(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態の栽培装置1及びその栽培装置1と架台5とを含む栽培システム3について説明する。
図1は本発明の第1実施形態の栽培装置1の幅方向の断面図である。
図2は、栽培装置1の長手方向の断面図である。
図3は栽培装置1の上面図である。
図4は栽培装置1と、その栽培装置1に取り付けられた架台5とを含む栽培システム3の斜視図である。
図5は、栽培装置1とプランタ40との分解斜視図である。
【0013】
栽培装置1は、
図1〜
図3に示すように、内部にプランタ40を設置可能な外装容器10と、外装容器10の内部に配置される送液ポンプ30と、送液ポンプ30により送り出される培養液を、外装容器10に設置されたプランタ40に散水する散水ラインである散水パイプ31と、を備える。
【0014】
(プランタ40)
まず、栽培装置1の内部に配置可能なプランタ40について説明する。プランタ40の形状はこれに限定されるわけではないが、上部が開口し、下部になるに従い上部よりも若干寸法が小さくなった箱型の本体部41と、本体部41の上縁部から外側に向かって湾曲したフランジ部42とを有する。
プランタ40は、内部に培土を収容して透水性を有する培地46を形成する。プランタ40の底面44には開口43が設けられ、また本体部41の上部の側面には、排水穴45が設けられている。
なお、このプランタ40としては、上記構成を有する市販のプランタを用いることができる。
【0015】
(外装容器10)
栽培装置1の外装容器10は、
図3に示すように、互いに対向する一対の横壁部11と、互いに対向する一対の端壁部12と、底部13とを有する、上部が開口した箱型部材である。実施形態では横壁部11は端壁部12より長尺となっている。
【0016】
(横壁部11)
横壁部11は、内側領域11aと外側領域11bとを有する。
図1に示すように、内側領域11aの高さは外側領域11bよりも低く、内側領域11aの上端には、段部11cが形成されている。
図1に示すように、対向する横壁部11の間隔(内側領域11aの内面同士の間隔)x1は、プランタ40のフランジ部42が段部11cに載置されたときの、プランタ40における、段部11cと同じ高さの位置での幅x2より大きく、フランジ部42の最大幅x3より小さい。
外側領域11bの内面同士の間隔x4は、フランジ部42の最大幅x3より大きい。
【0017】
内側領域11aの段部11cから底部13の上面までの長さy1は、プランタ40における、フランジ部42の下端から底面44までの長さy2より長い。
【0018】
したがって、プランタ40を外装容器10の内部に配置すると、プランタ40のフランジ部42は段部11cに載置され、プランタ40の底面44は外装容器10の底部13の上面に対して、所定距離(y1−y2)離間した状態で保持される。
【0019】
(端壁部12)
図2に示すように、端壁部12も、内側領域12aと外側領域12bとを有する。内側領域12aの高さは外側領域12bよりも低く、内側領域12aの上端は、段部12cが形成されている。端壁部12の内側領域12aの高さは、横壁部11の内側領域11aの高さと同じである。端壁部12の外側領域12bの高さは、横壁部11の外側領域11bの高さと同じである。
【0020】
図2及び
図3に示すように、対向する横壁部11の間には、一方の端壁部12から順に、第1中間壁部14A、第2中間壁部14Bが架け渡されている。以下、この一方の端壁部12が設けられている側を後方、他方の側を前方という。そして、この一方の端壁部12を後端壁部12Aといい、他方の端壁部12を前端壁部12Bという。なお、特に区別する必要ない場合、合わせて中間壁部14という。
端壁部12Aには貫通穴12dが設けられている。この貫通穴12dは、培地収容部21の底面44に設けられた開口43が、培養液貯留部20に貯留される培養液に触れることがないような高さに、設けられている。
【0021】
(中間壁部14)
第1中間壁部14A及び第2中間壁部14Bは、
図5に示すように、横壁部11に対して着脱可能である。
図2に示すように、横壁部11に対して装着した状態で、第1中間壁部14Aの上端の高さは、段部11c、12cの高さと同じである。
第2中間壁部14Bの上端の高さは、
図2に示すように前方の部分以外、段部11c、12cの高さと同じである。
【0022】
(水位計19)
図6は水位計19を含む第1中間壁部14Aの断面図である。第1中間壁部14Aには高さ方向に延びる貫通孔15が設けられている。貫通孔15には筒部材16が挿通されている。筒部材16にはフロート18が取り付けられた水位計19が挿入されている。
水位計19は、外装容器10の内部の培養液貯留部20に貯留されている培養液の水位が変わることにより、筒部材16の上端より上部に延びる高さhが変化する。この高さhを観察することにより、使用者は、培養液貯留部20中の培養液の水位を検知することができる。
【0023】
水位計19の外面の上部には、目盛が付されている。目盛には、図中「1cm」、「5cm」等で示す培養液の水位を示す値が付されている。そして、第1中間壁部14Aから上部に突出して観察可能な部分の一番下の値は、培養液貯留部20に貯留されている培養液の水位を示す。
図6では、「15cm」であるので、培養液貯留部20に貯留されている培養液の水位は15cmである。なお、このとき目盛が示す値、例えば「15cm」が観察時に見えるように、この値は目盛よりも上に記載されている。
さらに、本実施形態では、その水位を示す数値の横に、例えば、培養液がなくなると思われる日までの日数も記載されている。
図6における、部分拡大図に示す、「1日」、「3日」という記載である。
【0024】
中間壁部14の下端は、底部13の上面まで延びていない。すなわち、中間壁部14の下端と底部13の上面との間には空間が設けられ、この空間は、溶液が貯留される培養液貯留部20となる。
一方、外装容器10の内部空間における培養液貯留部20の上部は、培地収容部21となる。培地収容部21は、プランタ40が配置される領域であり、第1プランタ配置領域21Aと、第2プランタ配置領域21Bとを含む。
【0025】
(第1プランタ配置領域21A)
後端壁部12Aと第1中間壁部14Aとの間は、第1プランタ配置領域21Aである。
第1プランタ配置領域21Aの長手方向の長さ(後端壁部12Aの内側領域12aの内面と、その内面と対向する第1中間壁部14Aの面との間の距離)z1Aは、フランジ部42が段部11c、12cに載置されたときの、プランタ40における段部11c、12cと同じ高さの部分の長手方向の長さz2Aより大きい。
【0026】
(第2プランタ配置領域21B)
第1中間壁部14Aと第2中間壁部14B部との間は、第2プランタ配置領域21Bである。
第2プランタ配置領域21Bの長手方向の長さ(第1中間壁部14Aと第2中間壁部14B部との対向面間の距離)z1Bも、フランジ部42が中間壁部14に載置されたときの、プランタ40における段部11c、12cと同じ高さの部分の長手方向の長さz2Bより大きい。
【0027】
また、横壁部11における後端壁部12Aと第1中間壁部14Aとの間の中間位置と、第1中間壁部14Aと第2中間壁部14Bとの間の中間位置とには、段部11cよりも低く、且つ段部11cよりも幅の広い段部である着脱用空間部11dが設けられている。
【0028】
本実施形態によると、後端壁部12と第1中間壁部14Aとの間である第1プランタ配置領域21A、第1中間壁部14Aと第2中間壁部14B部との間である第2プランタ配置領域21Bのそれぞれにプランタ40が配置可能である。
なお、本実施形態では、このように外装容器10の内部に、プランタ40を2つ収納可能となっている。ただしこれに限定されず、内部に収納可能なプランタ40の数は1でもよく、また、2より多くてもよい。
【0029】
(ポンプ配置領域22)
第2中間壁部14Bと前端壁部12との間は、ポンプ配置領域22である。
底部13は、所定の厚みを有する板状部材であり、ポンプ配置領域22における底部13には、上面の高さが他の部分よりも低くなった凹部13aが形成されている。その凹部13aに送液ポンプ30が配置されている。
この凹部13aにより、送液ポンプ30の前後方向の移動が制限され、運搬時等に送液ポンプ30が、培養液貯留部20における第2プランタ配置領域21B及び第1プランタ配置領域21Aの下部まで移動することが防止される。
また、凹部13aが設けられていることにより、凹部13aにおける水位(水深)は他の部分よりも高くなり、送液ポンプ30の吸い込み可能な水位を確保することができ、培養液貯留部20に貯留されている培養液を滞留させることなく使用することができる。ゆえに、培養液貯留部20において送液ポンプ30に対して有効な水量を確保しつつ、コンパクト化が可能となる。
【0030】
(底部13)
なお、底部13の下面には、幅方向に延びる複数の溝13bが設けられている。溝13bが設けられているので、栽培装置1が野外に設置されている場合において例えば雨等が降ったときに、雨水が底部13の下に溜まることなく、溝13bより流れ出ることができる。また、栽培装置1が設置されている床面の清掃を行う場合等において溝13bに水を流すことができる。
【0031】
(送液ポンプ30)
ポンプ配置領域には、送液ポンプ30が配置されている。使用される送液ポンプ30は、例えば水陸両用のポンプで低騒音のものが好ましい。
【0032】
(散水パイプ31)
送液ポンプ30から上部に送液ラインとして散水パイプ31が延びている。散水パイプ31は、送液ポンプ30から上方に延びている。そして、第2中間壁部14B及び第1中間壁部14Aの上を通って、後端壁部12Aの直前まで延び、その端部はU字状に曲がってプランタ40の内部を向いている。
散水パイプ31の第2プランタ配置領域21B,第1プランタ配置領域21Aの上を通る部分の下部には、複数の散水穴31aが設けられている。
【0033】
(架台5)
図4に示すように、実施形態の栽培装置1の外周には架台5が装着可能であり、栽培装置1と架台5とで栽培システム3を構成する。
架台5は、栽培装置1によって栽培される、例えば蔓性の植物を誘引するためのものである。
架台5は、栽培装置1の長手方向の前後の端部に配置されて上下に延びる2本の支持柱51を備える。支持柱51は、それぞれ、上部支持柱51Aと下部支持柱51Bとに分離可能で、下部支持柱51Bに対して上部支持柱51Aが着脱可能となっている。
架台5は、外装容器10の外周に取り付けられる装着部5Bと、外装容器10の上部に配置される誘引部5Aとを備える。
このように栽培装置1と架台5が一体化して栽培システム3を構成しているので、栽培装置1か架台5の底面にキャスター等の可搬装置を装着可能で、植物を誘引部5Aに繁茂したまま緑化面を移動することができる。
【0034】
誘引部5Aは、上部支持柱51Aと、栽培装置1よりも上部において、2本の上部支持柱51Aの間を長手方向に延びる上部横柱52aと下部横柱52bとを備える。
さらに、上部横柱52aと下部横柱52bとを挟んで幅方向の一方と他方とに交互に配置された上下に延びる複数の誘引柱53と、交互に配置されている誘引柱53を互いに連結し、横柱と交差するように配置されている補助部材54とを備える。
【0035】
装着部5Bは、外装容器10の下部の外周に配置された外枠部55と、下部支持柱51Bと、この下部支持柱51Bの下部において、下部支持柱51Bから斜めに延びて外枠部55に連結することにより支持柱51の直立を補強する補強部材56とを備える。
【0036】
外枠部55の中央部には、幅方向に床柱57(
図2に図示)が延びている。床柱57は、底部13の溝13bの一つを通り、両端が外枠部55に連結されている。
【0037】
また、外装容器10の端壁部12の外側には、下部支持柱51Bがはめ込み可能な架台装着凹部29が設けられている。
なお、本実施形態では、架台5の誘引部5Aを栽培装置1の上部に配置したが、これに限定されず、栽培装置の前に誘引部5Aを配置しても良い。
【0038】
(使用方法)
栽培装置1の外周に架台5の装着部5Bを装着する。栽培装置1の外装容器10の内部に培養液を入れる。なお、培養液は、この段階でなくてもよく、後に入れてもよい。
【0039】
プランタ40を外装容器10の第1プランタ配置領域21A及び第2プランタ配置領域21Bに配置する。プランタ40には、栽培装置1に配置する前後のいずれでもよいが培養土が入っており、その培養土には植物が植えこまれている。
【0040】
プランタ40を外装容器10の第1プランタ配置領域21A及び第2プランタ配置領域21Bに配置する際、例えば1つめのプランタ40のフランジ部42の長手方向の中央部を持つ。そして、第1プランタ配置領域21A内に配置する。
このとき、着脱用空間部11dが、設けられているため、フランジ部42が段部11c、12c及び第1中間壁部14Aに載置されるまで、プランタ40を手で保持していることが可能であり、装着が容易である。
同様に、2つ目のプランタ40を配置する際も同様である。
【0041】
プランタ40を配置すると、プランタ40の底部13は外装容器10の底部13に対して、所定距離(y1−y2)離間した状態で保持される。
【0042】
架台5の誘引部5Aを装着部5Bに取り付ける。外装容器10の内部に培養液が入った状態で送液ポンプ30を作動させる。送液ポンプ30を作動させる時間は、季節等によって異なるが、例えば1日1回、5分程度とし、その時間はタイマー等で管理可能である。
送液ポンプ30が作動されると、培養液は、散水パイプ31を伝わって上部へと送出され、散水穴31aより培地へ散水される。
【0043】
(水位計の動作)
ここで、水位計19における、筒部材16の上端より上部に延びる高さhは、培養液貯留部20に貯留されている培養液の水位に対応している。
培養液が培地に散水されると、培地によって吸収されなかった培養液は、培養液貯留部20に落下する。そして、再度、送液ポンプ30によって上部に送られ、散水パイプ31を伝わって上部へと送出され、散水穴31aより培地へ散水される。
しかし、培養液は、培地によって吸収された分だけ少なくなる。このため、培養液貯留部20中の培養液の水位は下がっていく。そうすると、水位計19のフロート18の位置も下がるため、水位計19の筒部材16の上端より上部に延びる高さhが変化する。
本実施形態によると、この高さhの変化により、水位の変動を知ることができる。
さらに、本実施形態によると、水位計19における筒部材16の上端より上部に延びる部分に培養液の水位を示す値、及び培養液がなくなると予想される日までの日数も記載されている。したがって、培養液を追加する適切な時期を把握することができ、培養液がない状態での送液ポンプ30の空回りを防止することができる。
【0044】
さらに、本実施形態で水位計19は、第1プランタ配置領域21A及び第2プランタ配置領域21Bを形成するための第1中間壁部14Aに設けられた貫通孔15に挿通されている。すなわち、水位計19を取り付けるための特別な部材を設ける必要がない。
さらに、水位計19は、第1中間壁部14Aの高さ方向の全体に延びる貫通孔15に挿通されているので、水位計19の長い範囲が貫通孔15内に保持される。したがって水位計19の横方向の移動は貫通孔15の径方向に制限され、大きな移動をすることがない。
【0045】
また、培養液は、かけ流しでなく、培地により吸収されなかった培養液は、プランタの開口43より培養液貯留部20に流れ出る。培養液貯留部20に貯留された培養液は、再度、送液ポンプ30で培地へと送られるので、培養液が無駄になることがない。ゆえに、環境汚染等の可能性が少ない。
【0046】
第1中間壁部14A及び第2中間壁部14Bは、横壁部11に対して着脱可能であるので、外装容器10が汚れた場合等、横壁部11を取り外して清掃することができる。また、サイズの大きなプランタを取り付ける場合は、中間壁部14を取り外すこともできる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明した。実施形態では、外装容器10の内部に2つのプランタ40が配置される形態について説明した。しかし、これに限らず、上述したように、外装容器10の内部に収納可能なプランタ40の数は1でもよく、また、2より多くてもよい。
また、本実施形態では送液ポンプ30は外装容器10の内部に配置されているが、これに限らず、外装容器10の外部に配置してもよい、