(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の転舵輪を転舵させる動力を操舵機構に対して付与するように、当該動力の発生源であるモータの駆動を制御する制御処理部を備え、前記モータの駆動を制御するために前記制御処理部が必要とする制御情報を通信する複数の通信回線が個別に接続されてなる操舵制御装置において、
前記複数の通信回線のうち、何れの通信回線で通信される前記制御情報の値を入力値として前記モータの駆動の制御に使用するように設定するか選択状態を切り替え可能な構成とされている選択切替部と、
前記選択切替部の前記選択状態が切り替えられた後の前記入力値である選択後入力値が予め定めた許容範囲を逸脱するときには前記選択後入力値の替わりに、前記許容範囲内の値として生成される制限値を前記モータの駆動の制御に使用するように設定する構成とされている入力値制限部と、を備え、
前記許容範囲は、前記選択切替部の前記選択状態が切り替えられた後、それぞれ直前に前記モータの駆動の制御に使用した前記制御情報の値を基準とし、前記車両の車速に応じて予め定められている制限用閾値によって設定される範囲である操舵制御装置。
前記入力値制限部は、前記選択切替部の前記選択状態が切り替えられた後、前記選択後入力値が前記許容範囲を逸脱したとしても、前記制限値を前記モータの駆動の制御に使用するように設定する間に前記選択後入力値が前記許容範囲を逸脱しなくなった後には前記選択後入力値を前記モータの駆動の制御に使用するように設定する構成とされている請求項1に記載の操舵制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、操舵制御装置の一実施形態を説明する。
図1に示すように、車両Aには、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems:先進運転支援システム)などの運転者の運転を支援する電動パワーステアリング装置(自動操舵装置)1が搭載されている。
【0017】
電動パワーステアリング装置1は、ユーザーのステアリングホイール10の操作に基づき転舵輪15を転舵させる操舵機構2、及び当該操舵機構2に対して転舵輪15を転舵させる動力(アシスト力)を付与するアクチュエータ3を備えている。
【0018】
操舵機構2は、ユーザーにより操作されるステアリングホイール10と、ステアリングホイール10と固定されるステアリングシャフト11とを備えている。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10と連結されたコラムシャフト11aと、コラムシャフト11aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト11bと、インターミディエイトシャフト11bの下端部に連結されたピニオンシャフト11cとを有している。ピニオンシャフト11cの下端部は、ラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12に連結されている。ステアリングシャフト11の回転運動は、ラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12の軸方向の往復直線運動に変換される。この往復直線運動が、ラックシャフト12の両端にそれぞれ連結されたタイロッド14を介して、左右の転舵輪15にそれぞれ伝達されることにより、これら転舵輪15の転舵角が変化する。
【0019】
ステアリングホイール10と固定されたコラムシャフト11aの途中には、操舵機構2に対して付与する動力(アシスト力)の発生源であるモータ20を有するアクチュエータ3が設けられている。例えば、モータ20は、表面磁石同期電動機(SPMSM)であり、3相(U,V,W)の駆動電力に基づいて回転する3相ブラシレスモータである。モータ20の回転軸21は、減速機構22を介してコラムシャフト11aに連結されている。アクチュエータ3は、モータ20の回転軸21の回転力を減速機構22を介してコラムシャフト11aに伝達する。このコラムシャフト11aに付与されるモータ20のトルク(回転力)が動力となり、左右の転舵輪15の転舵角を変化させる。
【0020】
図1及び
図2に示すように、モータ20は、その回転軸21を中心に回転するロータ23と、ロータ23の外周に配置されるステータ24とを備えている。ロータ23には、その表面に永久磁石が固定されている。永久磁石は、ロータ23の周方向に異なる極性(N極、S極)が交互に並んで配置されている。こうした永久磁石は、モータ20が回転する際に磁界、すなわち界磁を形成する。ステータ24には、3相(U相、V相、W相)の複数の巻線25が円環状に配されている。巻線25は、第1の系統の巻線(以下「第1巻線」という)26と第2の系統の巻線(以下「第2巻線」という)27とに分類される。各巻線26,27は、それぞれスター結線されている。なお、各巻線26,27は、それぞれの各相の巻線がステータ24の周に沿って系統毎に交互に配置されたり、それぞれの各相の巻線がステータ24の周に沿って纏めて並べて配置されたり、同一ティースにステータ24の径方向に積層されて配置されたりする。
【0021】
アクチュエータ3には、モータ20の駆動を制御する操舵制御装置としての操舵ECU(Electronic Control Unit)30が接続されている。操舵ECU30は、車両Aに設けられる各種のセンサの検出結果に基づきモータ20の制御量である電流の供給を制御することによって、モータ20の駆動を制御する。各種のセンサとしては、例えば、トルクセンサ40a,40b、回転角センサ41a,41b、及び車速センサ42がある。トルクセンサ40a,40bは、コラムシャフト11aにそれぞれ設けられている。回転角センサ41a,41bは、モータ20にそれぞれ設けられている。トルクセンサ40a,40bは、ユーザーのステアリング操作によりステアリングシャフト11に変化を伴って生じる操舵トルクTr1,Tr2をそれぞれ検出する。回転角センサ41a,41bは、モータ20の回転軸21の回転角度θm1,θm2をそれぞれ検出する。車速センサ42は、車両Aの走行速度である車速Vを検出する。
【0022】
操舵ECU30は、車載ネットワークを構成するCAN(Controller Area Network、登録商標)等のメイン通信回線C1と、サブ通信回線C2とを介して車載されるADASECU(Electronic Control Unit)43と通信可能に接続されている。なお、操舵ECU30は、車載ネットワークを構成する図示しないセンサ用通信回線を介して各種のセンサ40a,40b,41a,41b,42と通信可能に接続されている。
【0023】
ADASECU43は、例えば、車両Aが走行中の走行レーンを維持して走行したり、車両Aが衝突を回避して走行したりするように設定される目標コース(目標進路)に沿った車両Aの走行を実現する運転支援制御を操舵ECU30に対して指示する。ADASECU43は、車載されるカメラCmで撮影された画像データや、車載されるレーダーRaの検出結果に基づき運転支援制御に使用する目標コースを演算する。ADASECU43によって演算される目標コースは、道路に対する車両Aの相対的な方向であり、車両Aの進路を示す情報である。
【0024】
次に、電動パワーステアリング装置1の電気的構成について説明する。
図2に示すように、まずADASECU43について言えば、車載されるカメラCmで撮影された画像データや、車載されるレーダーRaの検出結果に基づいて演算した目標コースを示す情報であるメイン指令値ADAS1*をメイン通信回線C1に対して所定周期毎に出力する。また、ADASECU43は、メイン指令値ADAS1*と同一の情報であり当該メイン指令値ADAS1*の替わりに使用することが可能に構成されるサブ指令値ADAS2*をサブ通信回線C2に対して所定周期毎に出力する。なお、各指令値ADAS1*,ADAS2*は、方向成分を含む情報であり、本実施形態では車両Aの進行方向に対して右方向が正値(+)、左方向が負値(−)となるように構成されている。
【0025】
そして、操舵ECU30には、メイン通信回線C1のバス端子と接続されるメイントランシーバt1を介して、ADASECU43が出力するメイン指令値ADAS1*が入力される。また、操舵ECU30には、サブ通信回線C2のバス端子と接続されるサブトランシーバt2を介して、ADASECU43が出力するサブ指令値ADAS2*が入力される。
【0026】
また、操舵ECU30は、モータ20の第1巻線26に対して電流を供給するメイン制御系統31と、モータ20の第2巻線27に対して電流を供給するサブ制御系統32とを有している。メイン制御系統31は、PWM信号P1を生成するメインマイコン310と、PWM信号P1に基づきモータ20に電流を供給する第1駆動回路311と、第1駆動回路311と第1巻線26との間の給電経路に生じる各相の電流値I1を検出する第1電流検出回路312とを有している。サブ制御系統32は、PWM信号P2を生成するサブマイコン320と、PWM信号P2に基づきモータ20に電流を供給する第2駆動回路321と、第2駆動回路321と第2巻線27との間の給電経路に生じる各相の電流値I2を検出する第2電流検出回路322とを有している。本実施形態において、メインマイコン310は第1の制御処理部の一例であり、サブマイコン320は第2の制御処理部の一例である。
【0027】
メインマイコン310は、トルクセンサ40aと、回転角センサ41aと、車速センサ42との検出結果を取得するとともに、ADASECU43からの指令値を取得する。そして、メインマイコン310は、検出結果や指令値に基づきPWM信号P1を生成し、第1駆動回路311に対して出力する。これと同様、サブマイコン320は、トルクセンサ40bと、回転角センサ41bと、車速センサ42との検出結果を取得するとともに、ADASECU43から指令値を取得する。そして、サブマイコン320は、検出結果や指令値に基づきPWM信号P2を生成し、第2駆動回路321に対して出力する。
【0028】
具体的には、メインマイコン310は、メイントランシーバt1を介してメイン通信回線C1と接続されているとともに、サブトランシーバt2を介してサブ通信回線C2と接続されている。すなわち、メインマイコン310は、メイントランシーバt1を介してメイン指令値ADAS1*を取得可能であるとともに、サブトランシーバt2を介してサブ指令値ADAS2*を取得可能に構成されている。これと同様、サブマイコン320は、メイントランシーバt1を介してメイン通信回線C1と接続されているとともに、サブトランシーバt2を介してサブ通信回線C2と接続されている。すなわち、サブマイコン320は、メイントランシーバt1を介してメイン指令値ADAS1*を取得可能であるとともに、サブトランシーバt2を介してサブ指令値ADAS2*を取得可能に構成されている。また、メインマイコン310と、サブマイコン320とは、互いに必要な情報を相互通信可能に構成されている。各マイコン310,320は、自身のマイコン異常や接続されるセンサのセンサ異常等の情報を共有する。
【0029】
次に、操舵ECU30の各マイコン310,320の機能について詳しく説明する。
図3に示すように、メインマイコン310は、アシスト制御量設定部410、入力値処理部411、ADAS制御量設定部412、制御量処理部413、及びPWM出力部414を有している。また、サブマイコン320は、アシスト制御量設定部410と同機能のアシスト制御量設定部420、入力値処理部411と同機能の入力値処理部421、ADAS制御量設定部412と同機能のADAS制御量設定部422、制御量処理部413と同機能の制御量処理部423、及びPWM出力部414と同機能のPWM出力部424を有している。このように、各マイコン310,320は同機能を有しているため、以下では、便宜上、メインマイコン310の機能を中心に説明する。
【0030】
アシスト制御量設定部410には、操舵トルクTr1と、車速Vとがそれぞれ入力される。アシスト制御量設定部410は、操舵トルクTr1と、車速Vとに基づきモータ20に発生させる電流の目標値であるアシスト制御量TA*を設定して出力する。アシスト制御量TA*は、ユーザーのステアリング操作をアシスト(補助)するために付与するアシスト力の目標値であり、電動パワステ制御を実行するための制御量である。
【0031】
入力値処理部411には、車速Vと、メイン指令値ADAS1*と、サブ指令値ADAS2*とがそれぞれ入力される。入力値処理部411は、各指令値ADAS1*,ADAS2*に基づき運転支援制御で使用する運転支援指令値ADAS*を出力する。
【0032】
入力値処理部411から出力された運転支援指令値ADAS*は、ADAS制御量設定部412に対して入力される。ADAS制御量設定部412は、運転支援指令値ADAS*に基づきモータ20に発生させる電流の目標値であるADAS制御量TB*を設定して出力する。ADAS制御量TB*は、ADASECU43が演算する目標コースを車両Aが追従するようにユーザーのステアリング操作をアシスト(補助)するアシスト力の目標値であり、運転支援制御を実行するための制御量である。
【0033】
アシスト制御量設定部410から出力されるアシスト制御量TA*と、ADAS制御量設定部412から出力されるADAS制御量TB*とは、加算処理部415を通じて加算される。この加算された値は、最終的な電流の目標値であるアシストトルク指令値T*として、制御量処理部413に対して入力される。制御量処理部413は、アシストトルク指令値T*と、回転角センサ41aから得られる回転角度θm1と、第1電流検出回路312から得られる電流値I1とに基づきPWM信号P1を生成し、第1駆動回路311に対して出力する。
【0034】
本実施形態では、基本的には、各マイコン310,320のうち、メインマイコン310がマスター処理部として機能するとともに、サブマイコン320がスレーブ処理部として機能するように構成されている。
【0035】
図3に実線で示すように、メインマイコン310で演算されるアシストトルク指令値T*と、メインマイコン310に入力される回転角度θm1とは、制御量処理部413を通じてサブマイコン320の制御量処理部423に対して出力される。そして、サブマイコン320の制御量処理部423は、メインマイコン310から得られるアシストトルク指令値T*及び回転角度θm1と、第2電流検出回路322から得られる電流値I2とに基づきPWM信号P2を生成し、第2駆動回路321に対して出力する。
【0036】
図3に破線で示すように、サブマイコン320は、メインマイコン310と同様、アシスト制御量設定部420において、アシスト制御量TA*を設定している。また、サブマイコン320は、入力値処理部421において、運転支援指令値ADAS*を設定している。また、サブマイコン320は、ADAS制御量設定部422において、ADAS制御量TB*を設定している。また、サブマイコン320は、制御量処理部423において、アシストトルク指令値T*が入力されている。
【0037】
そして、メインマイコン310にマイコン異常やセンサ異常が生じる場合には、メインマイコン310の替わりにサブマイコン320がマスター処理部として機能するとともに、メインマイコン310がスレーブ処理部として機能するように構成されている。
【0038】
この場合、
図3に破線で示すように、サブマイコン320において、制御量処理部423は、加算処理部425を通じて加算された値であるアシストトルク指令値T*と、回転角センサ41bから得られる回転角度θm2と、第2電流検出回路322から得られる電流値I2とに基づきPWM信号P2を生成し、第2駆動回路321に対して出力する。
【0039】
また、サブマイコン320で演算されるアシストトルク指令値T*と、サブマイコン320に入力される回転角度θm2とは、制御量処理部423を通じてメインマイコン310の制御量処理部413に対して出力される。メインマイコン310の制御量処理部413は、サブマイコン320から得られるアシストトルク指令値T*及び回転角度θm2と、第1電流検出回路312から得られる電流値I1とに基づきPWM信号P1を生成し、第1駆動回路311に対して出力する。なお、各マイコン310,320の何れにもマイコン異常やセンサ異常が生じる場合、各マイコン310,320は、モータ20の駆動の制御を実行不能にする。
【0040】
次に、各マイコン310,320の入力値処理部411,421の機能についてさらに詳しく説明する。各マイコン310,320の入力値処理部411,421は同機能を有しているため、以下では、便宜上、入力値処理部411の機能を中心に説明する。
【0041】
図4に示すように、入力値処理部411は、選択切替部511を有する異常検出部510、変化量ガード部513及び出力値切替部514を有する入力値制限部512を備えている。
【0042】
異常検出部510において、選択切替部511には、メイン指令値ADAS1*と、サブ指令値ADAS2*とがそれぞれ入力される。選択切替部511は、各指令値ADAS1*,ADAS2*の何れを選択後指令値ADAS(N)*として出力するか切り替えるように、選択状態が制御されるように構成されている。選択後指令値ADAS(N)*は、モータ20の駆動の制御に使用するように入力値制限部512に入力される選択後入力値である。
【0043】
異常検出部510は、メイン指令値ADAS1*に基づきメイン通信回線C1の通信状態を検出するとともに、サブ指令値ADAS2*に基づきサブ通信回線C2の通信状態を検出する。そして、異常検出部510は、各通信回線C1,C2の通信状態に基づき選択切替部511の選択状態を制御する。
【0044】
具体的には、異常検出部510は、メイン通信回線C1について、メイン指令値ADAS1*を通信可能な正常状態と、異常を起こしているがメイン指令値ADAS1*を通信可能な状態である準正常状態と、異常を起こしていてメイン指令値ADAS1*を通信不能な状態である異常状態とを検出する。これら通信状態は、メイン指令値ADAS1*の未受信の回数に基づき検出される。メイン指令値ADAS1*は、適切なタイミングで受信できない場合や、適切なタイミングで受信できるがその値にチェックサムにおいて異常がある場合に未受信となる。また、メイン指令値ADAS1*は、その絶対値が設計上の上限値を超える場合や、ADASECU43自身の異常を通知する情報を含む場合にも未受信となる。これは、サブ通信回線C2の通信状態についても同様である。
【0045】
例えば、
図5に示すように、異常検出部510は、メイン指令値ADAS1*の未受信が連続した回数である未受信回数Erを計数し、当該未受信回数Erが閾回数Eth未満(Er<Eth)の場合、メイン通信回線C1が正常状態を検出する。なお、閾回数Ethは、例えば、2回等、数回である。この正常状態は、CANにおけるエラーアクティブ状態に相当する。
【0046】
また、異常検出部510は、未受信回数Erが閾回数Eth以上であり、この状態の継続が閾時間Tth未満(Er≧Eth)の場合、メイン通信回線C1が準正常状態を検出する。なお、閾時間Tthは、例えば、1秒等、わずか数秒である。この準正常状態は、正常状態中に検出され、異常状態ではないが異常を検出しているため通信状態に不安のある異常検出中であることを示し、CANにおけるエラーパッシブ状態に相当する。なお、準正常状態は、未受信回数Erが閾回数Eth未満となる場合、メイン通信回線C1が正常状態へと復帰する。
【0047】
また、異常検出部510は、未受信回数Erが閾回数Eth以上であり、この状態の継続が閾時間Tth以上(Er≧Eth継続)の場合、メイン通信回線C1が異常状態を検出する。この異常状態は、準正常状態中に検出され、異常を検出していることを確定させることを示し、CANにおけるバスオフ状態に相当する。なお、異常状態は、メイン通信回線C1が準正常状態へと復帰不能であり、通信のリセット等、特別な条件を満たす場合にメイン通信回線C1が正常状態へと復帰する。
【0048】
そして、異常検出部510は、メイン通信回線C1が正常状態の場合、メイン指令値ADAS1*が出力されるように選択切替部511の選択状態を制御する。すなわち、異常検出部510は、メイン通信回線C1が正常状態の場合、サブ通信回線C2の通信状態に関係なくメイン指令値ADAS1*の使用を設定するように構成されている。本実施形態において、メイン通信回線C1は、基本的に運転支援制御に使用されるように設定される通信回線である。このメイン通信回線C1で通信されるメイン指令値ADAS1*は、基本的に運転支援制御に使用するように設定されるメイン制御情報である。
【0049】
また、異常検出部510は、メイン通信回線C1が準正常状態又は異常状態である、すなわち正常状態でない場合、サブ通信回線C2が正常状態であることを条件としてサブ指令値ADAS2*が出力されるように選択切替部511の選択状態を制御する。このように、異常検出部510は、メイン通信回線C1が正常状態でない場合、サブ通信回線C2が正常状態であることを条件としてサブ指令値ADAS2*の使用を設定するように構成されている。本実施形態において、サブ通信回線C2は、メイン通信回線C1が正常状態でなく通信状態に不安のある場合に、替わりに運転支援制御に使用されるように設定される通信回線である。このサブ通信回線C2で通信されるサブ指令値ADAS2*は、メイン通信回線C1が正常状態でなく通信状態に不安のある場合に、替わりに運転支援制御に使用するように設定されるサブ制御情報である。なお、異常検出部510は、各通信回線C1,C2の何れもが正常状態でない場合、その時の選択切替部511の選択状態を保持するように制御する。
【0050】
また、入力値制限部512において、変化量ガード部513には、選択後指令値ADAS(N)*と、車速Vと、直前に運転支援制御に使用した運転支援指令値ADAS*である切替後指令値ADAS(N−1)*とがそれぞれ入力される。変化量ガード部513は、選択後指令値ADAS(N)*と、車速Vと、切替後指令値ADAS(N−1)*とに基づき制限指令値Rg*を生成して出力値切替部514に対して出力するように構成されている。
【0051】
具体的には、変化量ガード部513は、選択後指令値ADAS(N)*が車速Vに応じて定められた許容範囲を逸脱する場合、制限指令値Rg*を出力する。本実施形態において、許容範囲は、切替後指令値ADAS(N−1)*を基準とし、車速Vに応じて定められた制限用閾値Gthによって設定され、切替後指令値ADAS(N−1)*と、制限用閾値Gthとを加算した値の絶対値以下の範囲である。また、制限指令値Rg*は、切替後指令値ADAS(N−1)*と、制限用閾値Gthとを加算した値であり、許容範囲の最大値又は最小値である。
【0052】
図6に示すように、変化量ガード部513は、車速Vと、制限用閾値Gthの絶対値との関係を定めたマップを備えている。このマップは、車速Vが大きいほど、制限用閾値Gthの絶対値として小さい値が設定されている。なお、選択後指令値ADAS(N)*及び切替後指令値ADAS(N−1)*は、各指令値ADAS1*,ADAS2*と同様、方向成分を含む情報である。また、制限用閾値Gthは、方向成分を含む情報であり、基本的に切替後指令値ADAS(N−1)*と同一方向成分となるように正値(+)又は負値(−)として設定される。
【0053】
例えば、選択後指令値ADAS(N)*として、メイン指令値ADAS1*が出力されていた選択状態からサブ指令値ADAS2*が出力される選択状態に、選択切替部511の選択状態が切り替えられる場合、その切り替えの前後で選択後指令値ADAS(N)*が急変するような想定外のずれを有する場合がある。これに対して、制限用閾値Gthは、選択切替部511の選択状態の切り替えの前後で選択後指令値ADAS(N)*が急変しないとして実験的に求められる範囲の値が設定されている。
【0054】
また、入力値制限部512において、出力値切替部514には、選択後指令値ADAS(N)*と、制限指令値Rg*とがそれぞれ入力される。出力値切替部514は、選択後指令値ADAS(N)*と、制限指令値Rg*との何れを運転支援指令値ADAS*として出力するか切り替えるように、選択状態が制御されるように構成されている。
【0055】
入力値制限部512は、入力される選択後指令値ADAS(N)*が選択切替部511の選択状態が切り替えられた後の値である場合、当該選択後指令値ADAS(N)*が変化量ガード部513で設定される許容範囲を逸脱しているか否かを検出する。そして、入力値制限部512は、入力される選択後指令値ADAS(N)*に基づき出力値切替部514の選択状態を制御する。
【0056】
具体的には、入力値制限部512は、入力される選択後指令値ADAS(N)*が選択切替部511の選択状態が切り替えられた後の値でない場合、運転支援指令値ADAS*として選択後指令値ADAS(N)*が出力されるように、出力値切替部514の選択状態を制御する。これは、入力される選択後指令値ADAS(N)*が選択切替部511の選択状態が切り替えられた後の値であるが許容範囲を逸脱していない場合についても同様である。
【0057】
また、入力値制限部512は、入力される選択後指令値ADAS(N)*が選択切替部511の選択状態が切り替えられた後の値であり、当該選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱している場合、運転支援指令値ADAS*として制限指令値Rg*が出力されるように、出力値切替部514の選択状態を制御する。
【0058】
次に、入力値処理部411が運転支援指令値ADAS*を出力するために実行する入力値処理(
図7)について、異常検出部510が実行するサブ情報有効判定処理(
図8)、メイン情報有効判定処理(
図9)、及び情報選択処理(
図10)と、入力値制限部512が実行する入力値制限処理(
図11)とについて詳しく説明する。ここでも、各マイコン310,320の入力値処理部411,421は同機能を有しているため、以下では、便宜上、入力値処理部411の機能を中心に説明する。
【0059】
入力値処理部411は、運転支援制御を実行可能である場合に、メインマイコン310の制御周期毎に入力値処理を実行する。
図7に示すように、入力値処理部411は、まず異常検出部510において、サブ情報有効判定処理(ステップS10)、メイン情報有効判定処理(ステップS20)、情報選択処理(ステップS30)をこの順にそれぞれ実行する。続いて、入力値処理部411は、入力値制限部512において、入力値制限処理(ステップS40)を実行し、その後、再び異常検出部510において、サブ情報有効判定処理(ステップS10)を実行する。
【0060】
具体的には、
図8に示すように、サブ情報有効判定処理(ステップS10)において、異常検出部510は、サブ通信回線C2が正常状態であるか否かを判定する(ステップS11)。異常検出部510は、サブ通信回線C2が正常状態の場合(ステップS11:YES)、サブ情報有効FLGに「1」を設定(ステップS12)し、サブ情報有効判定処理を終了して入力値処理に戻る。サブ情報有効FLGは、サブ通信回線C2の通信状態を示す情報であり、メインマイコン310の所定の記憶領域に設定されている。
【0061】
一方、異常検出部510は、サブ通信回線C2が正常状態でない場合(ステップS11:NO)、サブ情報有効FLGに「0(零値)」を設定し(ステップS13)、サブ情報有効判定処理を終了して入力値処理に戻る。
【0062】
また、
図9に示すように、メイン情報有効判定処理(ステップS20)において、異常検出部510は、メイン通信回線C1が正常状態であるか否かを判定する(ステップS21)。異常検出部510は、メイン通信回線C1が正常状態の場合(ステップS21:YES)、メイン情報有効FLGに「1」を設定(ステップS22)し、メイン情報有効判定処理を終了して入力値処理に戻る。メイン情報有効FLGは、メイン通信回線C1の通信状態を示す情報であり、メインマイコン310の所定の記憶領域に設定されている。
【0063】
一方、異常検出部510は、メイン通信回線C1が正常状態でない場合(ステップS21:NO)、メイン情報有効FLGに「0(零値)」を設定し(ステップS23)、メイン情報有効判定処理を終了して入力値処理に戻る。
【0064】
また、
図10に示すように、情報選択処理(ステップS30)において、異常検出部510は、メイン情報有効FLGに「1」が設定されているか否かを判定する(ステップS31)。異常検出部510は、メイン情報有効FLGに「1」が設定されている場合(ステップS31:YES)、メイン通信回線C1が正常状態であることを判定し、メイン通信回線C1で通信されるメイン指令値ADAS1*の使用を設定する(ステップS32)。ステップS32にて、異常検出部510は、メイン指令値ADAS1*が出力されるように、選択切替部511の選択状態を制御する。その後、異常検出部510は、選択FLGに「1」を設定(ステップS33)し、情報選択処理を終了して入力値処理に戻る。選択FLGは、選択切替部511の選択状態を示す情報であり、メインマイコン310の所定の記憶領域に設定されている。なお、選択FLGは、最新の内容である選択FLG(N)と、前回の内容である選択FLG(N−1)とがそれぞれ記憶されている。
【0065】
一方、異常検出部510は、メイン情報有効FLGに「1」が設定されていない場合(ステップS31:NO)、サブ情報有効FLGに「1」が設定されているか否か、すなわちメイン情報有効FLGに「0」且つサブ情報有効FLGに「1」がそれぞれ設定されているか否かを判定する(ステップS34)。異常検出部510は、メイン情報有効FLGに「0」且つサブ情報有効FLGに「1」がそれぞれ設定されている場合(ステップS34:YES)、メイン通信回線C1が正常状態でなく、サブ通信回線C2が正常状態であることを判定し、サブ通信回線C2で通信されるサブ指令値ADAS2*の使用を設定する(ステップS35)。ステップS35にて、異常検出部510は、サブ指令値ADAS2*が出力されるように、選択切替部511の選択状態を制御する。その後、異常検出部510は、選択FLGに「2」を設定(ステップS36)し、情報選択処理を終了して入力値処理に戻る。
【0066】
一方、異常検出部510は、メイン情報有効FLGに「0」且つサブ情報有効FLGに「1」がそれぞれ設定されていない場合(ステップS34:NO)、各通信回線C1,C2の何れもが正常状態でないことを判定し、その時の各指令値ADAS1*,ADAS2*の使用の設定を保持する(ステップS37)。ステップS37にて、異常検出部510は、その時の選択切替部511の選択状態を保持するとともに、選択FLGの内容についても保持し、サブ情報有効判定処理を終了して入力値処理に戻る。
【0067】
また、
図11に示すように、入力値制限処理(ステップS40)において、入力値制限部512は、選択FLG(N)と、選択FLG(N−1)とが不一致であるか否かを判定する(ステップS41)。入力値制限部512は、選択FLG(N)と、選択FLG(N−1)とが一致する場合(ステップS41:NO)、選択切替部511の選択状態が切り替えられていないことを判定し、ステップS43の処理に移行する。
【0068】
一方、入力値制限部512は、選択FLG(N)と、選択FLG(N−1)とが不一致の場合(ステップS41:YES)、選択切替部511の選択状態の切り替え後に使用する選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱している可能性があることを判定し、切替中FLGに「1」を設定し(ステップS42)、ステップS43の処理に移行する。切替中FLGは、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後であって、その切り替え後に使用する選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱している可能性があるか否かを示す情報であり、メインマイコン310の所定の記憶領域に設定されている。
【0069】
続いて、ステップS41及びステップS42からステップS43に移行する入力値制限部512は、切替中FLGに「1」が設定されているか否かを判定する。入力値制限部512は、切替中FLGに「1」が設定されていない場合(ステップS43:NO)、選択後指令値ADAS(N)*の使用を設定する(ステップS44)。ステップS44にて、入力値制限部512は、選択後指令値ADAS(N)*が出力されるように、出力値切替部514の選択状態を制御する。その後、入力値制限部512は、入力値制限処理を終了して入力値処理に戻る。
【0070】
一方、入力値制限部512は、切替中FLGに「1」が設定されている場合(ステップS43:YES)、選択後指令値ADAS(N)*の絶対値(|ADAS(N)*|)が、切替後指令値ADAS(N−1)*と、制限用閾値Gthとを加算した値の絶対値(|ADAS(N−1)*+Gth|)よりも大きいか否かを判定する(ステップS45)。ステップS45にて、入力値制限部512は、変化量ガード部513において、選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱しているか否かを判定する。
【0071】
そして、入力値制限部512は、選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱している場合(ステップS45:YES)、制限指令値Rg*の使用を設定する(ステップS46)。ステップS46にて、入力値制限部512は、制限指令値Rg*が出力されるように、出力値切替部514の選択状態を制御する。その後、入力値制限部512は、入力値制限処理を終了して入力値処理に戻る。
【0072】
一方、入力値制限部512は、選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱していない場合(ステップS45:NO)、選択後指令値ADAS(N)*の使用を設定する(ステップS47)。ステップS47にて、入力値制限部512は、選択後指令値ADAS(N)*が出力されるように、出力値切替部514の選択状態を制御する。その後、入力値制限部512は、切替中FLGに「0(零値)」を設定し(ステップS48)、入力値制限処理を終了して入力値処理に戻る。ステップS48にて、入力値制限部512は、選択切替部511の選択状態の切り替え後であるが選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱していないことから、切替中FLGに「0」を設定する。
【0073】
以下、本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)入力値制限処理(
図11)において、入力値制限部512は、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後、選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱する場合、制限指令値Rg*の使用を設定するようにしている。
【0074】
そのため、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後、その切り替え後に使用する選択後指令値ADAS(N)*が想定外のずれを有していたとしても、このずれが制限指令値Rg*の使用を設定することによって抑制されるようになる。これにより、選択切替部511の選択状態の切り替えが運転支援制御に与える影響を低減させることができる。したがって、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後であっても、操舵機構2に対してアシスト力を適切に付与できない状況の発生を抑制することができる。
【0075】
(2)許容範囲は、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後、切替後指令値ADAS(N−1)*を基準とし、車両Aの車速Vに応じて関係が定められている制限用閾値Gthによって設定されるようにしている。
【0076】
そのため、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後、その切り替え後に使用する選択後指令値ADAS(N)*が想定外のずれを有していた場合、その時の車両Aの走行状態、すなわち車両Aの車速Vに応じて最適化した制限指令値Rg*の使用が可能になっている。したがって、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後であっても、操舵機構2に対してアシスト力を適切に付与できない状況の発生をより好適に抑制することができる。
【0077】
(3)入力値制限処理(
図11)において、入力値制限部512は、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後、制限指令値Rg*を使用して運転支援制御を継続する間に選択後指令値ADAS(N)*が許容範囲を逸脱しなくなった後には当該選択後指令値ADAS(N)*の使用を設定するようにしている。
【0078】
そのため、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後であっても、制限指令値Rg*の使用を設定する状況の長期化を抑制することができる。これにより、選択切替部511の選択状態が切り替えられた後であっても、各指令値ADAS1*,ADAS2*を使用して運転支援制御を実行する状態への迅速な復帰が可能になる。
【0079】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・操舵ECU30は、メインマイコン310を一つのみ備えるものでもよい。また、操舵ECU30は、メイン通信回線C1をメインマイコン310のみ、サブ通信回線C2をサブマイコン320のみに接続するものでもよい。この場合には、各マイコン310,320の間で、それぞれに接続される通信回線の通信状態を互いに通信可能に構成すればよい。また、この場合には、選択切替部511の選択状態と、各マイコン310,320のマスター処理部及びサブ処理部の切り替えとを関係付けて構成することができる。例えば、運転支援制御に使用する通信回線が接続されているマイコンをマスター処理部とし、残りのマイコンをスレーブ処理部とすればよい。
【0080】
・各マイコン310,320のそれぞれに入力値処理部411,421を設ける替わりに、入力値処理部411,421の機能を有するASIC(エーシック)等の演算部を各マイコン310,320とは別に設けてもよい。この場合には、各マイコン310,320で個別に一つずつ演算部を設けてもよいし、各マイコン310,320で共通に一つの演算部を設けてもよい。
【0081】
・切替中FLGは、「1」が一旦設定されると、通信のリセット等、特別な条件が満たされるまでの間、継続されるように構成してもよい。
・制限用閾値Gthを定めたマップは、車速V以外に、コラムシャフト11aの回転角及び転舵輪15の舵角、すなわち実角度θs、当該実角度θsの変化量を示す舵角角速度ω、モータ20の電流値I1,I2との関係を定めるものであってもよいし、これらを単独又は車速Vと組み合わせた関係を定めるものであってもよい。
【0082】
・制限用閾値Gthは、車速の走行状態、すなわち車速Vに関係なく予め設定される値であってもよい。
・制限指令値Rg*は、入力値制限処理のステップS45で用いた許容範囲に収まった値となるように生成されるのであれば、他の方法を適用可能である。
【0083】
・上記実施形態は、各通信回線C1,C2の通信異常の他の条件で、選択切替部511の選択状態が切り替えるように構成されるものに適用してもよい。例えば、マスター処理部がメインマイコン310からサブマイコン320に切り替わることを条件として、選択切替部511の選択状態が切り替えられるものが考えられる。
【0084】
・通信状態は、メイン通信回線C1について、メイン指令値ADAS1*を適切なタイミングで受信できない場合や、メイン指令値ADAS1*を適切なタイミングで受信できたがその値にチェックサムにおいて異常がある場合を、少なくとも未受信として判断するように構成されていればよい。これは、サブ通信回線C2の通信状態についても同様である。
【0085】
・通信状態は、メイン通信回線C1について、メインマイコン310の動作に関わる動作電圧等、各種の電圧を検出することによって、メイン指令値ADAS1*の未受信を判断するように構成されていてもよい。これは、サブ通信回線C2の通信状態についても同様である。
【0086】
・通信状態は、未受信回数Erが閾回数Ethよりも大きい第2閾回数以上の場合、通信状態とし異常状態を検出するように構成されていてもよい。
・メイン通信回線C1と、サブ通信回線C2とは、例えば、CANFD(CAN with Flexible Date Rate)やフレックスレイ(Flex Ray、登録商標)の通信方式を用いるように変更してもよい。また、各通信回線C1,C2の他、サブ通信回線C2と同様の役割を果たすサブ通信回線C3を増設して3回線としてもよいし、さらに同様の役割をサブ通信回線を増設して4回線以上としてもよい。
【0087】
・上記実施形態において、各指令値ADAS1*,ADAS2*は、例えば、道路に対する車両Aの相対角度を示す角度指令値で具体化したり、道路に対する車両Aの相対角度となるように転舵輪15を転舵させるトルクを示すトルク指令値で具体化したりしてもよい。なお、各指令値ADAS1*,ADAS2*として角度指令値を使用する場合、ADAS制御量設定部412,422は、回転角度θm1,θm2に処理を施し、コラムシャフト11aの回転角及び転舵輪15の舵角、すなわち実角度θsを算出し、これに基づき制御量を設定すればよい。また、各指令値ADAS1*,ADAS2*としてトルク指令値を使用する場合、ADAS制御量設定部412,422は、トルク指令値をそのまま制御量として設定すればよい。
【0088】
・運転支援制御は、目標コースを追従するのとは異なる方法でユーザーの運転を支援するものであってもよい。例えば、運転支援制御は、自動でブレーキを作動させる自動ブレーキ支援制御や横滑り防止制御(ビークル・スタビリティ・コントロール)等で実現してもよい。
【0089】
・アシスト制御量TA*を設定する際は、操舵トルクTr1,Tr2を少なくとも用いていればよく、車速Vを用いなくてもよい。その他、アシスト制御量TA*を設定する際は、操舵トルクTr1,Tr2及び車速Vと、これら以外の要素とを用いるようにしてもよい。また、ADAS制御量TB*を設定する際は、各指令値ADAS1*,ADAS2*を少なくとも用いていればよく、各指令値ADAS1*,ADAS2*と、車速Vやそれ以外の要素とを用いるようにしてもよい。
【0090】
・上記実施形態では、電動パワーステアリング装置1をコラムシャフト11aに動力を付与するタイプに具体化したが、ラックシャフト12に動力を付与するタイプに適用してもよい。この場合、トルクセンサ40a,40bは、例えば、ピニオンシャフト11cに設けられるようにしてもよい。
【0091】
・上記実施形態は、例えば、ステアバイワイヤ式の操舵装置にも適用可能である。この場合、アクチュエータ3は、ラックシャフト12の周辺に設けられるようにすればよい。
・各変形例は、互いに組み合わせて適用してもよく、例えば、ステアバイワイヤ式の操舵装置に具体化することと、その他の変形例の構成とは、互いに組み合わせて適用してもよい。