(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のフィルムは、周波数1kHz、30℃での比誘電率が9以上である。
上記比誘電率としては、10以上が好ましい。
上記比誘電率は、上記フィルムの表面にφ50mmのアルミ蒸着を実施し、その反対面にも全面にアルミ蒸着を実施してサンプルとし、LCRメーターを用いて容量(C)を測定し、容量、電極面積(S)、フィルムの厚み(d)から、式C=ε×ε
0×S/d(ε
0は真空の誘電率)で算出する値である。
【0021】
本発明のフィルムは、30℃での体積抵抗率が5E+15Ω・cm以上であり、好ましくは6E+15Ω・cm以上、更に好ましくは7E+15Ω・cm以上、更により好ましくは8E+15Ω・cm以上、特に好ましくは9E+15Ω・cm以上である。上記体積抵抗率としては、1E+16Ω・cm以上が最も好ましい。また、上記体積低効率の上限としては、1E+17Ω・cmであってよく、5E+17Ω・cmであってもよい。
【0022】
上記体積抵抗率は、真空中で上記フィルムの片面にアルミニウムを蒸着しサンプルとする。次に、このサンプルを恒温槽内(30℃、25%RH)に設置してデジタル超絶縁計/微小電流計にて、50V/μmの電圧をサンプルに印加し、体積抵抗率(Ω・cm)を測定する。
【0023】
本発明のフィルムは、絶縁破壊強さが500V/μm以上であり、好ましくは550V/μm以上、さらに好ましくは600V/μm以上である。上記絶縁破壊強さとしては、1000V/μm以下であってもよく、800V/μm以下であってもよい。
上記絶縁破壊強さは、上記フィルムを下部電極に置き、上部電極としてφ25mm、重さ500gの分銅を置いて、両端に電圧を100V/secで増加させて、破壊する電圧を測定する。測定数は50点とし、上下5点を削除して平均値を算出し、厚みで除した値で絶縁破壊電圧を求める。
【0024】
本発明のフィルムは、上記構成を有していることから、高い比誘電率、高い体積抵抗率及び高い絶縁破壊強さを有している。また、実運転では、コンデンサ素子には、たとえば150V/um以上の高電界がかかるが、本発明のフィルムは、150V/um以上の高電界領域においても、耐久性及び絶縁性に優れ、かつ、高いコンデンサ容量、コンデンサとして十分な体積抵抗率を有する。
【0025】
本発明のフィルムは、結晶化度が60%以上であることが好ましい。上記結晶化度としては、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。
【0026】
上記結晶化度は、複数の上記フィルムをサンプルホルダーにセットし、これを測定サンプルとする。サンプルをX線回折装置にて10〜40°の範囲で得られた回折スペクトルの結晶質部分と非晶質部分の面積比から結晶化度を算出する。上記フィルムの厚みが40μm未満である場合には、合計の厚みが40μm以上になるように、複数の上記フィルムを重ねあわせる。
【0027】
本発明のフィルムは、X線回折における結晶ピークの半価幅が0.5〜1.5であることが好ましい。
【0028】
上記半価幅は、X線回折装置で得られたスペクトルをピーク分離法によって結晶ピークと非晶ハローを分解し、得られた結晶ピークのバックグラウンドからピークトップまでの高さをhとした際、h/2に当たる部分の結晶ピークの幅より半価幅を算出する。
【0029】
本発明のフィルムは、厚みが100μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、1μm以上であってよい。
上記厚みは、デジタル測長機を用いて測定できる。よく使用される厚みは2μm以上8μm以下、又は2μm以上5μm以下である。
【0030】
本発明のフィルムは、ポリマーを含むことが好ましく、フルオロポリマーを含むことがより好ましい。本発明のフィルムは、有機フィルムであってよい。
【0031】
上記有機フィルムとしては、ポリオレフィン系ポリマー、ポリシクロオレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリエーテルイミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等のポリマーを含むものが挙げられる。
また、上記フルオロポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/パーフロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。より優れた耐熱性と高誘電性を示すことから、ビニリデンフルオライド単位を含むフルオロポリマーが好ましく、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/トリフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体がより好ましい。
【0032】
上記フルオロポリマーは、融点が180℃以上であることが好ましく、上限は320℃であってよい。より好ましい下限は190℃であり、上限は280℃である。
【0033】
上記フルオロポリマーとしては、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン共重合体が更に好ましい。
上記共重合体は、より優れた耐熱性を示し、低温での誘電率と高温での誘電率との差が更に小さくなることから、ビニリデンフルオライド単位/テトラフルオロエチレン単位がモル比で5/95〜95/5であることが好ましく、10/90〜90/10であることがより好ましく、さらには10/90〜49/51であることが好ましく、20/80以上であることがより好ましく、45/55以下であることが更により好ましい。
【0034】
上記共重合体は、更に、エチレン性不飽和単量体(但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)の共重合単位を含むことが好ましい。
上記エチレン性不飽和単量体の共重合単位の含有量としては、全共重合単位に対して0〜50%モル%であってよく、0〜40モル%であってよく、0〜30モル%であってよく、0〜15モル%であってよく、0〜5モル%であってよい。
【0035】
上記エチレン性不飽和単量体としては、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドと共重合可能な単量体であれば特に制限されないが、下記の式(1)及び(2)で表されるエチレン性不飽和単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
式(1): CX
1X
2=CX
3(CF
2)
nX
4 (1)
(式中、X
1、X
2、X
3及びX
4は、同一又は異なって、H、F又はClを表し、nは0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
【0037】
式(2): CF
2=CF−ORf
1 (2)
(式中、Rf
1は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のフルオロアルキル基を表す。)
【0038】
式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、CF
2=CFCl、CF
2=CFCF
3、下記式(3):
CH
2=CF−(CF
2)
nX
4 (3)
(式中、X
4及びnは上記と同じ。)、及び、下記式(4):
CH
2=CH−(CF
2)
nX
4 (4)
(式中、X
4及びnは上記と同じ。)
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF
2=CFCl、CH
2=CFCF
3、CH
2=CH−C
4F
9、CH
2=CH−C
6F
13、CH
2=CF−C
3F
6H及びCF
2=CFCF
3からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、CF
2=CFCl、CH
2=CH−C
6F
13及びCH
2=CFCF
3から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0039】
式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、CF
2=CF−OCF
3、CF
2=CF−OCF
2CF
3及びCF
2=CF−OCF
2CF
2CF
3からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
上記共重合体は、
55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
5.0〜44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜10.0モル%の式(1):
CX
1X
2=CX
3(CF
2)
nX
4 (1)
(式中、X
1、X
2、X
3及びX
4は、同一又は異なって、H、F又はClを表し、nは0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体であることが好ましい。
【0041】
より好ましくは、
55.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
10.0〜44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である。
【0042】
更に好ましくは、
55.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
13.0〜44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜2.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である。
【0043】
共重合体の高温および低温での機械的強度を向上させる観点から、式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体がCH
2=CH−C
4F
9、CH
2=CH−C
6F
13及びCH
2=CF−C
3F
6Hからなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることが好ましい。より好ましくは、式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体がCH
2=CH−C
4F
9、CH
2=CH−C
6F
13及びCH
2=CF−C
3F
6Hからなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、かつ、共重合体が
55.0〜80.0モル%のテトラフルオロエチレン、
19.5〜44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.6モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体であることである。
【0044】
上記共重合体は、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
10.0〜41.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体であってもよい。
【0045】
上記共重合体は、
55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
9.2〜44.2モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.8モル%の式(2):
CF
2=CF−ORf
1 (2)
(式中、Rf
1は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のフルオロアルキル基を表す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であることも好ましい。
【0046】
より好ましくは、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
14.5〜39.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である。
【0047】
上記共重合体は、
55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
5.0〜44.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜10.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、
0.1〜0.8モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体であることも好ましい。
【0048】
より好ましくは、
55.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
9.5〜44.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、
0.1〜0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である。
【0049】
更に好ましくは
55.0〜80.0モル%のテトラフルオロエチレン、
19.8〜44.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜2.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、
0.1〜0.3モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である。上記共重合体がこの組成を有する場合、低透過性に特に優れる。
【0050】
上記共重合体は、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
9.5〜39.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、
0.1〜0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体であってもよい。
【0051】
上記共重合体は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10minであることが好ましく、0.1〜50g/10minであることがより好ましい。
【0052】
上記MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、297℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)である。
【0053】
上記共重合体は、融点が180℃以上であることが好ましく、上限は290℃であってよい。より好ましい下限は190℃であり、上限は280℃である。
【0054】
上記融点は、示差走査熱量計を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、得られる吸熱曲線のピークにあたる温度を融点とする。
【0055】
上記共重合体は、熱分解開始温度(1%質量減温度)が360℃以上であるものが好ましい。より好ましい下限は370℃である。上記熱分解開始温度は、上記範囲内であれば、上限を例えば410℃とすることができる。
【0056】
上記熱分解開始温度は、加熱試験に供した共重合体の1質量%が分解する温度であり、示差熱・熱重量測定装置〔TG−DTA〕を用いて加熱試験に供した共重合体の質量が1質量%減少する時の温度を測定することにより得られる値である。
【0057】
上記共重合体は、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaであることが好ましい。
【0058】
上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により170℃で測定する値であり、より具体的には、動的粘弾性装置で長さ30mm、巾5mm、厚み0.25mmのサンプルを引張モード、つかみ巾20mm、測定温度25℃から250℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定する値である。170℃における好ましい貯蔵弾性率(E’)は80〜350MPaであり、より好ましい貯蔵弾性率(E’)は100〜350MPaである。
測定サンプルは、例えば、成形温度を共重合体の融点より50〜100℃高い温度に設定し、3MPaの圧力で厚さ0.25mmに成形したフィルムを、長さ30mm、巾5mmにカットすることで作成することができる。
【0059】
上記共重合体は、フッ素樹脂であってよい。
【0060】
本発明のフィルムは、上記フルオロポリマー又は上記共重合体を含む場合、更に他のポリマーを含んでいてもよい。他のポリマーとしては、たとえば可撓性を高めるためにはポリカーボネート(PC)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シリコーン樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)などが好ましく、強度を高めるためにはポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、PC、ポリスチレン、ポリベンゾイミダゾール(PBI)などがあげられ、また高誘電性を補足する点から奇数ポリアミド、シアノプルラン、銅フタロシアニン系ポリマーなどがあげられる。
【0061】
上記共重合体と組み合わせる他のポリマーとしては、これらのなかでも上記共重合体と親和性が高い点から、PVdF、VdF/HFP共重合体、ポリ(メタ)アクリレート及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが好ましい。なお、PVdF、VdF/HFP共重合体は誘電率を損なわずに機械的強度を向上させることができる点から、特に好ましい。また、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ酢酸ビニルは、機械的強度や絶縁抵抗の向上の点から、特に好ましい。
【0062】
上記共重合体と他のポリマーとの質量比は、50/50〜99/1であることが好ましく、75/25〜99/1であることがより好ましい。
【0063】
フィルムの機械的強度を損なわずにフィルムのブロッキングを防ぐことが可能になる点から、本発明のフィルムは、シリカを含むこともできる。その配合量は、上記ポリマー100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが更に好ましい。
【0064】
本発明のフィルムは、高誘電性無機粒子、補強用フィラー、親和性向上剤等を含むものであってもよい。
【0065】
上記高誘電性無機粒子としては、チタン酸バリウム系酸化物粒子、チタン酸ストロンチウム系酸化物粒子等が挙げられる。上記高誘電性無機粒子は上記ポリマー100質量部に対して10〜200質量部配合することが好ましい。
【0066】
上記チタン酸バリウム系酸化物粒子を含有すると誘電率は向上するが、誘電損失の増大、耐電圧の低下が見られる。よって、上記チタン酸バリウム系酸化物粒子の含有量は、上記ポリマー100質量部に対して200質量部程度が上限となる。また、誘電率向上の改善効果の点から、チタン酸バリウム系酸化物粒子の含有量は10質量部以上が好ましい。
【0067】
上記チタン酸ストロンチウム系酸化物粒子を含有すると、誘電率の向上と誘電損失の低下がみられるため、好ましい。一方、耐電圧は低下するため、耐電圧向上を求める場合には配合しない方がよい。
【0068】
上記補強用フィラーとしては、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス、アルミナ、硼素化合物の粒子または繊維があげられる。
【0069】
上記親和性向上剤としては、カップリング剤、官能基変性ポリオレフィン、スチレン改質ポリオレフィン、官能基変性ポリスチレン、ポリアクリル酸イミド、クミルフェノールなどがあげられ、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。尚、耐電圧の点からはこれらの成分は含まないことがより好ましい。
【0070】
本発明のフィルムは、周波数1kHz、30℃での比誘電率Aと、周波数1kHz、150℃での比誘電率Bとから、次式に従って算出される変化率が−8〜+8%であることが好ましい。上記変化率は、−7〜+7%であることがより好ましく、−6〜+6%であることが更に好ましい。上記変化率は、−2.0%以下+2.0%以上であってもよい。
変化率(%)=(B−A)/A×100
【0071】
比誘電率A及びBは、いずれも、LCRメーターを用いて容量(C)を測定し、容量、電極面積(S)、フィルムの厚み(d)から、式C=ε×ε
0×S/d(ε
0は真空の誘電率)で算出する。
【0072】
本発明のフィルムは、周波数1kHz、30℃での比誘電率Eと、周波数100kHz、30℃での比誘電率Fとから、次式に従って算出される変化率が−8〜+8%であることが好ましい。
変化率(%)=(F−E)/E×100
【0073】
比誘電率E及びFは、いずれも、LCRメーターを用いて容量(C)を測定し、容量、電極面積(S)フィルムの厚み(d)から、式C=ε×ε
0×S/d(ε
0は真空の誘電率)で算出する。
【0074】
本発明のフィルムは、周波数1kHz、150℃での誘電正接が7%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。
上記誘電正接は、LCRメーターを用いて測定する。
【0075】
本発明のフィルムは、長手方向(MD)の25℃での引張弾性率が800MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましい。
上記引張弾性率は、ASTM D1708に準拠して測定できる。
【0076】
本発明のフィルムは、長手方向(MD)の25℃での弾性率が800MPa以上であって、かつ、厚みが100μm以下であってよい。上記弾性率は、900MPa以上であることがより好ましい。また、上記厚みは、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、1μm以上であることが好ましい。
【0077】
本発明のフィルムは、ポリマーを溶融押出成形することによりフィルムを得る工程、及び、上記フィルムを延伸することにより、延伸フィルムを得る工程を含む製造方法により、好適に製造することができる。
【0078】
上記溶融押出成形は、250〜380℃で行うことができる。
上記溶融押出成形は、また、溶融押出成形機を使用して行うことができ、シリンダー温度を250〜350℃、ダイ温度を300〜380℃とすることが好ましい。また、成形温度を段階的に上げることも好ましい。例えば、シリンダー部を300℃とした後に330℃に昇温させ、Tダイ部を340℃とするように、成形温度を段階的に上げることも好ましい。
【0079】
上記製造方法は、上記押出成形で得られたフィルムをロールにより巻き取る工程を含むことも好ましい。上記ロールの温度は、0〜180℃とすることが好ましい。
【0080】
上記押出成形の後、得られたフィルムを延伸して延伸フィルムを得る。
上記延伸は、二軸延伸であってもよい。
【0081】
上記二軸延伸では、縦方向(MD)と垂直な横方向(TD)にフィルムを延伸する。
上記二軸延伸における延伸倍率は、MDおよびTDの各倍率で2〜10倍であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、3.5倍以上であることが更に好ましく、4倍以上であることが特に好ましい。
上記二軸延伸における延伸温度は、0〜200℃であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
上記二軸延伸における延伸速度は、1E+2〜1E+5%/分であることが好ましい。
【0082】
上記二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよい。
上記二軸延伸の方法としては、テンター式二軸延伸、チューブラー式二軸延伸等の方法が採用でき、テンター式二軸延伸が好ましい。
上記二軸延伸における延伸温度は、0〜200℃であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
上記同時二軸延伸における延伸速度は、1E+2〜1E+5%/分であることが好ましい。
同時二軸延伸法は、ロール状フィルムの端部(TD側)をクリップで掴み、そのクリップ間隔がMD方向、TD方向の両方に広がることでフィルムを延伸する方法である。
【0083】
上記延伸は、バッチ式又は連続式の延伸機を使用して行うことができる。また、上記延伸は、溶融押出によるフィルム成形から、そのまま連続して行うこともできる。
【0084】
上記製造方法は、上記延伸の後、得られた延伸フィルムを熱固定する工程を含むことも好ましい。熱固定をすることにより、熱等の影響によるフィルムの収縮を抑制したり、耐久性が向上したりする効果が得られる。
上記熱固定の温度は、100〜250℃であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以下であることがより好ましい。熱固定時間は短時間で良く、連続延伸では5分以下で良い。
【0085】
本発明のフィルムは、高誘電性フィルム又は圧電フィルムとして好適である。
【0086】
本発明のフィルムを圧電フィルムとする場合、フィルムを分極処理することが好ましい。上記分極処理は、コロナ放電により行うことができ、例えば;特開2011−181748号公報に記載のようにフィルムに対して線状電極を用いて印加を実施すること;又はフィルムに対して針状電極を用いて印加を実施すること;により行うことができる。上記分極処理をした後、熱処理してもよい。
【0087】
本発明のフィルムは、また、フィルムコンデンサ、エレクトロウェッティングデバイス、又は、圧電パネルに好適に使用できる。
【0088】
本発明のフィルムは、フィルムコンデンサの高誘電性フィルムとして好適に使用できる。上記フィルムコンデンサは、本発明のフィルムと、該フィルムの少なくとも一方の面に設けられた電極層とを有するものであってよい。
【0089】
フィルムコンデンサの構造としては、たとえば、電極層と高誘電性フィルムが交互に積層された積層型(特開昭63−181411号公報、特開平3−18113号公報など)や、テープ状の高誘電性フィルムと電極層を巻き込んだ巻回型(高誘電性フィルム上に電極が連続して積層されていない特開昭60−262414号公報などに開示されたものや、高誘電性フィルム上に電極が連続して積層されている特開平3−286514号公報などに開示されたものなど)などがあげられる。構造が単純で、製造も比較的容易な、高誘電性フィルム上に電極層が連続して積層されている巻回型フィルムコンデンサの場合は、一般的には片面に電極を積層した高誘電性フィルムを電極同士が接触しないように2枚重ねて巻き込んで、必要に応じて、巻き込んだ後に、ほぐれないように固定して製造される。
【0090】
電極層は、特に限定されないが、一般的に、アルミニウム、亜鉛、金、白金、銅などの導電性金属からなる層であって、金属箔として、または蒸着金属被膜として用いる。金属箔と蒸着金属被膜のいずれでも、また、両者を併用しても構わない。電極層を薄くでき、その結果、体積に対して容量を大きくでき、誘電体との密着性に優れ、また、厚さのバラつきが小さい点で、通常は、蒸着金属被膜が好ましい。蒸着金属被膜は、一層のものに限らず、たとえば耐湿性を持たせるためにアルミニウム層にさらに半導体の酸化アルミニウム層を形成して電極層とする方法(たとえば特開平2−250306号公報など)など、必要に応じて多層にしてもよい。蒸着金属被膜の厚さも特に限定されないが、好ましくは100〜2,000オングストローム、より好ましくは200〜1,000オングストロームの範囲とする。蒸着金属被膜の厚さがこの範囲である時に、コンデンサの容量や強度がバランスされ好適である。
【0091】
電極層として蒸着金属被膜を用いる場合、被膜の形成方法は特に限定されず、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを採用することができる。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0092】
真空蒸着法としては、たとえば成形品のバッチ方式と、長尺品で使用される半連続(セミコンテニアス)方式と連続(air to air)方式などがあり、現在は、半連続方式が主力として行われている。半連続方式の金属蒸着法は、真空系の中で金属蒸着、巻き取りした後、真空系を大気系に戻し、蒸着されたフィルムを取り出す方法である。
【0093】
半連続方式については、具体的には、たとえば特許第3664342号明細書の
図1を参照して記載されている方法で行うことができる。
【0094】
フィルム上に金属薄膜層を形成する場合、あらかじめフィルム表面に、コロナ処理、プラズマ処理など、接着性向上のための処理を施しておくこともできる。電極層として金属箔を用いる場合も、金属箔の厚さは特に限定されないが、通常は、0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜15μmの範囲である。
【0095】
固定方法は、特に限定されず、たとえば樹脂で封止したり絶縁ケースなどに封入したりすることにより、固定と構造の保護とを同時に行えばよい。リード線の接続方法も限定されず、溶接、超音波圧接、熱圧接、粘着テープによる固定などが例示される。巻き込む前から電極にリード線を接続しておいてもよい。絶縁ケースに封入する場合など、必要に応じて、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で開口部などを封止して酸化劣化などを防止してもよい。
【0096】
コロナ処理やプラズマ処理を実施しない場合、表面張力は24mJ/m
2であるが、未実施では蒸着ののりが不十分である。コロナ処理を実施することで表面張力を26〜40mJ/m
2程度に増加させることが可能であり、蒸着状態も良好である。また、プラズマ処理でも同等の処理は可能であるが、処理条件がきつすぎて表面張力が40mJ/m
2を超える値になると表面状態が悪くなるため不適切な処理となる。
【0097】
蒸着については、フィルム欠陥による破壊からデバイスを保護し、信頼性を向上させる目的としてヒューズパターンを組み込んだものでも良い。また、そのヒューズパターン構成によっては破壊による静電容量低下を極小化することが可能となる。
【0098】
蒸着したフィルムはスリッター装置を用いてコンデンサに必要な幅、一般的には20mm幅〜150mm幅程度にスリットされる。
【0099】
巻回した素子の両端面に亜鉛(Zn)等の金属を溶融噴射することでメタリコン電極が形成される。次に、真空オーブン炉を用いて高温・減圧下(120℃、Torr、24時間)で素子を乾燥したのち、リード線もしくは端子をはんだ付けや溶接する。その後、樹脂ケースもしくは金属ケースに挿入し、下記に示す固定方法で封止を実施する。
【0100】
本発明のフィルムは、エレクトロウェッティングデバイスの高誘電性フィルムとして好適に使用できる。
【0101】
上記エレクトロウェッティングデバイスは、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に、移動可能に配置された導電性液体と、第1電極と前記導電性液体との間に、第1電極を前記第2電極から絶縁するように配置された、本発明のフィルム(高誘電性フィルム)と、を有するものであってよい。本発明のフィルムの上には、撥水層を設けてもよい。第1電極と第2電極との間には、導電性液体に加えて、絶縁性液体が保持されており、導電性液体と絶縁性液体が2層を構成していてよい。
【0102】
上記エレクトロウェッティングデバイスは、光学素子、表示装置(ディスプレイ)、可変焦点レンズ、光変調装置、光ピックアップ装置、光記録再生装置、現像装置、液滴操作装置、分析機器(例、試料の分析のため微小の導電性液体を移動させる必要がある、化学、生化学、および生物学的分析機器)に使用できる。
【0103】
本発明のフィルムは、圧電パネルの圧電フィルムとして好適に使用できる。
【0104】
上記圧電パネルは、第1電極と、本発明のフィルム(圧電フィルム)と、第2電極と、をこの順で有するものであってよい。第1電極は、フィルムの一方の主面上に直接又は間接的に配置され、第2電極はフィルムの他方の主面上に直接又は間接的に配置される。
【0105】
上記圧電パネルは、タッチパネルに使用することができる。上記タッチパネルは、入力装置に用いることができる。上記タッチパネルを有する入力装置は、タッチ位置、タッチ圧、又はその両方に基づく入力が可能である。上記タッチパネルを有する入力装置は、位置検出部及び圧力検出部を有することができる。
【0106】
上記入力装置は、電子機器(例、携帯電話(例、スマートフォン)、携帯情報端末(PDA)、タブレットPC、ATM、自動券売機、及びカーナビゲーションシステム)に用いることができる。当該入力装置を有する電子機器は、タッチ位置、タッチ圧又はその両方に基づく操作及び動作が可能である。
【0107】
また振動発電などの環境発電、タッチセンサー、タッチパネル、触感センサー、誘電ボロメーター、フィルムスピーカー、触覚フィードバック(ハプティクス)、などの強誘電体用途、あるいは電歪アクチュエーターなどでのフィルムとしても使用することができる。
【実施例】
【0108】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0109】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0110】
フルオロポリマーの単量体組成
核磁気共鳴装置を用い、測定温度を(ポリマーの融点+20)℃として
19F−NMR測定を行い、各ピークの積分値およびモノマーの種類によっては元素分析を適宜組み合わせて求めた。
【0111】
融点
示差走査熱量計を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
【0112】
メルトフローレート〔MFR〕
MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、297℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)をMFRとした。
【0113】
厚み
デジタル測長機を用いて、基板に載せたフィルムを室温下にて測定した。
【0114】
結晶化度
複数のフィルムを40μm以上になるよう重ねあわせたものをサンプルホルダーにセットしこれを測定サンプルとする。サンプルをX線回折装置にて10〜40°の範囲で得られた回折スペクトルの結晶質部分と非晶質部分の面積比から結晶化度を算出した。
【0115】
半価幅
X線回折装置で得られたスペクトルをピーク分離法によって結晶ピークと非晶ハローを分離し、得られた結晶ピークのバックグラウンドからピークトップまでの高さをhとした際、h/2に当たる部分の結晶ピークの幅より半価幅を算出した。
【0116】
比誘電率
真空中でフィルムの両面にアルミニウムを蒸着しサンプルとする。このサンプルをLCRメーターにて、30℃で、周波数1kHzでの静電容量を測定する。得られた各静電容量から比誘電率を算出した。
【0117】
体積抵抗率
真空中でフィルムの片面にアルミニウムを蒸着しサンプルとする。次に、このサンプルを恒温槽内(30℃、25%RH)に設置してデジタル超絶縁計/微小電流計にて、50V/μmの電圧をサンプルに印加し、体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0118】
絶縁破壊強さ
フィルムを下部電極に置き、上部電極としてφ25mm、重さ500gの分銅を置いて両端に電圧を100V/secで増加させて破壊する電圧を測定した。測定数は50点とし、上下5点を削除して平均値を算出し、厚みで除した値で絶縁破壊強さを求めた。
【0119】
実施例1
ペレット樹脂を250℃で溶融押出機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。そのフィルムをバッチ式の二軸延伸装置にかけ、MD方向に3.0倍、TD方向に3.0倍に同時延伸して延伸フィルムを得た。
【0120】
実施例2
ペレット樹脂を250℃で溶融押出機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。そのフィルムをバッチ式の二軸延伸装置にかけ、MD方向に3.5倍、TD方向に3.5倍に同時延伸して延伸フィルムを得た。
【0121】
実施例3
ペレット樹脂を250℃で溶融押出機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。そのフィルムをバッチ式の二軸延伸装置にかけ、MD方向に4.0倍、TD方向に4.0倍に同時延伸して延伸フィルムを得た。
【0122】
実施例4
ペレット樹脂を250℃で溶融押出機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。そのフィルムをバッチ式の二軸延伸装置にかけ、MD方向に4.0倍、TD方向に4.0倍に同時延伸し、延伸後に160℃雰囲気下で3分間熱固定を行いフィルムを得た。
【0123】
実施例5
ペレット樹脂を250℃で溶融押出機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。そのフィルムをバッチ式の二軸延伸装置にかけ、MD方向に4.5倍、TD方向に4.5倍に同時延伸して延伸フィルムを得た。
【0124】
比較例1
ペレット樹脂を250℃で溶融プレスにて製膜し、フィルム厚100μmのフィルムを得た。
【0125】
比較例2
ペレット樹脂を250℃で溶融押出機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。
【0126】
比較例3
ビニリデンフルオライド単独重合体を溶融押出機にて製膜し、フィルム厚25μmのフィルムを得た。
【0127】
各ペレット樹脂の特性及び結果を表1に示す。また、実施例4及び比較例2の30℃及び120℃での体積抵抗率の測定結果、及びそれらの電界依存性を表2に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】