【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度から平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「海洋エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー発電システム実証研究/水中浮遊式海流発電」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、係留索を用いて水中に装置を係留させる水中浮遊式の装置では、係留索にかかる張力が大きくなった場合にウインチを使用することが困難である。また、水中では、係留索にかかる張力が大きな状態が継続する可能性もあるが、そのような状態ではウインチによる張力調整だけでは不十分であると考えられる。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、張力の増大に由来する係留索の異常の発生を防ぐことが可能な水中浮遊式装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る水中浮遊式装置は、係留索と、当該係留索により本体部が係留されて水流中を浮遊する水中浮遊式装置であって、前記係留索にかかる張力を計測する張力計測部と、前記張力計測部により計測された前記係留索にかかる張力と予め定められた許容値とに基づいて、前記係留索にかかる張力が小さくなるような制御の要否を判断し、判断結果に基づき前記係留索にかかる張力が小さくなるよう制御する制御部と、を有する。
【0007】
上記の水中浮遊式装置によれば、張力計測部により計測された係留索にかかる張力と許容値とに基づいて、係留索にかかる張力が小さくなるような制御の要否を判断し、必要に応じて、張力が小さくなるように制御する。このように、係留索にかかる張力が大きくなる場合には張力が小さくなるように制御する構成を有することで、張力の増大に由来する係留索の異常の発生を防ぐことができる。
【0008】
ここで、前記制御部は、前記張力計測部により計測された前記係留索にかかる張力が前記許容値以上である場合には、前記係留索にかかる張力が小さくなるように制御し、前記張力計測部により計測された前記係留索にかかる張力が前記許容値よりも大きな第2の許容値以上である場合には、自装置の運転を中止する態様とすることができる。
【0009】
上記のように、張力計測部により計測された張力が第2の許容値以上である場合には、自装置の運転を中止することで、張力が第2の許容値を超えた係留索の使用を継続することによる係留索の損傷を防止することができる。
【0010】
また、前記係留索の健全度を示す情報を取得する健全度取得部を有し、前記制御部は、前記健全度を示す情報に基づいて、自装置の運転の中止の要否を判断し、判断結果に基づき自装置の運転を中止する態様とすることができる。
【0011】
上記のように、健全度を示す情報に基づいて自装置の運転中止の要否を判定することで、外観等の健全度に問題がある係留索の使用を継続することによる係留索の損傷を防止することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記張力計測部により計測された前記係留索にかかる張力が前記許容値以上であると判断された回数が、所定の期間において所定回数を超えた場合に、自装置の運転を中止する態様とすることができる。
【0013】
張力が許容値以上となる状態が繰り返されるということは、何らかの係留索若しくはその周辺に何らかの異常が発生している可能性がある。したがって、上記のように、係留索にかかる張力が許容値以上であると判断された回数が、所定の期間において所定回数を超えた場合に、自装置の運転を中止することで、異常が発生した係留索を継続して使用することを防ぐことができる。
【0014】
また、前記本体部は、水流により回転するブレードを有し、前記制御部は、前記係留索にかかる張力が小さくなるような制御が必要である場合に、前記水流による前記ブレードの回転により発生する推力を制御することで、前記係留索にかかる張力が小さくなるように制御する態様とすることができる。
【0015】
上記のように、ブレードの回転により発生する推力を制御することで係留索にかかる張力が小さくなるように制御する態様とすると、張力が小さくなるような制御をより簡便に行うことができる。
【0016】
また、前記本体部は、水量を変更可能なバラストタンクを有し、前記制御部は、前記バラストタンク内の水量を増加させて前記本体部の重量を増加することで、前記係留索にかかる張力が小さくなるように制御する態様とすることができる。
【0017】
上記のように、バラストタンク内の水量の増加により本体部の重量を増加することで係留索にかかる張力が小さくなるように制御する態様とすると、張力が小さくなるような制御をより簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、張力の増大に由来する係留索の異常の発生を防ぐことが可能な水中浮遊式装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
以下の説明において、「上流」または「下流」との語は、水の流れを基準として用いられる。また、「前」との語は、水の流れの上流側を意味し、「後」との語は、水の流れの下流側を意味する。たとえば、ダウンウィンド型のタービンが用いられる場合には、ポッドの後部側にブレード(翼)が配置される。
【0022】
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る水中浮遊式装置1について説明する。
図1に示されるように、水中浮遊式装置1は、本体部10及び係留索20を含み、係留索20により海中等の水中の固定点に対して係留されて浮遊する装置である。係留索20は、一端が海底に固定されたシンカー30に対して固定されると共に、他端が本体部10に接続される。水中浮遊式装置1は、水中で浮遊して何らかの動作を行う装置であり、例えば、海流等の水流を利用して発電を行う浮遊式発電装置(水中浮遊式海流発電装置)、又は、水中での情報を収集する装置等として実現される。
【0023】
本実施形態では、水中浮遊式装置1が所謂ダウンウィンド型の水中浮遊式発電装置である場合について説明するが、これに限定されるものでない。水中浮遊式装置1が水中浮遊式発電装置である場合、水中浮遊式装置1の本体部10は、ポッド11とブレード(翼)12とを含み、水流FLにより発生するブレード12の回転を発電機により電気に変換する機能を有する。また、係留索20に沿うように、ブレード12の回転により得られた電気を送電するためのケーブル21が取り付けられる。ケーブル21は、係留索20に沿って本体部10からシンカー30まで伸ばされた後、送電先の設備等まで繋げられるが、
図1では記載を省略する。また、ブレード12の数は特に限定されない。
【0024】
水中浮遊式装置1の本体部10では、水流FLにより本体部10を押し流す力が発生する。また、水流FLによるブレード12の回転により略水平方向への推力が発生する。これらの総和をスラスト力F1という。また、水中浮遊式装置1の本体部10には、重力F2と、水中を滞留することによる浮力F3と、がかかる。さらに、係留索20により係留されているため、本体部10には係留索20による張力F4がかかる。このように、水中浮遊式装置1の本体部10には、水流FLに由来するスラスト力F1と、重力F2と、浮力F3と、係留索20からの張力F4と、が働く。これらがつり合った位置で、水中浮遊式装置1の本体部10は水中に浮遊した状態となる。重力F2及び浮力F3に変化が無い場合、張力F4の向き及び大きさは、本体部10にかかるスラスト力F1によって変化する。具体的には、本体部10にかかるスラスト力F1が大きくなった場合に、張力F4が大きくなる。
【0025】
また、水中浮遊式装置1の本体部10が所定の位置に浮遊している状態において、係留索20には、係留索20と本体部10との連結点において、張力F4と同じ大きさであり方向が逆の張力F5がかかる。同様に、係留索20には、係留索20とシンカー30との連結点において、係留索20をシンカー30側へ引っ張る張力F6がかかる。係留索20はこの張力F5,F6により両端が引っ張られた状態となる。
【0026】
本実施形態に係る水中浮遊式装置1では、係留索20に想定外の張力がかかることによる係留索20の破損を防ぐことを特徴とする。そのため、水中浮遊式装置1は、係留索20にかかる張力を計測すると共にその張力が増大しないように、制御するという構成を有する。
【0027】
図2に示すように、水中浮遊式装置1の本体部10に含まれるポッド11の後部には、ブレード12と、ブレード12が取り付けられたハブ13と、ハブ13に連結された回転軸14と、回転軸14に連結された発電部15と、を含む。また、本体部10のポッド11内には、張力計測部16と、制御部17と、を有する。このうち、張力計測部16及び制御部17は、ポッド11内に設けられているように図示しているが、張力計測部16はポッド11以外の場所に設けられていてもよい。
【0028】
ハブ13は、ブレード12と共に回転する。また、ブレード12の取り付け角度を調整する機構を有している。また、発電部15は、発電機を含んで構成され、回転軸14を介して水流FLによるブレード12の回転を受け取り、これを電気に変換する機能を有する。
【0029】
張力計測部16は、係留索20にかかる張力を計測する機能を有する。
図2では、係留索20にかかる張力を測定する方法は、特に限定されないが、
図3を参照しながら、2つの例を示す。1つ目は、
図3に示すように係留索20に対してロードセル22を取り付け、ロードセル22が検知する力から係留索20にかかる張力を計測する方法である。ロードセル22に代えて歪み計測器等を係留索20に取り付ける構成としてもよい。また、2つ目は、トランスポンダを利用した方法であり、ポッド11に対して受信機23を取り付け、係留索20に送信機24を取り付け、受信機23−送信機24間の信号の送受信により両者の距離を求め、この距離に基づいて係留索20にかかる張力を計測する方法である。なお、送信機24は複数設けていてもよい。このように、張力計測部16による張力計測の方法は特に限定されない。なお、張力計測部16により計測された張力にかかる情報は、制御部17へ送られる。張力計測部16による張力計測のタイミングは、特に限定されないが、所定の間隔毎(例えば、数秒毎〜数分毎)に計測する構成としてもよい。また、常時モニタリングをしておくような構成としてもよいが、制御部17により指定されたタイミングで計測を行う構成としてもよい。
【0030】
制御部17は、発電部15により発生された電気の一部を利用して、水流FLによるスラスト力F1の発生により係留索20にかかる張力を制御する機能を有する。具体的には、張力計測部16により計測された係留索20にかかる張力と予め定められた許容値とに基づいて、係留索20にかかる張力が小さくなるような制御の要否を判断する。そして、その判断結果に基づき、係留索にかかる張力が小さくなるよう制御する。制御部17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータとして実現することができる。
【0031】
なお、水中浮遊式装置1が浮遊式発電装置ではない場合には、制御部17及び制御部17による張力制御を行うための電源装置等が別途設けられる。また、水中浮遊式装置1が外部装置と通信可能である場合には、外部装置からの信号を受けた制御部17が張力制御に係る処理を実行する機能を有していてもよい。
【0032】
制御部17は、上述のように、係留索20にかかる張力を制御する機能を有するが、本実施形態では、本体部10にかかるスラスト力F1の制御を行うことで係留索20にかかる張力を制御する例を説明する。係留索20にかかる張力F5,F6は、本体部10にかかる力のバランスが変わると変動する。したがって、張力F5,F6は、スラスト力F1によっても変動する。したがって、制御部17は、スラスト力F1を変化させることで、係留索20にかかる張力を制御する。
【0033】
スラスト力F1は、上述のように水流FLを本体部10が受けることにより発生する略水平方向への力と、水流FLによるブレード12の回転により発生する略水平方向への推力との和とすることができる。前者は、水流FLによって直接的に発生する力であるが、後者は、水中浮遊式装置1のブレード12が回転することで発生する力である。したがって、水中浮遊式装置1では、ブレード12の回転を制御することで、スラスト力F1の制御を行う。具体的には、ブレード12の角度を回転させると、ブレード12の回転を制御することができる。
【0034】
図4は、ブレード12の角度の回転によるスラスト力F1の変化を説明する図である。
図4のブレード12Aに示すようにブレードの主面が水流FLと対向しないようにブレードを配置すると、ブレードは回転しない。したがって、ブレード12の回転による推力も発生しない。一方、ブレード12Bに示すように、ブレードの主面が水流FLと交差するようにブレードを配置した場合、ブレードは矢印A方向に回転し、ブレード12の回転による推力が発生する。ブレードの主面と水流FLとの交差角度に応じて、ブレードが水流FLを受けて回転する際の速度が変化し、発生する推力も変化する。したがって、水中浮遊式装置1では、制御部17は、ブレード12が取り付けられているハブ13に設けられている機構を利用してブレード12の角度を調整することで、ブレード12の回転により発生する推力を含むスラスト力F1を制御する。なお、ブレード12の角度を変更する際には、例えば、ブレード12付近に設けられた角度センサによりモニタしながら角度を変更する構成としてもよい。すなわち、ブレードの角度の変更に関する具体的な手法は限定されない。
【0035】
制御部17は、係留索20にかかる張力F5,F6の数値が上昇していることを検知した場合には、これを下降させるように制御する。具体的には、張力F5,F6に関連するスラスト力F1のうちの推力が小さくなるように、ブレード12の角度を調整する。ブレード12の角度を調整するか否かの判断は、張力F5,F6が許容値A(許容値)以上であるか否かに基づいて判断される。許容値Aとは、当該値よりも大きな張力F5,F6が発生する状況が継続すると、係留索20が破損する可能性が出てくる値である。この許容値Aは係留索の強度等に基づいて適宜設定される。また、制御部17は、許容値Aよりも張力の値が大きい許容値B(第2の許容値)を別途設定し、張力F5,F6が許容値B以上である場合には、水中浮遊式装置1の動作自体を停止させる構成としてもよい。許容値Bとは、当該値よりも大きな張力F5,F6が発生する状況が継続すると、係留索20が破損する可能性が高まる値である。本実施形態では、2つの許容値A,Bを用いて、制御部17が係留索の張力を制御する場合について説明する。また、以下の実施形態では、張力F5,F6が許容値A(許容値)若しくは許容値B(第2の許容値)以上であるか否かに基づいて判断を行う場合について説明するが、張力F5,F6が許容値A(許容値)若しくは許容値B(第2の許容値)より大きいか否かに基づいて判断してもよい。許容値を利用した判断を行う場合の判断基準については適宜変更することができる。
【0036】
また、制御部17は、同一の係留索20を用いている間に、張力が許容値A以上となった(すなわち、張力を下げるための制御を行った)回数をカウントし、所定の期間内に許容値A以上となった回数が所定の数よりも大きくなった場合には、水中浮遊式装置1の動作自体を停止させる構成としてもよい。所定の期間の間に許容値Aとなった回数が増大しているということは、係留索20に負荷がかかっている時間が当初の想定よりも大きくなっていることを示していて、係留索20の破損の可能性が高まっていることも考えられる。したがって、係留索20の破損等を回避すべく、上記の構成を有していてもよい。
【0037】
さらに、制御部17が係留索の張力に係る制御を行うか否かの判断の際には、係留索20の外観等の「係留索20の健全度を示す情報」を組み合わせて使用してもよい。例えば、スラスト力F1を制御した結果、係留索20にかかる張力が低下したとしても、張力が上昇している間に何らかの破損が生じている可能性も考えられる。したがって、制御部17では、係留索20の破損に係る情報を別途取得して、この情報にも基づいて係留索の張力に係る制御を行うか否か(例えば、運転を停止するか否か)を判断してもよい。なお、係留索20の健全度を示す情報とは、例えば、係留索20の径・長さの変化に関する情報、外観の観察の結果得られる情報等である。もちろん健全度を示す情報として複数の情報を用いてもよい。また、判断結果に基づいて、制御部17は運転停止等の制御を行ってもよい。
【0038】
なお、係留索20の健全度を示す情報を利用して制御部17が制御を行うか否かの判断を行う場合には、制御部17は、健全度を示す情報を取得する必要がある。したがって、
図2に示すように、上述した健全度を示す情報を取得する健全度取得部18が別途設けられる。健全度取得部18は、上述の健全度を示すに係る計測等を行う機能を有する。
【0039】
次に、水中浮遊式装置1における係留索20にかかる張力を管理するための方法について、
図5を参照しながら説明する。なお、
図5に示す方法は一例であり、制御部17が何らかの制御を行う際の判定基準や判定結果に基づく処理の順序・内容等は適宜変更することができる。
【0040】
まず、水中浮遊式装置1の通常運転が開始される(S01)。この段階から、張力計測部16により係留索20の張力が計測される。張力計測部16による計測結果は、制御部17に対して適宜送信される。
【0041】
ここで、制御部17において、係留索20の張力の計測結果が許容値A以上であるかの判定が行われる(S02)。張力の計測結果が許容値Aよりも小さい場合(S02−NO)、通常運転を継続し、張力計測部16による計測が継続される。
【0042】
一方、係留索20の張力の計測結果が許容値A以上である場合(S02−YES)、制御部17は、張力を低減させるための制御を行う(S03)。具体的には、本実施形態では、ブレード12の角度を変更し、スラスト力F1に含まれるブレード12の回転により発生する推力が小さくなるように、具体的には、
図4に示されるブレード12Aの状態に近付くように、制御する。ブレード12の変更角度は特に限定されないが、ブレード12の角度は、発電部15における発電効率又は本体部10の浮遊位置(深度)等にも影響を与える可能性がある。したがって、ブレード12の角度をどの程度変更するかは予め定めておくことが好ましい。このように、制御部17により、推力が小さくなる方向にブレード12の角度を変更した状態、すなわち、理論上は係留索20にかかる張力が低減された状態で、運転を継続しながら張力の計測を行う。
【0043】
次に、制御部17において、係留索20の張力の計測結果が許容値B以上であるかの判定が行われる(S04)。上述のように、許容値Bは、運転停止の要否を判断するための基準となる値である。張力を低減させるための操作(S03)の結果、係留索20にかかる張力は低減されるはずにもかかわらず、張力が許容値Bを超えている状態である。したがって、張力が許容値Bを超えている場合(S04−YES)には、制御部17の制御を中止し、アラーム・緊急停止等の運転停止に係る処理を行う(S05)。
【0044】
一方、張力が許容値Bを超えていない場合(S04−NO)には、制御部17による張力を低減させるための操作(S03)を行った状態を継続しながら、点検項目がクリアされているかを確認する(S06)。この点検項目とは、上述の「係留索20の健全度を示す情報」に基づく評価である。別途健全度取得部18により計測された係留索20の健全度を示す情報に基づいて、係留索20が健全な状態であるか(破損等が生じている状態ではないか)を判断する。また、このときに、点検項目に「所定期間の間に許容値Aを上回っている状態が所定の回数を超えていないか」を含めてもよい。点検項目がクリアされている場合(S06−YES)は、係留索20の張力が許容値Aを下回るまで監視(S02、S03、S04、S06)を継続し、張力が許容値Aを下回ったら(S02−NO)、通常運転(S01)に復帰させる。一方、点検項目がクリアされていない場合(S06−NO)は、張力が許容値B以上となった場合と同様に、係留索20に破損等の何らかの異常が発生していると判断し、制御部17の制御を中止し、アラーム・緊急停止等の運転停止に係る処理を行う(S05)。
【0045】
このように、上記実施形態に係る水中浮遊式装置1によれば、張力計測部16により計測された係留索20にかかる張力と許容値(許容値A)とに基づいて、係留索20にかかる張力が小さくなるような制御の要否を判断する。そして、必要に応じて、張力が小さくなるように制御する。このように、係留索20にかかる張力が大きくなる場合には張力が小さくなるように制御する構成を有することで、張力の増大に由来する係留索20の異常の発生を防ぐことができる。
【0046】
また、上記の水中浮遊式装置1のように、張力の増大に由来する係留索20の異常の発生を防ぐことで、係留索20のみならず、装置全体で起こり得る異常を防ぐことができる。例えば、
図1に示すように、係留索20に沿ってケーブル21が設けられる場合がある。このような場合、係留索20に張力がかかり、例えば、係留索20の長さ等が変化すると、それに伴ってケーブル21も引き延ばされる可能性がある。この場合、係留索20だけではなくケーブル21も破損する可能性がある。これに対して、本実施形態に係る水中浮遊式装置1のように、許容値を設定して張力を制御することで、装置全体での異常の発生を防ぐことができる。
【0047】
また、上記の水中浮遊式装置1では、張力計測部16により計測された張力が第2の許容値(許容値B)以上である場合には、自装置の運転を中止することとしている。このような構成とすることで、張力が第2の許容値を超えた係留索20の使用を継続することによる係留索20を含む水中浮遊式装置1の損傷を防止することができる。
【0048】
また、上記の水中浮遊式装置1では、健全度を示す情報に基づいて自装置の運転中止の要否を判定する構成としている。このような構成とすることで、外形の変化等健全度に問題がある係留索20の使用を継続することによる係留索20を含む水中浮遊式装置1の損傷を防止することができる。
【0049】
また、上記の水中浮遊式装置1では、係留索20にかかる張力が許容値以上であると判断された回数が、所定の期間において所定回数を超えた場合に、自装置の運転を中止する構成としている。張力が許容値以上となる状態が繰り返されるということは、何らかの係留索若しくはその周辺に何らかの異常が発生している可能性があるが、上記の構成を有していると、異常が発生した係留索20を継続して使用することを防ぐことができる。
【0050】
また、上記の水中浮遊式装置1では、ブレード12の回転により発生する推力を制御することで係留索20にかかる張力が小さくなるように制御している。このような構成とすることで、張力が小さくなるような制御をより簡便に行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係る水中浮遊式装置1について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、1台の本体部10が係留索20に対して接続されている例について説明したが、ブレード12をそれぞれ備えた2台の本体部10が連結部により連結されている構成としてもよい。この場合、2台の本体部10のそれぞれが係留索20により水中の同一の固定点に対して係留される構成とすることができる。また、2台の本体部10のブレード12の回転方向を互いに異なる方向とすることで、2台の本体部10の姿勢を安定することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、ブレード12の角度を変化させることで、スラスト力F1に含まれるブレード12の回転による推力を制御する構成について説明したが、係留索20の張力を変化させる構成は上記に限定されない。例えば、ブレード12の回転数を制御すると、ブレード12の回転による推力を変化させることができる。したがって、制御部17は、張力計測部16で計測された係留索20の張力が許容値(許容値A)以上である場合には、ブレード12の回転数を変更させることで、推力を制御し、係留索20の張力を低減させる構成としてもよい。
【0054】
さらに、ブレード12の制御を行う方法に代えて、水中浮遊式装置1の重量を変化させることで、係留索20の張力を変化させる構成としてもよい。
図1に示すように、水中浮遊式装置1の本体部10には、水流FLに由来するスラスト力F1と、重力F2と、浮力F3と、係留索20からの張力F4と、が働く。このうち、係留索20にかかる張力F5、F6を小さくするには、張力F4が小さくさせる必要がある。このためには、例えば、重力F2を大きくして、張力F4の上下方向(垂直方向)の成分を低減する方法を用いることができる。具体的には、水中浮遊式装置1の本体部10に水量を変更可能なバラストタンク40(
図1参照)が設けられている場合には、バラストタンク40内の水量を変更することで、本体部10の重量を変更することができる。したがって、制御部17により、バラストタンク40内の水量の増加により本体部10の重量を増加することで係留索20にかかる張力が小さくなるように制御する態様とすることが可能となる。この場合も、ブレード12の制御と同様に、張力が小さくなるような制御をより簡便に行うことができる。
【0055】
また、水中浮遊式装置1の係留索20を固定する固定点は、水中浮遊式装置1の本体部10よりも下方である必要はなく、その高さ(深さ)位置は変更することができる。