特許第6838431号(P6838431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838431
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】スイッチング電源制御用半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-41015(P2017-41015)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-148676(P2018-148676A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】川村 一裕
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−188093(JP,A)
【文献】 特開2014−207775(JP,A)
【文献】 特開昭57−097125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から入力電圧が入力される電圧入力端子と、
該電圧入力端子に入力された外部電源の電圧が1次側主巻線に印加されるトランスの補助巻線から直流電圧が入力される直流電源端子と、
前記入力電圧の検出電圧が第1閾値電圧以下であることを検出し、且つ前記直流電圧の検出電圧が前記第2閾値電圧以上であることを検出したときに、パワーグッド信号を外部装置に出力するパワーグッド信号生成部と
を備えたことを特徴とするスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項2】
前記パワーグッド信号生成部は、前記電圧入力端子に入力された入力電圧の検出電圧が第1閾値電圧以下であるか否かを検出する入力電圧検出部と、前記直流電圧の検出電圧が第2閾値電圧以上であるか否かを検出する直流電圧検出部と、前記入力電圧検出部で前記入力電圧の検出電圧が第1閾値電圧以下であることを検出し、且つ前記直流電圧検出部で前記直流電圧の検出電圧が前記第2閾値電圧以上であることを検出したときに、パワーグッド信号を外部装置に出力するパワーグッド信号出力部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項3】
前記入力電圧検出部は、前記入力電圧の検出電圧と前記第1閾値電圧とが入力されるコンパレータで構成され、前記直流電圧検出部は前記直流電圧の検出電圧と前記第2閾値電圧とが入力されるコンパレータで構成され、前記パワーグッド信号出力部は、前記入力電圧検出部の出力信号と、前記直流電圧検出部の出力が入力される論理回路と、定電流が入力されるとともに、制御端子に前記論理回路の出力が制御信号として入力されるスイッチ素子とを備え、前記スイッチ素子からパワーグッド信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項4】
前記直流電源端子に外付けされた充電部と、前記電圧入力端子から供給される起動電流によって前記充電部を充電する起動回路とを備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項5】
前記パワーグッド信号生成部は、前記入力電圧検出部で前記入力電圧の検出電圧が第1閾値電圧を超えているときにスイッチング可能化信号を出力することを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項6】
前記パワーグッド信号生成部は、前記入力電圧検出部で前記入力電圧の検出電圧が第1閾値電圧以下となってから所定遅延時間が経過したときにスイッチング停止信号を出力することを特徴とする請求項3又は5に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項7】
前記外部電源からの入力電圧が交流電源の交流電圧の整流電圧であり、
前記入力電圧検出部は前記電圧入力端子に入力された前記整流電圧の検出電圧のピーク電圧が第1閾値電圧以下であるか否かを検出することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【請求項8】
前記入力電圧検出部は前記入力電圧を分圧もしくはレベルシフトした電圧と前記第1閾値電圧とが入力されるコンパレータと、該コンパレータの出力が入力される判別タイマを有し、前記コンパレータは前記入力電圧を分圧もしくはレベルシフトした電圧が前記第1閾値電圧を超えると前記判別タイマをリセットし、前記判別タイマはリセットされない期間が判別期間を超えると前記整流入力電圧の検出値のピーク電圧が第1閾値電圧以下であることを示す信号を出力し、
前記直流電圧検出部は前記直流電圧を分圧もしくはレベルシフトした電圧と前記第2閾値電圧とが入力されるコンパレータを有することを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源制御用半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の異常状態をパワーグッド信号によって外部に通知するようにしたスイッチング電源制御用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自身の出力電圧を帰還電圧として入力し、この帰還電圧を、第1閾値電圧が入力される第1コンパレータに供給してショート保護信号を得るとともに、帰還電圧を第2閾値電圧が入力される第2コンパレータに供給して過電圧保護信号を得、これらショート保護信号及び過電圧保護信号をオアゲートに供給して異常検出信号を生成し、この異常検出信号をスイッチ素子に入力することにより、異常を検出していないときにハイレベルとなり、異常を検出したときにローレベルとなるパワーグッド信号をマイコン等に出力する電源装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の先行技術では、ショート保護信号や過電圧保護信号がローレベルからハイレベルとなったときに、ハイレベルからローレベルとなるパワーグッド信号が出力されるので、これらの異常の発生を外部に通知をすることができるが、入力電圧の低下によるスイッチング動作の停止を外部に通知することはできない。
【0004】
例えばフライバック方式のスイッチング電源では、起動時に交流電源をダイオードで整流した整流電圧がVH端子に入力されると、起動回路によって整流電圧を外部のコンデンサに供給し、このコンデンサを充電して直流電圧Vccを形成し、この直流電圧Vccが閾値電圧以上となるとスイッチング動作を開始し、起動回路の動作を停止する。その後は、スイッチング動作によってフライバックトランスの補助巻線に発生する電圧により直流電圧Vccが維持される。この状態で、交流電源からの入力電圧が遮断されてVH端子に入力される整流電圧が低下すると、ブラウンアウト回路によって、スイッチング動作が停止され、これによって直流電圧Vccが低下すると起動回路が起動される。このとき、起動回路に整流電圧が入力されていないので、コンデンサを充電することはできず、直流電圧Vccが低下し続け、低電圧防止機能の閾値電圧以下となると、電源回路をリセットする。また、入力電圧がバッテリなどの直流電源から供給されるものでも、バッテリのエネルギが尽きてきてVH端子に入力される電圧が低下すれば同様の動作となる。
【0005】
この低電圧防止機能が発揮されたか否かを外部に通知するには、前述した特許文献1に記載されているパワーグッド信号の生成回路を利用すると、図6に示すようにパワーグッド信号生成回路を構成することができる。
【0006】
すなわち、第1コンパレータ101にVH端子に入力された電圧Vrを分圧回路102で分圧した電圧Vin1を供給し、第2コンパレータ103に直流電圧Vccを分圧回路104で分圧した電圧Vin2を供給し、第1コンパレータ101及び第2コンパレータ103の出力をナンド回路105に供給する。ナンド回路105の出力をPチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)106に供給し、このPチャネルMOSFET106のソースに定電流源107を接続し、ドレインを端子PGSに接続することにより、端子PGSから低電圧防止機能が発揮されたか否かを外部に通知するパワーグッド信号Spgを得ることができる。
【0007】
このパワーグッド信号Spgを、電流制限抵抗108を介してフォトカプラ109を構成するフォトダイオード109aに供給することにより、フォトカプラを構成するフォトトランジスタ109bからパワーグッド信号Spgを外部のマイコン等に通知することができる。
この図6の構成の動作について図7を伴って説明する。VH端子に入力される電圧Vrが、その分圧である図7(a)の電圧Vin1によって示すように、時点t21で入力開始されると、図示しない起動回路によって、外部のコンデンサが充電されて直流電圧Vccが、その分圧である図7(b)の電圧Vin2によって示すように、充電を開始される。
【0008】
この直流電圧Vccの分圧Vin2が時点t22で、スイッチング動作開始閾値電圧Vth2aを超えると、スイッチング電源が動作状態となり、図7(e)に示すように、スイッチング動作が開始される。このとき、第1コンパレータ101及び第2コンパレータ103の出力がハイレベルとなり、ナンド回路105の出力がローレベルとなることにより、PチャネルMOSFET106がオン状態となって定電流源107の定電流がPGS端子に図7(c)に示すようにパワーグッド信号Spgとして出力される。
【0009】
このパワーグッド信号Spgがフォトカプラ109を構成するフォトダイオード109aに供給されることにより、フォトダイオード109aが発光し、フォトトランジスタ109bがオン状態となる。
その後、時点t23で交流電源もしくはバッテリからの入力電圧が遮断されてVH端子に入力される整流電圧Vrが低下すると、第1コンパレータ101の出力がローレベルとなり、ナンド回路105の出力がハイレベルとなることにより、PチャネルMOSFET106がオフ状態となり、図7(c)に示すように、パワーグッド信号Spgの出力が停止され、図7(d)に示すように、フォトカプラ109へ供給される電流が遮断される。
【0010】
一方、スイッチング動作は時点t24まで継続される。この期間は、外部入力電圧に接続されている入力コンデンサに蓄積されたエネルギが、スイッチング動作により補助巻線に移送され、これにより直流電圧Vccが維持される。時点t24でスイッチング動作が停止されると、これに応じて直流電圧Vccが図7(b)に示すように徐々に低下する。したがって、パワーグッド信号Spgが供給される外部の装置では、時点t23及びt24までの間でオフシーケンス処理を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014−3814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述した図6のパワーグッド信号生成回路では、スイッチング電源がスイッチング動作を行なっており、整流電圧Vrが供給されている状態では、常時、パワーグッド信号Spgがフォトカプラ109に出力されている。このフォトカプラ109のフォトダイオード109aに供給される電流は、フォトカプラ109の変換効率やそのバラツキなどを考慮して最低電流を決める必要があり、この電流は通常トランジスタのベース電流に比べて10倍程度以上必要となる。
【0013】
このことが特に問題となるのが、電源仕様として低待機電力の実現が必須の場合である。それは例えば、装置、システムとしては休止状態であるが、次の起動に向けて電力を最小限に絞りながらマイコンなど最小限の回路が動作している、スタンバイ時の低待機電力化が必要な場合である。
この場合、スイッチング電源としては、間欠スイッチング動作などの特別なスイッチング動作をしたり、低消費電力動作をしたりしていて、電源回路としても無駄な電力消費はできないため、このフォトカプラでの消費電流は削減対象となる。
【0014】
そこで、スイッチング電源の通常動作時に、フォトカプラ109を通って流れる電流を抑制するために、外部回路を図8に示すように構成することが考えられる。
すなわち、フォトカプラ109のフォトダイオード109aのカソードと第1トランジスタ111のコレクタを接続し、この第1トランジスタ111のエミッタを接地する。そして、第1トランジスタのベースを、電流制限抵抗112を介して直流電圧Vccに接続するとともに、エミッタが接地された第2トランジスタ113のコレクタに接続する。また、フォトダイオード109aのアノードは、抵抗108を介して直流電圧Vccに接続されている。第2トランジスタ113のベースには、ベース抵抗114を介してパワーグッド信号Spgが供給される。
【0015】
この図8の回路構成では、図9(c)に示すように、パワーグッド信号Spgがハイレベルである区間では第2トランジスタ113がオン状態となることにより、第1トランジスタ111がオフ状態なり、フォトカプラ109のフォトダイオード109aへの通電が遮断される。これに対して、パワーグッド信号Spgがローレベルであるときに、第2トランジスタ113がオフ状態となり、第1トランジスタ111がオン状態となることにより、図9(d)に示すように、時点t21〜時点t22間でフォトカプラ109の電流が流れるとともに、オフシーケンス処理を実行する時点t23及び時点t24間でフォトカプラ109の電流が流れ、その後フォトカプラ109に流れる電流が減少する。
【0016】
このとき、時点t21〜時点t22の間では、スイッチング電源が起動しておらず、フライバックトランスの二次側の出力電圧もなく、装置やシステムも起動していない状態であるため、オフシーケンス処理も実行できないので問題はない。その後時点t22以降の通常動作状態となると、パワーグッド信号Spgはハイレベルとなるが、フォトカプラ109の電流は流れず、オフシーケンス処理は実行されない。
【0017】
しかしながら、図8の回路構成では、通常動作時にフォトカプラ109へ供給する電流を削減することはできるが、スイッチング電源の立ち上げ時に問題が生じる。立ち上げ時にスイッチング電源に入力電圧が入力されると、入力電圧に接続された起動回路により、直流電圧Vccを生成する外部のコンデンサが充電されて直流電圧Vccが上昇し始める。図8の回路構成では、直流電圧Vccの分圧Vin2がスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aに達するまでの期間、フォトカプラ109のフォトダイオード109aに順方向電流が流れ、この電流消費によって起動回路がコンデンサを充電するための電流が少なくなり、起動時間が長くなったりする。また、入力電圧が低い場合やフォトカプラのフォトダイオードの順方向電流を大きく設定した場合などは、起動回路の充電電流では、スイッチング電源内の起動前消費電流と外部回路での消費電流を賄うことができなくなり、最悪の場合直流電圧Vccの分圧Vin2がスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aに到達しきれずに起動不良となる可能性がある。
【0018】
そこで、本発明は、上述した先行技術の課題に着目してなされたものであり、起動時に直流電圧の充電に影響を与えることなく、オフシーケンス処理時にのみパワーグッド信号を出力することができるスイッチング電源制御用半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係るスイッチング電源制御用半導体装置の一態様は、外部電源から入力電圧が入力される電圧入力端子と、この電圧入力端子に入力された外部電源の電圧が1次側主巻線に印加されるトランスの補助巻線から直流電圧が入力される直流電源端子と、入力電圧の検出電圧が第1閾値電圧以下であることを検出し、且つ直流電圧の検出電圧が第2閾値電圧以上であることを検出したときに、パワーグッド信号を外部装置に出力するパワーグッド信号生成部とを備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、入力電圧と制御電圧とを個別に監視し、入力電圧が第1閾値電圧以下に低下し、且つ制御電圧が第2閾値電圧以上であるときに、パワーグッド信号を外部装置に出力することができる。したがって、起動時の消費電流を抑制しながらオフシーケンス処理が必要なときのみパワーグッド信号を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るスイッチング電源制御用半導体装置を適用したスイッチング電源の一実施形態を示す全体構成の回路図である。
図2】本発明に係るスイッチング電源制御用半導体装置の具体的構成を示すブロック図である。
図3】パワーグッド信号生成回路を示すブロック図である。
図4図3のパワーグッド信号生成回路の動作の説明に供するタイミングチャートである。
図5】パワーグッド信号生成回路の変形例を示すブロック図である。
図6】従来のパワーグッド信号生成回路を示す回路図である。
図7図6のパワーグッド信号生成回路の動作の説明に供するタイミングチャートである。
図8】従来のパワーグッド信号生成回路の他の例を示す回路図である。
図9図8のパワーグッド信号生成回路の動作の説明に供するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
以下、本発明の一の実施の形態に係るスイッチング電源御装置について図面を参照して説明する。
スイッチング電源装置の全体構成は、図1に示すように、外部の交流電源1に接続された交流入力端子2を有し、この交流入力端子2が整流回路3に接続されている。この整流回路3の正極出力端子及び負極出力端子間に平滑用コンデンサ4が接続されている。平滑用コンデンサ4の正極側がフライバックトランス5の一次側主巻線L11の一端に接続されている。一次側主巻線L11の他端は例えばNチャネルのMOSFETで構成されるスイッチング素子6のドレインに接続されている。スイッチング素子6のソースは、抵抗7を介して第1の接地電位GND1に接続されている。
【0024】
スイッチング素子6のゲートは、制御回路となるスイッチング電源制御用半導体装置11のOUT端子に接続されている。したがって、スイッチング素子6は、スイッチング電源制御用半導体装置11のOUT端子から出力されるパルス幅変調信号Spwmによってスイッチング動作する。
スイッチング電源制御用半導体装置11は、集積回路により構成され、OUT端子の他、VH端子、過熱ラッチ保護用のLAT端子、フィードバック制御用のFB端子、電流検出用のCS端子、GND端子、スイッチング電源制御用半導体装置11の電源生成用のVCC端子などを備えている。
【0025】
スイッチング電源制御用半導体装置11のVH端子は、電源端子2及び整流回路3間の接続線に整流用のダイオード12及び13と電流制限抵抗14とを介して接続されている。スイッチング電源制御用半導体装置11のLAT端子は、サーミスタ15の一端に接続され、サーミスタ15の他端は第1の接地電位GND1に接続されている。スイッチング電源制御用半導体装置11のFB端子は、フォトカプラ16を構成するフォトトランジスタ16aを介して第1の接地電位GND1に接続されている。スイッチング電源制御用半導体装置11のCS端子は、コンデンサ17および抵抗18の共通接続点に接続され、コンデンサ17の他端は第1の接地電位GND1に接続され、抵抗18の他端は、電流検出用抵抗7及びスイッチング素子6間に接続されている。コンデンサ17および抵抗18は、電流検出用抵抗7によって検出された信号に対するノイズフィルタを構成している。
【0026】
スイッチング電源制御用半導体装置11のVCC端子は、コンデンサ19の正極端子およびダイオード20のカソード端子に接続され、コンデンサ19の負極端子は第1の接地電位GND1に接続されている。ダイオード20のアノード端子は、トランス5の一次側補助巻線L12の一端に接続され、一次側補助巻線L12の他端は第1の接地電位GND1に接続されている。コンデンサ19、ダイオード20および一次側補助巻線L12は、一次側補助巻線L12に生起された交流電圧を直流電源電圧に変換する回路を構成し、スイッチング電源制御用半導体装置11の電源回路を構成している。
【0027】
トランス5は、二次側主巻線L21を有し、その一端は、ダイオード21のアノード端子に接続されている。ダイオード21のカソード端子は、コンデンサ22の正極端子に接続され、コンデンサ22の負極端子は、二次側巻線L21の他端に接続され、かつ第2の接地電位GND2に接続されている。二次側巻線L21、ダイオード21およびコンデンサ22は、二次側巻線L21に生起された交流電圧を直流電圧に変換する回路を構成し、スイッチング電源装置の出力回路を構成しており、コンデンサ22の正極端子が負荷23に接続されている。
【0028】
また、コンデンサ22の正極端子は、フォトカプラ16を構成するフォトダイオード16bのアノード端子に接続され、フォトダイオード16bのカソード端子は、シャントレギュレータ回路24を構成するシャントレギュレータ25のカソード端子に接続され、シャントレギュレータ25のアノード端子は第2の接地電位GND2に接続されている。
このシャントレギュレータ25は、コンデンサ22の正極端子と負極端子との間に直列接続されたシャントレギュレータ回路24を構成する分圧抵抗26,27の接続点に接続されている。このシャントレギュレータ回路24によって、負荷23に供給される電圧が検出され、その検出結果に応じた電圧がフォトカプラ16を介してスイッチング電源制御用半導体装置11のFB端子にフィードバック電圧Vfbとして供給される。
【0029】
このフィードバック電圧Vfbは負荷の大きさを示す信号ともなっていて、負荷が重いほど(負荷23に流れる電流が大きいほど)フィードバック電圧Vfbの値は大きくなり、負荷が軽いほど(負荷23に流れる電流が小さいほど)フィードバック電圧Vfbの値は小さくなる。
ここで、交流電源1、整流回路3、平滑用コンデンサ4、フライバックトランス5、MOSFET6、ダイオード21、コンデンサ22でスイッチング電源動作部を構成している。
【0030】
次に、スイッチング電源制御用半導体装置11の具体的構成について図2を伴って説明する。なお、以下、スイッチング電源制御用半導体装置11の具体的構成に関して示される接地(GND)電位は、上記第1の接地電位GND1である。スイッチング電源制御用半導体装置11は、VH端子及びVCC端子間に接続された、起動時にVH端子からVCC端子へ電流を供給する起動回路31と、この起動回路31とVCC端子との間に接続されたVCC端子の直流電圧Vccが低いときに起動回路31を動作させるヒステリシスを有する低電圧検出回路32と、VCC端子に接続された例えば5Vの内部電源を形成する内部電源回路33とを備えている。
【0031】
VH端子は起動時に電源端子VCCへ電流を供給するためのものであり、スイッチング電源制御用半導体装置11自身の主電源端子はVCC端子である。
また、低電圧検出回路32は直流電圧Vccが閾値電圧Vth0b未満であるときに起動回路31を起動し、直流電圧Vccが閾値電圧Vth0a以上となったときに起動回路31を停止させる。なお、低電圧検出回路32がヒステリシスを有するということは、低電圧検出回路32の反転入力端子に入力されている閾値電圧Vth0が、実際は高低2つの閾値電圧からなるということであり、上記閾値電圧Vth0aは高い方の閾値電圧を表し、閾値電圧Vth0bは低い方の閾値電圧を表す(以下、他の閾値電圧に対する表記方法も同様)。
【0032】
また、内部電源回路33は、VCC端子の電源電圧が正常範囲内であるときには5Vの内部電源電圧を動作電源としてスイッチング電源制御用半導体装置11内の各回路に供給するとともに、VCC端子の直流電圧Vccが設定電圧以下に低下したときに、スイッチング電源制御用半導体装置11内の各回路をリセットするリセット信号を出力する。
また、スイッチング電源制御用半導体装置11は、VH端子から入力される入力電圧VinとVCC端子から入力される直流電圧Vccとを監視して、外部の負荷23へパワーグッド信号を出力するパワーグッド信号生成部34を備えている。
【0033】
このパワーグッド信号生成部34は、図3に示すように、入力電圧Vinの分圧回路VD1で分圧された電圧Vin1を監視する入力電圧検出部としての第1コンパレータ34a及び判定タイマ34bと、直流電圧Vccの分圧回路VD2で分圧された電圧Vin2を監視する直流電圧検出部としての第2コンパレータ34cと、パワーグッド信号出力部34dと、遅延時間タイマ34iと、遅延回路34jとを備えている。
【0034】
第1コンパレータ34aは、非反転入力端子にVH端子に入力される入力電圧Vrが分圧回路VD1を介して入力され、反転入力端子に第1閾値電圧Vth1が入力されている。この第1コンパレータ34aは、ヒステリシス特性を有しているので、第1閾値電圧Vth1は2つの値Vth1a,Vth1b(Vth1a>Vth1b)を有している。入力電圧Vrの分圧Vin1が上昇するとき、初期の分圧Vin1がスイッチング動作停止閾値電圧Vth1b以下であるときに、第1コンパレータ34aの出力である第1比較信号Sc1がローレベルとなっている。そして、入力電圧Vrの分圧Vin1がスイッチング動作開始閾値電圧Vth1aを超えたときにハイレベルの第1比較信号Sc1を判定タイマ34bに出力する。逆に、入力電圧Vrの分圧Vin1がスイッチング動作開始閾値電圧Vth1aより高い状態から下降するときには、スイッチング動作開始閾値電圧Vth1aより低いスイッチング動作停止閾値電圧Vth1b以下となったときに、ローレベルの第1比較信号Sc1を判定タイマ34bに出力する。
【0035】
判定タイマ34bは、ローレベルの第1比較信号Sc1が入力されるとカウントを開始し、規定の遅延時間分までカウントすると、判定信号Sdをハイレベルからローレベルに変化させる。判定タイマ34bにハイレベルの第1比較信号Sc1が入力されると、判定タイマ34bはリセットされて、判定信号Sdはハイレベルになる。ここで、上記規定の遅延時間を交流電源1からの交流入力の半周期以上(整流回路による整流が全波整流の場合)にしておけば、判定タイマ34bがカウントを開始しても、カウントが終了する前に必ずハイレベルの第1比較信号Sc1が入力されるので、判定タイマ34bのカウントが終了して判定信号Sdがローレベルになることはない。すなわち、交流電源1から交流入力が正常に入力されていれば(第1コンパレータ34aに、スイッチング動作開始閾値電圧Vth1を超える入力電圧Vrの分圧Vin1のピーク値が連続的に入力されていれば)判定信号Sdは、原理的にハイレベルを保つ。逆に交流電源1からの交流入力のピークが所定値に達しない状態が続くと、判定タイマ34bのカウントが終了して判定信号Sdはローレベルとなる。
【0036】
したがい、判定信号Sdがハイレベルであれば入力電圧Vrが正常(スイッチ動作が可能な状態)であることを示し、ローレベルであれば異常であることを示すことになる。なお、ノイズ等に起因する誤検出や、問題とならないレベルの短時間の瞬時電圧低下で判定信号Sdがローレベルにならないように、上記規定の遅延時間を交流電源1の数周期分の長さに設定する。
【0037】
第2コンパレータ34cは、非反転入力端子にVCC端子に入力される直流電圧Vccの分圧Vin2が入力され、反転入力端子に第2閾値電圧Vth2が入力されている。この第2コンパレータ34cは、ヒステリシス特性を有しているので、第2閾値電圧Vth2は2つの値Vth2a,Vth2b(Vth2a>Vth2b)を有している。直流電圧Vccの分圧Vin2が上昇する場合、初期の分圧Vin2がスイッチング動作開始閾値電圧Vth2a以下であるときに、第2コンパレータ34cの出力である第2比較信号Sc2がローレベルとなっている。そして、直流電圧Vccがスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aを超えたときにハイレベルの第2比較信号Sc2を出力する。逆に、直流電圧Vccの分圧Vin2がスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aより高い状態から下降するときには、スイッチング動作開始閾値電圧Vth2aより低い第1閾値電圧としてのスイッチング動作停止閾値電圧Vth2b以下となったときに、ローレベルの第2比較信号Sc2を出力する。
【0038】
第2比較信号Sc2はパワーグッド信号出力部34dおよび遅延回路34jに入力される。遅延回路34jの出力は判定タイマ34bの第2リセット端子に入力される。したがい、判定タイマ34bは、直流電圧Vccの分圧Vin2がスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aを超えた瞬間には、遅延回路34jの出力によりリセットがかかっている状態になる。
【0039】
パワーグッド信号出力部34dは、論理反転回路34e、論理回路(ナンドゲート)34f、PチャネルMOSFET34g及び定電流回路34hを備えている。
論理反転回路34eは、判定タイマ34bから出力される判定信号Sdの論理レベルを反転するものであり、論理反転した判定信号Sd′を出力してナンドゲート34fに入力する。
【0040】
ナンドゲート34fは、論理反転回路34eから出力される判定信号Sdを論理反転した判定信号Sd′と第2コンパレータ34cから出力される第2比較信号Sc2とが入力され、これらの論理出力をPチャネルMOSFET34gのゲートに入力する。
PチャネルMOSFET34gは、ソースが定電流回路34hを介して内部電源回路33から出力される内部電源に接続され、ドレインがPGS端子に接続されたオープンドレイン構成を有する。
【0041】
遅延時間タイマ34iは、判定タイマ34bの判定信号Sdが入力される反転入力端子を有し、判定信号Sdがローレベルとなったときに、予め設定されたオフシーケンス処理を行なう遅延時間が設定され、当該遅延時間が経過した後にスイッチング停止信号Sstpがドライバ回路35に出力される。
また、判定タイマ34bの判定信号Sdがスイッチング可能化信号Ssabとしてドライバ回路35に出力される。
【0042】
さらに、PGS端子には、電流制限抵抗R1を介してフォトカプラ36を構成するフォトダイオード36aのアノードが接続され、このフォトダイオード36aのカソードが接地電位に接続されている。フォトカプラ36を構成するフォトトランジスタ36bは、負荷23に接続され、パワーグッド信号Spgがハイレベルであるときに負荷23がオフシーケンス処理を実行する。
【0043】
また、ドライバ回路35は、負荷23からのフィードバック電圧Vfbに対応した周波数のパルス幅変調(PWM)信号をOUT端子からスイッチング素子6に出力する。このドライバ回路35は、パワーグッド信号生成部34から出力されるスイッチング可能化信号Ssabがハイレベルであるときにパルス幅変調信号をOUT端子に出力し、遅延時間タイマ34iから入力されるスイッチング停止信号Sstpがハイレベルとなったときにパルス幅変調信号のOUT端子への出力を停止する。
【0044】
さらに、ドライバ回路35は、CS端子から入力される電流検出値Viによって過電流抑制制御を行なうとともに、LAT端子から入力される温度検出値Vtによって過熱抑制制御を行なう。
次に、上記実施形態の動作について図4を伴って説明する。
先ず、図4(a)に示す時点t1で、コンデンサ19が放電されているとともに、VH端子に入力される交流電源1からの交流信号をダイオード12及び13で整流された整流電圧の供給が停止されている状態にあるものとする。
【0045】
この状態では、VH端子に入力される入力電圧Vrが零であるとともに、VCC端子に入力される直流電圧Vccも零であることから、内部電源回路33から内部電源が出力されることはなく、スイッチング電源制御用半導体装置11は動作停止状態にある。この状態では、スイッチング素子6もスイッチング動作を停止しており、パワーグッド信号生成部34も動作停止状態にあり、PGS端子からパワーグッド信号Spgは出力されず、フォトカプラ36のフォトダイオード36aには通電されず消灯状態を維持する。
【0046】
この動作停止状態から時点t2で、交流電源1から交流電圧が出力され、この交流電圧がダイオード12及び13で整流されて脈流状態の入力電圧VrとしてVH端子に入力される。
この入力電圧Vrが入力されることにより、起動回路31が動作状態となり、この起動回路31から起動電流がVCC端子を通じてコンデンサ19に供給されて、このコンデンサ19が充電開始される。このため、VCC端子の直流電圧Vccの分圧Vin2が図4(b)に示すように徐々に上昇し、この直流電圧Vccの分圧Vin2が内部電源回路33の設定電圧(閾値電圧Vth2a)を超えると、この内部電源回路33から内部電圧が出力されて、スイッチング電源制御用半導体装置11の各回路に内部電源供給されて各回路が動作状態となる。
【0047】
このとき、判定タイマ34bも動作を開始するが、遅延回路34jの出力により、図4(a)に示すように判定信号Sdはハイレベルとなっている。なお、その後は、第1閾値電圧Vth1(スイッチング動作開始閾値電圧Vth1a)を超える入力電圧Vrの分圧Vin1のピーク値近傍が到来する毎に、第1コンパレータ34aの第1比較信号Sc1がハイレベルとなって、判定タイマ34bをリセットする。このハイレベルの判定信号Sdが論理反転回路34eで論理反転され、ローレベルとなってナンドゲート34fに入力される。このため、ナンドゲート34fの出力信号はハイレベルを維持し、PチャネルMOSFET34gはオフ状態を維持し、PGS端子にパワーグッド信号Spgは出力されず、フォトカプラ36のフォトダイオード36aは非通電状態となり、消灯状態を維持する。
【0048】
一方、第2コンパレータ34cでは、直流電圧Vccの分圧Vin2が第2コンパレータ34cのスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aに到達するまでは、第2コンパレータ34cから出力される第2比較信号Sc2はローレベルを維持する。このため、ナンドゲート34fの出力信号はハイレベルを維持する。
また、判定タイマ34bの判定信号Sdがハイレベルとなることにより、ドライバ回路35にスイッチング可能化信号Ssabが出力される。
【0049】
時点t3で、直流電圧Vccの分圧Vin2がスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aを超える状態となると、ドライバ回路35から出力端子OUTにパルス幅変調信号Spwmが出力され、これがスイッチング素子6のゲートに供給され、このスイッチング素子6がスイッチング動作を開始する。
このため、フライバックトランス5の二次側主巻線L21に交流誘起電圧が発生し、この交流誘起電圧がダイオード21で整流され、コンデンサ22で平滑化されて負荷23へ供給される。この負荷23に供給される負荷電流に応じた電流がフォトカプラ16のフォトダイオード16bを通じてシャントレギュレータ25を流れる。このため、フォトカプラ16を通じてフィードバック電圧VfbがFB端子に入力され、ドライバ回路35のパルス幅変調信号の周波数が制御される。
【0050】
この時点t3で、直流電圧Vccの分圧Vin2がスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aを超える状態となり、第2コンパレータ34cからハイレベルの第2比較信号Sc2が出力されるが、入力電圧Vrの分圧Vin1のピーク値が第1閾値電圧Vth1(スイッチング動作開始閾値電圧Vth1a)以上となることを繰り返す限り、ナンドゲート34fの出力信号はローレベルを維持し、PチャネルMOSFET34gはオフ状態を維持し、パワーグッド信号Spgはローレベルを維持する。
【0051】
この間に、制御用電圧Vccがヒステリシスを有する低電圧検出回路32の閾値電圧Vth0を超えると、起動回路31が作動停止される。また、スイッチング素子6がスイッチング動作することにより、フライバックトランス5の一次側補助巻線L12から出力される交流電流がダイオード20で整流され、コンデンサ19で平滑化されてVCC端子に供給されて、スイッチング電源制御用半導体装置11が通常動作状態となる。
【0052】
この通常動作状態から交流電源1が停止されて、VH端子への入力電圧Vrの分圧Vin1が閾値電圧Vth1(スイッチング動作停止閾値電圧Vth1b)以下となると、第1コンパレータ34aの第1比較信号Sc1はローレベルを維持することになり、判定タイマ34bが時点t4でカウントを終了してその判定信号Sdがローレベルとなる。
この判定信号Sdが遅延時間タイマ34iに供給されるので、遅延時間タイマ34iが遅延時間の計時を開始する。
【0053】
これと同時に、判定信号Sdが論理反転回路34eで論理反転されてハイレベルの判定信号Sd′となる。このとき、直流電圧Vccの分圧Vin2は図4(b)に示すように、第2コンパレータ34cのスイッチング動作開始閾値電圧Vth2aを超えているので、この第2コンパレータ34cから出力される第2比較信号Sc2はハイレベルを維持している。
【0054】
したがって、時点t4でナンドゲート34fの出力信号がローレベルからハイレベルに反転し、PチャネルMOSFET34gがオン状態となり、図4(c)に示すように、定電流回路34hから供給される電流がパワーグッド信号SpgとしてPGS端子を通じてフォトカプラ36のフォトダイオード36aに供給される。このため、フォトカプラ36を通じて負荷23にパワーグッド信号Spgを通知することができる。したがって、負荷23は、フライバックトランス5の二次側主巻線L21から供給される負荷電流が停止されるものと判断して、必要なデータの退避等を行って負荷23をオフ状態とするオフシーケンス処理を実行する。
【0055】
この状態では、ドライバ回路35が動作を継続しており、図4(e)に示すように、パルス幅変調信号Spwmの出力が継続されるので、負荷23で必要とする電流はパルス幅変調信号の周波数を制御することより確保される。なお、このときのエネルギ源は平滑用コンデンサ4となる。
その後、時点t5で、遅延時間タイマ34iの遅延時間が経過してタイムアップすると、遅延時間タイマ34iからスイッチング停止信号Sstpがドライバ回路35に出力され、これによりドライバ回路35からのパルス幅変調信号Spwmの出力が停止される。これによって、スイッチング素子6のスイッチング動作が停止されて、フライバックトランス5の二次側主巻線L21から負荷23への電流供給が停止される。なお、ドライバ回路35は、スイッチング可能化信号Ssabとスイッチング停止信号Sstpのうちの一つでもハイレベルになっていればスイッチング動作を実行し、2つともローレベルになっているとスイッチング動作を停止する。
【0056】
また、遅延時間タイマ34iの遅延時間は、オフシーケンス処理を実行するに十分な時間に設定されている。なお、遅延時間タイマ34iにより時点t5でスイッチング動作を停止させるのは、これ以上スイッチング動作を続けると、平滑用コンデンサ4の電圧低下が進み、ドライバ回路35がこれに対抗して所定のエネルギを出力側(2次側)に送るべくスイッチング素子6のオン時間を長くして入力電流を増加させるため、スイッチング素子6に流れる電流が許容範囲を超える虞があるからである。
【0057】
スイッチング素子6のスイッチング動作の停止に伴い、VCC端子に供給される直流電圧Vccの分圧Vin2も、図4(b)に示すように、徐々に減少する。そして、時点t6で制御用電圧Vccの分圧Vin2が第2コンパレータ34cのスイッチング動作停止閾値電圧Vth2b未満に低下すると、第2コンパレータ34cの比較信号Sc2がハイレベルからローレベルに反転する。このため、ナンドゲート34fの出力信号がローレベルからハイレベルに反転してPチャネルMOSFET34gがオフ状態となり、PGS端子からのパワーグッド信号Spgの出力が停止される。
【0058】
なお、遅延時間タイマ34iがタイムアップして時点t4で判定信号Sdがローレベルとなった場合でも、その後入力電圧Vrの分圧Vin1のピーク値が第1閾値電圧Vth1(スイッチング動作開始閾値電圧Vth1a)以上に復帰すると、第1コンパレータ34aの第1比較信号Sc1がハイレベルに復帰して判定タイマ34bの判定信号Sdがハイレベルに復帰することにより、パワーグッド信号Spgの出力が停止されるとともに、遅延時間タイマ34iがリセットされて、通常動作状態を継続する。
【0059】
このように、上記実施形態によると、パワーグッド信号Spgの出力が、入力電圧Vrの分圧Vin1がスイッチング動作停止閾値電圧Vth1b以下となって判定信号Sdがローレベルとなり、且つ直流電圧Vccの分圧Vin2がスイッチング動作停止閾値電圧Vth2b以上を継続している場合にのみ行なわれる。このため、VH端子に整流電圧Vrが供給開始された起動時に、起動回路31で起動電流によってコンデンサ19の充電を行なっている際に、パワーグッド信号Spgが出力されることはない。したがって、コンデンサ19への充電電流がパワーグッド信号Spgを生成するために消費されることを防止することができ、起動時間が遅くなったり、起動不良になったりすることを確実に防止することができる。
【0060】
もし、起動時にVH端子に入力される入力電圧Vr低めであり、この入力電圧Vrの分圧Vin1のピーク値が第1コンパレータ34aの第1閾値電圧Vth1以下の場合でも、起動回路31が動作してコンデンサ19を充電し、直流電圧Vccの分圧Vin2が第2コンパレータ34cのスイッチング動作開始閾値電圧Vth2a以上に達して、内部電源回路33が起動された場合には、パワーグッド信号Spgが出力されることになる。しかしながら、このときはスイッチング可能化信号Ssabとスイッチング停止信号Sstpが両方ともローレベルであるので、実際にはスイッチング素子6のスイッチング動作が開始されず、フライバックトランス5の二次側主巻線L21に交流誘起電圧が生じていない状態であり、オフシーケンス処理は実行されることはない。
【0061】
入力電圧Vrの分圧Vin1が第1コンパレータ34aの第1閾値電圧Vth1(スイッチング動作開始閾値電圧Vth1a)以上であり、直流電圧Vccの分圧Vin2が第2コンパレータ34cの第2閾値電圧となるスイッチング動作停止閾値電圧Vth2(Vth2a)以上に上昇すると、内部電源回路33が動作してドライバ回路35が動作状態となり、ドライバ回路35がスイッチング素子6にパルス幅変調信号Spwmを供給してスイッチング動作状態となる。しかしながら、このときもパワーグッド信号Spgは出力されない状態を維持するので、フォトカプラ36での消費電流は発生せず、負荷23が軽負荷状態であるときの低待機電力の増大を防止することができる。
【0062】
この状態から、交流電源が遮断されて入力電圧Vrの分圧Vin1が第1コンパレータ34aの第1閾値電圧Vth1(Vth1b)以下に低下すると、ここで始めてパワーグッド信号Spgが出力されることになり、フォトカプラ36のフォトダイオード36aをオン動作させて負荷23でオフシーケンス処理を実行することになる。
このように、本実施形態によると、第1コンパレータ34a及び判定タイマ34bで入力電圧Vrを監視し、第2コンパレータ34cで直流電圧Vccを監視することにより、入力電圧Vrの分圧Vin1がスイッチング動作停止閾値電圧Vth1b以下となり、且つ直流電圧Vccの分圧Vin2が第2閾値電圧となるスイッチング動作停止閾値電圧Vth2b以上を維持しているときにのみ、パワーグッド信号Spgを生成して、フォトカプラ36を介して負荷23へ通知することができる。このため、負荷23でのオフシーケンス処理を有効に行なうことができる。しかも、このためのパワーグッド信号生成部34を2つのコンパレータ34a,34cと、判定タイマ34bと、パワーグッド信号出力部34dと、フォトカプラ36とを設けるだけの簡易な構成とすることができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、PGS端子にフォトカプラ36のフォトダイオード36aを、電流制限抵抗R1を介して直接接続した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、PGS端子をトランジスタ40のベースに接続し、このトランジスタのコレクタを、電流制限抵抗R1を介して制御用電圧Vccがアノードに供給されるフォトカプラ36のフォトダイオード36aのカソードに接続し、エミッタを接地するようにしてもよい。
【0064】
なお、上記実施形態では、フライバックトランス5の二次側の出力電圧をシャントレギュレータ25で検出し、フォトカプラ16を介して検出結果をフィードバック電圧として伝送する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、二次側での出力電圧をトランス5の一次側補助巻線L12の出力電圧により間接的に検出し、これをフィードバック電圧とすることもできる。
【0065】
また、上記実施形態では、フライバック式のスイッチング電源に本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、LLC電流共振式のスイッチング電源にも本発明を適用することができる。
また、スイッチング電源装置への入力電圧を、外部の交流電源1からの交流入力を整流回路3で整流した電圧としたが、バッテリなどの直流電圧であってもよい。その場合、図1において整流回路3、ダイオード12,13および遅延回路34jは不要となり、電圧入力端子VHにはバッテリの出力電圧が抵抗14を介して接続される。入力電圧が直流電圧であっても、その電圧によって第1コンパレータ34aが動作するので、本発明が適用できることは明らかである。
【0066】
また、電圧Vr,Vccの検出に分圧回路VD1,VD2を適用したが、分圧回路の代わりにレベルシフト回路を適用して電圧Vr,Vccの検出電圧を得るようしてもよいことは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0067】
1…交流電源、3…整流回路、4…平滑用コンデンサ、5…フライバックトランス、L11…一次側主巻線、L21…二次側主巻線、L12…一次側補助巻線、6…スイッチング素子、11…スイッチング電源制御用半導体装置、16…フォトカプラ、23…負荷、24…シャントレギュレータ回路、31…起動回路、32…低電圧検出回路、33…内部電源回路、34…パワーグッド信号生成部、34a…第1コンパレータ、34b…判定タイマ、34c…第2コンパレータ、34d…パワーグッド信号出力部、34e…論理反転回路、34f…論理回路(ナンドゲート)、34g…PチャネルMOSFET、34h…定電流回路、34i…遅延時間タイマ、34j…遅延回路、35…ドライバ回路、36…フォトカプラ
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