(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バルブボディに対してバルブスプールを移動させることにより油圧式のアクチュエータに供給する作動油の流れを制御するコントロールバルブと、コントロールバルブを操作するバルブ操作機構と、を備えた作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出装置であって、
互いにバルブスプールの移動する方向に並ぶように配置され、バルブスプールと共に移動する被検出体との距離に応じた信号を出力する一対の位置検出部と、
バルブボディに対するバルブスプールの中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と、バルブボディに対するバルブスプールの移動範囲の一端における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と、に基づいて、一対の位置検出部のそれぞれの出力信号とバルブスプールの位置との第1関係式を取得する第1関係式取得手段と、
バルブボディに対するバルブスプールの中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と、バルブボディに対するバルブスプールの移動範囲の他端における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と、に基づいて、一対の位置検出部のそれぞれの出力信号とバルブスプールの位置との第2関係式を取得する第2関係式取得手段と、
バルブボディに対するバルブスプールの中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号を記憶する信号記憶手段と、
一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号に基づいてバルブスプールの位置を取得する際に、一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と信号記憶手段によって記憶したバルブスプールの中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号との関係から、取得するバルブスプールの位置が中立位置からバルブスプールの移動範囲の一端側と他端側のいずれにあるかを判断して、第1関係式取得手段で取得した第1関係式または第2関係式取得手段で取得した第2関係式を設定する関係式設定手段と、
関係式設定手段によって設定された関係式を用いて一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号に基づくバルブスプールの位置を取得するスプール位置取得手段と、を備えた
作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出装置。
バルブボディに対してバルブスプールを移動させることによりアクチュエータに供給する作動油の流れを制御するコントロールバルブと、コントロールバルブを操作するバルブ操作機構と、互いにバルブスプールの移動する方向に並ぶように配置されバルブスプールと共に移動する被検出体との距離に応じた信号を出力する一対の位置検出部と、を備え、一対の位置検出部のそれぞれの出力した信号に基づいてバルブボディに対するバルブスプールの位置を検出する作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出方法であって、
バルブボディに対するバルブスプールの中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した第1位置検出信号と、バルブボディに対するバルブスプールの移動範囲の一端における一対の位置検出部のそれぞれが出力した第2位置検出信号と、バルブボディに対するバルブスプールの移動範囲の他端における一対の位置検出部のそれぞれが出力した第3位置検出信号と、を記憶する信号記憶工程と、
信号記憶工程において記憶した第1位置検出信号及び第2位置検出信号に基づいて、一対の位置検出部のそれぞれの出力信号とバルブスプールの位置との関係式を取得する第1関係式取得工程と、
信号記憶工程において記憶した第1位置検出信号及び第3位置検出信号に基づいて、一対の位置検出部のそれぞれの出力信号とバルブスプールの位置との関係式を取得する第2関係式取得工程と、
バルブスプールの位置を取得する際に、第1位置検出信号と第2,第3位置検出信号との関係から、取得するバルブスプールの位置が中立位置からバルブスプールの移動範囲の一端側と他端側のいずれにあるかを判断して、一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と第1位置検出信号との関係に基づいて第1関係式取得工程で取得した第1関係式または第2関係式取得工程で取得した第2関係式を設定する関係式設定工程と、
関係式設定工程において設定した関係式を用いて一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号に基づくバルブスプールの位置を取得するスプール位置検出工程と、を有している
作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コントロールバルブは、バルブボディやバルブスプールの製造時に寸法の誤差が生じる場合がある。寸法の誤差が大きいコントロールバルブを備えた作業機械では、位置検出部によってバルブスプールの移動範囲の端部が検出されていても、実際にはバルブスプールが移動範囲の端部に位置していない場合や、位置検出部によってバルブスプールの移動範囲の端部が検出されていなくても、実際にはバルブスプールが移動範囲の端部に位置している場合が生じ得る。この場合には、作業者がアクチュエータを最大出力となるように操作を入力しても、最大出力での動作とならない場合や、遠隔操作で最大出力となるように操作を入力していなくても、最大出力での動作となる場合が生じ得る。
【0006】
本発明の目的とするところは、寸法の誤差を有するコントロールバルブであってもバルブボディに対するバルブスプールの位置を正確に検出することのできる作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出装置及びスプール位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、バルブボディに対してバルブスプールを移動させることにより油圧式のアクチュエータに供給する作動油の流れを制御するコントロールバルブと、コントロールバルブを操作するバルブ操作機構と、を備えた作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出装置であって、互いにバルブスプールの移動する方向に並ぶように配置され、バルブスプールと共に移動する被検出体との距離に応じた信号を出力する一対の位置検出部と、バルブボディに対するバルブスプールの
中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と、バルブボディに対するバルブスプールの移動範囲の一端における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と、に基づいて、一対の位置検出部のそれぞれの出力信号とバルブスプールの位置との第1関係式を取得する第1関係式取得手段と、バルブボディに対するバルブスプールの
中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と、バルブボディに対するバルブスプールの移動範囲の他端における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と、に基づいて、一対の位置検出部のそれぞれの出力信号とバルブスプールの位置との第2関係式を取得する第2関係式取得手段と、バルブボディに対するバルブスプールの
中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号を記憶する信号記憶手段と、一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号に基づいてバルブスプールの位置を取得する際に、一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と信号記憶手段によって記憶した
バルブスプールの中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号との関係
から、取得するバルブスプールの位置が中立位置からバルブスプールの移動範囲の一端側と他端側のいずれにあるかを判断して、第1関係式取得手段で取得した第1関係式または第2関係式取得手段で取得した第2関係式を設定する関係式設定手段と、関係式設定手段によって設定された関係式を用いて一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号に基づくバルブスプールの位置を取得するスプール位置取得手段と、を備えている。
【0008】
また、本発明は、前記目的を達成するために、バルブボディに対してバルブスプールを移動させることによりアクチュエータに供給する作動油の流れを制御するコントロールバルブと、コントロールバルブを操作するバルブ操作機構と、互いにバルブスプールの移動する方向に並ぶように配置されバルブスプールと共に移動する被検出体との距離に応じた信号を出力する一対の位置検出部と、を備え、一対の位置検出部のそれぞれの出力した信号に基づいてバルブボディに対するバルブスプールの位置を検出する作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出方法であって、バルブボディに対するバルブスプールの
中立位置における一対の位置検出部のそれぞれが出力した第1位置検出信号と、バルブボディに対するバルブスプールの移動範囲の一端における一対の位置検出部のそれぞれが出力した第2位置検出信号と、バルブボディに対するバルブスプールの移動範囲の他端における一対の位置検出部のそれぞれが出力した第3位置検出信号と、を記憶する信号記憶工程と、信号記憶工程において記憶した第1位置検出信号及び第2位置検出信号に基づいて、一対の位置検出部のそれぞれの出力信号とバルブスプールの位置との関係式を取得する第1関係式取得工程と、信号記憶工程において記憶した第1位置検出信号及び第3位置検出信号に基づいて、一対の位置検出部のそれぞれの出力信号とバルブスプールの位置との関係式を取得する第2関係式取得工程と、
バルブスプールの位置を取得する際に、
第1位置検出信号と第2,第3位置検出信号との関係から、取得するバルブスプールの位置が中立位置からバルブスプールの移動範囲の一端側と他端側のいずれにあるかを判断して、一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号と第1位置検出信号との関係に基づいて第1関係式取得工程で取得した第1関係式または第2関係式取得工程で取得した第2関係式を設定する関係式設定工程と、関係式設定工程において設定した関係式を用いて一対の位置検出部のそれぞれが出力した信号に基づくバルブスプールの位置を取得するスプール位置検出工程と、を有している。
【0009】
これにより、バルブボディに対するバルブスプールの所定位置を中心に、バルブスプールの移動範囲の一端側の範囲と他端側の範囲とで、互いに異なる関係式に基づいてバルブスプールの位置が取得されることから、寸法の誤差を有するコントロールバルブにおいても正確なバルブスプールの位置が取得される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、寸法の誤差を有するコントロールバルブにおいても正確なバルブスプールの位置を取得することができるので、駆動源の出力を正確なバルブスプールの位置に対応する出力とすることができ、作業者の操作入力の通りの動作速度でアクチュエータを駆動させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図5は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明のスプール位置検出装置及びスプール位置検出方法は、
図1に示すように、車両1に搭載される作業機械としてのクレーン装置10に適用されるものである。
【0014】
車両1は、シャシフレーム2の前側に設けられたキャブ3と、シャシフレーム2の後側に設けられた荷台4と、を備えており、キャブ3と荷台4との間のシャシフレーム2にクレーン装置10が搭載される。車両1は、エンジンの動力によって走行する。
【0015】
クレーン装置10は、
図2に示すように、シャシフレーム上に固定される基台20と、基台20の左右両側に設けられたアウトリガ30と、基台20の上面に旋回自在に設けられた旋回台40と、旋回台40に対して起伏自在に設けられたブーム50と、ブーム50の先端側から垂下されるワイヤロープ60と、を備えている。
【0016】
各アウトリガ30は、基台20の幅方向両側からそれぞれ幅方向外側に向かって移動可能に設けられるとともに、油圧式のジャッキシリンダによって下方に向かって伸長可能である。アウトリガ30は、下端を接地させて車両1を支持することにより、クレーン作業時における車両1の傾きや転倒を防止する。
【0017】
旋回台40は、ボールベアリング式やローラーベアリング式の旋回サークルによって基台20に対して旋回自在に設けられ、油圧式の旋回モータによって旋回するように構成されている。また、旋回台40の上面には、上下方向に延びる旋回ポスト41が設けられ、旋回ポスト41の上端側にブーム50が起伏自在に連結されている。
【0018】
ブーム50は、複数のブーム部材51〜54からなり、ブーム部材51〜53の内部に先端側に隣り合うブーム部材52〜54が収納可能な多段式に構成されている。最基端側のブーム部材51は、基端部が旋回ポスト41の上端側に上下方向に揺動自在に連結されている。ブーム部材51の基端側と旋回ポスト41との間には、油圧式の起伏シリンダ55が連結され、起伏シリンダ55の伸縮動作によってブーム50を起伏させる。また、最基端側のブーム部材51内には、油圧式の伸縮シリンダが設けられ、伸縮シリンダの伸縮動作によってブーム50の伸縮動作を行う。
【0019】
ワイヤロープ60は、旋回ポストに設けられたウインチに巻き掛けられ、ウインチの巻き込みまたは繰り出しの動作によってブーム50の先端部から繰り出される長さが変えられる。ブーム50の先端部から繰り出されたワイヤロープ60には、フックブロック61が係止され、フックブロック61は、ブーム50の先端部から垂下された状態となる。フックブロック61には吊荷を係止可能であり、フックブロック61に係止された吊荷はブーム50の先端部から吊り下げられる。
【0020】
各ジャッキシリンダ、旋回モータ、起伏シリンダ55、伸縮シリンダおよびウインチモータ等の複数のアクチュエータ70は、作動油が供給されることによって作動する。複数のアクチュエータ70のそれぞれを作動させる作動油は、
図3に示すように、油圧供給装置80によって供給される。
図3では、起伏シリンダ55についてのみ示す。
【0021】
油圧供給装置80は、
図3に示すように、PTO(パワーテイクオフ)機構によって取り出されたエンジンの動力によって駆動する油圧ポンプ81と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の起伏シリンダ55(アクチュエータ70)に対する供給や排出等の流れを制御するためのコントロールバルブ82と、コントロールバルブ82を操作するためのバルブ操作機構83と、を備え、これらは作動油回路84に接続されている。
【0022】
コントロールバルブ82は、複数のアクチュエータ70のそれぞれに対して設けられるものである。コントロールバルブ82は、中空のバルブボディと、バルブボディ内において所定範囲内を移動自在に設けられたバルブスプール82aと、を有している。コントロールバルブ82は、バルブボディに対してバルブスプール82aを移動させることで、作動油の流路が切り替えられるようになっている。コントロールバルブ82は、バルブスプール82aの一端側及び他端側に設けられた付勢手段としてのスプリング82bの付勢力によって、バルブスプール82aがバルブボディに対する移動範囲の中間部に保持されている。バルブスプール82aは、バルブボディに対する移動範囲において、スプリング82bによって保持される位置が中立位置となる。コントロールバルブ82は、バルブスプール82aが中立位置に位置している状態で、起伏シリンダ55に対して作動油を供給することはない。
【0023】
バルブスプール82aの一端部には、
図2に示す操作レバー85が連結されており、操作レバー85に対する入力によってもバルブスプール82aの操作が可能である。
【0024】
バルブ操作機構83は、バルブスプール82aを操作するための油圧式のバルブ操作シリンダ83aと、油圧ポンプ81とバルブ操作シリンダ83aとの間の作動油の流路を切り替えるための一対の流路切替バルブ83b,83cと、を有している。
【0025】
バルブ操作シリンダ83aは、クレーン装置10側の部材に設けられた円筒状のシリンダチューブ83a1と、シリンダチューブ83a1内を移動可能なピストン83a2と、ピストン83a2の軸方向一端面とバルブスプール82aの他端部とを連結するピストンロッド83a3と、を有している。バルブ操作シリンダ83aは、作動油を縮小側油室83a4に供給することによって縮小動作を行う。また、バルブ操作シリンダ83aは、作動油を伸長側油室83a5に供給することによって伸長動作を行う。バルブ操作シリンダ83aは、伸縮動作を行うことにより、コントロールバルブ82のバルブスプール82aを移動させる。
【0026】
また、バルブ操作シリンダ83aは、ピストン83a2の軸方向他端面からピストンロッド83a3と反対側に向かって延びるセンサロッド83a6、を有している。センサロッド83a6の先端部には、後述するスプール位置検出器の可動鉄心が設けられている。
【0027】
一対の流路切替バルブ83b,83cは、それぞれ3ポートの単動電磁弁であり、ソレノイドが励磁された状態でPポートとAポートを連通してTポートを閉鎖し、ソレノイドが非励磁の状態でTポートとAポートを連通してPポートを閉鎖するものである。
【0028】
作動油回路84において、油圧ポンプ81の吸入側は、作動油タンク84aに接続されている。油圧ポンプ81の吐出側は、コントロールバルブ82及び一対の流路切替バルブ83bのそれぞれのPポートが互いに並列に接続されている。また、コントロールバルブ82及び一対の流路切替バルブ83b
,83cのそれぞれのTポートには、作動油タンク84aが接続されている。さらに、油圧ポンプ81の吐出側には、リリーフ弁84bを介して作動油タンク84aが接続されている。コントロールバルブ82のAポート及びBポートには、起伏シリンダ55(アクチュエータ70)が接続されている。また、一方の流路切替バルブ83bのAポートは、バルブ操作シリンダ83aの縮小側油室83a4に接続されている。さらに、他方の流路切替バルブ83cのAポートは、バルブ操作シリンダ83aの伸長側油室83a5に接続されている。
【0029】
また、クレーン装置10は、
図3に示すように、油圧供給装置80の動作に関する制御を行うためのコントローラ90と、油圧供給装置80の遠隔操作を行うための遠隔操作器100と、を備えている。
【0030】
コントローラ90は、CPU、ROM、RAMを有している。コントローラ90は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0031】
コントローラ90には、バルブボディに対するバルブスプール82aの位置を検出するためのスプール位置検出器91と、一対の流路切替バルブ83b,83cと、遠隔操作器100と無線通信を行うための無線通信部92と、が接続されている。
【0032】
スプール位置検出器91は、クレーン装置10側の部材に設けられた1つの1次コイル91aと、一対の位置検出部としての一対の2次コイル91b,91cと、センサロッド83a6の先端部に設けられた被検出体としての可動鉄心91dと、からなる差動トランス式の変位センサである。
【0033】
1次コイル91a及び一対の2次コイル91b,91cは、それぞれ銅線を可動鉄心91dの外周側を囲むように巻き回したものであり、可動鉄心91dの移動する方向において1次コイル91aの両側に一対の2次コイル91b,91cが配置されている。スプール位置検出器91は、1次コイル91aに交流の電流を流して1次コイル91aを励磁すると、一対の2次コイル91b,91cから可動鉄心91dの位置に応じた電圧が出力される。コントローラ90には、一対の2次コイル91b,91cから出力されたそれぞれの電圧が入力信号として入力される。
【0034】
遠隔操作器100は、クレーン作業を行う作業者が手に持った状態でクレーン装置10の操作を行うものである。遠隔操作器100には、油圧供給装置80の遠隔操作に関する制御を行うための遠隔操作コントローラ110と、電源スイッチやアクチュエータ70を駆動させる操作を入力するためのスイッチ等の操作入力部120と、無線通信部92を介してコントローラ90と通信を行うための無線通信部130と、を有している。
【0035】
以上のように構成されたクレーン装置10では、操作レバー85及び遠隔操作器100の操作入力部120の操作がなされていない状態において、コントロールバルブ82は、バルブボディに対するバルブスプール82aの位置が中立位置となっている。作業者が操作レバー85または遠隔操作器100の操作入力部120の操作を行うと、操作レバー85の操作量または操作入力部120の操作量に応じてバルブスプール82aがバルブボディに対して移動する。これにより、油圧ポンプ81の吐出側とアクチュエータ70との間の作動油の流路が連通し、油圧ポンプ81から吐出された作動油は、アクチュエータ70に供給され、アクチュエータ70が駆動される。操作レバー85及び操作入力部120の操作を中止すると、バルブスプール82aは、スプリング82bの付勢力によって中立位置に戻る。これにより、アクチュエータ70に対する作動油の供給が停止され、アクチュエータ70の駆動が停止される。
【0036】
クレーン作業が行われている状態において、コントローラ90は、スプール位置検出器91の一対の2次コイル91b,91cの出力電圧V1,V2[V]に基づいてバルブボディに対するバルブスプール82aの位置L[mm]を取得し、取得したバルブスプール82aの位置Lに基づいてエンジンの出力制御を行う。
【0037】
ここで、バルブスプール82aの位置L[mm]は、バルブスプール82aの中立位置からの移動距離で表される。また、バルブスプール82aは、
図3において、右方向への移動を正(+)方向の動作と定義し、左方向への移動を負(−)方向の動作と定義して記載する。
【0038】
バルブスプール82aの位置L[mm]とスプール位置検出器91の一対の2次コイル91b,91cの出力電圧V1,V2[V]との関係は、次式(1)の関係を有する。
【0039】
L=V1/(V1+V2)×α+β・・・(1)
【0040】
ここで、α及びβは、一対の2次コイル91b,91cの出力電圧V1,V2が後述する所定の関係を満たすか否かでそれぞれ設定される定数である。
【0041】
また、クレーン装置10では、コントロールバルブ82、バルブ操作シリンダ83a及びスプール位置検出器91それぞれの寸法の誤差や組み付け状態の差異が生じることによって、一対の2次コイル91b,91cの出力電圧V1,V2に対応するバルブスプール82aの位置Lがクレーン装置10毎に異なる場合が生じ得る。
【0042】
そこで、クレーン装置10の製造時やメンテナンス時において、クレーン装置10毎にバルブスプール82aの位置の検出に関してスプール位置検出設定作業を行う。スプール位置検出設定作業では、バルブスプール82aの複数の位置に対応する一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2を記憶する出力電圧記憶工程と、記憶した一対の2次コイル91b,91cのそれぞれの出力電圧V1,V2に基づいて関係式を取得する関係式取得工程と、を行う。
【0043】
出力電圧記憶工程において、コントローラ90は、
図4に示すように、バルブボディに対するバルブスプール82aの中立位置L0における2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1z,V2zを記憶する。式(1)の変数Lに中立位置L0を代入し、変数V1に出力電圧V1zを代入し、変数V2に出力電圧V2zを代入すると、次式(2)となる。
【0044】
L0=V1z/(V1z+V2z)×α+β・・・(2)
【0045】
また、コントローラ90は、バルブスプール82aの正方向側の所定位置Lpsにおける2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1ps,V2psを記憶する。ここで、バルブスプール82aの正方向側の所定位置Lpsは、バルブスプール82aを正方向側の移動範囲の端部の位置とする。式(1)の変数Lに正方向側の所定位置Lpsを代入し、変数V1に出力電圧V1psを代入し、変数V2に出力電圧V2psを代入すると、次式(3)となる。
【0046】
Lps=V1ps/(V1ps+V2ps)×α+β・・・(3)
【0047】
さらに、コントローラ90は、バルブスプール82aの負方向側の所定位置Lmsにおける2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1ms,V2msを記憶する。ここで、バルブスプール82aの負方向側の所定位置Lmsは、バルブスプール82aを負方向側の移動範囲の端部の位置とする。式(1)の変数Lに負方向側の所定位置
Lmsを代入し、変数V1に出力電圧V1msを代入し、変数V2に出力電圧V2msを代入すると、次式(4)となる。
【0048】
Lms=V1ms/(V1ms+V2ms)×α+β・・・(4)
【0049】
次に、関係式取得工程において、式(2)及び式(3)に基づいて定数α及びβを算出する(α=αp、β=βp)。式(1)の定数α及びβに算出した定数αp及びβpを代入することで、バルブスプールの位置Lと2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2との第1関係式が次式(5)のように求められる。
【0050】
L=V1/(V1+V2)×αp+βp・・・(5)
【0051】
また、式(2)及び式(4)に基づいて定数α及びβを算出する(α=αm、β=βm)。式(1)の定数α及びβに算出した定数αm及びβmを代入することで、バルブスプールの位置Lと2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2との第2関係式が次式(6)のように求められる。
【0052】
L=V1/(V1+V2)×αm+βm・・・(6)
【0053】
クレーン装置10による作業時において、コントローラ90は、2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2に基づいてバルブスプール82aの位置Lを取得する際に、第1関係式(5)または第2関係式(6)を設定する関係式設定処理を行う。このときのコントローラ90の動作を
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、コントロールバルブ82が操作されているか否かを判定する。コントロールバルブ82が操作されていると判定した場合にはステップS2に処理を移し、コントロールバルブ82が操作されていると判定しなかった場合には関係式設定処理を終了する。
【0055】
(ステップS2)
ステップS1においてコントロールバルブ82が操作されていると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、2次コイル91b,91cのそれぞれの出力電圧V1,V2と、バルブスプール82aの中立位置において記憶した出力電圧V1z,V2zと、がV1/(V1+V2)≧V1z/(V1z+V2z)の関係を満たすか否かを判定する。V1/(V1+V2)≧V1z/(V1z+V2z)の関係を満たすと判定した場合にはステップS3に処理を移し、V1/(V1+V2)≧V1z/(V1z+V2z)の関係を満たすと判定しなかった場合にはステップS4に処理を移す。
【0056】
(ステップS3)
ステップS2においてV1/(V1+V2)≧V1z/(V1z+V2z)の関係を満たすと判定した場合に、ステップS3においてCPUは、第1関係式(5)を設定し、関係式設定処理を終了する。
関係式設定処理を終了したコントローラ90は、設定した第1関係式(5)及び2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2に基づいてバルブスプール82aの位置Lを算出し、算出したバルブスプール82aの位置Lに対応するエンジンの出力とすることで、アクチュエータ70の動作速度を制御する。
【0057】
(ステップS4)
ステップS2においてV1/(V1+V2)≧V1z/(V1z+V2z)の関係を満たすと判定しなかった場合に、ステップS4においてCPUは、第2関係式(6)を設定し、関係式設定処理を終了する。
関係式設定処理を終了したコントローラ90は、設定した第2関係式(6)及び2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2に基づいてバルブスプール82aの位置Lを算出し、算出したバルブスプール82aの位置Lに対応するエンジンの出力とすることで、アクチュエータ70の動作速度を制御する。
【0058】
このように、本実施形態の作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出装置によれば、バルブボディに対するバルブスプール82aの中立位置L0における一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1z,V2zと、バルブボディに対するバルブスプール82aの移動範囲の一端における一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1ps,V2psと、に基づいて、一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2とバルブスプール82aの位置Lとの第1関係式を取得し、バルブボディに対するバルブスプール82aの中立位置L0における一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1z,V2zと、バルブボディに対するバルブスプール82aの移動範囲の他端における一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1ms,V2msと、に基づいて、一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2とバルブスプール82aの位置Lとの第2関係式を取得し、一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2に基づいてバルブスプール82aの位置Lを取得する際に、一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2と、バルブスプール82aの中立位置L0における一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1z,V2zと、に基づいて第1関係式または第2関係式を設定し、設定した関係式を用いて一対の2次コイル91b,91cの出力電圧V1,V2に基づくバルブスプール82aの位置を取得している。
【0059】
また、本実施形態の作業機械用コントロールバルブのスプール位置検出方法によれば、バルブボディに対するバルブスプール82aの中立位置L0における一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1z,V2zと、バルブボディに対するバルブスプール82aの移動範囲の一端における一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1ps,V2psと、バルブボディに対するバルブスプール82aの移動範囲の他端における一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1ms,V2msと、を記憶する出力電圧記憶工程と、出力電圧記憶工程において記憶した出力電圧V1z,V2z及び出力電圧V1ps,V2psに基づいて、一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2とバルブスプール82aの位置Lとの第1関係式を取得する第1関係式取得工程と、信号記憶工程において記憶した出力電圧V1z,V2z及び出力電圧V1ms,V2msに基づいて、一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2とバルブスプール82aの位置Lとの第2関係式を取得する第2関係式取得工程と、一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2に基づいてバルブスプール82aの位置Lを取得する際に、一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2と出力電圧V1z,V2zとの関係に基づいて第1関係式または第2関係式を設定する関係式設定工程と、関係式設定工程において設定した関係式を用いて一対の2次コイル91b,91cそれぞれの出力電圧V1,V2に基づくバルブスプール82aの位置Lを取得するスプール位置検出工程と、を有している。
【0060】
これにより、寸法の誤差を有するコントロールバルブ82においても正確なバルブスプール82aの位置を取得することができるので、エンジンの出力を正確なバルブスプール82aの位置に対応した出力とすることができ、作業者の操作入力の通りの動作速度でアクチュエータ70を駆動させることが可能となる。
【0061】
また、バルブスプール82aの移動範囲の中間部においてスプリング82bによって保持される中立位置L0を基準として正方向側と負方向側とで関係式を取得している。
【0062】
これにより、中立位置L0がバルブスプール82aの移動範囲の中央部になく、中立位置から正方向側の端部と負方向側の端部とで移動距離が異なる場合においても、正方向側及び負方向側のそれぞれにおいてバルブスプール81aの位置を正確に取得することができる。
【0063】
尚、前記実施形態では、作業機械として車両1に搭載されるクレーン装置10を示したが、これに限られるものではない。油圧式のアクチュエータに供給する作動油の流れを制御するためのコントロールバルブを備えた作業機械であれば、ラフテレーンクレーン等の移動式クレーンや高所作業車、掘削機であっても本発明を適用することが可能である。
【0064】
また、前記実施形態では、スプール位置検出器91として差動トランス式の変位センサを示したが、これに限られるものではない。バルブスプール82aと共に移動する被検出体を、バルブスプール82aの移動方向に配置された一対の位置検出部で検出するものであれば差動トランス式の変位センサに限られるものではない。
【0065】
また、前記実施形態では、バルブボディに対するバルブスプール82aの中立位置及び移動範囲の両端部の3か所の位置L及びその位置Lにおける一対の2次コイル91b,91cの出力電圧に基づいて関係式を構成し、バルブスプール82aの位置Lを取得するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。バルブスプールの位置と位置検出部の出力信号が非線形の関係を有する場合には、中立位置と移動範囲の端部との間を複数の区間に分割し、区間毎に関係式を取得するようにしてもよい。この場合には、バルブスプール82aの位置をより正確に取得することが可能となる。
【0066】
また、前記実施形態では、バルブスプール82aの正方向側の所定位置Lpsと負方向側の所定位置Lmsを、それぞれバルブスプール82aの移動範囲の端部としたものを示したが、これに限られるものではない。バルブスプール82aの正方向側の所定位置Lpsと負方向側の所定位置Lmsを、それぞれ作業機械の動作時において実際に使用されるバルブスプールの移動範囲の端部としてもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、油圧式のバルブ操作シリンダ83aの伸縮動作でコントロールバルブ82のバルブスプール82aを移動させるバルブ操作機構を示したが、これに限られるものではない。例えば、電動モータの動力でバルブスプール82aを移動させるバルブ操作機構に対して本発明を適用することができる。