(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838373
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】板ガラスの製造方法及び板ガラスの折割装置
(51)【国際特許分類】
C03B 33/033 20060101AFI20210222BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
C03B33/033
B28D5/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-235079(P2016-235079)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-90445(P2018-90445A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝好
(72)【発明者】
【氏名】中津 広之
【審査官】
若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/073477(WO,A1)
【文献】
特開2010−271347(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0158381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−40/04
B28D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面に形成されたスクライブ線を境界とする製品部及び非製品部を有する板ガラスのうち、前記製品部の前記第一主面を第一押圧部材で押圧し、前記非製品部の前記第一主面を第二押圧部材で押圧した状態で、前記スクライブ線に対応する位置で、折割部材で前記板ガラスの第二主面を前記第一主面側に押し込んで、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを折り割る折割工程を備えた板ガラスの製造方法であって、
前記第一押圧部材は、ブラシ状部材からなり、
前記ブラシ状部材の毛は、前記製品部の前記第一主面を押圧した際に、前記第一主面に倣って撓み変形可能な弾性を有し、
前記第二押圧部材は、少なくとも前記第一主面と対向する面が凸曲面をなす弾性部材からなることを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記第二押圧部材が、前記スクライブ線に沿って長尺な円柱状であることを特徴とする請求項1に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記第二押圧部材が、保持部材に形成された凹部に嵌め込み保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記折割部材の前記第二主面と対向する面は、前記スクライブ線の両側に跨る平面部と、前記平面部の両側で前記第二主面から離れるように傾斜した一対の傾斜部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項5】
第一主面に形成されたスクライブ線を境界とする製品部及び非製品部を有する板ガラスを、前記スクライブ線に沿って折り割る板ガラスの折割装置であって、
前記製品部の前記第一主面を押圧する第一押圧部材と、前記非製品部の前記第一主面を押圧する第二押圧部材と、前記スクライブ線に対応する位置で、前記板ガラスの第二主面を前記第一主面側に押し込む折割部材とを備え、
前記第一押圧部材が、ブラシ状部材からなり、
前記ブラシ状部材の毛は、前記製品部の前記第一主面を押圧した際に、前記第一主面に倣って撓み変形可能な弾性を有し、
前記第二押圧部材が、少なくとも前記第一主面と対向する面が凸曲面をなす弾性部材からなることを特徴とする板ガラスの折割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの製造方法及び板ガラスの折割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板や、有機EL照明用のカバーガラスに代表されるように、各種分野で板ガラスが利用される。板ガラスの製造工程では、大面積の板ガラス(マザーガラス)から小面積の板ガラスを切り出したり、板ガラスの辺に沿う縁部をトリミングしたりする折割(割断)工程が含まれる。
【0003】
折割工程では、折り割る対象となる板ガラスの製品部と非製品部との境界において、板ガラスの第一主面(例えば上面)にスクライブ線を形成した後、そのスクライブ線を中心とした曲げ応力を作用させて板ガラスをスクライブ線に沿って折り割る。
【0004】
詳細には、例えば特許文献1には、上面にスクライブ線が形成された板ガラスの非製品部となる縁部(耳部と称される場合もある)の上面を上部押圧バーで押圧した状態で、スクライブ線に対応した位置で板ガラスの下面を下部押圧バーで上方に押し上げて、板ガラスをスクライブ線に沿って折り割ることが開示されている。上部押圧バーの下面には、平面状のゴムシートを貼着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−99563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示のように、スクライブ線を中心とした曲げ応力を作用させる際に、非製品部の上面のみを押圧する場合、製品部の上面の保持力が弱く、板ガラスをスクライブ線に沿って正確に折り割ることができない場合がある。特に板ガラスが薄く可撓性に富む場合に、このような問題は顕著になる。ここで、非製品部と同様に、製品部の上面をゴムシートで押圧することも考えられるが、製品部が汚れたり傷ついたりするおそれがある。
【0007】
また、特許文献1に開示のように、平面状のゴムシートで非製品部の上面を押圧する場合、板ガラスの種類などが変わって非製品部の大きさ(スクライブ線と直交する方向の幅)が変わると、ゴムシートの角部が非製品部の上面に片当たりし、押圧状態が不安定になりやすい。そのため、非製品部の大きさに応じて、非製品部の上面を押圧する位置を調整する必要があるが、その調整作業には時間を要する。その間、板ガラスを折り割ることはできないので製造効率が悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、製品部の汚れや傷を防止しつつ、非製品部の大きさが変わっても板ガラスをスクライブ線に沿って効率よく確実に折り割ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために創案された本発明は、第一主面に形成されたスクライブ線を境界とする製品部及び非製品部を有する板ガラスのうち、製品部の第一主面を第一押圧部材で押圧し、非製品部の第一主面を第二押圧部材で押圧した状態で、スクライブ線に対応する位置で、折割部材で板ガラスの第二主面を第一主面側に押し込んで、スクライブ線に沿って板ガラスを折り割る折割工程を備えた板ガラスの製造方法であって、第一押圧部材は、ブラシ状部材からなり、第二押圧部材は、少なくとも第一主面と対向する面が凸曲面をなす弾性部材からなることを特徴とする。このような構成によれば、製品部の第一主面はブラシ状部材からなる第一押圧部材で補助的に押圧される。また、ブラシ状部材であるので、製品部との接触状態がソフトになり、製品部に不要な汚れや傷もつきにくい。一方、非製品部の第一主面は弾性部材からなる第二押圧部材でしっかりと押圧される。そのため、板ガラスの第一主面全体で見た場合、十分な押圧力を作用させることできる。したがって、折割部材を押し込む際に、スクライブ線を中心とした曲げ応力を十分に作用させ、板ガラスをスクライブ線に沿って確実に折り割ることができる。また、第二押圧部材は第一主面と対向する面が凸曲面であるので、第二押圧部材と非製品部の第一主面との接触位置が変わっても押圧状態が不安定になりにくい。したがって、板ガラスの種類などの変更によって非製品部の大きさが変わった場合であっても、第二押圧部材の位置を調整しなくて済む。
【0010】
上記の構成において、第二押圧部材が、スクライブ線に沿って長尺な円柱状であることが好ましい。このようにすれば、弾性部材に凸曲面を簡単に形成することができる。また、弾性部材の厚みを増加させて変形量を大きくさせやすいので、非製品部の第一主面の押圧状態をより安定化させることができる。
【0011】
上記の構成において、第二押圧部材が、保持部材に形成された凹部に嵌め込み保持されていることが好ましい。このようにすれば、弾性部材を簡単な構造で安価に保持できる。
【0012】
上記の構成において、折割部材の第二主面と対向する面は、スクライブ線の両側に跨る平面部と、平面部の両側で第二主面から離れるように傾斜した一対の傾斜部とを有することが好ましい。このようにすれば、次のような利点がある。第一に、平面部がスクライブ線の線幅よりも幅広になるので、板ガラスの第二主面のスクライブ線に対応する位置に、折割部材を位置合わせしやすくなる。換言すれば、板ガラスの位置ずれを吸収しやすくなる。第二に、スクライブ線に対応する位置で第二主面が平面部によって確実に押し込まれるので、第一主面から第二主面に向かってスクライブ線が真っ直ぐ(垂直)に進展しやすくなる。この際、平面部と両傾斜部の二つの連結部、第一押圧部材、第二押圧部材がそれぞれ支点となって、板ガラスにとって好ましい四点曲げのような荷重態様になることが期待できる。第三に、折り割った直後に、製品部の切断端面と非製品部の切断端面との間が平面部によって押し広げられるので、両切断端面が干渉して傷つくのを防止できる。第四に、傾斜部によって板ガラスが急峻に折れ曲がるのを阻止できる。すなわち、スクライブ線に不当な応力が作用するのを防止できる。板ガラスが薄い場合、板ガラスの可撓性が上がるので、傾斜部の当該効果は特に有用となる。
【0013】
上記課題を解決するために創案された本発明は、第一主面に形成されたスクライブ線を境界とする製品部及び非製品部を有する板ガラスを、スクライブ線に沿って折り割る板ガラスの折割装置であって、製品部の第一主面を押圧する第一押圧部材と、非製品部の第一主面を押圧する第二押圧部材と、スクライブ線に対応する位置で、板ガラスの第二主面を第一主面側に押し込む折割部材とを備え、第一押圧部材が、ブラシ状部材からなり、第二押圧部材が、少なくとも第一主面と対向する面が凸曲面をなす弾性部材からなることを特徴とする。このような構成によれば、既に述べた対応する構成と同様の効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、製品部の汚れを防止しつつ、非製品部の大きさが変わっても板ガラスをスクライブ線に沿って効率よく確実に折り割ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る板ガラスの折割装置及びその動作を示す側面図である。
【
図2】
図1の折割装置に含まれる弾性部材及びブラシ状部材と、板ガラスの関係を示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る板ガラスの折割装置及びその動作を示す側面図である。
【
図4】本実施形態に係る板ガラスの折割装置及びその動作を示す側面図である。
【
図5】本実施形態に係る板ガラスの折割装置及びその動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る板ガラスの折割装置1は、板ガラスGをスクライブ線Sに沿って折り割るものである。
【0018】
板ガラスGは平置き姿勢(好ましくは水平姿勢)で配置され、スクライブ線Sが形成された第一主面G1が上面、第二主面G2が下面とされる。板ガラスGは、スクライブ線Sを境界として製品部Gaと非製品部Gbとに区画される。非製品部GbのX方向寸法は、例えば、30mm〜200mmの範囲で変更される。非製品部Gbには、製品部Gaよりも板厚の大きい厚肉部(不図示)が含まれている場合がある。非製品部Gbの厚肉部は、例えば、オーバーフローダウンドロー法やフロート法などを用いて板ガラスGを成形したときに生じ得る。
【0019】
折割装置1は、搬送機構2と、第一押圧機構3と、第二押圧機構4と、折割機構5と、除去機構6とを備えている。なお、本実施形態では、板ガラスGの搬送方向(X方向)の下流側に位置するスクライブ線Sに沿って板ガラスGを折り割る構成を例示するが、これに限定されない。
【0020】
搬送機構2は、板ガラスGを搬送方向に搬送すると共に、所定位置で停止させるものである。搬送機構2は、上流側に配置された第一ベルトコンベア21と、下流側に配置された第二ベルトコンベア22とを備えている。第一ベルトコンベア21及び第二ベルトコンベア22は、搬送方向に間隔を置いて配置されており、両者21,22の間に折割空間Bが形成されている。第一ベルトコンベア21及び第二ベルトコンベア22は、板ガラスGを下流側に搬送するときはa方向及びb方向に同速度で駆動される。一方、第一ベルトコンベア21及び第二ベルトコンベア22は、折割空間B内の所定位置にスクライブ線Sが到来したときは板ガラスGの搬送を停止する。なお、搬送機構2は、ベルトコンベアに特に限定されるものではない。例えば、ローラコンベアや、ロボットハンドなどであってもよい。
【0021】
第一押圧機構3は、第一ベルトコンベア21の上で製品部Gaの第一主面G1を押圧する第一押圧部材31を上下方向に昇降可能に備えている。第一押圧部材31は、ブラシ状部材から構成されている。ブラシの毛は弾性を有し、製品部Gaの第一主面G1に倣って撓む。すなわち、ブラシの毛は、板ガラスGの微妙な動き(変形を含む)にも追従する。ブラシの毛は、例えば、ナイロンなどの樹脂製繊維から形成される。
【0022】
第二押圧機構4は、第二ベルトコンベア22の上で非製品部Gbの第一主面G1を押圧する第二押圧部材41を上下方向に昇降可能に備えている。第二押圧部材41は、少なくとも第一主面G1と対向する面が凸曲面をなすゴム(弾性部材)から構成されている。ゴムは、板ガラスGの第二主面G2に倣って弾性変形するので、板ガラスGの微妙な動き(変形を含む)にも追従する。ゴムは、本実施形態では棒状、具体的には円柱状で形成されているが、例えば半円柱状や円筒状などであってもよい。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴムなどが使用できる。円筒状の弾性部材としては、例えば、ビニル鋼管のうちの鋼管の外面を覆うビニルを使用できる。なお、弾性部材はゴムに限定されず、スポンジなどであってもよい。
【0023】
第二押圧機構4は、非製品部Gbの第一主面G1と対向する面に凹部42aを有する保持部材42を更に備えている。第二押圧部材41は、保持部材42の凹部42aに嵌め込み保持されている。本実施形態では、凹部42aはあり溝で構成されており、凹部42aの第一主面G1側に開口した部分の溝幅は、第二押圧部材41の最大径(直径)よりも小さくなっている。この状態で、第二押圧部材41の最大径部分は凹部42a内に収納されており、第二押圧部材41の最大径部分を除く一部が、凹部42a外に突出している。なお、この状態で第二押圧部材41が凹部42aに接着されていてもよい。
【0024】
折割機構5は、折割空間Bに配置されている。折割機構5は、スクライブ線Sの直下位置で板ガラスGの第二主面G2を押し上げる折割部材51を上下方向に昇降可能に備えている。折割部材51の第二主面G2と対向する面は、スクライブ線Sの両側(スクライブ線Sと直交するX方向両側)に跨る平面部51aと、平面部51aの両側で第二主面G2から離れるように下方傾斜した一対の傾斜部51bとを有する。本実施形態では、折割部材51の第二主面G2と対向する面は、断面形状が等脚台形状をなす。平面部51aのX方向の寸法は、3〜15mmであることが好ましい。平面部51aは水平面であることが好ましい。平面部51aと傾斜部51bとのなす角θは、30〜50°であることが好ましい。
【0025】
除去機構6は、板ガラスGをスクライブ線Sに沿って折り割った後に、非製品部Gbを第二ベルトコンベア22上から取り除くためのものである。本実施形態では、除去機構6は、搬送方向の上流側に配置された第一吸着部材61と、搬送方向の下流側に配置された第二吸着部材62とを備えている。板ガラスGの非製品部Gbが大きい場合、板ガラスGを折り割った後に、第一吸着部材61及び第二吸着部材62で非製品部Gbを吸着保持して持ち上げ、第二ベルトコンベア22上から非製品部Gbを取り除く。一方、板ガラスGの非製品部Gbが小さい場合、板ガラスGを折り割った後に、第一吸着部材61のみで非製品部Gbを吸着保持して持ち上げ、第二ベルトコンベア22上から非製品部Gbを取り除く。第一吸着部材61及び第二吸着部材62は蛇腹状であり、非製品部Gbの傾きに応じて吸着面の姿勢を変えることができる。取り除かれた非製品部Gbは、例えば、粉砕してガラス原料として再利用される。なお、除去機構6による非製品部Gbの保持態様は吸着に限定されない。例えば、非製品部Gbをチャックなどで挟持したり、爪などに引っ掛けたりして保持するようにしてもよい。また、除去機構として、第二ベルトコンベア22を傾斜させるなどの構成を採用し、非製品部Gbを第二ベルトコンベア22上から落下回収するようにしてもよい。
【0026】
図2に示すように、第一押圧部材31、第二押圧部材41及び折割部材51は、スクライブ線Sに沿う方向(搬送方向と直交する幅方向(Y方向))に延びた長尺体である。本実施形態では、第一押圧部材31、第二押圧部材41及び折割部材51は、板ガラスGの全幅に亘って連続的に接触する。なお、本実施形態では、第一押圧部材31、第二押圧部材41及び折割部材51は、板ガラスGの全幅よりも長いが、これらの部材31,41,51の少なくとも一つが、板ガラスGの全幅と同じ長さであってもよいし、短い長さであってもよい。また、第一押圧部材31、第二押圧部材41及び折割部材51の少なくとも一つが、幅方向で板ガラスGと断続的に接触してもよい。
【0027】
次に、以上のように構成された折割装置1を用いた折割工程を中心として、本実施形態に係る板ガラスの製造方法を説明する。
【0028】
まず、オーバーフローダウンドロー法などの公知の成形方法により、溶融ガラスなどから原板となる板ガラスGを成形する。板ガラスGの製品部Gaの厚みは、例えば、2mm以下であり、好ましくは0.3mm〜0.7mmである。
【0029】
次に、板ガラスGの第一主面G1において、製品部Gaと非製品部Gbとの境界に対して、ホイールカッターによる押圧やレーザーの照射等によりスクライブ線Sを形成する。本実施形態では、板ガラスGは、矩形状であり、対向する一組の辺(二辺のみ)や各辺(四辺)に平行にスクライブ線Sを形成する。スクライブ線Sの内側が製品部Ga、スクライブ線Sの外側が非製品部Gbとなる。
【0030】
図1に示すように、スクライブ線Sが形成された板ガラスGを、第一主面G1を上方に向けた状態で、搬送機構2で搬送する。搬送機構2は、第一ベルトコンベア21と第二ベルトコンベア22との間の折割空間B内の所定位置に、搬送方向の下流側(前方側)に位置するスクライブ線Sが到来した時点で、板ガラスGの搬送を停止する。その後、板ガラスGの第一主面G1の上方に退避していた第一押圧部材31及び第二押圧部材41を下降させ、製品部Gaの第一主面G1及び非製品部Gbの第一主面G1を押圧する。すなわち、ブラシ状部材からなる第一押圧部材31で製品部Gaの第一主面G1が保持され、ゴムからなる第二押圧部材41で非製品部Gbの第一主面G1が保持される。
【0031】
この状態から、板ガラスGの下方に退避していた折割部材51を上昇させ、
図3に示すように、スクライブ線Sの直下位置で、板ガラスGの第二主面G2を上方に押し上げる。これにより、スクライブ線Sを中心とする曲げ応力を板ガラスGに作用させる。この際、スクライブ線Sの両側に跨るように、折割部材51の平面部51aが板ガラスGの第二主面G2と接触する。折割部材51の上昇量は、板ガラスGの搬送面(第一ベルトコンベア21及び第二ベルトコンベア22の上面)を零基準として上方に、例えば2mm〜30mmである。折割部材51の上昇量は、非製品部Gbの大きさや板厚によって変化させてもよいし、変化させなくてもよい。
【0032】
板ガラスGに曲げ応力を作用させると、
図4に示すように、スクライブ線Sに沿って板ガラスGが折り割られ、製品部Gaと非製品部Gbとが分離される。この際、スクライブ線Sの直下方位置で板ガラスGの第二主面G2が平面部51aによって押し上げられて四点曲げのような荷重態様となる。これにより、スクライブ線Sが真っ直ぐ(垂直)に進展しやすくなる。その結果、製品部Gaの切断端面Gaxの後加工を省略又は少なくすることができる。
【0033】
本実施形態では、製品部Gaと非製品部Gbとが分離された後も、折割部材51は上昇状態を維持する。このとき、製品部Gaの切断端面Gaxと非製品部Gbの切断端面Gbxとの間は折割部材51の平面部51aによって押し広げられ、製品部Gaの切断端面Gaxと非製品部Gbの切断端面Gbxとが互いに離れた状態となる。この状態で、非製品部Gbの第一主面G1の上方に退避していた第一吸着部材61及び第二吸着部材62(又は第一吸着部材61のみ)を下降させ、非製品部Gbの第一主面G1を吸着保持する。この吸着保持と同時又はこれと前後して、第一押圧部材31及び第二押圧部材41を上昇退避させる。そして、第一吸着部材61及び第二吸着部材62(又は第一吸着部材61のみ)で吸着保持した非製品部Gbを持ち上げ、第二ベルトコンベア22上から取り除く。
【0034】
図5に示すように、非製品部Gbを取り除いた後、折割部材51を下降退避させると共に、第一ベルトコンベア21及び第二ベルトコンベア22をa方向及びb方向に再び駆動し、製品部Gaを下流側に搬送する。これにより、製品部Gaは、折割空間Bを乗り越えて、第一ベルトコンベア21上から第二ベルトコンベア22上に乗り移る。
【0035】
ここで、搬送方向の下流側に位置するスクライブ線Sに沿って板ガラスGを折り割る場合を説明したが、別の位置に形成されたスクライブ線Sについても同様の態様で板ガラスGを折り割るものとする。ただし、搬送方向の上流側(後方側)に位置するスクライブ線Sに沿って板ガラスGを折り割る場合は、例えば、搬送方向の上流側に第二押圧機構4及び除去機構6が配置され、搬送方向の下流側に第一押圧機構3が配置される。すなわち、搬送方向の下流側に位置するスクライブ線Sに沿って板ガラスGを折り割る場合を示す
図1の状態とは配置が逆になる。また、板ガラスGの残り一対の対向二辺にも平行にスクライブ線Sを形成した場合には、例えば、搬送経路の途中で板ガラスGを90°回転させた後、搬送方向の下流側と上流側に位置換えされた各スクライブ線Sについて同様の態様で板ガラスGを折り割る。
【0036】
以上のようにすれば、製品部Gaの第一主面G1はブラシ状部材からなる第一押圧部材31で補助的に押圧され、非製品部Gbの第一主面G1は弾性部材(円柱状のゴム)からなる第二押圧部材41でしっかりと押圧される。板ガラスGの第一主面G1全体で見た場合、十分な押圧力となる。したがって、折割部材51を押し上げる際に、スクライブ線Sを中心とした曲げ応力を十分に作用させ、板ガラスGをスクライブ線Sに沿って確実に折り割ることができる。
【0037】
また、第一押圧部材31はブラシ状部材であるので、製品部Gaとの接触状態がソフトになる。そのため、製品部Gaに不要な汚れや傷もつきにくい。
【0038】
更に、第二押圧部材41は円柱状のゴムであるので、非製品部Gbの第一主面G1に対して凸曲面が接触する。そのため、非製品部Gbの第一主面G1との接触位置が変化しても、押圧状態は不安定になりにくい。したがって、板ガラスGの種類などが変更されて、非製品部Gbの大きさが変わった場合でも、第二押圧部材41の位置を調整する必要がない。その結果、調整作業に要する時間を省略することができるので、板ガラスGを効率よく製造することが可能となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態に係る板ガラスの折割装置及び板ガラスの製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を施すことが可能である。
【0040】
上記の実施形態では、板ガラスGをスクライブ線Sと直交する方向(
図2のX方向)に搬送しながら板ガラスGを折り割る場合を説明したが、板ガラスGをスクライブ線Sに沿う方向(
図2のY方向)に搬送しながら板ガラスGを折り割ってもよい。
【0041】
また、上記の実施形態では、折割部材51の第二主面G2と対向する面(上端部)を断面台形状にする場合を説明したが、折割部材51の第二主面G2と対向する面は断面三角形状、断面半円形状、断面四角形状などであってもよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、除去機構6として、二つの保持部材(吸着部材61,62)を配置する場合を説明したが、一つ又は三つ以上の保持部材を配置してもよい。複数の保持部材を配置する場合は、非製品部Gbの大きさや重さに応じて、非製品部Gbを保持する保持部材の個数を調整することが好ましい。これに対し、一つの保持部材を配置する場合は、非製品部Gbの大きさや重さに応じて、非製品部Gbを吸着する保持部材の個数を調整することはできないが、非製品部Gbの持ち上げ姿勢を調整すれば、特に問題はない。例えば、上方に持ち上げた非製品部Gbを縦姿勢(鉛直姿勢)に変更すれば、重力が面に沿って作用するので安全に持ち運ぶことができる。
【0043】
また、上記の実施形態では、折割部材51で製品部Gaと非製品部Gbとを分離した後に、吸着部材61及び吸着部材62(又は吸着部材61のみ)で非製品部Gbの第一主面G1を吸着保持する場合を説明したが、折割部材51で製品部Gaと非製品部Gbとを分離する前に、吸着部材61及び吸着部材62(又は吸着部材61のみ)で非製品部Gbの第一主面G1を吸着保持してもよい。すなわち、吸着部材61及び吸着部材62(又は吸着部材61のみ)で非製品部Gbの第一主面G1を吸着保持した状態で、折割部材51で製品部Gaと非製品部Gbとを分離させてもよい。
【0044】
また、上記の実施形態の第二押圧部材41において、第一主面G1と対向する面が凸曲面であり、凸曲面の横断面の形状は半円状である。凸曲面の横断面の形状は、半円状に限らず、例えば、半楕円状や放物線状等であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 折割装置
2 搬送機構
21 第一ベルトコンベア
22 第二ベルトコンベア
3 第一押圧機構
31 第一押圧部材
4 第二押圧機構
41 第二押圧部材
42 保持部材
42a 凹部
5 折割機構
51 折割部材
51a 平面部
51b 傾斜部
6 除去機構
61 第一吸着部材
62 第二吸着部材
B 折割空間
G 板ガラス
G1 第一主面
G2 第二主面
Ga 製品部
Gb 非製品部
S スクライブ線