(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る濃度測定装置10Aの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る濃度測定装置10Aは、赤外線を発光する赤外光源12と、赤外光源12から照射された光が周回するように閉光路を形成する第1の反射鏡14〜第3の反射鏡18と、を備えている。赤外光源12は、光源の一例であり、第1の反射鏡14〜第3の反射鏡18は、光学系の一例である。
以下、本実施形態では、濃度を測定する対象を気体(以下、ガス)として説明するが、測定対象は、ガスに限定されるものではなく、液体を測定対象としてもよい。
【0018】
濃度測定装置10Aは、第1の反射鏡14〜第3の反射鏡18により形成される閉光路の光路中に配置され、内部にガスが供給されると共に閉光路の光が内部を通過して閉光路に出射するガスセル20を備えている。ガスセル20は、容器の一例である。ガスセル20は、閉光路の光が入射する入射部分及び内部を通過して閉光路に出射する出射部分が透明である。なお、ガスセル20は全体が透明であってもよい。
【0019】
濃度測定装置10Aは、回転部材の一例であるチョッパー型ミラー22を備えている。チョッパー型ミラー22は、軸を中心に回転する円板状に形成されている。チョッパー型ミラー22には、後述するように、複数の許可区間の各々と、複数種類の長さの禁止区間の各々とが周方向に交互に設けられている。許可区間は、閉光路に赤外光源12からの光を入射することを許可すると共に閉光路から光が出射することを許可する区間とされる。一方、禁止区間は、閉光路への光の入射及び閉光路からの光の出射を禁止する区間とされる。濃度測定装置10Aは、チョッパー型ミラー22の単位時間当たりの回転数(回転速度)を制御する回転数調整機構24を備えている。
【0020】
濃度測定装置10Aは、チョッパー型ミラー22を介して閉光路から出射した光の強度を検出する光強度検出器26を備えている。光強度検出器26は、検出器の一例である。
【0021】
濃度測定装置10Aは、赤外光源12、回転数調整機構24、及び光強度検出器26に接続される制御器28を備えている。なお、制御器28は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ディスプレイ等を備えたコンピュータにより構成されている。ROMには、後述する濃度測定処理プログラムが記憶されている。濃度測定処理プログラムは、ROMから読み出され、RAMに展開され、CPUにより実行されて、濃度測定処理が実行される。
【0022】
上記の濃度測定処理プログラムは、例えば、制御器28に予めインストールされていてもよい。また、濃度測定処理プログラムは、不揮発性の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布し、制御器28に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD(Hard Disk Drive)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0023】
なお、制御器28には、ガスセル20に対して赤外線非吸収ガスを供給する図示しない赤外線非吸収ガス供給部と、ガスセル20に対して測定対象ガスを供給する図示しない測定対象ガス供給部とが更に接続される。制御器28は、赤外線非吸収ガス供給部を制御して、ガスセル20に赤外線非吸収ガスを供給し、測定対象ガス供給部を制御して、ガスセル20に測定対象ガスを供給する。
【0024】
制御器28は、回転数調整機構24を制御して、所定の運転条件でチョッパー型ミラー22を回転させる。制御器28は、ガスセル20に供給されたガスの想定される濃度に応じて選択される許可区間において、光強度検出器26により検出された光の強度に基づいて、ガスの濃度を測定する濃度測定部としての機能を有する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るチョッパー型ミラー22の構成の一例を示す図である。
図2(A)には、チョッパー型ミラー22の正面図が示され、
図2(B)には、チョッパー型ミラー22の側面図が示されている。
図2に示すように、チョッパー型ミラー22は、回転軸30を中心に、矢印の向きに回転する。
【0026】
チョッパー型ミラー22の周囲には、不等間隔で光が通過可能な光通過部34が形成されている。光通過部34は、上述の複数の許可区間の各々に対応して形成され、閉光路の光が通過可能な位置に配置されている。複数の許可区間は、複数のスリットとされ、一例として5つのスリットとして示される。以下、本実施形態では、複数の許可区間を、許可区間S1〜S5として説明する。
【0027】
一方、チョッパー型ミラー22の光通過部34以外の部分には、光が反射可能な光反射部32が形成されている。上記の光通過部34は、光反射部32における入射開始縁34Aと入射終了縁34Bとの間において画定される。光反射部32は、上述の複数種類の長さの禁止区間の各々に対応して形成され、閉光路の光が反射可能な位置に配置されている。以下、本実施形態では、複数種類の長さの禁止区間を、禁止区間P1〜P5として説明する。なお、許可区間の個数及び禁止区間の個数の各々は、5つずつに限定されるものではない。
【0028】
本実施形態では、複数の禁止区間の各々の周方向における長さが異なるため、チョッパー型ミラー22が1回転する間に赤外線がガスセル20を通過する回数が異なる複数の光の強度を検出することが可能となる。周方向における長さが異なる5つの禁止区間P1〜P5が設けられている場合には、チョッパー型ミラー22が1回転する間に5つの異なる光の強度を検出することが可能となる。
【0029】
次に、
図3〜
図7を参照して、赤外光源12からの赤外線が閉光路に入射され、入射された赤外線が閉光路を何度も周回し、その後、光強度検出器26に到達する様子を説明する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る赤外光源12からの赤外線が閉光路に入射される場合の濃度測定装置10Aの様子を示す図である。
図4は、本実施形態に係る赤外光源12からの赤外線が閉光路に入射される場合のチョッパー型ミラー22の光通過部34の位置を示す図である。
図5は、本実施形態に係る閉光路に入射された赤外線が閉光路を何度も周回する様子を示す図である。
図6は、本実施形態に係る閉光路に入射された赤外線が閉光路を何度も周回する場合のチョッパー型ミラー22の光反射部32の位置を示す図である。
図7は、本実施形態に係る閉光路から出射した赤外線が光強度検出器26に到達する様子を示す図である。
【0031】
チョッパー型ミラー22が回転して、閉光路に光通過部34(許可区間)が位置し、赤外光源12から赤外線が照射されると、
図3に示すように、照射された赤外線は、光通過部34を通過し、第1の反射鏡14に向かう。閉光路に光通過部34が位置する状態を
図4に示す。そして、第1の反射鏡14に向かった赤外線は、
図5に示すように、第1の反射鏡14で反射して、ガスセル20に入射する。第1の反射鏡14からガスセル20に向かった赤外線は、ガスセル20の透明な入射部分を介して、ガスセル20の内部に侵入し、ガスセル20の内部を通過し、ガスセル20の透明な出射部分を介して閉光路に出射する。ガスセル20の透明な出射部分を介して閉光路に出射した赤外線は、第2の反射鏡16に到達し、第2の反射鏡16で反射して、第3の反射鏡18に到達し、第3の反射鏡18で反射して、チョッパー型ミラー22に向かう。そして、
図6に示すように、閉光路に光反射部32(禁止区間)が位置するようになると、第3の反射鏡18で反射してチョッパー型ミラー22に向かった赤外線は、光反射部32で反射して、第1の反射鏡14に到達する。これにより、閉光路が形成される。この状態では、赤外線は、禁止区間P1〜P5の各々の長さに応じて、閉光路を何度も周回、何度もガスセル20の内部を通過する。ガスセル20に、赤外線を吸収する測定対象ガスが供給されていれば、赤外線の一部は、ガスセル20において測定対象ガスに吸収される。よって、閉光路を何度も周回すると、測定対象ガスに吸収されなかった赤外線も測定対象ガスに吸収されるようになる。
【0032】
その後、
図7に示すように、閉光路に光通過部34(許可区間)が位置するようになると、閉光路を何度も周回し測定対象ガスに吸収されなかった赤外線が、光通過部34から出射して、光強度検出器26に到達する。これにより、光強度検出器26は、赤外線の光強度を検出し、光強度を示す光強度信号を制御器28に出力する。
【0033】
本実施形態に係る制御器28は、ガスセル20に供給されたガスの想定される濃度に応じて選択される許可区間において、光強度検出器26により検出された光の強度に基づいて、ガスの濃度を測定する。
【0034】
閉光路に入射された光がガスセル20の内部を通過する回数は、禁止区間が長いほど多くなる。制御器28は、ガスセル20に供給されたガスの想定される濃度が低いほど、長さの長い禁止区間の直後の許可区間を選択し、選択した許可区間において、光強度検出器26により検出された光の強度に基づいて、ガスの濃度を測定する。この場合、例えば、禁止区間P1の直後の許可区間S2が選択される。これにより、ガスセル20を光が通過する回数を多くできるため、S/N比を高くし、検出下限濃度を低くすることができる。一方、制御器28は、ガスセル20に供給されたガスの想定される濃度が高いほど、長さの短い禁止区間の直後の許可区間を選択し、選択した許可区間において、光強度検出器26により検出された光の強度に基づいて、ガスの濃度を測定する。この場合、例えば、禁止区間P5の直後の許可区間S1が選択される。これにより、ガスセル20を光が通過する回数を少なくできるため、光強度が低すぎて検出が困難となる事態を回避し、最適な検出上限濃度を得ることができる。
【0035】
なお、禁止区間P1〜P5の各々の長さは、チョッパー型ミラー22を所定速度で回転させた場合に、光強度検出器26で光が検出されない期間で表すことができる。この場合、制御器28には、光強度検出器26で光が検出されない期間(未検出期間)が禁止区間P1〜P5の各々に対応付けて記憶されている。具体的には、未検出期間の時間が長い順にT11〜T15とした場合に、未検出期間T11〜T15の各々が禁止区間P1〜P5の各々に対応付けて記憶される。これにより、チョッパー型ミラー22を所定速度で回転させた状態で未検出期間T11〜T15を計測し、この計測結果に基づいて、各禁止区間P1〜P5を特定することができる。これにより、各禁止区間P1〜P5の直後の許可区間が選択可能とされる。
【0036】
次に、本実施形態に係る濃度測定装置10Aの作用を説明する。なお、
図8は、第1の実施形態に係る濃度測定処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。本例では、測定対象ガスの濃度が高濃度であるか低濃度であるかが予め想定されている場合について説明する。
【0037】
まず、
図8のステップ100では、制御器28が、赤外線非吸収ガスをガスセル20に供給する制御を行う。
【0038】
ステップ102では、制御器28が、回転数調整機構24を制御して、チョッパー型ミラー22を所定速度V0で回転させる。
【0039】
ステップ104では、制御器28が、赤外光源12を制御して、赤外線を一定期間、閉光路に向けて入射させる。上記のようにチョッパー型ミラー22が所定速度V0で回転しているため、複数の許可区間S1〜S5のうちいずれかの許可区間が閉光路に位置する状態が生ずる。ここでは、一例として、許可区間S1が閉光路に位置したときに赤外線の入射が開始されるように制御する。この制御により、
図3に示すように、赤外光源12からの赤外線は、許可区間S1を通過する。そして、許可区間S1と連続する禁止区間P1が閉光路に位置すると、
図5に示すように、閉光路を赤外線が何度も周回する。その後、チョッパー型ミラー22の次の許可区間S2が閉光路に位置すると、
図7に示すように、閉光路形成中に赤外線非吸収ガスを通過した赤外線は、閉光路から許可区間S2を介して、光強度検出器26に到達する。
【0040】
ステップ106では、制御器28が、赤外線を入射した一定期間中に光強度検出器26から出力された光強度信号の時系列データに基づいて、閉光路形成中に赤外線非吸収ガスを通過した赤外線の光の強度IAを、次のように算出する。
【0041】
図9(A)は、本実施形態に係るガスセル20の内部に供給された赤外線非吸収ガスを通過した赤外線の光強度が光強度検出器26により検出され、光強度検出器26から出力される光強度信号の時系列データの一例を示す図である。
図9(B)は、本実施形態に係るガスセル20の内部に供給された測定対象ガスを通過した赤外線の光強度が光強度検出器26により検出され、光強度検出器26から出力される光強度信号の時系列データの一例を示す図である。
【0042】
閉光路形成中に赤外線非吸収ガスを何度も通過した後、光通過部34(許可区間)の入射開始縁34Aが閉光路にさしかかり(
図9(A)の時間0)、チョッパー型ミラー22の回転が継続すると、時系列データは、
図9(A)に示すように徐々に大きくなる。その後、時系列データは、ピークに到達すると徐々に小さくなり、入射終了縁34Bが閉光路にさしかかり(
図9(A)の時間T1)、チョッパー型ミラー22の回転が継続すると、時系列データは、光反射部32(禁止区間)を経て次の光通過部34の入射開始縁34Aが閉光路にさしかかる時(
図9(A)の時間T2)まで、一定となる。
【0043】
ステップ106では、閉光路形成中に赤外線非吸収ガスを通過した赤外線の光の強度IAを、次式(1)に示すように、時間0から時間T1までの時系列データの積分値から、時間T1から時間T2までの積分値を差し引くことにより、求める。
【0045】
なお、後述するステップ120での光強度IBの算出も上記式(1)を用いて行われる。
【0046】
ステップ108では、制御器28が、全許可区間(N個)について光強度IAを算出したか否かを判定する。全許可区間(N個)について光強度IAを算出したと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ110に移行し、全許可区間(N個)については光強度IAを算出していないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ104に戻り処理を繰り返す。なお、本実施形態では、許可区間S1〜S5(N=5)が設けられているため、許可区間S1〜S5の各々に対して光強度IAが算出される。
【0047】
ステップ110では、制御器28が、全許可区間(N個)の各々の光強度IAを、各々の許可区間に対応付けて保存する。
【0048】
次に、ステップ112では、制御器28が、測定対象ガスをガスセル20に供給する制御を行う。
【0049】
ステップ114では、制御器28が、想定される濃度に応じて許可区間を選択する。想定される濃度が低濃度の場合、例えば、禁止区間P1の直後の許可区間S2を選択し、想定される濃度が高濃度の場合、例えば、禁止区間P5の直後の許可区間S1を選択する。具体的には、制御器28に、キーボード等の入力装置を介して、想定される濃度が高濃度であるか低濃度であるかを示すデータが入力される。制御器28は、この入力データに基づいて、想定される濃度に応じた適切な禁止区間の直後の許可区間を選択する。
【0050】
ステップ116では、制御器28が、回転数調整機構24を制御して、チョッパー型ミラー22を所定速度V0で回転させる。
【0051】
ステップ118では、制御器28が、赤外光源12を制御して、赤外線を一定期間、閉光路に向けて入射させる。上記のようにチョッパー型ミラー22が所定速度V0で回転している。禁止区間P1の直後の許可区間S2が選択された場合、例えば、許可区間S1が閉光路に位置したときに赤外線の入射が開始されるように制御される。この制御により、赤外光源12からの赤外線は、許可区間S1を通過する。そして、許可区間S1と連続する禁止区間P1が閉光路に位置すると、閉光路を赤外線が何度も周回する。その後、チョッパー型ミラー22の次の許可区間S2が閉光路に位置すると、閉光路形成中に測定対象ガスを通過した赤外線は、閉光路から許可区間S2を介して、光強度検出器26に到達する。一方、禁止区間P5の直後の許可区間S1が選択された場合も、上記と同様の制御が行われる。
【0052】
ステップ120では、制御器28が、赤外線を入射した一定期間中に光強度検出器26から出力された光強度信号の時系列データに基づいて、閉光路形成中に測定対象ガスを通過した赤外線の光の強度IBを、上記式(1)を用いて算出する。なお、この場合の光強度検出器26からの光強度信号の時系列データは、
図9(B)に示す通りである。
図9(B)に示す光信号強度の時系列データは、
図9(A)に示す光強度信号の時系列データと比べ、値は小さいが、変化の様子は同様である。
【0053】
ステップ122では、制御器28が、測定対象ガスを通過した光の強度IBと、当該光の強度IBと同一の許可区間における赤外線非吸収ガスを通過した光の強度IAとから、吸光度を、吸光度=−log
10(IB/IA)により計算する。
【0054】
図10は、本実施形態に係るガスセル20に赤外線非吸収ガスを供給した場合の光の強度502及びガスセル20に測定対象ガスを供給した場合の光の強度504の一例を示す図である。
図10に示すように、ガスセル20に赤外線非吸収ガスを供給した場合の光の強度502のほうが、ガスセル20に測定対象ガスを供給した場合の光の強度504より大きい。
【0055】
ステップ124では、制御器28が、測定対象ガスの濃度と吸光度との関係(後述の
図11を参照)と、ステップ122で計算された吸光度とから、測定対象ガスの濃度を計算する。
【0056】
図11は、本実施形態に係る測定対象ガスの濃度と吸光度との関係の一例を示すグラフである。
図11に示すように、測定対象ガスの濃度と吸光度とは線形の関係を有する。
【0057】
ステップ126では、制御器28が、ステップ124で計算された濃度を、ディスプレイに表示し、上記濃度測定処理プログラムによる一連の処理を終了する。
【0058】
図12は、第1の実施形態に係る濃度測定処理プログラムの処理の流れの別の例を示すフローチャートである。本例では、測定対象ガスの濃度が高濃度であるか低濃度であるかが予め想定されていない場合について説明する。
【0059】
ステップ200〜ステップ210までの処理は、
図8に示すステップ100〜ステップ110までの処理と同様であるため、ここでの繰り返しの説明は省略する。
【0060】
図12のステップ212では、制御器28が、測定対象ガスをガスセル20に供給する制御を行う。
【0061】
ステップ214では、制御器28が、回転数調整機構24を制御して、チョッパー型ミラー22を所定速度V0で回転させる。
【0062】
ステップ216では、制御器28が、赤外光源12を制御して、赤外線を一定期間、閉光路に向けて入射させる。上記のようにチョッパー型ミラー22が所定速度V0で回転している。ここでは、一例として、許可区間S1が閉光路に位置したときに赤外線の入射が開始されるように制御する。この制御により、赤外光源12からの赤外線は、許可区間S1を通過し、許可区間S1と連続する禁止区間P1が閉光路に位置すると、閉光路を赤外線が何度も周回する。その後、チョッパー型ミラー22の次の許可区間S2が閉光路に位置すると、閉光路形成中に測定対象ガスを通過した赤外線は、閉光路から許可区間S2を介して、光強度検出器26に到達する。
【0063】
ステップ218では、制御器28が、赤外線を入射した一定期間中に光強度検出器26から出力された光強度信号の時系列データに基づいて、閉光路形成中に測定対象ガスを通過した赤外線の光の強度ICを、上記式(1)を用いて算出する。
【0064】
ステップ220では、制御器28が、全許可区間(N個)について光強度ICを算出したか否かを判定する。全許可区間(N個)について光強度ICを算出したと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ222に移行し、全許可区間(N個)については光強度ICを算出していないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ216に戻り処理を繰り返す。本実施形態では、許可区間S1〜S5(N=5)が設けられているため、許可区間S1〜S5の各々に対して光強度ICが算出される。
【0065】
ステップ222では、制御器28が、全許可区間(N個)の各々の光強度ICを、各々の許可区間に対応付けて保存する。
【0066】
ステップ224では、制御器28が、最大長さの禁止区間の直後の許可区間における、赤外線非吸収ガスを通過した光の強度IAから、測定対象ガスを通過した光の強度ICを差し引いて、両者の差ΔIを算出する(ΔI←IA−IC)。本実施形態の場合、最大長さの禁止区間は、禁止区間P1とされ、禁止区間P1の直後の許可区間は、許可区間S2とされる。
【0067】
ステップ226では、制御器28が、ΔI≦Ith1(閾値)であるか否かを判定する。ΔI≦Ith1であると判定した場合、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が低いと想定されるため、ステップ228に移行する。ΔI>Ith2(閾値)であると判定した場合、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が高いと想定されるため、ステップ230に移行する。また、Ith1<ΔI≦Ith2であると判定した場合、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が中くらいと想定されるため、ステップ232に移行する。
【0068】
ここで、上記の閾値Ithについて説明する。
ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が低い場合、赤外線はそれほど吸収されないため、赤外線非吸収ガスを通過した光の強度IAと測定対象ガスを通過した光の強度ICとの差ΔIが非常に小さい場合がある。しかし、最大長さの禁止区間P1では、上述したように、ガスセル20を赤外線が通過する回数が最も多くなるため、他の禁止区間P2〜P5と比べて、赤外線の吸収が多くなり、最大長さの禁止区間P1の直後の許可区間における光の強度ICを、光の強度IAとの差ΔIを算出可能な程度に大きくできる。一方、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が高い場合、多くの赤外線が吸収され、光の強度IAと光の強度ICとの差ΔIは大きくなる。そして、最大長さの禁止区間P1では、ガスセル20を赤外線が通過する回数が最も多くなるため、他の禁止区間P2〜P5と比べて、赤外線の吸収が多くなり過ぎて、光の強度IAと光の強度ICとの差ΔIが大きくなり過ぎてしまう。このため、最大長さの禁止区間P1において算出される差ΔIに関して、適切な2つの閾値Ith1、閾値Ith2を設定することで、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が高いか低いか中くらいかを精度良く判定することができる。
【0069】
ステップ228では、制御器28が、低濃度用の濃度測定処理を行い、本濃度測定処理プログラムによる一連の処理を終了する。
【0070】
次に、
図13を参照して、ステップ228の低濃度用の測定対象ガスの濃度測定処理を説明する。なお、
図13は、
図12に示す濃度測定処理プログラムにおける低濃度用の濃度測定処理サブルーチンの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0071】
図13のステップ300では、制御器28が、最大長さの禁止区間の直後の許可区間における、赤外線非吸収ガスを通過した光の強度IAと測定対象ガスを通過した光の強度ICとから、吸光度を、吸光度=−log
10(IC/IA)により計算する。
【0072】
ステップ302では、制御器28が、測定対象ガスの濃度と吸光度との関係(
図11参照)と、ステップ300で計算された吸光度とから、測定対象ガスの濃度を計算する。
【0073】
ステップ304では、制御器28が、ステップ302で計算された濃度を、ディスプレイに表示し、本サブルーチンによる処理を終了する。
【0074】
一方、
図12に戻り、ステップ230では、制御器28が、高濃度用の濃度測定処理を行い、本濃度測定処理プログラムによる一連の処理を終了する。
【0075】
次に、
図14を参照して、ステップ230の高濃度用の測定対象ガスの濃度測定処理を説明する。なお、
図14は、
図12に示す濃度測定処理プログラムにおける高濃度用の濃度測定処理サブルーチンの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0076】
図14のステップ400では、制御器28が、最小長さの禁止区間の直後の許可区間における、赤外線非吸収ガスを通過した光の強度IAと測定対象ガスを通過した光の強度ICとから、吸光度を、吸光度=−log
10(IC/IA)により計算する。
【0077】
ステップ402では、制御器28が、測定対象ガスの濃度と吸光度との関係(
図11参照)と、ステップ400で計算された吸光度とから、測定対象ガスの濃度を計算する。
【0078】
ステップ404では、制御器28が、ステップ402で計算された濃度を、ディスプレイに表示し、本サブルーチンによる処理を終了する。
【0079】
なお、
図12のステップ232における中濃度用の濃度測定処理サブルーチンについての図示は省略するが、基本的な処理の流れは、
図13及び
図14に示す濃度測定処理サブルーチンと同様である。但し、中濃度の場合、例えば、中間の長さの禁止区間(例えば、禁止区間P3)の直後の許可区間(例えば、許可区間S4)における、赤外線非吸収ガスを通過した光の強度IAと測定対象ガスを通過した光の強度ICとから、吸光度を計算すればよい。
【0080】
図15は、本実施形態に係るチョッパー型ミラー22に許可区間S1〜S5及び禁止区間P1〜P5を設けた場合に、閉光路において、禁止区間P1〜P5が位置する時間を示す未検出期間(反射状態)及び許可区間S1〜S5が位置する時間を示す検出期間(入射状態、出射状態)の一例を示す図である。
【0081】
図15から、チョッパー型ミラー22の禁止区間が長いと、閉光路が形成される時間が長くなるのに対し、チョッパー型ミラー22の禁止区間が短いと、閉光路が形成される時間が短くなることが理解される。
【0082】
このため、チョッパー型ミラー22の禁止区間を長くして、閉光路が形成される時間を長くすると、赤外線がガスセル20を通過する回数を多くすることができる。逆に、チョッパー型ミラー22の禁止区間を短くして、閉光路が形成される時間を短くすると、赤外線がガスセル20を通過する回数を少なくすることができる。
【0083】
ところで、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度とは無関係にチョッパー型ミラー22に複数の同一長さの禁止区間を設けた場合、測定対象ガスの濃度が高いと、赤外線のほとんどが測定対象ガスに吸収され、ガスセル20から赤外線が出射されずに、光強度検出器26が光強度を検出することができない可能性がある。一方、測定対象ガスの濃度が低いと、赤外線のほとんどが測定対象ガスに吸収されず、測定対象ガスでの光強度と赤外線非吸収ガスでの光強度との差がほとんどない可能性がある。よって、このような場合に、測定対象ガスの濃度を測定しても、ガスの濃度を精度よく測定することができない可能性がある。
【0084】
これに対して、本実施形態では、チョッパー型ミラー22に複数種類の長さの禁止区間を設けることにより、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が高いと想定される場合と低いと想定される場合とで、赤外線がガスセル20を通過する回数を調整することができる。具体的には、ガスセル20に供給されたガスの想定される濃度が低い場合には、長さの長い禁止区間の直後の許可区間において、光強度を検出して、ガスセル20に供給された測定対象ガスを通過する赤外線の回数を多くしている。すなわち、固定された長さの閉光路を周回する赤外線の光路長をより長くし、赤外線が測定対象ガスに吸収され易くしている。これにより、測定対象ガスでの光強度と赤外線非吸収ガスでの光強度との差をより大きくさせ、検出できる濃度の下限値を低くさせて、ガスの濃度を精度よく測定することができるようにしている。
【0085】
一方、ガスセル20に供給されたガスの想定される濃度が高い場合には、長さの短い禁止区間の直後の許可区間において、光強度を検出することで、ガスセル20に供給された測定対象ガスを通過する赤外線の回数をより少なくし、赤外線が測定対象ガスに吸収され難くしている。これにより、ガスセル20から出射される赤外線が減少し、光強度検出器26が光強度を検出することが困難になることを防止して、ガスの濃度を精度よく測定することができるようにしている。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、想定されるガスの濃度が高い場合でも低い場合でも装置の運転条件及び装置の構成を変更することなく、ガスの濃度を広い濃度レンジで精度よく測定することができる。
【0087】
また、本実施形態では、測定対象ガスの濃度を想定し、想定された濃度が低い場合には高い場合より、ガスセル20に供給された測定対象ガスを通過する赤外線の回数を多くしている。よって、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が変化しても、ガスの濃度を精度よく測定することができる。
【0088】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態の構成は、第1の実施形態の構成と同様な部分を含み、同様な部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0089】
図16は、第2の実施形態に係る濃度測定装置10Bの構成の一例を示す図である。
図16に示すように、本実施形態に係る濃度測定装置10Bは、赤外光源12とチョッパー型ミラー22との間にビームスプリッタ42が配置されている。ビームスプリッタ42は、2つの三角プリズムを、底面同士が接するように、組合せて構成されている。なお、ビームスプリッタ42は、2つの三角プリズムを組合せて構成することに限定されず、例えば、偏光ビームスプリッタを採用してもよい。
【0090】
また、第2の実施形態では、第1の実施形態の第1の反射鏡14〜第3の反射鏡18に代えて、チョッパー型ミラー22に対し、ガスセル20を挟んで、1つの反射鏡44を備えている。チョッパー型ミラー22の光反射部32がガスセル20の真下に位置すると、光が往復する閉光路が形成される。
【0091】
図17は、本実施形態に係る赤外光源12からの赤外線がチョッパー型ミラー22を介してガスセル20に到達する様子を示す図である。
図18は、本実施形態に係るガスセル20に到達した赤外線が、チョッパー型ミラー22と反射鏡44との間を、ガスセル20の内部を介して、何度も往復する様子を示す図である。
図19は、本実施形態に係るチョッパー型ミラー22と反射鏡44との間を、ガスセル20の内部を介して、何度も往復した赤外線が、チョッパー型ミラー22の光通過部34を介して、ビームスプリッタ42を介して、光強度検出器26に到達する様子を示す図である。
【0092】
図17に示すように、ビームスプリッタ42の2つの三角プリズムの一方の斜面から入射した赤外線の一部は、一方の三角プリズムの底面を通過して他方の三角プリズムの底面を介して、他方の三角プリズムに入射する。その後、他方の三角プリズムの斜面を介して出射してチョッパー型ミラー22に到達する。チョッパー型ミラー22に到達する際、チョッパー型ミラー22の光通過部34が閉光路に位置すると、他方の三角プリズムを出射した光は、ガスセル20を通過して、反射鏡44に到達し反射鏡で反射して、ガスセル20を通過して、チョッパー型ミラー22に到達する。
図18に示すように、チョッパー型ミラー22に到達する際、チョッパー型ミラー22の光反射部32が閉光路に位置すると、赤外線は、チョッパー型ミラー22と反射鏡44との間を、ガスセル20の内部を介して、何度も往復する。そして、
図19に示すように、チョッパー型ミラー22と反射鏡44との間を、ガスセル20の内部を介して、何度も往復した赤外線の一部は、チョッパー型ミラー22の光通過部34、ビームスプリッタ42の他方の三角プリズムの底面で反射して、他方の三角プリズムの斜面を介して、光強度検出器26に到達する。
【0093】
第2の実施形態でも、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が高いと想定される場合と低いと想定される場合とで、赤外線がガスセル20を通過する回数を調整している。具体的には、ガスセル20に供給されたガスの想定される濃度が低い場合には、高い場合より、ガスセル20に供給されたガスを通過する赤外線の回数を多くしている。すなわち、ガスセル20に供給されたガスの想定される濃度が低い場合には、高い場合より、固定された長さの閉光路を往復する赤外線の光路長をより長くしている。
【0094】
よって、第2の実施形態でも、想定されるガスの濃度が高い場合でも低い場合でも装置の運転条件及び装置の構成を変更することなく、ガスの濃度を広い濃度レンジで精度よく測定することができる。また、第2の実施形態でも、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が変化しても、ガスの濃度を精度よく測定することができる。
【0095】
更に、第2の実施形態では、第1の実施形態の第1の反射鏡14〜第3の反射鏡18に代えて、チョッパー型ミラー22に対し、ガスセル20を挟んで、1つの反射鏡44を備えて、閉光路を構成している。よって、第2の実施形態では、第1の実施形態の構成より、部品点数をより少なくすることができる。
【0096】
また、上記各実施形態では、ガスセル20に供給された測定対象ガスの濃度が高い場合と低い場合との2段階、又は、高い場合と低い場合と中くらいの場合との3段階で、濃度に応じてガスセル20に供給されたガスを通過する赤外線の回数を調整している。実施形態はこれに限定されない。例えば、4以上の複数の段階に応じてガスセル20に供給されたガスを通過する赤外線の回数を調整してもよい。例えば、上記各実施形態の場合には、長さが異なる5つの禁止区間P1〜P5を設けているため、5段階で、ガスセル20に供給されたガスを通過する赤外線の回数を調整することが可能となる。
【0097】
また、上述した長さの異なる5つの禁止区間P1〜P5を1セットとして、1つのチョッパー型ミラー22に複数セットの禁止区間P1〜P5を設けるようにしてもよい。これにより、チョッパー型ミラー22を1回転させる間に複数セット分の吸光度を得ることができる。例えば、2セットであれば、禁止区間P1〜P5の各々の禁止区間について、吸光度を2つずつ得ることができる。この場合、禁止区間P1〜P5の各々の禁止区間での吸光度の平均値を求め、ガスの濃度の計算に利用してもよい。
【0098】
また、長さの異なる5つの禁止区間P1〜P5が設けられたチョッパー型ミラー22を複数回回転させてもよい。この場合、回転ごとに、禁止区間P1〜P5の各々の禁止区間での吸光度を得ることができる。チョッパー型ミラー22を複数回回転させた場合、禁止区間P1〜P5の各々の禁止区間での吸光度の平均値を求め、ガスの濃度の計算に利用してもよい。
【0099】
以上、実施形態として濃度測定装置を例示して説明した。実施形態は、コンピュータを、濃度測定装置が備える制御器として機能させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、このプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体の形態としてもよい。
【0100】
その他、上記実施形態で説明した濃度測定装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0101】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
例えば、ガスの濃度が予め想定されている場合には、想定されているガス濃度に応じた禁止区間の直後の許可区間において検出された光強度を用いて、ガス濃度を測定すればよい。
【0102】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。