(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838393
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ガラス基板の検査方法および製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/06 20060101AFI20210222BHJP
G01B 11/16 20060101ALI20210222BHJP
G01N 3/34 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
G01N3/06
G01B11/16 H
G01N3/34 P
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-253148(P2016-253148)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-105747(P2018-105747A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 嘉成
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−276526(JP,A)
【文献】
特開2013−210274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 − 3/62
G01B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するガラス基板の寸法変化を検査するガラス基板の検査方法であって、
前記ガラス基板に複数のマークを形成するマーク形成工程と、該マーク形成工程後の前記ガラス基板に応力を負荷する応力負荷工程と、該応力負荷工程の前後における前記マーク同士の相互間距離の変化から前記寸法変化を割り出す寸法変化割出工程とを含み、
前記応力負荷工程では、10MPa〜150MPaの大きさの前記応力を負荷することを特徴とするガラス基板の検査方法。
【請求項2】
前記応力負荷工程では、前記ガラス基板を複数の棒状体により下方から支持した状態で該ガラス基板を昇降させる事と、前記ガラス基板を吸着手段で吸着する事と、前記ガラス基板に成膜する事との少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の検査方法。
【請求項3】
前記マーク形成工程では、座標読取用の図形をなす金属膜が成膜された板片を前記ガラス基板に貼り付けることで前記マークを形成すると共に、
前記寸法変化割出工程では、前記応力負荷工程の前後で前記複数のマークの各々における座標を読み取ることで前記相互間距離を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス基板の検査方法。
【請求項4】
前記板片は、前記ガラス基板と同一組成を有するガラス板片であることを特徴とする請求項3に記載のガラス基板の検査方法。
【請求項5】
前記ガラス基板は、成膜された基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス基板の検査方法。
【請求項6】
前記ガラス基板の形状が矩形であると共に、
前記ガラス基板のサイズが500mm角以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス基板の検査方法。
【請求項7】
前記マーク形成工程では、前記ガラス基板における4つのコーナー部のそれぞれに前記マークを形成することを特徴とする請求項6に記載のガラス基板の検査方法。
【請求項8】
製造されたガラス基板から任意の前記ガラス基板を採取する工程と、請求項1〜7のいずれかに記載のガラス基板の検査方法により、採取した前記ガラス基板に検査を行う工程とを含むガラス基板の製造方法。
【請求項9】
可撓性を有するガラス基板の寸法変化を検査するガラス基板の検査方法であって、
前記ガラス基板に複数のマークを形成するマーク形成工程と、該マーク形成工程後の前記ガラス基板に応力を負荷する応力負荷工程と、該応力負荷工程の前後における前記マーク同士の相互間距離の変化から前記寸法変化を割り出す寸法変化割出工程とを含み、
前記ガラス基板の形状が矩形であると共に、
前記ガラス基板のサイズが500mm角以上であり、
前記マーク形成工程では、前記ガラス基板における4つのコーナー部のそれぞれに前記マークを形成することを特徴とするガラス基板の検査方法。
【請求項10】
可撓性を有するガラス基板の寸法変化を検査するガラス基板の検査方法であって、
前記ガラス基板に複数のマークを形成するマーク形成工程と、該マーク形成工程後の前記ガラス基板に応力を負荷する応力負荷工程と、該応力負荷工程の前後における前記マーク同士の相互間距離の変化から前記寸法変化を割り出す寸法変化割出工程とを含み、
前記応力負荷工程では、前記ガラス基板を複数の棒状体により下方から支持した状態で該ガラス基板を昇降させる事と、前記ガラス基板を吸着手段で吸着する事と、前記ガラス基板に成膜する事との少なくとも1つを行うことを特徴とするガラス基板の検査方法。
【請求項11】
可撓性を有するガラス基板の寸法変化を検査するガラス基板の検査方法であって、
前記ガラス基板に複数のマークを形成するマーク形成工程と、該マーク形成工程後の前記ガラス基板に応力を負荷する応力負荷工程と、該応力負荷工程の前後における前記マーク同士の相互間距離の変化から前記寸法変化を割り出す寸法変化割出工程とを含み、
前記マーク形成工程では、座標読取用の図形をなす金属膜が成膜された板片を前記ガラス基板に貼り付けることで前記マークを形成すると共に、
前記寸法変化割出工程では、前記応力負荷工程の前後で前記複数のマークの各々における座標を読み取ることで前記相互間距離を算出することを特徴とするガラス基板の検査方法。
【請求項12】
前記板片は、前記ガラス基板と同一組成を有するガラス板片であることを特徴とする請求項11に記載のガラス基板の検査方法。
【請求項13】
製造された可撓性を有するガラス基板から任意の前記ガラス基板を採取する工程と、
前記ガラス基板に複数のマークを形成するマーク形成工程と、該マーク形成工程後の前記ガラス基板に応力を負荷する応力負荷工程と、該応力負荷工程の前後における前記マーク同士の相互間距離の変化から寸法変化を割り出す寸法変化割出工程とを含むガラス基板の寸法変化を検査する検査方法により、採取した前記ガラス基板に検査を行う工程とを含むことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の寸法変化を検査するガラス基板の検査方法、及び、当該検査方法を含んだガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの構成部品であるTFT基板の製造工程には、フォトリソグラフィを利用して透明導電膜等の膜をガラス基板にパターン形成する工程が含まれる。この工程の実行には加熱を伴うため、熱収縮によりガラス基板に寸法変化が生じる。ここで、特許文献1には、ガラス基板への成膜時の加熱ではなく、加熱処理に関するものであるが、加熱に伴ったガラス基板の寸法変化を検査する手法が開示されている。
【0003】
同文献に開示された手法においては、ガラス基板にアニール処理等の加熱処理を施すにあたり、方形形状の金属膜パターンをガラス基板に形成する。そして、加熱処理の前後における金属膜パターンの対辺間の幅の変化を割り出すことにより、ガラス基板に生じる寸法変化を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−276526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような寸法変化を検査することは、ガラス基板に設計通りの成膜を行うために重要である。しかしながら、近年、可撓性を付与できる程度までガラス基板の薄板化が推進されていることに伴い、加熱に伴う寸法変化を検査することのみでは、設計通りの成膜が困難となってきている。
【0006】
これはTFT基板の完成までの工程でガラス基板に負荷された応力により、ガラス基板が変形して寸法変化が生じているためと考えられる。具体的には、ガラス基板に撓みや反り等の変形が発生することに起因して、
図3に示すように、変形の前後でガラス基板Gに見かけ上の寸法変化(変形前の寸法Sと変形後の寸法S’との差異)が生じることにより、設計通りの成膜が阻害されているものと想定している。このように想定されるのは、熱収縮の影響を略無視できるような加熱条件の下でガラス基板に成膜を行った場合でも、設計通りに成膜できない場合が多分にあるためである。
【0007】
従って、可撓性を有するガラス基板に設計通りの成膜を行うためには、応力の負荷に伴うガラス基板の寸法変化を検査することが求められる。しかしながら、特許文献1に開示されたような手法は、加熱に伴う寸法変化を検査するためのものであり、ガラス基板に応力を負荷する態様にもなっていないため、このような求めに応じることが必然的に不可能であった。
【0008】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、可撓性を有するガラス基板について、応力の負荷に伴うガラス基板の寸法変化の検査を可能とすることを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、可撓性を有するガラス基板の寸法変化を検査するガラス基板の検査方法であって、ガラス基板に複数のマークを形成するマーク形成工程と、マーク形成工程後のガラス基板に応力を負荷する応力負荷工程と、応力負荷工程の前後におけるマーク同士の相互間距離の変化から寸法変化を割り出す寸法変化割出工程とを含むことに特徴付けられる。
【0010】
この方法によれば、応力負荷工程の実行に伴ってガラス基板に応力を負荷することが可能である。そして、寸法変化割出工程の実行により、応力負荷工程の前後におけるマーク同士の相互間距離の変化からガラス基板の寸法変化を割り出すことができる。従って、本方法によれば、応力の負荷に伴うガラス基板の寸法変化を検査することが可能となる。
【0011】
上記の方法において、応力負荷工程では、10MPa〜150MPaの大きさの応力を負荷することが好ましい。
【0012】
例えば、TFT基板の製造工程においてガラス基板に負荷される応力の大きさは、10MPa〜150MPaの範囲内であることが多い。このため、当該範囲内の大きさの応力をガラス基板に負荷するようにすれば、TFT基板の製造中においてガラス基板に生じる寸法変化を好適に検査できる。
【0013】
上記の方法において、応力負荷工程では、ガラス基板を複数の棒状体により下方から支持した状態でガラス基板を昇降させる事と、ガラス基板を吸着手段で吸着する事と、ガラス基板に成膜する事との少なくとも1つを行うことが好ましい。
【0014】
これらの処置や処理は、いずれもTFT基板の製造工程においてガラス基板に対して多用されるものである。そのため、これらの少なくとも1つをガラス基板に行うようにすれば、TFT基板の製造中においてガラス基板に生じる寸法変化を更に好適に検査することが可能である。
【0015】
上記の方法において、マーク形成工程では、座標読取用の図形をなす金属膜が成膜された板片をガラス基板に貼り付けることでマークを形成すると共に、寸法変化割出工程では、応力負荷工程の前後で複数のマークの各々における座標を読み取ることで相互間距離を算出することが好ましい。
【0016】
ガラス基板のサイズが大型になるほど、ガラス基板に直接高精度なマーク(高精度に座標の読み取りが可能なマーク)を形成するには、形成のための装置として高価な装置を導入することが必要となり、検査に要するコストが高騰してしまう。しかしながら、本方法では、マーク形成工程において、座標読取用の図形をなす金属膜が成膜された板片をガラス基板に貼り付けることでマークを形成する。これにより、高価な装置を導入しなくともガラス基板に板片を介して間接的に高精度なマークを形成できるようになり、低コストで検査を行うことが可能となる。
【0017】
上記の方法において、板片は、ガラス基板と同一組成を有するガラス板片であることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、板片がガラス基板と同一組成を有するガラス板片であるため、板片をガラス基板に貼り付けやすくなる。また、応力負荷工程の実行中において、温度変化に伴って板片とガラス基板との両者が膨張、或いは、収縮したような場合でも、両者の熱膨張率の違いに由来して不当に応力が負荷されるような事態が起こり得なくなる。
【0019】
上記の方法において、ガラス基板は、成膜された基板であることが好ましい。
【0020】
成膜されたガラス基板は、単なるガラス基板(未成膜のガラス基板)との比較において、応力を負荷した際の寸法変化(変形)が大きくなりやすい傾向がある。従って、成膜されたガラス基板を対象として本発明に係る検査方法を用いれば、当該検査方法をより有効に活用することが可能となる。
【0021】
上記の方法において、ガラス基板の形状が矩形であると共に、ガラス基板のサイズが500mm角以上であることが好ましい。
【0022】
このようなサイズのガラス基板は、応力を負荷した際に寸法変化(変形)が生じやすい。そのため、当該サイズのガラス基板を対象として本発明に係る検査方法を用いれば、当該検査方法を更に有効に活用できる。
【0023】
上記の方法において、マーク形成工程では、ガラス基板における4つのコーナー部のそれぞれにマークを形成することが好ましい。
【0024】
このようにすれば、ガラス基板の各辺に沿った寸法変化、及び、対角方向に沿った寸法変化を検査でき、ガラス基板における主要な方向に沿った寸法変化を検査することが可能となる。
【0025】
また、上記のガラス基板の検査方法を含んだガラス基板の製造方法は、製造されたガラス基板から任意のガラス基板を採取する工程と、上記のガラス基板の検査方法により、採取したガラス基板に検査を行う工程とを含む。このため、応力の負荷に伴って生じるガラス基板の寸法変化の大きさを高精度に予測することができる。従って、製造されるガラス基板の品質を確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、可撓性を有するガラス基板について、応力の負荷に伴うガラス基板の寸法変化の検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を示す立体図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法に含まれるマーク形成工程を示す側面図である。
【
図3】発明が解決しようとする課題を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係るガラス基板の検査方法、及び、当該検査方法を含んだガラス基板の製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0029】
本実施形態に係るガラス基板の製造方法では、例えば、ダウンドロー法により成形原板(ガラス原板)を成形し、成形原板から切り出された(製造された)複数枚のガラス基板から任意のガラス基板を採取する。また、後述するガラス基板の検査方法により、採取したガラス基板の寸法変化を検査する。
【0030】
図1に示すように、検査の対象となるガラス基板1は矩形の形状を有し、500mm角以上のサイズを有する基板である。また、このガラス基板1は可撓性を有する。可撓性の観点から、ガラス基板1の厚みは、500μm以下とすることが好ましく、300μm以下とすることがより好ましく、200μm以下とすることが更に好ましく、100μm以下とすることが最も好ましい。一方、ガラス基板1の厚みは、50μm以上とすることが好ましい。さらに、このガラス基板1に対しては、膜1aが既に成膜されている。膜1aは、例えば、ITO膜といった酸化膜や金属膜等である。金属膜は、例えば、Mo、Al、Ti又はCu等の膜である。あるいは、それらの金属の合金膜である。また、膜1aは、化学蒸着(CVD)といった蒸着法やスパッタリング法等によって成膜される。なお、膜1aは単層である場合もあるし、多層である場合もある。また、ガラス基板1は、膜1aが成膜されていないものであってもよい。
【0031】
上記の検査方法は、ガラス基板1に複数(本実施形態では9つ)のマーク2を形成するマーク形成工程P1と、ガラス基板1に形成されたマーク2同士の相互間距離Lを測定する第1測定工程P2と、測定後のガラス基板1に応力を負荷する応力負荷工程P3と、応力を負荷した後のガラス基板1におけるマーク2同士の相互間距離L’を測定する第2測定工程P4とを含んでいる。
【0032】
ここで、本実施形態においては、第1測定工程P2と第2測定工程P4との実行に伴い、応力負荷工程P3の前後におけるマーク2同士の相互間距離の変化(L’−L)から寸法変化を割り出している。すなわち、本実施形態では、上記の第1測定工程P2と第2測定工程P4との双方により寸法変化割出工程PPを構成している。
【0033】
マーク形成工程P1では、ガラス基板1における4つのコーナー部と、ガラス基板1の4つの辺部の各々における中点と、ガラス基板1の中央部との合計9箇所にマーク2を形成する。これら9つのマーク2は、ガラス基板1の表裏面のうちの同じ面側に形成する。
【0034】
図2に示すように、マーク2は、十字形状をなす金属膜2aaが成膜されたガラス板片2aをガラス基板1に貼り付けることで形成する。
【0035】
金属膜2aaは、例えば、スパッタリング法によりガラス板片2aに成膜することが可能である。金属膜2aaの十字形状は、後に実行される第1測定工程P2および第2測定工程P4において、それぞれ相互間距離L,L’を測定するべくマーク2の座標(平面座標)を読み取るための図形である。なお、本実施形態では、十字形状の中心の座標をマーク2の座標として読み取る。
【0036】
ガラス板片2aは、ガラス基板1と同一組成を有するガラスで構成された矩形の板片であり、接着剤(図示省略)を介してガラス基板1に貼り付ける。接着剤には、例えば、紫外線硬化型の樹脂系接着剤等を用いることができる。なお、ガラス板片2aは、オーバーフローダウンドロー法により成形されたガラスであって、表裏面が平滑に形成されている。
【0037】
図1に示すように、第1測定工程P2では、まず、ガラス基板1を水平に平置きした状態の下で、2次元座標測定機(図示省略)に搭載された撮像手段としてのカメラ3を用いて各マーク2の座標を読み取る。このカメラ3は、同図に示すX方向、及び、X方向に直交するY方向の各々に沿って水平に移動が可能となっている。すなわち、読み取られる各マーク2の座標はXY座標である。さらに、読み取られる各マーク2の座標は絶対座標である。その後、読み取った各マーク2の座標からマーク2同士の相互間距離Lを測定する。なお、本実施形態においては、9つのマーク2を形成しているので、マーク2同士の相互間距離Lを合計36通り測定できるが、
図1では、これらのうちの1つを図示している。
【0038】
応力負荷工程P3では、ガラス基板1を構成部品とする製品(本実施形態では、TFT基板を例に挙げる)の製造工程において、ガラス基板1になされる処置や処理を再現した態様により、ガラス基板1に応力を負荷する。
【0039】
図1(
図1中の応力負荷工程P3を示す各図では、マーク2の図示は省略している)に示す3つの態様の各々は、ガラス基板1を構成部品とする製品であるTFT基板の製造工程において、ガラス基板1になされる処置や処理を再現した態様である。これら3つの態様では、いずれもガラス基板1に対して外力を作用させることで応力を負荷する。本実施形態では、これら3つの態様のうち、少なくとも1つをガラス基板1に行う。なお、3つの態様の各々でガラス基板1に負荷される応力の大きさは、公知の解析方法を用いて10MPa〜150MPaの範囲内となるように調節している。
【0040】
第1の態様は、ガラス基板1を複数の棒状体としてのピン4により下方から支持した状態でガラス基板1を昇降させる態様である。複数のピン4は、ガラス基板1を支持するための定盤5に形成された支持面5aに対して出退が可能となっている。この複数のピン4により、定盤5上に載置したガラス基板1を支持面5aから持ち上げた後、再び支持面5a上に降ろして定盤5上に載置する。この動作に伴ってガラス基板1に応力を負荷する。この際、ガラス基板1が波打つように撓む虞がある。
【0041】
第2の態様は、ガラス基板1を定盤6の吸着手段により吸着する態様である。ガラス基板1を支持するための定盤6に形成された支持面6aには、多数の吸引孔(図示省略)が形成されており、各吸引孔が負圧によりガラス基板1を吸引することが可能となっている。この多数の吸引孔により、ガラス基板1を定盤6の支持面6a上に吸着する。この吸着に伴ってガラス基板1に応力を負荷する。この際、ガラス基板1が波打つように撓む虞がある。
【0042】
第3の態様は、ガラス基板1に膜1bを成膜する態様である。膜1bは、膜1aと同様に、例えば、酸化膜や金属膜等とすることができ、蒸着法やスパッタリング法等により成膜することが可能である。なお、本実施形態において、ガラス基板1には、膜1bの成膜前に既に膜1aが成膜されているので、膜1bは既に成膜済みの膜1aに重ねて成膜する。この成膜に伴ってガラス基板1に応力を負荷する。この際、ガラス基板1には反りが生じる虞がある。
【0043】
第2測定工程P4では、上記の第1測定工程P2と同様にして、マーク2同士の相互間距離L’を測定する。この第2測定工程P4が完了すると、第1測定工程P2で測定した相互間距離Lと、第2測定工程P4で測定した相互間距離L’との差(L’−L)が、ガラス基板1の寸法変化として割り出される。以上により、本実施形態に係るガラス基板の検査方法が完了する。
【0044】
以下、上記のガラス基板の検査方法、及び、当該検査方法を含んだガラス基板の製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0045】
上記の検査方法によれば、応力負荷工程P3の実行に伴ってガラス基板1に応力を負荷することが可能である。そして、第1測定工程P2および第2測定工程P4(寸法変化割出工程PP)の実行により、応力負荷工程P3の前後におけるマーク2同士の相互間距離Lの変化からガラス基板1の寸法変化を割り出すことができる。従って、応力の負荷に伴うガラス基板1の寸法変化を検査することが可能となる。また、上記の製造方法によれば、応力の負荷に伴って生じる寸法変化の大きさを高精度に予測することが可能なガラス基板1を製造できる。
【0046】
ここで、本発明に係るガラス基板の検査方法および製造方法は、上記の実施形態で説明した態様に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、応力負荷工程の前後でそれぞれマーク同士の相互間距離を測定する態様となっているが、応力負荷工程の実行前におけるマーク同士の相互間距離は、応力負荷工程の実行後に算出するようにしてもよい。すなわち、応力負荷工程の実行前には、各マークの座標のみを読み取っておき、マーク同士の相互間距離は測定せずにおく。そして、応力負荷工程の実行後に、実行前に読み取っておいた各マークの座標に基づいて、応力負荷工程の実行前におけるマーク同士の相互間距離を算出するようにしてもよい。
【0047】
また、マークの図形は、十字形状には限定されず、マークの座標を読み取ることができる形状であれば、他の形状であってもよい。例えば、円形状や多角形状(一例を挙げると三角形状や四角形状)等であってもよい。円形状又は多角形状とする場合、マークの輪郭がこれらの形状に形成される形態であってもよく、さらに輪郭内の領域が塗りつぶされる形態であってもよい。
【0048】
さらに、マークの形成は、金属膜が成膜されたガラス板片をガラス基板に貼り付ける形態には限定されず、例えば、プリンタによって印字する形態等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラス基板
1a 膜
1b 膜
2 マーク
2a ガラス板片
2aa 金属膜
4 ピン
6 定盤
L 相互間距離
L’ 相互間距離
P1 マーク形成工程
P2 第1測定工程
P3 応力負荷工程
P4 第2測定工程
PP 寸法変化割出工程