(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838265
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】炊飯用液体調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20210222BHJP
【FI】
A23L7/10 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-131614(P2015-131614)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-12070(P2017-12070A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(72)【発明者】
【氏名】真庭 佳代子
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 裕子
【審査官】
小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−193876(JP,A)
【文献】
特開2012−065645(JP,A)
【文献】
特開2004−121082(JP,A)
【文献】
特開平07−274865(JP,A)
【文献】
特開昭62−210956(JP,A)
【文献】
特開平03−043061(JP,A)
【文献】
特開平06−197711(JP,A)
【文献】
特開平07−274856(JP,A)
【文献】
特開平10−179060(JP,A)
【文献】
特開2005−261263(JP,A)
【文献】
特開2002−065184(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/131456(WO,A1)
【文献】
特開昭60−034139(JP,A)
【文献】
特開平09−285260(JP,A)
【文献】
特開2006−158233(JP,A)
【文献】
特開2006−087347(JP,A)
【文献】
井村屋製菓株式会社 お赤飯の素,https://mognavi.jp/do/sampling/show/imuraya1,2008年 9月 1日
【文献】
ベル食品 北海道産素材炊き込みご飯の素帆立 170g,https://www.amazon.co.jp/dp/B00FGKFWLG/,2013年 9月27日
【文献】
丸美屋食品工業(株)炊き込みご飯の素 中華おこわ風,http://foodsnews.com/articles/view/25235,2011年 2月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00− 7/104
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つのデンプン類を含有する、炊飯用液体調味料(ただし、α−グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼを含有するものを除く)であって、
生米に対して0.1〜1.5重量%のデンプン類が添加されるように用いられる調味料。
【請求項2】
アセチル化アジピン酸架橋デンプン及び/又はヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンが、タピオカデンプン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、馬鈴薯デンプン及びワキシー馬鈴薯デンプンからなる群より選択される少なくとも一つを原料とする、請求項1記載の調味料。
【請求項3】
デンプン類の含有量が、調味料の総重量に対して0.1〜15重量%である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の調味料。
【請求項4】
おこわ様の食感を付与する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の調味料。
【請求項5】
生米を、生米に対して0.1〜1.5重量%のデンプン類を含有する液体調味料の存在下(ただし、α−グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼが存在する場合を除く)で炊飯することを含み、
前記デンプン類が、生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つである、米飯の製造方法。
【請求項6】
生米を、生米に対して0.1〜1.5重量%のデンプン類を含有する液体調味料の存在下(ただし、α−グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼが存在する場合を除く)で炊飯することを含み、
前記デンプン類が、生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つである、米飯の食感改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯用液体調味料、米飯の製造方法及び米飯の食感改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「おこわ(御強)」は、糯米を、小豆、山菜、豚肉、海老、栗等の所望の具材とともに蒸し調理してなる食品をいい、その種類としては、例えば、赤飯、山菜おこわ、中華おこわ、五目おこわ、海鮮おこわ、栗おこわ等が従来知られている。おこわは、その食味や風味もさることながら、もちもちとした独特の食感が特に支持され、消費者に広く愛好されている。
【0003】
おこわの調理方法は、赤飯を例に挙げると、まず糯米を小豆やササゲ豆の煮汁に数時間から一晩程度浸漬して、十分に吸水させて色付けし、次いで当該糯米を、煮た小豆やササゲ豆とともに、蒸籠を用いて蒸し調理する方法が一般的である。おこわは、当該蒸し調理の際に適切なタイミングで数回、打ち水を行う必要がある等、調理に手間と時間がかかり、家庭で簡便に調理できるとは言い難いものである。
【0004】
近年、家庭用の電気炊飯器を用いて、おこわ様の炊き込みご飯を調理するための調味料(いわゆる炊き込みご飯の素)が種々上市されているが、おこわ様の食感を付与するには糯米を必要とし、そのため当該調味料には、糯米の費用がかかる、糯米を用意する手間がかかる等の問題があった。
【0005】
一方、大規模な連続米飯炊飯ラインで大量の米飯を安定的に製造することを目的として、米飯が有するつや及び粘りを維持しつつ、そのほぐれ性(ほぐれやすさ)を向上させる米飯改質剤が報告されている(特許文献1〜3)。しかし、おこわ特有のもちもちとした食感を付与する液体調味料に関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/054460号
【特許文献2】国際公開第2010/131456号
【特許文献3】国際公開第2008/032433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、食味を損なうことなく、おこわ様のもちもちとした、即ち付着性と弾力とを適度に兼ね備えた食感を有する米飯を簡便に製造するための調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討した結果、デンプン類を含有する液体調味料を生米に添加して炊飯することにより、食味を損なうことなく、おこわ様のもちもちとした食感を有する米飯を製造できることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]デンプン類を含有する、炊飯用液体調味料。
[2]デンプン類が、生デンプン及び加工デンプンから選択される少なくとも一つである、[1]記載の調味料。
[3]加工デンプンが、タピオカデンプン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、馬鈴薯デンプン及びワキシー馬鈴薯デンプンからなる群より選択される少なくとも一つを原料とする、[2]記載の調味料。
[4]加工デンプンが、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン及びデンプングリコール酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項[2]又は[3]記載の調味料。
[5]生米に対して0.1〜5重量%のデンプン類が添加されるように用いられる、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の調味料。
[6]デンプン類の含有量が、調味料の総重量に対して0.1〜15重量%である、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の調味料。
[7]おこわ様の食感を付与する、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の調味料。
[8]生米を、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の調味料の存在下で炊飯することを含む、米飯の製造方法。
[9]前記調味料に含有されるデンプン類が、生米に対して0.1〜5重量%である、[8]記載の製造方法。
[10]生米を、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の調味料の存在下で炊飯することを含む、米飯の食感改質方法。
[11]前記調味料に含有されるデンプン類が、生米に対して0.1〜5重量%である、[10]記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食味を損なうことなく、おこわ様のもちもちとした、即ち付着性と弾性とを適度に兼ね備えた食感を有する米飯を製造することができる。
また本発明は、おこわ様のもちもちとした食感を有する米飯の製造方法も提供する。
また本発明は、米飯の食感をおこわ様のもちもちとした食感に改質する、米飯の食感改質方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.調味料
本発明の調味料は、デンプン類を含有することを特徴の一つとする。デンプン類としては、例えば、生デンプン、加工デンプン等が挙げられる。本発明の調味料は、生デンプン及び加工デンプンから選択される少なくとも一つを含有することが好ましく、保存性の観点から、加工デンプンを含有することがより好ましい。
【0013】
本発明において「加工デンプン」とは、物理的処理、化学的処理及び酵素的処理からなる群より選択される少なくとも一つの処理を施されたデンプンをいう。本発明において用いられる加工デンプンは、食用であれば特に制限されないが、化学的処理を施されたデンプンが好ましい。化学的処理を施されたデンプンとしては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン及びデンプングリコール酸ナトリウム等が挙げられる。本発明において用いられる加工デンプンは、好ましくはアセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン及びデンプングリコール酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一つであり、より好ましくはアセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン及びリン酸架橋デンプンからなる群より選択される少なくとも一つであり、特に好ましくはアセチル化アジピン酸架橋デンプン及び/又はヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンである。これらの加工デンプンは、化学的処理に加え、更に物理的処理及び/又は酵素的処理を施されていてもよい。
【0014】
本発明において用いられる加工デンプンの原料は特に制限されないが、おこわ様のもちもちとした食感を付与する効果に優れることから、該加工デンプンは、タピオカデンプン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、馬鈴薯デンプン及びワキシー馬鈴薯デンプンからなる群より選択される少なくとも一つを原料とすることが好ましく、タピオカデンプン及び/又はワキシーコーンデンプンを原料とすることがより好ましい。
【0015】
本発明において「生デンプン」とは、物理的処理、化学的処理及び酵素的処理を施されていない未変性のデンプンをいい、例えば、タピオカデンプン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、馬鈴薯デンプン、ワキシー馬鈴薯デンプン、小麦デンプン、米デンプン、甘露デンプン及びサゴデンプン等が挙げられ、好ましくはタピオカデンプン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、馬鈴薯デンプン、ワキシー馬鈴薯デンプン及び米デンプンであり、より好ましくはタピオカデンプン、ワキシーコーンデンプン、ワキシー馬鈴薯デンプンである。これらの生デンプンは、単独で用いてよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の調味料は、デンプン類に加えて、調味料に通常使用される食品原料及び/又は食品添加物を、更に含有してよい。当該食品原料及び食品添加物は、本発明の目的を損なうものでない限り特に制限されないが、例えば、水、醤油、食塩、味噌、食酢、酒精、みりん、食用油脂(例、植物油、動物油等)、肉(例、牛肉、豚肉、鶏肉等)、魚介(例、魚、貝、海老、蟹等)、野菜(野菜ペースト、乾燥野菜等を含む)、海藻(例、昆布、わかめ等)、果物(果汁、果肉ペースト等を含む)、卵(例、全卵、卵黄、卵白等)、エキス類(例、肉エキス、野菜エキス、魚介エキス、酵母エキス等)、甘味料(例、グラニュー糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例、クエン酸等)、香辛料(例、胡椒等)、アミノ酸類(例、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム等)、核酸類(例、イノシン酸、グアニル酸等)、無機塩類、ビタミン類、食物繊維類、着香料、着色料、乳化剤、増粘剤、pH調整剤、酸化防止剤、保存料等が挙げられる。これらの食品原料及び食品添加物は、単独で用いてよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の調味料の形態は、液体であることが好ましい。本発明の調味料は、液体であることによって、簡便に、且つ生米に均一に混合でき、おこわ様のもちもちとした食感をムラなく有する米飯を提供できる。本発明において「液体」とは、常温(25℃)常圧(100kPa)下で流動性を示すものをいい、溶液、分散液、懸濁液、乳化液等の他、ペースト、スラリー等も包含する概念である。
【0018】
本発明の調味料の水分量は、調味料の総重量に対して、好ましくは50〜95重量%であり、生米に均一に混合し易いことから、より好ましくは60〜90重量%であり、特に好ましくは70〜90重量%である。
【0019】
本発明の調味料は、既知の手法により製造できる。例えば、デンプン類等の各調味料原料を混合し、均一に攪拌すること等により製造できる。
【0020】
本発明の調味料は、容器詰めされて提供され得る。本発明の調味料を充填し得る容器は、液体調味料を充填するために通常用いられる容器であれば特に制限されないが、例えば、アルミパウチ、PET(ポリエチレンテレフタラート)容器、金属容器、ガラス容器、紙容器等が挙げられる。
【0021】
本発明の調味料は、加熱殺菌処理を施され得る。加熱殺菌処理は、液体調味料に通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、レトルト殺菌、ホットパック、湯殺菌等が挙げられる。
【0022】
本発明の調味料は、炊飯用であることが好ましい。本発明において「炊飯用」調味料とは、米飯を炊く際に用いられる調味料をいい、炊き上がった後の米飯に対して用いられる調味料とは区別される概念である。より詳細には「炊飯用」調味料は、生米を炊飯用水に浸漬させてから加熱することによって米飯を炊く場合に、該加熱の前及び/又は加熱中に、生米及び/又は炊飯用水に添加されて用いられるものである。
【0023】
本発明の調味料は、生米(乾物換算)に対して、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.25〜4重量%、特に好ましくは0.25〜3重量%、最も好ましくは0.5〜1.5重量%のデンプン類が添加されるように用いられる。生米に対するデンプン類の量が当該範囲内であることによって、好ましい付着性と弾力とを兼ね備えた食感を有する米飯を得ることができる。
好ましい付着性と弾力とを兼ね備えた食感を有する米飯を得るには、生米に対するデンプン類の量が上述の範囲内であればよく、本発明の調味料におけるデンプン類の含有量は特に制限されないが、調味料の総重量に対して、通常0.1〜15重量%であり、炊飯性及び食味の観点から、また、常温化での流動性の観点から、好ましくは0.3〜13重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0024】
本発明において「生米」とは、米飯になっていない未炊飯の状態の米を意味する。本発明の調味料が用いられる生米は、粳米、糯米及びそれらの混合物のいずれであってもよいが、本発明の効果が顕著に発揮される点で、本発明の調味料が用いられる生米は、粳米を80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことがより好ましく、95重量%以上含むことが特に好ましい。生米の精米の程度は特に制限されず、例えば、精米、無洗米、玄米、胚芽米、発芽玄米等のいずれを用いてもよく、精米、無洗米を用いることが好ましい。また生米の栽培種、品種、産地は、いずれも特に制限されない。
【0025】
本発明の調味料は、生米とともに炊飯することによって、おこわ様のもちもちとした食感を有する米飯を製造できる。本発明において「おこわ様のもちもちとした食感」とは、おこわを咀嚼した際に顕著に感じられる、適度な付着性と弾性とを兼ね備えた食感をいう。おこわ様のもちもちとした食感の有無や程度は、専門パネルによる付着性及び弾性の官能評価によって評価できる。本発明において、生米を炊飯する方法は特に制限されず、自体公知の炊飯方法を適宜用いればよく、特に限定はないが、例えば炊飯器や鍋を用いた炊飯方法を挙げることができる。また炊飯用水の量は、生米の精米の程度等によって異なるが、生米(乾物換算)に対して、通常0.8〜1.5重量倍である。
【0026】
本発明の調味料は、生米とともに炊飯することによって、おこわ様の食感(好ましくは、おこわ様のもちもちとした食感)を米飯に付与し得る。
【0027】
本発明の調味料は、米飯の食感改質剤として用いられ得る。
【0028】
2.米飯の製造方法
本発明は、生米を、本発明の調味料の存在下で炊飯することを含む、米飯の製造方法も提供する。
【0029】
本発明の米飯の製造方法において、本発明の調味料に含有されるデンプン類は、生米(乾物換算)に対して、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.25〜4重量%、特に好ましくは0.25〜3重量%、最も好ましくは0.5〜1.5重量%である。生米に対するデンプン類の量が当該範囲内であることによって、好ましい付着性と弾力とを兼ね備えた食感を有する米飯を得ることができる。
【0030】
生米を炊飯する方法は特に制限されず、自体公知の炊飯方法を適宜用いることができ、特に限定はないが、例えば炊飯器や鍋を用いた炊飯方法を挙げることができる。また炊飯用水の量は、生米の精米の程度等によって異なるが、生米(乾物換算)に対して、通常0.8〜1.5重量倍である。本発明の調味料、生米及び炊飯用水を混合する順序は特に制限されず、生米を炊飯用水に浸漬した後、本発明の調味料を添加してもよいし、炊飯用水と本発明の調味料とを混合した後、生米を添加して浸漬させてもよい。或いは、生米と本発明の調味料を混合した後に、炊飯用水に浸漬させてもよい。
【0031】
本発明の米飯の製造方法によれば、おこわ様のもちもちとした食感を有する米飯を提供できる。
【0032】
本発明の米飯の製造方法によって得られた米飯は、そのまま食し得るが、更なる調理、加工、処理等を行った上で食事に供してもよい。
【0033】
3.米飯の食感改質方法
本発明は、生米を、本発明の調味料の存在下で炊飯することを含む、米飯の食感改質方法も提供する。
【0034】
本発明の米飯の食感改質方法において、生米を、本発明の調味料の存在下で炊飯する工程は、本発明の米飯の製造方法と同様に行うことができ、その好適な態様も同様である。
【0035】
本発明の米飯の食感改質方法によれば、米飯の食感を、おこわ様のもちもちとした食感に改質することができる。
【0036】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
[試験例1]
(液体調味料の調製)
下表1に示される配合で各原料を混合した後、85度まで加熱して、実施例1〜6の液体調味料を調製した。また加工デンプンを添加しなかったこと以外は実施例1〜6と同様の手順でコントロールの液体調味料を調製した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
(評価)
新潟県産こしひかり(粳米、300g)を洗米した後、炊飯用水(300g)に30分間浸漬した。次いで実施例1〜6又はコントロールの各液体調味料(100g)を添加して攪拌した後、市販の電気炊飯器(象印社製「IH炊飯ジャー極め炊き」、NP−VD10)を用い、「白米モード」で炊飯した。得られた各米飯を2名の訓練されたパネルが食し、付着性、弾力、均一性及び異風味の有無について、下記表3〜6に示される評価基準に従って評価した。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
結果を表7及び
図1に示す。
【0046】
【表7】
【0047】
表7及び
図1に示される結果から明らかなように、本発明の実施例1〜6の液体調味料を用いて炊飯された米飯は、いずれも適度な付着性と弾性とを兼ね備え、且つ、均一な硬さで炊飯されていた。中でも、実施例1及び実施例6の液体調味料を用いて炊飯された米飯は、付着性と弾性に特に優れていた。また、いずれの米飯にも異風味は感じられなかった。
これらの結果から、本発明の調味料によれば、食味を損なうことなく、おこわ様のもちもちとした食感を有する米飯を製造できることが分かった。
【0048】
[試験例2]
(液体調味料の調製)
生米に対する加工デンプンの添加量が0.25〜4重量%となるように、加工デンプンの配合量を0.75〜12重量%とした以外は、試験例1と同様の手順で、実施例7〜12の液体調味料を調製した。いずれも加工デンプンには、タピオカデンプンを原料とする加工デンプン(商品名:MT−50、製造会社:日本食品化工株式会社、加工方法:アセチル化アジピン酸架橋デンプン)を使用した。
(評価)
試験例1と同様の手順で、実施例7〜12の付着性、弾力、均一性及び異風味の有無についての評価を行った。
結果を表8及び
図2に示す。
【0049】
【表8】
【0050】
表8及び
図2に示される結果から明らかなように、本発明の実施例7〜12の液体調味料を用いて炊飯された米飯は、いずれも適度な付着性と弾性とを兼ね備え、且つ、均一な硬さで炊飯されていた。中でも、生米に対して0.25〜1.5重量%の加工デンプンが添加されて炊飯された米飯(実施例7〜9)は、好ましい付着性と弾性とを兼ね備えていた。また、いずれの米飯にも異風味は感じられなかった。
【0051】
[試験例3]
(液体調味料の調製)
加工デンプンに代えて表9に示される生デンプンを用いた以外は、試験例1と同様の手順で、実施例13〜16の液体調味料を調製した。
【0052】
【表9】
【0053】
(評価)
試験例1と同様の手順で、実施例13〜16の付着性、弾力、均一性及び異風味の有無についての評価を行った。尚、いずれの実施例も、大幅に焦げが発生したり、生煮えになったりすることなく炊飯可能であった。
結果を表10に示す。
【0054】
【表10】
【0055】
表10に示される結果から明らかなように、本発明の実施例13〜16の液体調味料を用いて炊飯された米飯は、いずれも均一な硬さで炊飯され、異風味は感じられなかった。中でも、実施例15の液体調味料を用いて炊飯された米飯は、付着性と弾性に特に優れていた。
【0056】
[参考例]
加工デンプンを添加しなかったこと以外は試験例1と同様の手順で、デンプン類未添加の液体調味料を調製した。
新潟県産こしひかり(粳米、300g)を洗米した後、炊飯用水(300g)に30分間浸漬した。次いで、デンプン類未添加の液体調味料(100g)を添加した後、粉末状の加工デンプン(商品名:MT−50、製造会社:日本食品化工株式会社、原料デンプン:タピオカデンプン、加工方法:アセチル化アジピン酸架橋デンプン)を添加した。十分に攪拌した後、市販の電気炊飯器(象印社製「IH炊飯ジャー極め炊き」、NP−VD10)を用い、「白米モード」で炊飯した。得られた米飯を2名の訓練されたパネルが食し、付着性、弾力及び異風味の有無について、試験例1と同様の評価基準に従って評価した。
結果を表11及び
図3に示す。
【0057】
【表11】
【0058】
表11及び
図3に示される結果から明らかなように、加工デンプンが粉末状で添加されて炊飯された米飯は、デンプン臭が感じられ、風味が損なわれていた。また付着性が強く、付着性と弾性のバランスに欠け、食したときに違和感があった。かかる違和感は、生米に対する粉末状の加工デンプンの添加量を1.50重量%とした場合にも感じられた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、食味を損なうことなく、おこわ様のもちもちとした、付着性と弾性を適度に備えた食感を有する米飯を製造することができる。
また本発明は、おこわ様のもちもちとした食感を有する米飯の製造方法も提供する。
また本発明は、米飯の食感をおこわ様のもちもちとした食感に改質する、米飯の食感改質方法も提供する。