(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838283
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】タイヤ劣化判定具及びそれを用いたタイヤ更生可否判定方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20210222BHJP
B29D 30/54 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B29D30/54
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-86807(P2016-86807)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-196917(P2017-196917A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 光志
【審査官】
松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−049928(JP,A)
【文献】
特開2011−088558(JP,A)
【文献】
特開2014−046879(JP,A)
【文献】
特開2012−116417(JP,A)
【文献】
特表2002−502765(JP,A)
【文献】
特開2007−326536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
B29D 30/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤの内面に対して着脱自在に装着されるゴム組成物の成形体からなるタイヤ劣化判定具であって、前記空気入りタイヤの劣化に伴って物性、色又は形状からなる少なくとも1つのパラメータが変化する特性を有すると共に、個体毎に識別可能な判定具識別情報を具備することを特徴とするタイヤ劣化判定具。
【請求項2】
無線による読み取り及び書き込みが可能であって前記判定具識別情報を保持する判定具用の電子識別装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ劣化判定具。
【請求項3】
ゴム組成物の成形体からなるタイヤ劣化判定具であって、空気入りタイヤの劣化に伴って物性、色又は形状からなる少なくとも1つのパラメータが変化する特性を有すると共に、個体毎に識別可能な判定具識別情報を具備するタイヤ劣化判定具を、個体毎に識別可能なタイヤ識別情報を具備する空気入りタイヤの内面に対して着脱自在に装着し、前記タイヤ劣化判定具を用いて前記空気入りタイヤの更生可否を判定する方法であって、前記タイヤ識別情報と前記判定具識別情報を互いに関連付けて記録し、前記タイヤ劣化判定具をタイヤ更生時に前記空気入りタイヤの内面から取り外し、その取り外されたタイヤ劣化判定具のパラメータを測定し、該パラメータの測定値に基づいて前記タイヤ劣化判定具に対応する前記空気入りタイヤが更生可能であるか否かを判定することを特徴とするタイヤ更生可否判定方法。
【請求項4】
前記空気入りタイヤは無線による読み取り及び書き込みが可能であって前記タイヤ識別情報を保持するタイヤ用の電子識別装置を備えており、前記空気入りタイヤの更生可否に加えて、前記パラメータの測定値に基づく劣化レベルを前記タイヤ用の電子識別装置に書き込むことを特徴とする請求項3に記載のタイヤ更生可否判定方法。
【請求項5】
前記タイヤ劣化判定具は無線による読み取り及び書き込みが可能であって前記判定具識別情報を保持する判定具用の電子識別装置を備えており、前記空気入りタイヤの更生可否に加えて、前記パラメータの測定値に基づく劣化レベルを前記判定具用の電子識別装置に書き込むことを特徴とする請求項3に記載のタイヤ更生可否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ劣化判定具及びそれを用いたタイヤ更生可否判定方法に関し、更に詳しくは、複数本の空気入りタイヤの判定結果を取り違えることなく判定作業を効率良く行うことを可能にしたタイヤ劣化判定具及びそれを用いたタイヤ更生可否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効活用及び省エネルギーの観点から、空気入りタイヤのトレッド部が摩耗して使用不能の状態になった後、その空気入りタイヤを再生して得られる更生タイヤが普及している。特に、トラックやバスに使用される重荷重用空気入りタイヤについては、更生タイヤが広く使用されている。
【0003】
使用済みの空気入りタイヤを更生する場合、トレッドゴムが研削された台タイヤを作製し、その台タイヤに対して新たなトレッドゴムを被覆する。そのような更生作業を行うにあたって、台タイヤの残存耐久性を確認するために、シェアログラフィ検査により内部セパレーションの有無を確認したり、外観検査により外傷の有無を確認したりすることが行われている。しかしながら、このような検査では空気入りタイヤを構成するゴム組成物の劣化度合いを十分に評価することができない。
【0004】
これに対して、硫黄架橋可能なジエン系ゴム組成物からなる芯体ゴムがタイヤのインナーライナー層と同等又はそれ以上の酸素透過係数を有するカバーゴムで被覆されたタイヤ劣化判定具をタイヤ内面に設置し、そのタイヤ劣化判定具の屈曲試験の結果に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを判定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このようなタイヤ劣化判定具を用いて空気入りタイヤの更生可否を判定する場合、タイヤ劣化判定具をタイヤ内面から取り外した後、その取り外されたタイヤ劣化判定具に対して試験を行う必要があるため、多数本の空気入りタイヤの更生可否を判定するにあたって、その判定結果を取り違えてしまう恐れがある。また、空気入りタイヤからタイヤ劣化判定具を取り外す度に、そのタイヤ劣化判定具の試験を行うことも可能であるが、そのような手法では判定作業を効率良く行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−327469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複数本の空気入りタイヤの判定結果を取り違えることなく判定作業を効率良く行うことを可能にしたタイヤ劣化判定具及びそれを用いたタイヤ更生可否判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ劣化判定具は、空気入りタイヤの内面に対して着脱自在に装着される
ゴム組成物の成形体からなるタイヤ劣化判定具であって、前記空気入りタイヤの劣化に伴って
物性、色又は形状からなる少なくとも1つのパラメータが変化する特性を有すると共に、個体毎に識別可能な判定具識別情報を具備することを特徴とするものである。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明のタイヤ更生可否判定方法は、
ゴム組成物の成形体からなるタイヤ劣化判定具であって、空気入りタイヤの劣化に伴って
物性、色又は形状からなる少なくとも1つのパラメータが変化する特性を有すると共に、個体毎に識別可能な判定具識別情報を具備するタイヤ劣化判定具を、個体毎に識別可能なタイヤ識別情報を具備する空気入りタイヤの内面に対して着脱自在に装着し、前記タイヤ劣化判定具を用いて前記空気入りタイヤの更生可否を判定する方法であって、前記タイヤ識別情報と前記判定具識別情報を互いに関連付けて記録し、前記タイヤ劣化判定具をタイヤ更生時に前記空気入りタイヤの内面から取り外し、その取り外されたタイヤ劣化判定具のパラメータを測定し、該パラメータの測定値に基づいて前記タイヤ劣化判定具に対応する前記空気入りタイヤが更生可能であるか否かを判定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタイヤ更生可否判定方法では、空気入りタイヤの劣化に伴って少なくとも1つのパラメータが変化する特性を有すると共に、個体毎に識別可能な判定具識別情報を具備するタイヤ劣化判定具を、個体毎に識別可能なタイヤ識別情報を具備する空気入りタイヤの内面に対して着脱自在に装着し、タイヤ劣化判定具を用いて空気入りタイヤの更生可否を判定するにあたって、タイヤ識別情報と判定具識別情報を互いに関連付けて記録し、タイヤ劣化判定具をタイヤ更生時に空気入りタイヤの内面から取り外し、その取り外されたタイヤ劣化判定具のパラメータを測定し、該パラメータの測定値に基づいてタイヤ劣化判定具に対応する空気入りタイヤが更生可能であるか否かを判定するので、複数本の空気入りタイヤの判定結果を取り違えることなく判定作業を効率良く行うことができる。また、本発明のタイヤ劣化判定具は、空気入りタイヤの劣化に伴って少なくとも1つのパラメータが変化する特性を有すると共に、個体毎に識別可能な判定具識別情報を具備しているので、上述のようなタイヤ更生可否判定方法を実施することを可能にする。
【0011】
本発明において、空気入りタイヤは無線による読み取り及び書き込みが可能であってタイヤ識別情報を保持するタイヤ用の電子識別装置を備えていることが好ましい。そして、本発明のタイヤ更生可否判定方法においては、空気入りタイヤの更生可否に加えて、パラメータの測定値に基づく劣化レベルをタイヤ用の電子識別装置に書き込むことが好ましい。この場合、タイヤ用の電子識別装置に書き込まれた劣化レベルを随時確認することが可能であるので、例えば、更生後の空気入りタイヤを走行環境の厳しさ毎に振り分けることが可能となり、更生後の空気入りタイヤを無駄なく再利用し、コスト削減や省資源化を実現することができる。
【0012】
また、本発明において、タイヤ劣化判定具は無線による読み取り及び書き込みが可能であって判定具識別情報を保持する判定具用の電子識別装置を備えていることが好ましい。そして、本発明のタイヤ更生可否判定方法においては、空気入りタイヤの更生可否に加えて、パラメータの測定値に基づく劣化レベルを判定具用の電子識別装置に書き込むことが好ましい。この場合、判定具用の電子識別装置に書き込まれた劣化レベルを随時確認することが可能であるので、例えば、更生後の空気入りタイヤを走行環境の厳しさ毎に振り分けることが可能となり、更生後の空気入りタイヤを無駄なく再利用し、コスト削減や省資源化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のタイヤ更生可否判定方法が実施される重荷重用の空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明のタイヤ更生可否判定方法が実施される重荷重用の空気入りタイヤを示すものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤTは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0016】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0017】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜60°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。
【0018】
上記空気入りタイヤTにおいて、タイヤ気室に面するタイヤ内面Sにはタイヤ用の電子識別装置(RFID)8が貼り付けられている。
図1では電子識別装置8がビード部3の内面に配置されているが、その位置が特に限定されるものではない。タイヤ用の電子識別装置8は、無線による読み取り及び書き込みが可能であり、個体毎に識別可能なタイヤ識別情報を保持している。
【0019】
また、上記空気入りタイヤTにおいて、タイヤ内面Sにはタイヤ劣化判定具10が装着されている。
図1ではタイヤ劣化判定具10がトレッド部1の内面に配置されているが、その位置が特に限定されるものではない。タイヤ劣化判定具10は、例えば、直方体をなすゴム組成物の成形体11から構成されている。
【0020】
成形体11を構成するゴム組成物としては、例えば、硫黄架橋可能なジエン系ゴム組成物を使用することができる。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等を挙げることができる。但し、成形体11に使用されるゴムは上記ジエン系ゴムに限定されるものではなく、そのゴムには硫黄、加硫促進剤、老化防止剤、カーボンブラック等の充填剤、オイル等の軟化剤、樹脂、ワックス、コバルト塩等の金属塩、ステアリン酸、亜鉛華等の添加物を適宜配合することができる。特に、タイヤの酸化劣化を判定するにあたって、酸化劣化を生じ易い天然ゴム系のゴム組成物が好ましく、硫黄、更には金属塩を含有するものが好ましい。
【0021】
タイヤ劣化判定具10は、空気入りタイヤTの劣化に伴って少なくとも1つのパラメータが変化する特性を有している。ここで言うパラメータとは、タイヤ劣化判定具10の物性、色、形状等である。物性としては、重量(比重)、酸素吸着量、電気抵抗、硬度、破断特性、粘弾特性等を挙げることができる。タイヤ劣化判定具10が酸化により劣化すると、その劣化に伴ってパラメータが変化するので、そのパラメータの新品時からの変化量に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを判定することができる。
【0022】
タイヤ劣化判定具10はシート状の粘着層12を介してタイヤ内面Sに対して着脱自在に装着されている。このような粘着層12としては、両面テープや粘着剤等を使用することができる。また、タイヤ劣化判定具10を構成する成形体11の表面には判定具用の電子識別装置(RFID)18が貼り付けられている。この電子識別装置18は、無線による読み取り及び書き込みが可能であり、個体毎に識別可能な判定具識別情報を保持している。
【0023】
以下、上述したタイヤ劣化判定具10を用いたタイヤ更生可否判定方法について詳細に説明する。先ず、上述のように空気入りタイヤTの劣化に伴って少なくとも1つのパラメータが変化する特性を有すると共に、個体毎に識別可能な判定具識別情報を具備するタイヤ劣化判定具10を、個体毎に識別可能なタイヤ識別情報を具備する空気入りタイヤTの内面に対して着脱自在に装着した状態にする。そして、空気入りタイヤTの更生作業を行う時点又はそれ以前の時点において、タイヤ用の電子識別装置18から読み取られたタイヤ識別情報と判定具用の電子識別装置8から読み取られた判定具識別情報を互いに関連付けて記録する。これにより、タイヤ識別情報と判定具識別情報に基づいて空気入りタイヤTとタイヤ劣化判定具10との照合が可能となる。
【0024】
空気入りタイヤTの更生作業を行う際には、タイヤ劣化判定具10を空気入りタイヤTの内面Sから取り外し、その取り外されたタイヤ劣化判定具10のパラメータを測定し、そのパラメータの測定値に基づいてタイヤ劣化判定具10に対応する空気入りタイヤTが更生可能であるか否かを判定する。
【0025】
例えば、更生すべき5本の空気入りタイヤTのタイヤ識別情報がT001〜T005であり、これら空気入りタイヤTに装着されたタイヤ劣化判定具10の判定具識別情報がX001〜X005であるとき、T001:X001、T002:X002、T003:X003、T004:X004、T005:X005のようにタイヤ識別情報T001〜T005と判定具識別情報X001〜X005を互いに関連付けて記録する。例えば、判定具識別情報がX001、X002、X00
4、X00
5であるタイヤ劣化判定具10のパラメータの変化レベルが閾値よりも小さく、判定具識別情報がX00
3であるタイヤ劣化判定具のパラメータの変化レベルが閾値よりも大きい場合、上述の関連付けに基づいて、タイヤ識別情報がT001、T002、T00
4、T00
5である空気入りタイヤTは更生可能であると判定し、タイヤ識別情報がT00
3である空気入りタイヤTは更生不可能であると判定する。
【0026】
上述の手法によれば、更生すべき空気入りタイヤTが大量に回収され、全ての空気入りタイヤTからタイヤ劣化判定具10を取り外し、得られた大量のタイヤ劣化判定具10を試験施設に搬入し、その試験施設で劣化状態を纏めて試験するという一連の流れ作業を行う場合においても、空気入りタイヤTとタイヤ劣化判定具10との照合が可能であるので、複数本の空気入りタイヤTの判定結果を取り違えることなく判定作業を効率良く行うことができる。
【0027】
上述のタイヤ更生可否判定方法を実施するにあたって、空気入りタイヤTは無線による読み取り及び書き込みが可能であってタイヤ識別情報を保持するタイヤ用の電子識別装置8を備えることが望ましい。そして、タイヤ更生可否判定方法においては、空気入りタイヤTの更生可否に加えて、パラメータの測定値に基づく劣化レベルをタイヤ用の電子識別装置8に書き込むと良い。この場合、タイヤ使用者やタイヤ販売会社が管理するデータを参照することなく、タイヤ用の電子識別装置8に書き込まれた劣化レベルを随時確認することが可能である。そのため、例えば、更生後の空気入りタイヤTを走行環境の厳しさ毎に振り分けることが可能となり、更生後の空気入りタイヤTを無駄なく再利用し、コスト削減や省資源化を実現することができる。
【0028】
また、上述のタイヤ更生可否判定方法を実施するにあたって、タイヤ劣化判定具10は無線による読み取り及び書き込みが可能であって判定具識別情報を保持する判定具用の電子識別装置18を備えることが望ましい。そして、タイヤ更生可否判定方法においては、空気入りタイヤTの更生可否に加えて、パラメータの測定値に基づく劣化レベルを判定具用の電子識別装置18に書き込むと良い。この場合、タイヤ使用者やタイヤ販売会社が管理するデータを参照することなく、判定具用の電子識別装置18に書き込まれた劣化レベルを随時確認することが可能である。そのため、例えば、更生後の空気入りタイヤTを走行環境の厳しさ毎に振り分けることが可能となり、更生後の空気入りタイヤTを無駄なく再利用し、コスト削減や省資源化を実現することができる。但し、判定具用の電子識別装置18に劣化レベルを書き込む作業は、タイヤ劣化判定具10の少なくとも一部がタイヤ更生可否判定後にタイヤ内面Sに戻されて劣化判定を継続する場合のみ有効である。
【0029】
タイヤ用の電子識別装置8又は判定具用の電子識別装置18に劣化レベルが書き込まれた場合、具体的には、以下のような運用が可能である。例えば、5段階の劣化レベルD1,D2,D3,D4,D5を設定し、D1からD5に向かってタイヤ状態が順次悪化することを意味するとき、劣化レベルD1の空気入りタイヤTは過酷な走行環境でも再利用可能であり、劣化レベルD5の空気入りタイヤTは負荷が少ない走行環境であれば再利用可能である。例えば、5段階の走行環境R1,R2,R3,R4,R5を設定し、R1からR5に向かって過酷度合いが低くなることを意味するとき、劣化レベルD1と走行環境R1とを組み合わせ、劣化レベルD2と走行環境R2とを組み合わせ、劣化レベルD3と走行環境R3とを組み合わせ、劣化レベルD4と走行環境R4とを組み合わせ、劣化レベルD5と走行環境R5とを組み合わせることにより、全ての空気入りタイヤTを有効に活用することができる。
【0030】
上述した実施形態では、タイヤ用の電子識別装置8がタイヤ識別情報を保持し、判定具用の電子識別装置18が判定具識別情報を保持する構成を採用した場合について説明したが、本発明では空気入りタイヤTがタイヤ識別情報を具備する形態及びタイヤ劣化判定具10が判定具識別情報を具備する形態は特に限定されるものではない。例えば、空気入りタイヤT及びタイヤ劣化判定具10に対してそれぞれタイヤ識別情報及び判定具識別情報を印刷したり、或いは、タイヤ識別情報及び判定具識別情報を表示するラベルを貼り付けたりすることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 タイヤ用の電子識別装置
10 タイヤ劣化判定具
11 成形体
12 粘着層
18 判定具用の電子識別装置
S タイヤ内面
T 空気入りタイヤ