(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置を最も高電位側の第1ダイオードとし、当該第1ダイオードを含む複数のダイオードを直列接続してなる第1回路を備えた半導体回路装置であって、
第1端子と、
前記第1端子よりも低電位の第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に接続された第2回路と、
前記第1端子と前記第2回路との間に、前記第2回路に並列に接続された前記第1回路と、
を備え、
複数の前記ダイオードは、カソードを前記第1端子側として、アノードを前記第2端子側として、前記第1端子と前記第2端子との間に直列接続され、
前記第1電極は、前記第1端子に電気的に接続され、
前記第2電極は、複数の前記ダイオードのうち、前記第1ダイオード以外で最も前記第1端子側の第2ダイオードのカソードに電気的に接続されていることを特徴とする半導体回路装置。
複数の前記ダイオードのうち、最も前記第2端子側の前記ダイオードの前記第4電極は、前記第2端子に電気的に接続されていることを特徴とする請求項5または6に記載の半導体回路装置。
【背景技術】
【0002】
電源電位の配線ライン(以下、電源ラインとする)にはサージ電圧が印加されやすい。このため、通常、電源ラインの電圧を所定電圧(以下、クランプ電圧とする)にクランプ(制限)して、電源ラインに接続された各回路にサージ電圧が入力されることを防止する定電圧クランプ回路が用いられる。一般的に、定電圧クランプ回路は、電位Vdの配線ライン(電源ライン)1と、接地電位GNDの配線ライン(以下、接地ラインとする)2と、の間に、複数のツェナーダイオードを直列接続して構成される。定電圧クランプ回路を構成する各ツェナーダイオードで負担する電圧の総和がクランプ電圧となる(例えば、下記特許文献1,2参照。)。
【0003】
このように複数のツェナーダイオードを直列接続して構成された定電圧クランプ回路の最大電流容量は、最も電源電位側(最も高電位側)に接続されるツェナーダイオードの電流容量で決定される。その理由は、次の通りである。半導体基板(半導体チップ)内のpn接合で形成されるツェナーダイオードには寄生素子が存在し、定電圧クランプ回路を構成する複数のツェナーダイオードのうち、最も高電位で動作するツェナーダイオードで最も早く当該寄生素子が動作(寄生動作)しやすい。この寄生動作箇所で大電流が流れやすくなり、局部的に発熱するため、この熱集中箇所で素子が破壊に至るからである。
【0004】
図6は、従来の定電圧クランプ回路を備えた半導体回路装置の一例を示す回路図である。
図6は、下記特許文献1の
図1に相当する。
図6に示す従来の半導体回路装置では、出力端子102と接地端子103との間に、ESD(Electro Static Discharge:静電気放電)保護回路104と出力トランジスタ105とが並列接続されている。ESD保護回路104は、バイポーラトランジスタ107と、当該バイポーラトランジスタ107のベースと出力端子102との間に直列接続された複数のツェナーダイオード106と、を有する。符号101は、外部電源端子である。
【0005】
出力トランジスタ105は、内部回路108の出力に依らず、ESD印加時にNOR回路109から出力されたローレベルのゲート信号によりオフされる。出力トランジスタ105のオフ時に出力端子102の電位が上昇すると、ツェナーダイオード106がブレークダウンして、出力端子102からバイポーラトランジスタ107にベース電流が供給され、バイポーラトランジスタ107がオンする。これにより、出力端子102に印加されたESD電荷がオン状態のバイポーラトランジスタ107で消費され、オフ状態の出力トランジスタ105がESD電荷から保護される。
【0006】
図7は、従来の定電圧クランプ回路を備えた半導体回路装置の別の一例を示す断面図である。
図7は、下記特許文献2の
図1に相当する。
図7に示す従来の半導体回路装置では、p
+型領域111とn
+型領域112とのpn接合で構成された横型ダイオード113がp
-型の半導体基板110のおもて面の表面層に複数配置され(太枠で囲む部分が横型ダイオード113の1セル)、当該複数の横型ダイオード113を直列接続してESD保護回路が構成されている。各横型ダイオード113は、それぞれ、半導体基板110の、各横型ダイオード113の形成領域114をそれぞれ覆うn型領域(ディープn型ウェル領域115およびn
-型ウェル領域116)で接合分離されている。
【0007】
ディープn型ウェル領域115は、半導体基板110のおもて面から所定深さに設けられ、深さ方向にすべて横型ダイオード113に対向する。深さ方向とは、半導体基板110のおもて面から裏面に向かう方向である。n
-型ウェル領域116は、半導体基板110のおもて面からディープn型ウェル領域115に達する深さで設けられている。また、n
-型ウェル領域116は、半導体基板110の、各横型ダイオード113の形成領域114の周囲をそれぞれ囲む。ディープn型ウェル領域115およびn
-型ウェル領域116は、ESD保護回路のアノードまたは電源端子に接続されている。
【0008】
ディープn型ウェル領域115には、半導体回路装置の通常動作時に、ESD保護回路のアノードに供給される電圧よりも高い電圧が供給される。これによって、初段の横型ダイオード113(
図7の最も左側に配置された、最も高電位に接続される横型ダイオード113)を構成するp
+型領域111と、ディープn型ウェル領域115およびn
-型ウェル領域116と、のpn接合によって形成される寄生ダイオード117がオンすることを防止し、ディープn型ウェル領域115およびn
-型ウェル領域116が接続されたノード(接続点)にESD保護回路のアノードから寄生ダイオード117を介してリーク電流が流れることを防止している。
【0009】
また、従来の定電圧クランプ回路を備えた別の半導体回路装置として、エピタキシャル基板のおもて面の表面層に選択的に設けられたp
++型領域と、当該p
++型領域の内部に選択的に設けられたn
+型領域と、のpn接合で構成された縦型ダイオードを保護回路として備えた回路装置が提案されている(例えば、下記特許文献3(第3頁右上欄7行〜第3頁右下欄16行、第1図)参照。)。下記特許文献3では、縦型ダイオードを構成するp
++型領域とn
+型領域との間に設けたp
+型領域により、p
++型領域とn
+型領域との間のpn接合濃度差を調整して、放電抵抗変化の少ない保護回路を実現している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体回路装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体回路装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態にかかる半導体回路装置を用いた回路構成の一例を示す回路図である。
図1に示すように、電源電位Vdの配線ライン(電源ライン)1と、接地電位GNDの配線ライン(以下、接地ラインとする)2と、の間に、内部回路(第2回路)3と定電圧クランプ回路(第1回路)4とが並列接続されている。電源ライン1には、内部回路3の通常動作時に、主電源端子(第1端子)7から電源電位Vdの電圧が印加される。接地ライン2は、接地端子(第2端子)8の接地電位GNDに固定される。内部回路3は、例えば電源電位Vdを最高電位とし、接地電位GNDを最低電位として動作する。
【0027】
定電圧クランプ回路4は、実施の形態にかかる半導体回路装置であり、1つの第1ツェナーダイオード(第1ダイオード)5と複数の第2ツェナーダイオード(第2ダイオード)6とを直列接続して構成される。定電圧クランプ回路4は、電源ライン1の電圧を所定電圧(クランプ電圧)にクランプ(制限)し、内部回路3に耐圧(耐電圧)を超えるサージ電圧が入力されることを防止する機能を有する。耐圧とは、素子や回路が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。サージ電圧とは、電源ライン1に微小時間に入力されるESD(Electro Static Discharge:静電気放電)等の過電圧(ノイズ)である。
【0028】
定電圧クランプ回路4を構成する第1,2ツェナーダイオード5,6のうち、最も電源ライン1側(最も高電位側:1段目)の第1ツェナーダイオード5の電流容量で定電圧クランプ回路4の最大電流容量が決定される。
図1には、第1ツェナーダイオード5の後段(低電位側)に3つの第2ツェナーダイオード6を直列接続した場合を示し、これら3つ(2〜4段目)の第2ツェナーダイオード6に高電位側から低電位側に向かって符号6a〜6cを付している(
図5においても同様)。
【0029】
第1ツェナーダイオード5のカソードは、主電源端子7と内部回路3の電源端子との間において電源ライン1に接続されている。第1ツェナーダイオード5のアノードには、最も高電位側の第2ツェナーダイオード6aのカソードが接続されている。第2ツェナーダイオード6a,6bの各アノードには、それぞれ当該第2ツェナーダイオード6a,6bよりも低電位側の第2ツェナーダイオード6b,6cのカソードが接続されている。最も接地ライン2側(低電位側)の第2ツェナーダイオード6cのアノードは接地ライン2に接続されている。
【0030】
クランプ電圧は、1つの第1ツェナーダイオード5および複数の第2ツェナーダイオード6で負担する電圧の総和である。すなわち、定電圧クランプ回路4で設定するクランプ電圧に応じて、第2ツェナーダイオード6の個数が決定される。例えば、内部回路3の動作電圧が28Vである場合、6V程度の第1ツェナーダイオード5に、6V程度の第2ツェナーダイオード6を4つ直列接続して定電圧クランプ回路4を構成することで、クランプ電圧を30V程度(=5つのツェナーダイオード×6V)とすることができる。
【0031】
第1ツェナーダイオード5の断面構造を
図2に示す。
図2は、実施の形態にかかる半導体回路装置の構造を示す断面図である。
図2には、p
-型の半導体基板(半導体チップ)10の導電型をp
-subと示す(
図3,4A,4B,5においても同様)。
図2に示すように、第1ツェナーダイオード5は、基板おもて面(半導体基板10のおもて面)側に選択的に設けられたp型アノード領域(第1半導体領域)13およびp
-型低濃度アノード領域(第2半導体領域)15とn
+型カソード領域(第3半導体領域)14とのpn接合で形成され、基板おもて面側にアノード電極Aおよびカソード電極Kを有する横型ダイオードである。
【0032】
具体的には、半導体基板10のおもて面の表面層には、n
-型ウェル領域(第1の第1導電型領域)12が選択的に設けられている。n
-型ウェル領域12は、半導体基板10の内部に注入されたn型不純物が拡散されてなる拡散領域である。符号11は、p
-型の半導体基板10のおもて面の表面層にn
-型ウェル領域12が選択的に形成されたことで、半導体基板10の裏面側の深い部分、n
-型ウェル領域12および後述するn
-型ウェル領域43の周囲を囲む部分に残るp
-型領域(以下、p
-型基板領域とする)である。n
-型ウェル領域12は、n
+型カソード領域14と接地電位GNDのp
-型基板領域(第2導電型領域)11との短絡を防止して、n
+型カソード領域14を所定電位に固定する機能を有する。
【0033】
p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域12とのpn接合により、p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域12とが接合分離される。これにより、p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域12とを例えばSOI(Silicon on Insulator)技術等により絶縁分離する場合よりも低コスト化を図ることができる。また、p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域12とのpn接合からp
-型基板領域11およびn
-型ウェル領域12にそれぞれ伸びる空乏層で、第1ツェナーダイオード5の所定耐圧が確保される。
【0034】
n
-型ウェル領域12の内部には、基板おもて面側の表面層に、p型アノード領域13およびn型ピックアップ領域(第5半導体領域)17がそれぞれ選択的に設けられている。p型アノード領域13は、n
-型ウェル領域12の内部に注入されたp型不純物が拡散されてなる拡散領域である。p型アノード領域13は、半導体基板10の内部において、その周囲をn
-型ウェル領域12の、p型アノード領域13以外の部分に覆われている。p型アノード領域13の内部には、n
+型カソード領域14、p
-型低濃度アノード領域15およびp
+型アノードコンタクト領域(第4半導体領域)16がそれぞれ選択的に設けられている。
【0035】
n
+型カソード領域14は、半導体基板10のおもて面に露出され、カソード電極Kおよびカソードパッド41(電極パッド:
図5参照)を介して電源ライン1に電気的に接続されている。n
+型カソード領域14は、p
-型低濃度アノード領域15の内部に注入されたn型不純物が拡散されてなる拡散領域である。n
+型カソード領域14は、半導体基板10の内部において、その周囲をp
-型低濃度アノード領域15の、n
+型カソード領域14以外の部分に覆われている。
【0036】
p
-型低濃度アノード領域15は、p型アノード領域13の内部に注入されたn型不純物が拡散されてなる拡散領域である。すなわち、p
-型低濃度アノード領域15は、p型アノード領域13の内部にn型不純物を拡散させることでp型アノード領域13の不純物濃度を部分的に低くすることで形成された領域である。p
-型低濃度アノード領域15を設けることで、第1ツェナーダイオード5のpn接合を形成するn型領域(n
+型カソード領域14)とp型領域(p
-型低濃度アノード領域15およびp型アノード領域13)とのpn接合界面でのp型不純物とn型不純物との不純物濃度差を大きくすることができる。これにより、n
+型カソード領域14からp型アノード領域13へ注入されるキャリア(正孔)が多くなり、n
+型カソード領域14とp型アノード領域13との間で互いに多数キャリアが注入されやすくなる(すなわち多数キャリアの注入効率が向上)。かつ、第1ツェナーダイオード5のpn接合界面におけるp型不純物濃度がn型不純物濃度よりも低いことで、n
+型カソード領域14からp
-型低濃度アノード領域15へ電子が抜けやすくなり、n
+型カソード領域14とp
-型低濃度アノード領域15とのpn接合界面でのキャリアの再結合が低減される。
【0037】
p
+型アノードコンタクト領域16は、p型アノード領域13の内部に注入されたp型不純物が拡散されてなる拡散領域である。また、p
+型アノードコンタクト領域16は、n
+型カソード領域14およびp
-型低濃度アノード領域15と離して設けられている。また、p
+型アノードコンタクト領域16は、半導体基板10のおもて面に露出され、アノード電極Aを介して低電位側の第2ツェナーダイオード6aのカソード電極(不図示)に電気的に接続されている。
図2には、第1ツェナーダイオード5の高電位側のカソード電極Kに「+:プラス」印を図示し、低電位側のアノード電極Aに「−:マイナス」印を図示する。
【0038】
図2には、カソード電極Kおよびアノード電極Aの接続状態を配線記号で図示するが(
図4においても同様)、カソード電極Kは、層間絶縁膜19を深さ方向Zに貫通するコンタクトホールを介してn
+型カソード領域14に接する金属配線層である。アノード電極Aは、コンタクトホールを介してp
+型アノードコンタクト領域16および後述するn
+型ピックアップコンタクト領域(第6半導体領域)18に接する金属配線層である。深さ方向Zとは、半導体基板10のおもて面から裏面に向かう方向である。
【0039】
n型ピックアップ領域17は、n
-型ウェル領域12の内部に注入されたn型不純物が拡散されてなる拡散領域である。n型ピックアップ領域17は、半導体基板10の内部において、その周囲をn
-型ウェル領域12の、n型ピックアップ領域17以外の部分に覆われている。また、n型ピックアップ領域17は、p型アノード領域13と離して設けられている。n型ピックアップ領域17を設けることで、後述する寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作時にn
-型ウェル領域12を流れる電子電流I2の電流経路の抵抗(拡散抵抗)22を低くすることができる。
【0040】
n型ピックアップ領域17の内部には、n
+型ピックアップコンタクト領域18が選択的に設けられている。n
+型ピックアップコンタクト領域18は、n型ピックアップ領域17の内部に注入されたn型不純物が拡散されてなる拡散領域である。また、n
+型ピックアップコンタクト領域18は、半導体基板10のおもて面に露出され、アノード電極Aを介してp
+型アノードコンタクト領域16に電気的に接続されている。
【0041】
また、n
+型ピックアップコンタクト領域18は、n
+型カソード領域14に近い位置で、かつn
+型カソード領域14よりもp
+型アノードコンタクト領域16から離れた位置に配置される。すなわち、n
+型ピックアップコンタクト領域18は、n
+型カソード領域14よりもp
+型アノードコンタクト領域16との直線距離を空けた位置で、かつp
+型アノードコンタクト領域16に対してn
+型カソード領域14と同じ側に配置されている。好ましくは、n
+型ピックアップコンタクト領域18は、p
+型アノードコンタクト領域16との間にn
+型カソード領域14を挟むように、n
+型カソード領域14に対してp
+型アノードコンタクト領域16と反対側に配置されることが好ましい。その理由は、次の通りである。
【0042】
例えば、比較として、n
+型ピックアップコンタクト領域18を、
図2に示す実施の形態にかかる半導体回路装置(以下、実施例とする)よりもp
+型アノードコンタクト領域16に近い位置に配置した第1ツェナーダイオード30(以下、比較例とする)を
図3に示す。
図3は、比較例の半導体回路装置の構造を示す断面図である。
図3の比較例では、n
+型ピックアップコンタクト領域18は、p
+型アノードコンタクト領域16よりもn
+型カソード領域14から離れた位置に配置されている。この場合、寄生npnバイポーラトランジスタ31の動作(寄生動作)時にn
+型カソード領域14からn
+型ピックアップコンタクト領域18へ流れる電子電流I12は、n
-型ウェル領域12の、p型アノード領域13を挟んで深さ方向Zにp
+型アノードコンタクト領域16に対向する部分(p型アノード領域13直下の部分)を通ってn
+型ピックアップコンタクト領域18に到達することとなる。このため、当該電子電流I12が高抵抗なn
-型ウェル領域12内を流れる距離は長くなり、当該電子電流I12の電流経路の抵抗(拡散抵抗)32の抵抗値が高くなる。したがって、電子電流I12の集中箇所で半導体基板10が発熱し、素子が破壊に至る虞がある。比較例において寄生npnバイポーラトランジスタ31の動作時に流れる電子電流I12の電流経路は、n
+型カソード領域14からp型アノード領域13、n
-型ウェル領域12およびn
+型ピックアップコンタクト領域18へ向かう経路である。符号33は、寄生npnバイポーラトランジスタ31の動作前に第1ツェナーダイオード30に流れる電子電流I11の電流経路の抵抗である。
【0043】
一方、
図2に示す実施例においては、上述したようにn
+型ピックアップコンタクト領域18は、n
+型カソード領域14に近い位置で、n
+型カソード領域14よりもp
+型アノードコンタクト領域16から離して配置される。この場合、寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作(寄生動作)時にn
+型カソード領域14からn
+型ピックアップコンタクト領域18へ流れる電子電流I2は、電子の抜けやすいn
+型カソード領域14とp
-型低濃度アノード領域15とのpn接合を抜けて、n
-型ウェル領域12の、p型アノード領域13直下の部分に達した後、比較例と比べて相対的に近い位置に配置されたn
+型ピックアップコンタクト領域18へと流れ込む。このため、当該電子電流I2が高抵抗なn
-型ウェル領域12を流れる距離は比較例よりも短くなり、当該電子電流I2の電流経路の抵抗22の抵抗値を低くすることができる。したがって、半導体基板10の局所的な発熱を抑制することができる。実施例において寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作時にn
-型ウェル領域12を流れる電子電流I2の電源経路は、n
+型カソード領域14からp
-型低濃度アノード領域15、p型アノード領域13、n
-型ウェル領域12、n型ピックアップ領域17およびn
+型ピックアップコンタクト領域18へ向かう経路である。
【0044】
寄生npnバイポーラトランジスタ21,31は、n
+型カソード領域14をコレクタとし、p
-型低濃度アノード領域15およびp型アノード領域13をベースとし、n
-型ウェル領域12、n型ピックアップ領域17およびn
+型ピックアップコンタクト領域18をエミッタとする寄生素子である。寄生npnバイポーラトランジスタ21,31は、電源ライン1にサージ電圧等の過電圧が印加されたときにn
+型カソード領域14からp
+型アノードコンタクト領域16へ流れる電子電流I1をベース電流として動作する。電子電流I1は、主電源端子7への電源電位Vdの電圧印加により生じた電流や、例えば主電源端子7へのサージ電圧の印加により生じた電流である。寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作前に第1ツェナーダイオード5に流れる電子電流I1の電流経路は、n
+型カソード領域14からp
-型低濃度アノード領域15、p型アノード領域13およびp
+型アノードコンタクト領域16を通ってアノード電極Aへ向かう経路である。
【0045】
層間絶縁膜19は、半導体基板10のおもて面の、n
+型カソード領域14、p
+型アノードコンタクト領域16、n
+型ピックアップコンタクト領域18、後述するn
+型カソード領域45、p
+型アノードコンタクト領域46およびn
+型コンタクト領域47以外の部分を覆う。層間絶縁膜19は、例えばLOCOS(Local Oxidation of Silicon:局所酸化)法により半導体基板10のおもて面を熱酸化することで形成された熱酸化膜(SiO
2膜)であってもよい。
【0046】
第1ツェナーダイオード5を半導体基板10のおもて面側から見たレイアウトの一例を
図4A,4Bに示す。
図4A,4Bは、
図2の実施の形態にかかる半導体回路装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトの一例を示す平面図である。第1ツェナーダイオード5の好適なレイアウトを
図4Aに示し、本発明の効果が得られるレイアウトの一例を
図4Bに示す。また、
図4A,4Bでは、層間絶縁膜19、アノード電極Aおよびカソード電極Kを図示省略する。
【0047】
図4Aに示すように、n
-型ウェル領域12は、例えば略矩形状の平面形状を有する。n
-型ウェル領域12は、p型アノード領域13およびn型ピックアップ領域17に接し、p型アノード領域13およびn型ピックアップ領域17の周囲を囲む。p型アノード領域13は、例えば略矩形状の平面形状を有する。p型アノード領域13は、p
-型低濃度アノード領域15およびp
+型アノードコンタクト領域16に接し、これらp
-型低濃度アノード領域15およびp
+型アノードコンタクト領域16の周囲を囲む。
【0048】
n
+型カソード領域14、p
-型低濃度アノード領域15およびp
+型アノードコンタクト領域16は、それぞれ例えば略矩形状の平面形状を有する。p
-型低濃度アノード領域15は、n
+型カソード領域14に接し、n
+型カソード領域14の周囲を囲む。p
+型アノードコンタクト領域16は、p
-型低濃度アノード領域15と離して配置されている。また、p
+型アノードコンタクト領域16は、p
-型低濃度アノード領域15およびp型アノード領域13の各一部を挟んで第1方向Xにn
+型カソード領域14に対向する。
【0049】
p
+型アノードコンタクト領域16の、n
+型カソード領域14に対向する辺の幅(長さ)w1は、n
+型カソード領域14の、p
+型アノードコンタクト領域16に対向する辺の幅w0と略同じであることがよい(w1=w0)。n
+型カソード領域14およびp
+型アノードコンタクト領域16の対向する辺とは、第1方向Xと直交する方向(以下、第2方向とする)Yに平行な辺である。p
+型アノードコンタクト領域16は、n
+型カソード領域14と略同じ寸法の略矩形状の平面形状であってもよい。
【0050】
p
+型アノードコンタクト領域16は、例えば、n
+型カソード領域14と第2方向Yの位置が等しく、n
+型カソード領域14の対向する1辺全体に対向する。n
+型カソード領域14およびp
+型アノードコンタクト領域16の対向する部分を多くするほど(例えば長辺同士を対向させる等)、n
+型カソード領域14からp
+型アノードコンタクト領域16へ流れる電子電流I1の電流量を増大させることができる。これにより、当該電子電流I1の電流経路の抵抗(拡散抵抗)23を低くすることができる。
【0051】
n型ピックアップ領域17およびn
+型ピックアップコンタクト領域18は、例えば略矩形状の平面形状を有する。n型ピックアップ領域17は、p型アノード領域13と離して配置されて、第1方向Xにp型アノード領域13に対向する。また、n型ピックアップ領域17は、n
+型カソード領域14を挟んで第1方向Xにp
+型アノードコンタクト領域16と対向する。n型ピックアップ領域17は、n
+型ピックアップコンタクト領域18に接し、n
+型ピックアップコンタクト領域18の周囲を囲む。
【0052】
n型ピックアップ領域17の、p型アノード領域13に対向する辺(第2方向Yに平行な辺)の幅w11は、p型アノード領域13の、n型ピックアップ領域17に対向する辺(第2方向Yに平行な辺)の幅w10と略等しくてもよい(w11=w10)。n
+型ピックアップコンタクト領域18は、n型ピックアップ領域17、n
-型ウェル領域12、p型アノード領域13およびp
-型低濃度アノード領域15の各一部を挟んで第1方向Xにn
+型カソード領域14と対向する。
【0053】
かつ、n
+型ピックアップコンタクト領域18は、n
+型カソード領域14を挟んで第1方向Xにp
+型アノードコンタクト領域16と対向する。n
+型ピックアップコンタクト領域18とn
+型カソード領域14との間の距離(直線距離)d1は、n
+型ピックアップコンタクト領域18とp
+型アノードコンタクト領域16との間の距離よりも短ければよく、p
+型アノードコンタクト領域16とn
+型カソード領域14との間の距離d2より短くてもよい。
【0054】
このようにn
+型ピックアップコンタクト領域18を配置することで、寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作時にn
-型ウェル領域12を流れる電子電流I2の電流経路が最短距離となる。当該電子電流I2の電流経路は、n
+型カソード領域14からp
-型低濃度アノード領域15、p型アノード領域13、n
-型ウェル領域12、n型ピックアップ領域17およびn
+型ピックアップコンタクト領域18を通ってアノード電極Aへ向かう経路である。
【0055】
寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作時にn
-型ウェル領域12を流れる電子電流I2の電流経路を短くすることで、当該電子電流I2が高抵抗なn
-型ウェル領域12を流れる距離を短くすることができる。このため、当該電子電流I2の電流経路の抵抗を低くすることができる。また、当該電子電流I2をn
+型ピックアップコンタクト領域18から外部へ可能な限り早く引き抜くことができる。
【0056】
また、n
+型ピックアップコンタクト領域18を、n
+型カソード領域14を挟んで第1方向Xにp
+型アノードコンタクト領域16と対向するように配置することで、デバイス面積の増大を抑制することができる。このため、デバイス面積の増大を抑制した状態で、寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作時に寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作時にn
-型ウェル領域12を流れる電子電流I2の電流経路の抵抗を低くすることができる。
【0057】
n
+型ピックアップコンタクト領域18の、n
+型カソード領域14に対向する辺(第2方向Yに平行な辺)の幅w2は、n
+型カソード領域14の、n
+型ピックアップコンタクト領域18に対向する辺(第2方向Yに平行な辺)の幅w0と略同じであることがよい(w2=w0)。n
+型ピックアップコンタクト領域18は、n
+型カソード領域14と略同じ寸法の略矩形状の平面形状であってもよい。n
+型ピックアップコンタクト領域18は、n
+型カソード領域14と第2方向Yの位置が等しく、n
+型カソード領域14の対向する1辺全体に対向することがよい。
【0058】
n
+型カソード領域14およびn
+型ピックアップコンタクト領域18の対向する部分を多くするほど(例えば長辺同士を対向させる等)、寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作(寄生動作)時にn
+型カソード領域14からn
+型ピックアップコンタクト領域18へ流れる電子電流I2の電流量をさらに増大させることができる。これにより、n
+型カソード領域14からn
+型ピックアップコンタクト領域18へ流れる電子電流I2の電流経路の抵抗(拡散抵抗)23をさらに低くすることができる。
【0059】
図4Bに示すように、n
+型カソード領域14に第2方向Yに対向するようにn
+型ピックアップコンタクト領域18を配置してもよい。この場合、n
+型ピックアップコンタクト領域18の、n
+型カソード領域14に対向する辺(第1方向Xに平行な辺)の幅w21は、n
+型カソード領域14の、n
+型ピックアップコンタクト領域18に対向する辺(第1方向Xに平行な辺)の幅w20と略同じであることがよい(w21=w20)。図示省略するが、n
+型カソード領域14の第1,2方向X,Yの両方に対向するようにn
+型ピックアップコンタクト領域18を配置してもよい。
【0060】
また、図示省略するが、略矩形状の平面形状にp型アノード領域13を配置し、p型アノード領域13の内部に、p
+型アノードコンタクト領域16の周囲を囲む略矩形状にn
+型カソード領域14を配置する。かつ、p型アノード領域13と離してp型アノード領域13の周囲を囲む略矩形状にn型ピックアップ領域17を配置し、n型ピックアップ領域17の内部に、p型アノード領域13の周囲を囲む略矩形状にn
+型ピックアップコンタクト領域18を配置してもよい。
【0061】
または、略矩形状の平面形状のn型ピックアップ領域17の内部にn
+型ピックアップコンタクト領域18を配置する。かつ、n型ピックアップ領域17と離してn型ピックアップ領域17の周囲を囲む略矩形状にp型アノード領域13を配置し、p型アノード領域13の内部に、n
+型ピックアップコンタクト領域18の周囲を囲む同心円状に、n
+型ピックアップコンタクト領域18側から順にn
+型カソード領域14およびp
+型アノードコンタクト領域16を配置してもよい。
【0062】
第2ツェナーダイオード6の断面構造を
図5に示す。
図5は、
図1の第2ツェナーダイオードの構造を示す断面図である。
図5に示すように、第2ツェナーダイオード6(6a〜6c)は、第1ツェナーダイオード5と同一の半導体基板10のおもて面側にそれぞれ選択的に設けられたp型アノード領域44とn
+型カソード領域45とのpn接合で形成され、基板おもて面側に図示省略するアノード電極およびカソード電極を有する横型ダイオードである。
【0063】
各第2ツェナーダイオード6a〜6cは、例えば、同一の断面構造を有し、並列に配置されている。第2ツェナーダイオード6が第1ツェナーダイオード5と異なる点は、次の2点である。1つ目の相違点は、p
-型低濃度アノード領域およびn型ピックアップ領域が設けられていない点である。2つ目の相違点は、n
+型カソード領域45とn
+型コンタクト領域47とを短絡させて、n
-型ウェル領域43とp型アノード領域44とを同電位にしている点である。
【0064】
具体的には、半導体基板10のおもて面の表面層には、第1ツェナーダイオード5のn
-型ウェル領域12と離して、n
-型ウェル領域43が選択的に設けられている。n
-型ウェル領域43は、半導体基板10の内部に注入されたn型不純物が拡散されてなる拡散領域である。n
-型ウェル領域43は、第2ツェナーダイオード6の個数分だけ(ここでは3つ)、互いに離して設けられている。n
-型ウェル領域43は、後述するn
+型コンタクト領域47を介してn
+型カソード領域45に電気的に接続され、接地電位GNDのp
-型基板領域11よりも高電位に固定されている。
【0065】
n
-型ウェル領域43は、n
+型カソード領域45とp
-型基板領域11との短絡を防止して、n
+型カソード領域45を所定電位に固定する機能を有する。p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域43とのpn接合により、p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域43とが接合分離される。また、p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域43とのpn接合からp
-型基板領域11およびn
-型ウェル領域43にそれぞれ伸びる空乏層で、第2ツェナーダイオード6の所定耐圧が確保される。
【0066】
n
-型ウェル領域43の内部には、基板おもて面側の表面層に、p型アノード領域44およびn
+型コンタクト領域47がそれぞれ選択的に設けられている。p型アノード領域44は、n
-型ウェル領域43の内部に注入されたp型不純物が拡散されてなる拡散領域である。p型アノード領域44の内部には、n
+型カソード領域45およびp
+型アノードコンタクト領域46がそれぞれ選択的に設けられている。
【0067】
n
+型カソード領域45は、p型アノード領域44の内部に注入されたn型不純物が拡散されてなる拡散領域である。p
+型アノードコンタクト領域46は、p型アノード領域44の内部に注入されたp型不純物が拡散されてなる拡散領域である。n
+型カソード領域45およびp
+型アノードコンタクト領域46は、半導体基板10のおもて面に露出されている。p
+型アノードコンタクト領域46は、n
+型カソード領域45と離して設けられている。
【0068】
また、2段目(最も高電位側)の第2ツェナーダイオード6aのn
+型カソード領域45は、カソード電極を介して1段目の第1ツェナーダイオード5のアノード電極A(
図2参照)に電気的に接続されている。3,4段目の第2ツェナーダイオード6b,6cのn
+型カソード領域45は、それぞれカソード電極を介して2,3段目(前段:高電位側)の第2ツェナーダイオード6a,6bのアノード電極に電気的に接続されている。
【0069】
2,3段目の第2ツェナーダイオード6a,6bのp
+型アノードコンタクト領域46は、それぞれアノード電極を介して3,4段目(後段:低電位側)の第2ツェナーダイオード6b,6cのカソード電極に電気的に接続されている。4段目(最も低電位側)の第2ツェナーダイオード6cのp
+型アノードコンタクト領域46は、アノード電極およびアノードパッド42(電極パッド)を介して接地ライン2(
図1参照)に電気的に接続されている。
【0070】
n
+型コンタクト領域47は、n
-型ウェル領域43の内部に注入されたn型不純物が拡散されてなる拡散領域である。また、n
+型コンタクト領域47は、p型アノード領域44と離して設けられている。n
+型コンタクト領域47は、アノード電極を介してn
+型カソード領域45に電気的に接続されている。すなわち、上述したように、第1ツェナーダイオード5はp
+型アノードコンタクト領域16とn
+型ピックアップコンタクト領域18とを短絡させているのに対し、第2ツェナーダイオード6はn
+型カソード領域45とn
+型コンタクト領域47とを短絡させている。
【0071】
n
+型コンタクト領域47とn
+型カソード領域45とを短絡させることで、p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域43とのpn接合が逆バイアスされ、p
-型基板領域11とn
-型ウェル領域43とが接合分離されている。また、n
+型コンタクト領域47とn
+型カソード領域45とを短絡させることで、n
-型ウェル領域43とp型アノード領域44とが同電位となるため、第2ツェナーダイオード6は寄生動作(p型アノード領域44、n
-型ウェル領域43およびp
-型基板領域11からなる寄生pnpバイポーラトランジスタの動作)の発生しない構造となっている。したがって、n
+型カソード領域45とp
-型基板領域11との短絡は生じない。
【0072】
また、第2ツェナーダイオード6は、寄生動作の発生しない構造であることで、寄生npnバイポーラトランジスタ21を有する第1ツェナーダイオード5と比べて、動作抵抗が低く、クランプ電圧を達成するための所定電圧に早く達する。すなわち、第2ツェナーダイオード6に流れる電子電流I1の電流経路の抵抗48は、寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作前に第1ツェナーダイオード5に流れる電子電流I1の電流経路の抵抗23よりも低抵抗である。第2ツェナーダイオード6に流れる電子電流I1の電流経路は、n
+型カソード領域45からp型アノード領域44およびp
+型アノードコンタクト領域46へ向かう経路である。
【0073】
次に、定電圧クランプ回路4のクランプ動作について、
図2,5を参照して説明する。電子電流I1,I2の電流経路については
図2のみに示す。主電源端子7に接地端子8に対して高電位の電圧が印加されると、第1ツェナーダイオード5(1段目)に、n
+型カソード領域14からp
-型低濃度アノード領域15、p型アノード領域13およびp
+型アノードコンタクト領域16へ向かう電流経路で電子電流I1が流れる。そして、当該電子電流I1は、第1ツェナーダイオード5のp
+型アノードコンタクト領域16から後段の第2ツェナーダイオード6a〜6c(2〜4段目)に、n
+型カソード領域45からp型アノード領域44およびp
+型アノードコンタクト領域46へ向かう電流経路で順次流れ、4段目の第2ツェナーダイオード6cのp
+型アノードコンタクト領域46からアノードパッド42へと抜ける。
【0074】
そして、第1,2ツェナーダイオード5,6に流れる電子電流の電流量が増加して電源ライン1の電圧がクランプ電圧に達すると、第1ツェナーダイオード5のn
+型カソード領域14からp
+型アノードコンタクト領域16へ流れる電子電流I1をベース電流として寄生npnバイポーラトランジスタ21が動作(寄生動作)する。この寄生npnバイポーラトランジスタ21の寄生動作により、n
+型カソード領域14からp
-型低濃度アノード領域15、p型アノード領域13、n
-型ウェル領域12、n型ピックアップ領域17およびn
+型ピックアップコンタクト領域18へ向かう電流経路で電子電流I2が流れる。すなわち、電源ライン1の電圧がクランプ電圧に達すると、第1ツェナーダイオード5に流れる電子電流の電流経路が切り替わる。
【0075】
第1ツェナーダイオード5は、上述したようにp
-型低濃度アノード領域15を有することで、多数キャリアの注入効率を向上させ、かつキャリアの再結合が低減させた構成となっている。このため、p
-型低濃度アノード領域15を設けない従来構造(
図6,7参照)と比べて、寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作前に第1ツェナーダイオード5に流れる電子電流I1の電流経路の抵抗23の見かけ上の抵抗値が低く、電源ライン1の電圧がクランプ電圧に早く達する。このため、従来構造と比べて、第1ツェナーダイオード5でのエネルギー損失(=電圧×電流)が低く、デバイス面積(素子寸法)を縮小可能である。また、電源ライン1の電圧がクランプ電圧に達した後は、n
-型ウェル領域12を流れる電子電流I2が寄生npnバイポーラトランジスタ21の寄生動作によりn
+型ピックアップコンタクト領域18から引き抜かれる。これにより、デバイス面積を変えずに、p型アノード領域13、n
-型ウェル領域12およびp
-型基板領域11で形成される寄生pnpバイポーラトランジスタが寄生動作に移行するまでの許容電流容量を従来構造よりも大きくすることができる。または、当該寄生pnpバイポーラトランジスタが寄生動作に移行するまでの許容電流容量を変えずに、デバイス面積を従来構造よりも縮小することができる。
【0076】
また、寄生npnバイポーラトランジスタ21の動作前に第1ツェナーダイオード5に流れる電子電流I1の電流経路の抵抗23の抵抗値、および、第2ツェナーダイオード6に流れる電子電流I1の電流経路の抵抗48の抵抗値は、可能な限り低抵抗に設定することが好ましい。その理由は、次の通りである。第1,2ツェナーダイオード5,6に流れる電子電流I1の電流経路の抵抗23,48の抵抗値を低くするほど、第1,2ツェナーダイオード5,6でのエネルギー損失が低くなり、電源ライン1の電圧がクランプ電圧に早く達する。これにより、寄生npnバイポーラトランジスタ21を早く動作させることができ、n
+型カソード領域14とp
-型基板領域11との短絡耐量を向上させることができるからである。
【0077】
以上、説明したように、実施の形態によれば、第1ツェナーダイオードのp
+型アノードコンタクト領域とn
+型ピックアップコンタクト領域とを短絡する。これにより、電源ラインの電圧がクランプ電圧に達した後に、第1ツェナーダイオードのn
+型カソード領域、p
-型低濃度アノード領域、p型アノード領域、n
-型ウェル領域、n型ピックアップ領域およびn
+型ピックアップコンタクト領域で形成される寄生npnバイポーラトランジスタの寄生動作により、第1ツェナーダイオードのn
-型ウェル領域を流れる電子電流をn
+型ピックアップコンタクト領域から外部へ引き抜くことができる。このため、第1ツェナーダイオードのp型アノード領域、n
-型ウェル領域およびp
-型基板領域で形成される寄生pnpバイポーラトランジスタが寄生動作に移行するまでの許容電流容量を大きくすることができる。
【0078】
このように、電源端子と接地端子間に短絡電流を流す当該寄生pnpバイポーラトランジスタが寄生動作に移行するまでの許容電流容量を大きくすることができることで、サージ電流がp
-型基板領域に直接流れ込む電流経路が発生しにくくなる。このため、第1ツェナーダイオードのn
+型カソード領域(主電源端子)とp
-型基板領域(接地端子)とが短絡することを抑制することができ、半導体基板の局部的な発熱による素子破壊を抑制することができる。また、実施の形態によれば、第1ツェナーダイオードのp型アノード領域、n
-型ウェル領域およびp
-型基板領域で形成される寄生pnpバイポーラトランジスタのサイズ(素子寸法)を維持した状態で、当該寄生pnpバイポーラトランジスタが寄生動作に移行するまでの許容電流容量を大きくすることができる。または、当該寄生pnpバイポーラトランジスタが寄生動作に移行するまでの許容電流容量を維持した状態で、チップサイズを縮小することができる。
【0079】
また、実施の形態によれば、寄生pnpバイポーラトランジスタが寄生動作に移行するまでの許容電流容量を大きくすることができるため、バイポーラデバイスの電流密度を低減させるためにバイポーラデバイスのサイズ(素子寸法)を増大させる必要がない。このため、チップ面積(チップサイズ)を維持することができ、かつチップ面積の増加に伴うコスト増大を防止することができる。また、実施の形態によれば、n
+型ピックアップコンタクト領域を、n
+型カソード領域に近い位置で、かつn
+型カソード領域よりもp
+型アノードコンタクト領域から離れた位置に配置する。これにより、寄生pnpバイポーラトランジスタの動作時に流れる電子電流が高抵抗なn
-型ウェル領域を流れる距離が短くなるため、当該電子電流の電流経路の抵抗の抵抗値を低くすることができ、半導体基板の局所的な発熱を抑制することができる。このため、熱集中箇所で素子が破壊に至ることを抑制することができる。
【0080】
また、実施の形態によれば、定電圧クランプ回路の最も高電位側に接続される第1ツェナーダイオードのn
+型カソード領域とp型アノード領域との間にp
-型低濃度アノード領域を設けることで、カソード領域とアノード領域との不純物濃度差を大きくする。これにより、第1ツェナーダイオードにおいて、多数キャリアの注入効率を向上させることができるとともに、キャリアの再結合を低減させることができる。このため、主電源端子にサージ電圧が印加されたときに生じる大電流(サージ電流)に対する第1ツェナーダイオードの動作抵抗(インピーダンス)を下げることができる。このため、第1ツェナーダイオードでのエネルギー損失が低く、電源ラインの電圧がクランプ電圧に早く達することで、電子電流の電流経路を寄生npnバイポーラトランジスタの寄生動作による電流経路に早く切り替えることができる。
【0081】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、定電圧クランプ回路を構成する複数のツェナーダイオードのうち、最も高電位側の1つのツェナーダイオードを上記第1ツェナーダイオードとする場合に本発明の効果が最も得られるが、これに限らず、定電圧クランプ回路を構成する複数のツェナーダイオードのうち、高電位側の2つ以上のツェナーダイオードを第1ツェナーダイオードとしてもよいし、定電圧クランプ回路を第1ツェナーダイオードのみで構成してもよい。