(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を
図1ないし
図16を参照しながら説明する。
図1は、本発明のステージ装置を備えた撮像装置を搭載したデジタルカメラの主要構成部材及び主要回路要素をブロックで示す概念図である。なお、図において、本実施形態は、撮影光学系の光軸Oと平行な一つの方向を第1の方向(Z方向、Z軸方向)、第1の方向と直交する一つの方向を第2の方向(X方向、X軸方向)、第1の方向及び第2の方向の双方と直交する一つの方向を第3の方向(Y方向、Y軸方向)とする。例えば、X軸、Y軸及びZ軸を3次元の直交座標系の座標軸と仮定すると、光軸OをZ軸としたとき、Z軸と直交し、かつ互いに直交する二方向の軸がX軸及びY軸になる。カメラが正位置(横位置)にあるとき、第1の方向(Z方向、Z軸、光軸O)及び第2の方向(X方向、X軸)は水平になり、第3の方向(Y方向、Y軸)は鉛直になるものとし、被写体方向を前、前方とする。また、本明細書において、第1の方向回りの傾動または回動は、第1の方向と平行な仮想軸を中心とした傾動または回動を意味する。同様に、第2の方向回りの傾動または回動は、第2の方向と平行な仮想軸を中心とした傾動または回動を意味し、第3の方向回りの傾動または回動は、第3の方向と平行な仮想軸を中心とした傾動または回動を意味する。
【0025】
このデジタルカメラ10は、カメラボディ11と、撮影光学系としての撮影レンズ100を備えている。カメラボディ11内には、カメラ全体の機能を制御し、演算し、駆動制御するボディCPU20と、撮影レンズ100により投影された被写体像を撮像する撮像素子31を有する撮像ブロック30を備えている。ボディCPU20は、撮像素子31の撮像動作を制御し、撮像した画像信号を画像処理部32で処理して撮像した被写体像を画像表示部(モニタ)33に表示し、撮像した被写体像の画像データをメモリカード34に書き込む。
【0026】
このデジタルカメラ10は、画像処理部32が処理した画像信号から被写体のコントラストを検出するコントラスト検出部35、撮影者がカメラの機能全般を操作するスイッチ等を有するカメラ操作部21、撮影レンズ100の焦点調節光学系(図示せず)を光軸方向に駆動して焦点調節するAF部(焦点調節手段)22、絞り、シャッタ等を開閉駆動して撮像素子31への入射光量を調整するとともに、撮像素子31を駆動して撮像制御する露出制御部23、及び撮影レンズ100とレンズ通信して、撮影レンズ100の焦点距離等のレンズ情報を入力するレンズ通信部24を備えている。
【0027】
デジタルカメラ10は、カメラボディ11の振れ(手振れ、振動)を検出する検出手段として、ロール(Z方向回り傾動(回転))検出部GSα、ピッチ(X方向回り傾動(回転))検出部GSβ、ヨー(Y方向回り傾動(回転))検出部GSγ、X方向加速度検出部GSX、Y方向加速度検出部GSY、及びZ方向加速度検出部GSZを備え、これらは振れ検出回路44に接続されている。
【0028】
撮像ブロック30は、撮像素子31と、撮像素子31を支持したステージ装置(移動機構)60を備えている。ステージ装置60は、撮像素子31が搭載された可動ステージ61と、可動ステージ61の前後に位置する前固定ヨーク62と後固定ヨーク63とを備え、通電時には、可動ステージ61を前後の固定ヨーク62、63に対して、浮上(重力に抗して浮上させ、静止状態(浮上静止状態)に)保持することができる。撮像素子31は、前面が平面状の薄型の被駆動部材(可動部材の一部)を構成している。ステージ装置60は、浮上状態の可動ステージ61を、Z方向(第1の方向)並進、Z方向と直交するX方向(第2の方向)並進、Z方向及びX方向の双方と直交するY方向(第3の方向)並進、X方向(第2の方向)回りの傾動(回転)、Y方向(第3の方向)回りの傾動(回転)、及びZ方向(第1の方向)回りの傾動(回転)(6自由度の移動、6軸移動)が可能である。さらにステージ装置60の可動ステージ61は、これら6自由度の並進、傾動を複数組み合わせた移動や、傾動中の並進、傾動後の並進、並進後の傾動が可能である(
図2ないし
図5参照)。「並進」は、カメラボディに対して像面(撮像素子31の撮像面)の向き及び傾きを変えずに直進移動することであり、「傾動」は、カメラボディに対して像面の向きまたは傾きを変える移動のことであり、像面をZ方向(光軸Oまたは光軸Oと平行な仮想軸)回りに回転させることも含む。「浮上」は、可動ステージ61を前固定ヨーク62と後固定ヨーク63の間に非接触保持することであり、可動ステージ61を撮像素子31の撮像面中心が光軸Oと交わる中央位置(撮像初期位置)に前固定ヨーク62と後固定ヨーク63に対して非接触保持する場合を含む概念である。
【0029】
ボディCPU20は、例えばレンズ通信部24を介して、撮影レンズ100から焦点距離f情報を入力し、ピッチ(X方向回り傾動(回転))検出部GSβ、ヨー(Y方向回り傾動(回転))検出部GSγ、ロール(Z方向回り傾動(回転))検出部GSα、X方向加速度検出部GSX、Y方向加速度検出部GSY、及びZ方向加速度検出部GSZの検出信号に基づいてデジタルカメラ10の振れ方向、振れ速度等を演算し、撮像素子31に投影された被写体像が撮像素子31に対して相対移動しないように撮像素子31を駆動する方向、駆動速度、駆動量などを演算し、演算結果に基づいてステージ装置60(可動ステージ61)を6軸方向(並進(シフト)、傾動、傾動中の並進(シフト)、及び傾動後に並進(シフト))駆動する。これらの動作の順序は問わない。
【0030】
ステージ装置60は、撮像素子31が固定された可動ステージ61を前固定ヨーク62と後固定ヨーク63に対して、並進(シフト)、傾動、傾動中の並進(シフト)、及び傾動後に並進(シフト)自在に保持する支持部材として機能する。可動ステージ61は、正面視で(Z方向から見て)、撮像素子31より大きい長方形の板(枠)状部材である。前固定ヨーク62と後固定ヨーク63は、平面視、外形が可動ステージ61よりやや大きい同一形状の長方形の板(枠)状部材からなり、中央部にそれぞれ、正面視で(Z方向から見て)、撮像素子31の外形より大きい長方形の開口62aと63aが形成されている。前固定ヨーク62と後固定ヨーク63は、可動ステージ61が所定の範囲で移動(並進、傾動、回転)しても干渉しない位置において図示しない複数本の連結支柱で結合され、平行かつ所定間隔に保持されている。
【0031】
前固定ヨーク62の後面(被写体側と反対側の面)には、Y軸を中心線としZ軸を挟んで開口62aの少なくとも左右(X方向)の一方、図示実施形態では左右両側部に位置する態様で、同一仕様の左右一対の永久磁石からなるX方向用磁石(第2の方向用磁石)MX1が固定されている。後固定ヨーク63の前面(被写体側の面)には、一対のX方向用磁石MX1と同一仕様の一対のX方向用磁石MX2が、一対のX方向用磁石MX1に対向させて固定されている。これら左右のX方向用磁石MX1、MX2はそれぞれ、Y方向に長く、Z方向に薄い板状であって、Y軸と平行に、X方向に離間して一対配置されている。左右の一対のX方向用磁石MX1は共に
図2Bの一方(左側)の磁石は前面(前固定ヨーク62側の面)がS極、後面がN極であり、他方(右側)の磁石は前面がN極、後面がS極である。左右の一対のX方向用磁石MX2は、対向するX方向用磁石MX1とは異なる磁極がX方向用磁石MX1に対向している。そして、前固定ヨーク62及び後固定ヨーク63がX方向用磁石MX1、MX2の磁束を通すことにより、X方向用磁石MX1、MX2と後固定ヨーク63の対向部の間にX方向(第2の方向)の推力を発生する磁気回路の一部を構成している(
図3参照)。
【0032】
前固定ヨーク62の後面には、開口62aの下方にY軸を中心線としてZ軸から離間して位置する態様で、同一仕様の一対の永久磁石からなるY方向用磁石MYA1と同一仕様の一対のY方向用磁石MYB1が固定されている。後固定ヨーク63の前面には、一対のY方向用磁石MYA1、MYB1と同一仕様の一対のY方向用磁石MYA2、MYB2が、一対のY方向用磁石MYA1、MYB1に対向させて固定されている。これらのY方向用磁石MYA1とMYB1、MYA2とMYB2はそれぞれ、X方向に長く、Z方向に薄い板状の一対の磁石からなり、各対の磁石がX軸と平行に、Y方向に離間して配置されている。一対のY方向用磁石MYA1と一対のY方向用磁石MYB1は共に、
図2Aの上側の磁石は前後の一方の面(前面)がS極、他方の面(後面)がN極であり、下側の磁石は前後の一方の面がN極、他方の面(後面)がS極である。一対のY方向用磁石MYA2、MYB2は、一対のY方向用磁石MYA1、MYB1とは異なる磁極が一対のY方向用磁石MYA1、MYB1に対向している。そして、前固定ヨーク62及び後固定ヨーク63がY方向用磁石MYA1とMYA2、Y方向用磁石MYB1とMYB2の磁束を通すことにより、Y方向用磁石MYA1とMYA2の間、及びY方向用磁石MYB1とMYB2の間にそれぞれ、Y方向(第3の方向)の推力を発生する磁気回路の一部を構成している。
【0033】
さらに、前固定ヨーク62の後面には、X方向用磁石MX1、Y方向用磁石MYA1とMYB1とは異なる3カ所に、永久磁石からなるZ方向用磁石MZA1、MZB1、MZC1が固定されている(
図2A、
図4及び
図5参照)。後固定ヨーク63の前面には、Z方向用磁石MZA2、MZB2、MZC2が固定されている。
Z方向用磁石MZA1、MZB1、MZC1、MZA2、MZB2、MZC2は正面視矩形の板状であって、Z方向用磁石MZA1、MZB1、MZC1は前面(固定ヨーク62接触面)がS極、後面がN極となるように固定され、Z方向用磁石MZA2、MZB2、MZC2はZ方向用磁石MZA1、MZB1、MZC1と同一磁極が対向するように固定されている。6個のZ方向用磁石MZA1、MZB1、MZC1とZ方向用磁石MZA2、MZB2、MZC2は同一態様(仕様)であって、Z軸を中心として、所定長離間したZ軸直交平面内に、略等間隔に配置されている。前固定ヨーク62及び後固定ヨーク63がZ方向用磁石MZA1とMZA2、MZB1とMZB2、MZC1とMZC2の磁束を通すことにより、Z方向用磁石MZA1、MZB1、MZC1とZ方向用磁石MZA2、MZB2、MZC2との間に、Z方向(第1の方向)の推力を発生する複数の磁気回路(推力発生手段、推力制御手段)の一部を構成している。
【0034】
前固定ヨーク62と後固定ヨーク63の間に位置する可動ステージ61は、非磁性材料からプレス成形により一体成形された非磁性部材である。可動ステージ61の中央部には正面視長方形の撮像素子取付孔61aが穿設され、撮像素子取付孔61aに撮像素子31が嵌合固定されている。撮像素子31は、撮像素子取付孔61aから可動ステージ61の光軸O方向前方に突出している。
【0035】
撮像素子31は、可動ステージ61が初期位置(磁気浮上した初期位置)に位置するときに、長辺がX方向と平行をなし、短辺がY方向と平行をなすように配置されているものとする。可動ステージ61が初期位置にあるとき、撮像素子31の撮像面31aの中心は撮影レンズ100の光軸O上に位置し、光軸OとZ軸が一致する。Z方向(第1の方向)、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)は、Z方向が光軸Oと一致するまたは平行な、カメラボディ11及び撮影レンズ100に対して一定の方向として以下説明するが、撮像素子31に対して一定の方向としてもよい。
【0036】
可動ステージ61には、撮像素子31の左右の両辺(短辺)の外方部に位置させて、一対のX駆動用コイル(X駆動部)CXが固定され、撮像素子31の下方の一辺(長辺)の下方部に位置させて、左右に離して一対のY駆動用コイル(YA駆動部)CYAとY駆動用コイル(YB駆動部)CYBが固定されている。一対のX駆動用コイルCXは、Y方向に長い縦長であって、長手方向がY方向と平行になるようにY軸を挟んで対称位置(等距離)に、かつX軸と重複させて配置され、一対のY駆動用コイルCYAとCYBはX方向に長い横長であって、長手方向がX方向と平行になるように、Y軸を挟んで対称位置(Y軸から等距離)に配置されている。この配置は、製造、調整及び制御が容易になる。
【0037】
可動ステージ61にはさらに、一対のY駆動用コイルCYAとCYBの間(中間位置)に位置させて円形のZ駆動用コイル(ZA駆動部)CZAが固定され、一対のX駆動用コイルCXより上方に位置させて円形の一対のZ駆動用コイル(ZB駆動部)CZBとZ駆動用コイル(ZC駆動部)CZCが固定されている。Z駆動用コイルCZAはY軸上に配置され、Z駆動用コイルCZBとCZCはY軸に対して対称位置(Y軸から等距離)に配置されている。Z駆動用コイルCZAとCZBとCZCの重心(全体の重心)は、可動ステージ61の重心と略一致している。Z駆動用コイルCZAとCZBとCZCは、いずれか2個、図示実施形態ではZ駆動用コイルCZBとCZCを結ぶ線と、他の1個から上記線に下ろした垂線が、Y軸と平行になる(またはY軸と一致する)ように配置されている。なお、Z駆動用コイルCZAとCZBとCZCの配置は任意であるが、いずれか2個を結ぶ線がX軸またはY軸と平行になり、他の1個からこの2個を結ぶ線に下ろした垂線がY軸またはX軸と平行になるように配置するのが好ましい。この配置は、製造、調整及び制御が容易になる。
【0038】
一対のX駆動用コイルCX及び一対のY駆動用コイルCYA、CYBならびに3個のZ駆動用コイルCZA、CZB、CZCは、コイル線がXY平面において複数回渦巻き状に巻かれ、可動ステージ61の板厚方向(Z方向)に複数回積層された、光軸直交平面(XY平面)と平行な平面状(薄型)コイルである。
【0039】
一対のX駆動用コイルCXは、長手部分がY軸と平行かつ対応するX方向用磁石MX1とMX2の間に前後面が対向する態様で配置され、一対のY駆動用コイルCYA、CYBは長手部分がX軸と平行かつ対応するそれぞれが一対のY方向用磁石MYA1とMYA2、MYB1とMYB2に前後面が対向する態様で配置されている。
【0040】
以上のX駆動用コイル(X駆動部)CX、Y駆動用コイル(YA駆動部)CYAとY駆動用コイル(YB駆動部)CYB、Z駆動用コイル(ZA駆動部)CZA、Z駆動用コイル(ZB駆動部)CZBとZ駆動用コイル(ZC駆動部)CZCは、アクチュエータ駆動回路42に接続され、アクチュエータ駆動回路42を介して通電制御される。
【0041】
X駆動用コイルCXと一対のX方向用磁石MX1と一対のX方向用磁石MX2は、X方向(第2の方向)の推力を発生する第2の推力発生手段(推力制御手段)を構成している。X駆動用コイルCXに流す電流制御により発生するX方向の推力により、可動ステージ61をX方向に並進させることができる。各X駆動用コイルCXと対のX方向用磁石MX1、MX2は、カメラボディ11の姿勢に関わらず、例えばカメラボディ11のグリップを上または下に構える縦位置撮影において、可動ステージ61を中央位置(初期位置)に保持する浮上手段として作用(機能)する。
一方のY駆動用コイルCYAと各対のY方向用磁石MYA1とMYA2、及び他方のY駆動用コイルCYBと各対のY方向用磁石MYB1とMYB2は、Y方向(第3の方向)の推力を発生する一対の第3の推力発生手段(推力制御手段)を構成している。Y駆動用コイルCYAとCYBに流す電流制御により発生するX方向に離れた一対のY方向の推力の相互作用により、可動ステージ61をY方向に並進させ、Z方向回りに傾動(回動)させることができる。Y駆動用コイルCYAと各対のY方向用磁石MYA1とMYA2、Y駆動用コイルCYBと各対のY方向用磁石MYB1とMYB2は、カメラボディ11の姿勢に関わらず、例えば横位置(正位置)撮影において、可動ステージ61を中央位置(初期位置)に保持する浮上手段として作用(機能)する。
3個のZ駆動用コイルCZA、CZB、CZCは、各対のZ方向用磁石MZA1とMZA2、MZB1とMZB2、MZC1とMZC2の間に前後面が対向する態様で配置され、Z方向(第1の方向)の推力を発生する3個の第1の推力発生手段を構成している。Z方向に見てZ軸の周りに互いに離間した3組のZ方向用磁石MZA1、MZA2とZ駆動用コイルCZA、Z方向用磁石MZB1、MZB2とZ駆動用コイルCZB、及びZ方向用磁石MZC1、MZC2とZ駆動用コイルCZCは、3個のZ駆動用コイルCZA、CZB、CZCに流す電流制御により発生する3個のZ方向の推力の相互作用により、可動ステージ61を前後の固定ヨーク62、63(3対のZ方向用磁石MZA1とMZA2、MZB1とMZB2、MZC1とMZC2)に対して浮上させ、浮上状態で、Z方向に並進させ、X方向回りに傾動させ、Y方向回りに傾動させることができる。Z駆動用コイルCZA、CZB、CZCと各対のZ方向用磁石MZA1とMZA2、MZB1とMZB2、MZC1とMZC2は、可動ステージ61を光軸方向の初期位置、初期姿勢(撮像素子31の撮像面が光軸と直交する初期状態)に保持する浮上手段として作用(機能)する。
【0042】
可動ステージ61には、X駆動用コイルCXの空芯領域に位置する一対のX方向用ホール素子HX1とHX2(X位置検出部HX)と、Y駆動用コイルCYAとCYBの空芯領域にそれぞれ位置する一対のY方向用ホール素子HYA1とHYA2(YA位置検出部HXA)、HYB1とHYB2(YB位置検出部HYB)と、Z駆動用コイルCZA、CZB、CZCの空芯領域に位置する一対のZ方向用ホール素子HZA1とHZA2(ZA位置検出部HZA)、HZB1とHZB2(ZB位置検出部HZB)、HZC1とHZC2(ZC位置検出部HZC)が固定されている。一対のX方向用ホール素子HX1とHX2は、X駆動用コイルCXのY方向(短手方向)の略中央位置において、X方向(長手方向)に所定間隔で配置されている。一対のY方向用ホール素子HYA1とHYA2、HYB1とHYB2は、Y駆動用コイルCYAとCYBのX方向(長手方向)の略中央位置において、Y方向(短手方向)に所定間隔で配置されている。一対のZ方向用ホール素子HZA1とHZA2、HZB1とHZB2、HZC1とHZC2は、Z駆動用コイルCZA、CZB、CZCの中心線上にZ方向に所定間隔で配置されている。
【0043】
X方向用ホール素子HX1とHX2(X位置検出部HX)、Y方向用ホール素子HYA1とHYA2(YA位置検出部HXA)、HYB1とHYB2(YB位置検出部HYB)、Z方向用ホール素子HZA1とHZA2(ZA位置検出部HZA)、HZB1とHZB2(ZB位置検出部HZB)、HZC1とHZC2(ZC位置検出部HZC)は、位置検出回路43に接続されている。
【0044】
X方向用ホール素子HX1とHX2は対応するX方向用磁石MX1とMX2の磁力(X方向磁気回路の磁束)を検出し、検出信号により可動ステージ61のX方向位置(X方向の並進方向位置)を検出するX方向位置検出手段(並進方向位置検出手段)を構成している。
Y方向用ホール素子HYA1とHYA2は対応するY方向用磁石MYA1とMYA2の磁力(Y方向磁気回路の磁束)を検出し、Y方向用ホール素子HYB1とHYB2は対応するY方向用磁石MYB1とMYB2の磁力(Y方向磁気回路の磁束)を検出する。そして、Y方向用ホール素子HYA1とHYA2及HYB1とHYB2の両方の検出信号により、Y方向位置とZ方向回り傾動位置が検出される。すなわち、各一対のY方向用ホール素子HYA1とHYA2、HYB1とHYB2は、可動ステージ61のY方向位置(Y方向の並進方向位置)を検出するY方向位置検出手段(並進方向位置検出手段)と、可動ステージ61のZ方向回りの傾動位置を検出するZ方向回りの傾動位置検出手段を構成している。
3対のZ方向用ホール素子HZA1とHZA2、HZB1とHZB2、HZC1とHZC2は対応する3対のZ方向用磁石MZA1とMZA2、MZB1とMZB2、MZC1とMZC2の磁力(Z方向磁気回路の磁束)を検出する。そして、各対をなすZ方向用ホール素子HZA1とHZA2、HZB1とHZB2、HZC1とHZC2の検出信号により、可動ステージ61のZ方向位置と、X方向回りの傾動位置と、Y方向回りの傾動位置が検出される。すなわち、各対をなすZ方向用ホール素子HZA1とHZA2、HZB1とHZB2、HZC1とHZC2は、可動ステージ61のZ方向位置(Z方向の並進方向位置)を検出するZ方向位置検出手段(並進方向位置検出手段)と、可動ステージ61のX方向回りの傾動位置を検出するX方向回りの傾動位置検出手段(傾動位置検出手段)と、可動ステージ61のY方向回りの傾動位置を検出するY方向回りの傾動位置検出手段(傾動位置検出手段)を構成している。
【0045】
以上のX駆動用コイルCX、Y駆動用コイルCYA、CYB、及びZ駆動用コイルCZA、CZB、CZCと、X方向用ホール素子HX(HX1、HX2)、Y方向用ホール素子HYA(HYA1とHYA2)、HYB(HYB1とHYB2)、及びZ方向用ホール素子HZA(HZA1とHZA2)、HZB(HZB1とHZB2)、HZC(HZC1とHZC2)は、フレキシブルプリント基板FPC(図示せず)上に実装され、可動ステージ61から延びるフレキシブルプリント基板FPCを介してカメラボディ11に内蔵されたアクチュエータ駆動回路42、位置検出回路43等の各回路に電気的に接続されている(
図1参照)。
【0046】
一対のX駆動用コイルCX及び一対のY駆動用コイルCYA、CYBならびに3個のZ駆動用コイルCZA、CZB、CZCは、アクチュエータ駆動回路42によって通電制御される。アクチュエータ駆動回路42は、ボディCPU20により、防振・チルト制御回路41を介して制御される。
【0047】
位置検出回路43は、X方向用ホール素子HX1とHX2、Y方向用ホール素子HYA1とHYA2、HYB1とHYB2、及びZ方向用ホール素子HZA1とHZA2、HZB1とHZB2、HZC1とHZC2が出力した検出信号により可動ステージ61のX方向位置、Y方向位置、Z方向位置、X方向回りの傾動位置(X方向回りの傾動(回転)角、ピッチ角)、Y方向回りの傾動位置(Y方向回りの傾動(回転)角、ヨー角)、及びZ方向回りの傾動位置(Z方向回りの傾動(回転)角、ロール角)を検出する。
【0048】
このデジタルカメラ10は、可動ステージ61、すなわち撮像素子31のX方向位置、Y方向位置、Z方向位置、X方向回り傾動位置、Y方向回り傾動位置及びZ方向回り傾動位置を、以下の態様で検出する。
位置検出回路43は、可動ステージ61のX方向位置(移動量)を、一対のX方向用ホール素子HX1とHX2が検出した検出信号の和信号により演算して検出する。
位置検出回路43は、一方の対をなすY方向用ホール素子HYA1とHYA2が検出した検出信号の和信号によりY方向位置を演算し、他方の対をなすY方向用ホール素子HYB1とHYB2が検出した検出信号を使用して、例えば和信号によりY方向位置を演算し、これらX方向に離間した2箇所のY方向位置に基づいて、可動ステージ61のY方向位置(移動量)とZ方向回りの傾動位置(回転量)を演算により検出する。
さらに位置検出回路43は、可動ステージ61のZ方向の位置とX方向回りの傾動位置及びY方向回りの傾動位置を、3対のZ方向用ホール素子HZA1とHZA2、HZB1とHZB2、HZC1とHZC2のそれぞれが検出した信号を使用して、例えば一対の検出信号の和信号と該一対の検出信号の差信号の商により、Z方向位置を演算により検出する。そして位置検出回路43は、検出した可動ステージ61の異なる3箇所のZ方向位置に基づいて、可動ステージ61のZ方向位置(移動量)、X方向回り傾動位置(回転量)、Y方向回り傾動位置(回転量)を演算により検出する。
【0049】
以上の実施形態では、可動ステージ61のX方向位置を検出する一対のX方向用ホール素子HX1とHX2をX方向に所定間隔で設け、Y方向位置を検出する一対のY方向用ホール素子HYA1とHYA2をY方向に所定間隔で設け、一対のY方向用ホール素子HYB1とHYB2をY方向に所定間隔で設けたので、可動ステージ61がZ方向に移動しても、X方向及びY方向の位置検出精度が変化しない。
可動ステージ61のZ方向位置を検出する3対のZ方向用ホール素子HZA1とHZA2、HZB1とHZB2、HZC1とHZC2をZ方向に所定間隔で設けたので、可動ステージ61がX方向、Y方向に移動、傾動しても、Z方向位置検出精度が悪化しない。
【0050】
以上のデジタルカメラ10は、撮影動作するとき、以下の動作をすることができる。まずボディCPU20の制御下で、一対のX駆動用コイルCX、一対のY駆動用コイルCYA、CYB及び3個のZ駆動用コイルCZA、CZB、CZCを通電制御することにより、撮像素子31が搭載された可動ステージ61を前固定ヨーク62と後固定ヨーク63など他の部材に対して非接触の初期位置に保持する(浮上させる)。
【0051】
さらにデジタルカメラ10(ボディCPU20)は、可動ステージ61を浮上させた状態で、ボディCPU20(位置検出回路43)が演算した各位置に基づいて、以下の駆動制御をすることができる。
Z駆動用コイルCZA、CZB、CZCを同等に通電制御することにより発生する3つの同等のZ方向の推力の相互作用により可動ステージ61をZ方向並進させ、Z駆動用コイルCZA、CZB、CZCを個別に通電制御することにより発生する3つのZ方向の異なる推力の相互作用により可動ステージ61をX方向回り傾動及びY方向回り傾動させることができる。
各X駆動用コイルCXを通電制御することで発生するX方向の推力により、可動ステージ61をX方向に並進させることができる。
Y駆動用コイルCYA、CYBを同等に通電制御することで発生する2つの同等のY方向の推力の相互作用により可動ステージ61をY方向に並進させ、Y駆動用コイルCYA、CYBを個別に通電制御することで発生する2つのY方向の異なる推力の相互作用により可動ステージ61をZ方向回り傾動させることができる。
さらに、以上のZ駆動用コイルCZA、CZB、CZC、X駆動用コイルCX、Y駆動用コイルCYA、CYBへの通電制御により発生する複数のZ方向の推力、X方向の推力、複数のY方向の推力の相互作用により、可動ステージ61を6自由度(6軸)の全ての方向に並進、傾動、並進中に傾動、並進後に傾動、及び傾動後に並進させることができる。
【0052】
本実施形態のデジタルカメラ10(ボディCPU20)は、以上の可動ステージ61の駆動制御を、振れ検出回路44が検出したカメラボディ11と撮影レンズ100の手振れ(振れ、振動)と同期させて行うことで、手振れ補正(振れ軽減)ができる。
【0053】
本実施形態のデジタルカメラ10は、振れ補正動作だけでなく、撮像素子31をチルト(並進、傾動、並進及び傾動)させることで、あおり撮影や構図調整などの特殊撮影が可能であり、さらに、被写体の状況に応じて、撮像素子31を並進、傾動させて被写体の広い領域に焦点を合わせる自動チルト補正動作をすることができる。デジタルカメラ10の自動チルト補正動作について、さらに
図6ないし
図14を参照して説明する。本実施形態におけるチルト補正動作は、ステージ装置60による撮像素子31のZ方向並進、X方向並進、Y方向並進、Z方向回りの傾動(回動)、X方向回りの傾動及びY方向回りの傾動のいずれか一つの動作または二つ以上の動作の組合せを含み、X方向回りの傾動、Y方向回りの傾動、及びこれらの傾動の組合せにより、撮像素子31を光軸直交平面に対して傾動させている。「並進」は、可動ステージ61の姿勢を変えずに平行移動することでもある。可動ステージ61のZ(光軸O)方向位置、X方向位置、Y方向位置、Z方向(光軸O)回りの傾動位置(回転角)、X方向(X方向の軸)回りの傾動位置(回転角)及びY方向(Y方向の軸)回りの傾動位置(回転角)は、位置検出回路(位置検出手段)43により検出される。可動ステージ61のZ方向(光軸O)回りの傾動位置(回転角)、X方向回りの傾動位置(回転角)及びY方向回りの傾動位置(回転角)は、撮像素子61のチルト量(傾動量)、チルト補正量(傾動補正量)となる。
【0054】
図6A、
図6B及び
図6Cは、被写体の例を示す図であって、画像表示部33に表示された撮影画面(撮影範囲)33a内の被写体例と構図例を示している。
図6Aは、被写体として3名の人物(被写体)201、202、203が、左右方向に距離を異ならせて位置する人物撮影の構図例、
図6Bは、撮影画面33aの下部に近い被写体、上部に遠い被写体が位置する街路撮影の構図例、
図6Cは、縦位置撮影において、撮影画面33aの下部に近い被写体、上部に遠い被写体が位置する建造物撮影の構図例である。
図6Aの構図例では、3名の人物201ないし203のいずれか1名に焦点を合わせると、他の2名には焦点が合わず、ボケる(被写界深度は考慮しない)。
図6Bまたは
図6Cの構図では、画面下部の近距離の被写体または画面上部の遠距離の被写体に焦点を合わせると、画面上部または画面下部の被写体に焦点が合わず、ボケる(被写界深度は考慮しない)。
【0055】
図7は、傾斜した物体面200全体に焦点(ピント)を合わせるために、撮像素子31をチルト(傾動)させた様子を示している。この例では、光軸Oに対して傾斜した物体面200の延長線と撮影レンズ100の主平面LSの延長線と撮像面31aの延長線が1点で交わるように撮像素子31をチルト(傾動)させている。このように撮像素子31をチルトさせると、シャインプルーフの法則により、撮像面31aに投影された物体面200の画像全ての部分に焦点が合う(合焦する)。
図7は、物体面(被写体)200と、撮影レンズ100の主平面LSと、撮像素子31及び撮像面31aとの関係を簡略化して示す図である。主平面は厳密には前側主平面と後側主平面があるが、ここでは簡略化して1個の主平面LSとして示してある。図において、撮像範囲中心200oは撮影される(撮像面31aに投影される)物体面200の中心であり、符号31oは撮像面31aの中心であって、撮像範囲中心200oの像が投影される。図において、主平面LSから物体面200(撮像範囲中心200o)までの距離(被写体距離)をb、撮像面31a(像面中心31o)までの距離(像面距離)をaとおくと、合焦状態では、次の結像式が成立する。
1/f=1/a+1/b
M=a/b
ただし、fは撮影レンズ100の焦点距離、Mは倍率(光学倍率)である。
像面距離aは、例えば撮影レンズ100の焦点調節レンズ群FLの光軸方向位置から検出され、被写体距離bは、像面距離aと撮影レンズ100の焦点距離fから検出される。
【0056】
ここで、
図6Aの構図において、3名の人物201ないし203が物体面200の図示位置に位置していたとすると、3名の人物201ないし203全員に焦点が合う。
【0057】
このデジタルカメラ10は、
図6A、
図6Bのように撮影画面内に複数の被写体がデジタルカメラ10からの距離を異ならせて位置し、あるいは
図6Cのように光軸Oに対して直交方向から傾斜した被写体を撮影するときに、撮像素子31を傾動させて、複数の被写体、被写体の全領域に焦点を合わせることができる。このチルト補正動作について、
図8ないし
図14をさらに参照して詳細に説明する。
【0058】
図8A、
図8Bは、撮影画面(撮像素子)33a上の9個の焦点検出エリア(1,1)ないし(3,3)に対応する被写体(被写体像)について焦点検出ができる実施例を示している。図示実施形態では、横長の撮影画面33aの短手方向(垂直方向、縦方向、正位置撮影時の重力方向)に並ぶ3個の焦点検出エリア(1,1)、(1,2)、(1,3)、3個の焦点検出エリア(2,1)、(2,2)、(2,3)、及び3個の焦点検出エリア(3,1)、(3,2)、(3,3)が、3×3のマトリックス状に配置されている。3個の焦点検出エリア(1,1)、(2,2)、(3,3)及び3個の焦点検出エリア(3,1)、(2,2)、(1,3)は、横長の撮影画面33aの長手方向(水平方向、横方向、正位置撮影時の重力方向と直交する方向)及び短手方向に対して共に傾斜した斜め方向に並んでいる。
【0059】
図8Bは、
図8Aの焦点検出エリア(1,1)ないし(3,3)のなかで、撮影画面33aの短手方向の中央に長手方向に並ぶ横3個の焦点検出エリア(1,2)、(2,2)、(3,2)が選択された様子を示している。撮影画面33a上において、選択された焦点検出エリア(1,2)、(2,2)、(3,2)は太線の枠で囲み表示され、選択されなかった焦点検出エリア(1,1)(2,1)、(3,1)、(1,3)、(2,3)、(3,3)と識別できる。なお、選択表示は、太線以外に、色を濃くする、色を付ける、色を変える、選択されていなエリアをグレーアウト(薄く表示させる)など、視覚的に識別できる方法を適用できる。
【0060】
図9Aは、
図6Aの構図で撮影するときの様子を
図8Bの撮影画面33aに重ねて表示した図で様子を示している。3名の人物201ないし203は、焦点検出エリア(1,2)、(2,2)、(3,2)に重なっており、それぞれの焦点検出エリア(人物201ないし203)について焦点ズレ量(デフォーカス量)が検出される。
【0061】
この実施形態では、初期状態において、中央の焦点検出エリア(2,2)に対して合焦動作したものとする。
図9Bは、長手方向に並ぶ横3個の焦点検出エリア(1,2)、(2,2)、(3,2)の焦点ズレ量をグラフで示している。同図において、縦軸は焦点ズレ量、横軸は焦点検出エリアである。このグラフからも明らかな通り、中央の焦点検出エリア(2,2)(中央の人物202)は焦点が合っているので焦点ズレ量は0であり、左の焦点検出エリア(1,2)(左の人物201)は後ピンで焦点ズレ量1が発生し、右の焦点検出エリア(3,2)(右の人物203)は前ピンで焦点ズレ量2が発生している。
【0062】
そこで本実施形態は、選択した3個の焦点検出エリア(1,2)、(2,2)、(3,2)全てに焦点が合うように、撮像素子31をチルト(傾動)させる。ここでは、近距離の左の人物201が投影されている撮像面31aの領域が主平面LSから焦点ズレ量1だけ遠ざかり、かつ遠距離の右の人物203が投影されている撮像面31aの領域が主平面LSに対して焦点ズレ量2だけ接近する方向に、撮像素子31を撮像面中心31oを通るX(長手)方向の軸回りにチルトさせる(
図7)。このように撮像素子31をチルトさせることで、中央の人物202だけでなく、遠近の人物201と203に対しても焦点が合う。なお、中央の人物202は、撮像素子31が撮像面中心31o回りにチルトしているので主平面LSから撮像面中心31oまでの距離aが変動せず、焦点が合った状態に維持される。
デジタルカメラ10は、3個の焦点検出エリア(1,2)、(2,2)、(3,2)について焦点ズレ量を検出し、各焦点ズレ量が0、つまり合焦するように撮像素子31をチルト補正動作するので、被写体距離が異なる3名の人物201ないし203の全てに同時に焦点を合わせることができる。
【0063】
図10Aは撮影画面33aの中央の短手方向に並ぶ縦3個の焦点検出エリア(2,1)、(2,2)及び(2,3)を選択し、撮像素子31をY方向(短手方向)の軸回りに回転させた例、
図10Bは斜め方向に並ぶ3個の焦点検出エリア(3,1)、(2,2)及び(1,3)を選択し、焦点検出エリア(3,1)、(2,2)及び(1,3)の中心を通る軸と直交する軸回りに回転させた例を示している。つまり、選択された焦点検出エリアの配置方向と直交する方向の軸回りに回転(傾動)させる。以上は一例であり、デジタルカメラ10は、他の縦方向、横方向、斜め方向の焦点検出エリアを選択できる。被写体の被写体距離が一定方向に変化している場合、その一定方向の焦点検出エリアを選択できればよい。焦点検出リア(1,1)ないし(3,3)の数、配置例は図示の実施例に限定されない。
【0064】
デジタルカメラ10による自動チルト補正動作の実施形態について、
図11ないし
図14を参照して説明する。
図11は、デジタルカメラ10の自動焦点調節装置が位相差検出方式である場合の位相差検出回路70の一例をブロックで示している。
【0065】
位相差検出回路70は、撮影画面33a内の複数の焦点検出エリア(1,1)ないし(m,n)の被写体について焦点ズレ量(デフォーカス量)を検出することができる位相差センサユニット(焦点検出手段)71を備えている。位相差センサユニット71は、各焦点検出エリア(1,1)ないし(m,n)に対応する測距センサ(1,1)ないし(m,n)を備え、各測距センサ(1,1)ないし(m,n)は一対のセンサ列を有し、瞳分割された一対の被写体光束の一方と他方を受光して一対の画像信号を出力する。なお、符号m、nは1以上の整数であって、同一であっても異なってもよいが、
図8の実施例の場合、最大値は、m=n=3である。
【0066】
測距センサ(1,1)ないし(m,n)は、一対の画像信号を焦点検出部72に出力する。焦点検出部(焦点ズレ量検出手段)72は、測距センサ(1,1)ないし(m,n)に対応する焦点検出部(1,1)ないし(m,n)を有し、各焦点検出部(1,1)ないし(m,n)は、一対の画像信号の位相差を検出して焦点ズレ量検出部(焦点ズレ量検出手段)73に出力する。焦点ズレ量検出部73は、各焦点検出部(1,1)ないし(m,n)毎に焦点ズレ量を演算して、ボディCPU20に出力する。
【0067】
ボディCPU20は、焦点検出エリア(1,1)ないし(m,n)の中から選択したいずれか1つ以上の焦点検出エリアの焦点ズレ量が0になる(合焦する、ピントが合う)ように、撮影レンズ100の焦点調節レンズ群FLをAF部22により光軸方向に駆動(前後駆動)する自動焦点調節(合焦)動作と、選択した複数の焦点検出エリアの全ての焦点ズレ量が0または(絶対値が)最小になるように撮像素子31をチルトさせるチルト補正動作をする。一つの実施形態では、焦点調節動作は、選択した焦点検出エリアの中で、撮影画面33aの中心に最も近い焦点検出エリアの焦点ズレ量に基づいて行い、あるいは、例えば複数の焦点ズレ量の中間値に基づいて行う。その後、他の選択した焦点検出エリアについて焦点ズレ量が0となるようにチルト補正動作する。
【0068】
デジタルカメラ10の自動チルト(傾動)補正動作について、
図12に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。なお、
図8A、
図8Bに示した9個の焦点検出エリア(1,1)ないし(3,3)及び焦点検出部(1,1)ないし(3,3)を有するものとする。デジタルカメラ10は、電源がオンされると、ボディCPU20が、防振・チルト制御回路41、アクチュエータ駆動回路42を介してステージ装置60を駆動し、可動ステージ61上の撮像素子31を、その撮像面31aが光軸Oと直交し、撮像面31aの中心に光軸Oが入射し、かつ撮像面31aの光軸O方向の位置が設計上の光軸方向位置と一致する初期位置に保持する。デジタルカメラ10は、撮像素子31を初期位置に保持した初期状態において、撮影前の焦点調節動作、測光動作などの撮影準備動作、振れ補正動作を実行しながら、撮像素子31が撮像したモニタ画像を画像表示部33に表示する。この実施形態のデジタルカメラ10は、自動チルト補正動作を、上記焦点調節動作した後の初期状態から開始するものとして説明する。以下の動作は、デジタルカメラ10のボディCPU20が統括的に制御し、ボディCPU20が演算や駆動、補正動作するものとする。
【0069】
デジタルカメラ10は、撮影画面内において焦点調節する範囲、つまりチルト補正動作に使用する焦点検出エリアを焦点検出エリア(1,1)ないし(3,3)の中から選択(指定または決定)する(S11)。
【0070】
初期チルト量(傾動量)をRAM23aに格納する(S13)。初期チルト量は、初期状態では0であるが、撮像素子31を既にチルト等させていた場合は、そのチルト量を位置検出回路43を介して入力し、RAM20aに格納する。
【0071】
焦点距離f、被写体距離b及び像面距離aから倍率Mを演算し、倍率量としてRAM20aに格納する(S15)。
【0072】
選択した各焦点検出エリアの焦点ズレ量を検出し(S17)、各焦点ズレ量の差を演算する(S19)。
【0073】
選択した焦点検出エリアの焦点ズレ量が最小になるように、チルト補正量を演算する(S21)。例えば、
図9A、
図9Bに示した例では、焦点検出エリア(1,2)、(2,2)、(3,2)の焦点ズレ量が最小になるように、撮像素子31のチルト補正量(傾動補正量)を演算する。
【0074】
演算したチルト補正量に基づいて、撮像素子31をステージ装置60によりチルト補正動作する(S23)。
チルト補正動作後、選択した焦点検出エリアについて焦点ズレ量を検出し、焦点ズレ量が発生していた場合、撮像素子31をステージ装置60によって光軸方向に微動(前後方向に微並進駆動)させてフォーカス補正(焦点調節)動作し(S25)、自動チルト補正動作を終了する(S27)。
【0075】
デジタルカメラ10は、焦点検出エリア(1,1)ないし(3,3)の中から指定または選択した焦点検出エリアにおいて異なる焦点ズレ量を検出したとき、指定または選択した全ての焦点ズレ量が0、つまり合焦するように撮像素子31をチルト補正動作させるので、全被写体(全被写体領域)について合焦させることができる。撮影者は、手動でチルト動作する必要がなく、簡単にあおり撮影などの特殊撮影ができる。
【0076】
デジタルカメラ10は、自動チルト補正動作を終了(S27)した後に静止画撮影動作して、被写体全体にピントが合った高品位の画像を得ることができる。
【0077】
図12に示した実施形態は、ステップS25において検出した焦点ズレ量がステージ装置60による撮像素子31の光軸O方向の並進可能量より大きい場合には、焦点調節レンズ群FLを駆動してフォーカス補正動作を行ってもよい。
ステップS25のフォーカス補正処理は省略してもよい。シャッタ優先等の場合にシャッタチャンスを逃すおそれが少なくなる。
【0078】
図13は、デジタルカメラ10の自動焦点調節装置(焦点検出手段)が画像コントラスト検出方式である場合のコントラスト検出回路80の一例をブロックで示している。コントラスト検出回路80は、焦点検出部(焦点検出手段)82と焦点ズレ量検出部(焦点ズレ量検出手段)83を備えている。焦点検出部82は、焦点検出エリア(1,1)ないし(m,n)に対応した複数の焦点検出部(1,1)ないし(m,n)を有する。画像処理部32は、撮像素子31が撮像し、出力した画像信号に所定の画像処理を施して、コントラスト検出回路80に出力する。コントラスト検出回路80は、焦点検出部(1,1)ないし(m,n)が焦点検出エリア(1,1)ないし(m,n)に対応する画像領域の画像信号に基づいてコントラストを検出し、焦点ズレ量検出部83に出力する。焦点ズレ量検出部83は、焦点調節レンズ群FLの位置と焦点検出エリア(1,1)ないし(m,n)をリンクさせて、コントラストをメモリする。
【0079】
以上のコントラスト検出とコントラストのメモリを、焦点調節レンズ群FLをAF部22により最短撮影位置から無限遠合焦位置方向またはその逆方向に移動させながら繰り返し実行する。そうして焦点ズレ量検出部83は、焦点検出エリア(1,1)ないし(m,n)毎に、コントラストのピークが得られたときの焦点調節レンズ群FLの光軸方向位置を合焦位置として検出し、基準となる合焦位置、例えば中央の焦点検出エリアの合焦位置と他の焦点検出エリアの合焦位置との差を演算し、焦点ズレ量として設定する。
【0080】
図14は、デジタルカメラ10が上記コントラスト検出方式の自動焦点調節装置を備えた場合の、自動チルト補正動作の実施形態をフローチャートで示している。
図12に示した自動チルト補正動作と同一の動作には同一のステップS番号を付して詳細は省略する。なお、この実施形態は、
図8A、
図8Bに示した9個の焦点検出エリア(1,1)ないし(3,3)に対応する9個の焦点検出部(1,1)ないし(3,3)を有するものとして説明する。
【0081】
デジタルカメラ10は、自動チルト補正動作を、
図12に示した実施形態と同様に、撮影画面内において焦点調節する範囲(焦点検出エリア(1,1)ないし(3,3)のいずれか1つ以上)を決定(指定または選択)し(S11)、初期チルト量をRAM23aに格納し(S13)、倍率Mを演算して倍率量としてRAM20aに格納する(S15)。
【0082】
撮像素子31を光軸O方向に微動(並進)させ(S16−1)、コントラスト検出回路80により、選択した焦点検出エリアのコントラストを検出する(S16−2)。ここでは、撮像素子31をステージ装置60により光軸O方向に微動(並進)させて選択した焦点検出エリアのコントラストを検出する動作を、撮像素子31をステージ装置60により光軸方向前方または後方に微動させながら繰り返して、コントラストのピークとそのピークが得られたときの撮像素子31の光軸方向位置を検出する。そうして選択した焦点検出エリアのコントラストのピークが得られた撮像素子31の光軸方向位置の差を演算する。
【0083】
指定または選択した焦点検出エリアのコントラストのピークとピークが得られた撮像素子31の光軸方向位置をRAM20aに格納する(S16−3)。
【0084】
指定または選択した焦点検出エリアのコントラストが最大になる(ピントズレ量が0または0に近くなる)チルト補正量を演算する(S16−4)。
【0085】
演算したチルト補正量に基づいて、撮像素子31をステージ装置60によりチルト補正動作する(S23)。
チルト補正動作後、指定した焦点検出エリアについて焦点ズレ量を検出し、チルト補正動作によって焦点ズレ量が発生していた場合、撮像素子31をステージ装置60によって光軸方向に微動させるフォーカス(焦点)補正動作して(S25)、自動チルト補正動作を終了する(S27)。焦点ズレ量が撮像素子31の光軸O方向移動可能量より大きい場合は、焦点調節レンズ群FLを駆動して焦点補正動作を行う。
【0086】
デジタルカメラ10は、以上のチルト補正動作により、選択または指定した焦点検出エリア内の全被写体(全被写体領域)に対して合焦させることができる。
【0087】
自動チルト補正動作は、合焦させる焦点検出エリアを、予めグループ化した焦点検出エリアの中からグループ単位で選択または指定するか、使用者が個別に指定するように構成できる。グループ化は、例えば、水平方向、垂直方向、または斜め方向の複数の焦点検出エリアをグループ化して、グループ化した焦点検出エリアを優先して使用する優先モードを設定する。優先モードは、水平方向優先モード、垂直方向優先モード、斜め優先モードがある。
また、全てまたは複数の焦点検出エリアについて、焦点ズレ量の絶対値が最小(絶対値の合計または平均値が最小)となるようにチルト補正動作する全体優先(全体焦点ズレ量最小)モードなどがある。
【0088】
水平優先モードは、像面の水平方向を優先するモードであって、物体面の焦点ズレ量を撮影画面33a(撮像面31a)の長手方向と平行な水平方向(横方向)に配置された複数の焦点検出エリア(
図8B)毎に検出して被写体(物体面)の水平方向の傾き(遠近差)を検出し、検出結果に基づいて、撮像素子31をステージ装置60により水平方向と直交する垂直方向回りにチルト(傾動)させるチルト補正動作モードである。
垂直優先モードは、像面の重力方向を優先するモードあって
、物体面の焦点ズレ量を撮影画面33a(撮像面31a)の短手方向と平行な垂直方向(縦方向、重力方向)に配置された複数の焦点検出エリア(
図10A)毎に検出して被写体(物体面)の垂直方向の傾き(遠近差)を検出し、検出結果に基づいて、撮像素子31をステージ装置60により垂直方向と直交する水平方向回りにチルト(傾動)させるチルト補正動作モードである。
斜め方向優先モードは、像面の斜め方向を優先するモードであって、物体面の焦点ズレ量を撮影画面33a(撮像面31a)の長手方向及び短手方向に対して傾斜する斜め方向(右下がり、左下がり)に配置された複数の焦点検出エリア(
図10B)毎に検出して被写体(物体面)の斜め方向の傾き(遠近差)を検出し、検出結果に基づいて、撮像素子31をステージ装置60により、斜め方向と直交する方向回りにチルト(傾動)させるチルト補正動作モードである。斜め方向のチルト補正動作は、垂直方向回りの傾動と水平方向回りの傾動の組み合わせにより実現できる。
全体優先モードは、全または複数の焦点検出エリア内の焦点ズレ量を検出し、焦点ズレ量(絶対値)の合計または平均値が最小となるように、撮像素子31を、水平方向回り、垂直方向回りにチルト(傾動)させ、光軸方向に並進させるチルト補正動作モードである。
【0089】
以上の優先モードは、デジタルカメラ10に備えられたチルト設定スイッチ群45の操作を受けて、チルト設定回路46により設定する構成により選択できる。
【0090】
焦点検出エリアを選択する他の態様では、撮影者が焦点を合わせたい(チルト補正動作に使用したい)複数の焦点検出エリアまたは複数箇所の被写体部分を撮影者自身が指示または選択する。チルト設定操作スイッチ群45によって画像表示部33に表示された焦点検出エリアを選択する構成や、画像表示部33がタッチパネル(タッチスクリーン)表示装置の場合は、画像表示部33を指でタッチし、タップやスライド等させて指示(接触操作)する構成がある。タッチパネル表示装置を使用した場合は、焦点合わせを優先する被写体部分(焦点検出エリア)を指でなぞって選択することもできる。
【0091】
さらに他の焦点検出エリアを選択する態様では、撮影者が優先させたいチルト方向へデジタルカメラ10をスイングする。例えば、デジタルカメラ10を正位置に構えた状態で水平方向にスイングすると水平方向の焦点検出エリアが優先される水平優先モードが選択され、垂直方向にスイングさせると垂直方向の焦点検出エリアが優先される垂直優先モードが選択される構成とする。スイング方向は、X方向加速度検出部GSX、Y方向加速度検出部GSY、及びZ方向加速度検出部GSZの検出結果を利用することで検出できる。
【0092】
デジタルカメラ10が光学ファインダ(ファインダ装置)を備え、光学ファインダの視野内に焦点検出エリアが表示されるデジタル一眼レフカメラの場合、撮影者は光学ファインダで被写体を観察しながら、撮影した被写体に構図を決めて、合焦させたい箇所(表示された焦点検出エリア)をスイッチ操作により複数指示する。そのときの指示点を画像の位置、座標により記憶する。その後、レリーズの瞬間に指示個所の焦点が最適になるように撮像素子31をチルト補正動作させて自動焦点調節を行う。また、光学ファインダ装置に視点(視線)検出装置を搭載して、撮影者の視線と合致する被写体領域(焦点検出エリア)を選択し、視線の移動方向の焦点検出エリアを選択し、または視線の移動方向の優先モードを選択することもできる。ファインダ装置は、撮像素子が撮影した被写体像を表示するディスプレイをアイピースを介して観察する電子ビューファインダ装置であってもよい。
【0093】
本実施形態のステージ装置60は、永久磁石を前後固定ヨークに固定し、駆動用コイル及びホール素子を可動ステージに固定したムービングコイル構成であるが、永久磁石を可動ステージに固定し、駆動用コイル及びホール素子を前後固定ヨークに固定したムービングマグネット構成としてもよい。ムービングマグネット構成によれば、可動ステージから引き出されるフレキシブルプリント基板の数が少なくなり、可動ステージへの負荷が減少して、可動ステージを迅速かつ正確に駆動することが可能になる。
【0094】
本発明の振れ補正装置は、いわゆるミラーレスデジタルカメラ、一眼デジタルカメラ、コンパクトデジタルカメラや、デジタルビデオカメラ、ドライブレコーダー、アクションカメラ、携帯端末等に搭載されたデジタルカメラなどの他、交換式レンズ鏡筒、カメラ一体型レンズなど、様々な撮影装置や光学機器全般に適用可能である。
【0095】
また本発明は、映像、データなどを投影するプロジェクターやレーザスキャナなどに適用することもできる。プロジェクターに適用する場合は、ステージ装置の可動ステージ61の略中央に、可動ステージ61の厚さ方向(第1の方向、Z方向)の一方の側(後方)から投影光を入射し、他方の側(前方)の投影光学系に向けて射出する画像形成素子(液晶パネル)、あるいは、可動ステージ61の略中央に、第1の方向(Z方向)とは異なる方向から入射した投影光束を、第1の方向(投影光学系方向)に反射するDMD(デジタルミラーデバイス、デジタルマイクロミラーデバイス)パネルを搭載できる。可動ステージ61には、画像形成素子に代えて、投影光学系を搭載してもよい。
【0096】
図15は、可動ステージ61を有するステージ装置60を備えた画像投影装置(プロジェクター)の実施形態の概要を示している。この実施形態は、光源85と、光源85から発せられた光を均一化する照明光学系86と、照明光学系86から射出した照明光を受けて画像を形成する画像形成素子87と、この画像形成素子87が開口61c内に固定された可動ステージ61と、画像形成素子87で形成された画像を投影する投影光学系88とを備えている。画像形成素子87は、具体的には液晶パネルまたはDMDパネルである。画像形成素子87は、可動ステージ61を介してプロジェクターの筐体もしくは投影光学系88に設けられ、可動ステージ61が駆動していない状態(初期位置に保持された状態)で、画像形成素子87の画像が形成される平面が、投影光学系88の光軸Oに対して、もしくは、投影光学系88内のいずれかのレンズの光軸に対して、垂直になるようにプロジェクター内に配置される。可動ステージ61を、光軸O方向(第1の方向)、第2または第3の方向に並進させ、あるいは第1、第2または第3の方向回りに傾動等させることで、画像形成素子87(液晶パネル)を透過して投影光学系88に向かう投影光束の方向、またはDMDパネルで反射して投影光学系88に向かう投影光の方向を変えて投影方向や投影位置を調整したり、投影画像の傾きを調整したり、液晶パネルまたはDMDパネルと投影光学系の間隔を調整して焦点調節したりすることができる。
なお、プロジェクターにはさらに焦点のズレ量を検出する焦点検出手段や、投影画像の歪みを検出する、例えば台形検出手段を備えてもよい。これらの検出手段は、焦点合わせや台形歪み補正時に利用される。特に台形歪み補正については、台形検出手段を備えることで台形歪み量を検出し、焦点のズレ量に基づいて像面傾動手段により像面を傾動させることで自動的に補正することが可能になる。
【0097】
さらに、プロジェクターをデジタルサイネージに応用することもできる。具体的には、電車内や自動車内などの動くものに搭載した場合の振れ補正、または移動可能なロボットに搭載した場合の振れ補正などにも応用できる。さらに、手持ち可能な小型プロジェクターに搭載することで、手振れを効率的に補正することができる。なお、撮影装置一般にプロジェクターを搭載することも可能である。撮影装置本体部やその表示部に小型プロジェクターを搭載する場合、撮影時は撮像素子や撮影光学系の光学要素の一つを保持する可動ステージの並進、傾動等により撮影振れ補正を行い、撮影画像の投影時には画像形成素子を保持する可動ステージの並進、傾動等により投影した画像が振れないように投影振れ補正を行うようにしてもよい。プロジェクターに搭載する場合はさらに、画像形成素子を半画素分や1画素分ずらすことで表示する画素数を増やす画素ずらしにより高解像化が可能になるが、画素ずらしの代わりに、または画素ずらしに加えて傾動させることで高解像化することが可能になる。
【0098】
本発明は、振れ補正装置を、撮影光学系の光学要素の1つを補正光学要素として駆動する補正光学系を備えたレンズ鏡筒(特開2015-4769号公報等)に適用することもできる。例えば、撮影レンズ101において、撮影光学系を構成する光学素子の1個または複数個を補正光学要素(被駆動部材)とすることができる。この実施形形態では、第1レンズ群91と第2レンズ群93の間のレンズを被駆動部材(補正光学要素)92としてある(
図16)。この実施形態の場合、可動ステージ61の略中央に形成した開口61cに補正光学要素92を搭載してある。この実施形態によれば、可動ステージ(補正光学要素92)61を光軸O方向(第1の方向)、第2または第3の方向に並進させ、あるいは第1、第2または第3の方向回りに傾動させることで、振れ補正動作やあおり撮影などの特殊撮影が可能である。さらにこの実施形態は、可動ステージ(補正光学要素92)61を光軸O方向(第1の方向)に微並進動作させることでフォーカシング微調整が可能である。
【0099】
また、本発明は、撮影レンズに搭載された振れ補正装置とカメラボディに搭載された振れ補正装置を共働させて振れ補正動作や傾動による焦点調節動作やその他の特殊撮影動作をさせることもできる。