特許第6838230号(P6838230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6838230
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】船舶用圧縮機の保守管理システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 79/10 20200101AFI20210222BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B63B79/10
   B63B49/00
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-152919(P2020-152919)
(22)【出願日】2020年9月11日
(62)【分割の表示】特願2020-87634(P2020-87634)の分割
【原出願日】2020年5月19日
【審査請求日】2020年10月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 巧
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−011012(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1853485(KR,B1)
【文献】 特開2004−110843(JP,A)
【文献】 特開2011−214560(JP,A)
【文献】 特開2002−221076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 79/10
B63B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の積荷であるLNGを加圧して該船舶の推進用液体燃料とする液圧ポンプの各アクチュエータの流入部及び流出部に取り付けられるセンサにより測定される液圧及び流量の計測データ、及び/又は、前記LNGから発生するボイルオフガスを圧縮して前記船舶の推進用液体燃料とするガスコンプレッサの各段の流入部及び流出部に取り付けられるセンサにより測定されるガス圧及び流量の計測データを取得する船舶状態監視サーバと、
前記液圧と流量データに関する過去の計測データ群と、前記液圧ポンプのポンプコード、及び該液圧ポンプの使用開始時期、耐用期間、保守履歴、部品交換履歴を含む液圧ポンプ基本データと、該液圧ポンプの過去の損傷箇所、及び損傷時期の履歴データとが格納されると共に、前記ガス圧と流量データに関する過去の計測データ群と、前記ガスコンプレッサのコンプレッサコード、及び前記ガスコンプレッサの使用開始時期、耐用期間、保守履歴、部品交換履歴を含むガスコンプレッサ基本データと、該ガスコンプレッサの過去の損傷箇所、及び損傷時期の履歴データとが格納されるデータライブラリを備え、取得した前記計測データから前記データライブラリに基づく解析を実行し、前記液圧ポンプ、及び/又は、前記ガスコンプレッサの損傷箇所を予測する陸上の状態診断サーバと
を備え、
前記船舶状態監視サーバ及び前記状態診断サーバは、通信網を介して接続され、
前記船舶状態監視サーバは、計測された各々の箇所の計測データを、所定時間毎に前記状態診断サーバへ送信し、
前記状態診断サーバは、前記データライブラリを参照し、前記計測データに基づき、損傷箇所を予測する仕組みを構築することを特徴とする船舶用圧縮機の保守管理システム。
【請求項2】
前記状態診断サーバは、前記損傷箇所を予測したら、予測された損傷箇所に対する被交換品の点検補修を前記船舶状態監視サーバに指示する仕組みを構築することを特徴とする請求項1記載の船舶用圧縮機の保守管理システム。
【請求項3】
前記船舶状態監視サーバは、前記点検補修の指示に基づき、点検を実施し、実施された点検の作業報告データを記憶すると共に、前記状態診断サーバへ送信し、
前記状態診断サーバは、受信した前記作業報告データに基づき、交換部品の確保を実施することを特徴とする請求項2記載の船舶用圧縮機の保守管理システム。
【請求項4】
蓄積した本船データを、船舶機器の認証機関が閲覧できることを特徴とする請求項1、2又は3記載の船舶用圧縮機の保守管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用圧縮機の保守管理システムに関し、より詳しくは、FGSS機器(Fuel Gas Supply System:燃料ガス供給システム)の状態を計測データとして取り込んで保管し、計測データを解析し、必要な交換部品の交換するタイミングを事前予測し、被交換部品の補修要請又は交換部品を適切な場所へ配送できる船舶用圧縮機の保守管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、大型船舶用の推進機関(エンジン)や発電機関のシリンダなどにセンサを取り付け、一定時間ごとに連続して筒内圧や注油量その他を計測し、得られた連続データを一旦船上の船内サーバに保管し、船内のコンピュータに統合表示すると共に、衛星通信回線を介して、陸上の保管場所(サーバ)に転送して蓄積し、陸上の保管場所に蓄積されたデータを、管理用コンピュータで統合表示できる技術である。
さらに、蓄積したデータのログにおいて、本システムは、各船から都度大量のデータが蓄積されるが、各機器のメーカ毎に異なるデータフォーマットを、共通するフォーマットに変換することによって、各機器のデータを同一のフォーマットに共通化させ、データの突合せを可能にし、管理対象の複数の船舶の遠隔監視を行うことができるシステムを構築した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−198136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、船舶の積み荷であるLNG(液化天然ガス)からのボイルオフガス、又は、該LNGを燃料とするME−GI機関(電子制御式ガスインジェクションディーゼルエンジン)を用いる場合には、ボイルオフガスを300bar以上に圧縮して機関に送るガスコンプレッサ、液状のLNGを300bar以上に加圧して気化器に送る液圧ポンプ、といったFGSS機器(Fuel Gas Supply System:燃料ガス供給システム)が搭載される。
【0005】
また、人体に危険なLNGを燃料として用いている。さらに、冗長性を確保する必要から、FGSS機器は複数台を搭載し、運転状態によって交換することが前提になっている。このようなME−GI機関に用いるFGSS機器は、適切に保守管理をする必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、FGSS機器(Fuel Gas Supply System:燃料ガス供給システム)の状態を計測データとして取り込んで保管し、計測データを解析し、交換するタイミングを事前予測し、被交換品の補修要請又は交換部品を適切に配送できる船舶用圧縮機の保守管理システムを提供することを課題とする。
【0007】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0009】
(請求項1)
船舶の積荷であるLNGを加圧して該船舶の推進用液体燃料とする液圧ポンプの各アクチュエータの流入部及び流出部に取り付けられるセンサにより測定される液圧及び流量の計測データ、及び/又は、前記LNGから発生するボイルオフガスを圧縮して前記船舶の推進用液体燃料とするガスコンプレッサの各段の流入部及び流出部に取り付けられるセンサにより測定されるガス圧及び流量の計測データを取得する船舶状態監視サーバと、
前記液圧と流量データに関する過去の計測データ群と、前記液圧ポンプのポンプコード、及び該液圧ポンプの使用開始時期、耐用期間、保守履歴、部品交換履歴を含む液圧ポンプ基本データと、該液圧ポンプの過去の損傷箇所、及び損傷時期の履歴データとが格納されると共に、前記ガス圧と流量データに関する過去の計測データ群と、前記ガスコンプレッサのコンプレッサコード、及び前記ガスコンプレッサの使用開始時期、耐用期間、保守履歴、部品交換履歴を含むガスコンプレッサ基本データと、該ガスコンプレッサの過去の損傷箇所、及び損傷時期の履歴データとが格納されるデータライブラリを備え、取得した前記計測データから前記データライブラリに基づく解析を実行し、前記液圧ポンプ、及び/又は、前記ガスコンプレッサの損傷箇所を予測する陸上の状態診断サーバと
を備え、
前記船舶状態監視サーバ及び前記状態診断サーバは、通信網を介して接続され、
前記船舶状態監視サーバは、計測された各々の箇所の計測データを、所定時間毎に前記状態診断サーバへ送信し、
前記状態診断サーバは、前記データライブラリを参照し、前記計測データに基づき、損傷箇所を予測する仕組みを構築することを特徴とする船舶用圧縮機の保守管理システム。
(請求項2)
前記状態診断サーバは、前記損傷箇所を予測したら、予測された損傷箇所に対する被交換品の点検補修を前記船舶状態監視サーバに指示する仕組みを構築することを特徴とする請求項1記載の船舶用圧縮機の保守管理システム。
(請求項3)
前記船舶状態監視サーバは、前記点検補修の指示に基づき、点検を実施し、実施された点検の作業報告データを記憶すると共に、前記状態診断サーバへ送信し、
前記状態診断サーバは、受信した前記作業報告データに基づき、交換部品の確保を実施することを特徴とする請求項2記載の船舶用圧縮機の保守管理システム。
(請求項4)
蓄積した本船データを、船舶機器の認証機関が閲覧できることを特徴とする請求項1、2又は3記載の船舶用圧縮機の保守管理システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、FGSS機器(Fuel Gas Supply System:燃料ガス供給システム)の状態を計測データとして取り込んで保管し、計測データを解析し、交換するタイミングを事前予測し、被交換品の補修要請又は交換部品を適切に配送できる船舶用圧縮機の保守管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る船舶用圧縮機の保守管理システムの概略図
図2】液体圧縮の船舶用圧縮機の概略図
図3】気体圧縮の船舶用圧縮機の概略図
図4】液体圧縮及び気体圧縮の船舶用圧縮機の概略図
図5】メンテナンスリストの一例を示す図
図6】状態診断に基づき、変更メンテナンスリストの一例を示す図
図7】過去の船舶においてメンテナンスを実施したメンテナンス履歴の一例を示す図
図8】過去の船舶において部品損傷が発生した損傷履歴の一例を示す図
図9】本実施形態にかかる船舶用圧縮機の保守管理システムの処理フローの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
船舶が安全に航海を続けるためには、機関トラブルの未然防止や運航停止時間の極小化を実現する事が非常に重要である。特に航海中にFGSS機器(Fuel Gas Supply System:燃料ガス供給システム)に故障などのトラブルが発生した場合には、陸上から支援を受けることが困難である。そのためFGSS機器の状態を把握し適切な保守作業を、より早い段階で実施することが求められる。
【0014】
従来より、FGSS機器の定期的な保守は実施されているが、本発明は、FGSS機器から得られるビッグデータを船内で一元的に収集し、状態診断や故障の未然防止を図り、それらをFGSS機器の保守管理履歴と組み合わせて、船舶の安全な運航に繋げるものである。
【0015】
本発明では、FGSS機器を一元的に管理するようにした。本発明に係る船舶用圧縮機の保守管理方法及びシステムは、クラウド型で、FGSS機器の状態診断を一元的に管理でき、FGSS機器の状態に応じて必要な保守作業を的確に提供できる。本発明に係る船舶用圧縮機の保守管理方法及びシステムは、海上ブロードバンド環境を利用し、海上及び陸上双方での分析結果が確認できる。
【0016】
図1は、本発明に係る船舶用圧縮機の保守管理システムの概略図である。
【0017】
図1において、船舶用圧縮機の保守管理システム1は、通信網100を介して、船舶状態監視サーバ101と、陸上の状態診断サーバ102とが接続されている。
【0018】
船舶状態監視サーバ101を備える船舶は、積荷であるLNG(液化天然ガス)を燃料とするME−GI機関(電子制御式ガスインジェクションディーゼルエンジン)を用いた船舶であり、FGSS機器を搭載している。
船舶が備えるFGSS機器としては、液体燃料を使用する液圧ポンプ及び気化器を備える液体燃料型、気体燃料を使用するガスコンプレッサを備える気体燃料型、又は、液体燃料を使用する液圧ポンプ及び気化器、及び気体燃料を使用するガスコンプレッサの両方を備えるハイブリッド型が挙げられる。
【0019】
図2は、液体圧縮の船舶用圧縮機の概略図である。
図2に示すFGSS機器は、液圧ポンプ2を備えている。
図2に示すように、液圧ポンプ2は、例えば、アクチュエータ20、21、22の3台のアクチュエータで構成され、2台のアクチュエータを用いて航行を行い、一定のサイクルでアクチュエータ20、21、22のうち2台のアクチュエータを用いる。
【0020】
液圧ポンプ2は、船舶の積荷であるLNGタンク10からのLNG11を、LNG液送ポンプによりアクチュエータ20、21、22に送られる。
【0021】
LNGは、アクチュエータ20、21で、船舶の推進用液体燃料として加圧される。加圧された液体燃料は、気化器3に送られ、気化器3で気化され、主機関5に、逆止弁50及びバルブ51を介して供給される。
また、図示しないが、気化器3で気化された高圧の液体燃料は、発電機関6等の副機関に、逆止弁及びバルブを介して供給されてもよい。
【0022】
船舶用圧縮機の保守管理システムは、図2に示すように、供給される液体燃料を加圧する液圧ポンプ2の第1アクチュエータ20の流入部には、センサ70が取り付けられ、流出部には、センサ74が取り付けられている。センサ70は、第1アクチュエータ20の液体燃料が流入する流入部で、液圧及び流量を計測し、センサ71は、第1アクチュエータ20の圧縮された液体燃料を気化器3へ供給する流出部で、液圧及び流量を計測する。
【0023】
次いで、液圧ポンプ2の第2アクチュエータ21の流入部には、センサ72が取り付けられ、第2アクチュエータ21の流出部には、センサ73が取り付けられている。センサ72は、第2アクチュエータ21の液体燃料が流入する流入部で、液圧及び流量を計測し、センサ73は、第2アクチュエータ21の圧縮された液体燃料を気化器3へ供給する流出部で、液圧及び流量を計測する。
【0024】
次いで、液圧ポンプ2の第3アクチュエータ22の流入部には、センサ74が取り付けられ、第3アクチュエータ22の流出部には、センサ75が取り付けられている。センサ74は、第3アクチュエータ22の液体燃料が流入する流入部で、液圧及び流量を計測し、センサ75は、第3アクチュエータ22の圧縮された液体燃料を気化器3へ供給する流出部で、液圧及び流量を計測する。
【0025】
運転状態において、常に各測定値データを取得し、取得した各測定値データを船舶状態監視サーバに保管すると共に、所定時間毎に、陸上サーバに送信することができる。
【0026】
図3は、気体圧縮の船舶用圧縮機の概略図である。
図3に示すFGSS機器は、5段階で圧縮するガスコンプレッサ4を備えている。
【0027】
図3に示すように、ガスコンプレッサ4は、船舶の積荷であるLNGタンク10からのボイルオフガス(BOG)12を、第1段目のガスコンプレッサ40により圧縮し、第2段目のガスコンプレッサ41に送る。そして、第2段目のガスコンプレッサ41、第3段目のガスコンプレッサ42、第4段目のガスコンプレッサ43を経て徐々に加圧し、第5段目のガスコンプレッサ44を経て、高圧ガスである船舶の推進用気体燃料を得ることができる。図示しないが、各ガスコンプレッサ間に冷却器を設けることも好ましい。これにより、昇圧されたガスを適宜冷却機により冷却することで、コンプレッサによる円滑な加圧に寄与する。気体燃料(高圧ガス)は、図2と同様に、主機関5に、逆止弁50及びバルブ51を介して供給される。また、第2段目のガスコンプレッサ41と第3段目のガスコンプレッサ42との間から、発電機関6等の副機関に配管を設け、該配管に開閉弁等を設け、気体燃料の一部を、発電機関6等の副機関に逆止弁60及びバルブ61を介して供給するようにすることが好ましい。これにより、主機関に送られる気体燃料の一部を、発電機関等の副機関の駆動燃料として確保することができる。
【0028】
船舶用圧縮機の保守管理システムは、図3に示すように、供給される気体燃料を加圧するガスコンプレッサ4の第1段目のガスコンプレッサ40の流入部には、センサ80が取り付けられ、流出部には、センサ81が取り付けられ、第1段目のガスコンプレッサ40で加圧され、流出された気体燃料が、第2段目のガスコンプレッサ41に流入される。第2段目のガスコンプレッサ41、第3段目のガスコンプレッサ42、第4段目のガスコンプレッサ43、第5段目のガスコンプレッサ44の各流出部には、夫々センサ82、83、84、85が取り付けられている。
【0029】
センサ80は、船舶の積荷であるLNGタンク10からのボイルオフガス12が、第1段目のガスコンプレッサ40の流入部から導入されるガス圧、及び流量を計測する。そして、各センサ81、82、83、84、85は、第2段目のガスコンプレッサ41、第3段目のガスコンプレッサ42、第4段目のガスコンプレッサ43、第5段目のガスコンプレッサ44の流出部で、各段目のガスコンプレッサで加圧された気体燃料のガス圧及び流量を計測する。
【0030】
運転状態において、常に各測定値データを取得し、取得した各測定値データを船舶状態監視サーバ101に保管すると共に、所定時間毎に、陸上の状態診断サーバ102に送信することができる。
【0031】
本実施形態において、図4に示すように船舶が備えるFGSS機器は、液圧ポンプ2とガスコンプレッサ4との両方を備えていてもよい。この場合、例えば、LNGタンクからの蒸発ガスであるボイルオフガスを、ガスコンプレッサ4を用いて加圧して燃料として用い、ボイルオフガスが不足した場合に、液圧ポンプ2を用いて加圧したLNGを燃料として用いることができる。以下に述べる船舶用圧縮機の保守管理システムは、液圧ポンプ2及びガスコンプレッサ4の両方を備えたFGSS機器にも、液圧ポンプ2及びガスコンプレッサ4の何れかを備えたFGSS機器にも適用することができる。
【0032】
船舶状態監視サーバ101は、船舶に備えられたFGSS機器に取り付けられた各種センサから、常時計測データを取得するデータ取得部111と、計測データを格納する船舶データベース121と、計測データを陸上の状態診断サーバ102に送信し、陸上の状態診断サーバ102からの診断データを受信する送受信部131を備えている。
【0033】
船舶状態監視サーバ101は、各種センサ70〜75のセンサ群7で計測された計測値をデータ取得部111で取得し、取得した計測データを、船舶データベース121に格納していき、所定時間毎に、陸上の状態診断サーバ102に送受信部131により送信する。なお、ガスコンプレッサ4の場合は、各種センサ80〜85のセンサ群8で計測値をデータ取得部111で取得する。以降は、液圧ポンプの場合と同様であるため、その説明を援用し省略する。
【0034】
船舶状態監視サーバ101が備える船舶データベース121の計測データの格納データサイズは、例えば、所定の期間分のデータが格納され、その後、所定の期間を超えるデータは、格納されていたデータに上書きされていくように構成されていることが好ましい。
【0035】
陸上の状態診断サーバ102は、船舶状態監視サーバ101から計測データを受信し、計測データを解析し、解析結果を船舶状態監視サーバ101に送信する送受信部112を備える。
【0036】
また、陸上の状態診断サーバ102は、予め、前記液圧と流量データに関する過去の船舶の航行により取得された計測データ群、前記液圧ポンプのポンプコード、及び該液圧ポンプの使用開始時期、耐用期間、保守履歴、部品交換履歴を含む液圧ポンプ基本データと、該液圧ポンプの過去の損傷箇所、及び損傷時期の履歴データとが格納されたデータライブラリが格納された陸上データベース122を備えている。
【0037】
更に、上述した陸上データベース122に格納されたデータライブラリは、液体燃料を使用する船舶についてのデータライブラリであり、液体燃料を加圧する液圧ポンプの例で説明しているが、ガスコンプレッサについても、気体燃料を使用する船舶のデータライブラリとして格納しておくことが好ましい。更に、図4に示すハイブリッド型の場合についても、同様である。つまり、船舶の種類に応じて、各種のデータライブラリを陸上データベース122に格納しておくことが好ましい。
【0038】
陸上データベース122に格納された液体燃料を使用する船舶のデータライブラリを例に挙げて、図5図8に基づいて説明する。
【0039】
図5は、過去の船舶の航行により取得された計測データ群の一例を示す図であり、図6は、液圧ポンプの基本データの一例を示す図であり、図7は、過去の船舶においてメンテナンスを実施したメンテナンス履歴の一例を示す図であり、図8は、過去の船舶において部品損傷が発生した損傷履歴の一例を示す図である。
【0040】
図5に示すように、計測データ群は、過去の船舶の航行で取得した1時間毎に船舶状態監視サーバ101から送信された計測データであり、例えば、1日の24時間分の計測データが1時間毎に、液圧データ、流量データが対応付けられて格納されている。このデータは、例えば、液体燃料を使用する船舶、気体燃料を使用する船舶、若しくは、液体燃料及び気体燃料の両方を使用する船舶の種類に応じて対応付けられていることが好ましい。また、後述する船舶を識別する船舶IDと対応付けられていることが好ましい。これにより、後述する部品損傷の時期と、部品損傷の時期の前後の時期の計測データの変動を分析に利用することができる。
【0041】
データライブラリには、図6に示すような、管理対象となった船舶を識別する船舶IDと、船舶に備えられている液圧ポンプのポンプコードと、該液圧ポンプの製造メーカー、使用開始時期、及び該液圧ポンプの耐用期間が対応付けられた液圧ポンプの基本データがデータライブラリとして格納されている。これにより、船舶に搭載された液圧ポンプの仕様、製造メーカーを特定できるようにデータライブラリに格納されている。本実施形態においては、液圧ポンプの例で説明しているが、ガスコンプレッサの場合は、ガスコンプレッサ基本データとして、液圧ポンプとガスコンプレッサのハイブリッド型の場合は、各々液圧ポンプのポンプコード、ガスコンプレッサのコンプレッサコード等を船舶IDに対応付けて記憶させておくことが好ましい。
【0042】
データライブラリには、図7に示すような、液圧ポンプコードと、船舶IDと、使用開始時期、耐用期間、保守履歴、部品交換履歴が対応付けられたメンテナンス履歴情報がデータライブラリとして格納されている。これにより、液圧ポンプの使用履歴を追うことができる。
【0043】
更に、データライブラリには、図8に示すような、液圧ポンプコード、船舶IDと、損傷箇所、損傷時期が対応付けられた部品損傷履歴がデータライブラリとして格納されている。これにより、航行に関する過去の計測データと、部品損傷時期との対応関係を導き出せる。つまり、部品損傷に伴う計測データの変動等を分析に利用することが可能になる。
【0044】
陸上の状態診断サーバ102は、図5図8に示すようなデータをデータライブラリに備え、陸上の状態診断サーバ102が備える分析プログラムを稼動し、船舶状態監視サーバ101から受信する計測データから機器の損傷、部品交換時期等を予測することが出来る。
【0045】
陸上の状態診断サーバ102は、更に、状態診断モデルが構築されていることが好ましい。
【0046】
状態診断モデルは、AIによる自動診断プログラムであり、状態診断モデルによって、船舶状態監視サーバ101から受信した計測データを解析し、機器の状態を診断し、その診断結果を出力することができる。
【0047】
状態診断モデルによるデータ解析の一例を、説明する。
状態診断モデルは、液圧ポンプの流入部と流出部との各々の圧力と温度の相関関係に基づき、正常な範囲基準を構築するように学習させることが好ましい。学習させる学習データとしては、例えば図5に示すような、過去の液圧ポンプを搭載した船舶の圧力と温度の計測データを用いることができる。
【0048】
また、状態診断モデルは、圧力と流量との相関関係も同様に構築することが好ましい。
【0049】
この場合、圧力と流量の何れかに正常な基準範囲を超えた状態、又は両方に正常な基準範囲を超えた状態を検出すると、損傷箇所の特定が可能になる。
【0050】
更に、本実施形態において陸上の状態診断サーバ102は、図示しない過去の同型液圧ポンプの使用開始時期と耐用期間と部品交換の頻度をデータライブラリに備えていることが好ましい。これにより、同型の液圧ポンプによる損傷部位の傾向、つまり負荷が生じやすい箇所の把握ができる。この場合、その状態でのメンテナンス履歴等の情報、及び、損傷部位の発生時期の周辺での海域の状況、天候等をデータライブラリに備えていることも好ましい。海域の状況、天候等は、データライブラリに備えていなくてもよく、外部機関等から情報を取得できるような仕組みが構築されていればよい。
また、本実施形態において、状態診断を状態指数等で示すこともできる。状態指数は、例えば10段階の指数を採用し、1〜4までは正常状態、5〜7は、注意状態、8〜10は、危険段階といったように、区分けし、これらは、上述した状態診断モデルが、計測データに基づき、解析された結果を表示する際に利用することができる。
更に、状態指数を算出するための補正値に、上述したメンテナンス履歴、耐用期間、部品交換頻度等を含むデータライブラリを使用することも好ましい。
【0051】
これらによって、陸上の状態診断サーバ102は、船舶状態監視サーバ101から受信した計測データを、船舶状態監視サーバ101を搭載した船舶のFGSS機器の種類に応じて、陸上データベース122に構築された必要な情報に基づき分析することができる。
【0052】
本実施形態にかかる船舶用圧縮機の保守管理システムの作用について図9に基づいて説明する。
図9は、本実施形態にかかる船舶用圧縮機の保守管理システムの処理フローの一例を示す図である。
図9に示すように、まず、船舶状態監視サーバ101は、船舶のFGSS機器に取り付けたセンサから計測データを取得する(S1)。
【0053】
次いで、船舶状態監視サーバ101は、センサから取得した計測データを、船舶データベース121に格納すると共に、設定された所定時間毎に、計測データを、陸上の状態診断サーバ102に送信する(S2)。
【0054】
次いで、陸上の状態診断サーバ102は、受信した計測データを、所定の形式で、陸上データベース122に格納すると共に、データライブラリを参照して、該計測データを解析する(S3)。
【0055】
次いで、陸上の状態診断サーバ102は、液圧ポンプの損傷のおそれがあるか否か判断し、損傷のおそれがある場合には、損傷箇所を予測し、損傷の可能性ありとの予測診断する(S4)。
本実施形態において、診断結果は、損傷の可能性を割合で表示し、船舶で実施する点検・メンテナンス等の際、優先順位を予測された損傷箇所から順に、点検・メンテナンスを実行するように指示する信号を生成することもできる。
【0056】
更に、本実施形態においては、損傷箇所を予測したら、予測された損傷箇所に対する被交換品の点検補修を船舶状態監視サーバ101に指示する信号を生成することも好ましい。
【0057】
次いで、陸上の状態診断サーバ102は、予測した損傷箇所を含む予測診断を、船舶状態監視サーバ101に送信する(S5)。
【0058】
次いで、船舶状態監視サーバ101は、計測データと共に、受信した予測診断を表示する(S6)。
【0059】
本実施形態において、船舶状態監視サーバ101は、点検補修のための点検指示に基づき、作業者に点検補修の実施を指示し、実施された点検補修の作業報告データを記憶すると共に、陸上の状態診断サーバ102へ送信することも好ましい。
陸上の状態診断サーバ102は、受信した前記作業報告データに基づき、交換部品の確保の指示を、陸上の図示しない交換部品を扱うメーカ等に出して、船舶が寄港する予定の港に配送する手配を実施する仕組みが構築されていることが好ましい。
【0060】
これにより、船舶状態監視サーバ101が表示する予測診断と計測データを作業者が確認できるようになることで、目視による船舶のFGSS機器の正確な状態を把握できるようになる。
更に、予測診断に基づき、点検補修を船舶状態監視サーバ101に指示することができ、点検補修結果である点検補修の作業報告データに基づき、必要な交換部品の配送手配ができる。
本実施形態においては、液圧ポンプの例で説明したが、ガスコンプレッサの場合、液圧ポンプとガスコンプレッサのハイブリッド型の場合も同様に処理をすることができる。
【0061】
さらに、本システムに蓄積された本船データを、ユーザの許可を得て船舶機器の認証機関が閲覧できる仕組みが構築されていることが好ましい。これにより、検査員が訪船前に本船の状況を確認することができることとなり、本船上における検査時間の短縮化が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1:保守管理システム
2:液圧ポンプ
20〜22:第1〜第3アクチュエータ
3:気化器
4:ガスコンプレッサ
40〜44 :第1段目〜第4段目のガスコンプレッサ
5:主機関
50:逆止弁
51:バルブ
6:発電機関
60:逆止弁
61:バルブ
7:センサ群
70、71、72、73、74、75:センサ
8:センサ群
80、81、82、83、84、85:センサ
10:LNGタンク
12:ボイルオフガス
100:通信網
101:状態監視サーバ
111:データ取得部
121:船舶データベース
131:送受信部
102:状態診断サーバ
112:送受信部
122:陸上データベース
【要約】      (修正有)
【課題】FGSS機器(FuelGasSupplySystem:燃料ガス供給システム)の状態を計測データとして取込み、保管し計測データを解析し、交換するタイミングを事前予測し、被交換品の補修要請又は交換部品を適切に配送できる船舶用圧縮機の保守管理システムを提供する
【解決手段】船舶用圧縮機の保守管理システム1は、通信網100を介し、船舶状態監視サーバ101と、陸上の状態診断サーバ102とから構成される。船舶状態監視サーバは、液圧ポンプの液圧、流量及び/又はガスコンプレッサのガス圧、流量の計測データを取得する。液圧、流量及び/又はガスコンプレッサのガス圧、流量の過去の計測データ群と液圧ポンプ及びガスコンプレッサの基本データと液圧ポンプ及びガスコンプレッサの過去の損傷箇所と損傷時期の履歴データとを格納するデータライブラリを備え、状態診断サーバがデータライブラリを参照し、故障個所を予測する。
【選択図】図1
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