(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)実施形態の概要
実施形態にかかる画像処理装置は、図または表を含む2次元ピクセル上で表現される画像データを扱うものであり、分割手段と、比較手段と、省略手段とを備える。分割手段は、画像データを縦方向または横方向に分割し、同じピクセル幅をもつ複数の帯画像データを求める。比較手段は、隣接した前記帯画像データのピクセル値を比較して同一性を判断する。省略手段は、比較手段によって隣接した2つ以上の帯画像データのピクセル値が同一であると判断された場合に、画像データにおいて同一である帯画像データを1つに省略した省略画像データを生成する。
【0013】
この実施形態では、2次元ピクセル上で表現された画像データから求めた帯画像データにおいて、隣接するものが同一と判断された場合に、1つに省略する処理が行われる。したがって、得られた省略画像データは、図または表がもつ情報の欠落を抑制するとともに、冗長性を低減させた小さなピクセル数をもつことになる。
【0014】
ここで、用語について説明する。2次元ピクセル上で表現される画像データとは、格子状に並んだピクセルの集合体をいう。例えばBMP形式のように各ピクセルのピクセル値をそのまま保有するようなデータは、2次元ピクセル上で表現される画像データである。また、GIF形式、JPEG形式、PNG形式のように圧縮がなされたデータであっても、画像表示にあたって、設定されたピクセル数をもつ2次元ピクセル上のデータに変換されるものは、2次元ピクセル上で表現される画像データであると言える。本画像処理装置では、2次元画像データに対して処理を行うため、画像データは少なくとも2次元の画像データが含まれている必要があるが、例えば、処理対象となる同一ファイル内にさらなる次元(3次元目の空間軸、時間軸など)のデータが含まれていてもよい。
【0015】
図とは、幾何的な図形、フローチャート(ワークフロー図などを含む)、タイムチャート、回路図、グラフ(例えば、棒グラフ、折れ線グラフ)などの図形的要素を含むものをいう。図の中には、図形的要素に加えて、文字または数字が記載されていてもよい。特に、図形的要素に、縦または横に延びる線分(直線)が含まれている場合には、実施形態にかかる画像処理装置の処理に適すことになる。また、表とは、縦に延びる罫線、または横に延びる罫線の一方または両方によって、規則的に仕切られる空間に、値(文字、数字など)が配列されたものをいう。例えば、見積書や請求書のように表を含む文書データは、表を含む画像データであると言うことができる。
【0016】
実施形態の一態様においては、分割手段、比較手段、及び省略手段による処理を、分割手段が求める帯画像データのピクセル幅を変更しながら複数回反復する反復手段を備える。ある反復の過程で、比較手段において、同一である帯画像データが無いと判断されたときは、省略手段による処理は行わず、次の反復の過程に移ることになる。反復は、設定された基準に達した後に終了する。
【0017】
実施形態の一態様においては、反復手段によるある反復の過程で、比較手段において隣接した全ての帯画像データが同一ではないと判断され、省略手段による省略画像データの生成が行われない場合には、反復手段による次の反復の過程では、分割手段が求める帯画像データのピクセル幅が狭められる。例えば、処理対象となる画像データの分割数を増やすことで、ピクセル幅が狭められる。まず、ピクセル幅が広い帯画像について比較することで、比較処理を効率化することが期待される。
【0018】
実施形態の一態様においては、反復手段によるある反復の過程で、省略手段による省略画像データの生成が行われた場合には、反復手段による次の反復の過程では、分割手段が求める帯画像データのピクセル幅が拡げられる。処理対象となる画像データが変わった場合に、改めて、ピクセル幅が広い帯画像から比較することで、比較処理を効率化することが期待される。
【0019】
実施形態の一態様においては、図または表には、破線、点線または一点鎖線が含まれ、省略画像データは、図または表に含まれた破線、点線または一点鎖線を、線種を把握可能な状態で含む。破線とは、実線の途中部分が周期的に切断されたように、複数の線分を並べて形成したものである。破線は、各線分において、線長方向のピクセル数が、線幅方向のピクセル数の2倍以上のものをいうものとする。点線とは、複数の点を離間して並べたことで線を形成したものである。点線は、各点において、線長方向のピクセル数が、線幅方向のピクセル数の2倍未満のものをいうものとする。
【0020】
一点鎖線とは、点、線分、点、線分というように、点と線分が周期的に並んだものである。一点鎖線においては、通常、点と線分は線長方向の長さが異なっていれば一点鎖線として認識される。したがって、各点では、線長方向のピクセル数が、線幅方向のピクセル数の2倍以上であってもよい。そこで、例えば、一点鎖線における点は、線長方向のピクセル数が、線幅方向のピクセル数の3倍以下であり、かつ、一点鎖線における線分は、線長方向のピクセル数が、点の線長方向のピクセル数の1.5倍以上であるものと定義することができる。
【0021】
線種を把握可能な状態とは、破線、点線、または一点鎖線であることをユーザが認識できる状態をいう。例えば、線の繰り返し周期数を減らした状態であれば、線種を把握することが可能である。また、例えば、破線中における実線長または隙間長を若干短くするなどした場合にも、線種を把握することが可能である。破線、点線、一点鎖線のように、なんらかのパターンが周期的に繰り返される線では、図又は表の情報の欠落を防止するためには、そのパターンの特徴を残しながら省略を進めることが求められる。このパターンの周期を把握しない状況で省略処理を進める上では、上述のようにピクセル幅を変更しながら、反復処理を繰り返すことが有効となる。
【0022】
実施形態の一態様においては、図または表には、nピクセルの周期をもつ破線、点線または一点鎖線が含まれ、分割手段は、画像データのピクセル幅が基準ピクセル幅以上である場合に画像データを分割し、基準ピクセル幅はnまたはnより大きい整数値に設定される。ただし、nは2以上の整数とする。
実施形態の一態様においては、図または表には、nピクセルの周期をもち、かつ、この周期内にmピクセルの小周期を内部構造としてもつ破線、点線または一点鎖線が含まれ、分割手段は、画像データのピクセル幅が基準ピクセル幅以上である場合に画像データを分割し、基準ピクセル幅は、nより小さく、かつ、mより大きい整数値に設定される。ただし、nは3以上の整数とし、mは1以上の整数とし、n>mとする。
【0023】
実施形態の一態様においては、
反復手段は、分割手段、比較手段、及び省略手段による処理を、分割手段が縦方向に分割を行う場合と横方向に分割を行う場合とを含むように複数回反復
する。
【0024】
実施形態の一態様においては、分割手段は、1ピクセル幅をもつ複数の帯画像データのみを求める。1ピクセル幅をもつ帯画像データのみを求め、隣接するもの同士を対比した場合には、実線は省略できる一方で、破線、点線、一点鎖線などの不連続な線はその構造が残ることになる。このため、実線等の省略を迅速に行うことができるとともに、不連続な線の情報を落とさない処理が可能となる。
【0025】
実施形態の一態様においては、図または表は、フローチャートである。実施形態の一態様においては、画像データは見積書または請求書についてのデータであり、図または表は見積書または請求書に含まれる表である。
【0026】
実施形態の一態様においては、画像処理装置と、生成された省略画像データを表示する表示手段と、を備え、表示手段は、省略画像データの近傍に、省略が行われていない画像データを表示するためのシンボルを表示する。
【0027】
実施形態の一態様においては、画像処理装置と、表示装置から画像データの送信要求を受け付ける受付手段と、表示装置の縦または横のピクセル数と、画像データの縦または横のピクセル数を比較するピクセル数比較手段と、表示装置のピクセル数の方が多いまたは同じである場合には、表示装置に画像データを送信し、表示装置のピクセル数の方が小さい場合には、表示装置に省略画像データを送信する送信手段と、を備える。
【0028】
(B)実施形態の詳細
以下に、図面を参照しながら、実施形態について説明する。説明においては、理解を容易にするため、具体的な態様について示すが、これらは実施形態を例示するものであり、他にも様々な実施形態をとることが可能である。
【0029】
(1)システムの構成
図1は、本実施形態にかかる画像表示システム10の概略的な機能構成を示す図である。画像表示システム10には、表示装置20と、画像処理装置30と、画像記憶装置50が含まれている。
【0030】
表示装置20は、表示手段の例であり、タッチパネルディスプレイ22、画像要求部24、表示ピクセル数保持部26を備える。タッチパネルディスプレイ22は、所定の表示ピクセル数をもつ画面に画像データを表示する機能と、ユーザのタッチ操作に基づいてユーザからの指示を受け付ける機能を備えた装置である。画像要求部24は、ユーザからの指示に基づいて、画像処理装置30に画像データの送信を要求する。要求にあたっては、画像データを特定する情報に加えて、表示ピクセル数保持部26が保持する表示ピクセル数の情報も送信される。表示ピクセル数保持部26は、タッチパネルディスプレイ22の表示ピクセル数を記憶している。表示ピクセル数は、タッチパネルディスプレイ22の解像度を示す情報である。
【0031】
表示装置20は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット、スマートフォンなどによって構成される装置である。表示装置20では、演算処理機能を有したコンピュータハードウエアを、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラムなどのソフトウエアによって制御することで上述の具体的な機能が実現されている。
【0032】
画像処理装置30は、表示装置20の画像要求部24からの画像データ送信要求を受け付けて、表示装置20の画像表示を制御する装置である。画像処理装置30には、送信受付部31と、ピクセル数比較部32と、省略画像生成部34と、送信部48が含まれる。
【0033】
送信受付部31は、受付手段の例であり、画像要求部24から、画像データの送信要求と、表示ピクセル数の情報を受け付ける。送信受付部31では、要求を受け付けた場合、ピクセル数比較部32においてピクセル数の比較処理を行わせる。
【0034】
ピクセル数比較部32は、ピクセル数比較手段の例であり、処理対象となる画像データのピクセル数と、タッチパネルディスプレイ22の表示ピクセル数の比較処理を行う。画像データのピクセル数は、画像記憶装置50に問い合わせることで取得される。また、タッチパネルディスプレイ22の表示ピクセル数としては、画像要求部24から送信された情報が用いられる。ピクセル数比較部32では、画像データのピクセル数と表示ピクセル数を、標準的には、(i)横方向(幅方向)のみについて比較する。しかし、設定によっては、(ii)縦方向(高さ方向)のみについて比較することも可能であるし、(iii)横方向及び縦方向の両方について比較することも可能である。そして、比較の結果、表示ピクセル数の方が多いまたは同じである場合には、画像データの省略処理を行うことなく、オリジナルの画像データを送信すればよいと判断する。また、画像データのピクセル数の方が多い場合には、省略画像生成部34による省略画像データの生成が必要であると判断する。
【0035】
一例として、表示ピクセル数が、横750ピクセル、縦1334ピクセルであり、画像データのピクセル数が、横1024ピクセル、縦768ピクセルである場合を考える。この場合、(i)の設定と(iii)の設定では、表示ピクセルよりも画像データのピクセル数の方が多く、この比較方向については画像データの全てを表示できないため、省略画像データの生成が必要であると判断される。他方(ii)の設定では、表示ピクセル数の方が多く、少なくとも縦方向については画像データの全てを表示可能であるとして、オリジナルの画像データの送信が行われる。
【0036】
省略画像生成部34は、省略画像データの生成処理を行う。省略画像生成部34には、分割部36、ピクセル値比較部38、省略部40、反復部42、シンボル付加部44が含まれる。
【0037】
分割部36は、分割手段の例であり、画像データをピクセル幅が等しい複数の帯画像データに分割する。分割は、横方向と縦方向のいずれにも行うことができる。すなわち横方向に分割することで縦に長い(縦方向には分割されていない)帯画像データを生成することも可能であるし、縦方向に分割することで横に長い帯画像データを生成することも可能である。分割部36では、少なくとも、画像データのピクセル数が、タッチパネルディスプレイ22の表示ピクセルよりも多い方向について分割を行うが、表示ピクセルと同じか少ない方向についても分割を行うようにしてもよい。
【0038】
なお、分割にあたっては、設定されたピクセル幅に満たない残余の帯画像データが生成されることがある。このため、分割の始点をどこにするかによって、帯画像データの範囲が変わるため、省略の処理結果も変わる可能性がある。そこで、分割部36では、分割の始点を様々に変えることができる。例えば、横方向に分割して縦に長い帯画像データを得る場合に、左端から分割を開始することが可能であるし、右端から分割を開始することも可能である。さらには、左端と右端のそれぞれに若干の残余の帯画像データを残して、中央側を分割することも可能である。
【0039】
ピクセル値比較部38は、比較手段の例であり、隣接する帯画像データにおけるピクセル値の比較を行う。比較では、ある帯画像データと、それに隣接する帯画像データを平行移動して重ねた場合に、原則として、重なり合う各ピクセルのピクセル値の値が全て一致するか否かを判定する。すなわち、ピクセル値比較部38は、隣接する帯画像データ同士が同一であり、重複した状態にあるか否かを判定する。ピクセル値比較部38では、この比較を、全ての隣接する帯画像データに対して行う。したがって、連続して隣り合う3つ以上の帯画像データのピクセル値が一致するか否かも検出することができる。なお、分割部36において生成された残余の帯画像データは、隣り合う帯画像データとはピクセル幅が異なっているため、一致しないものとして扱われる。
【0040】
省略部40は、省略手段の例であり、ピクセル値比較部38において隣接する帯画像データの値が一致した場合に、処理前の画像データから重複する同一の帯画像データを1つに省略した省略画像データを生成する。例えば、ピクセル値のパターンをアルファベット1文字で表すとして、P、Q、R、Sの4種類の帯画像データがPQQPRRRSという順序で並んだ画像データがあったとする。この場合、連続して並んだ2つのQの帯画像データを1つ省略し、連続して並んだ3つのRの帯画像データを2つ省略して、PQPRSという省略画像データを生成する。省略した帯画像データの空間は詰められるため、省略画像データに隙間は存在せず、全体としてピクセル数が減り、小さなピクセル数の画像データとなる。
【0041】
反復部42は、反復手段の例であり、分割部36、ピクセル値比較部38、省略部40における一連の処理を反復させる処理を行う。反復にあたっては、分割部36における分割の態様が変えられる。具体的には、(i)残余の帯画像データが生じた場合に、分割の始点を変更した上で、同じピクセル幅の帯画像データを生成する態様をとることができる。また、(ii)ピクセル幅を減らした帯画像データ、あるいは増やした帯画像データを生成する態様をとることができる。ピクセル幅を減らした場合には、隣接する帯画像データのピクセル値の一致可能性が高まる。さらに、(iii)分割の方向を縦から横へ、あるいは横から縦へ変更することもできる。この(i)〜(iii)の態様は、単独で行うことも可能であるし、組み合わせて行うことも可能である。
【0042】
シンボル付加部44は、反復の後に得られた最終的な省略画像データを表示するにあたって、その近傍(省略画像データの周囲、あるいは、省略画像データと重なる部分)に省略前のオリジナルの画像データを表示するためのシンボルを付加する。ここで、シンボルとは、周囲から認識可能に表示されるボタン、図形、文字などをいう。シンボルには、例えば、オリジナルの画像データのURLをリンクさせることで、そのシンボルをユーザがタッチした場合に、オリジナル画像データを表示できるようになる。URLのリンクは、例えば、XML(Extensible Markup Language)、HTML(HyperText Markup Language)などのマークアップ言語を用いて画像データとリンク情報を含むデータ構造を記述することにより設定可能である。表示装置20の側において、このデータ構造に対応した表示処理を行うよう設定しておけば、タッチパネルディスプレイ22に表示される際にシンボルも表示され、シンボルを操作することが可能となる。
【0043】
送信部48は、表示装置20に、画像データ送信要求に対応したオリジナルの画像データまたは省略画像データを送信する。シンボルを付加するような場合には、省略画像データに加えて、例えば、XML言語等で記述されたファイルと、オリジナルの画像データも送信されることになる。
【0044】
なお、画像処理装置30は、例えば、PC、タブレット、スマートフォンなどを用いて構成される。実施形態では、画像処理装置30は、表示装置20とは物理的に異なる装置であり、ネットワークを介して1つまたは複数の表示装置20と通信可能に設定されたサーバであることを想定している。しかし、画像処理装置30は表示装置20と同一の装置(同じ筐体に格納された装置)であってもよい。画像処理装置30における各部の構成は、装置のコンピュータハードウエアをソフトウエア制御することで実現可能である。
【0045】
画像記憶装置50は、オリジナルの画像データ52を記憶している。画像記憶装置50は、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶装置を用いて形成された装置である。実施形態では、画像記憶装置50は、各種の文書データ、画像データ等を記憶したデータサーバであり、画像記憶装置50とは通信可能に接続された別の装置であることを想定している。しかし、画像記憶装置50は、画像処理装置30、さらには表示装置20と同一の装置であってもよい。
【0046】
(2)横方向に省略する処理の流れ
図2及び
図3は、画像表示システム10における処理の一例を示したフローチャートである。
図2は、画像データを横方向に分割して、省略を行う場合の処理について、全体の流れを示している。また、
図3は
図2における省略画像データの生成処理を詳述したものである。
【0047】
図2に示すように、画像表示システム10では、通常、ユーザが表示装置20のタッチパネルディスプレイ22を操作して、画像データの表示を指示し、表示装置20がその指示を受け付ける(S10)。表示装置20では、画像要求部24が、画像データの送信要求と、表示ピクセル数の情報を画像処理装置30に送信する(S12)。
【0048】
画像処理装置30では、送信受付部31によって送信要求が受け付けられた後、ピクセル数比較部32においてピクセル数の比較が行われる。具体的には、表示装置20の横方向の表示ピクセル数が、オリジナルの画像データの横方向のピクセル数よりも小さいか否かが判定される(S14)。小さい場合には、省略画像データの生成が行われる(S16)。この過程については、次に
図3を参照して詳細に説明する。生成された省略画像データは、送信部48を通じて表示装置20に送信され(S18)、表示装置20で表示される(S20)。他方、表示ピクセル数が、オリジナルの画像データのピクセル数と同じかそれよりも多い場合には、オリジナルの画像データが表示装置20に送信され(S22)、表示装置20で表示される(S20)。
【0049】
図3は、
図2の省略画像データの生成(S16)のステップについて詳しく説明するフローチャートである。ここでは、オリジナルの画像データを横方向に分割する(縦方向に長い帯画像データを得る)処理を行っている。
【0050】
省略画像データの生成では、まず、画像データの横方向の幅X(ピクセル)が取得される。幅Xは自然数である。そして、幅Xを分割数nで割った値A(ピクセル)が求められる。分割数nも自然数であり、図示した例では初期値はn=2に設定されている。このとき、幅Xが分割数nで割りきれるか否かが判定され(S34)、割り切れる場合には分割するピクセル幅AはA=X÷nとなる(S36)。
【0051】
続いて、Aが4以上であるか否かが判定され(S38)、4以上である場合には、画像データは、ピクセル幅をAとする(つまり、横方向のピクセル数がAである)帯画像データに分割される(S40)。他方、Aが4よりも小さい場合には、省略画像データの生成処理が終了する(S42)。以上の分割処理は、反復部42の反復制御の下で、分割部36によって行われる。
【0052】
次に、ピクセル値比較部38によって、隣接する帯画像データのピクセル値が同一であるか否かが判定される(S44)。ピクセル値が同一である場合には、省略部40によって、連続する同一の帯画像データを1つにする省略が行われる(S46)。すなわち、重複する帯画像データは、1つのみが残されて、他は削除され、間を詰める処理が行われる。そして、生成された省略画像データを対象に、改めて横方向の幅Xが取得され(S30)、n=2を初期値とする分割処理が行われる(S32)。他方、隣接する画像データのピクセル値が異なる場合には、反復部42において分割数nを1増分した上で、ステップS32からの処理が反復される。すなわち、ピクセル幅を小さくした帯画像データを生成して、同様の処理が繰り返される。
【0053】
ステップS34において、X÷nが割り切れない場合、帯画像データのピクセル幅Aは、X÷nの小数点以下を切り捨てた値に設定され、残余のピクセル数がBとして設定される(S48)。そして、Aが4以上であるか否かが判定される(S50)。Aが4以上である場合、画像データの左端を始点として、ピクセル幅Aの帯画像データを順次作成する(S52)。このとき、ピクセル幅がBである残余の帯画像データは、処理の便宜上、ピクセル幅がAである最後の帯画像データと統合している。他方、Aが4よりも小さい場合には、省略画像データの生成処理を終了する(S54)。
【0054】
生成された帯画像データに対しては、隣接するもの同士のピクセル値が同一か否かの判定を行う(S56)。そして、同一のものがある場合には、ステップS46の省略処理に移行する。なお、残余の帯画像データが統合されたピクセル幅が広い帯画像データについては、隣接する帯データとの比較は、残余の部分を除いて行われ、省略画像データの生成処理も、残余の部分を除いて行われる。
【0055】
ステップS56において、隣接する全ての帯画像データにおいてピクセル値が同一となるものが無い場合には、始点を変えた分割が行われる。具体的には、右端を始点として、ピクセル幅Aの帯画像データが順次生成され、残余の画像データは最後の帯画像データに含まれる。そして、隣接する帯画像データのピクセル値が同一である場合には、ステップS46に移行し、同一でない場合には、分割数nを1増分した上で、ステップS32に移行する。
【0056】
なお、以上の実施形態では、ステップS32における画像データの分割数nの初期値はn=2としたが、例えば、n=3、4または5とするなど、他の数値を初期値とすることも可能である。さらに、ステップS38、S50における省略画像データの生成処理の終了は、Aが4よりも小さくなった段階で行うものとした。しかし、この値は変更可能であり、例えば、Aが3または2よりも小さくなった段階で行うようにしてもよいし、5、6、7、または8よりも小さくなった段階で行うようにしてもよい。
【0057】
(3)横方向に省略する省略画像データの生成
ここで、
図4〜
図8を参照して、具体的な省略画像データの生成例について説明する。これらの図は、フローチャートの矢印部分についての画像データに、省略画像データの生成処理を行うものである。
図4は実線矢印、
図5は破線矢印、
図6は点線矢印、
図7は一点鎖線矢印、
図8は実線と一点鎖線の組み合わせからなる矢印が表示された画像データに対する処理の例である。各図における格子はピクセルを表しており、各図の(a)に示したオリジナルの(処理前の)画像データは、横方向に20ピクセル(X=20)、縦方向に7ピクセルの大きさを持っている。また、ピクセル値は2つの値のいずれかをとる(図中、白で表現された値と、黒で表現された値)ものとしている。
【0058】
図4(a)は、実線矢印が表示されたオリジナルの画像データである。実線矢印の直線部分は、1ピクセルの点が連続的に並ぶことで形成されており、言い換えれば1ピクセルの周期をもつように形成されている。
【0059】
この画像データに対しては、
図3のステップS32に従って、n=2の初期値を用いてX÷n=20÷2=10の演算が行われ、ステップS36に示すように分割のピクセル幅A=10が設定される。このピクセル幅Aは4以上であるため、
図4(b)に示したピクセル幅が10ピクセルの帯画像データが生成されている。しかし、
図4(b)に示した2つの帯画像データは、ピクセル値のパターンが一致していないため、省略画像データの生成は行われない。
【0060】
次の反復過程では、ステップS32においてn=3を用いてX÷n=20÷3=6、余り2の演算が行われ、ステップS48に示すようにA=6、B=2が設定される。そして、ステップS52に従って、左端を始点にピクセル幅A=6の帯画像データが生成され、最後の帯画像データは残余を含めたA+B=8ピクセルの幅をもつことになる。
図4(c)に示すように、この帯画像データのうち、一番左の帯画像データと、それに隣接する左から2番目の帯画像データは、ピクセル値が一致する(図では、一致したことを明示するために、白の値をもつピクセルに対し、薄いシェードをつけている。以下の図でも同様)。しかし、2番目の帯画像データに隣接する左から3番目の帯画像データにおける左側の6ピクセルの幅部分は、2番目の帯画像データとピクセル値が一致しない。この結果、
図4(d)に示すように、重複している左側2つの帯画像データのうち1つが省略された1回目の省略画像データが生成されている(S46)。
【0061】
続いて、再びステップS30から処理が行われる。処理対象となる1回目の省略画像データにおける横方向の幅Xは、X=14であり、また分割数nは初期値のn=2にリセットされる。これにより、
図4(e)に示すように、A=14÷2=7のピクセル幅をもつ帯画像データへの分割が行われている(S40)。この帯画像データのピクセル幅7は、
図4(c)に示した帯画像データのピクセル幅6に比べて広い。すなわち、反復にあたっては、対象領域を広く取り直した上で、比較が継続されている。しかし、
図4(e)に示した2つの帯画像データのピクセル値は相違しており、省略画像データは生成されない。そこで、
図4(f)に示すように左から3分割した帯画像データが生成されている。
図4(f)では、左端の帯画像データとそれに隣接する左から2つめの帯画像データのピクセル値が一致しており、このうちの1つの帯画像データを省略した
図4(g)に示す2回目の省略画像データが生成されている。
【0062】
2回目の省略画像データに対しては、再度n=2で分割が行われ、
図4(h)に示したように、ピクセル幅5の2つの帯画像データが生成されている。この帯画像データも、
図4(f)の帯画像データよりもピクセル幅が広くなっている。しかし、
図4(f)の2つの帯画像データは、ピクセル値が一致していない。このため、次はn=3で分割が行われることになる。しかし、このときのピクセル幅AはA=3となっており、ステップS50の条件により、省略画像データの生成処理が終了する(S54)。すなわち、
図4(i)に示した分割は行われず、
図4(g)に示した2回目の省略画像データが、
図4(j)に示す最終的な省略画像データとなる。
【0063】
図4(g)に示した最終的な省略画像データの横方向のピクセル数は10であり、
図4(a)に示したオリジナルの画像データのピクセル数20から半減している。このため、オリジナルの画像データのピクセル数よりも表示ピクセル数が小さな表示装置20のタッチパネルディスプレイ22にも、この省略画像データの全てを一度に表示できる可能性が高くなっている。
【0064】
また、
図4(g)の省略画像データでは、
図4(a)のオリジナルの画像データで表現されていた実線矢印の長さが短くなっているが、依然として実線矢印が明確に表現されている。したがって、省略画像データを表示した場合にも、フローチャートがもつ意味情報は失われず、正しくユーザに伝達することが可能となっている。
【0065】
なお、この実施形態では、
図4(i)に示した
ピクセル幅を3ピクセルとして分割を行う処理は行わなかった。しかし、実線矢印の直線部分は1ピクセルの周期を有しているため、3ピクセル幅での処理を行った場合にも、実線矢印であるとの情報を失うことなく、さらに省略を促進することが可能である。その一方で、後述するように、実線以外のパターンをもつ矢印(図形要素)に対しては、あまり細かなピクセル幅に分割した場合に、そのパターンの特徴を失ってしまう可能性がある。
図3のステップS38、S50に示した処理終了の基準は、この点を勘案して調整することになる。
【0066】
図5に示した破線矢印に対しても、同様に処理が行われる。
図5(a)に示すように、オリジナルの画像データにおいては、横方向(線長方向)に2ピクセルの長さをもち、縦方向(線幅方向)に1ピクセルをもつ線分が、1ピクセルの間隔をおいて並ぶことで破線を形成している。破線の周期は、3ピクセルである。
【0067】
図5(b)に示すように2分割した帯画像データのピクセル値は一致していないが、
図5(c)に示すように左から3分割した帯画像データでは、一番左のものとそれに隣接するものが同一のピクセル値をもっている。そこで、
図5(d)に示す1回目の省略画像データが形成されている。
【0068】
その後、1回目の省略画像データに対して、
図5(e)に示す2分割処理、
図5(f)に示す左からの3分割処理、
図5(g)に示す右からの3分割処理が行われているが、隣接する帯画像データのピクセル値は一致していない。
図5(h)に示す左からの4分割では、帯画像データのピクセル幅が3ピクセルになる。そこで、
図3のステップS50、S54に従って、この分割は行われない。最終的には、
図5(i)に示すように、
図5(d)に示した1回目の省略画像データが最終的な省略画像データとなって、処理が終了している。
【0069】
この例で処理した破線矢印の画像データでは、破線部分が3ピクセルの周期を有している。そして、
図5(h)に示したように、分割のピクセル幅は4ピクセルまでとし、3ピクセルでの分割は行わなかった。すなわち、1周期よりも長く破線が残るように省略が進められたと言える。また、仮に、
図5(h)に示したピクセル幅を3ピクセルとして分割した場合にも、1周期分の破線が残ることが保証される。したがって、隣接するピクセルのピクセル値との関係にもよるが、破線であることを認識できるものと考えられる。
【0070】
なお、破線矢印では、線分は1ピクセルの点が2周期に渡って続くことで形成されており、周期が1ピクセルである内部構造を有しているが、2ピクセルの周期は有していない。したがって、ピクセル幅を2ピクセルとした場合にも、(破線に隣接するピクセルのピクセル値にもよるが)1周期分の破線が維持される可能性は高い。一般に、図形要素のピクセル値の周期よりも小さいピクセル幅で分割を行う場合であっても、そのピクセル幅が図形要素に内包される小さな周期よりも大きい範囲であれば、図形要素を1周期残すことができるもの考えられる。
【0071】
他方、ピクセル幅を1ピクセルとした場合には、破線を形成する線分部分が省略の対象となり、2ピクセルの長さをもつ線分が1ピクセルの長さをもつ点になってしまうことになる。したがって、次に示す点線矢印との区別をつけることができなくなる。
【0072】
図6に示した点線矢印の例では、
図6(a)のオリジナルの画像データに示したように、横方向(線長方向)に1ピクセルの長さをもち、縦方向(線幅方向)に1ピクセルをもつ点が、1ピクセルの間隔をおいて並ぶことで点線を形成している。点線の周期は2ピクセルである。
【0073】
この例では、
図6(b)に示した2分割の帯画像データはピクセル値が一致せず、
図6(c)に示した左から3分割した帯画像データを求めている。そして、左側2つの帯画像データのピクセル値が一致したため、
図6(d)に示した1回目の省略画像データを生成している。
【0074】
この省略画像データにも、
図6(e)に示した2分割の処理、
図6(f)に示した左からの3分割の処理を行って、
図6(g)に示した2回目の省略画像データを得ている。さらに、2回目の省略画像データに対して、
図6(h)に示した2分割の処理を行うが、帯画像データは得られていない。
図6(i)に示した左からの3分割の処理は、分割のピクセル幅が3ピクセルになってしまうため実施しない。こうして、
図6(j)に示すように、2回目の省略画像データを、最終的な省略画像データとして決定している。
【0075】
点線は、2ピクセルの周期をもつため、分割のピクセル幅を4ピクセルまでとしたことで、省略画像データは、十分に点線の特徴を表現できている。また、点線の場合、
図6(i)に示したピクセル幅を3ピクセルとする分割を実施しても、さらにはピクセル幅を2ピクセルとする分割を実施しても、点線の1周期の特徴は保持される。しかし、ピクセル幅を2ピクセルまで短くした場合には、他のパターンとの区分けが困難となるため注意が必要である。また、一般的には画像データがどの程度のピクセル幅で反復しているかはわからない。分割のピクセル幅の下限を小さくした場合には、省略が促進され、画像データのサイズを減らすことが可能となるが、図形要素の読み取りが困難になることから、両者のバランスを勘案して設定するのがよいと言える。
【0076】
図7に示した一点鎖線矢印の画像データでは、
図7(a)のオリジナルの画像データに示したように、1ピクセルで表現された点と、2ピクセルで表現された短線とが、1ピクセルの間隔をおいて一点短鎖線を形成している。その周期は、5ピクセルである。
【0077】
この例では、2分割した
図7(b)の状態、左から3分割した
図7(c)の状態、右から3分割した
図7(d)の状態では、いずれも隣接する帯画像データのピクセル値は一致していない。しかし、
図7(e)に示すように、4分割をしたところ、左側の隣接する3つの帯画像データのピクセル値が一致している。そこで、この3つの重複する帯画像データを1つのみ残すように省略を行って、
図7(f)に示す1回目の省略画像データを得ている。
【0078】
1回目の省略画像データに対しては、
図7(g)に示した2分割では帯画像データのピクセル値が一致しない。
図7(h)に示した左からの3分割の処理は、ピクセル幅が基準を下回るため実施せず、最終的には
図7(i)に示すように、1回目の省略画像データを最終的な省略画像データとして処理を終了している。
【0079】
図7(e)に示したように、隣接する3つ以上の帯画像データのピクセル値が一致する場合には、1つのみを残して、残りをまとめて省略する処理を行うことで、処理の効率を高めている。実施形態では小さなピクセル数の画像データを用いて説明を行っているが、現実的なサイズの画像データでは、さらに多くの隣接する帯画像データのピクセル値が一致することも期待できる。
【0080】
また、この実施形態では、5ピクセルの周期をもつ一点鎖線(すなわち黒黒白黒白の単位が繰り返される構造:ここで「黒」は黒いピクセル値を表し「白」は白いピクセル値を表す。以下本段落において同様。)を、ピクセル幅が基準である4ピクセルとなるまで分割を繰り返し、隣接する帯画像データのピクセル値の一致、つまり重複する帯画像の存在がないかを判定し、重複する帯画像がある場合は重複する帯画像を省略する処理を行っている。一点鎖線の内部には、1ピクセルの点の単位が2周期続く内部構造(すなわち黒の単位が2周期続く黒黒)と、1ピクセルの点と1ピクセルの隙間からなる2ピクセルの単位が2周期続く内部構造(すなわち黒白の単位が2周期続く黒白黒白、あるいは分割の始点を変えて、白黒の単位が2周期続く白黒白黒)が 包含されている(前者と後者において、黒が共通)。しかし、4ピクセルの単位の繰り返しからなる内部構造は包含されていないため、4ピクセルまでピクセル幅を狭めた分割を行っても、隣接する帯画像データのピクセル値が一致することがなく、つまり、重複する帯画像データが存在することがなく 、重複する帯画像を省略する処理が行われない結果、一点鎖線の構造を少なくとも1周期以上残すことができ、一点鎖線の特徴を維持することができる。
【0081】
図8では、
図8(a)に示した横方向に32ピクセル、縦方向に7ピクセルの大きさを持つオリジナル画像データに対して処理を行う。オリジナルの画像データでは、実線と一点鎖線を組み合わせた矢印が表現されている。実線は、横方向に連続的であり、言い換えれば1ピクセルの周期を有している。また、一点鎖線は、5ピクセルの周期を有している。
【0082】
オリジナルの画像データに対しては、
図8(b)に示した2分割の処理、
図8(c)に示した左からの3分割の処理、
図8(d)に示した右からの3分割の処理、
図8(e)に示した4分割の処理では、隣接する帯画像データのピクセル値が一致していない。しかし、
図8(f)に示した左からの5分割の処理では、実線部分に相当する左側の2つの帯画像データのピクセル値が一致しており、
図8(g)に示す1回目の省略画像データが得られている。
【0083】
1回目の省略画像データに対しては、
図8(h)に示した2分割の処理、
図8(i)に示した左からの3分割の処理、
図8(j)に示した右からの3分割の処理、
図8(k)に示した左からの4分割の処理、
図8(l)に示した右からの4分割の処理では、隣接する帯画像データのピクセル値が一致していない。しかし、
図8(m)に示した左からの5分割の処理では、一点鎖線部分に相当する中央及びその右側の帯画像データのピクセル値が一致しており、
図8(n)に示す2回目の省略画像データが得られている。
【0084】
2回目の省略画像データに対しては、
図8(o)に示した左からの2分割の処理、
図8(p)に示した右からの2分割の処理、
図8(q)に示した3分割の処理、
図8(r)に示した左からの4分割の処理では、隣接する帯画像データのピクセル値が一致していない。しかし、
図8(s)に示した右からの4分割の処理では、一点鎖線部分に相当する中央の2つの帯画像データのピクセル値が一致しており、
図8(t)に示す3回目の省略画像データが得られている。
【0085】
3回目の省略画像データに対しては、
図8(u)に示した2分割の処理、
図8(v)に示した左からの3分割の処理、
図8(w)に示した右からの3分割の処理では、隣接する帯画像データのピクセル値が一致していない。しかし、
図8(x)に示した4分割の処理では、実線部分に相当する左側2つの帯画像データのピクセル値が一致しており、
図8(y)に示す4回目の省略画像データが得られている。
【0086】
4回目の省略画像データに対しては、
図8(z)に示した2分割の処理、
図8(aa)に示した3分割の処理では、隣接する帯画像データのピクセル値が一致していない。
図8(ab)に示した4分割の処理は、ピクセル幅が基準よりも狭くなるため実施していない。こうして、
図8(ac)に示すように、4回目の省略画像データが、最終的な省略画像データとなっている。
【0087】
この例では、横方向に32ピクセルの長さをもつオリジナル画像データを、横方向に12ピクセルの長さをもつ省略画像データへと、3/8のサイズに変更することができている。また、得られた省略画像データでは、実線はもちろん、一点鎖線も1周期が表現されており、オリジナル画像データがもつ情報を維持できている。
【0088】
以上の
図4〜
図8を参照した説明においては、理解を容易にするために、反復の各段階で帯画像データ及び途中の省略画像データを生成するものとして説明を行った。しかし、画像処理を実際に行う際には、上述の演算ができればよく、反復の途中で明示的な画像データを生成する必要はないことに注意されたい。
【0089】
(4)横方向及び縦方向に省略する省略画像データの生成
図2及び3のフローチャートでは、オリジナルの画像データを横方向に分割して(縦方向に延びた帯画像データを生成する)省略を行う流れについて説明し、
図4〜
図8では具体的な実施例を示した。同様にして、縦方向に分割して省略する処理を行うことが可能である。すなわち、
図2及び
図3のフローチャートにおいて、横方向を縦方向と読み替えて処理を行うことで、縦方向に分割して省略する処理を実施することができる。
【0090】
ここで、
図9を参照して、横方向及び縦方向の両方について、省略を行う処理の例を説明する。
図9(a)は、処理対象となるオリジナルの画像データである。この画像データは、横方向に21ピクセル、縦方向に21ピクセルの大きさをもっている。図中には、左から右に延びる実線の矢印と、上から下に延びる実線の矢印が表現されている。
【0091】
省略処理は、
図3のフローチャートに従って、まず横方向について行い、次に縦方向について行っている。横方向については、2分割、3分割、4分割では省略が行われない。そして、
図9(b)に示すように、左方向から5分割を行って得られた帯画像データにおいて、左側の2つの帯画像データのピクセル値が一致するため、この省略処理が行われる。その後、横方向にはさらなる省略は行われず、横方向の省略処理が終わった段階では、
図9(c)に示す省略画像データが得られている。
【0092】
縦方向については、2分割、3分割では省略が行われない。そして、
図9(d)に示すように、上から4分割した部分画像データが求められている。ここでは、上側の2つの部分画像データのピクセル値が一致しているため、重複部分を1つのみにする省略処理が行われる。その後、縦方向にはさらなる省略は行われず、最終的には、
図9(e)に示した省略画像データが得られている。
【0093】
この例からもわかるように、横方向の処理は単に横方向におけるピクセル値の冗長性(重複性)を解消するものであり、縦方向のピクセル値の分布パターンを乱さない。同様に、縦方向の処理を行っても、横方向のピクセル値の分布パターンを乱すことはない。このため、横方向の処理と縦方向の処理は、順番を入れ替えても同じ結果が得られることになる。
【0094】
以上の実施形態では、画像データの分割は、2分割から始まり、順次3分割、4分割というように分割数を増やしながら行った。言い換えれば、大きなピクセル幅から小さなピクセル幅へと分割する幅を変更しながら反復を繰り返した。これにより、まず、大きなピクセル幅での比較を行うことで処理の効率を高めるとともに、小さな領域での比較も行って細かな重複を解消することが可能となっている。また、分割は、ピクセル幅が4ピクセルになるまで行い、3ピクセル以下での分割は行わないものとした。これにより、破線、点線、一点鎖線などの特徴を残した省略画像データを得ることができている。
【0095】
(5)1ピクセル幅での分割
破線、点線、一点鎖線などを含まない場合、あるいは、これらの相違を無視しても構わない場合には、さらに細かなピクセル幅での分割処理を行うことで、画像データをさらに小さくすることが可能となる。そこで、究極的には、ピクセル幅が1ピクセルである帯画像データを求め、隣接帯画像データとのピクセル値を比較することで、極めて効率的な省略処理ができると考えられる。
【0096】
図10は、この方針に基づいて、横方向の省略処理を行った例を示している。
図10(a)に示したオリジナルの画像データは、横方向に10ピクセル、縦方向に9ピクセルの大きさをもっている。
図10(b)は、横方向にピクセル幅を1ピクセルとして分割し、帯画像データを求めた状態を示している。
図10(c)に示すように、左側の7つの帯画像データはピクセル値が一致している。そこで、重複する帯画像データのうち、1つのみを残し、他を省略することで、
図10(d)に示した省略画像データを求めている。
【0097】
図10に示した例では、実線を対象としたため、一度の省略処理のみで、十分な省略画像データを得ることができた。しかし、例えば、
図6に示した点線矢印を対象とした場合には、ピクセル幅を1ピクセルとする帯画像データでは、隣接するもの同士のピクセル値が一致しない。したがって、ピクセル幅を広くしながら、複数回の反復を繰り返すことで、点線、破線、一点鎖線等の省略を行うことが可能となる。また、逆に、ピクセル幅を1ピクセルとした帯画像データでの処理のみを行い、ピクセル幅を広くする反復は行わないことで、1ピクセルよりも長い周期をもつ破線、点線、一点鎖線などを残すようにしてもよい。
【0098】
なお、本実施形態では、ピクセル幅を1ピクセルとした分割のみを行ったが、例えば、ピクセル幅を2ピクセルとする分割のみを行うようにしてもよい。この場合、画像データ全体のピクセル数が奇数である場合には、分割の始点を変えて分割を行うようにしてもよい。2ピクセルのみで分割した場合には、省略の効率の高さが確保できるとともに、2ピクセルの幅をもつ構造を維持した省略を実施することが可能となる。同様にして、分割のピクセル幅を3ピクセルあるいは4ピクセルとする分割のみを行うことも可能である。
【0099】
(6)画像表示の例
図11〜
図14を参照して、具体的な画像データと、横及び縦方向の両方に省略処理を行った省略画像データの例について説明する。
図11は、画像表示システム10において、フローチャートを表示する例を示す図である。
図1に示したように、画像表示システム10には、画像処理装置30と画像記憶装置50が含まれている。画像処理装置30には、表示装置としてのPC20aと、2つのスマートフォン20b、20cが無線通信により接続されている。
【0100】
PC20aでは、高解像度(高ピクセル数)のタッチパネルディスプレイ22aを備えている。このため、画像処理装置30に画像データ60の送信要求を行ったところ、省略画像データではなく、オリジナルの画像データ60が送信され、表示されている。この画像データ60は、フローチャートが記載されたものであり、文字を実線の長方形で囲んだ複数のボックス62と、このボックス62を繋ぐ実線の矢印が表示されている。なお、フローチャートの周囲には、余白66が存在している。また、ボックス内においても、文字の周囲にも余白68が存在している。PC20aでは、オリジナルの画像データを、画像データのピクセル数よりも大きな表示ピクセル数をもち、しかも、(ピクセル数ではなく、物理的な意味での)大きなタッチパネルディスプレイ22aで表示しているため、表示は鮮明であり、ユーザは問題なくその内容を読み取ることが可能である。
【0101】
スマートフォン20bは、タッチパネルディスプレイ22bを備えている。このタッチパネルディスプレイ22bは、PC20aのタッチパネルディスプレイ22aに比べて、縦方向の表示ピクセル数は多いが、横方向の表示ピクセル数は少ない。しかし、スマートフォン20bでは、比較のため、あえてオリジナルの画像データ60を取得して、タッチパネルディスプレイ22に表示している。このとき、スマートフォン20bでは、高解像度の画像データ60を補間等によって低解像度化した低解像度画像データ60bを生成し、タッチパネルディスプレイ22bに表示している。低解像度画像データ60bは、画像データ60に比べて文字が不鮮明であり、しかも(ピクセル数ではなく、物理的な意味での)小さなタッチパネルディスプレイ22bに表示されていることで、ユーザによる文字の読み取りが難しくなっている。
【0102】
スマートフォン20cは、スマートフォン20bと同じ型式のものである。スマートフォン20cのタッチパネルディスプレイ22cの解像度は、スマートフォン20bのタッチパネルディスプレイ22bと同じである。このタッチパネルディスプレイ22
cには、縦方向及び横方向の両方について省略処理を行った省略画像データ60cが表示されている。
【0103】
省略画像データ60cでは、オリジナルの画像データ60の実線矢印64が省略されて短実線矢印64cになっている。また、オリジナルの画像データ60の外縁の余白66と、ボックス62の文字の周囲にある余白68も大部分が省略されている。このため、省略画像データ60cでは、ボックス62cが相対的に大きな面積を占めており、しかもボックス62cの内部においても文字が相対的に大きくなっている。したがって、フローチャートとしての情報を欠落させることなく、ユーザが視認しやすい表示が行われていると言える。
【0104】
省略画像データ60cよりも若干下側には、シンボルの例である「オリジナル画像表示」と書かれたボタン70が表示されている。ボタン70には、オリジナルの画像データ60が対応づけられており、ユーザがこれを押した場合には、オリジナルの画像データ60が表示される。オリジナルの画像データ60を表示する際には、スマートフォン20bの例のように、低解像度画像データ60bを生成して表示させるようにしてもよいし、解像度を変えずに、オリジナルの画像データ60の一部のみを表示させるようにしてもよい。いずれの場合にも、ユーザは、タッチパネルディスプレイ22cを操作することで、オリジナルの画像データ60の拡大、縮小、移動などを行うことができる。
【0105】
図12は、ワークフロー図の表示例について説明する図である。
図12(a)には、ワークフロー図が描かれたオリジナルの画像データ80が記載されている。ワークフロー図には、作業段階を表す円枠で囲まれた番号1〜5が記載され、それらが実線矢印82で繋がれている。実線矢印82の近傍には、作業段階の移行過程で行われる作業工程の概要と所要日数が記載されている。また、ワークフロー図の周辺部には余白84が設けられている。
【0106】
図12(b)は、省略処理を行って得られた省略画像データ80aである。ここでは、実線矢印82が
矢印82aのように短く省略されることで、ワークフロー図中の隙間が減少している。また、余白84の大部分も省略されている。これにより、縦方向及び横方向にそれぞれ1/2程度のピクセル数にまで小さくなっている。しかし、ワークフロー図が保持する実体的な情報は欠落することなく維持されている。
【0107】
図12のような画像データは、それ単独で表示される場合もあるが、別途作成された文字情報とともに表示される場合もある。
図13は、
図12に示した画像データを含むHTMLファイルの例である。このHTMLファイルは、「作業手順書」というタイトルで作成されている。そして、「ABC作業」という見出しの下に、「ABC作業は、作業段階1において、・・・」のように続く文字列の記載と、画像データのファイル「img001.gif」の表示を指示する「<img>タグ」を含んでいる。
【0108】
通常は、このHTMLファイルを表示させる場合、文字列は設定された文字サイズで表示され、さらに表示ピクセル数に応じて適宜改行がなされる。したがって、表示ピクセル数が違う装置においても、柔軟に、ユーザによる読み取りが容易な表示がなされる。
【0109】
他方、ピクセル上で表現される画像データは、そのピクセル数とは異なる表示ピクセルのディスプレイに表示した場合、一般に表示品質が低下してしまう。そこで、本実施形態では、
図12に示したように、表示ピクセル数が不足する場合に、画像データのみに対して省略処理を行うものとしている。
【0110】
続いて、表を含む画像データの例について説明する。
図14は、見積書の表示例について説明する図である。
図14(a)には、オリジナルの画像データ90が記載されている。ここには、「御見積書」「XYZ株式会社 御中」などの文字列や数値列が記載されるとともに、実線の縦罫線及び横罫線で囲まれた見積表92が記載されている。また、周囲には余白94が設けられており、文字列の間にも空行96が設けられている。
【0111】
図14(b)は、省略処理を行って得られた省略画像データ90aである。ここでは、見積表92のうち記載のない空白の枠が省略されている。また、余白94、文字列間の空行96の省略も行われている。この結果、横方向には余白94が省略されたにすぎないが、縦方向には見積表92
aを含めてピクセル数が大きく減らされている。このように、表を含む画像データに対しても本実施形態は効果的である。
【0112】
(7)変形態様
以上の説明においては、画像データ全体に対して省略処理を行うものとした。しかし、画像データの一部に対してのみ、省略処理を行うことも可能である。例えば、図または表を含む画像データがある場合に、図または表が含まれる一部の領域を注目領域として抽出する前処理を行い、注目領域の画像データのみから省略画像データを求めるようにしてもよい。図または表に記載された文字は、本文の文字などに比べて小さい場合もあるため、図または表を含む注目領域のみに対して省略処理を行い、相対的に大きな表示を行うことが有効となる。注目領域について得られた省略画像データは、単独で表示されてもよいし、例えば、前処理前の画像データに埋め込まれて(あるいは上に重畳させて)一緒に表示されてもよい。
図11に示したような切り換えボタンを導入して、前処理前の画像データ表示と、省略画像データとを切り替えられるようにすることも有効である。
【0113】
本実施形態では、ピクセル値が2値の画像データを例に挙げて、帯画像データのピクセル値が完全に一致する場合に省略処理を行うものとした。しかし、この比較の基準を若干緩めるようにしてもよい。例えば、スキャナで読み込んだようなカラー画像データ、あるいはグレースケールデータでは、同じピクセル値であることが期待される領域内において若干異なるピクセル値が混じる場合や、図形等の境界が本来のピクセル位置からずれてわずかに近傍のピクセルに移動してしまう場合がある。そこで、同一であると扱うことが可能なピクセル値あるいはピクセル位置の許容範囲を設定し、許容範囲以内である場合に同一であると判断するようにしてもよい。
【0114】
また、本実施形態では、省略画像データを作成するにあたっては、設定したフローに従って最後まで省略処理を進めることとした。例えば、
図3に示したフローチャートでは、分割するピクセル幅が4よりも小さくなるまで反復して処理を行っている。しかし、反復処理を終了する基準を満たす前に、表示ピクセル数よりも小さいピクセル数をもつ省略画像データを得られることもある。そこで、そのような表示ピクセル数と同じか若干小さなピクセル数をもつ省略画像データが得られた段階で、省略処理を停止するようにしてもよい。これにより、処理時間を短縮した上で、表示を行う上で問題がない省略画像データが得られることになる。また、表示ピクセル数と同じか若干小さなピクセル数をもつ省略画像データが得られるまで、分割するピクセル幅の最小値(
図3のフローチャートの例では最小値は4)を順次小さくするようにしてもよい。もちろん、最小値に絶対的な制限をつけて、この制限値よりも小さくはしないように設定することも可能である。