFET F6がオン状態にされる。
【0068】
本実施形態では、充電時FET制御が行われる際にも、サンプリングタイミング発生手段601が
図7(B)に示したサンプリングパルスを発生してサンプリングタイミングを生じさせる毎にFETオフ手段606がFETオフ期間Δtの間整流回路のすべてのMOSFET F1〜F6への駆動信号の供給を停止してすべてのMOSFETをオフ状態にする。従って、充電時FET制御が行われる際にオンオフ状態決定手段603による決定に基づいてオン状態にされたMOSFETは、各サンプリングタイミングが到来する毎に一定のFETオフ期間Δtの間オフ状態にされる。
【0069】
充電時FET制御が行われる際には、
図3に矢印で示したように、整流回路2の各MOSFETに電流iが流れ,バッテリ3に充電電流Icが供給される。
【0070】
本実施形態のように、バッテリ電圧が規定電圧以下であるときにバッテリの充電が必要であると判定し、バッテリ電圧が規定電圧を超えているときにバッテリの充電を休止する必要があると判定するように充電要否判定手段を構成する場合、バッテリ電圧を連続的に検出して、バッテリ電圧の変動に追従して充電の要否を判定すると、バッテリの負荷が高い頻度で変動してバッテリ電圧が頻繁に変動した場合に、充電時FET制御と短絡制御とが非常に短い周期で切り換えられて、整流回路2が発振状態になり、整流回路を構成しているMOSFETがスイッチング損失により過熱して破壊するおそれがある。このような問題が生じるのを防ぐためには、バッテリ電圧が第1の規定電圧を超えたときにバッテリの充電を休止する必要があると判定し、バッテリ電圧が第1の規定電圧よりも小さい値に設定された第2の規定電圧以下になったときにバッテリの充電を行う必要があると判定するように充電要否判定手段を構成してバッテリ充電装置の動作にヒステリシス特性を持たせる等の手段を講じる必要がある。
【0071】
これに対し、本実施形態のように、一定の周期でサンプリングタイミングを生じさせて、各サンプリングタイミングでのみバッテリ電圧をサンプリングしてバッテリの充電の要否を判定するようにすると、各サンプリングタイミングから次のサンプリングタイミングまでの間、制御が充電時FET制御又は短絡制御のいずれかに固定されるため、バッテリ電圧が高頻度で変動した場合に、バッテリ電圧の変動に合わせて短絡制御と充電時FET制御とが短い周期で切り換えられる状態が生じるのを防ぐことができ、整流回路を構成しているMOSFETが頻繁にオンオフさせられて、スイッチング損失により過熱するのを防ぐことができる。
【0072】
本実施形態のように、一定の周期でサンプリングタイミングを生じさせて、各サンプリングタイミングでのみバッテリ電圧を検出してバッテリの充電の要否を判定するように充電要否判定手段を構成する場合、サンプル周期が長すぎるとバッテリ電圧の変動を適確に検出することができなくなり、バッテリの充電を適確に制御することができなくなる。また本実施形態のように一定の周期(本実施形態ではサンプル周期)でFETオフ期間を生じさせる場合に、FETオフ期間を生じさせる周期を短くし過ぎると、FETオフ期間が頻繁に生じるため短絡制御を適確に行うことができなくなる。サンプリングタイミング発生手段601がサンプリングタイミングを生じさせる周期は、実験結果に基づいて、バッテリの充電制御を適確に行うことができ、かつ短絡制御に支障を来すことがない長さに設定する。エンジンを動作させるために必要な電装品を駆動するバッテリを充電する場合、上記サンプル周期は、例えば125μsec程度に設定するのが適当であることが実験により確認されている。
【0073】
FETオフ期間は、一定でもよく、一定の周期で開始され、常に一定の長さを示す期間であってもよく、一定の周期で到来するタイミングで開始し、オンオフ状態決定手段が整流回路のMOSFET F1〜F6のオンオフの状態を決定するために必要な情報を取得した時に終了する期間、又は一定の周期で到来するタイミングで開始し、オンオフ状態決定手段が整流回路のMOSFET F1〜F6のオンオフの状態を決定するためのオンオフ状態決定処理を完了した時点で終了す期間であってもよいが、
図7及び
図8に示した例では、サンプリングパルスPsのパルス幅に相当する一定の期間ΔtをFETオフ期間としている。
【0074】
<短絡制御>
充電要否判定手段602が、バッテリの充電を休止する必要があると判定すると、短絡制御手段605が、整流回路2のすべての上アームを構成しているMOSFET F1〜F3を同時にオン状態にするか、又はすべての下アームを構成しているMOSFET F4〜F6を同時にオン状態にして、発電機の出力端子1u,1v間,1v,1w間及び1w,1u間を短絡する短絡制御を行う。
【0075】
本実施形態では、
図8(F)ないし(H)に示すように整流回路2のすべての上アームを構成しているMOSFET F1〜F3をオフ状態にし、すべての下アームを構成しているMOSFET F4〜F6を同時にオン状態にすることにより、発電機の出力端子間を短絡する短絡制御を行うようにしている。MOSFET F4〜F6を同時にオン状態にして短絡制御を行っている間、FETオフ手段606が各サンプリングタイミングで整流回路2のすべてのMOSFETを一定のFETオフ期間Δtの間オフ状態にするFETオフ制御を行うため、
図8(I)ないし(K)に見られるように、MOSFET F4〜F6は周期的にオフ状態にされる。オンオフ状態決定手段603は、短絡制御手段605が短絡制御を行っている間も、各FETオフ期間Δtの間にオンオフ状態決定処理を行って、充電時FET制御の再開に備える。
【0076】
短絡制御が行われているときには、
図4に示したように、整流回路2の下アームのMOSFET F4〜F6と3相の発電コイルとを通して短絡電流iが流れ、バッテリ3への充電電流の供給が停止される。短絡制御が行われている間にバッテリ電圧が規定電圧以下になると短絡制御手段605による短絡制御が停止し、充電時FET制御手段604による充電時FET制御が再開される。このようにして充電時FET制御と短絡制御とが繰り返されることにより、バッテリ電圧が規定電圧付近に保たれる。
【0077】
本実施形態では、
図8(I)ないし(K)に示すように、短絡制御が行われているときに周期的にFETオフ期間Δtを生じさせるため、各FETオフ期間Δtの間に入力電位極性検出回路5の検出出力を読み込んで、
図11のテーブルを参照することにより、整流回路2を構成するMOSFET F1〜F6に整流動作を行わせるために各時刻においてMOSFET F1〜F6のそれぞれがとるべきオンオフの状態が求められる。短絡制御が行われる過程で各FETオフ期間Δtの間に求められたMOSFET F1〜F6のオンオフの状態はRAMからなるオンオフ状態記憶手段(図示せず。)に記憶される。オンオフ状態記憶手段に記憶されるMOSFET F1〜F6のオンオフの状態は、各FETオフ期間において、新たなオンオフ状態が求められる毎に更新される。
【0078】
上記のように、短絡制御が行われている間も、整流回路2を構成するMOSFET F1〜F6に整流動作を行わせるために各時刻においてMOSFET F1〜F6のそれぞれがとるべきオンオフの状態を随時求めておくようにすると、短絡制御を終了した後速やかに充電時FET制御を再開させることができる。従って、短絡制御から充電時FET制御に移行する過程で、整流回路を構成しているMOSFETの寄生ダイオードで生じる発熱を少なくすることができ、短絡制御が繰り返し行われた場合に整流回路の温度が過度に上昇するのを防ぐことができる。
【0079】
上記のように、短絡制御を行う際に、整流回路2のすべてのMOSFET F1〜F6がオフ状態になるFETオフ期間Δtを周期的に生じさせると、各FETオフ期間Δtの間、発電機1から整流回路2を構成しているMOSFET F1〜F6の寄生ダイオードD1〜D6により構成される全波整流回路を通して電力が出力される。FETオフ期間Δtは、短絡制御が行われている間繰り返し生じるため、FETオフ期間Δtの間に整流回路2から出力される電力によりバッテリ3が充電されると、バッテリが過充電状態になるおそれがある。
【0080】
従って本発明を実施するに当たっては、短絡制御が行われている状態で発電機1から整流回路2を構成しているMOSFET F1〜F6の寄生ダイオードD1〜D6からなる全波整流回路を通して単位時間毎に出力される電力量[Ws]を、単位時間毎にバッテリから負荷に供給する必要がある電力量[Ws]の最小値以下に抑えるべく、FETオフ期間Δtの長さを設定しておくのが好ましい。
【0081】
短絡制御が行われている間に、発電機1から寄生ダイオードD1〜D6を通して単位時間毎に出力される電力量[Ws]を、単位時間毎にバッテリ3から負荷9に供給する必要がある電力量[Ws]の最小値以下に抑えるようにFETオフ期間Δtを設定しておくと、FETオフ期間Δtの間に発電機1から寄生ダイオードD1〜D6により構成される整流回路を通して出力される電力はすべてバッテリ3の負荷9に供給され、整流回路2からバッテリ3に電力が供給されることがないため、バッテリが過充電状態にされるおそれを無くすことができる。
【0082】
但し、FETオフ期間Δtが短すぎると、整流回路の入力端子の電位の極性を適確に検出することができなくなって、MOSFET F1〜F6が各時刻にとるべきオンオフの状態を適確に決定することができなくなるため、FETオフ期間Δtを一定とする場合、その長さは短すぎないように設定する必要がある。
【0083】
バッテリ3から負荷9に供給する必要がある電力量の最小値は、例えばバッテリ3が搭載された機器を動作させるために必要不可欠な負荷が消費する電力量の最小値である。
【0084】
バッテリ3が搭載された機器が、エンジン発電機やエンジンにより駆動される乗り物のようにエンジンにより駆動される機器である場合、バッテリ3から負荷9に供給する必要がある電力量の最小値は、例えば、エンジンのアイドリング時にインジェクタ、燃料ポンプ、点火装置等のエンジンを動作させるために必要な電装品を駆動するために必要な電力量である。
【0085】
エンジを動作させるために必要な電装品を負荷とするバッテリ3を充電する場合、FETオフ期間Δtの長さは、例えば10μsec程度に設定することができる。
【0086】
上記のように、充電時FET制御を行う際にも、短絡制御を行う際にも一定の周期でFETオフ期間を生じさせる場合に、充電要否判定手段602、オンオフ状態決定手段603、充電時FET制御手段604,短絡制御手段605及びFETオフ手段606を構成するために微小時間毎にマイクロプロセッサに繰り返し実行させる処理のアルゴリズムの一例を
図9に示した。なお
図9に示した処理では、各FETオフ期間が、各サンプリングタイミングで開始され、整流回路のMOSFET F1〜F6のオンオフの状態を決定するためのオンオフ状態決定処理を完了した時点で終了する期間であるとしている。
【0087】
図9に示した処理が開始されると、先ずステップS101でこの処理の今回の実施タイミングが整流回路の入力端子の電位の極性を検出するタイミング(サンプリングタイミング)であるか否かを判定する。その結果、今回の実施タイミングが整流回路の入力端子の電位の極性を検出するタイミングではないと判定された場合には以後何もしないでこの処理を終了する。ステップS101で今回の実施タイミングが整流回路の入力端子の電位の極性を検出するタイミングであると判定されたときにはステップS102でFET駆動回路607にFETオフ指令を与えて、すべてのMOSFET F1〜F6への駆動信号の供給を停止させる。ステップS102によりFETオフ手段606が構成される。
【0088】
ステップS102でMOSFET F1〜F6への駆動信号の供給を停止させた後ステップS103に進んでポートA1〜A3に与えられている二値信号の値に応じて、
図11のテーブルを検索することによりMOSFET F1〜F6がとるべきオンオフの状態を決定する。このステップによりオンオフ状態決定手段603が構成される。
【0089】
次いでステップS104に進んでサンプリングされているバッテリ電圧が規定電圧を超えているか否かを判定する。その結果、バッテリ電圧が規定電圧を超えていないと判定されたときにはステップS105に進んで、MOSFET F1〜F6の状態をステップS103で決定された状態に一致させるように、FET駆動回路607から整流回路の所定のMOSFETに駆動信号を与えることにより充電時FET制御を行わせる。このステップS105により充電時FET制御手段が構成される。
【0090】
ステップS104でバッテリ電圧が規定電圧を超えていると判定されたときには、ステップS106に進んで、FET駆動回路607からMOSFET F4〜F6に同時に駆動信号を与えてこれらのMOSFET F4〜F6を同時にオン状態にすることにより短絡制御を行う。このステップS160により短絡制御制御手段605が構成される。
【0091】
上記の説明では、整流回路2のすべての上アームのMOSFET F1〜F3をオフ状態にし、すべての下アームのMOSFET F4〜F6を同時にオン状態にすることにより短絡制御を行うとしたが、整流回路2のすべての上アームのMOSFET F1〜F3を同時のオン状態にすることにより短絡制御を行うようにしても良い。
【0092】
図9に示したアルゴリズムによる場合、FETオフ期間は、各サンプリングタイミングで開始され、オンオフ状態決定処理が完了した時点で終了させられる。
【0093】
<他の実施形態>
上記の実施形態では、充電時FET制御を行う際にも、短絡制御を行う際にも一定の周期でFETオフ期間を生じさせるようにしたが、本発明の他の実施形態では、短絡制御時にのみFETオフ期間の生じさせる。このように構成する場合に、充電要否判定手段602、オンオフ状態決定手段603、充電時FET制御手段604、短絡制御手段605及びFETオフ手段606を構成するために微小時間毎にマイクロプロセッサに繰り返し実行させる処理のアルゴリズムの一例を
図10に示した。
【0094】
図10に示した処理が開始されると、先ずステップS201でこの処理の今回の実施タイミングが整流回路の入力端子の電位の極性を検出するタイミングであるか否かを判定する。その結果、今回のタイミングが整流回路の入力端子の電位の極性を検出するタイミングではないと判定された場合には以後何もしないでこの処理を終了する。
【0095】
ステップS201で今回のタイミングが整流回路の入力端子の電位の極性を検出するタイミングであると判定されたときにはステップS202でサンプリングされたバッテリ電圧が規定電圧を超えているか否かを判定する。その結果、バッテリ電圧が規定電圧以下であると判定されたときにはステップS203に進んで、短絡制御フラグが1にセットされているか否かを判定する。短絡制御フラグは、短絡制御を開始する場合に1にセットされるフラグであり、バッテリ電圧が規定電圧を超えていると判定されたときにステップS211で1にセットされる。
【0096】
ステップS202でバッテリ電圧が規定電圧以下であると判定され、ステップS203で短絡制御フラグが1にセットされていないと判定されたとき(バッテリを充電する必要があるとき)には、ステップS205に進んでポートA1〜A3に与えられている二値信号の値に応じて、
図11のテーブルを検索することによりMOSFET F1〜F6がとるべきオンオフの状態を決定した後、ステップS206に進んでMOSFET F1〜F6の状態をステップS205で決定された状態に一致させるように、FET駆動回路607から整流回路の所定のMOSFETに駆動信号を与えることにより充電時FET制御を行わせる。次いでステップS207で短絡制御フラグをクリアしてこの処理を終了する。
【0097】
ステップS202でバッテリ電圧が規定電圧を超えていると判定されたときにはステップS208でFET駆動回路607にFETオフ指令を与えて、すべてのMOSFET F1〜F6への駆動信号の供給を停止させる。次いでステップS209でポートA1〜A3に与えられている二値信号の値に応じて、
図11のテーブルを検索することによりMOSFET F1〜F6がとるべきオンオフの状態を決定した後、ステップ210でFET駆動回路607からMOSFET F4〜F6に同時に駆動信号を与えてこれらのMOSFET F4〜F6を同時にオン状態にすることにより短絡制御を行う。次いでステップS211で短絡制御フラグを1にセットしてこの処理を終了する。ステップS202でバッテリ電圧が規定電圧を超えていると判定される状態が続いている間、ステップS208ないしS211が実行されて短絡制御が行われる。
【0098】
短絡制御を行っている状態でステップS202でバッテリ電圧が規定電圧以下であると判定されたときには、ステップS203で短絡制御フラグが1にセットされていると判定されるためステップS204でFET駆動回路607にFETオフ指令を与えて、すべてのMOSFET F1〜F6への駆動信号の供給を停止させた後、ステップS205に進んでポートA1〜A3に与えられている二値信号の値に応じて、MOSFET F1〜F6がとるべきオンオフの状態を決定する。次いでステップステップS206に進んでMOSFET F1〜F6の状態をステップS205で決定された状態に一致させるように、FET駆動回路607から整流回路の所定のMOSFETに駆動信号を与えることにより充電時FET制御を行わせた後ステップS207で短絡制御フラグを0にクリアする。
【0099】
短絡制御フラグがクリアされた状態で
図10の処理が実行された際にステップS202でバッテリ電圧が規定電圧以下であると判定される場合には、ステップS203で短絡フラグが1にセットされていないと判定されるため、ステップ204が実行されることなくステップS205ないしS207が実行されて充電時FET制御が行われる。従って、FETオフ制御は、短絡制御時にのみ実行され、充電時バッテリ制御を行う際には実行されない。
【0100】
図10に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS202により充電要否判定手段602が構成され、ステップS204及びS208によりFETオフ手段が構成される。またステップS205及びS209によりオンオフ状態決定手段603が構成され、ステップS206及びステップS210によりそれぞれ充電時FET制御手段604及び短絡制御手段605が構成される。
【0101】
図9又は
図10に示した処理によりFET制御部の各手段を構成する場合、FETオフ手段は、一定の周期でFETオフ期間を開始させ、オンオフ状態決定処理が完了した時点でFETオフ期間を終了させるように構成されるが、このようにFETオフ手段を構成しておくと、FETオフ期間が必要最小限の長さになるため、短絡制御時にバッテリが過充電状態にされるおそれをなくすことができる。
【0102】
図9及び
図10に示した処理は、短い時間間隔で繰り返し実行されるが、
図9及び
図10に示した処理を、サンプリングタイミング発生手段がサンプリングタイミングを生じさせる毎に実行される割込処理とすることもできる。この場合には、
図9に示されたステップS101及び
図10に示されたステップS201が省略される。
【0103】
図1に示した例では、磁石式交流発電機1の3相の発電コイルLu〜Lwがスター結線されているが、
図5に示したように3相の発電コイルLu〜LwがΔ結線された磁石式交流発電機を用いることができるのはもちろんである。
【0104】
上記の各実施形態では、磁石式交流発電機として3相交流電圧を発生するものを用いたが、単相交流電圧を発生する磁石式交流発電機を用いる場合にも本発明を適用できるのはもちろんである。
【0105】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された技術的範囲から逸脱することがない範囲で各部に種々の変形を加えることができるのはもちろんである。