【実施例】
【0022】
  以下に、本発明の実験例について説明する。
【0023】
  図3(a)は、高周波電源20の周波数=13.56MHz、高周波電源20の出力インピーダンス=50Ω、第1コンデンサC1の容量C
1=1500pF、容量可変の第2コンデンサC2の容量C
2=25〜250pF、コイルLのインダクタンスL=1.8μHとし、各種食材の解凍をおこない、反射電力検知部による反射電力が常に最小になるように、第2コンデンサC2の容量調整をおこなったときの値(容量%)を示している。
  第3コンデンサC3を接続しない場合、解凍開始でのC2容量%は食材の種類や個数によってそれぞれ異なっており、解凍終了でのC2容量%は減少方向に大きく変化している。すなわち、第2コンデンサC2の容量可変幅を大きくしなければ、インピーダンス整合をおこなうことは困難であり、整合器40の簡素化、小型化を図ることはできない。
  
図3(b)は、上記回路構成に加えて電極30と並列に容量400pFの第3コンデンサC3を接続し、各種食材の解凍をおこない、反射電力検知部による反射電力が常に最小になるように、第2コンデンサC2の容量調整をおこなったときの値(容量%)を示したものである。第2コンデンサC2の容量%を大きく変化させることなく、各種食材の解凍が可能であり、第2コンデンサC2の容量可変幅を小さくした整合器40の簡素化、小型化を図ることができる。
【0024】
  図4は、高周波電源20の周波数=13.56MHz、高周波電源20の出力インピーダンス=50Ω、第2コンデンサC2の容量C
2=95pF、コイルLのインダクタンスL=1.8μH、容量可変の第1コンデンサC1の容量C
1=150〜1500pF、第3コンデンサC3の容量C
3=400pFとし、各種食材の解凍をおこない、反射電力検知部による反射電力が常に最小になるように、第1コンデンサC1の容量調整をおこなったときのC1の値(容量%)を示している。第3コンデンサC3を接続することにより、第1コンデンサC1の容量可変幅を小さく設定することが可能であり、整合器40の簡素化、小型化を図ることができる。
【0025】
  図5は、
図1(a)の回路構成において、高周波電源20と整合器40の合成インピーダンスをZとし、Z=R/(1+ω
2R
2C
12)+j{(ωL−1/ωC
2)−ωR
2C
1/(1+ω
2R
2C
12)}の複素共役Z’で得られるインピーダンス整合範囲を示している。
  ただし、角周波数ω=13.56MHz、高周波電源20の出力インピーダンスR=50Ω、コイルLのリアクタンスL=1.8μH、容量可変の第1コンデンサC1の容量C
1=150〜1500pF、容量可変の第2コンデンサC2の容量C
2=25〜250pFとする。
  Z’で得られるインピーダンス整合範囲は、高周波電源20の出力インピーダンスR=50Ω(規格化インピーダンス1)より小さい範囲に限定されており、それより大きな抵抗負荷に対してはインピーダンス整合不能である。
【0026】
  図6は、
図2の回路構成において、高周波電源20の出力インピーダンスと整合器40からなる合成インピーダンスをZとすると、Z=1/[{(1/R+jωC
1)
−1+j(ωL−1/ωC
2)}
−1+jωC
3}]の複素共役Z’で得られるインピーダンス整合範囲を示している。
  ただし、角周波数ω=13.56MHz、電源の出力インピーダンスR=50Ω、コイルLのリアクタンスL=1.8μH、容量可変の第1コンデンサC1の容量C
1=150〜1500pF、容量可変の第2コンデンサC2の容量C
2=25〜250pF、第3コンデンサC3の容量C
3=50pF、200pF、400pF、600pFとする。
  電極30と並列に第3コンデンサC3を接続し、その値を増加することによって、前述した
図5に示す例のZ’で得られるインピーダンス整合範囲は、反時計周りに回転し、Z’の抵抗は電源の出力インピーダンスR=50Ω(規格化インピーダンス1)より大きい範囲に拡大した。リアクタンスの範囲は、第3コンデンサC3の容量C
3=200pF、400pFでは正より負が大きく、C
3=600pFでは正より負が小さくなった。このように、電極30と並列に第3コンデンサC3を接続することによって、冷凍食材の解凍に特化した整合範囲を得ることができる。
【0027】
  図7は、高周波電源20の周波数=13.56MHz、高周波電源20の出力インピーダンス=50Ω、コイルLのインダクタンスL=1.8μH、バリコン第1コンデンサC1の容量C
1=150〜1500pF、バリコン第2コンデンサC2の容量C
2=25〜250pF、第3コンデンサC3の容量C
3=200pF、400pFとし、−40℃の冷凍シャインマスカット15粒(厚さ28mm)を出力50W、解凍時間15分で解凍をおこない、反射電力検知部による反射電力が常に最小になるように、バリコンC1、C2のコンデンサ容量をサーボモーターで逐次自動調整したときのC
1、C
2の値(容量%)を示している。
  第3コンデンサC3が接続されていない状態では、解凍に伴いバリコンC1、C2の値は大きく減少変化しているが、第3コンデンサC3を接続することによりバリコンC1、C2の変化は抑制され、C
3=200pFよりC
3=400pFの方がバリコンC1、C2の変化抑制の効果は大きかった。
【0028】
  図8は、高周波電源20の周波数=13.56MHz、高周波電源20の出力インピーダンス=50Ω、コイルLのインダクタンスL=1.8μH、バリコン第1コンデンサC1の容量C
1=150〜1500pF、バリコン第2コンデンサC2の容量C
2=25〜250pF、第3コンデンサC3の容量C
3=200pF、400pFとし、−40℃の冷凍マンゴー(厚さ85mm)を出力200W、解凍時間15分で解凍をおこない、反射電力検知部による反射電力が常に最小になるように、バリコンC1、C2のコンデンサ容量をサーボモーターで逐次自動調整したときのC
1、C
2の値(容量%)を示している。
  第3コンデンサC3が接続されていない状態では、解凍に伴いバリコンC1、C2の値は大きく減少変化しているが、C
3=200pFを接続した状態では、バリコンC1、C2の変化は抑制されている。C
3=400pFを接続した状態では、自動インピーダンス整合できなかった。
【0029】
  以上より、半導体式高周波誘電加熱装置10は、整合器40に電極30と並列に第3コンデンサC3を接続することによって、食材解凍に伴う電極インピーダンスの変化を抑制し、整合器40の簡素化、小型化を図りながらインピーダンス整合が可能であることが確認された。
  このとき、第3コンデンサC3のコンデンサ容量の値が大きい方が、電極インピーダンスの変化抑制に効果的であるが、冷凍食材が厚肉の場合、整合が困難になることもあるため、食材に応じて、最適なC3の値を設定することが好ましい。
【0030】
  以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0031】
  例えば、上述した実施形態では、半導体式高周波誘電加熱装置が冷凍食材を高周波誘電加熱によって解凍するものとして説明したが、食材以外に血液や動植物といった生体などの解凍であっても同様の効果を得ることは可能であり、また、半導体式高周波誘電加熱装置の用途は、被加熱物を加熱するものであればよく、冷凍食材の解凍に限定されない。
【0032】
  また、上述した実施形態に加えて、整合器のインピーダンス情報(例えば、第1コンデンサの状態など)を監視モニタなどに出力するインピーダンス情報出力部を設けてもよい。この場合、整合器のインピーダンス情報出力部から食材インピーダンスの正確な情報を簡単に得ることが可能になり、対象とする被加熱物に絞り込んだ整合器のパラメータを設定したり、その結果に基づき整合器の簡素化を図ることができる。